1 開基
定義 1.1 (開基).(X,O)を位相空間とし、B⊆Oとする。Oの各元がBの元からなる集合族の和集合として表されるとき、BをOの 開基 (basis) という。
命題 1.2.(X,O)を位相空間とし、B⊆Oとする。次の二条件は同値である。
- BはOの開基である。
- 任意のU∈Oと任意のx∈Uに対して、x∈B⊆Uを満たすB∈Bが存在する。
証明.(1)⇒(2)を示す。U∈Oとx∈Uをとる。UはBの元からなるある集合族の和集合であるから、§E1.2 定義 2.1の和集合の定義によりx∈B⊆Uを満たすB∈Bが存在する。
(2)⇒(1)を示す。U∈Oに対してBU={B∈B∣B⊆U}とおく。BUの各元はUに含まれるので⋃BU⊆Uである。逆にx∈Uをとると、仮定によりx∈B⊆Uを満たすB∈Bが存在し、このBはBUに属する。よってU=⋃BUであり、UはBの元からなる集合族の和集合として表される。Uは任意であったから、BはOの開基である。▨
命題 1.3.Xを集合とし、BをXの部分集合からなる集合族とする。⋃B=Xが成り立ち、任意のB1,B2∈Bと任意のx∈B1∩B2に対してx∈B3⊆B1∩B2を満たすB3∈Bが存在すると仮定する。このとき、Bの元からなる集合族の和集合として表されるXの部分集合の全体OBはXの位相であり、BはOBの開基である。
証明.∅は空な集合族の和集合であるから§E1.2 注意 2.3によりOBに属し、X=⋃BもOBに属する。OBの元からなる集合族の和集合は、Bの元からなる集合族の和集合を再びとったものであるからOBに属する。
U,V∈OBとx∈U∩Vをとる。UとVの表示からx∈B1⊆Uとx∈B2⊆Vを満たすB1,B2∈Bが存在する。仮定によりx∈B3⊆B1∩B2⊆U∩Vを満たすB3∈Bが存在する。xはU∩Vの任意の点であったから、U∩Vは自身に含まれるBの元の和集合であり、OBに属する。正の整数nとU1,…,Un∈OBに対する⋂i=1nUiは、nについての帰納法によりOBに属する。以上で§E2.11 定義 1.1の三つの公理が成り立つ。
Bの各元は自身一つからなる集合族の和集合であるからB⊆OBであり、OBの定義は各元をBの元からなる集合族の和集合として与える。ゆえにBはOBの開基である。▨
例 1.4.(X,d)を距離空間とし、Xに距離から生じる位相Odを入れる。Bを開球の全体{B(a,r)∣a∈X, r>0}とすると、BはOdの開基である。
§E2.2 補題 1.2により各開球はOdに属するのでB⊆Odである。U∈Odとx∈Uに対して、§E2.2 定義 1.1によりx∈B(x,ε)⊆Uを満たす実数ε>0が存在する。ゆえに命題 1.2によりBはOdの開基である。
2 準開基と連続性の判定
定義 2.1 (準開基).Xを集合とし、SをXの部分集合からなる集合族とする。
B(S)={i=1⋂nSi n≥1, S1,…,Sn∈S}∪{X}とおき、B(S)の元からなる集合族の和集合として表されるXの部分集合の全体をO(S)と書く。定理 2.2によりO(S)はXの位相であり、これをSが 生成する位相 (topology generated by a family) という。Xの位相OがO(S)に等しいとき、SをOの 準開基 (subbasis) という。
定理 2.2.Xを集合とし、SをXの部分集合からなる集合族とする。定義 2.1で定めたB(S)は命題 1.3の仮定を満たす。したがってO(S)はXの位相であり、B(S)はO(S)の開基である。さらにO(S)は、Sを含むXの位相のうち最も粗いものである。
証明.X∈B(S)であるから⋃B(S)=Xである。B1,B2∈B(S)をとる。両者がともにSの有限個の元の共通部分であるならばB1∩B2もSの有限個の元の共通部分であり、一方がXであるならばB1∩B2は他方に等しい。いずれの場合もB1∩B2∈B(S)であるから、x∈B1∩B2に対してB3=B1∩B2ととればよい。ゆえに命題 1.3を適用することができ、O(S)はXの位相であってB(S)はその開基である。
O′をS⊆O′を満たすXの位相とする。O′は有限共通部分について閉じ、Xを含むからB(S)⊆O′である。O′は任意和についても閉じているからO(S)⊆O′である。S⊆B(S)⊆O(S)であるから、O(S)はSを含む位相のうち最も粗いものである。▨
命題 2.4.(X,O)を位相空間とし、BをOの開基とする。このときBはOの準開基である。
