§E2.1距離空間

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実数の上では、二つの数がどれほど近いかを絶対値で測ることができる。しかし、対象が数でない集合へ移ると、近さを比較するための共通の尺度が必要になる。距離は、その尺度を任意の集合上に置くための最も基本的な構造の一つである。たとえば、有限個の空間の組に対して各成分の距離を組み合わせれば、複合的な対象の近さも一つの実数で測ることができる。本記事では、距離空間の基本的な性質と、距離から得られる代表的な構成を扱う。

1 距離の公理と開球

定義 1.1. 集合XXの写像d:X×X→Rd:X\times X\to\mathbb{R}が 距離 (metric) であるとは、任意のx,y,z∈Xx,y,z\in Xについて、次の三条件を満たすことである。

  1. d(x,y)=0d(x,y)=0とx=yx=yが同値である。
  2. d(x,y)=d(y,x)d(x,y)=d(y,x)が成り立つ。
  3. d(x,z)≤d(x,y)+d(y,z)d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)が成り立つ。

距離ddを備えた組(X,d)(X,d)を 距離空間 (metric space) という。

命題 1.2.(X,d)(X,d)を距離空間とする。任意のx,y∈Xx,y\in Xに対してd(x,y)≥0d(x,y)\geq0が成り立つ。

証明. 距離の三角不等式をx,y,xx,y,xに適用すると、0=d(x,x)≤d(x,y)+d(y,x)=2d(x,y)0=d(x,x)\leq d(x,y)+d(y,x)=2d(x,y)を得る。したがってd(x,y)≥0d(x,y)\geq0である。▨

命題 1.3.(X,d)(X,d)を距離空間とする。任意のx,y,z∈Xx,y,z\in Xに対して

∣d(x,z)−d(y,z)∣≤d(x,y)|d(x,z)-d(y,z)|\leq d(x,y)

が成り立つ。

証明.d(x,z)≤d(x,y)+d(y,z)d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)からd(x,z)−d(y,z)≤d(x,y)d(x,z)-d(y,z)\leq d(x,y)を得る。x,yx,yを交換するとd(y,z)−d(x,z)≤d(x,y)d(y,z)-d(x,z)\leq d(x,y)を得る。この二式は主張の絶対値不等式と同値である。▨

定義 1.4.(X,d)(X,d)を距離空間、a∈Xa\in X、r>0r>0とする。集合

B(a,r)={x∈X∣d(a,x)<r}B(a,r)=\{x\in X\mid d(a,x)<r\}

を、aaを中心とする半径rrの開球 (open ball) という。

注意 1.5.a∈B(a,r)a\in B(a,r)が成り立つ。実際、d(a,a)=0<rd(a,a)=0<rである。したがって、正の半径をもつ開球は空でない。

例 1.6.R\mathbb{R}上のd(x,y)=∣x−y∣d(x,y)=|x-y|は距離である。実数の絶対値の三角不等式が第3条件を与え、等号条件と∣x−y∣=∣y−x∣|x-y|=|y-x|が第1、2条件を与える。以後、Rn\mathbb{R}^nの座標ごとの計算ではこの実数の距離を用いる。

2 距離から作る構成

定義 2.1.(X,d)(X,d)を距離空間、Y⊆XY\subseteq Xとする。Y×YY\times Y上へのddの制限

dY(y,y′)=d(y,y′)(y,y′∈Y)d_Y(y,y')=d(y,y')\qquad(y,y'\in Y)

をYY上の制限距離 (restricted metric) という。

命題 2.2.dYd_YはYY上の距離であり、y∈Yy\in Yとr>0r>0に対して

BdY(y,r)=Y∩Bd(y,r)B_{d_Y}(y,r)=Y\cap B_d(y,r)

が成り立つ。

証明.dYd_Yについて、YYの二点はXXの二点でもあるから、ddの三公理はそのままdYd_Yの三公理を与える。またz∈Yz\in Yについて、z∈BdY(y,r)z\in B_{d_Y}(y,r)はd(y,z)<rd(y,z)<rと同値であり、これはz∈Y∩Bd(y,r)z\in Y\cap B_d(y,r)と同値である。▨

