1 三つの次元
定義 1.1 (小さい帰納的次元).Xを位相空間とする。整数n≥−1に対して、条件indX≤nをnに関する帰納法で次のように定める。indX≤−1とはX=∅であることをいう。n≥0のとき、indX≤nとは、任意のx∈Xとxを含むXの任意の開集合Uに対して、x∈V⊆Uを満たすXの開集合Vで、部分空間位相を入れた境界∂Vがind∂V≤n−1を満たすものが存在することをいう。
条件indX≤nを満たす整数n≥−1が存在するとき、その最小値をindXと書き、存在しないときindX=∞と書く。indXをXの 小さい帰納的次元 (small inductive dimension) という。
定義 1.2 (大きい帰納的次元).Xを位相空間とする。整数n≥−1に対して、条件IndX≤nをnに関する帰納法で次のように定める。IndX≤−1とはX=∅であることをいう。n≥0のとき、IndX≤nとは、Xの任意の閉集合FとF⊆Uを満たすXの任意の開集合Uに対して、F⊆V⊆Uを満たすXの開集合Vで、部分空間位相を入れた境界∂VがInd∂V≤n−1を満たすものが存在することをいう。
条件IndX≤nを満たす整数n≥−1が存在するとき、その最小値をIndXと書き、存在しないときIndX=∞と書く。IndXをXの 大きい帰納的次元 (large inductive dimension) という。
定義 1.3 (族の位数).Xを集合とし、A=(Ai)i∈IをXの部分集合族とする。整数n≥0について、Ai0∩⋯∩Ain=∅を満たす相異なるn+1個の添字i0,…,in∈Iが存在し、Ai0∩⋯∩Ain+1=∅を満たす相異なるn+2個の添字i0,…,in+1∈Iが存在しないとき、Aの 位数 (order) はnであるといい、ordA=nと書く。すべてのi∈IについてAi=∅であるとき(I=∅の場合を含む)、ordA=−1と定める。どの整数n≥−1についてもordA=nでないとき、ordA=∞と定める。
定義 1.4 (被覆次元).Xを位相空間とする。整数n≥−1に対して、Xの任意の有限開被覆Uが、ordW≤nを満たすXの有限開被覆WでW≺Uとなるものをもつとき、dimX≤nと書く。
条件dimX≤nを満たす整数n≥−1が存在するとき、その最小値をdimXと書き、存在しないときdimX=∞と書く。dimXをXの 被覆次元 (covering dimension) という。
補題 1.5.Xを位相空間、A=(Ai)i∈IをXの部分集合族、n≥−1を整数とする。
- ordA≤nであることと、Ai0∩⋯∩Ain+1=∅を満たす相異なるn+2個の添字i0,…,in+1∈Iが存在しないことは同値である。
- 条件indX≤n、IndX≤n、dimX≤nのそれぞれについて、それが成り立つならば、nをn+1に替えた条件も成り立つ。したがって、値indX、IndX、dimXがn以下であることは、それぞれ条件indX≤n、IndX≤n、dimX≤nが成り立つことと同値である。
- indX、IndX、dimXのいずれについても、その値が−1であることとX=∅であることは同値である。
補題 1.6.Xを位相空間、n≥−1を整数とする。dimX≤nであることと、Xの任意の有限開被覆Uが、ordW≤nを満たすXの開被覆WでW≺Uとなるものをもつことは同値である。ここでWの添字集合は有限集合とは限らない。
証明.dimX≤nならば、定義が与える有限開被覆がそのまま条件を満たす。
逆に、Xの任意の有限開被覆が位数n以下の開被覆を細分としてもつとする。U=(Ui)i∈IをXの有限開被覆とし、ordW≤nを満たす開被覆W=(Wj)j∈Jと細分射f:J→Iをとる。各i∈Iに対して
