§E1.1写像

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集合を扱うとき、一方の集合の元にもう一方の集合の元を割り当てる規則がつねに現れる。整数にその二倍を割り当てる規則や、平面の点にそのxx座標を割り当てる規則がその例である。しかし割り当ての規則だけを書き並べても、どの集合の元にどの集合の元を割り当てているのかは定まらず、二つの規則が同じものであるかどうかを判定する基準も得られない。写像は、定義域、終域、および各元への割り当てという三つのデータを一組にした概念であり、この不足を埋める。終域をデータに含めることによって、割り当ての規則が一致していても行き先の集合が異なる二つの写像を区別することができる。写像を一つの対象として扱うと、二つの写像をつなぐ合成、割り当てが重複しないことを表す単射性、行き先を余さないことを表す全射性、および部分集合の行き先と出所を表す像と逆像を、集合と論理の言葉だけで定義することができる。本記事は写像を定義し、合成、単射性と全射性、ならびに像と逆像が集合演算と満たす法則を扱う。

1 写像の定義域と終域

定義 1.1.XXとYYを集合とする。直積X×YX\times Yは、x∈Xx\in Xとy∈Yy\in Yの順序対(x,y)(x,y)の全体からなる集合である。X×YX\times Yの部分集合Γ\Gammaが、任意のx∈Xx\in Xに対して(x,y)∈Γ(x,y)\in\Gammaを満たすy∈Yy\in Yがただ一つ存在するという条件を満たすとする。このとき三つ組f=(X,Y,Γ)f=(X,Y,\Gamma)をXXからYYへの写像 (map) という。XXをffの定義域 (domain)、YYをffの終域 (codomain)、Γ\Gammaをffのグラフ (graph) という。この条件は、XXのどの元に対しても値が定まること(全域性)と、その値がただ一つであること(一価性)をあわせて述べている。

ffがXXからYYへの写像であることをf ⁣:X→Yf\colon X\to Yと書く。x∈Xx\in Xに対して、(x,y)∈Γ(x,y)\in\Gammaを満たす唯一のy∈Yy\in Yをffによるxxの値といい、f(x)f(x)と書く。割り当ての規則を明示する場合にはx↦f(x)x\mapsto f(x)と書く。

二つの写像f=(X,Y,Γ)f=(X,Y,\Gamma)とg=(X′,Y′,Γ′)g=(X',Y',\Gamma')が等しいとは、X=X′X=X'、Y=Y′Y=Y'かつΓ=Γ′\Gamma=\Gamma'が成り立つことである。すなわち写像の相等は、定義域、終域およびグラフの三つがすべて一致することである。

注意 1.2. 終域は写像のデータの一つである。したがって、定義域が同じであり各元への割り当ても同じであっても、終域が異なる二つの写像は定義 1.1により異なる写像である。たとえばn↦2nn\mapsto 2nによって定まるZ\mathbb ZからZ\mathbb Zへの写像と、同じ割り当てによって定まるZ\mathbb Zから偶数全体2Z2\mathbb Zへの写像は、異なる写像である。この二つは、値として現れる元が終域を尽くすかどうかという点で異なる振る舞いをする(例 3.3)。

命題 1.3.XXとYYを集合とする。

  1. 写像f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:X→Yg\colon X\to Yについて、f=gf=gが成り立つことと、任意のx∈Xx\in Xに対してf(x)=g(x)f(x)=g(x)が成り立つこととは同値である。
  2. ∅\emptysetからYYへの写像はただ一つ存在する。

証明.(1)f=(X,Y,Γ)f=(X,Y,\Gamma)、g=(X,Y,Γ′)g=(X,Y,\Gamma')とおく。f=gf=gであるとするとΓ=Γ′\Gamma=\Gamma'であり、x∈Xx\in Xに対してf(x)f(x)とg(x)g(x)はいずれも(x,y)∈Γ(x,y)\in\Gammaを満たす唯一のyyであるからf(x)=g(x)f(x)=g(x)である。

逆に、任意のx∈Xx\in Xに対してf(x)=g(x)f(x)=g(x)が成り立つとする。(x,y)∈Γ(x,y)\in\Gammaとするとy=f(x)=g(x)y=f(x)=g(x)であり、(x,g(x))∈Γ′(x,g(x))\in\Gamma'であるから(x,y)∈Γ′(x,y)\in\Gamma'である。よってΓ⊆Γ′\Gamma\subseteq\Gamma'であり、Γ\GammaとΓ′\Gamma'を入れ替えた同じ議論によりΓ′⊆Γ\Gamma'\subseteq\Gammaである。定義域と終域は仮定により一致しているのでf=gf=gである。

(2)∅×Y=∅\emptyset\times Y=\emptysetである。Γ=∅\Gamma=\emptysetとおくと、∅\emptysetには元が存在しないので、定義 1.1の条件は検査すべきxxを一つももたず、空虚に成り立つ。よって(∅,Y,∅)(\emptyset,Y,\emptyset)は∅\emptysetからYYへの写像である。また∅×Y=∅\emptyset\times Y=\emptysetの部分集合は∅\emptysetだけであるから、∅\emptysetからYYへの写像のグラフは∅\emptysetに限る。したがってそのような写像は(∅,Y,∅)(\emptyset,Y,\emptyset)ただ一つである。▨

例 1.4.XXとYYを集合とする。次の各三つ組は定義 1.1の条件を満たすので写像である。

  1. Γ={(x,x)∣x∈X}\Gamma=\{(x,x)\mid x\in X\}とおくと、各x∈Xx\in Xに対して(x,y)∈Γ(x,y)\in\Gammaを満たすyyはxxただ一つであるから、(X,X,Γ)(X,X,\Gamma)はXXからXXへの写像である。
  2. c∈Yc\in Yを一つの元とし、Γ={(x,c)∣x∈X}\Gamma=\{(x,c)\mid x\in X\}とおくと、(X,Y,Γ)(X,Y,\Gamma)はXXからYYへの写像である。
  3. S⊆XS\subseteq Xとし、Γ={(s,s)∣s∈S}\Gamma=\{(s,s)\mid s\in S\}とおくと、(S,X,Γ)(S,X,\Gamma)はSSからXXへの写像である。これをSSからXXへの包含写像という。
  4. Γ={(n,n2)∣n∈Z}\Gamma=\{(n,n^2)\mid n\in\mathbb Z\}とおくと、(Z,Z,Γ)(\mathbb Z,\mathbb Z,\Gamma)はZ\mathbb ZからZ\mathbb Zへの写像であり、n↦n2n\mapsto n^2と書かれる。