証明.B⊆Oであるから、定理 2.2によりO(B)はBを含む位相のうち最も粗いものであり、O(B)⊆Oである。逆に、Oの各元はBの元からなる集合族の和集合として表され、定義 2.1によりBの各元はB(B)に属するから、O⊆O(B)である。ゆえにO=O(B)であり、BはOの準開基である。▨
命題 2.5.(X,OX)と(Y,OY)を位相空間とし、f:X→Yを写像とする。次が成り立つ。
- BをOYの開基とすると、fが連続であることと、すべてのB∈Bに対してf−1(B)∈OXであることは同値である。
- SをOYの準開基とすると、fが連続であることと、すべてのS∈Sに対してf−1(S)∈OXであることは同値である。
証明.(1)を示す。B⊆OYであるから、fが連続ならば各B∈Bに対してf−1(B)∈OXである。逆に、すべてのB∈Bに対してf−1(B)∈OXであると仮定し、V∈OYをとる。開基の定義により、Bの元からなる集合族(Bλ)λ∈ΛでV=⋃λ∈ΛBλを満たすものが存在する。§E1.2 定理 4.1によりf−1(V)=⋃λ∈Λf−1(Bλ)である。右辺はOXの元からなる集合族の和集合であるからOXに属する。ゆえにfは連続である。
(2)を示す。S⊆O(S)=OYであるから、fが連続ならば各S∈Sに対してf−1(S)∈OXである。逆に、すべてのS∈Sに対してf−1(S)∈OXであると仮定する。定理 2.2によりB(S)はOYの開基である。B(S)の元はSの有限個の元の共通部分であるか、またはYである。§E1.2 定理 4.1により前者の逆像はOXの有限個の元の共通部分であり、後者についてはf−1(Y)=X∈OXである。したがってB(S)の各元の逆像はOXに属し、(1)によりfは連続である。▨
定理 2.6. 位相空間X、Yと写像f:X→Y、およびXの開基Bについて、次の三条件は同値である。内部は、Xの部分集合についてはXの位相に関して、Yの部分集合についてはYの位相に関してとる。
- fは開写像である。
- 任意のA⊆Xに対してf(int(A))⊆int(f(A))が成り立つ。
- 任意のB∈Bに対してf(B)はYの開集合である。
証明.(1)⇔(2)は§E2.12 命題 5.8 (1)である。
(1)⇒(3)を示す。Bの元はXの開集合であるから、fが開写像ならばその像はYの開集合である。
(3)⇒(1)を示す。UをXの開集合とすると、定義 1.1によりUはBの元からなる集合族(Bi)i∈Iの和集合である。§E1.2 定理 4.2により
f(U)=f(i∈I⋃Bi)=i∈I⋃f(Bi)であり、仮定により各f(Bi)はYの開集合であるから、§E2.11 定義 1.1によりf(U)はYの開集合である。▨
例 2.7.Rに通常の距離d(s,t)=∣s−t∣から生じる位相を入れ、S={(a,∞)∣a∈R}∪{(−∞,b)∣b∈R}とおく。例 1.4により開球の全体は通常の位相の開基であり、a∈Rと実数r>0に対してB(a,r)=(a−r,∞)∩(−∞,a+r)であるから、各開球はB(S)に属する。したがって通常の位相の各元はB(S)の元からなる集合族の和集合であり、O(S)に属する。逆にSの各元とR自身は開集合であるから、B(S)の各元は開集合であり、O(S)の各元も開集合である。ゆえにO(S)は通常の位相に一致し、Sは通常の位相の準開基である。
S自身は通常の位相の開基ではない。Sの各元は、上に有界でないか、または下に有界でない。一方(0,1)は上にも下にも有界であるから、1/2∈S⊆(0,1)を満たすS∈Sは存在しない。ゆえに命題 1.2 (2)が成り立たない。
3 始位相と部分空間の開基
補題 3.1.Xを集合、{(Yλ,Oλ)}λ∈Λを位相空間の族、fλ:X→Yλ(λ∈Λ)を写像の族とし、Iを族(fλ)λ∈Λによる始位相とする。
- 各λ∈Λに対して、SλをOλの準開基とする。このときS′=⋃λ∈Λ{fλ−1(S)∣S∈Sλ}はIの準開基である。とくに、{fλ−1(V)∣λ∈Λ, V∈Oλ}はIの準開基である。
- Λが一元集合であり、その元に対応する写像をf:X→Yとする。BがYの開基ならば、{f−1(B)∣B∈B}はIの開基である。
