1 実数値連続関数の環と束
補題 1.1.Rにはd(s,t)=∣s−t∣が定める位相を、R2には積位相を入れる。
- 和σ:R2→R、σ(s,t)=s+tは連続である。
- 積μ:R2→R、μ(s,t)=stは連続である。
- 絶対値∣⋅∣:R→Rは連続である。
- R∖{0}に部分空間位相を入れると、ι:R∖{0}→R、ι(t)=1/tは連続である。
証明.§E2.14 例 1.16によりR2の積位相は Euclid 距離d2が定める位相に一致するから、§E2.12 補題 1.8をd2について用いる。(s0,t0)∈R2とε>0をとる。
(1)を示す。d2((s,t),(s0,t0))<ε/2ならば∣s−s0∣<ε/2かつ∣t−t0∣<ε/2であるから、∣(s+t)−(s0+t0)∣≤∣s−s0∣+∣t−t0∣<εである。
(2)を示す。M=∣s0∣+∣t0∣+1とおき、δ=min{1,ε/(2M)}とする。d2((s,t),(s0,t0))<δならば∣t∣≤∣t0∣+1であり、
∣st−s0t0∣≤∣s−s0∣∣t∣+∣s0∣∣t−t0∣≤δM≤ε/2<εである。
(3)を示す。∣s∣−∣s0∣≤∣s−s0∣であるから、δ=εとすればよい。
(4)を示す。t0=0とし、δ=min{∣t0∣/2, ε∣t0∣2/2}とする。∣t−t0∣<δならば∣t∣≥∣t0∣/2>0であり、
t1−t01=∣t∣∣t0∣∣t−t0∣≤∣t0∣22δ≤εである。§E2.12 命題 4.8によりR∖{0}の部分空間位相は制限距離が定める位相であるから、ιは連続である。▨
補題 1.2.Xを位相空間とし、Rにはd(s,t)=∣s−t∣が定める距離と、その距離が定める位相を入れる。XからRへの連続写像の全体をC(X,R)と書く。u,v∈C(X,R)とc∈Rに対して次が成り立つ。
- 和u+v、積uv、スカラー倍cu、および値cをとる定数写像は、いずれもC(X,R)に属する。
- 絶対値∣u∣はC(X,R)に属する。各点で
max(u,v)=21(u+v+∣u−v∣),min(u,v)=21(u+v−∣u−v∣)
が成り立ち、max(u,v)とmin(u,v)はC(X,R)に属する。
- すべてのx∈Xについてu(x)=0であるならば、1/uはC(X,R)に属する。
証明.u,v∈C(X,R)とする。§E2.14 定理 1.6により、各成分がuとvである写像(u,v):X→R2は連続である。
(1)を示す。u+v=σ∘(u,v)とuv=μ∘(u,v)であるから、補題 1.1 (1)・補題 1.1 (2)と§E2.12 命題 1.10によりu+vとuvは連続である。定数写像は§E2.12 例 1.12により連続であり、スカラー倍cuは値cをとる定数写像とuの積であるから連続である。
(2)を示す。∣u∣はuと絶対値の合成であるから、補題 1.1 (3)と§E2.12 命題 1.10により連続である。実数a,bについてmax(a,b)=21(a+b+∣a−b∣)とmin(a,b)=21(a+b−∣a−b∣)が成り立つことは、a≥bの場合とa<bの場合に分けて∣a−b∣を書き下せば確かめられる。右辺は(1)といま示したことにより連続な写像から和とスカラー倍で得られるから、max(u,v)とmin(u,v)は連続である。
(3)を示す。すべてのxについてu(x)=0であるとする。§E2.12 定理 4.4 (3)により、終域をR∖{0}へ制限した写像u0:X→R∖{0}は連続である。1/u=ι∘u0であるから、補題 1.1 (4)と§E2.12 命題 1.10により連続である。▨
2 有界連続関数の空間
定義 2.1 (有界連続関数の空間).Xを位相空間とする。有界な連続写像X→Rの全体をX上の 有界連続関数の空間 (space of bounded continuous functions) といい、Cb(X)またはCb(X,R)と書く。X=∅のとき、Cb(X)は§E2.5 定義 5.2の有界関数空間Fb(X)の部分集合であり、一様距離d∞の制限を入れる。X=∅のとき、Cb(X)は空写像0だけからなる集合であり、d∞(0,0)=0と定める。
値0をとる定数関数を0と書く。f∈Cb(X)の 一様ノルム (uniform norm) を