定義 1.5.XXとYYを集合とし、c∈Yc\in Yとする。{(x,c)∣x∈X}\{(x,c)\mid x\in X\}をグラフとするXXからYYへの写像を、値ccの定値写像 (constant map) という。

2 合成と恒等写像

定義 2.1.XX、YYおよびZZを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zを写像とする。すなわちggの定義域はffの終域に一致するとする。各x∈Xx\in Xに対してf(x)∈Yf(x)\in Yが定まり、さらにg(f(x))∈Zg(f(x))\in Zがただ一つ定まるから、

Γ={(x,g(f(x)))∣x∈X}\Gamma=\{(x,g(f(x)))\mid x\in X\}

は定義 1.1の条件を満たすX×ZX\times Zの部分集合である。写像(X,Z,Γ)(X,Z,\Gamma)をffとggの合成写像 (composite map) といい、g∘fg\circ fと書く。定義により(g∘f)(x)=g(f(x))(g\circ f)(x)=g(f(x))が任意のx∈Xx\in Xについて成り立つ。

集合XXに対して、{(x,x)∣x∈X}\{(x,x)\mid x\in X\}をグラフとするXXからXXへの写像をXXの恒等写像 (identity map) といい、id⁡X\operatorname{id}_Xと書く。定義によりid⁡X(x)=x\operatorname{id}_X(x)=xが任意のx∈Xx\in Xについて成り立つ。

命題 2.2.XX、YY、ZZおよびWWを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Y、g ⁣:Y→Zg\colon Y\to Z、h ⁣:Z→Wh\colon Z\to Wを写像とする。

  1. h∘(g∘f)=(h∘g)∘fh\circ(g\circ f)=(h\circ g)\circ fが成り立つ。
  2. f∘id⁡X=ff\circ\operatorname{id}_X=fかつid⁡Y∘f=f\operatorname{id}_Y\circ f=fが成り立つ。

証明.(1)g∘fg\circ fはXXからZZへの写像であるからh∘(g∘f)h\circ(g\circ f)はXXからWWへの写像であり、h∘gh\circ gはYYからWWへの写像であるから(h∘g)∘f(h\circ g)\circ fもXXからWWへの写像である。任意のx∈Xx\in Xに対して

(h∘(g∘f))(x)=h((g∘f)(x))=h(g(f(x))),((h∘g)∘f)(x)=(h∘g)(f(x))=h(g(f(x)))\bigl(h\circ(g\circ f)\bigr)(x)=h\bigl((g\circ f)(x)\bigr)=h\bigl(g(f(x))\bigr), \qquad \bigl((h\circ g)\circ f\bigr)(x)=(h\circ g)\bigl(f(x)\bigr)=h\bigl(g(f(x))\bigr)

であるから、命題 1.3 (1)により二つの写像は等しい。

(2)f∘id⁡Xf\circ\operatorname{id}_Xとid⁡Y∘f\operatorname{id}_Y\circ fはいずれもXXからYYへの写像である。任意のx∈Xx\in Xに対して

(f∘id⁡X)(x)=f(id⁡X(x))=f(x),(id⁡Y∘f)(x)=id⁡Y(f(x))=f(x)(f\circ\operatorname{id}_X)(x)=f(\operatorname{id}_X(x))=f(x), \qquad (\operatorname{id}_Y\circ f)(x)=\operatorname{id}_Y(f(x))=f(x)

であるから、命題 1.3 (1)によりf∘id⁡X=ff\circ\operatorname{id}_X=fかつid⁡Y∘f=f\operatorname{id}_Y\circ f=fである。▨

例 2.3.f ⁣:Z→Zf\colon\mathbb Z\to\mathbb Zをf(n)=n+1f(n)=n+1、g ⁣:Z→Zg\colon\mathbb Z\to\mathbb Zをg(n)=n2g(n)=n^2によって定める。任意のn∈Zn\in\mathbb Zに対して(g∘f)(n)=(n+1)2(g\circ f)(n)=(n+1)^2であり、(f∘g)(n)=n2+1(f\circ g)(n)=n^2+1である。n=1n=1では(g∘f)(1)=4(g\circ f)(1)=4と(f∘g)(1)=2(f\circ g)(1)=2が異なるので、命題 1.3 (1)によりg∘fg\circ fとf∘gf\circ gは異なる写像である。合成の記号g∘fg\circ fは、先にffを、次にggを施すことを表す。

3 単射・全射・全単射

定義 3.1.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。

任意のx,x′∈Xx,x'\in Xに対して、f(x)=f(x′)f(x)=f(x')ならばx=x′x=x'が成り立つとき、ffは単射 (injective) であるという。

任意のy∈Yy\in Yに対してf(x)=yf(x)=yを満たすx∈Xx\in Xが存在するとき、ffは全射 (surjective) であるという。

ffが単射かつ全射であるとき、ffは全単射 (bijective) であるという。

写像g ⁣:Y→Xg\colon Y\to Xが

g∘f=id⁡X,f∘g=id⁡Yg\circ f=\operatorname{id}_X,\qquad f\circ g=\operatorname{id}_Y

をともに満たすとき、ggをffの逆写像 (inverse map) という。この二つの等式はffとggを入れ替えても同じ条件を与えるから、ggがffの逆写像であることとffがggの逆写像であることとは同じ条件である。