定義 2.3. 集合XXに対し、

δ(x,y)={0(x=y),1(x≠y)\delta(x,y)=\begin{cases}0&(x=y),\\1&(x\ne y) \end{cases}

で定める写像をXX上の離散距離 (discrete metric) という。

命題 2.4.δ\deltaはXX上の距離である。さらに0<r≤10<r\leq1ならばBδ(x,r)={x}B_\delta(x,r)=\{x\}であり、r>1r>1ならばBδ(x,r)=XB_\delta(x,r)=Xである。

証明. 同一律と対称律は定義から従う。x=zx=zのとき三角不等式の左辺は00である。x≠zx\ne zのとき左辺は11であり、x=yx=yとy=zy=zが同時に成り立つことはないので、右辺は少なくとも11である。よって三角不等式が成り立つ。開球の記述は、δ(x,z)\delta(x,z)がz=xz=xなら00、そうでなければ11であることから直ちに従う。▨

定義 2.5.n∈N≥1n\in\NNとし、距離空間(Xi,di)(X_i,d_i)(1≤i≤n1\leq i\leq n)に対しX=∏i=1nXiX=\prod_{i=1}^nX_iとおく。実数1≤p<∞1\leq p<\inftyとx,y∈Xx,y\in Xに対して

dp(x,y)=(∑i=1ndi(xi,yi)p)1/p,d∞(x,y)=max⁡1≤i≤ndi(xi,yi)d_p(x,y)=\left(\sum_{i=1}^n d_i(x_i,y_i)^p\right)^{1/p}, \qquad d_\infty(x,y)=\max_{1\leq i\leq n}d_i(x_i,y_i)

と定める。0p=00^p=0と定め、正の底の実数乗は通常の意味で用いる。各dpd_pを有限積のℓp\ell^p距離 (ell-p metric) という。d∞d_\inftyはℓ∞\ell^\infty距離ともいい、とくに最大値距離 (maximum metric) という。これらは各成分の距離から定まるXX上の積距離である。p=1p=1のときはd1(x,y)=∑i=1ndi(xi,yi)d_1(x,y)=\sum_{i=1}^n d_i(x_i,y_i)である。

補題 2.6. 実数p≥1p\geq1、a,b≥0a,b\geq0、0≤λ≤10\leq\lambda\leq1に対し、0p=00^p=0と定めると

((1−λ)a+λb)p≤(1−λ)ap+λbp\bigl((1-\lambda)a+\lambda b\bigr)^p \leq(1-\lambda)a^p+\lambda b^p

が成り立つ。

証明.p=1p=1では両辺が等しい。p>1p>1とし、f(t)=tpf(t)=t^p(t>0t>0)、f(0)=0f(0)=0とおく。正の底については§D1.24 定義 3.5と§D1.24 定理 3.8によりtp=exp⁡(plog⁡t)t^p=\exp(p\log t)である。t>0t>0でh→0h\to0とすると、u=plog⁡tu=p\log t、uh=plog⁡(t+h)u_h=p\log(t+h)に対して

f(t+h)−f(t)h=exp⁡uh−exp⁡uuh−u plog⁡(t+h)−log⁡th⟶pexp⁡(plog⁡t)1t=ptp−1.\frac{f(t+h)-f(t)}{h} =\frac{\exp u_h-\exp u}{u_h-u}\, p\frac{\log(t+h)-\log t}{h} \longrightarrow p\exp(p\log t)\frac1t=pt^{p-1}.

ここで§D1.24 定理 1.3と§D1.24 定理 3.4の微分公式を用いた。log⁡\logは狭義単調増加であり、§D1.24 命題 3.1によりexp⁡\expも狭義単調増加である。したがってtp−1=exp⁡((p−1)log⁡t)t^{p-1}=\exp((p-1)\log t)はt>0t>0で狭義単調増加だから、f′f'も狭義単調増加である。また0<t≤10<t\leq1ではlog⁡t≤0\log t\leq0であり、指数関数の単調性から0≤tp≤t0\leq t^p\leq tとなる。したがってffは00でも連続である。

