1 写像の定義域と終域
定義 1.1.XとYを集合とする。直積X×Yは、x∈Xとy∈Yの順序対(x,y)の全体からなる集合である。X×Yの部分集合Γが、任意のx∈Xに対して(x,y)∈Γを満たすy∈Yがただ一つ存在するという条件を満たすとする。このとき三つ組f=(X,Y,Γ)をXからYへの写像 (map) という。Xをfの定義域 (domain)、Yをfの終域 (codomain)、Γをfのグラフ (graph) という。この条件は、Xのどの元に対しても値が定まること(全域性)と、その値がただ一つであること(一価性)をあわせて述べている。
fがXからYへの写像であることをf:X→Yと書く。x∈Xに対して、(x,y)∈Γを満たす唯一のy∈Yをfによるxの値といい、f(x)と書く。割り当ての規則を明示する場合にはx↦f(x)と書く。
二つの写像f=(X,Y,Γ)とg=(X′,Y′,Γ′)が等しいとは、X=X′、Y=Y′かつΓ=Γ′が成り立つことである。すなわち写像の相等は、定義域、終域およびグラフの三つがすべて一致することである。
注意 1.2. 終域は写像のデータの一つである。したがって、定義域が同じであり各元への割り当ても同じであっても、終域が異なる二つの写像は定義 1.1により異なる写像である。たとえばn↦2nによって定まるZからZへの写像と、同じ割り当てによって定まるZから偶数全体2Zへの写像は、異なる写像である。この二つは、値として現れる元が終域を尽くすかどうかという点で異なる振る舞いをする(例 3.3)。
命題 1.3.XとYを集合とする。
- 写像f:X→Yとg:X→Yについて、f=gが成り立つことと、任意のx∈Xに対してf(x)=g(x)が成り立つこととは同値である。
- ∅からYへの写像はただ一つ存在する。
証明.(1)f=(X,Y,Γ)、g=(X,Y,Γ′)とおく。f=gであるとするとΓ=Γ′であり、x∈Xに対してf(x)とg(x)はいずれも(x,y)∈Γを満たす唯一のyであるからf(x)=g(x)である。
逆に、任意のx∈Xに対してf(x)=g(x)が成り立つとする。(x,y)∈Γとするとy=f(x)=g(x)であり、(x,g(x))∈Γ′であるから(x,y)∈Γ′である。よってΓ⊆Γ′であり、ΓとΓ′を入れ替えた同じ議論によりΓ′⊆Γである。定義域と終域は仮定により一致しているのでf=gである。
(2)∅×Y=∅である。Γ=∅とおくと、∅には元が存在しないので、定義 1.1の条件は検査すべきxを一つももたず、空虚に成り立つ。よって(∅,Y,∅)は∅からYへの写像である。また∅×Y=∅の部分集合は∅だけであるから、∅からYへの写像のグラフは∅に限る。したがってそのような写像は(∅,Y,∅)ただ一つである。▨
例 1.4.XとYを集合とする。次の各三つ組は定義 1.1の条件を満たすので写像である。
- Γ={(x,x)∣x∈X}とおくと、各x∈Xに対して(x,y)∈Γを満たすyはxただ一つであるから、(X,X,Γ)はXからXへの写像である。
- c∈Yを一つの元とし、Γ={(x,c)∣x∈X}とおくと、(X,Y,Γ)はXからYへの写像である。
- S⊆Xとし、Γ={(s,s)∣s∈S}とおくと、(S,X,Γ)はSからXへの写像である。これをSからXへの包含写像という。
- Γ={(n,n2)∣n∈Z}とおくと、(Z,Z,Γ)はZからZへの写像であり、n↦n2と書かれる。
定義 1.5.XとYを集合とし、c∈Yとする。{(x,c)∣x∈X}をグラフとするXからYへの写像を、値cの定値写像 (constant map) という。
2 合成と恒等写像
定義 2.1.X、YおよびZを集合とし、f:X→Yとg:Y→Zを写像とする。すなわちgの定義域はfの終域に一致するとする。各x∈Xに対してf(x)∈Yが定まり、さらにg(f(x))∈Zがただ一つ定まるから、
Γ={(x,g(f(x)))∣x∈X}は定義 1.1の条件を満たすX×Zの部分集合である。写像(X,Z,Γ)をfとgの合成写像 (composite map) といい、g∘fと書く。定義により(g∘f)(x)=g(f(x))が任意のx∈Xについて成り立つ。