例 3.2. 次の各写像について単射性と全射性を確かめる。

  1. 集合XXの恒等写像id⁡X\operatorname{id}_Xは全単射である。実際、id⁡X(x)=id⁡X(x′)\operatorname{id}_X(x)=\operatorname{id}_X(x')はx=x′x=x'にほかならず、任意のx∈Xx\in Xに対してid⁡X(x)=x\operatorname{id}_X(x)=xであるから、id⁡X\operatorname{id}_Xは単射かつ全射である。
  2. Z\mathbb ZからZ\mathbb Zへの写像n↦2nn\mapsto 2nは単射であるが全射ではない。2n=2n′2n=2n'ならばn=n′n=n'であり、一方2n=12n=1を満たす整数nnは存在しない。
  3. Z\mathbb ZからN≥0\mathbb{N}_{\geq 0}への写像n↦∣n∣n\mapsto|n|は全射であるが単射ではない。任意のm∈N≥0m\in\mathbb{N}_{\geq 0}に対して∣m∣=m|m|=mであり、一方∣1∣=∣−1∣|1|=|-1|であって1≠−11\neq-1である。
  4. XXとYYをいずれも二つ以上の元をもつ集合とし、c∈Yc\in Yとすると、値ccの定値写像X→YX\to Yは単射でも全射でもない。相異なるx,x′∈Xx,x'\in Xに対して値はともにccであり、ccと異なるYYの元は値として現れない。

例 3.3.f ⁣:Z→Zf\colon\mathbb Z\to\mathbb Zとg ⁣:Z→2Zg\colon\mathbb Z\to2\mathbb Zを、いずれもn↦2nn\mapsto 2nによって定める。注意 1.2のとおりffとggは異なる写像である。ffは例 3.2 (2)により全射ではない。一方ggは、任意のm∈2Zm\in2\mathbb Zに対してm=2nm=2nを満たすn∈Zn\in\mathbb Zが存在するので全射であり、2n=2n′2n=2n'からn=n′n=n'が従うので単射でもある。したがってggは全単射である。全射性は終域に依存する性質であり、割り当ての規則だけでは決まらない。

例 3.4. 定義域と終域が同じ集合であっても、単射性と全射性は互いに他を導かない。s ⁣:N≥0→N≥0s\colon\mathbb{N}_{\geq 0}\to\mathbb{N}_{\geq 0}をs(n)=n+1s(n)=n+1によって定めると、n+1=n′+1n+1=n'+1からn=n′n=n'が従うのでssは単射であるが、s(n)=0s(n)=0を満たすnnは存在しないのでssは全射ではない。またp ⁣:N≥0→N≥0p\colon\mathbb{N}_{\geq 0}\to\mathbb{N}_{\geq 0}をp(0)=0p(0)=0およびp(n+1)=np(n+1)=nによって定めると、任意のmmに対してp(m+1)=mp(m+1)=mであるからppは全射であるが、p(0)=p(1)=0p(0)=p(1)=0であって0≠10\neq1であるからppは単射ではない。

命題 3.5.XX、YYおよびZZを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zを写像とする。

  1. ffとggがともに単射であるならば、g∘fg\circ fは単射である。
  2. ffとggがともに全射であるならば、g∘fg\circ fは全射である。
  3. ffとggがともに全単射であるならば、g∘fg\circ fは全単射である。

証明.(1)x,x′∈Xx,x'\in Xが(g∘f)(x)=(g∘f)(x′)(g\circ f)(x)=(g\circ f)(x')を満たすとする。合成の定義によりg(f(x))=g(f(x′))g(f(x))=g(f(x'))であり、ggが単射であるからf(x)=f(x′)f(x)=f(x')である。ffが単射であるからx=x′x=x'である。

(2)z∈Zz\in Zをとる。ggが全射であるからg(y)=zg(y)=zを満たすy∈Yy\in Yが存在し、ffが全射であるからf(x)=yf(x)=yを満たすx∈Xx\in Xが存在する。このとき(g∘f)(x)=g(f(x))=g(y)=z(g\circ f)(x)=g(f(x))=g(y)=zである。

(3)全単射は単射かつ全射であるから、(1)によりg∘fg\circ fは単射であり、(2)によりg∘fg\circ fは全射である。▨

命題 3.6.XX、YYおよびZZを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zを写像とする。

  1. g∘fg\circ fが単射であるならば、内側の写像ffは単射である。
  2. g∘fg\circ fが全射であるならば、外側の写像ggは全射である。

証明.(1)x,x′∈Xx,x'\in Xがf(x)=f(x′)f(x)=f(x')を満たすとする。両辺にggを施すと(g∘f)(x)=g(f(x))=g(f(x′))=(g∘f)(x′)(g\circ f)(x)=g(f(x))=g(f(x'))=(g\circ f)(x')であり、g∘fg\circ fが単射であるからx=x′x=x'である。

(2)z∈Zz\in Zをとる。g∘fg\circ fが全射であるから(g∘f)(x)=z(g\circ f)(x)=zを満たすx∈Xx\in Xが存在する。y=f(x)∈Yy=f(x)\in Yとおくとg(y)=g(f(x))=zg(y)=g(f(x))=zである。▨

例 3.7.命題 3.6の結論を外側と内側で取り替えることはできない。X={0}X=\{0\}、Y={0,1}Y=\{0,1\}、Z={0}Z=\{0\}とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yをf(0)=0f(0)=0、g ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zをg(0)=g(1)=0g(0)=g(1)=0によって定める。Z=XZ=Xであり(g∘f)(0)=g(f(0))=g(0)=0(g\circ f)(0)=g(f(0))=g(0)=0であるから、命題 1.3 (1)によりg∘f=id⁡Xg\circ f=\operatorname{id}_Xである。よって例 3.2 (1)によりg∘fg\circ fは全単射である。しかしg(0)=g(1)g(0)=g(1)であって0≠10\neq1であるからggは単射ではなく、1∈Y1\in Yはffの値として現れないからffは全射ではない。

命題 3.8.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。g∘f=id⁡Xg\circ f=\operatorname{id}_Xかつf∘g=id⁡Yf\circ g=\operatorname{id}_Yをともに満たす写像g ⁣:Y→Xg\colon Y\to Xが存在することと、ffが全単射であることとは同値である。さらに、この二つの等式を満たすggが存在するならば、そのようなggはただ一つである。このggをf−1f^{-1}と書く。

証明.g∘f=id⁡Xg\circ f=\operatorname{id}_Xかつf∘g=id⁡Yf\circ g=\operatorname{id}_Yを満たすg ⁣:Y→Xg\colon Y\to Xが存在するとする。例 3.2 (1)によりid⁡X\operatorname{id}_Xは単射でありid⁡Y\operatorname{id}_Yは全射である。g∘f=id⁡Xg\circ f=\operatorname{id}_Xは単射であるから、命題 3.6 (1)によりffは単射である。f∘g=id⁡Yf\circ g=\operatorname{id}_Yは全射であるから、命題 3.6 (2)によりffは全射である。よってffは全単射である。

