§E2.31Arzelà–Ascoli の定理

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コンパクト位相空間XXから距離空間YYへの連続写像の全体C(X,Y)C(X,Y)には、一様距離を入れることで距離空間の構造を与えることができる。この距離空間において、各点での値の広がりを抑えるだけでは、部分集合が一様距離に関して全有界であることを保証することができない。変数のわずかな変化に対して写像の値がどれだけ変化するかを、部分集合を構成するすべての写像にわたって一様に制御する性質を、同程度連続性という。同程度連続性は、コンパクトな定義域をもつ写像空間において全有界性やコンパクト性を特徴づける基本的な性質の一つであり、写像の列から一様収束する部分列を取り出すための仮定として、解析学において広く用いられる。たとえば、定義域が距離空間である場合には、一様に Lipschitz 条件を満たす写像の族は同程度連続である。本記事では、Arzelà–Ascoli の定理とその関連する結果について解説する。

1 同程度連続性

定義 1.1 (位相空間における同程度連続性).XXを位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間、F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合、x∈Xx\in Xとする。F\mathcal{F}が点xxにおいて同程度連続 (equicontinuous at a point) であるとは、任意のε>0\varepsilon>0に対してxxを含む開集合U⊆XU\subseteq Xが存在して、すべてのf∈Ff\in\mathcal{F}とすべてのx′∈Ux'\in Uに対してdY(f(x),f(x′))<εd_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)<\varepsilonが成り立つことをいう。F\mathcal{F}が同程度連続 (equicontinuous) であるとは、XXのすべての点においてF\mathcal{F}が同程度連続であることをいう。

定義 1.2 (一点における同程度連続性、同程度連続な族).(X,dX)(X,d_X)と(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間、F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合、x∈Xx\in Xとする。F\mathcal{F}が点xxにおいて同程度連続 (equicontinuous at a point) であるとは、

∀ε>0 ∃δ>0 ∀f∈F ∀x′∈X,dX(x,x′)<δ ⟹ dY(f(x),f(x′))<ε\forall\varepsilon>0\ \exists\delta>0\ \forall f\in\mathcal{F}\ \forall x'\in X, \qquad d_X(x,x')<\delta\ \Longrightarrow\ d_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)<\varepsilon

が成り立つことをいう。F\mathcal{F}が同程度連続 (equicontinuous) であるとは、XXのすべての点xxにおいてF\mathcal{F}が同程度連続であることをいう。

命題 1.3.(X,dX)(X,d_X)と(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とし、XXには距離dXd_Xから生じる位相を入れる。F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合、x∈Xx\in Xとする。F\mathcal{F}が定義 1.1で定めた開近傍による条件を点xxで満たすことと、定義 1.2で定めた距離による条件を点xxで満たすことは同値である。したがって、開近傍による同程度連続性と距離による同程度連続性も同値である。

証明.F\mathcal{F}が定義 1.2で定めた距離による条件を満たすとし、ε>0\varepsilon>0に対してδ>0\delta>0をその条件が与えるものとする。§E2.2 補題 1.2によりB(x,δ)B(x,\delta)はxxを含む開集合であり、x′∈B(x,δ)x'\in B(x,\delta)はdX(x,x′)<δd_X(x,x')<\deltaを満たすから、すべてのf∈Ff\in\mathcal{F}についてdY(f(x),f(x′))<εd_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)<\varepsilonである。

逆に、F\mathcal{F}が定義 1.1で定めた開近傍による条件を点xxで満たすとし、ε>0\varepsilon>0をとる。xxを含む開集合UUで、すべてのf∈Ff\in\mathcal{F}とx′∈Ux'\in UについてdY(f(x),f(x′))<εd_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)<\varepsilonを満たすものが存在する。§E2.2 定義 1.1によりB(x,δ)⊆UB(x,\delta)\subseteq Uを満たすδ>0\delta>0が存在し、dX(x,x′)<δd_X(x,x')<\deltaを満たすx′∈Xx'\in XはUUに属する。よって、このδ\deltaは定義 1.2で定めた距離による条件を満たす値である。

族についての二つの条件は、いずれもXXのすべての点における条件であるから、点ごとの同値から従う。▨

定義 1.4 (一様に同程度連続な族).(X,dX)(X,d_X)と(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間、F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合とする。F\mathcal{F}が一様に同程度連続 (uniformly equicontinuous) であるとは、

∀ε>0 ∃δ>0 ∀f∈F ∀x,x′∈X,dX(x,x′)<δ ⟹ dY(f(x),f(x′))<ε\forall\varepsilon>0\ \exists\delta>0\ \forall f\in\mathcal{F}\ \forall x,x'\in X, \qquad d_X(x,x')<\delta\ \Longrightarrow\ d_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)<\varepsilon

が成り立つことをいう。

命題 1.5.XXを位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間、F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合とする。F\mathcal{F}が同程度連続ならば、F\mathcal{F}の各元は連続写像であり、F⊆C(X,Y)\mathcal{F}\subseteq C(X,Y)が成り立つ。