Vi=j∈f−1(i)⋃Wjとおく。Viは開集合であり、j∈f−1(i)ならばWj⊆UiであるからVi⊆Uiである。各x∈Xはx∈Wjを満たすj∈Jをもち、x∈Vf(j)であるから、V=(Vi)i∈IはXの有限開被覆であり、恒等写像I→Iを細分射としてV≺Uである。相異なるi0,…,in+1∈Iとx∈Vi0∩⋯∩Vin+1が存在したとすると、各kについてx∈Wjkを満たすjk∈f−1(ik)をとることができ、f(jk)=ikが相異なるのでj0,…,jn+1も相異なり、x∈Wj0∩⋯∩Wjn+1となる。これは補題 1.5 (1)によりordW≤nに反する。よって補題 1.5 (1)によりordV≤nであり、dimX≤nである。▨
2 基本性質
命題 2.1.h:X→Yを位相空間の間の同相写像とする。
- indX=indY、IndX=IndY、dimX=dimYが成り立つ。
証明.(1)を示す。整数n≥−1について、同相な任意の位相空間X、Yに対して条件indX≤nとindY≤nが同値であることは、nに関する帰納法による。n=−1のとき、全単射が存在するのでX=∅とY=∅は同値である。n≥0とし、n−1について同値性が成り立つと仮定する。同相写像h:X→Yがあり、indX≤nが成り立つとする。y∈Yとyを含む開集合Uをとると、h−1(U)はh−1(y)を含む開集合であるから、h−1(y)∈V⊆h−1(U)を満たす開集合Vでind∂V≤n−1を満たすものが存在する。§E2.12 命題 6.3 (6)によりh(∂V)=∂h(V)であり、§E2.12 補題 5.6 (1)によりhとh−1の境界への制限はともに連続である。したがって∂Vと∂h(V)は同相であり、帰納法の仮定によりind∂h(V)≤n−1である。h(V)はy∈h(V)⊆Uを満たす開集合であるので、indY≤nが成り立つ。h−1に同じ議論を適用すると逆向きも成り立つ。Indについては、点yを閉集合Fに替えて同じ議論を行う。
dimについて、同相写像h:X→YがありdimX≤nであるとする。(Ui)i∈IをYの有限開被覆とすると、(h−1(Ui))i∈IはXの有限開被覆であるから、ord(Wj)j∈J≤nを満たすXの有限開被覆(Wj)j∈Jと細分射f:J→Iが存在する。(h(Wj))j∈JはYの有限開被覆であり、h(Wj)⊆Uf(j)である。hは全単射であるから、添字j0,…,jmについてh(Wj0)∩⋯∩h(Wjm)=h(Wj0∩⋯∩Wjm)であり、補題 1.5 (1)によりord(h(Wj))j∈J≤nである。よってdimY≤nであり、h−1について同様である。
三つの次元のそれぞれについて、同じnに対する条件がXとYで同値であるから、値も一致する。▨
命題 2.2. 位相空間Xの任意の部分空間Mについて、indM≤indXである。
証明. 整数n≥−1について、任意の位相空間Xと任意のM⊆Xに対して条件indX≤nから条件indM≤nが従うことは、nに関する帰納法による。n=−1のときX=∅であるからM=∅である。n≥0とし、n−1についてこの主張が成り立つと仮定し、indX≤nとする。x∈Mと、xを含むMの開集合Uをとる。U=U′∩Mを満たすXの開集合U′をとると、x∈V′⊆U′を満たすXの開集合V′でind∂V′≤n−1を満たすものが存在する。V=V′∩Mはx∈V⊆Uを満たすMの開集合であり、§E2.12 命題 4.7 (4)によりMにおける境界∂MVは∂V′の部分集合である。帰納法の仮定を空間∂V′とその部分集合∂MVに適用するとind∂MV≤n−1であり、indM≤nが成り立つ。補題 1.5 (2)により値についてindM≤indXである。▨
命題 2.3. 位相空間Xの任意の閉部分空間Mについて、IndM≤IndXである。
