1 順序対と有限個の直積
定義 1.1.aとbを集合とする。
(a,b)={{a},{a,b}}と定め、(a,b)をaとbの順序対 (ordered pair) という。aを第一成分、bを第二成分という。
この定義から、(a,b)=(c,d)であることとa=cかつb=dであることが同値になる(命題 1.2)。以後、順序対についてはこの同値だけを用い、右辺の具体的な集合としての形は用いない。
命題 1.2.a、b、cおよびdを集合とする。(a,b)=(c,d)であることと、a=cかつb=dであることは同値である。
証明.a=cかつb=dであるとすると、{a}={c}かつ{a,b}={c,d}であるから(a,b)=(c,d)である。
逆に{{a},{a,b}}={{c},{c,d}}であるとする。まずa=bの場合を扱う。このとき{a,b}={a}であるから左辺は{{a}}であり、{c}と{c,d}はいずれも{a}に等しい。{c}={a}からc=aを得、{c,d}={a}からd=a=bを得る。
次にa=bの場合を扱う。{a}は左辺の元であるから、{a}={c}または{a}={c,d}である。後者が成り立つとするとc=d=aとなり、右辺は{{a}}である。一方a=bにより{a}={a,b}であるから、左辺は相異なる二つの元をもつ集合であり、右辺と等しくない。よって{a}={c}であり、a=cである。同様に{a,b}は右辺の元であるから、{a,b}={c}または{a,b}={c,d}である。{a,b}={c}={a}とするとb=aとなって仮定に反するので、{a,b}={c,d}={a,d}である。b∈{a,d}かつb=aであるからb=dである。▨
定義 1.3.X1とX2を集合とする。
X1×X2={(x1,x2)∣x1∈X1, x2∈X2}と定め、この集合をX1とX2の直積 (Cartesian product) という。
n∈Z≥1とする。n個の対象x1,…,xnに対するn組(x1,…,xn)を、nについての再帰によって
(x1)=x1,(x1,…,xn)=(x1,(x2,…,xn))(n≥2)と定める。n組(x1,…,xn)に対して、xiをその第i番目の成分 (component) という(命題 1.4により第i成分は一意に定まる)。X1,…,Xnを集合として
X1×⋯×Xn={(x1,…,xn)∣xi∈Xi (1≤i≤n)}と定め、この集合をX1,…,Xnの直積という。n=1のとき右辺はX1そのものであり、n=2のときは二つの集合の直積に一致する。X1=⋯=Xn=Xである場合にはXnと書く。
命題 1.4.n∈Z≥1とし、x1,…,xnとy1,…,ynを対象とする。(x1,…,xn)=(y1,…,yn)であることと、すべてのiについてxi=yiであることは同値である。
証明.nについての帰納法による。n=1のとき、定義により(x1)=x1かつ(y1)=y1であるから、主張はx1=y1そのものである。
n≥2とし、n−1について主張が成り立つとする。定義により(x1,…,xn)=(x1,(x2,…,xn))であり、(y1,…,yn)=(y1,(y2,…,yn))である。命題 1.2により、この二つの順序対が等しいことと、x1=y1かつ(x2,…,xn)=(y2,…,yn)が成り立つことは同値である。帰納法の仮定により、後者の等式はxi=yi(2≤i≤n)と同値である。▨
例 1.6.