逆にffが全単射であるとする。各y∈Yy\in Yに対して、全射性によりf(x)=yf(x)=yを満たすx∈Xx\in Xが存在し、単射性によりそのようなxxはただ一つである。したがって

Γ={(y,x)∈Y×X∣f(x)=y}\Gamma=\{(y,x)\in Y\times X\mid f(x)=y\}

は定義 1.1の条件を満たし、g=(Y,X,Γ)g=(Y,X,\Gamma)はYYからXXへの写像である。g(y)g(y)はf(g(y))=yf(g(y))=yを満たす唯一の元であるから、任意のy∈Yy\in Yに対して(f∘g)(y)=y=id⁡Y(y)(f\circ g)(y)=y=\operatorname{id}_Y(y)であり、命題 1.3 (1)によりf∘g=id⁡Yf\circ g=\operatorname{id}_Yである。また任意のx∈Xx\in Xに対してf(g(f(x)))=f(x)f(g(f(x)))=f(x)であり、ffの単射性によりg(f(x))=xg(f(x))=xであるから、同じく命題 1.3 (1)によりg∘f=id⁡Xg\circ f=\operatorname{id}_Xである。

ggとg′g'がともに二つの等式を満たすとする。命題 2.2 (2)と命題 2.2 (1)により

g=g∘id⁡Y=g∘(f∘g′)=(g∘f)∘g′=id⁡X∘g′=g′g=g\circ\operatorname{id}_Y=g\circ(f\circ g')=(g\circ f)\circ g'=\operatorname{id}_X\circ g'=g'

であるから、そのような写像はただ一つである。▨

注意 3.9.命題 3.8は二つの等式をともに課している。片方だけを課す場合、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yが単射でありX≠∅X\neq\emptysetであるならば、x0∈Xx_0\in Xを一つ固定し、ffの値として現れるyyにはf(x)=yf(x)=yを満たす唯一のxxを、そうでないyyにはx0x_0を与えることによって、g∘f=id⁡Xg\circ f=\operatorname{id}_Xを満たすg ⁣:Y→Xg\colon Y\to Xを作ることができる。一方、ffが全射である場合にf∘g=id⁡Yf\circ g=\operatorname{id}_Yを満たすggを作るには、各y∈Yy\in Yに対してf(x)=yf(x)=yを満たすxxを一つずつ選ぶ操作が要り、この操作を一般の集合について認めることが選択公理であって、「選択公理と Zorn の補題」が扱う。ffが全単射である場合には、各yyに対するxxが単射性によってただ一つに定まるので、命題 3.8の構成はこの選択を用いない。

系 3.10.XX、YYおよびZZを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zを全単射とする。

  1. f−1f^{-1}は全単射であり、(f−1)−1=f(f^{-1})^{-1}=fである。
  2. g∘fg\circ fは全単射であり、(g∘f)−1=f−1∘g−1(g\circ f)^{-1}=f^{-1}\circ g^{-1}である。

証明.(1)定義 3.1の二つの等式はffとf−1f^{-1}を入れ替えても同じ条件であるから、ffはf−1f^{-1}の逆写像である。よって命題 3.8によりf−1f^{-1}は全単射であり、逆写像の一意性から(f−1)−1=f(f^{-1})^{-1}=fである。

(2)命題 2.2 (1)と命題 2.2 (2)により

(f−1∘g−1)∘(g∘f)=f−1∘((g−1∘g)∘f)=f−1∘(id⁡Y∘f)=f−1∘f=id⁡X(f^{-1}\circ g^{-1})\circ(g\circ f)=f^{-1}\circ\bigl((g^{-1}\circ g)\circ f\bigr)=f^{-1}\circ(\operatorname{id}_Y\circ f)=f^{-1}\circ f=\operatorname{id}_X

であり、同じ計算により

(g∘f)∘(f−1∘g−1)=g∘((f∘f−1)∘g−1)=g∘(id⁡Y∘g−1)=g∘g−1=id⁡Z(g\circ f)\circ(f^{-1}\circ g^{-1})=g\circ\bigl((f\circ f^{-1})\circ g^{-1}\bigr)=g\circ(\operatorname{id}_Y\circ g^{-1})=g\circ g^{-1}=\operatorname{id}_Z

である。したがってf−1∘g−1f^{-1}\circ g^{-1}はg∘fg\circ fの逆写像であり、命題 3.8によりg∘fg\circ fは全単射であって(g∘f)−1=f−1∘g−1(g\circ f)^{-1}=f^{-1}\circ g^{-1}である。▨

4 像と逆像

定義 4.1.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。S⊆XS\subseteq Xに対して

f(S)={f(s)∣s∈S}⊆Yf(S)=\{f(s)\mid s\in S\}\subseteq Y

をffによるSSの像 (image) という。T⊆YT\subseteq Yに対して

f−1(T)={x∈X∣f(x)∈T}⊆Xf^{-1}(T)=\{x\in X\mid f(x)\in T\}\subseteq X

をffによるTTの逆像 (preimage) という。

注意 4.2. 記号f( ⋅ )f(\,\cdot\,)は、元s∈Xs\in Xに対する値f(s)f(s)と、部分集合S⊆XS\subseteq Xに対する像f(S)f(S)の二つに用いられる。記号f−1f^{-1}は、部分集合T⊆YT\subseteq Yに対する逆像f−1(T)f^{-1}(T)と、ffが全単射である場合の逆写像f−1f^{-1}の二つに用いられる。いずれも括弧の中が元であるか部分集合であるかによって読み分ける。ffが全単射でない場合にもf−1(T)f^{-1}(T)は定まるが、写像f−1f^{-1}は定まらない。ffが全単射である場合に二つの読みが一致することは命題 4.13 (1)が述べる。