証明. 整数n≥−1について、任意の位相空間XとXの任意の閉集合Mに対して条件IndX≤nから条件IndM≤nが従うことは、nに関する帰納法による。n=−1のときM=∅である。n≥0とし、n−1についてこの主張が成り立つと仮定し、IndX≤nとする。FをMの閉集合、UをF⊆Uを満たすMの開集合とする。MはXの閉集合であるから、§E2.12 命題 4.6によりFはXの閉集合である。U=U′∩Mを満たすXの開集合U′をとり、U′′=U′∪(X∖M)とおくと、U′′はFを含むXの開集合である。仮定により、F⊆V′⊆U′′を満たすXの開集合V′でInd∂V′≤n−1を満たすものが存在する。V=V′∩MはMの開集合であり、F⊆V⊆U′′∩M=Uを満たす。§E2.11 命題 2.8 (3)によりMにおける境界∂MVはMの閉集合であり、MがXの閉集合であるからXの閉集合である。§E2.12 命題 4.7 (4)により∂MV⊆∂V′であるから、∂MVは∂V′の閉集合である。帰納法の仮定によりInd∂MV≤n−1であり、IndM≤nが成り立つ。補題 1.5 (2)により値についてIndM≤IndXである。▨
命題 2.4. 位相空間Xの任意の閉部分空間Mについて、dimM≤dimXである。
証明. 整数n≥−1についてdimX≤nとし、(Ui)i∈IをMの有限開被覆とする。各i∈IについてUi=Ui′∩Mを満たすXの開集合Ui′をとる。Iに属さない添字∗を一つ加え、U∗′=X∖Mとおくと、(Ui′)i∈I∪{∗}はXの有限開被覆である。仮定により、ord(Wj)j∈J≤nを満たすXの有限開被覆(Wj)j∈Jと細分射f:J→I∪{∗}が存在する。JM=f−1(I)とおく。x∈Mに対してx∈Wjを満たすj∈Jをとると、Wj⊆Uf(j)′とx∈/X∖Mからf(j)=∗であり、j∈JMである。したがって(Wj∩M)j∈JMはMの有限開被覆であり、Wj∩M⊆Uf(j)′∩M=Uf(j)であるからfのJMへの制限は細分射である。相異なるj0,…,jn+1∈JMについて(Wj0∩M)∩⋯∩(Wjn+1∩M)⊆Wj0∩⋯∩Wjn+1であり、右辺は補題 1.5 (1)により空であるから、同じ判定によりord(Wj∩M)j∈JM≤nである。よってdimM≤nであり、補題 1.5 (2)により値についてdimM≤dimXである。▨
3 次元が 0 以下の空間と次元の下界
命題 3.1.Xを空でない位相空間とする。
- indX≤0であることと、Xが 0 次元であることは同値である。
- IndX≤0であることと、§E2.45 定義 1.1 (2)が成り立つことは同値である。
- dimX≤0であることと、§E2.45 定義 1.1 (3)が成り立つことは同値である。
とくに、§E2.45 定義 1.1が条件として定めた記法indX=0、IndX=0、dimX=0は、本記事で定めた値が0であることと一致する。
証明.VをXの開集合とすると、§E2.11 命題 2.8 (1)により∂V=V∖Vであるから、∂V=∅であることとV=Vであること、すなわちVが閉集合であることは同値である。ind∂V≤−1とInd∂V≤−1はいずれも∂V=∅を意味する。
(1)を示す。上の同値により、indX≤0は、任意の開集合Uとx∈Uに対してx∈V⊆Uを満たす開かつ閉な集合Vが存在することと同値である。§E2.13 命題 1.2により、この条件は開かつ閉な集合の全体が開基であることと同値である。
(2)を示す。上の同値により、IndX≤0は、任意の閉集合FとF⊆Uを満たす任意の開集合Uに対してF⊆V⊆Uを満たす開かつ閉な集合Vが存在することと同値であり、これは§E2.45 定義 1.1 (2)そのものである。