a=ba=bまたはλ∈{0,1}\lambda\in\{0,1\}の場合は等号が成り立つ。a>ba>bの場合はa,ba,bを交換し、λ\lambdaを1−λ1-\lambdaに置き換えればよい。そこでa<ba<b、0<λ<10<\lambda<1とし、c=(1−λ)a+λbc=(1-\lambda)a+\lambda bとおくとa<c<ba<c<bである。§D1.14 定理 3.1を[a,c][a,c]と[c,b][c,b]に適用すると、a<u<c<v<ba<u<c<v<bを満たすu,vu,vが存在して

f(c)−f(a)c−a=f′(u)≤f′(v)=f(b)−f(c)b−c\frac{f(c)-f(a)}{c-a}=f'(u)\leq f'(v) =\frac{f(b)-f(c)}{b-c}

となる。a=0a=0の場合も、ffの00での連続性によって最初の平均値の定理を適用することができる。c−a=λ(b−a)c-a=\lambda(b-a)、b−c=(1−λ)(b−a)b-c=(1-\lambda)(b-a)を代入して整理すると、f(c)≤(1−λ)f(a)+λf(b)f(c)\leq(1-\lambda)f(a)+\lambda f(b)を得る。▨

定理 2.7 (Minkowski の不等式).n∈N≥1n\in\NN、実数1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、ai,bi≥0a_i,b_i\geq0(1≤i≤n1\leq i\leq n)とする。このとき

(∑i=1n(ai+bi)p)1/p≤(∑i=1naip)1/p+(∑i=1nbip)1/p\left(\sum_{i=1}^n(a_i+b_i)^p\right)^{1/p} \leq\left(\sum_{i=1}^na_i^p\right)^{1/p} +\left(\sum_{i=1}^nb_i^p\right)^{1/p}

が成り立つ。

証明.p=1p=1では両辺が∑i(ai+bi)\sum_i(a_i+b_i)に等しい。p>1p>1とし、A=(∑iaip)1/pA=(\sum_i a_i^p)^{1/p}、B=(∑ibip)1/pB=(\sum_i b_i^p)^{1/p}とおく。A=0A=0なら、非負項の和が00なので、すべてのai=0a_i=0であり、主張は等号となる。B=0B=0の場合も同様である。

A,B>0A,B>0の場合はλ=A/(A+B)\lambda=A/(A+B)とおく。各iiについてai/A,bi/B≥0a_i/A,b_i/B\geq0であり、補題 2.6により

(ai+biA+B)p=(λaiA+(1−λ)biB)p≤λaipAp+(1−λ)bipBp.\left(\frac{a_i+b_i}{A+B}\right)^p =\left(\lambda\frac{a_i}{A}+(1-\lambda)\frac{b_i}{B}\right)^p \leq\lambda\frac{a_i^p}{A^p}+(1-\lambda)\frac{b_i^p}{B^p}.

この不等式をi=1,…,ni=1,\ldots,nについて加えると、右辺はλ+(1−λ)=1\lambda+(1-\lambda)=1となる。両辺に(A+B)p(A+B)^pを掛け、非負実数上での1/p1/p乗の単調性を用いると主張を得る。▨

定理 2.8.n∈N≥1n\in\NNとし、距離空間(Xi,di)(X_i,d_i)(1≤i≤n1\leq i\leq n)に対しX=∏i=1nXiX=\prod_{i=1}^nX_iとおく。実数1≤p<∞1\leq p<\inftyに対し、dpd_pとd∞d_\inftyはともにXX上の距離である。

証明.dpd_pとd∞d_\inftyは非負かつ対称である。非負項の和または最大値が00となることは各di(xi,yi)=0d_i(x_i,y_i)=0と同値であり、各did_iの同一律によってx=yx=yと同値である。任意のx,y,z∈Xx,y,z\in Xと各iiについて

di(xi,zi)≤di(xi,yi)+di(yi,zi)≤d∞(x,y)+d∞(y,z)d_i(x_i,z_i)\leq d_i(x_i,y_i)+d_i(y_i,z_i) \leq d_\infty(x,y)+d_\infty(y,z)