- X={1,2}とY={a,b,c}に対して、X×Yの元は(1,a)、(1,b)、(1,c)、(2,a)、(2,b)および(2,c)の六つである。
- 実数全体Rに対してR2=R×Rであり、その元は平面の点の座標に対応する。
- 任意の集合Xに対してX×∅=∅である。(x1,x2)∈X×∅となる元があればx2∈∅となり、∅が元をもたないことに反するからである。
- 二つの集合の直積は因子の順序に依存する。X={1}、Y={2}とするとX×Y={(1,2)}かつY×X={(2,1)}であり、1=2と命題 1.2により(1,2)=(2,1)であるから、この二つの集合は相異なる。
2 添字づけられた族と任意和・任意共通部分
定義 2.1.Λを集合とする。Λの各元λに対して一つの対象Aλを定める対応を、Λを添字集合 (index set) とする族 (family) といい、(Aλ)λ∈Λまたは{Aλ}λ∈Λと書く。どちらの記法も同じ対象を表す。族は集合として実現される。すなわち、族(Aλ)λ∈Λとは順序対の集合
{(λ,Aλ)∣λ∈Λ}のことであり、これは各λに値Aλを割り当てる対応のグラフにほかならない。したがって外延性により、二つの族は、添字集合が等しく、かつ各添字における値が等しいとき、またそのときに限り等しい。各Aλが集合である族を集合族 (family of sets) という。
集合族(Aλ)λ∈Λに対して
λ∈Λ⋃Aλ={x∣x∈Aλ0 を満たす λ0∈Λ が存在する}と定め、この集合を族の任意和 (union of a family) という。Λ=∅であるとき
λ∈Λ⋂Aλ={x∣すべての λ∈Λ について x∈Aλ}と定め、この集合を族の任意共通部分 (intersection of a family) という。添字集合が空である場合の値は注意 2.3が定める。
元がすべて集合である集合Aに対しては、A自身を添字集合とし、各A∈AにAを対応させる族の任意和と任意共通部分を
⋃A=A∈A⋃A,⋂A=A∈A⋂A(A=∅)と書く。以上の集合が存在することは、和の原理と分出の原理による。用いる原理そのものは「集合の存在原理」が扱う。
命題 2.4.Λを添字集合、(Aλ)λ∈Λを集合族、Bを集合とする。
- 各μ∈ΛについてAμ⊆⋃λ∈ΛAλである。
- 各μ∈Λについて⋂λ∈ΛAλ⊆Aμである。
- すべてのλ∈ΛについてAλ⊆Bであるならば、⋃λ∈ΛAλ⊆Bである。
- Λ=∅であり、すべてのλ∈ΛについてB⊆Aλであるならば、B⊆⋂λ∈ΛAλである。
(2)ではμ∈ΛによりΛ=∅であるから、任意共通部分が定まる。
証明.(1)μ∈Λをとる。x∈Aμとすると、λ0=μがx∈Aλ0を満たすのでx∈⋃λ∈ΛAλである。
(2)μ∈Λをとる。x∈⋂λ∈ΛAλとすると、すべてのλについてx∈Aλであるから、とくにx∈Aμである。
(3)x∈⋃λ∈ΛAλとすると、x∈Aλ0を満たすλ0∈Λが存在する。仮定によりAλ0⊆Bであるからx∈Bである。
(4)x∈Bとすると、仮定によりすべてのλ∈Λについてx∈Aλであるからx∈⋂λ∈ΛAλである。▨
例 2.5.
- Λ=Z≥1とし、An={k∈Z≥1∣n≤k}とおく。1≤kを満たす各kはA1に属するので⋃n≥1An=Z≥1である。また、各k∈Z≥1はAk+1に属さないので⋂n≥1An=∅である。
- 定値族、すなわちすべてのλ∈ΛについてAλ=Aである族については、Λ=∅のとき⋃λ∈ΛAλ=Aかつ⋂λ∈ΛAλ=Aである。