∥f∥∞=d∞(f,0)と定める。X=∅のとき∥f∥∞=supx∈X∣f(x)∣であり、X=∅のとき∥0∥∞=0である。
証明.x∈Xとε>0をとる。一様収束により、すべてのy∈Xについて∣wN(y)−w(y)∣≤ε/3を満たすNが存在する。wNの連続性と§E2.12 補題 1.9により、xの開近傍Wであって、y∈Wについて∣wN(y)−wN(x)∣<ε/3を満たすものが存在する。y∈Wに対して
∣w(y)−w(x)∣≤∣w(y)−wN(y)∣+∣wN(y)−wN(x)∣+∣wN(x)−w(x)∣<εである。よって§E2.12 補題 1.9によりwは連続である。▨
補題 2.5.Xを位相空間とし、(gn)n≥1をXからRへの連続写像の列で、すべてのn≥1とx∈Xについて0≤gn(x)≤1を満たすものとする。N≥1に対してwN=∑n=1N2−ngnとおく。このとき、各x∈Xについてw(x)=sup{wN(x)∣N≥1}は実数として定まり、w:X→Rは0≤w≤1を満たす連続写像である。さらに、すべてのN≥1とx∈Xについて
wN(x)≤w(x)≤wN(x)+2−Nが成り立ち、w(x)=0であることと、すべてのn≥1についてgn(x)=0であることとは同値である。
証明.補題 1.2 (1)により各wNは連続である。0≤gn≤1から各x∈Xについて列(wN(x))N≥1は単調増加であり
wN(x)≤n=1∑N2−n<1を満たすから、§D1.4 定義 1.2により上限w(x)が実数として定まり、0≤w(x)≤1である。M>Nに対して
0≤wM(x)−wN(x)=n=N+1∑M2−ngn(x)≤n=N+1∑M2−n<2−Nであるから、上限をとってwN(x)≤w(x)≤wN(x)+2−Nを得る。N≥1について2N≥Nが帰納法で従うから2−N≤1/Nであり、§D1.4 系 2.2により、任意の実数ε>0に対して2−N≤1/N<εを満たすNが存在する。ゆえに定義 2.3の意味で(wN)N≥1はwへ一様収束し、定理 2.4によりwは連続である。
w(x)=0とすると、0≤2−ngn(x)≤wn(x)≤w(x)=0からすべてのnについてgn(x)=0である。逆にすべてのnについてgn(x)=0ならば、すべてのNについてwN(x)=0であるからw(x)=0である。▨
定理 2.6.Xを空でない位相空間とする。Cb(X)はFb(X)の閉集合であり、一様距離について完備な距離空間である。
証明.w∈Fb(X)をCb(X)の閉包の点とする。各n∈Z≥1に対してd∞(wn,w)<1/nを満たすwn∈Cb(X)をとると、任意のε>0に対して1/N≤εを満たすNをとればn≥Nのとき、すべてのx∈Xについて∣wn(x)−w(x)∣≤d∞(wn,w)<εである。ゆえに定義 2.3の意味で(wn)はwへ一様収束し、定理 2.4によりwは連続である。w∈Fb(X)からwは有界であるからw∈Cb(X)であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりCb(X)はFb(X)の閉集合である。
§E2.5 定理 5.5によりFb(X)は完備であるから、§E2.5 系 3.4により閉部分空間Cb(X)は完備である。▨
3 引き戻しと評価写像
命題 3.1.X、Yを空でない位相空間、f:X→Yを連続写像とする。u∈Cb(Y)に対してf∗(u)=u∘fと定めると、f∗はCb(Y)からCb(X)への写像であり、任意のu,v∈Cb(Y)に対して
d∞(f∗(u),f∗(v))≤d∞(u,v)を満たす。とくにf∗は連続である。f(X)がYで稠密ならば等号が成り立ち、f∗は等距離写像である。とくにfが全射ならばf∗は等距離写像である。
証明.u∈Cb(Y)とすると、§E2.12 命題 1.10によりu∘fは連続であり、uの値の全体が有界であることからu∘fも有界であるからf∗(u)∈Cb(X)である。
u,v∈Cb(Y)とx∈Xについて
f∗(u)(x)−f∗(v)(x)=u(f(x))−v(f(x))≤d∞(u,v)であるから、左辺の上限をとってd∞(f∗(u),f∗(v))≤d∞(u,v)を得る。この不等式により、ε>0に対してδ=εとおけば連続性の条件が満たされる。