であるから、最大をとってd∞d_\inftyの三角不等式を得る。また、非負実数上でのpp乗と1/p1/p乗の単調性および定理 2.7により

dp(x,z)≤(∑i=1n(di(xi,yi)+di(yi,zi))p)1/p≤dp(x,y)+dp(y,z).\begin{aligned} d_p(x,z)&\leq\left(\sum_{i=1}^n \bigl(d_i(x_i,y_i)+d_i(y_i,z_i)\bigr)^p\right)^{1/p}\\ &\leq d_p(x,y)+d_p(y,z). \end{aligned}

とくにp=1p=1の場合は、各成分の三角不等式を加えたものに等しい。▨

3 Euclid 距離

補題 3.1 (Cauchy--Schwarz の不等式).n∈N≥1n\in\NN、u,v∈Rnu,v\in\mathbb{R}^nに対して

∣∑i=1nuivi∣≤(∑i=1nui2)1/2(∑i=1nvi2)1/2\left|\sum_{i=1}^nu_iv_i\right|\leq \left(\sum_{i=1}^nu_i^2\right)^{1/2} \left(\sum_{i=1}^nv_i^2\right)^{1/2}

が成り立つ。

証明.v=0v=0なら主張は明らかである。v≠0v\ne0とし、実数ttに対する二乗和

0≤∑i=1n(ui−tvi)2=∑iui2−2t∑iuivi+t2∑ivi20\leq\sum_{i=1}^n(u_i-tv_i)^2 =\sum_i u_i^2-2t\sum_i u_iv_i+t^2\sum_i v_i^2

を考える。この二次式の判別式は高々00であるから、(∑iuivi)2≤(∑iui2)(∑ivi2)\bigl(\sum_i u_iv_i\bigr)^2\leq(\sum_i u_i^2)(\sum_i v_i^2)を得る。両辺の非負平方根をとればよい。▨

定義 3.2.n∈Z≥1n\in\mathbb Z_{\geq1}とし、Rn\mathbb{R}^n上で

d2(x,y)=(∑i=1n(xi−yi)2)1/2d_2(x,y)=\left(\sum_{i=1}^n(x_i-y_i)^2\right)^{1/2}

と定める。d2d_2をEuclid 距離 (Euclidean metric) という。各座標に実数の通常距離∣s−t∣|s-t|を入れたとき、d2d_2は有限積のℓ2\ell^2距離に一致する。同じ構成のℓ1\ell^1距離とℓ∞\ell^\infty距離は、それぞれd1(x,y)=∑i=1n∣xi−yi∣d_1(x,y)=\sum_{i=1}^n|x_i-y_i|とd∞(x,y)=max⁡1≤i≤n∣xi−yi∣d_\infty(x,y)=\max_{1\leq i\leq n}|x_i-y_i|である。

命題 3.3.n∈Z≥1n\in\mathbb Z_{\geq1}とする。定義 3.2で定めたd2d_2はRn\mathbb{R}^n上の距離である。

証明. 非負性、対称律、同一律は平方和の性質から従う。w∈Rnw\in\mathbb R^nに対して∥w∥2=(∑i=1nwi2)1/2\lVert w\rVert_2=(\sum_{i=1}^nw_i^2)^{1/2}と書く。u=x−yu=x-y、v=y−zv=y-zとおくと、補題 3.1より

d2(x,z)2=∥u+v∥22=∥u∥22+2∑iuivi+∥v∥22≤(∥u∥2+∥v∥2)2.d_2(x,z)^2=\|u+v\|_2^2 =\|u\|_2^2+2\sum_i u_iv_i+\|v\|_2^2 \leq(\|u\|_2+\|v\|_2)^2.