証明.f∈Ff\in\mathcal{F}とYYの開集合VVをとる。x∈f−1(V)x\in f^{-1}(V)とする。f(x)∈Vf(x)\in Vと§E2.2 定義 1.1により、B(f(x),ε)⊆VB\bigl(f(x),\varepsilon\bigr)\subseteq Vを満たすε>0\varepsilon>0が存在する。定義 1.1により、xxを含む開集合UUで、すべてのg∈Fg\in\mathcal{F}とx′∈Ux'\in UについてdY(g(x),g(x′))<εd_Y\bigl(g(x),g(x')\bigr)<\varepsilonを満たすものが存在する。g=fg=fとするとf(U)⊆B(f(x),ε)⊆Vf(U)\subseteq B\bigl(f(x),\varepsilon\bigr)\subseteq Vであるから、x∈U⊆f−1(V)x\in U\subseteq f^{-1}(V)である。xxは任意であるから、§E2.11 補題 2.6によりf−1(V)f^{-1}(V)は開集合であり、§E2.12 定義 1.1によりffは連続である。▨

定理 1.6 (コンパクトな定義域における一様化).(X,dX)(X,d_X)をコンパクト距離空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とし、F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合とする。このとき、次の二条件は同値である。

  1. F\mathcal{F}は定義 1.2で定めた距離による同程度連続性をもつ。
  2. F\mathcal{F}は一様に同程度連続である。

証明. 2 を仮定し、x∈Xx\in Xとε>0\varepsilon>0をとる。定義 1.4で定めた条件が与えるδ>0\delta>0は、固定したxxにおいて定義 1.2で定めた距離による条件を満たす。xxは任意であるから 1 が成り立つ。

1 を仮定する。X=∅X=\emptysetならば、任意のδ>0\delta>0が 2 の条件を満たす。以下ではX≠∅X\ne\emptysetとし、ε>0\varepsilon>0をとる。集合

Λ={(a,r)∈X×R ∣ r>0,∀f∈F ∀z∈X,dX(a,z)<2r⇒dY(f(a),f(z))<ε2}\Lambda=\Bigl\{(a,r)\in X\times\mathbb{R}\ \Bigm|\ r>0, \forall f\in\mathcal{F}\ \forall z\in X, d_X(a,z)<2r\Rightarrow d_Y(f(a),f(z))<\frac{\varepsilon}{2}\Bigr\}

を定める。同程度連続性により、各a∈Xa\in Xはある(a,r)∈Λ(a,r)\in\Lambdaに対してB(a,r)B(a,r)に属する。§E2.2 補題 1.2により各B(a,r)B(a,r)は開集合であるから、{B(a,r)}(a,r)∈Λ\{B(a,r)\}_{(a,r)\in\Lambda}はXXの開被覆である。

§E2.19 定義 2.1により、有限個の(ai,ri)∈Λ(a_i,r_i)\in\Lambda、1≤i≤n1\le i\le nで

X=⋃i=1nB(ai,ri)X=\bigcup_{i=1}^{n}B(a_i,r_i)

を満たすものが存在する。δ=min⁡1≤i≤nri>0\delta=\min_{1\le i\le n}r_i>0とおく。f∈Ff\in\mathcal{F}とx,x′∈Xx,x'\in XがdX(x,x′)<δd_X(x,x')<\deltaを満たすとし、x∈B(ai,ri)x\in B(a_i,r_i)となるiiをとる。三角不等式から

dX(ai,x′)<ri+δ≤2rid_X(a_i,x')<r_i+\delta\le 2r_i

である。(ai,ri)∈Λ(a_i,r_i)\in\Lambdaであるから、

dY(f(x),f(x′))≤dY(f(x),f(ai))+dY(f(ai),f(x′))<ε2+ε2=εd_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr) \le d_Y\bigl(f(x),f(a_i)\bigr)+d_Y\bigl(f(a_i),f(x')\bigr) <\frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{2}=\varepsilon

である。よって 2 が成り立つ。▨

例 1.7 (各元の連続性と族の同程度連続性の違い).X=[0,1]X=[0,1]、Y=RY=\mathbb{R}とし、いずれにも通常の距離を入れる。n∈Z≥1n\in\mathbb{Z}_{\ge 1}に対して

gn(t)=tn,fn(t)=min⁡(1,nt)g_n(t)=\frac{t}{n},\qquad f_n(t)=\min(1,nt)

と定める。

族G={gn∣n≥1}\mathcal{G}=\{g_n\mid n\ge 1\}について、

∣gn(t)−gn(t′)∣≤∣t−t′∣|g_n(t)-g_n(t')|\le |t-t'|

がすべてのn,t,t′n,t,t'に対して成り立つ。したがって、ε>0\varepsilon>0に対してδ=ε\delta=\varepsilonとすれば、G\mathcal{G}は一様に同程度連続である。

各fnf_nはnn-Lipschitz であるから§E2.4 命題 3.4により連続である。しかし、族F={fn∣n≥1}\mathcal{F}=\{f_n\mid n\ge 1\}は点00において同程度連続でない。実際、ε=1/2\varepsilon=1/2とし、δ>0\delta>0を任意にとる。1/N<δ1/N<\deltaを満たすN≥1N\ge 1をとると、

∣0−1/N∣<δ,∣fN(0)−fN(1/N)∣=1>ε|0-1/N|<\delta,\qquad |f_N(0)-f_N(1/N)|=1>\varepsilon

である。したがって、族の各元が連続であることから族の同程度連続性は従わない。

2 各点像の全有界性

定義 2.1 (各点で全有界な族).XXを集合、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間、F\mathcal{F}をXXからYYへの写像からなる集合とする。x∈Xx\in Xに対して