- 集合Xの冪集合P(X)については⋃P(X)=Xである。また∅∈P(X)であるから、命題 2.4 (2)により⋂P(X)=∅である。
- 族は値の集まりよりも細かいデータである。Λ={1,2}としA1=A2={0}とおいた族と、Λ′={1}としA1={0}とおいた族は、添字集合が異なるので族としては相異なるが、値の集まりはどちらも{{0}}である。任意和と任意共通部分はどちらの族についても{0}である。
3 分配法則と一般のド・モルガン則
定理 3.1.Aを集合、Λを添字集合、(Bλ)λ∈Λを集合族とする。
- 任意のΛについてA∩⋃λ∈ΛBλ=⋃λ∈Λ(A∩Bλ)である。
- Λ=∅であるときA∪⋂λ∈ΛBλ=⋂λ∈Λ(A∪Bλ)である。
とくにΛ={1,2}ととれば、二元の族に対する二つの分配法則
A∩(B1∪B2)=(A∩B1)∪(A∩B2),A∪(B1∩B2)=(A∪B1)∩(A∪B2)を得る。
証明.(1)x∈A∩⋃λ∈ΛBλであることは、x∈Aであり、かつx∈Bλ0を満たすλ0∈Λが存在することと同値である。これは、x∈A∩Bλ0を満たすλ0∈Λが存在すること、すなわちx∈⋃λ∈Λ(A∩Bλ)であることと同値である。Λ=∅のときは両辺とも∅である。
(2)x∈A∪⋂λ∈ΛBλとする。x∈Aであればすべてのλ∈Λについてx∈A∪Bλであり、x∈⋂λ∈ΛBλであればすべてのλについてx∈Bλ⊆A∪Bλである。いずれの場合もx∈⋂λ∈Λ(A∪Bλ)である。
逆にx∈⋂λ∈Λ(A∪Bλ)とする。x∈Aであればx∈A∪⋂λ∈ΛBλである。x∈/Aであるとすると、各λ∈Λについてx∈A∪Bλかつx∈/Aであるからx∈Bλであり、Λ=∅により⋂λ∈ΛBλが定まってx∈⋂λ∈ΛBλである。▨
定理 3.2.Xを集合、Λを添字集合とし、(Aλ)λ∈ΛをXの部分集合からなる集合族とする。Xの部分集合Aに対して、差集合X∖AをXにおけるAの補集合という。Λ=∅である場合には、和集合と共通部分の値を注意 2.3の規約により定める。ただし全体集合は、補集合を取る集合と同じXにとる。
- X∖⋃λ∈ΛAλ=⋂λ∈Λ(X∖Aλ)である。
- X∖⋂λ∈ΛAλ=⋃λ∈Λ(X∖Aλ)である。
- Xの部分集合AについてX∖(X∖A)=Aである。
- ⋂λ∈ΛAλ=X∖⋃λ∈Λ(X∖Aλ)である。すなわち、任意共通部分は補集合と任意和とによって表される。
Λに条件を課していないので、Λ={1,…,n}ととれば有限個の場合の
X∖i=1⋃nAi=i=1⋂n(X∖Ai),X∖i=1⋂nAi=i=1⋃n(X∖Ai)を得、さらにΛ={1,2}ととれば二つの部分集合A,B⊆Xに対する
X∖(A∪B)=(X∖A)∩(X∖B),X∖(A∩B)=(X∖A)∪(X∖B)を得る。
証明. はじめの二つを示す。まずΛ=∅とする。
(1)x∈X∖⋃λ∈ΛAλであることは、x∈Xであり、かつどのλ∈Λについてもx∈/Aλであることと同値であり、これはすべてのλ∈Λについてx∈X∖Aλであることと同値である。実際、後者から前者を導く箇所ではΛ=∅によりλ0∈Λをとり、x∈X∖Aλ0からx∈Xを得る。
(2)x∈X∖⋂λ∈ΛAλであることは、x∈Xであり、かつx∈/Aλ0を満たすλ0∈Λが存在することと同値であり、これはx∈X∖Aλ0を満たすλ0∈Λが存在することと同値である。
Λ=∅とする。族(X∖Aλ)λ∈∅もまたXの部分集合からなる空な集合族であるから、注意 2.3により