証明.(1)を示す。S′が生成する位相をTと書く。各fλはIに関して連続であるから、S′⊆Iであり、定理 2.2によりT⊆Iである。一方、Sλの各元のfλによる逆像はTに属するから、命題 2.5 (2)により各fλ:(X,T)→Yλは連続である。§E2.12 命題 3.3 (2)によりI⊆Tであり、T=Iである。Sλ=Oλとすれば、最後の主張も従う。
(2)を示す。§E2.12 補題 3.6によりIの各元はYの開集合Vによるf−1(V)の形である。VはBの元からなる集合族の和集合であり、逆像は任意和を保つから、f−1(V)は{f−1(B)∣B∈B}の元からなる集合族の和集合である。ゆえにこの集合族はIの開基である。▨
命題 3.2.(X,O)を位相空間、A⊆Xとする。BがOの開基ならば、BA={B∩A∣B∈B}はAの部分空間位相の開基である。
証明. 包含写像ιA:A→Xに対してιA−1(B)=B∩Aである。部分空間位相はιAによる始位相であるから、補題 3.1 (2)によりBAはその開基である。▨
系 3.3.Sを集合Xの部分集合からなる集合族とし、O(S)をSが生成する位相とする。A⊆Xに対してSA={S∩A∣S∈S}とおくと、SAが生成するAの位相はO(S)の部分空間位相に一致する。
証明.Sが生成する位相はO(S)であり、S∈Sに対してιA−1(S)=S∩Aであるから、SA={ιA−1(S)∣S∈S}である。§E2.12 命題 4.3により部分空間位相はιAによる始位相であるから、補題 3.1 (1)によりSAが生成する位相は部分空間位相に一致する。▨
4 近傍基と第一可算性
定義 4.1 (近傍基、可算近傍基、第一可算).(X,O)を位相空間、x∈Xとし、NO(x)をxの近傍系とする。部分集合族Bx⊆NO(x)がxの 近傍基 (neighborhood base) であるとは、任意のV∈NO(x)に対してB⊆Vを満たすB∈Bxが存在することをいう。
xの近傍からなる列(Vn)n∈N≥1が、任意のV∈NO(x)に対してVn⊆Vを満たす正の整数nをもつとき、(Vn)n∈N≥1をxの 可算近傍基 (countable neighborhood base) という。Xの各点が可算近傍基をもつとき、Xは 第一可算 (first countable) であるという。
命題 4.2.(X,d)を距離空間とし、Xにdが定める位相Odを入れる。このときXは第一可算である。
証明.x∈Xをとり、各正の整数nに対してVn=B(x,1/n)とおくと、各Vnはxを含む開集合であるからxの近傍である。Vをxの任意の近傍とすると、§E2.11 命題 6.3によりB(x,ε)⊆Vを満たす実数ε>0が存在する。§D1.4 系 2.2により1/n<εを満たす正の整数nが存在し、このnについてVn⊆B(x,ε)⊆Vとなる。したがって(Vn)n∈N≥1はxの可算近傍基である。xは任意であったからXは第一可算である。▨
補題 4.3. 位相空間(X,O)の点xが可算近傍基をもつならば、xは、すべての正の整数nについてWn+1⊆Wnを満たす可算近傍基(Wn)n∈N≥1をもつ。
証明.(Vn)n∈N≥1をxの可算近傍基とし、Wn=⋂k=1nVkと定める。§E2.11 補題 6.6により割り当てy↦NO(y)は近傍系の公理を満たすから、§E2.11 定義 6.5 条件 (d)をn−1回用いると、各Wnはxの近傍である。定義からWn+1⊆Wnである。V∈NO(x)をとると、Vm⊆Vを満たす正の整数mが存在し、Wm⊆Vm⊆Vとなる。したがって(Wn)n∈N≥1はxの可算近傍基である。▨
5 第二可算性
定義 5.1 (第二可算). 位相空間(X,O)が 第二可算 (second countable) であるとは、Oの開基であって高々可算なものが存在することをいう。
例 5.2. 通常の位相を入れたRは第二可算である。有理数の組(p,q)に対してI(p,q)={t∈R∣p<t<q}とおき、B={I(p,q)∣(p,q)∈Q×Q}とする。I(p,q)はp<qのときは開区間であり、p≥qのときは空集合であるから、いずれの場合も開集合である。§E1.18 定理 4.1と§E1.18 定理 5.2によりQ×Qは高々可算であり、Bは写像(p,q)↦I(p,q)によるQ×Qの像であるから、§E1.18 補題 3.5により高々可算である。Uを開集合、x∈Uとすると、§E2.2 定義 1.1によりある実数ε>0に対して(x−ε,x+ε)⊆Uである。§D1.4 系 2.2によりx−ε<p<xを満たす有理数pとx<q<x+εを満たす有理数qをとることができ、x∈I(p,q)⊆Uである。ゆえに命題 1.2によりBは通常の位相の開基である。