(3)を示す。補題 1.5 (1)により、族の位数が0以下であることは、族が互いに交わらないことと同値である。したがって補題 1.6により、dimX≤0は、Xの任意の有限開被覆が互いに交わらない開集合からなるXの開被覆を細分としてもつことと同値であり、これは§E2.45 定義 1.1 (3)そのものである。
Xは空でないから、補題 1.5 (3)により三つの値はいずれも−1でなく、補題 1.5 (2)により値が0であることは条件≤0と同値である。▨
命題 3.2. 位相空間Xが、二点以上を含む連結部分集合Cをもつとする。
- Xが T0 空間ならば、indX≥1である。
- Xが T1 空間ならば、indX≥1、IndX≥1、dimX≥1である。
例 3.3.S={0,1}にOS={∅,{1},S}を入れた Sierpiński 空間について、indS=1であり、IndS=dimS=0である。Sは二点を含む連結な T0 空間であるから、命題 3.2 (2)の仮定の T1 性を T0 性に弱めることはできない。
証明.Sの空でない開集合は{1}とSであり、どちらも1を含むので、Sを互いに素な空でない二つの開集合の和に分けることはできない。したがってSは連結である。開集合{1}は1を含み0を含まないので、Sは T0 空間である。命題 3.2 (1)によりindS≥1である。
Sの閉集合は∅、{0}、Sであるから、{1}=Sであり、∂{1}=S∩{0}={0}、∂S=∅である。一点空間{0}ではその開集合{0}の境界が空であるから、ind{0}≤0である。x∈Uを満たすSの開集合Uについて、U=SならばV=S、U={1}ならばV={1}とおくと、ind∂V≤0である。よってindS≤1であり、indS=1である。
§E2.45 例 1.7により§E2.45 定義 1.1 (2)と§E2.45 定義 1.1 (3)が成り立つので、命題 3.1によりIndS=dimS=0である。▨
4 閉区間・実数直線・円周の次元
補題 4.1. 二点以上を含む区間を含まない部分集合A⊆Rについて、indA≤0、IndA≤0、dimA≤0である。
証明.A=∅ならば、補題 1.5 (3)により三つの値は−1である。A=∅とし、a∈Aと、aを含むAの開集合Uをとる。U=U′∩Aを満たすRの開集合U′と、(a−ε,a+ε)⊆U′を満たす実数ε>0をとる。二点以上を含む区間(a−ε,a)と(a,a+ε)はAに含まれないので、r∈(a−ε,a)∖Aとs∈(a,a+ε)∖Aが存在する。C=(r,s)∩AはAの開集合であり、r,s∈/AからC=[r,s]∩Aであるので、§E2.12 命題 4.6によりAの閉集合でもある。a∈C⊆(a−ε,a+ε)∩A⊆Uであるから、§E2.13 命題 1.2によりAの開かつ閉な部分集合の全体はAの開基であり、Aは 0 次元である。
Aは第二可算な T1 空間である(§E2.13 例 5.2、§E2.13 命題 3.2、§E2.15 定理 3.2 (4))。したがって、§E2.45 系 1.6により§E2.45 定義 1.1 (2)と§E2.45 定義 1.1 (3)も成り立つ。命題 3.1により三つの値は0以下である。▨
補題 4.2.G⊆Rとし、VをGの開集合とする。部分空間GにおけるVの境界∂GVは、二点以上を含む区間を含まない。
証明.∂GVに含まれる区間Jが二点c<dを含んだとすると、区間の条件により(c,d)⊆J⊆∂GVである。§E2.11 命題 2.8 (1)により∂GV=clG(V)∖Vであるから、(c,d)∩V=∅である。(c,d)はRの開集合であってGに含まれるのでGの開集合であり、G∖(c,d)はVを含むGの閉集合である。したがってclG(V)⊆G∖(c,d)であり、空でない(c,d)がclG(V)に含まれることと両立しない。▨