λ∈∅⋃Aλ=∅,λ∈∅⋂Aλ=X,λ∈∅⋃(X∖Aλ)=∅,λ∈∅⋂(X∖Aλ)=Xである。(1)はX∖∅=Xから従い、(2)はX∖X=∅から従う。
(3)x∈X∖(X∖A)であることは、x∈Xかつx∈/X∖Aであること、すなわちx∈Xかつx∈Aであることと同値であり、A⊆Xによりこれはx∈Aと同値である。
(4)各X∖AλはXの部分集合であるから、(1)を族(X∖Aλ)λ∈Λへ適用し、(3)を各Aλへ適用して
X∖λ∈Λ⋃(X∖Aλ)=λ∈Λ⋂(X∖(X∖Aλ))=λ∈Λ⋂Aλを得る。▨
例 3.3.定理 3.2で二つの全体集合をそろえる仮定は、Λ=∅の場合に外すことができない。Y={0,1}、X={0}とし、Λ=∅とする。空な集合族の共通部分をXではなくYと定めたとすると、定理 3.2 (1)の右辺⋂λ∈∅(X∖Aλ)はY={0,1}となる。一方、左辺はX∖⋃λ∈∅Aλ=X∖∅={0}である。{0}={0,1}であるから等式は成り立たない。
4 像と逆像との交換則
定理 4.1.f:X→Yを写像、Λを添字集合とし、(Bλ)λ∈ΛをYの部分集合からなる集合族とする。
- 任意のΛについてf−1(⋃λ∈ΛBλ)=⋃λ∈Λf−1(Bλ)である。
- Λ=∅であるときf−1(⋂λ∈ΛBλ)=⋂λ∈Λf−1(Bλ)である。
元がすべてYの部分集合である集合Bに対しては、B自身を添字集合とする族へ(1)を適用してf−1(⋃B)=⋃B∈Bf−1(B)を得る。
証明.(1)逆像の定義により、x∈f−1(⋃λ∈ΛBλ)であることはf(x)∈⋃λ∈ΛBλであることと同値である。これはf(x)∈Bλ0を満たすλ0∈Λが存在すること、すなわちx∈f−1(Bλ0)を満たすλ0∈Λが存在することと同値であり、x∈⋃λ∈Λf−1(Bλ)であることと同値である。
(2)同様に、x∈f−1(⋂λ∈ΛBλ)であることはf(x)∈⋂λ∈ΛBλであることと同値であり、これはすべてのλ∈Λについてf(x)∈Bλであること、すなわちすべてのλ∈Λについてx∈f−1(Bλ)であることと同値である。Λ=∅により、両辺の共通部分がいずれも定まる。▨
定理 4.2.f:X→Yを写像、Λを添字集合とし、(Aλ)λ∈ΛをXの部分集合からなる集合族とする。任意のΛについて
f(λ∈Λ⋃Aλ)=λ∈Λ⋃f(Aλ)が成り立つ。
証明. 像の定義により、y∈f(⋃λ∈ΛAλ)であることは、y=f(x)を満たすx∈⋃λ∈ΛAλが存在することと同値である。これは、λ0∈Λとx∈Aλ0であってy=f(x)を満たすものが存在すること、すなわちy∈f(Aλ0)を満たすλ0∈Λが存在することと同値であり、y∈⋃λ∈Λf(Aλ)であることと同値である。Λ=∅のときは両辺とも∅である。▨
命題 4.3.f:X→Yを写像、Λを空でない添字集合とし、(Aλ)λ∈ΛをXの部分集合からなる集合族とする。
f(λ∈Λ⋂Aλ)⊆λ∈Λ⋂f(Aλ)が成り立つ。
証明.y∈f(⋂λ∈ΛAλ)とし、y=f(x)を満たすx∈⋂λ∈ΛAλをとる。各λ∈Λについてx∈Aλであるからy=f(x)∈f(Aλ)であり、y∈⋂λ∈Λf(Aλ)である。▨
例 4.4.命題 4.3の包含は一般に等号にならない。f:Z→{0,1}を、kが偶数のときf(k)=0、kが奇数のときf(k)=1と定める。Λ=Z≥1とし、An={k∈Z∣n≤k}とおく。各nについてAnはnとn+1を含み、この二つは一方が偶数で他方が奇数であるからf(An)={0,1}であり、したがって⋂n∈Λf(An)={0,1}である。一方、各k∈Zについてk<nを満たすn∈Λをとればk∈/Anであるから⋂n∈ΛAn=∅であり、