非可算集合Xの離散位相は第二可算でない。Bを離散位相の開基とする。各x∈Xに対して{x}は開集合であるから、命題 1.2によりx∈B⊆{x}を満たすB∈Bが存在し、このBは{x}に等しい。したがってXの一点集合はすべてBに属する。Xの一点x0を固定し、写像h:B→Xを、Bが一点集合{x}であるときはh(B)=x、そうでないときはh(B)=x0と定めると、hは全射である。Bが高々可算であるとすると、§E1.18 補題 3.5によりX=h(B)は高々可算となり、Xが非可算であることに反する。ゆえにBは高々可算でない。
命題 5.3. 第二可算な位相空間は第一可算である。
証明.(X,O)を第二可算な位相空間とし、高々可算な開基Bをとる。x∈Xを固定する。Xはxを含む開集合であるから、命題 1.2によりx∈B⊆Xを満たすB∈Bが存在し、とくにBは空でない。§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Bが存在する。各正の整数nに対して、x∈e(n)ならばVn=e(n)、そうでなければVn=Xと定める。Vnはxを含む開集合であるからxの近傍である。
Vをxの近傍とする。§E2.11 定義 6.1によりx∈U⊆Vを満たす開集合Uが存在し、命題 1.2によりx∈B⊆Uを満たすB∈Bが存在する。eは全射であるからe(n)=Bを満たす正の整数nが存在し、x∈e(n)であるからVn=B⊆U⊆Vである。ゆえに(Vn)n∈N≥1はxの可算近傍基である。xは任意であったからXは第一可算である。▨
命題 5.4.(X,O)を第二可算な位相空間とし、U⊆Oとする。Uのどの元も空でなく、Uの相異なる二元U,U′がつねにU∩U′=∅を満たすならば、Uは高々可算である。
証明.U=∅ならばUは有限であるから高々可算である。以下U=∅とし、高々可算な開基Bをとり、Uの元U0をとる。U0は空でないからx0∈U0をとると、命題 1.2によりx0∈B⊆U0を満たすB∈Bが存在し、とくにBは空でない。§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Bが存在する。
U∈Uをとる。Uは空でないからx∈Uをとると、命題 1.2によりx∈B⊆Uを満たすB∈Bが存在する。このBはxを含むので空でない。eは全射であるからe(n)=Bを満たす正の整数nが存在し、このnはe(n)=∅とe(n)⊆Uをともに満たす。したがって、e(n)=∅かつe(n)⊆Uを満たす正の整数nの全体は空でなく、そのうち最小のものをν(U)と定めることができる。この定め方はUの各元に対して一意であるから、写像ν:U→N≥1が得られる。
U,U′∈Uがν(U)=ν(U′)を満たすとし、n=ν(U)=ν(U′)とおく。νの定め方によりe(n)=∅、e(n)⊆U、e(n)⊆U′であるからU∩U′=∅であり、Uの相異なる二元が交わらないという仮定によりU=U′である。ゆえにνは単射である。包含写像N≥1→Z≥0は単射であるから、νとこの包含写像の合成はUからZ≥0への単射であり、Uは高々可算である。▨
補題 5.6.(X,O)を位相空間とする。∣B∣=κを満たすOの開基Bが存在するような基数κの全体は空でない集合であり、最小元をもつ。
証明.Oの各元は自身一つからなる集合族の和集合であるから、OはOの開基である。§E1.21 定理 2.2 (1)により基数κ0=∣O∣が定まり、κ0は問題の性質をもつ。
BをOの開基とするとB⊆Oであり、包含写像は単射であるから、§E1.21 命題 2.5 (1)により順序数として∣B∣≤κ0である。すなわち∣B∣∈κ0または∣B∣=κ0であるから、問題の基数はすべて集合κ0∪{κ0}に属する。ゆえに問題の基数の全体はκ0∪{κ0}から分出される集合であり、κ0を元にもつので空でない。
§E1.21 定義 1.1により基数は順序数であるから、§E1.16 命題 2.5 (3)によりこの集合は∈による比較について整列される。整列された集合の空でない部分集合は最小元をもつから、この集合自身が最小元をもつ。▨
定義 5.7 (重み).(X,O)を位相空間とする。補題 5.6が与える最小の基数、すなわち∣B∣=κを満たすOの開基Bが存在するような基数κのうち最小のものを、Xの 重み (weight) といい、w(X)と書く。