例 4.3.f ⁣:Z→Zf\colon\mathbb Z\to\mathbb Zをf(n)=n2f(n)=n^2によって定める。S={−2,−1,0,1}S=\{-2,-1,0,1\}に対してf(S)={4,1,0}f(S)=\{4,1,0\}である。T={0,1,2,3,4}T=\{0,1,2,3,4\}に対してf−1(T)={−2,−1,0,1,2}f^{-1}(T)=\{-2,-1,0,1,2\}であり、T′={2,3}T'=\{2,3\}に対しては、平方が22または33になる整数が存在しないのでf−1(T′)=∅f^{-1}(T')=\emptysetである。

命題 4.4.XXとYYを集合、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とし、AAとBBをYYの部分集合とする。

  1. f−1(∅)=∅f^{-1}(\emptyset)=\emptysetかつf−1(Y)=Xf^{-1}(Y)=Xである。
  2. f−1(A∩B)=f−1(A)∩f−1(B)f^{-1}(A\cap B)=f^{-1}(A)\cap f^{-1}(B)である。
  3. f−1(A∪B)=f−1(A)∪f−1(B)f^{-1}(A\cup B)=f^{-1}(A)\cup f^{-1}(B)である。
  4. f−1(A∖B)=f−1(A)∖f−1(B)f^{-1}(A\setminus B)=f^{-1}(A)\setminus f^{-1}(B)である。
  5. f−1(Y∖A)=X∖f−1(A)f^{-1}(Y\setminus A)=X\setminus f^{-1}(A)である。すなわち、終域に関する補集合の逆像は、定義域に関する補集合である。
  6. nnを11以上の整数とし、A1,…,AnA_1,\ldots,A_nをYYの部分集合とすると、f−1(A1∩⋯∩An)=f−1(A1)∩⋯∩f−1(An)f^{-1}(A_1\cap\cdots\cap A_n)=f^{-1}(A_1)\cap\cdots\cap f^{-1}(A_n)およびf−1(A1∪⋯∪An)=f−1(A1)∪⋯∪f−1(An)f^{-1}(A_1\cup\cdots\cup A_n)=f^{-1}(A_1)\cup\cdots\cup f^{-1}(A_n)が成り立つ。

証明.(1)逆像の定義によりf−1(∅)={x∈X∣f(x)∈∅}f^{-1}(\emptyset)=\{x\in X\mid f(x)\in\emptyset\}であり、f(x)∈∅f(x)\in\emptysetを満たすxxは存在しないからf−1(∅)=∅f^{-1}(\emptyset)=\emptysetである。また任意のx∈Xx\in Xに対してf(x)∈Yf(x)\in Yであるからf−1(Y)=Xf^{-1}(Y)=Xである。

(2)x∈Xx\in Xに対して、x∈f−1(A∩B)x\in f^{-1}(A\cap B)が成り立つことはf(x)∈A∩Bf(x)\in A\cap Bが成り立つことであり、これはf(x)∈Af(x)\in Aかつf(x)∈Bf(x)\in B、すなわちx∈f−1(A)x\in f^{-1}(A)かつx∈f−1(B)x\in f^{-1}(B)と同値である。

(3)x∈Xx\in Xに対して、x∈f−1(A∪B)x\in f^{-1}(A\cup B)が成り立つことはf(x)∈Af(x)\in Aまたはf(x)∈Bf(x)\in Bが成り立つことであり、これはx∈f−1(A)x\in f^{-1}(A)またはx∈f−1(B)x\in f^{-1}(B)と同値である。

(4)x∈Xx\in Xに対して、x∈f−1(A∖B)x\in f^{-1}(A\setminus B)が成り立つことはf(x)∈Af(x)\in Aかつf(x)∉Bf(x)\notin Bが成り立つことであり、これはx∈f−1(A)x\in f^{-1}(A)かつx∉f−1(B)x\notin f^{-1}(B)と同値である。

(5)(4)によりf−1(Y∖A)=f−1(Y)∖f−1(A)f^{-1}(Y\setminus A)=f^{-1}(Y)\setminus f^{-1}(A)であり、(1)によりf−1(Y)=Xf^{-1}(Y)=Xである。

(6)n=1n=1では二つの等式の両辺がともにf−1(A1)f^{-1}(A_1)である。nnについて二つの等式が成り立つとする。A1∩⋯∩An+1=(A1∩⋯∩An)∩An+1A_1\cap\cdots\cap A_{n+1}=(A_1\cap\cdots\cap A_n)\cap A_{n+1}であるから、(2)と帰納法の仮定により

f−1(A1∩⋯∩An+1)=f−1(A1∩⋯∩An)∩f−1(An+1)=f−1(A1)∩⋯∩f−1(An+1)f^{-1}(A_1\cap\cdots\cap A_{n+1})=f^{-1}(A_1\cap\cdots\cap A_n)\cap f^{-1}(A_{n+1})=f^{-1}(A_1)\cap\cdots\cap f^{-1}(A_{n+1})

である。和集合についても、A1∪⋯∪An+1=(A1∪⋯∪An)∪An+1A_1\cup\cdots\cup A_{n+1}=(A_1\cup\cdots\cup A_n)\cup A_{n+1}と(3)により同じ計算が成り立つ。したがって帰納法により、すべての11以上の整数nnについて主張が成り立つ。▨

命題 4.5.XXとYYを集合、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とし、AAとBBをXXの部分集合とする。

  1. f(∅)=∅f(\emptyset)=\emptysetである。
  2. A⊆BA\subseteq Bであるならばf(A)⊆f(B)f(A)\subseteq f(B)である。
  3. f(A∪B)=f(A)∪f(B)f(A\cup B)=f(A)\cup f(B)である。
  4. f(A∩B)⊆f(A)∩f(B)f(A\cap B)\subseteq f(A)\cap f(B)である。
  5. f(A)∖f(B)⊆f(A∖B)f(A)\setminus f(B)\subseteq f(A\setminus B)である。

証明.(1)像の定義によりf(∅)={f(s)∣s∈∅}f(\emptyset)=\{f(s)\mid s\in\emptyset\}であり、∅\emptysetには元が存在しないからf(∅)=∅f(\emptyset)=\emptysetである。

(2)y∈f(A)y\in f(A)とするとy=f(a)y=f(a)を満たすa∈Aa\in Aが存在する。仮定によりa∈Ba\in Bであるからy∈f(B)y\in f(B)である。