F(x)={f(x)∣f∈F}⊆Y\mathcal{F}(x)=\{f(x)\mid f\in\mathcal{F}\}\subseteq Y

とおく。F\mathcal{F}が各点で全有界 (pointwise totally bounded) であるとは、すべてのx∈Xx\in XについてF(x)\mathcal{F}(x)がYYの部分集合として全有界性をもつことをいう。

補題 2.2 (Lipschitz 写像による全有界性の保存).(Z,dZ)(Z,d_Z)と(W,dW)(W,d_W)を距離空間、L>0L>0とし、写像φ:Z→W\varphi:Z\to Wが

dW(φ(z),φ(z′))≤LdZ(z,z′)d_W\bigl(\varphi(z),\varphi(z')\bigr)\le Ld_Z(z,z')

をすべてのz,z′∈Zz,z'\in Zに対して満たすとする。A⊆ZA\subseteq Zが全有界ならば、φ(A)\varphi(A)も全有界である。

証明.A=∅A=\emptysetならばφ(A)=∅\varphi(A)=\emptysetは全有界である。A≠∅A\ne\emptysetとし、ε>0\varepsilon>0をとる。§E2.8 定義 1.2により、有限個のa1,…,am∈Aa_1,\ldots,a_m\in Aで

A⊆⋃i=1mBdZ(ai,ε/L)A\subseteq\bigcup_{i=1}^{m}B_{d_Z}(a_i,\varepsilon/L)

を満たすものが存在する。a∈Aa\in Aとa∈B(ai,ε/L)a\in B(a_i,\varepsilon/L)を満たすiiに対して、

dW(φ(a),φ(ai))≤LdZ(a,ai)<εd_W\bigl(\varphi(a),\varphi(a_i)\bigr)\le Ld_Z(a,a_i)<\varepsilon

である。したがって、φ(a1),…,φ(am)\varphi(a_1),\ldots,\varphi(a_m)はφ(A)\varphi(A)の有限ε\varepsilon-網である。▨

補題 2.3 (実数の部分集合における有界性と全有界性).R\mathbb{R}に通常の距離を入れる。S⊆RS\subseteq\mathbb{R}が全有界であることと、SSが距離空間の有界性をもつことは同値である。

証明.SSが全有界ならば、§E2.8 命題 1.3によりSSは有界である。逆に、SSが有界であるとする。S=∅S=\emptysetならばSSは全有界である。S≠∅S\ne\emptysetならば、有界性が与えるa∈Ra\in\mathbb{R}とR>0R>0に対してM=∣a∣+RM=|a|+Rとおくと、S⊆B(a,R)⊆[−M,M]S\subseteq B(a,R)\subseteq[-M,M]である。ε>0\varepsilon>0をとり、2M/m<ε2M/m<\varepsilonを満たす正の整数mmをとる。0≤i≤m−10\le i\le m-1に対して

ci=−M+2Mm(i+12)c_i=-M+\frac{2M}{m}\Bigl(i+\frac12\Bigr)

と定めると、ci∈[−M,M]c_i\in[-M,M]である。x∈[−M,M]x\in[-M,M]に対して

2Mim≤x+M≤2M(i+1)m\frac{2Mi}{m}\le x+M\le\frac{2M(i+1)}{m}

を満たすi∈{0,1,…,m−1}i\in\{0,1,\ldots,m-1\}をとることができ、このとき∣x−ci∣≤M/m<ε|x-c_i|\le M/m<\varepsilonである。したがって、有限個の点c0,…,cm−1c_0,\ldots,c_{m-1}は[−M,M][-M,M]のε\varepsilon-網であり、§E2.8 定義 1.2により[−M,M][-M,M]は全有界である。よって、§E2.8 命題 3.1によりSSも全有界である。▨

3 全有界性の特徴づけ

定理 3.1 (Arzelà–Ascoli の定理).XXをコンパクト位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とする。C(X,Y)C(X,Y)に§E2.30 定義 2.5で定めた一様距離d∞d_\inftyを入れる。F⊆C(X,Y)\mathcal{F}\subseteq C(X,Y)について、次の二条件は同値である。

  1. F\mathcal{F}はd∞d_\inftyに関して全有界である。
  2. F\mathcal{F}は同程度連続であり、かつ各点で全有界である。

証明.X=∅X=\emptysetならばC(X,Y)C(X,Y)は一点集合であり、二条件はいずれも成り立つ。F=∅\mathcal{F}=\emptysetの場合にも、二条件はいずれも空虚に成り立つ。以下ではX≠∅X\ne\emptysetかつF≠∅\mathcal{F}\ne\emptysetとする。

1 を仮定し、x∈Xx\in Xを固定する。評価写像ex:C(X,Y)→Ye_x:C(X,Y)\to Y、ex(f)=f(x)e_x(f)=f(x)は

dY(ex(f),ex(g))≤d∞(f,g)d_Y\bigl(e_x(f),e_x(g)\bigr)\le d_\infty(f,g)

を満たす。補題 2.2によりex(F)=F(x)e_x(\mathcal{F})=\mathcal{F}(x)は全有界である。xxは任意であるから、F\mathcal{F}は各点で全有界である。

x0∈Xx_0\in Xとε>0\varepsilon>0をとる。全有界性により、有限個のf1,…,fm∈Ff_1,\ldots,f_m\in\mathcal{F}で