命題 5.8. 位相空間Xが第二可算であることと、w(X)≤ℵ0が成り立つこととは同値である。
証明. まず、集合Aについて、Aが高々可算であることと∣A∣≤ℵ0が成り立つこととが同値であることを見る。§E1.16 命題 4.9によりN≥0=ωであり、§E1.21 定義 4.1により記号ℵ0はωそのものを指す。§E1.21 命題 1.3によりωは基数であるから、§E1.21 定理 2.2 (3)により∣N≥0∣=ω=ℵ0である。§E1.18 定理 3.3 (1)によりAが高々可算であることは単射A→N≥0が存在することと同値であり、§E1.21 命題 2.5 (1)によりこれは∣A∣≤ℵ0と同値である。
Xが第二可算であるとする。高々可算な開基Bをとると、いま見たことにより∣B∣≤ℵ0である。w(X)は∣B∣を元にもつ集合の最小元であるからw(X)≤∣B∣≤ℵ0である。
逆にw(X)≤ℵ0とする。定義 5.7により∣B∣=w(X)を満たすOの開基Bが存在し、∣B∣≤ℵ0であるから、いま見たことによりBは高々可算である。ゆえにXは第二可算である。▨
第二可算性は、開被覆から高々可算な部分被覆を取り出す議論にも用いられる。被覆に関する可算性は後続の記事が扱う。第二可算性はまた、分離公理と組み合わせることで、位相を生成する距離の存在を保証する定理の仮定である。
補題 5.10.(X,d)をコンパクト距離空間とし、Xに距離から生じる位相を入れる。このとき、Xは濃度がℵ0以下である開基をもつ。
証明. 各正整数nに対して、半径1/nの開球全体はXの開被覆である。(X,d)はコンパクト距離空間であるから、有限集合Fn⊂Xが存在して、
{B(a,1/n)∣a∈Fn}はXの開被覆となる。B=⋃n≥1{B(a,1/n)∣a∈Fn}とおくと、各Fnは有限であるからBは高々可算である。
Uを開集合、x∈Uとする。あるε>0についてB(x,ε)⊆Uである。2/n<εを満たす正整数nを取り、x∈B(a,1/n)を満たすa∈Fnを取る。y∈B(a,1/n)ならば三角不等式からd(x,y)<2/n<εである。よってx∈B(a,1/n)⊆Uであり、Bは開基である。▨
補題 5.11.κを無限基数、Xを濃度がκ以下である開基をもつ位相空間とする。Xの任意の開被覆は、濃度がκ以下である添字集合をもつ部分被覆をもつ。
証明.Bを∣B∣≤κを満たす開基とし、(Ui)i∈IをXの開被覆とする。B0={B∈B∣B⊆Ui となる i∈I が存在する}とおく。各B∈B0に対してB⊆Ui(B)を満たす添字i(B)を一つとる。
任意のx∈Xに対して、あるi∈IとB∈Bが存在してx∈B⊆Uiとなる。このBはB0に属し、x∈B⊆Ui(B)である。したがって(Ui)i∈{i(B):B∈B0}は部分被覆であり、添字集合の濃度は∣B0∣≤κ以下である。▨
6 可分性
定義 6.1 (可分空間). 位相空間Xが 可分空間 (separable space) であるとは、Xで稠密な高々可算部分集合が存在することをいう。
定理 6.2. 第二可算な位相空間は可分空間である。
証明.(X,O)を第二可算な位相空間とする。X=∅ならば∅はXで稠密であるからXは可分空間である。以下X=∅とし、高々可算な開基Bをとり、z∈Xを固定する。Xはzを含む開集合であるから、命題 1.2によりBは空でなく、§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Bが存在する。各正の整数nに対して、e(n)=∅ならばAn=e(n)、そうでなければAn={z}と定めると、各Anは空でない。各nについてxn∈Anを選ぶ。包含写像N≥1→Z≥0は単射であるからN≥1は高々可算であり、n↦xnの像D={xn∣n∈N≥1}は§E1.18 補題 3.5により高々可算である。
UをXの空でない開集合とし、x∈Uをとる。命題 1.2によりx∈B⊆Uを満たすB∈Bが存在する。eは全射であるからe(n)=Bを満たす正の整数nが存在し、Bはxを含むので空でない。したがってAn=Bであり、xn∈B⊆UであるからU∩D=∅である。ゆえに§E2.11 命題 2.9によりDはXで稠密であり、Xは可分空間である。▨
定理 6.4.(X,d)を距離空間とし、Xにdが定める位相Odを入れる。Xが可分空間ならばXは第二可算である。