集合Xに対して、{(x,x)∣x∈X}をグラフとするXからXへの写像をXの恒等写像 (identity map) といい、idXと書く。定義によりidX(x)=xが任意のx∈Xについて成り立つ。
命題 2.2.X、Y、ZおよびWを集合とし、f:X→Y、g:Y→Z、h:Z→Wを写像とする。
- h∘(g∘f)=(h∘g)∘fが成り立つ。
- f∘idX=fかつidY∘f=fが成り立つ。
証明.(1)g∘fはXからZへの写像であるからh∘(g∘f)はXからWへの写像であり、h∘gはYからWへの写像であるから(h∘g)∘fもXからWへの写像である。任意のx∈Xに対して
(h∘(g∘f))(x)=h((g∘f)(x))=h(g(f(x))),((h∘g)∘f)(x)=(h∘g)(f(x))=h(g(f(x)))であるから、命題 1.3 (1)により二つの写像は等しい。
(2)f∘idXとidY∘fはいずれもXからYへの写像である。任意のx∈Xに対して
(f∘idX)(x)=f(idX(x))=f(x),(idY∘f)(x)=idY(f(x))=f(x)であるから、命題 1.3 (1)によりf∘idX=fかつidY∘f=fである。▨
例 2.3.f:Z→Zをf(n)=n+1、g:Z→Zをg(n)=n2によって定める。任意のn∈Zに対して(g∘f)(n)=(n+1)2であり、(f∘g)(n)=n2+1である。n=1では(g∘f)(1)=4と(f∘g)(1)=2が異なるので、命題 1.3 (1)によりg∘fとf∘gは異なる写像である。合成の記号g∘fは、先にfを、次にgを施すことを表す。
3 単射・全射・全単射
定義 3.1.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。
任意のx,x′∈Xに対して、f(x)=f(x′)ならばx=x′が成り立つとき、fは単射 (injective) であるという。
任意のy∈Yに対してf(x)=yを満たすx∈Xが存在するとき、fは全射 (surjective) であるという。
fが単射かつ全射であるとき、fは全単射 (bijective) であるという。
写像g:Y→Xが
g∘f=idX,f∘g=idYをともに満たすとき、gをfの逆写像 (inverse map) という。この二つの等式はfとgを入れ替えても同じ条件を与えるから、gがfの逆写像であることとfがgの逆写像であることとは同じ条件である。
例 3.2. 次の各写像について単射性と全射性を確かめる。
- 集合Xの恒等写像idXは全単射である。実際、idX(x)=idX(x′)はx=x′にほかならず、任意のx∈Xに対してidX(x)=xであるから、idXは単射かつ全射である。
- ZからZへの写像n↦2nは単射であるが全射ではない。2n=2n′ならばn=n′であり、一方2n=1を満たす整数nは存在しない。
- ZからN≥0への写像n↦∣n∣は全射であるが単射ではない。任意のm∈N≥0に対して∣m∣=mであり、一方∣1∣=∣−1∣であって1=−1である。
- XとYをいずれも二つ以上の元をもつ集合とし、c∈Yとすると、値cの定値写像X→Yは単射でも全射でもない。相異なるx,x′∈Xに対して値はともにcであり、cと異なるYの元は値として現れない。
例 3.3.f:Z→Zとg:Z→2Zを、いずれもn↦2nによって定める。注意 1.2のとおりfとgは異なる写像である。fは例 3.2 (2)により全射ではない。一方gは、任意のm∈2Zに対してm=2nを満たすn∈Zが存在するので全射であり、2n=2n′からn=n′が従うので単射でもある。したがってgは全単射である。全射性は終域に依存する性質であり、割り当ての規則だけでは決まらない。
例 3.4. 定義域と終域が同じ集合であっても、単射性と全射性は互いに他を導かない。s:N≥0→N≥0をs(n)=n+1によって定めると、n+1=n′+1からn=n′が従うのでsは単射であるが、s(n)=0を満たすnは存在しないのでsは全射ではない。またp:N≥0→N≥0をp(0)=0およびp(n+1)=nによって定めると、任意のmに対してp(m+1)=mであるからpは全射であるが、p(0)=p(1)=0であって0=1であるからpは単射ではない。