f(n∈Λ⋂An)=f(∅)=∅である。この族は、有限個のn1,…,nr∈ΛをどうとってもAn1∩⋯∩Anr=Amax{n1,…,nr}=∅を満たす。すなわち破れは、族のうちの二つが交わらないことから生じるのではなく、無限個にわたって共通部分を取ることから生じる。等号が成り立つためのfについての条件は「写像」が扱う。
5 添字集合をもつ直積
定義 5.1.Iを集合とし、(Ai)i∈Iを集合族とする。Iを添字集合とする族xであって、すべてのi∈Iについてx(i)∈Aiを満たすものの全体を
i∈I∏Aiと書き、この集合を族(Ai)i∈Iの直積という。
一般に、Bを集合とするとき、Iを添字集合とし値がすべてBに属する族の全体をBIと書く。族は順序対の集合であるから、そのような族はどれもI×Bの部分集合であり、BIは冪集合P(I×B)から分出される。直積の元の値はすべて⋃i∈IAiに属するので、B=⋃i∈IAiととれば
i∈I∏Ai={x∈(i∈I⋃Ai)I ∀i∈I, x(i)∈Ai}である。とくに、Iが集合であり各Aiが集合であるならば、この直積は集合である。以上の集合が存在することは、和、冪および分出の原理による。用いる原理そのものは「集合の存在原理」が扱う。
μ∈Iに対して、pμ(x)=x(μ)によって定まる写像pμ:∏i∈IAi→Aμを、第μ成分への射影 (projection) という。射影をπμとも書く。直積の元xについて、値x(i)をxiとも書き、x自身を(xi)i∈Iとも書く。すべてのi∈IについてAi=Aである定値族の直積はAIである。
命題 5.2.Iを集合とし、(Ai)i∈Iと(Yi)i∈Iを集合族とする。
- Ai0=∅を満たすi0∈Iが存在するならば、∏i∈IAi=∅である。
- すべてのi∈IについてAi⊆Yiであるならば、∏i∈IAi⊆∏i∈IYiである。
証明.(1)x∈∏i∈IAiがあるとするとxi0∈Ai0となり、Ai0が元をもたないことに反する。よって∏i∈IAiは元をもたない。
(2)x∈∏i∈IAiとすると、xはIを添字集合とする族であって、各i∈Iについてxi∈Ai⊆Yiを満たす。よってx∈∏i∈IYiである。▨
命題 5.4.n∈Z≥1とし、X1,…,Xnを集合、Λ={1,…,n}とする。x∈∏λ∈ΛXλに対してΦ(x)=(x1,…,xn)と定めると、
Φ:λ∈Λ∏Xλ⟶X1×⋯×Xnは全単射である。さらにΦは各座標を保つ。すなわち、pri:X1×⋯×Xn→Xiを第i成分への射影、πi:∏λ∈ΛXλ→Xiを定義 5.1の射影とすると、1≤i≤nについて
pri∘Φ=πi,πi∘Φ−1=priが成り立つ。
証明.x∈∏λ∈ΛXλをとる。各iについてxi∈Xiであるから(x1,…,xn)∈X1×⋯×Xnであり、Φは写像である。
逆向きの対応を定める。t∈X1×⋯×Xnに対して、命題 1.4により第i成分tiは一意に定まるので、λ↦tλ(λ∈Λ)はΛを添字集合とする族を定める。この族をΨ(t)と書くと、各λについてtλ∈XλであるからΨ(t)∈∏λ∈ΛXλであり、Ψ:X1×⋯×Xn→∏λ∈ΛXλは写像である。
t∈X1×⋯×Xnに対してΦ(Ψ(t))=(t1,…,tn)=tである。x∈∏λ∈ΛXλに対して、Ψ(Φ(x))はλ↦xλで定まる族であり、添字集合と各添字における値がxと一致するのでΨ(Φ(x))=xである。よってΨはΦの逆写像であり、§E1.1 命題 3.8によりΦは全単射である。