証明.D⊆XをXで稠密な高々可算部分集合とする。a∈Dとq∈Qに対して、q>0ならばφ(a,q)=B(a,q)、そうでなければφ(a,q)=∅と定め、B=φ(D×Q)とおく。§E2.2 補題 1.2により開球は開集合であるから、Bの各元は開集合である。§E1.18 定理 4.1と§E1.18 定理 5.2によりD×Qは高々可算であり、§E1.18 補題 3.5によりBは高々可算である。
Uを開集合、x∈Uとする。§E2.2 定義 1.1によりある実数ε>0に対してB(x,ε)⊆Uである。B(x,ε/3)は空でない開集合であるから、§E2.11 命題 2.9によりa∈D∩B(x,ε/3)をとることができる。2d(x,a)<2ε/3<εであるからd(x,a)<ε−d(x,a)であり、§D1.4 系 2.2によりd(x,a)<q<ε−d(x,a)を満たす有理数qが存在する。q>d(x,a)≥0であるからq>0であり、φ(a,q)=B(a,q)はBに属する。d(a,x)<qからx∈B(a,q)であり、y∈B(a,q)ならば三角不等式によりd(x,y)≤d(x,a)+d(a,y)<d(x,a)+q<εであるからB(a,q)⊆B(x,ε)⊆Uである。ゆえにx∈B(a,q)⊆Uであり、命題 1.2によりBはOdの開基である。Bは高々可算であるからXは第二可算である。▨
系 6.5. 距離空間が可分空間であることと第二可算であることは同値である。
命題 6.6.Xを可分空間、Yを位相空間とし、f:X→Yを連続な全射とする。このときYは可分空間である。
証明.D⊆XをXで稠密な高々可算部分集合とする。§E1.18 補題 3.5によりf(D)は高々可算である。WをYの空でない開集合とする。fは連続であるからf−1(W)はXの開集合であり、fは全射であるからf−1(W)=∅である。§E2.11 命題 2.9によりf−1(W)∩D=∅であるから、z∈f−1(W)∩Dをとるとf(z)∈W∩f(D)であり、W∩f(D)=∅である。ゆえに§E2.11 命題 2.9によりf(D)はYで稠密であり、Yは可分空間である。▨
定義 6.7 (特定点位相).Xを集合、p∈Xとし、Op={∅}∪{U⊆X∣p∈U}とおく。命題 6.8によりOpはXの位相であり、これをpによる 特定点位相 (particular point topology) という。
命題 6.8.Xを集合、p∈Xとすると、定義 6.7のOpはXの位相である。
証明.∅∈Opであり、p∈XであるからX∈Opである。Opの元からなる集合族の和集合は、空でない項をもつならばpを含むのでOpに属し、空でない項をもたないならば∅であってOpに属する。正の整数nとU1,…,Un∈Opに対して、いずれかのUiが∅ならば⋂i=1nUi=∅∈Opであり、すべてのUiがpを含むならば⋂i=1nUiもpを含むのでOpに属する。ゆえに§E2.11 定義 1.1の三つの公理が成り立つ。▨
命題 6.9.Xを非可算集合、p∈Xとし、Xにpによる特定点位相を入れる。このときXは可分空間であるが第二可算でない。
証明. 特定点位相の空でない元はすべてpを含むから、Xの空でない任意の開集合は{p}と交わる。§E2.11 命題 2.9により{p}はXで稠密であり、{p}は有限であるからXは可分空間である。
Bを特定点位相の開基とする。x∈X∖{p}に対して{p,x}は開集合であるから、命題 1.2によりx∈B⊆{p,x}を満たすB∈Bが存在する。Bは空でない開集合であるからp∈Bであり、B={p,x}である。したがって、X∖{p}の各点xについて{p,x}∈Bである。写像h:B→Xを、Bがpとp以外のちょうど一つの点xからなるときはh(B)=x、そうでないときはh(B)=pと定めると、h(B)はX∖{p}を含む。Bが高々可算であるとすると、§E1.18 補題 3.5によりh(B)は高々可算であり、§E1.18 定理 5.1によりX=h(B)∪{p}も高々可算となる。これはXが非可算であることに反する。ゆえにBは高々可算でなく、Xは第二可算でない。▨
系 6.10.Xを非可算集合、p∈Xとする。X上のどの距離dについても、dが定める位相Odはpによる特定点位相と一致しない。
証明.X上の距離dについてOdがpによる特定点位相に一致すると仮定する。命題 6.9によりXは可分空間であるから、定理 6.4によりXは第二可算である。これは命題 6.9の述べるXが第二可算でないことと両立しない。▨