命題 4.3. 任意の部分集合G⊆Rについて、indG≤1かつIndG≤1である。
証明.Gの開集合Uに対して、補題 4.2と補題 4.1によりind∂GU≤0かつInd∂GU≤0である。x∈Uを満たす点x、またはF⊆Uを満たす閉集合Fに対してV=Uとおけば定義の条件が満たされるので、indG≤1かつIndG≤1である。▨
補題 4.4.R2に Euclid 距離を入れ、ノルムを∣⋅∣と書き、円周S1={w∈R2∣∣w∣=1}に部分空間位相を入れる。z=(z1,z2)∈S1に対してz⊥=(−z2,z1)とおき、写像hz:R→R2を
hz(s)=s2+1s2−1z+s2+12sz⊥で定める。
- hzはRから部分空間S1∖{z}への同相写像である。
- 任意のs∈Rに対して∣hz(s)−z∣=2/s2+1である。
命題 4.5. 円周S1について、indS1≤1かつIndS1≤1である。
証明.UをS1の開集合とする。U=∅ならば∂U=∅であり、ind∂U≤0かつInd∂U≤0である。U=∅ならばz∈Uをとる。S1は§E2.15 定理 3.2 (4)により T1 空間であるから、§E2.15 命題 1.5によりW=S1∖{z}は開集合である。§E2.11 命題 2.8 (1)により∂U=U∖Uはzを含まないので∂U⊆Wであり、§E2.12 命題 4.7 (5)により∂U=∂U∩W=∂W(U∩W)である。補題 4.4 (1)の同相写像hz:R→Wの逆写像に§E2.12 命題 6.3 (6)を適用すると、hz−1(∂U)はRの開集合hz−1(U∩W)の境界である。hzとhz−1の制限は§E2.12 補題 5.6 (1)により連続であるから、∂Uとhz−1(∂U)は同相である。補題 4.2と補題 4.1によりhz−1(∂U)の小さい帰納的次元と大きい帰納的次元は0以下であるから、命題 2.1 (1)によりind∂U≤0かつInd∂U≤0である。
x∈Uを満たす点x、またはF⊆Uを満たす閉集合Fに対してV=Uとおけば定義の条件が満たされるので、indS1≤1かつIndS1≤1である。▨
補題 4.6.(Ui)i∈IをRの有限開被覆とする。任意のj∈Zについてtj<tj+1を満たす実数の族(tj)j∈Zで、次を満たすものが存在する。
- 任意の実数Mに対して、tj<M<tkを満たすj,k∈Zが存在する。
- 任意のj∈Zに対して、[tj−1,tj+1]⊆Uiを満たすi∈Iが存在する。
- 任意のs∈Rに対して、Zs={j∈Z∣tj−1<s<tj+1}は空でなく、Zsの任意の二元の差の絶対値は1以下である。
証明. あるi∈IについてUi=Rであるとする。tj=jとおくと(1)と(2)が成り立つ。
すべてのi∈IについてUi=Rであるとする。R∖Uiは空でない閉集合であり、§E2.10 定義 5.1の点と集合の距離を用いて
ρ(x)=i∈Imaxd(x,R∖Ui)(x∈R)とおく。Rは空でないのでIも空でない。
ρは次の三つの性質をもつ。第一に、x∈Rはx∈Uiを満たすiをもち、xは閉集合R∖Uiに属さないので、§E2.10 命題 5.2 (2)によりd(x,R∖Ui)>0であり、ρ(x)>0である。
第二に、ρ(x)=d(x,R∖Ui)を満たすiについて(x−ρ(x),x+ρ(x))⊆Uiである。実際、∣y−x∣<ρ(x)かつy∈/Uiならばd(x,R∖Ui)≤∣x−y∣<ρ(x)となる。
第三に、任意のx,y∈Rについてρ(y)≥ρ(x)−∣x−y∣である。実際、ρ(x)=d(x,R∖Ui)を満たすiをとると、§E2.10 命題 5.2 (1)によりρ(y)≥d(y,R∖Ui)≥ρ(x)−∣x−y∣である。