F⊆⋃i=1mBd∞(fi,ε/3)\mathcal{F}\subseteq\bigcup_{i=1}^{m}B_{d_\infty}(f_i,\varepsilon/3)

を満たすものが存在する。各iiについて

Vi=fi−1(B(fi(x0),ε/3))V_i=f_i^{-1}\bigl(B(f_i(x_0),\varepsilon/3)\bigr)

とおく。§E2.2 補題 1.2によりB(fi(x0),ε/3)B(f_i(x_0),\varepsilon/3)はYYの開集合であり、fif_iは連続であるから§E2.12 定義 1.1によりViV_iはXXの開集合であって、x0∈Vix_0\in V_iである。U=⋂i=1mViU=\bigcap_{i=1}^{m}V_iとおくと、§E2.11 定義 1.1によりUUは開集合でありx0x_0を含む。f∈Ff\in\mathcal{F}に対してd∞(f,fi)<ε/3d_\infty(f,f_i)<\varepsilon/3となるiiをとると、x′∈Ux'\in Uのとき

dY(f(x0),f(x′))≤dY(f(x0),fi(x0))+dY(fi(x0),fi(x′))+dY(fi(x′),f(x′))<εd_Y\bigl(f(x_0),f(x')\bigr) \le d_Y\bigl(f(x_0),f_i(x_0)\bigr)+d_Y\bigl(f_i(x_0),f_i(x')\bigr)+d_Y\bigl(f_i(x'),f(x')\bigr) <\varepsilon

である。定義 1.1によりF\mathcal{F}は点x0x_0において同程度連続である。x0x_0は任意であるから、F\mathcal{F}は同程度連続である。

2 を仮定し、ε>0\varepsilon>0をとる。集合

Λ={(a,U) ∣ a∈U, U⊆X は開集合, ∀f∈F ∀z∈U, dY(f(a),f(z))<ε4}(1)\Lambda=\Bigl\{(a,U)\ \Bigm|\ a\in U,\ U\subseteq X\text{ は開集合},\ \forall f\in\mathcal{F}\ \forall z\in U,\ d_Y\bigl(f(a),f(z)\bigr)<\frac{\varepsilon}{4}\Bigr\} \tag{1}

を定める。定義 1.1により、各a∈Xa\in Xはある(a,U)∈Λ(a,U)\in\LambdaのUUに属する。したがって{U∣∃a, (a,U)∈Λ}\{U\mid\exists a,\ (a,U)\in\Lambda\}はXXの開被覆であり、§E2.19 定義 2.1により有限個の(a1,U1),…,(an,Un)∈Λ(a_1,U_1),\ldots,(a_n,U_n)\in\Lambdaで

X=⋃i=1nUi(2)X=\bigcup_{i=1}^{n}U_i \tag{2}

を満たすものが存在する。

各F(ai)\mathcal{F}(a_i)は全有界であるから、有限個の点yi,1,…,yi,mi∈F(ai)y_{i,1},\ldots,y_{i,m_i}\in\mathcal{F}(a_i)で

F(ai)⊆⋃j=1miBdY(yi,j,ε/4)(3)\mathcal{F}(a_i)\subseteq\bigcup_{j=1}^{m_i}B_{d_Y}(y_{i,j},\varepsilon/4) \tag{3}

を満たすものをとる。f∈Ff\in\mathcal{F}とiiに対して、(3) を満たす添字の最小値をσi(f)\sigma_i(f)とし、

σ(f)=(σ1(f),…,σn(f))\sigma(f)=\bigl(\sigma_1(f),\ldots,\sigma_n(f)\bigr)

と定める。σ(F)\sigma(\mathcal{F})は有限集合∏i=1n{1,…,mi}\prod_{i=1}^{n}\{1,\ldots,m_i\}の部分集合である。各α∈σ(F)\alpha\in\sigma(\mathcal{F})についてσ(gα)=α\sigma(g_\alpha)=\alphaとなるgα∈Fg_\alpha\in\mathcal{F}を一つとる。

f∈Ff\in\mathcal{F}とし、α=σ(f)\alpha=\sigma(f)、g=gαg=g_\alphaとおく。各iiについて、(3) と三角不等式から

dY(f(ai),g(ai))<ε/2(4)d_Y\bigl(f(a_i),g(a_i)\bigr)<\varepsilon/2 \tag{4}

を得る。x∈Xx\in Xに対して、(2) によりx∈Uix\in U_iとなるiiをとる。(1) の条件を(ai,Ui)(a_i,U_i)とffおよびggへ適用し、(4) を用いると、

dY(f(x),g(x))≤dY(f(x),f(ai))+dY(f(ai),g(ai))+dY(g(ai),g(x))<ε4+ε2+ε4=εd_Y\bigl(f(x),g(x)\bigr) \le d_Y\bigl(f(x),f(a_i)\bigr)+d_Y\bigl(f(a_i),g(a_i)\bigr)+d_Y\bigl(g(a_i),g(x)\bigr) <\frac{\varepsilon}{4}+\frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{4}=\varepsilon

である。§E2.30 命題 2.4によりd∞(f,g)d_\infty(f,g)を与える最大点が存在し、その点にもこの評価を適用することができるから、d∞(f,g)<εd_\infty(f,g)<\varepsilonである。したがって、有限集合{gα∣α∈σ(F)}\{g_\alpha\mid\alpha\in\sigma(\mathcal{F})\}はF\mathcal{F}のε\varepsilon-網であり、1 が成り立つ。▨