(3)y∈f(A∪B)y\in f(A\cup B)とするとy=f(x)y=f(x)を満たすx∈A∪Bx\in A\cup Bが存在する。x∈Ax\in Aならばy∈f(A)y\in f(A)であり、x∈Bx\in Bならばy∈f(B)y\in f(B)であるから、y∈f(A)∪f(B)y\in f(A)\cup f(B)である。逆の包含は、A⊆A∪BA\subseteq A\cup BとB⊆A∪BB\subseteq A\cup Bに(2)を適用して得られる。

(4)A∩B⊆AA\cap B\subseteq AとA∩B⊆BA\cap B\subseteq Bに(2)を適用するとf(A∩B)⊆f(A)f(A\cap B)\subseteq f(A)かつf(A∩B)⊆f(B)f(A\cap B)\subseteq f(B)である。

(5)y∈f(A)∖f(B)y\in f(A)\setminus f(B)とすると、y=f(a)y=f(a)を満たすa∈Aa\in Aが存在し、かつy∉f(B)y\notin f(B)である。a∈Ba\in Bであるとするとy=f(a)∈f(B)y=f(a)\in f(B)となって矛盾するのでa∉Ba\notin Bである。したがってa∈A∖Ba\in A\setminus Bでありy∈f(A∖B)y\in f(A\setminus B)である。▨

例 4.6.命題 4.5 (4)と命題 4.5 (5)の包含を等号に変えることはできない。X={0,1}X=\{0,1\}、Y={0}Y=\{0\}とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yをf(0)=f(1)=0f(0)=f(1)=0によって定める。A={0}A=\{0\}、B={1}B=\{1\}とおくとA∩B=∅A\cap B=\emptysetであるから、命題 4.5 (1)によりf(A∩B)=∅f(A\cap B)=\emptysetであり、一方f(A)=f(B)={0}f(A)=f(B)=\{0\}であるからf(A)∩f(B)={0}f(A)\cap f(B)=\{0\}である。またf(A)∖f(B)=∅f(A)\setminus f(B)=\emptysetであるのに対し、A∖B={0}A\setminus B=\{0\}であるからf(A∖B)={0}f(A\setminus B)=\{0\}である。このffはf(0)=f(1)f(0)=f(1)であって単射ではない。

命題 4.7.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。

  1. ffが全射であることとf(X)=Yf(X)=Yが成り立つこととは同値である。
  2. fˉ(x)=f(x)\bar f(x)=f(x)という等式によってXXからf(X)f(X)への写像fˉ\bar fが定まり、fˉ\bar fは全射である。さらにffが単射であるならばfˉ\bar fは全単射である。

証明.(1)像の定義によりf(X)⊆Yf(X)\subseteq Yである。ffが全射であるとすると、任意のy∈Yy\in Yに対してf(x)=yf(x)=yを満たすx∈Xx\in Xが存在するのでy∈f(X)y\in f(X)であり、Y⊆f(X)Y\subseteq f(X)が成り立つ。よってf(X)=Yf(X)=Yである。逆にf(X)=Yf(X)=Yであるとすると、任意のy∈Yy\in Yはy∈f(X)y\in f(X)を満たすのでf(x)=yf(x)=yを満たすx∈Xx\in Xが存在する。よってffは全射である。

(2)各x∈Xx\in Xに対してf(x)∈f(X)f(x)\in f(X)であるから、{(x,f(x))∣x∈X}\{(x,f(x))\mid x\in X\}はX×f(X)X\times f(X)の部分集合であり、定義 1.1の条件を満たす。よってfˉ\bar fはXXからf(X)f(X)への写像である。y∈f(X)y\in f(X)をとるとy=f(x)y=f(x)を満たすx∈Xx\in Xが存在し、fˉ(x)=f(x)=y\bar f(x)=f(x)=yであるからfˉ\bar fは全射である。ffが単射であるとすると、fˉ(x)=fˉ(x′)\bar f(x)=\bar f(x')はf(x)=f(x′)f(x)=f(x')にほかならないのでx=x′x=x'であり、fˉ\bar fは単射である。したがってfˉ\bar fは全単射である。▨

命題 4.8.XX、YYおよびZZを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zを写像とする。

  1. 任意のC⊆ZC\subseteq Zに対して(g∘f)−1(C)=f−1(g−1(C))(g\circ f)^{-1}(C)=f^{-1}\bigl(g^{-1}(C)\bigr)が成り立つ。
  2. 任意のA⊆XA\subseteq Xに対して(g∘f)(A)=g(f(A))(g\circ f)(A)=g\bigl(f(A)\bigr)が成り立つ。
  3. 任意のS⊆XS\subseteq Xに対してid⁡X(S)=S\operatorname{id}_X(S)=Sかつid⁡X−1(S)=S\operatorname{id}_X^{-1}(S)=Sが成り立つ。

証明.(1)x∈Xx\in Xに対して、x∈(g∘f)−1(C)x\in(g\circ f)^{-1}(C)が成り立つことはg(f(x))∈Cg(f(x))\in Cが成り立つことであり、これはf(x)∈g−1(C)f(x)\in g^{-1}(C)、すなわちx∈f−1(g−1(C))x\in f^{-1}(g^{-1}(C))と同値である。

(2)z∈(g∘f)(A)z\in(g\circ f)(A)とすると、z=g(f(a))z=g(f(a))を満たすa∈Aa\in Aが存在する。f(a)∈f(A)f(a)\in f(A)であるからz∈g(f(A))z\in g(f(A))である。逆にz∈g(f(A))z\in g(f(A))とするとz=g(y)z=g(y)を満たすy∈f(A)y\in f(A)が存在し、さらにy=f(a)y=f(a)を満たすa∈Aa\in Aが存在するのでz=g(f(a))=(g∘f)(a)∈(g∘f)(A)z=g(f(a))=(g\circ f)(a)\in(g\circ f)(A)である。

(3)像の定義によりid⁡X(S)={id⁡X(s)∣s∈S}={s∣s∈S}=S\operatorname{id}_X(S)=\{\operatorname{id}_X(s)\mid s\in S\}=\{s\mid s\in S\}=Sである。逆像の定義によりid⁡X−1(S)={x∈X∣id⁡X(x)∈S}={x∈X∣x∈S}=S\operatorname{id}_X^{-1}(S)=\{x\in X\mid \operatorname{id}_X(x)\in S\}=\{x\in X\mid x\in S\}=Sである。▨