t0=0とおき、j≥0についてtj+1=tj+ρ(tj)/3、j≤0についてtj−1=tj−ρ(tj)/3と再帰的に定める。第一の性質によりtj<tj+1である。
j∈Zをとる。j≥0ならばtj+1−tj=ρ(tj)/3である。j≥1ならば、第三の性質により
tj−tj−1=3ρ(tj−1)≤3ρ(tj)+(tj−tj−1)であるからtj−tj−1≤ρ(tj)/2であり、j=0ならばt0−t−1=ρ(t0)/3である。j≤−1の場合も、tj−tj−1=ρ(tj)/3と、第三の性質から従うtj+1−tj=ρ(tj+1)/3≤(ρ(tj)+(tj+1−tj))/3によって同じ評価を得る。したがってtj+1−tj≤ρ(tj)/2かつtj−tj−1≤ρ(tj)/2であり、ρ(tj)>0であるから[tj−1,tj+1]⊆(tj−ρ(tj),tj+ρ(tj))である。第二の性質によりこの開区間はあるUiに含まれるので、この場合に(2)が成り立つ。
{tj∣j≥0}が上に有界であると仮定し、その上限をt∗とする。ρ(t∗)>0であるから、tj>t∗−ρ(t∗)/4を満たすj≥0が存在し、第三の性質によりρ(tj)≥ρ(t∗)−(t∗−tj)>3ρ(t∗)/4である。このとき
tj+1=tj+3ρ(tj)>t∗−4ρ(t∗)+4ρ(t∗)=t∗となり、t∗が上界であることに反する。よって{tj∣j≥0}は上に有界でない。{tj∣j≤0}が下に有界でないことも、下限について同じ評価を行って得られる。(tj)j∈Zは増加するので、任意の実数Mに対してtj<M<tkを満たすj,kが存在し、この場合に(1)が成り立つ。
(3)を示す。どちらの場合にも(1)が成り立つので、s∈Rに対してtj<s<tkを満たすj,kをとる。{m∈Z∣tm≤s}はjを含み、k以上の整数を含まないので、最大元m0をもつ。tm0−1<tm0≤s<tm0+1であるからm0∈Zsである。m,m′∈Zsがm′≥m+2を満たしたとすると、tm′−1<s<tm+1≤tm′−1となって両立しない。▨
命題 4.7. 次が成り立つ。
- dimR≤1である。
- dim[0,1]≤1である。
- 補題 4.4の円周S1についてdimS1≤1である。
証明.(1)を示す。(Ui)i∈IをRの有限開被覆とし、補題 4.6の族(tj)j∈Zをとる。開区間の族W=((tj−1,tj+1))j∈Zは、補題 4.6 (3)によりZsが空でないのでRの開被覆であり、補題 4.6 (2)により各jに(tj−1,tj+1)⊆Uiを満たすiを対応させる写像が細分射になる。相異なる三つの添字j<j′<j′′の開区間が点sを共有したとすると、j,j′′∈Zsかつj′′−j≥2となって補題 4.6 (3)に反する。したがって補題 1.5 (1)によりordW≤1であり、補題 1.6によりdimR≤1である。
(2)は、[0,1]がRの閉集合であるから、命題 2.4と(1)による。
(3)を示す。(Ui)i∈IをS1の有限開被覆とし、z∈S1とz∈Ui0を満たすi0∈Iをとる。∣w−z∣<εを満たす任意のw∈S1がUi0に属するような実数ε>0をとり、M=2/εとおく。補題 4.4 (2)により、∣s∣≥Mならば∣hz(s)−z∣<2/∣s∣≤εであるからhz(s)∈Ui0である。
(hz−1(Ui))i∈IはRの有限開被覆であるから、補題 4.6の族(tj)j∈Zをとる。補題 4.6 (1)により、ta+1<−Mかつtb−1>Mを満たす整数a,bをとる。(tj)は増加するのでa+1<b−1である。