両辺が非負であるから平方根をとり、d2(x,z)≤d2(x,y)+d2(y,z)d_2(x,z)\leq d_2(x,y)+d_2(y,z)を得る。▨

4 有限積の距離の比較

命題 4.1.n∈N≥1n\in\NNとし、距離空間(Xi,di)(X_i,d_i)(1≤i≤n1\leq i\leq n)の直積XXにdpd_pとd∞d_\inftyを入れる。実数1≤p<∞1\leq p<\infty、x,y∈Xx,y\in X、r>0r>0に対して

d∞(x,y)≤dp(x,y)≤n1/pd∞(x,y)d_\infty(x,y)\leq d_p(x,y)\leq n^{1/p}d_\infty(x,y)

および

Bd∞ ⁣(x,rn1/p)⊆Bdp(x,r)⊆Bd∞(x,r)B_{d_\infty}\!\left(x,\frac{r}{n^{1/p}}\right) \subseteq B_{d_p}(x,r)\subseteq B_{d_\infty}(x,r)

が成り立つ。

証明.ai=di(xi,yi)≥0a_i=d_i(x_i,y_i)\geq0、M=max⁡iaiM=\max_i a_iとおく。各aipa_i^pは非負であり、aip≤Mpa_i^p\leq M^pである。最大値を与える成分のpp乗が和に含まれるから

Mp≤∑i=1naip≤nMp.M^p\leq\sum_{i=1}^n a_i^p\leq nM^p.

非負実数上での1/p1/p乗の単調性から距離の比較を得る。d∞(x,y)<r/n1/pd_\infty(x,y)<r/n^{1/p}ならdp(x,y)≤n1/pd∞(x,y)<rd_p(x,y)\leq n^{1/p}d_\infty(x,y)<rであり、dp(x,y)<rd_p(x,y)<rならd∞(x,y)≤dp(x,y)<rd_\infty(x,y)\leq d_p(x,y)<rである。したがって両方の開球包含が成り立つ。▨

公式 4.2 (Rn\mathbb{R}^nの三つの距離の比較).x,y∈Rnx,y\in\mathbb{R}^nに対して

d∞(x,y)≤d2(x,y)≤d1(x,y)≤n d∞(x,y)d_\infty(x,y)\leq d_2(x,y)\leq d_1(x,y)\leq n\,d_\infty(x,y)

が成り立つ。

証明. 各成分の絶対値はd2(x,y)d_2(x,y)以下であるから、最大をとって第一の不等式を得る。非負数ai=∣xi−yi∣a_i=|x_i-y_i|に対して(∑iai)2≥∑iai2(\sum_i a_i)^2\geq\sum_i a_i^2であるから第二の不等式を得る。各ai≤max⁡jaj=d∞(x,y)a_i\leq\max_j a_j=d_\infty(x,y)を加えると第三の不等式を得る。▨

例 4.3 (R2\mathbb{R}^2の開球).R2\mathbb{R}^2の原点を中心とする半径11のd∞d_\infty-開球は(−1,1)2(-1,1)^2、d1d_1-開球は∣x1∣+∣x2∣<1|x_1|+|x_2|<1を満たすひし形、d2d_2-開球はx12+x22<1x_1^2+x_2^2<1を満たす円板である。三つの集合は異なるが、公式 4.2は各距離が同じ点の近さを定数倍の範囲で比較することを示す。

5 演習

問題 5.1 (三角不等式を満たさない関数).R\mathbb{R}上のq(x,y)=(x−y)2q(x,y)=(x-y)^2が距離でないことを示せ。

解答.

q(0,2)=4q(0,2)=4であるのに対し、q(0,1)+q(1,2)=2q(0,1)+q(1,2)=2である。したがって三角不等式が成り立たない。▨

問題 5.2 (有限積の距離における等号).R2\mathbb{R}^2の二点x=(0,0)x=(0,0)、y=(1,1)y=(1,1)について、d∞(x,y)d_\infty(x,y)、d2(x,y)d_2(x,y)、d1(x,y)d_1(x,y)を計算せよ。

解答.

d∞(x,y)=1d_\infty(x,y)=1、d2(x,y)=2d_2(x,y)=\sqrt2、d1(x,y)=2d_1(x,y)=2である。したがって公式 4.2が与える最初の二つの不等式は狭義不等式であり、第三の不等式d1≤2d∞d_1\leq2d_\inftyは等号である。▨

参考文献

  1. 松坂和夫『集合・位相入門』新装版, 岩波書店, 2018.
  2. James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000.
  3. Stephen Willard, General Topology, Dover Publications, 2004, originally published 1970.

前提記事