例 3.2 (二つの仮定の独立性).X=[0,1]X=[0,1]、Y=RY=\mathbb{R}とし、通常の距離を入れる。§E2.9 定理 4.3によりXXはコンパクトである。

族F={fn∣n≥1}\mathcal{F}=\{f_n\mid n\ge1\}、fn(t)=min⁡(1,nt)f_n(t)=\min(1,nt)は例 1.7により距離について同程度連続でなく、命題 1.3により開近傍についても同程度連続でない。一方、0≤fn(t)≤10\le f_n(t)\le1であるから、補題 2.3により各F(t)\mathcal{F}(t)は全有界である。したがって、定理 3.1によりF\mathcal{F}は一様距離に関して全有界でない。

c∈Rc\in\mathbb{R}に対してhc(t)=ch_c(t)=cと定め、H={hc∣c∈R}\mathcal{H}=\{h_c\mid c\in\mathbb{R}\}とおく。各hch_cは定値写像であり、任意のε>0\varepsilon>0に対して任意のδ>0\delta>0が定義 1.4で定めた条件を満たすから、H\mathcal{H}は一様に同程度連続である。一方、各t∈[0,1]t\in[0,1]についてH(t)=R\mathcal{H}(t)=\mathbb{R}は全有界でない。したがって、定理 3.1 (2)が成り立たないから、H\mathcal{H}も一様距離に関して全有界でない。

4 値域の完備性

定義 4.1 (相対コンパクトな部分集合). 距離空間(Z,dZ)(Z,d_Z)の部分集合S⊆ZS\subseteq Zが相対コンパクト (relatively compact) であるとは、ZZにおける閉包S‾\overline{S}がコンパクトであることをいう。

補題 4.2 (完備距離空間における全有界性と相対コンパクト性).(Z,dZ)(Z,d_Z)を完備距離空間とする。S⊆ZS\subseteq Zが全有界であることと、SSが相対コンパクトであることは同値である。

証明.SSが全有界であるとする。§E2.8 命題 3.2によりS‾\overline{S}は全有界である。S‾\overline{S}は§E2.11 命題 2.5 (1)により完備距離空間ZZの閉部分集合であるから、§E2.5 定理 3.2により完備であり、§E2.9 系 3.3によりコンパクトである。したがってSSは相対コンパクトである。

SSが相対コンパクトであるとする。S‾\overline{S}はコンパクトであるから、§E2.9 系 3.3により全有界である。S⊆S‾S\subseteq\overline{S}であるから、§E2.8 命題 3.1によりSSも全有界である。▨

定義 4.3 (写像列の一様収束).XXをコンパクト位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とし、C(X,Y)C(X,Y)に一様距離d∞d_\inftyを入れる。点列(fn)n≥1(f_n)_{n\ge1}がf∈C(X,Y)f\in C(X,Y)へ一様収束する (converge uniformly) とは、(fn)(f_n)が距離空間(C(X,Y),d∞)(C(X,Y),d_\infty)においてffへ収束すること、すなわち

lim⁡n→∞d∞(fn,f)=0\lim_{n\to\infty}d_\infty(f_n,f)=0

が成り立つことをいう。

系 4.4 (完備な値域に対する Arzelà–Ascoli の定理).XXをコンパクト位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を完備距離空間とし、C(X,Y)C(X,Y)に一様距離d∞d_\inftyを入れる。F⊆C(X,Y)\mathcal{F}\subseteq C(X,Y)について、次の三条件は同値である。

  1. F‾\overline{\mathcal{F}}は(C(X,Y),d∞)(C(X,Y),d_\infty)のコンパクト部分集合である。
  2. F\mathcal{F}はd∞d_\inftyに関して全有界である。
  3. F\mathcal{F}は同程度連続であり、すべてのx∈Xx\in XについてF(x)\mathcal{F}(x)はYYの相対コンパクトな部分集合である。

証明.補題 4.2を完備距離空間YYの各部分集合F(x)\mathcal{F}(x)へ適用すると、条件 3 は「F\mathcal{F}が同程度連続であり、かつ各点で全有界である」ことと同値である。したがって、定理 3.1により 2 と 3 は同値である。

§E2.30 定理 2.10により(C(X,Y),d∞)(C(X,Y),d_\infty)は完備である。この空間で補題 4.2をF\mathcal{F}へ適用すると、1 と 2 が同値である。▨

系 4.5 (一様収束する部分列の存在).XXをコンパクト位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を完備距離空間とする。F⊆C(X,Y)\mathcal{F}\subseteq C(X,Y)が同程度連続であり、かつ各点で全有界であるならば、F\mathcal{F}の任意の点列(fn)n≥1(f_n)_{n\ge1}は、C(X,Y)C(X,Y)のある元へ一様収束する部分列をもつ。

証明.定理 3.1によりF\mathcal{F}は全有界である。§E2.8 定理 2.1により、(fn)(f_n)は一様距離に関する Cauchy 列である部分列(fnk)(f_{n_k})をもつ。§E2.30 定理 2.10によりC(X,Y)C(X,Y)は完備であるから、あるf∈C(X,Y)f\in C(X,Y)に対してd∞(fnk,f)→0d_\infty(f_{n_k},f)\to0となる。定義 4.3により、(fnk)(f_{n_k})はffへ一様収束する。▨