7 点列による判定
定義 7.1 (位相収束).(X,O)を位相空間とし、(xn)n∈N≥1をXの点列、x∈Xとする。任意のV∈NO(x)に対して、ある正の整数Nが存在して、n≥Nを満たすすべての正の整数nについてxn∈Vが成り立つとき、(xn)n∈N≥1はxに 位相収束 (topological convergence) するといい、xn→xと書く。
命題 7.2.(X,d)を距離空間とし、Xにdが定める位相Odを入れる。Xの点列(xn)n∈N≥1と点x∈Xについて、§E2.3 定義 1.1で定める距離収束xn→xと、位相収束xn→xは同値である。
証明. 距離による意味でxn→xであると仮定し、V∈NOd(x)をとる。§E2.11 命題 6.3によりB(x,ε)⊆Vを満たす実数ε>0が存在する。距離による収束から、ある正の整数Nが存在して、n≥Nならばd(xn,x)<εである。このときxn∈B(x,ε)⊆Vである。
位相による意味でxn→xであると仮定し、実数ε>0をとる。B(x,ε)はxを含む開集合であるからxの近傍であり、ある正の整数Nが存在して、n≥Nならばxn∈B(x,ε)である。このときd(xn,x)<εである。▨
定理 7.4.(X,O)を第一可算な位相空間、A⊆X、x∈Xとする。次の二条件は同値である。
- x∈Aである。
- Aの点からなる点列(an)n∈N≥1でan→xを満たすものが存在する。
証明.(2)⇒(1)を示す。Aの点からなる点列(an)n∈N≥1がan→xを満たすとし、V∈NO(x)をとる。位相収束の定義により、ある正の整数Nが存在してaN∈Vである。aN∈AでもあるからV∩A=∅であり、§E2.11 命題 7.2 (2)によりx∈Aである。
(1)⇒(2)を示す。x∈Aとする。第一可算性と補題 4.3により、xはWn+1⊆Wnを満たす可算近傍基(Wn)n∈N≥1をもつ。§E2.11 命題 7.2 (2)により、各正の整数nについてA∩Wn=∅である。各nについてan∈A∩Wnを選ぶ。
V∈NO(x)をとると、近傍基の定義によりWm⊆Vを満たす正の整数mが存在する。n≥mならばan∈Wn⊆Wm⊆Vであるからan→xである。▨
定理 7.6.Xを第一可算な位相空間、Yを位相空間とし、f:X→Yを写像とする。次の二条件は同値である。
- fは連続である。
- Xの任意の点列(xn)n∈N≥1と任意のx∈Xに対して、xn→xならばf(xn)→f(x)である。
証明.(1)⇒(2)を示す。fが連続であるとし、xn→xとする。Vをf(x)の近傍とすると、§E2.11 定義 6.1によりf(x)∈W⊆Vを満たすYの開集合Wが存在する。f−1(W)はxを含む開集合であるからxの近傍であり、ある正の整数Nが存在して、n≥Nならばxn∈f−1(W)である。このときf(xn)∈W⊆Vであるからf(xn)→f(x)である。
(2)⇒(1)を示す。(2)を仮定し、fが連続でないとする。Yのある開集合Vに対してf−1(V)は開集合でない。§E2.11 命題 2.5 (2)によりint(f−1(V))=f−1(V)であり、int(f−1(V))⊆f−1(V)であるから、x∈f−1(V)∖int(f−1(V))を満たすxが存在する。§E2.11 命題 2.5 (3)によりX∖int(f−1(V))=X∖f−1(V)であるからx∈X∖f−1(V)である。定理 7.4により、X∖f−1(V)の点からなる点列(xn)n∈N≥1でxn→xを満たすものが存在する。
仮定によりf(xn)→f(x)である。x∈f−1(V)からf(x)∈Vであり、Vはf(x)を含む開集合であるからf(x)の近傍である。ゆえに、ある正の整数Nが存在してf(xN)∈V、すなわちxN∈f−1(V)である。一方、点列のとり方によりxN∈X∖f−1(V)である。二つは両立しないから、fは連続である。▨
8 演習
問題 8.1 (半開区間の族が生成する位相).a<bを満たす実数a,bに対して[a,b)={t∈R∣a≤t<b}とおき、B={[a,b)∣a,b∈R, a<b}とする。Bが命題 1.3の仮定を満たすことを示し、命題 1.3の位相OBがRの通常の位相より真に細かいこと、すなわち通常の位相がOBに含まれ、両者が一致しないことを示せ。
解答.