f(X)がYで稠密であるとする。u,v∈Cb(Y)をとり、c=d∞(f∗(u),f∗(v))とおく。補題 1.2 (1)と補題 1.2 (2)によりw=∣u−v∣はYからRへの連続写像であり、x∈Xについてw(f(x))=∣f∗(u)(x)−f∗(v)(x)∣≤cであるから、f(X)⊆w−1((−∞,c])である。§E2.12 命題 1.6によりw−1((−∞,c])はYの閉集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりf(X)⊆w−1((−∞,c])であり、§E2.11 定義 2.7によりf(X)=Yである。ゆえにすべてのy∈Yについて∣u(y)−v(y)∣≤cであり、上限をとってd∞(u,v)≤cを得る。fが全射ならばf(X)=YはYで稠密であるから、この場合も等号が成り立つ。▨
系 3.2.Xを空でない位相空間とする。
- 各x∈Xとu,v∈Cb(X)について∣u(x)−v(x)∣≤d∞(u,v)が成り立つ。
- Cb(X)の点列(un)がu∈Cb(X)へ収束するならば、各x∈Xについて実数列(un(x))はu(x)へ収束する。
証明.(1)を示す。x∈Xをとる。一点部分空間{x}の包含写像ι{x}:{x}→Xは§E2.12 定理 4.4 (1)により連続であるから、命題 3.1により、これに沿った引き戻しι{x}∗:Cb(X)→Cb({x})は
d∞(ι{x}∗(u),ι{x}∗(v))≤d∞(u,v)を満たす。§E2.5 定義 5.2の一様距離は一点集合の上の関数に対しては一元集合の上限であるから、左辺は∣u(x)−v(x)∣に等しい。
(2)を示す。x∈Xとε>0をとる。(un)がuへ収束することから、n≥Nを満たすすべてのnについてd∞(un,u)<εが成り立つNが存在する。そのようなnについて、(1)により∣un(x)−u(x)∣≤d∞(un,u)<εである。ゆえに(un(x))はu(x)へ収束する。▨
証明.(x0,u0)∈X×Cb(X)とε>0をとる。u0は連続であるから、x0を含む開集合Oで、すべてのx∈Oが∣u0(x)−u0(x0)∣<ε/2を満たすものが存在する。B={u∈Cb(X)∣d∞(u,u0)<ε/2}は§E2.2 補題 1.2によりCb(X)の開集合でありu0を含む。(x,u)∈O×Bに対して
∣u(x)−u0(x0)∣≤∣u(x)−u0(x)∣+∣u0(x)−u0(x0)∣≤d∞(u,u0)+∣u0(x)−u0(x0)∣<εである。§E2.14 補題 1.11によりO×Bは(x0,u0)の近傍であるから、§E2.12 補題 1.9によりevは連続である。▨
4 零集合と余零集合
定義 4.1.Xを位相空間とし、f∈C(X,R)とする。
Z(f)=f−1({0})={x∈X∣f(x)=0}をfの 零集合 (zero set) という。あるf∈C(X,R)についてA=Z(f)と書ける部分集合A⊆XをXの零集合といい、Xの零集合の全体をZ(X)と書く。
定義 4.2.Xを位相空間とし、f∈C(X,R)とする。Z(f)の補集合
coz(f)=X∖Z(f)={x∈X∣f(x)=0}をfの 余零集合 (cozero set) という。Xの零集合の補集合をXの余零集合という。
命題 4.3.Xを位相空間とし、f,g∈C(X,R)、c∈Rとする。
- Z(f)はXの閉集合であり、coz(f)はXの開集合である。さらに、Xの開集合の列(Vn)n∈Z≥1でZ(f)=⋂n∈Z≥1Vnを満たすものが存在する。
- X=Z(0)と∅=Z(1)はいずれもXの零集合である。ここで0と1は値0と値1をとる定数写像である。
- Z(f)∩Z(g)=Z(f2+g2)かつZ(f)∪Z(g)=Z(fg)である。とくにZ(X)は有限個の共通部分と有限個の和集合について閉じている。
- f−1({c})=Z(f−c)、f−1((−∞,c])=Z(max(f−c,0))およびf−1([c,∞))=Z(min(f−c,0))はいずれもXの零集合である。
- (Zn)n∈N≥1をXの零集合の列とする。このとき⋂n∈N≥1Znは零集合である。
証明.{0}はRの閉集合であるから、§E2.12 命題 1.6によりZ(f)は閉集合であり、coz(f)は開集合である。補題 1.2 (2)により∣f∣∈C(X,R)であるから