座標については、x∈∏λ∈ΛXλと1≤i≤nに対してpri(Φ(x))=xi=πi(x)であり、t∈X1×⋯×Xnに対してπi(Φ−1(t))=πi(Ψ(t))=ti=pri(t)である。▨
命題 5.5.Λを添字集合とし、(Uλ)λ∈Λと(Vλ)λ∈Λを集合族とする。
(λ∈Λ∏Uλ)∩(λ∈Λ∏Vλ)=λ∈Λ∏(Uλ∩Vλ)が成り立つ。
証明.xが左辺に属するとする。xはΛを添字集合とする族であって、すべてのλについてxλ∈Uλを満たし、かつすべてのλについてxλ∈Vλを満たす。したがってすべてのλについてxλ∈Uλ∩Vλであり、xは右辺に属する。
逆にxが右辺に属するとする。xはΛを添字集合とする族であって、すべてのλについてxλ∈Uλ∩Vλを満たす。とくにすべてのλについてxλ∈Uλであり、かつすべてのλについてxλ∈Vλであるから、xは左辺の二つの直積のどちらにも属する。▨
例 5.6. 直積は共通部分とは交換するが、和集合とは交換しない。Λ={1,2}とし、U1=U2={0}、V1=V2={1}とおく。∏λ∈ΛUλの元はx1=x2=0を満たす族ただ一つであり、∏λ∈ΛVλの元はx1=x2=1を満たす族ただ一つであるから、二つの和集合は二つの元をもつ。一方Uλ∪Vλ={0,1}であるから、∏λ∈Λ(Uλ∪Vλ)の元は(x1,x2)が(0,0)、(0,1)、(1,0)および(1,1)のいずれかである四つの族である。とくにx1=0かつx2=1を満たす族は左辺のどちらの直積にも属さない。したがって
(λ∈Λ∏Uλ)∪(λ∈Λ∏Vλ)⊊λ∈Λ∏(Uλ∪Vλ)である。
例 5.8.
- I=Z≥1とし、すべてのnについてAn=Zとおく。∏n∈Z≥1Z=ZZ≥1であり、その元は整数列にほかならない。
- I={1,2}、A1={a,b}、A2={c}とおくと、∏i∈IAiは二つの元をもつ。命題 5.4のΦによる像は{(a,c),(b,c)}=A1×A2である。
- I={1,2}、A1={a}、A2=∅とおくと、命題 5.2 (1)により∏i∈IAi=∅である。因子の一つが空であれば、他の因子が空でなくても直積は空である。
本記事が定義した直積は、「二項演算」が演算の定義域として、「準同型と商」が成分ごとの演算を備えた直積として用いる。任意和と任意共通部分は、「Boolean 代数」における冪集合の分配法則と、後続の単元における位相の公理が用いる。
6 演習
問題 6.1.ΛとMを添字集合、(Aλ)λ∈Λと(Bμ)μ∈Mを集合族とする。直積Λ×Mを添字集合とする族(Aλ∩Bμ)(λ,μ)∈Λ×Mについて
(λ∈Λ⋃Aλ)∩(μ∈M⋃Bμ)=(λ,μ)∈Λ×M⋃(Aλ∩Bμ)が成り立つことを証明せよ。
解答.
xが左辺に属するとする。x∈Aλ0を満たすλ0∈Λと、x∈Bμ0を満たすμ0∈Mが存在する。このとき(λ0,μ0)∈Λ×Mでありx∈Aλ0∩Bμ0であるから、xは右辺に属する。
逆にxが右辺に属するとする。x∈Aλ0∩Bμ0を満たす(λ0,μ0)∈Λ×Mが存在する。命題 1.2により第一成分λ0と第二成分μ0は一意に定まる。x∈Aλ0からx∈⋃λ∈ΛAλであり、x∈Bμ0からx∈⋃μ∈MBμであるから、xは左辺に属する。▨
問題 6.2.Λを空でない添字集合、(Mλ)λ∈Λを集合族とし、各λ∈Λについて(Aλ,μ)μ∈Mλを集合族とする。選択公理を仮定して
λ∈Λ⋂μ∈Mλ⋃Aλ,μ=f∈∏λ∈ΛMλ⋃ λ∈Λ⋂Aλ,f(λ)が成り立つことを証明せよ。右辺の添字集合は直積∏λ∈ΛMλである。
解答.