系 4.6 (値域の完備化における極限).XXをコンパクト位相空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とし、(Y^,d^,j)(\widehat{Y},\widehat d,j)をYYの完備化(§E2.6 定義 1.4)とする。C(X,Y)C(X,Y)とC(X,Y^)C(X,\widehat Y)にそれぞれ一様距離d∞d_\inftyとd^∞\widehat d_\inftyを入れ、

Φ:C(X,Y)→C(X,Y^),Φ(f)=j∘f\Phi:C(X,Y)\to C(X,\widehat Y),\qquad \Phi(f)=j\circ f

と定める。F⊆C(X,Y)\mathcal{F}\subseteq C(X,Y)に対し、F^=Φ(F)‾\widehat{\mathcal{F}}=\overline{\Phi(\mathcal{F})}とおく。このとき、次が成り立つ。

  1. Φ\Phiは等長写像である。
  2. Φ∣F:F→F^\Phi|_{\mathcal{F}}:\mathcal{F}\to\widehat{\mathcal{F}}は距離空間F\mathcal{F}の完備化である。
  3. F\mathcal{F}が全有界であること、F\mathcal{F}が同程度連続かつ各点で全有界であること、およびF^\widehat{\mathcal{F}}がコンパクトであることは同値である。
  4. 3 の条件が成り立つとき、F\mathcal{F}の任意の点列(fn)(f_n)は、あるg∈F^g\in\widehat{\mathcal{F}}へ一様収束する像の部分列(Φ(fnk))(\Phi(f_{n_k}))をもつ。

証明.jjは等長写像であるから 1-Lipschitz であり、§E2.4 命題 3.4により連続である。§E2.12 注意 1.2により、この連続性はdYd_Yとd^\widehat dが定める位相に関する連続性に一致する。したがって、§E2.12 命題 1.10によりΦ(f)=j∘f\Phi(f)=j\circ fは連続である。X=∅X=\emptysetの場合には二つの一様距離はいずれも恒等的に00である。X≠∅X\ne\emptysetの場合には、f,g∈C(X,Y)f,g\in C(X,Y)に対して

d^∞(Φ(f),Φ(g))=max⁡x∈Xd^(j(f(x)),j(g(x)))=max⁡x∈XdY(f(x),g(x))=d∞(f,g)\widehat d_\infty\bigl(\Phi(f),\Phi(g)\bigr) =\max_{x\in X}\widehat d\bigl(j(f(x)),j(g(x))\bigr) =\max_{x\in X}d_Y\bigl(f(x),g(x)\bigr) =d_\infty(f,g)

である。よって 1 が成り立つ。

Y^\widehat Yは完備であるから、§E2.30 定理 2.10によりC(X,Y^)C(X,\widehat Y)は完備である。F^\widehat{\mathcal{F}}は§E2.11 命題 2.5 (1)により閉部分集合であるから、§E2.5 定理 3.2により完備である。1 によりΦ∣F\Phi|_{\mathcal{F}}は等長写像であり、F^\widehat{\mathcal{F}}の定義により像Φ(F)\Phi(\mathcal{F})はF^\widehat{\mathcal{F}}で稠密である。したがって、§E2.6 定義 1.4の三条件が成り立ち、2 を得る。

2 と§E2.8 命題 3.3により、F\mathcal{F}が全有界であることとF^\widehat{\mathcal{F}}が全有界であることは同値である。F^\widehat{\mathcal{F}}は完備であるから、§E2.9 系 3.3により後者はF^\widehat{\mathcal{F}}のコンパクト性と同値である。さらに、定理 3.1によりF\mathcal{F}の全有界性は同程度連続性と各点における全有界性に同値である。以上から 3 が従う。

3 を仮定する。§E2.8 定理 2.1により、任意の点列(fn)(f_n)はF\mathcal{F}における Cauchy 部分列(fnk)(f_{n_k})をもつ。1 により(Φ(fnk))(\Phi(f_{n_k}))も Cauchy 列であり、F^\widehat{\mathcal{F}}の完備性と像の包含から、あるg∈F^g\in\widehat{\mathcal{F}}へ収束する。定義 4.3により、この収束は一様収束である。▨

例 4.7 (極限が値域の完備化にだけ存在する族).X=[0,1]X=[0,1]、Y=(0,1]Y=(0,1]とし、R\mathbb{R}からの制限距離を入れる。n≥1n\ge1に対して

fn(t)=t+1n+1,F={fn∣n≥1}f_n(t)=\frac{t+1}{n+1},\qquad \mathcal{F}=\{f_n\mid n\ge1\}

とおく。0<fn(t)≤10<f_n(t)\le1であるからfnf_nはYYへ値をとり、

∣fn(t)−fn(t′)∣≤∣t−t′∣|f_n(t)-f_n(t')|\le |t-t'|

であるから、§E2.4 命題 3.4により連続である。同じ評価によりF\mathcal{F}は一様に同程度連続であり、とくに距離について同程度連続である。したがって、命題 1.3により開近傍についても同程度連続である。また、各t∈[0,1]t\in[0,1]についてF(t)⊆(0,1]\mathcal{F}(t)\subseteq(0,1]は有界であり、補題 2.3により全有界である。したがって、定理 3.1によりF\mathcal{F}は全有界である。