Vn=∣f∣−1((−n1,n1))(n∈Z≥1)は開集合である。f(x)=0ならばすべてのnでx∈Vnであり、逆にすべてのnで∣f(x)∣<1/nならば、§D1.4 系 2.2により∣f(x)∣>0ではありえないのでf(x)=0である。ゆえにZ(f)=⋂n∈Z≥1Vnであり、(1)が成り立つ。
定数写像は補題 1.2 (1)によりC(X,R)に属し、Z(0)=XとZ(1)=∅である。これが(2)である。
f2+g2とfgは補題 1.2 (1)によりC(X,R)に属する。実数s,tについてs2+t2=0であることとs=t=0であることは同値であり、st=0であることとs=0またはt=0であることは同値である。x∈Xごとにこれをs=f(x)、t=g(x)へ適用すると(3)の二つの等式を得る。二つの零集合の共通部分と和集合が零集合であることから、有限個の場合が個数についての帰納法で従う。共通部分と和集合の個数が0の場合は(2)が与える。
f−c、max(f−c,0)およびmin(f−c,0)は補題 1.2 (1)と補題 1.2 (2)によりC(X,R)に属する。実数tについてt−c=0、max(t−c,0)=0、min(t−c,0)=0はそれぞれt=c、t≤c、t≥cと同値であるから、(4)が成り立つ。
(5)を示す。各n∈N≥1に対してZn=Z(fn)を満たすfn∈C(X,R)をとる。gn=min{∣fn∣,1}とおくと、補題 1.2によりgn∈C(X,R)、0≤gn≤1およびZ(gn)=Znである。補題 2.5によりh=∑n∈N≥12−ngnは連続であり、h(x)=0であることとすべてのn∈N≥1についてgn(x)=0であることとは同値である。したがってZ(h)=⋂n∈N≥1Znである。▨
5 連続関数環
命題 5.1.Xを位相空間とする。
- 各点ごとの和と積により、C(X,R)は可換環である。加法単位元は値0をとる定数写像であり、乗法単位元は値1をとる定数写像である。以下、実数cに対して値cをとる定数写像を同じ記号cで書く。
- f∈C(X,R)がC(X,R)において乗法逆元をもつことと、Z(f)=∅であることは同値である。
証明.補題 1.2 (1)により、f,g∈C(X,R)に対してf+g、fg、−f=(−1)fおよび定数写像はC(X,R)に属する。§E1.5 定義 2.1が課す条件はいずれも各点ごとの等式であり、Rが可換環であることから成り立つ。値0と値1をとる定数写像がそれぞれ加法単位元と乗法単位元である。ゆえに(1)が成り立つ。
fg=1を満たすg∈C(X,R)があれば、各x∈Xでf(x)g(x)=1であるからf(x)=0であり、Z(f)=∅である。逆にZ(f)=∅ならば補題 1.2 (3)により1/f∈C(X,R)であり、f⋅(1/f)=1である。これが(2)である。▨
補題 5.2.Xを位相空間とし、c∈Rに値cをとる定数写像を対応させる写像をκX:R→C(X,R)とする。κXは環準同型であり、X=∅ならば単射である。
証明.補題 1.2 (1)により定数写像はC(X,R)に属する。定数写像の和と積は、対応する定数の和と積をとる定数写像であるから、κXは加法と乗法を保つ。κX(1)=1を満たすのでκXは環準同型である。X=∅のときx∈Xをとると、c=c′ならばκX(c)(x)=c=c′=κX(c′)(x)であるからκXは単射である。▨
6 関数族による分離
命題 6.1. 位相空間Xと実数値連続写像の族(uλ:X→R)λ∈Λが§E2.14 定義 6.1 (1)の意味で点を分離するならば、Xは T2 空間である。
証明. 相異なるx,y∈Xをとる。仮定によりuλ(x)=uλ(y)を満たすλが存在するので、u=uλとおく。ε=∣u(x)−u(y)∣/2>0とおき、
U=u−1((u(x)−ε,u(x)+ε)),V=u−1((u(y)−ε,u(y)+ε))とおく。§E2.12 定義 1.1によりUとVはXの開集合であり、x∈U、y∈Vである。z∈U∩Vとすると
∣u(x)−u(y)∣≤∣u(x)−u(z)∣+∣u(z)−u(y)∣<2ε=∣u(x)−u(y)∣となって両立しない。ゆえにU∩V=∅であり、§E2.15 定義 1.2によりXは T2 空間である。▨