xが右辺に属するとする。f∈∏λ∈ΛMλであって、すべてのλ∈Λについてx∈Aλ,f(λ)を満たすものが存在する。各λについてf(λ)∈Mλであるからx∈⋃μ∈MλAλ,μであり、xは左辺に属する。この向きに選択公理は要らない。
逆にxが左辺に属するとする。各λ∈Λについて
Sλ={μ∈Mλ∣x∈Aλ,μ}とおく。x∈⋃μ∈MλAλ,μであるからSλ=∅であり、注意 5.7により∏λ∈ΛSλ=∅である。その元fをとると、Sλ⊆Mλと命題 5.2 (2)によりf∈∏λ∈ΛMλである。すべてのλ∈Λについてf(λ)∈Sλ、すなわちx∈Aλ,f(λ)であるからx∈⋂λ∈ΛAλ,f(λ)であり、xは右辺に属する。▨
問題 6.3.Iを集合、(Ai)i∈Iと(Yi)i∈Iを集合族とする。
∏i∈IAi=∅かつ∏i∈IAi⊆∏i∈IYiであるならば、すべてのi∈IについてAi⊆Yiであることを証明せよ。また、∏i∈IAi=∅である場合には、∏i∈IAi⊆∏i∈IYiからAi⊆Yiが従わない例を挙げよ。
解答.
z∈∏i∈IAiをとる。i0∈Iとa∈Ai0をとり、Iを添字集合とする族xを
xi={a,zi,i=i0,i=i0によって定める。すべてのi∈Iについてxi∈Aiであるから、定義 5.1によりx∈∏i∈IAiである。仮定によりx∈∏i∈IYiであるからa=xi0∈Yi0である。a∈Ai0は任意であったからAi0⊆Yi0であり、i0∈Iも任意であったから、すべてのi∈IについてAi⊆Yiである。
I={1,2}、A1={0}、A2=∅、Y1=Y2=∅とおく。命題 5.2 (1)により∏i∈IAi=∅かつ∏i∈IYi=∅であるから包含∏i∈IAi⊆∏i∈IYiが成り立つ。しかしA1={0}はY1=∅に含まれない。▨
問題 6.4.X1を空でない集合とし、Λ={1}とする。命題 5.4のn=1の場合について、Φが∏λ∈{1}XλとX1の間の全単射を与えることを確かめよ。また、X1={∅}である場合に、この二つが相異なる集合であることを示せ。
解答.
Φはx∈∏λ∈{1}Xλに(x1)=x1∈X1を対応させる。逆向きに、t∈X1に対して1↦tで定まる族Ψ(t)を対応させると、Φ(Ψ(t))=tであり、Ψ(Φ(x))は1↦x1で定まる族であってxに等しい。したがってΦは全単射であり、pr1∘Φ=π1が成り立つ。
X1={∅}とする。n=1のとき、定義 1.3により有限直積はX1そのものであり、その唯一の元∅は元をもたない。一方∏λ∈{1}Xλの唯一の元は、1に∅を割り当てる族、すなわち定義 2.1により集合{(1,∅)}であり、これは元(1,∅)をもつ。もし∏λ∈{1}Xλ=X1であるとすると、{(1,∅)}∈X1から{(1,∅)}=∅となり、(1,∅)∈∅に反する。したがってこの二つは相異なる集合である。▨
問題 6.5.Iを集合、(Ai)i∈Iを集合族、μ∈Iとし、pμ:∏i∈IAi→Aμを射影とする。∏i∈IAi=∅であるならばpμは全射であることを証明せよ。また、Ai0=∅を満たすi0∈Iが存在し、かつAμ=∅である場合にはpμが全射でないことを確かめよ。
解答.
z∈∏i∈IAiをとる。a∈Aμに対して、Iを添字集合とする族xを
xi={a,zi,i=μ,i=μによって定める。すべてのi∈Iについてxi∈Aiであるからx∈∏i∈IAiであり、pμ(x)=xμ=aである。a∈Aμは任意であったからpμは全射である。
Ai0=∅を満たすi0∈Iが存在するとする。命題 5.2 (1)により∏i∈IAi=∅であるから、pμの定義域は空であり、その像も空である。Aμ=∅であればこの像はAμと一致しないので、pμは全射ではない。▨