実数aに対してa∈[a,a+1)であるから⋃B=Rである。[a1,b1),[a2,b2)∈Bとx∈[a1,b1)∩[a2,b2)をとり、a=max{a1,a2}、b=min{b1,b2}とおく。実数tが[a1,b1)∩[a2,b2)に属することとa≤t<bが成り立つことは同値であるから、[a1,b1)∩[a2,b2)=[a,b)である。xはこの集合に属するのでa≤x<bであり、とくにa<bであるから[a,b)∈Bである。ゆえにx∈[a,b)⊆[a1,b1)∩[a2,b2)であり、Bは命題 1.3の仮定を満たす。したがってOBはRの位相であり、Bはその開基である。
Uを通常の位相の開集合とし、BU={B∈B∣B⊆U}とおく。BUの各元はUに含まれるので⋃BU⊆Uである。x∈Uをとると、§E2.2 定義 1.1によりある実数ε>0に対して(x−ε,x+ε)⊆Uであり、[x,x+ε)⊆(x−ε,x+ε)⊆Uであるから[x,x+ε)∈BUであってx∈⋃BUである。よってU=⋃BUであり、UはOBに属する。Uは任意であったから、通常の位相はOBに含まれる。
[0,1)はBの元であるからOBに属する。[0,1)が通常の位相の開集合であるとすると、§E2.2 定義 1.1によりある実数ε>0に対して(−ε,ε)⊆[0,1)であるが、−ε/2は(−ε,ε)に属し[0,1)に属さない。ゆえに[0,1)は通常の位相の開集合でなく、通常の位相はOBに一致しない。§E2.11 定義 1.10によりOBは通常の位相より真に細かい。▨
問題 8.2 (R2の第二可算性).R2の通常の距離から生じる位相が第二可算であることを示せ。
解答.
§E1.18 定理 4.1と§E1.18 定理 5.2によりQ×Qは高々可算である。UをR2の空でない開集合とし、x=(x1,x2)∈Uをとる。§E2.2 定義 1.1によりある実数ε>0に対してB(x,ε)⊆Uである。§D1.4 系 2.2により、i=1,2について∣xi−pi∣<ε/2を満たす有理数piをとることができる。p=(p1,p2)とおくと
d(x,p)=(x1−p1)2+(x2−p2)2≤∣x1−p1∣+∣x2−p2∣<εであるからp∈B(x,ε)⊆Uであり、U∩(Q×Q)=∅である。ゆえに§E2.11 命題 2.9によりQ×QはR2で稠密であり、R2は可分空間である。したがって定理 6.4によりR2の位相は第二可算である。▨
問題 8.3 (特定点位相の第一可算性).Xを集合、p∈Xとし、Xにpによる特定点位相を入れる。Xが第一可算であることを示せ。
解答.
{p}はpを含む開集合であるからpの近傍であり、pの任意の近傍はpを含むので{p}を含む。ゆえに定値列Vn={p}はpの可算近傍基である。
x∈X∖{p}をとる。{p,x}はxを含む開集合であるからxの近傍である。Vをxの近傍とすると、x∈U⊆Vを満たす開集合Uが存在する。Uは空でないからp∈Uであり、{p,x}⊆U⊆Vである。ゆえに定値列Vn={p,x}はxの可算近傍基である。
したがってXの各点は可算近傍基をもち、Xは第一可算である。▨