G={z}∪hz((−∞,ta+1)∪(tb−1,∞)),Aj=hz((tj−1,tj+1))(a+1≤j≤b−1)とおき、有限族WをGとAa+1,…,Ab−1からなる族とする。
W=S1∖{z}はS1の開集合であり、補題 4.4 (1)によりhz:R→Wは同相写像である。したがって各AjとG∖{z}はS1の開集合である。
K=max{∣ta+1∣,∣tb−1∣}とおき、∣w−z∣<2/K2+1を満たすw∈S1∖{z}をとると、w=hz(s)を満たすsについて補題 4.4 (2)により2/s2+1<2/K2+1であるから∣s∣>Kであり、s<ta+1またはs>tb−1であってw∈Gである。したがってGは、開集合G∖{z}と、∣w−z∣<2/K2+1を満たすw∈S1の全体との和であり、S1の開集合である。
補題 4.6 (2)により各Ajはあるhz(hz−1(Ui))⊆Uiに含まれる。Gの点はzであるか、∣s∣>Mを満たすsによるhz(s)であるから、G⊆Ui0である。したがってWの元はいずれも(Ui)i∈Iのある元に含まれる。
zはGに属し、hzの像に属さないので、Wの元のうちzを含むものはGだけである。
s∈Rをとり、Zs={j∈Z∣tj−1<s<tj+1}とおくと、hzは単射であるから、hz(s)∈Ajであることはj∈Zsであることと同値である。s<ta+1ならばhz(s)∈Gであり、j∈Zsかつj≥a+1ならばtj−1<s<ta+1からj=a+1であるので、hz(s)を含むWの元はGと高々Aa+1である。s>tb−1の場合も同様に、hz(s)を含む元はGと高々Ab−1である。
ta+1≤s≤tb−1ならばhz(s)∈/Gである。{m∈Z∣tm≤s}はa+1を含み、tb>sからb以上の整数を含まないので、最大元mをもつ。tm−1<tm≤s<tm+1からm∈Zsであり、a+1≤m≤b−1であるからhz(s)∈Amである。hz(s)を含むAjは補題 4.6 (3)により高々二つである。
以上からWはS1の有限開被覆であり、補題 1.5 (1)によりordW≤1である。よってdimS1≤1である。▨
定理 4.8. 閉区間[0,1]、実数直線R、補題 4.4の円周S1のいずれについても、小さい帰納的次元、大きい帰納的次元、被覆次元はすべて1である。
例 4.10.[0,1]に属さない点cをとり、X=[0,1]∪{c}に、[0,1]の開集合の全体にXを加えた集合族Oを位相として入れる。このとき[0,1]はXの開部分空間であって、その部分空間位相は通常の位相であり、IndX=dimX=0であるが、Ind[0,1]=dim[0,1]=1である。したがって命題 2.3と命題 2.4から部分空間の閉性の仮定を外すことはできない。一方、命題 2.2によりindX≥1である。
証明.[0,1]の開集合の和は[0,1]の開集合であり、Xを含む族の和はXである。[0,1]の開集合とXの共通部分はその開集合自身であるので、OはXの位相である。Oの元と[0,1]の共通部分の全体は[0,1]の開集合の全体であるから、[0,1]の部分空間位相は通常の位相であり、[0,1]∈Oである。
cを含むOの元はXだけである。Xの有限開被覆(Ui)i∈Iはcを含む元Ui0=Xをもつので、一つの元Xからなる族は、その唯一の添字をi0へ送る細分射によって(Ui)i∈Iの細分であり、その位数は0である。よってdimX≤0である。命題 3.1 (3)と§E2.45 定理 1.3と命題 3.1 (2)によりIndX≤0である。Xは空でないので、補題 1.5 (3)によりIndX=dimX=0である。Ind[0,1]=dim[0,1]=1は定理 4.8による。indX≥ind[0,1]=1は命題 2.2と定理 4.8による。▨
5 演習
解答.