命題 4.9.XXとYYを集合、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。任意のB⊆YB\subseteq Yに対して

f(f−1(B))=B∩f(X)f\bigl(f^{-1}(B)\bigr)=B\cap f(X)

が成り立つ。

証明.y∈f(f−1(B))y\in f(f^{-1}(B))とすると、y=f(x)y=f(x)を満たすx∈f−1(B)x\in f^{-1}(B)が存在する。逆像の定義によりf(x)∈Bf(x)\in Bであるからy∈By\in Bであり、またy=f(x)∈f(X)y=f(x)\in f(X)であるからy∈B∩f(X)y\in B\cap f(X)である。

逆にy∈B∩f(X)y\in B\cap f(X)とすると、y∈f(X)y\in f(X)からy=f(x)y=f(x)を満たすx∈Xx\in Xが存在する。f(x)=y∈Bf(x)=y\in Bであるからx∈f−1(B)x\in f^{-1}(B)であり、y=f(x)∈f(f−1(B))y=f(x)\in f(f^{-1}(B))である。▨

命題 4.10.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。

  1. 任意のA⊆XA\subseteq Xに対してA⊆f−1(f(A))A\subseteq f^{-1}\bigl(f(A)\bigr)が成り立ち、任意のB⊆YB\subseteq Yに対してf(f−1(B))⊆Bf\bigl(f^{-1}(B)\bigr)\subseteq Bが成り立つ。
  2. ffが単射であるならば、任意のA⊆XA\subseteq Xに対してf−1(f(A))=Af^{-1}\bigl(f(A)\bigr)=Aが成り立つ。
  3. ffが全射であるならば、任意のB⊆YB\subseteq Yに対してf(f−1(B))=Bf\bigl(f^{-1}(B)\bigr)=Bが成り立つ。

証明.(1)a∈Aa\in Aとするとf(a)∈f(A)f(a)\in f(A)であるから、逆像の定義によりa∈f−1(f(A))a\in f^{-1}(f(A))である。また命題 4.9によりf(f−1(B))=B∩f(X)⊆Bf(f^{-1}(B))=B\cap f(X)\subseteq Bである。

(2)包含A⊆f−1(f(A))A\subseteq f^{-1}(f(A))は(1)が与える。逆にx∈f−1(f(A))x\in f^{-1}(f(A))とするとf(x)∈f(A)f(x)\in f(A)であるから、f(x)=f(a)f(x)=f(a)を満たすa∈Aa\in Aが存在する。ffが単射であるからx=a∈Ax=a\in Aである。

(3)命題 4.9によりf(f−1(B))=B∩f(X)f(f^{-1}(B))=B\cap f(X)であり、命題 4.7 (1)によりf(X)=Yf(X)=Yであるから、B∩f(X)=B∩Y=BB\cap f(X)=B\cap Y=Bである。▨

例 4.11.命題 4.10 (2)と命題 4.10 (3)から単射性と全射性の仮定を落とすことはできない。X=Y={0,1}X=Y=\{0,1\}とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yをf(0)=f(1)=0f(0)=f(1)=0によって定める。f(0)=f(1)f(0)=f(1)であるからffは単射でなく、11はffの値として現れないからffは全射でもない。

A={0}A=\{0\}に対してf(A)={0}f(A)=\{0\}でありf−1(f(A))={0,1}f^{-1}(f(A))=\{0,1\}であるから、f−1(f(A))≠Af^{-1}(f(A))\neq Aである。B={1}B=\{1\}に対してf−1(B)=∅f^{-1}(B)=\emptysetでありf(f−1(B))=∅f(f^{-1}(B))=\emptysetであるから、f(f−1(B))≠Bf(f^{-1}(B))\neq Bである。後者はB∩f(X)={1}∩{0}=∅B\cap f(X)=\{1\}\cap\{0\}=\emptysetという命題 4.9の値に一致している。

命題 4.12.XXとYYを集合、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを単射とし、AAとBBをXXの部分集合とする。

  1. f(A∩B)=f(A)∩f(B)f(A\cap B)=f(A)\cap f(B)が成り立つ。
  2. f(A∖B)=f(A)∖f(B)f(A\setminus B)=f(A)\setminus f(B)が成り立つ。

証明.(1)包含f(A∩B)⊆f(A)∩f(B)f(A\cap B)\subseteq f(A)\cap f(B)は命題 4.5 (4)が与える。逆にy∈f(A)∩f(B)y\in f(A)\cap f(B)とすると、y=f(a)y=f(a)を満たすa∈Aa\in Aとy=f(b)y=f(b)を満たすb∈Bb\in Bが存在する。f(a)=f(b)f(a)=f(b)とffの単射性からa=ba=bであり、この元はA∩BA\cap Bに属する。よってy∈f(A∩B)y\in f(A\cap B)である。

(2)包含f(A)∖f(B)⊆f(A∖B)f(A)\setminus f(B)\subseteq f(A\setminus B)は命題 4.5 (5)が与える。逆にy∈f(A∖B)y\in f(A\setminus B)とすると、y=f(a)y=f(a)を満たすa∈A∖Ba\in A\setminus Bが存在し、y∈f(A)y\in f(A)である。y∈f(B)y\in f(B)であるとするとy=f(b)y=f(b)を満たすb∈Bb\in Bが存在し、ffの単射性からa=b∈Ba=b\in Bとなってa∉Ba\notin Bに反する。よってy∉f(B)y\notin f(B)でありy∈f(A)∖f(B)y\in f(A)\setminus f(B)である。▨

命題 4.13.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを全単射とする。

  1. 任意のT⊆YT\subseteq Yに対して、ffによるTTの逆像と、逆写像f−1f^{-1}によるTTの像とは一致する。
  2. 任意のA⊆XA\subseteq Xに対してf(X∖A)=Y∖f(A)f(X\setminus A)=Y\setminus f(A)が成り立つ。