点列(fn)(f_n)のどの部分列もC(X,Y)C(X,Y)の元へ一様収束しない。実際、(fnk)(f_{n_k})がf∈C(X,Y)f\in C(X,Y)へ一様収束したならば、各t∈[0,1]t\in[0,1]においてfnk(t)→f(t)f_{n_k}(t)\to f(t)である。一方、0<fnk(t)≤2/(nk+1)→00<f_{n_k}(t)\le2/(n_k+1)\to0であるから、§E2.3 命題 1.3によりf(t)=0f(t)=0となり、f(t)∈(0,1]f(t)\in(0,1]に反する。

§E2.5 命題 4.2によりR\mathbb{R}は完備であり、[0,1][0,1]はR\mathbb{R}の閉部分集合であるから§E2.5 定理 3.2により完備である。また、00の任意の相対開近傍は(0,1](0,1]の点を含むため、(0,1](0,1]は[0,1][0,1]で稠密である。したがって、包含写像j:(0,1]→[0,1]j:(0,1]\to[0,1]とともに[0,1][0,1]は(0,1](0,1]の完備化を与える。零写像0C:[0,1]→[0,1]0_C:[0,1]\to[0,1]に対して

d^∞(j∘fn,0C)=2n+1⟶0\widehat d_\infty\bigl(j\circ f_n,0_C\bigr)=\frac{2}{n+1}\longrightarrow0

である。したがって、像の列は完備化の中では0C0_Cへ一様収束するが、0C0_CはC(X,Y)C(X,Y)の元ではない。

5 実数値の族と一様な Lipschitz 条件

定義 5.1 (一様有界な族).XXを集合、F\mathcal{F}をXXからR\mathbb{R}への写像からなる集合とする。F\mathcal{F}が一様有界 (uniformly bounded) であるとは、あるM≥0M\ge0が存在して、すべてのf∈Ff\in\mathcal{F}とx∈Xx\in Xに対して∣f(x)∣≤M|f(x)|\le Mが成り立つことをいう。

系 5.2 (実数値版の Arzelà–Ascoli の定理).XXをコンパクト位相空間とし、C(X,R)C(X,\mathbb{R})に一様距離d∞d_\inftyを入れる。F⊆C(X,R)\mathcal{F}\subseteq C(X,\mathbb{R})について、次の三条件は同値である。

  1. F‾\overline{\mathcal{F}}はコンパクトである。
  2. F\mathcal{F}はd∞d_\inftyに関して全有界である。
  3. F\mathcal{F}は同程度連続であり、すべてのx∈Xx\in XについてF(x)\mathcal{F}(x)は有界である。

さらに、F\mathcal{F}が一様有界かつ同程度連続ならば、F\mathcal{F}の任意の点列は一様収束する部分列をもつ。

証明.補題 2.3により、各F(x)\mathcal{F}(x)の有界性と全有界性は同値である。したがって、定理 3.1により 2 と 3 は同値である。§E2.5 命題 4.2によりR\mathbb{R}は完備であるから、系 4.4により 1 と 2 は同値である。

F\mathcal{F}が一様有界ならば、あるM≥0M\ge0に対してF(x)⊆[−M,M]\mathcal{F}(x)\subseteq[-M,M]がすべてのx∈Xx\in Xについて成り立つ。したがって、同程度連続性と合わせて系 4.5の仮定を満たし、任意の点列は一様収束する部分列をもつ。▨

系 5.3 (一様な Lipschitz 条件を満たす族). 次が成り立つ。

  1. (X,dX)(X,d_X)と(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間、L>0L>0とする。写像族F\mathcal{F}のすべての元が dY(f(x),f(x′))≤LdX(x,x′)d_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)\le Ld_X(x,x') をすべてのx,x′∈Xx,x'\in Xについて満たすならば、F\mathcal{F}は一様に同程度連続である。
  2. (X,dX)(X,d_X)を空でないコンパクト距離空間、x0∈Xx_0\in X、c∈Rc\in\mathbb{R}とし、 L={f∈C(X,R)∣∣f(x)−f(x′)∣≤dX(x,x′) (x,x′∈X), f(x0)=c}\mathcal{L}=\bigl\{f\in C(X,\mathbb{R})\bigm| |f(x)-f(x')|\le d_X(x,x')\ (x,x'\in X),\ f(x_0)=c\bigr\} とおく。このとき、L\mathcal{L}はC(X,R)C(X,\mathbb{R})のコンパクト部分集合である。

証明.ε>0\varepsilon>0に対してδ=ε/L\delta=\varepsilon/Lとおく。dX(x,x′)<δd_X(x,x')<\deltaならば、すべてのf∈Ff\in\mathcal{F}について

dY(f(x),f(x′))≤LdX(x,x′)<εd_Y\bigl(f(x),f(x')\bigr)\le Ld_X(x,x')<\varepsilon

である。したがって 1 が成り立つ。

L\mathcal{L}の各元は 1-Lipschitz であるから、1 によりL\mathcal{L}は一様に同程度連続であり、定理 1.6により距離について同程度連続である。したがって、命題 1.3によりL\mathcal{L}は開近傍についても同程度連続である。§E2.4 例 3.5により、写像x↦dX(x,x0)x\mapsto d_X(x,x_0)は∣dX(x,x0)−dX(x′,x0)∣≤dX(x,x′)|d_X(x,x_0)-d_X(x',x_0)|\le d_X(x,x')を満たして連続であり、§E2.12 注意 1.2により、この連続性はdXd_XとR\mathbb{R}の通常の距離が定める位相に関する連続性に一致する。したがって、§E2.19 定理 4.4により、この写像は空でないコンパクト空間XX上で最大値RRをとる。f∈Lf\in\mathcal{L}とx∈Xx\in Xに対して