補題 1.5 (1)を示す。ordA=m≤nとする。m=−1ならばすべてのAiが空であるから、共通部分が空でない添字の組は存在しない。m≥0ならば、共通部分が空でない相異なるn+2個の添字が存在したとすると、そのうちのm+2≤n+2個の添字の共通部分も空でなく、位数の定義に反する。逆に、共通部分が空でない相異なるn+2個の添字が存在しないとする。整数k≥1で、共通部分が空でない相異なるk個の添字が存在するものの全体をKとする。k∈Kかつk≥n+2ならば、そのk個のうちn+2個をとると共通部分が空でないので、K⊆{1,…,n+1}である。K=∅ならばすべてのAiが空でありordA=−1≤nである。K=∅ならばKの最大元k0についてk0+1∈/Kであり、定義によりordA=k0−1≤nである。
補題 1.5 (2)を示す。indについて、任意の位相空間Xに対して条件indX≤nから条件indX≤n+1が従うことは、nに関する帰納法による。n=−1のときX=∅であり、条件indX≤0はXの点についての条件であるから空虚に成り立つ。n≥0のとき、indX≤nの定義が与える開集合Vはind∂V≤n−1を満たし、帰納法の仮定を空間∂Vに適用するとind∂V≤nであるから、同じVによってindX≤n+1が成り立つ。Indについても、点を閉集合に替えて同じ議論を行う。dimについては、補題 1.5 (1)により位数がn以下の族は位数がn+1以下であるから、条件dimX≤nから条件dimX≤n+1が従う。値indXがn以下であることは、あるm≤nについて条件indX≤mが成り立つことであり、単調性によりこれは条件indX≤nと同値である。IndXとdimXについても同様である。
補題 1.5 (3)を示す。indとIndについては、条件≤−1がX=∅と定められているので、補題 1.5 (2)により値が−1であることはX=∅と同値である。dimについて、X=∅ならば、Xの有限開被覆(Ui)i∈Iの元はすべて空であり、恒等写像を細分射として自分自身の細分であって、位数は−1である。よってdimX≤−1である。X=∅ならば、一つの元XからなるXの有限開被覆の細分はXを覆うので空でない元をもち、その位数は0以上である。よってdimX≤−1は成り立たない。▨
解答.
⟨⋅,⋅⟩をR2の標準内積とする。∣z∣=1と⟨z,z⊥⟩=−z1z2+z2z1=0と∣z⊥∣=∣z∣=1が成り立ち、直接の計算により、任意のw∈R2についてw=⟨w,z⟩z+⟨w,z⊥⟩z⊥かつ∣w∣2=⟨w,z⟩2+⟨w,z⊥⟩2である。
α(s)=(s2−1)/(s2+1)、β(s)=2s/(s2+1)とおくと、hz(s)=α(s)z+β(s)z⊥であり、
α(s)2+β(s)2=(s2+1)2(s2−1)2+4s2=1であるからhz(s)∈S1である。⟨hz(s),z⟩=α(s)<1であるからhz(s)=zである。
w∈S1∖{z}に対してa=⟨w,z⟩、b=⟨w,z⊥⟩とおくとa2+b2=1であり、a=1ならばb=0となってw=zであるからa=1である。g(w)=b/(1−a)とおく。s∈Rに対して1−α(s)=2/(s2+1)であるからg(hz(s))=β(s)/(1−α(s))=sである。t=g(w)とおくと
t2=(1−a)2b2=(1−a)21−a2=1−a1+a,t2+1=1−a2であるからα(t)=((1+a)−(1−a))/2=a、β(t)=2t(1−a)/2=bであり、hz(g(w))=az+bz⊥=wである。したがってhzはRからS1∖{z}への全単射であり、gはその逆写像である。
hzの成分はsの実数係数の有理式で、分母s2+1は0にならないので、hz:R→R2は連続であり、§E2.12 定理 4.4 (3)によりRから部分空間S1∖{z}への写像としても連続である。gはwの成分の有理式で、分母1−⟨w,z⟩はS1∖{z}の上で0にならないので連続である。よってhzは同相写像であり、補題 4.4 (1)が成り立つ。
hz(s)−z=(α(s)−1)z+β(s)z⊥であるから
∣hz(s)−z∣2=(s2+1)24+(s2+1)24s2=s2+14であり、補題 4.4 (2)が成り立つ。▨
問題 5.3. 空でない部分集合G⊆Rについて、Gが二点以上を含む区間を含むならばindG=IndG=1であり、含まないならばindG=IndG=dimG=0であることを示せ。
解答.
Gが二点以上を含む区間Jを含むとする。§E2.43 定理 2.2によりJはGの連結部分集合であり、距離空間Gは§E2.15 定理 3.2 (4)により T1 空間であるから、命題 3.2 (2)によりindG≥1かつIndG≥1である。命題 4.3によりindG≤1かつIndG≤1であるから、indG=IndG=1である。
Gが二点以上を含む区間を含まないとする。補題 4.1により三つの値は0以下であり、Gは空でないので補題 1.5 (3)により−1でない。よって三つの値はいずれも0である。▨