証明.(1)T⊆YT\subseteq Yとし、f−1f^{-1}によるTTの像をf−1[T]f^{-1}[T]と書いて区別する。x∈f−1[T]x\in f^{-1}[T]とするとx=f−1(y)x=f^{-1}(y)を満たすy∈Ty\in Tが存在し、f(x)=f(f−1(y))=y∈Tf(x)=f(f^{-1}(y))=y\in TであるからxxはffによるTTの逆像に属する。逆にxxがffによるTTの逆像に属するとするとf(x)∈Tf(x)\in Tであり、y=f(x)y=f(x)とおけばf−1(y)=f−1(f(x))=xf^{-1}(y)=f^{-1}(f(x))=xであるからx∈f−1[T]x\in f^{-1}[T]である。

(2)ffは単射であるから、命題 4.12 (2)によりf(X∖A)=f(X)∖f(A)f(X\setminus A)=f(X)\setminus f(A)である。ffは全射であるから、命題 4.7 (1)によりf(X)=Yf(X)=Yである。▨

注意 4.14. 本記事が扱う集合演算との法則は、二つの部分集合と有限個の部分集合についてのものである。任意個の添字をもつ集合族の和集合と共通部分、およびそれらと像・逆像との交換は「集合族」が扱う。順序対を集合として構成することと、任意個の集合の直積を定めることも「集合族」が扱う。また、本記事で定めた合成と全単射は、「同値関係と商」が商集合への写像の降下と標準全射を構成するときの土台になる。

5 演習

問題 5.1.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。次の三条件が同値であることを証明せよ。

  1. ffは単射である。
  2. 任意のA⊆XA\subseteq Xに対してf−1(f(A))=Af^{-1}(f(A))=Aが成り立つ。
  3. 任意のA,B⊆XA,B\subseteq Xに対してf(A∩B)=f(A)∩f(B)f(A\cap B)=f(A)\cap f(B)が成り立つ。
解答.

(1)⇒\Rightarrow(2)は命題 4.10 (2)が与え、(1)⇒\Rightarrow(3)は命題 4.12 (1)が与える。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。x,x′∈Xx,x'\in Xがf(x)=f(x′)f(x)=f(x')を満たすとする。A={x}A=\{x\}とおくとf(A)={f(x)}f(A)=\{f(x)\}であり、f(x′)=f(x)∈f(A)f(x')=f(x)\in f(A)であるからx′∈f−1(f(A))x'\in f^{-1}(f(A))である。仮定によりf−1(f(A))=A={x}f^{-1}(f(A))=A=\{x\}であるからx′=xx'=xである。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。x,x′∈Xx,x'\in Xがf(x)=f(x′)f(x)=f(x')を満たし、x≠x′x\neq x'であるとする。A={x}A=\{x\}、B={x′}B=\{x'\}とおくとA∩B=∅A\cap B=\emptysetであるから、命題 4.5 (1)によりf(A∩B)=∅f(A\cap B)=\emptysetである。一方f(A)=f(B)={f(x)}f(A)=f(B)=\{f(x)\}であるからf(A)∩f(B)={f(x)}f(A)\cap f(B)=\{f(x)\}であり、これは空集合ではない。これは仮定に反するのでx=x′x=x'である。▨

問題 5.2.XX、YYおよびZZを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yとg ⁣:Y→Zg\colon Y\to Zを写像とする。g∘fg\circ fが全単射であり、かつffが全射であるならば、ffとggはともに全単射であることを証明せよ。

解答.

g∘fg\circ fは単射であるから、命題 3.6 (1)によりffは単射である。仮定によりffは全射であるから、ffは全単射である。

g∘fg\circ fは全射であるから、命題 3.6 (2)によりggは全射である。ggの単射性を示す。y,y′∈Yy,y'\in Yがg(y)=g(y′)g(y)=g(y')を満たすとする。ffが全射であるからf(x)=yf(x)=yとf(x′)=y′f(x')=y'を満たすx,x′∈Xx,x'\in Xが存在し、(g∘f)(x)=g(y)=g(y′)=(g∘f)(x′)(g\circ f)(x)=g(y)=g(y')=(g\circ f)(x')である。g∘fg\circ fが単射であるからx=x′x=x'であり、y=f(x)=f(x′)=y′y=f(x)=f(x')=y'である。よってggは単射であり、ggは全単射である。▨

問題 5.3.XXとYYを集合とし、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを写像とする。ffが全射であることと、YYの部分集合TT、T′T'についてf−1(T)=f−1(T′)f^{-1}(T)=f^{-1}(T')が成り立つならばつねにT=T′T=T'が成り立つこととは同値であることを証明せよ。

解答.

ffが全射であるとし、YYの部分集合TT、T′T'がf−1(T)=f−1(T′)f^{-1}(T)=f^{-1}(T')を満たすとする。命題 4.10 (3)によりT=f(f−1(T))T=f(f^{-1}(T))かつT′=f(f−1(T′))T'=f(f^{-1}(T'))であるから、T=f(f−1(T))=f(f−1(T′))=T′T=f(f^{-1}(T))=f(f^{-1}(T'))=T'である。

逆に、ffが全射でないと仮定する。命題 4.7 (1)によりf(X)≠Yf(X)\neq Yであり、f(X)⊆Yf(X)\subseteq Yであるからy0∈Y∖f(X)y_0\in Y\setminus f(X)をとることができる。T={y0}T=\{y_0\}、T′=∅T'=\emptysetとおくと、f(x)=y0f(x)=y_0を満たすx∈Xx\in Xは存在しないのでf−1(T)=∅f^{-1}(T)=\emptysetであり、命題 4.4 (1)によりf−1(T′)=∅f^{-1}(T')=\emptysetである。したがってf−1(T)=f−1(T′)f^{-1}(T)=f^{-1}(T')であるが、y0∈Ty_0\in Tかつy0∉T′y_0\notin T'であるからT≠T′T\neq T'である。よって、f−1(T)=f−1(T′)f^{-1}(T)=f^{-1}(T')からつねにT=T′T=T'が従うならば、ffは全射である。▨

参考文献

  1. Paul R. Halmos, Naive Set Theory, Undergraduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1974, originally published 1960.逆写像と合成の基本性質を参考にした。
  2. Herbert B. Enderton, Elements of Set Theory, Academic Press, 1977.像と逆像が集合演算と満たす法則、および単射性・全射性との関係を参考にした。
  3. 松坂和夫『集合・位相入門』新装版, 岩波書店, 2018.単射・全射・全単射と逆写像の日本語の標準的な扱いを参考にした。

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