∣f(x)∣≤∣f(x)−f(x0)∣+∣c∣≤R+∣c∣|f(x)|\le |f(x)-f(x_0)|+|c|\le R+|c|

であるから、L\mathcal{L}は一様有界である。系 5.2によりL‾\overline{\mathcal{L}}はコンパクトである。

f∈C(X,R)∖Lf\in C(X,\mathbb{R})\setminus\mathcal{L}をとる。f(x0)≠cf(x_0)\ne cならば、η=∣f(x0)−c∣/2>0\eta=|f(x_0)-c|/2>0とおくと、d∞(f,g)<ηd_\infty(f,g)<\etaを満たすすべてのggはg(x0)≠cg(x_0)\ne cを満たす。あるx1,x2∈Xx_1,x_2\in Xに対して∣f(x1)−f(x2)∣>dX(x1,x2)|f(x_1)-f(x_2)|>d_X(x_1,x_2)ならば、

η=∣f(x1)−f(x2)∣−dX(x1,x2)3>0\eta=\frac{|f(x_1)-f(x_2)|-d_X(x_1,x_2)}{3}>0

とおく。d∞(f,g)<ηd_\infty(f,g)<\etaならば

∣g(x1)−g(x2)∣>∣f(x1)−f(x2)∣−2η>dX(x1,x2),|g(x_1)-g(x_2)|>|f(x_1)-f(x_2)|-2\eta>d_X(x_1,x_2),

したがってg∉Lg\notin\mathcal{L}である。いずれの場合もffはC(X,R)∖LC(X,\mathbb{R})\setminus\mathcal{L}の内点であるから、L\mathcal{L}は閉集合である。よってL=L‾\mathcal{L}=\overline{\mathcal{L}}はコンパクトである。▨

注意 5.4 (一様空間への一般化). 本記事の定義域はコンパクト位相空間であり、距離を仮定するのは、一様な同程度連続性および一様な Lipschitz 条件による系のように、定義域の距離そのものを条件に用いる結果に限られる。値域を距離空間から一様空間へ広げた形の Arzelà–Ascoli の定理は後続の単元が扱う。

6 演習

問題 6.1 (有限距離空間上の写像族).(X,dX)(X,d_X)を空でない有限距離空間、(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とする。任意のF⊆C(X,Y)\mathcal{F}\subseteq C(X,Y)が一様に同程度連続であることを示せ。さらに、F\mathcal{F}が一様距離に関して全有界であることと、すべてのx∈Xx\in XについてF(x)\mathcal{F}(x)が全有界であることが同値であることを示せ。

解答.

XXが一点集合ならば任意のδ>0\delta>0が一様な同程度連続性の条件を満たす。XXが二点以上をもつならば、

δ=min⁡{dX(x,x′)∣x,x′∈X, x≠x′}>0\delta=\min\{d_X(x,x')\mid x,x'\in X,\ x\ne x'\}>0

とおく。dX(x,x′)<δd_X(x,x')<\deltaならばx=x′x=x'であるから、任意のf∈Ff\in\mathcal{F}についてdY(f(x),f(x′))=0d_Y(f(x),f(x'))=0である。したがってF\mathcal{F}は一様に同程度連続であり、とくに距離について同程度連続である。命題 1.3により開近傍についても同程度連続である。§E2.19 例 2.9 (1)により有限距離空間XXはコンパクトであるから、定理 3.1により残りの同値が従う。▨

問題 6.2 (基準点で固定した Lipschitz 族).系 5.3のL\mathcal{L}に対し、R=max⁡x∈XdX(x,x0)R=\max_{x\in X}d_X(x,x_0)とおく。任意のf,g∈Lf,g\in\mathcal{L}についてd∞(f,g)≤2Rd_\infty(f,g)\le2Rを示せ。

解答.

f(x0)=g(x0)=cf(x_0)=g(x_0)=cと Lipschitz 条件から、任意のx∈Xx\in Xについて

∣f(x)−g(x)∣≤∣f(x)−c∣+∣g(x)−c∣≤2dX(x,x0)≤2R|f(x)-g(x)|\le |f(x)-c|+|g(x)-c|\le2d_X(x,x_0)\le2R

である。xxにわたる最大値をとるとd∞(f,g)≤2Rd_\infty(f,g)\le2Rを得る。▨

参考文献

  1. James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000.「Compactness in Metric Spaces」は値域が Euclid 空間である場合の形を、「Ascoli's Theorem」は一般の値域に対する形を参考にした。
  2. Stephen Willard, General Topology, Dover Publications, 2004, originally published 1970.写像空間に入れる位相と Ascoli の定理を参考にした。
  3. Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1976.コンパクト距離空間の上の連続関数の列について、各点有界性と同程度連続性を仮定し、一様有界性と一様収束する部分列の存在を結論として得る形を参考にした。

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