命題 3.5.X、YおよびZを集合とし、f:X→Yとg:Y→Zを写像とする。
- fとgがともに単射であるならば、g∘fは単射である。
- fとgがともに全射であるならば、g∘fは全射である。
- fとgがともに全単射であるならば、g∘fは全単射である。
証明.(1)x,x′∈Xが(g∘f)(x)=(g∘f)(x′)を満たすとする。合成の定義によりg(f(x))=g(f(x′))であり、gが単射であるからf(x)=f(x′)である。fが単射であるからx=x′である。
(2)z∈Zをとる。gが全射であるからg(y)=zを満たすy∈Yが存在し、fが全射であるからf(x)=yを満たすx∈Xが存在する。このとき(g∘f)(x)=g(f(x))=g(y)=zである。
(3)全単射は単射かつ全射であるから、(1)によりg∘fは単射であり、(2)によりg∘fは全射である。▨
命題 3.6.X、YおよびZを集合とし、f:X→Yとg:Y→Zを写像とする。
- g∘fが単射であるならば、内側の写像fは単射である。
- g∘fが全射であるならば、外側の写像gは全射である。
証明.(1)x,x′∈Xがf(x)=f(x′)を満たすとする。両辺にgを施すと(g∘f)(x)=g(f(x))=g(f(x′))=(g∘f)(x′)であり、g∘fが単射であるからx=x′である。
(2)z∈Zをとる。g∘fが全射であるから(g∘f)(x)=zを満たすx∈Xが存在する。y=f(x)∈Yとおくとg(y)=g(f(x))=zである。▨
例 3.7.命題 3.6の結論を外側と内側で取り替えることはできない。X={0}、Y={0,1}、Z={0}とし、f:X→Yをf(0)=0、g:Y→Zをg(0)=g(1)=0によって定める。Z=Xであり(g∘f)(0)=g(f(0))=g(0)=0であるから、命題 1.3 (1)によりg∘f=idXである。よって例 3.2 (1)によりg∘fは全単射である。しかしg(0)=g(1)であって0=1であるからgは単射ではなく、1∈Yはfの値として現れないからfは全射ではない。
命題 3.8.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。g∘f=idXかつf∘g=idYをともに満たす写像g:Y→Xが存在することと、fが全単射であることとは同値である。さらに、この二つの等式を満たすgが存在するならば、そのようなgはただ一つである。このgをf−1と書く。
証明.g∘f=idXかつf∘g=idYを満たすg:Y→Xが存在するとする。例 3.2 (1)によりidXは単射でありidYは全射である。g∘f=idXは単射であるから、命題 3.6 (1)によりfは単射である。f∘g=idYは全射であるから、命題 3.6 (2)によりfは全射である。よってfは全単射である。
逆にfが全単射であるとする。各y∈Yに対して、全射性によりf(x)=yを満たすx∈Xが存在し、単射性によりそのようなxはただ一つである。したがって
Γ={(y,x)∈Y×X∣f(x)=y}は定義 1.1の条件を満たし、g=(Y,X,Γ)はYからXへの写像である。g(y)はf(g(y))=yを満たす唯一の元であるから、任意のy∈Yに対して(f∘g)(y)=y=idY(y)であり、命題 1.3 (1)によりf∘g=idYである。また任意のx∈Xに対してf(g(f(x)))=f(x)であり、fの単射性によりg(f(x))=xであるから、同じく命題 1.3 (1)によりg∘f=idXである。
gとg′がともに二つの等式を満たすとする。命題 2.2 (2)と命題 2.2 (1)により
g=g∘idY=g∘(f∘g′)=(g∘f)∘g′=idX∘g′=g′であるから、そのような写像はただ一つである。▨
系 3.10.X、YおよびZを集合とし、f:X→Yとg:Y→Zを全単射とする。
- f−1は全単射であり、(f−1)−1=fである。
- g∘fは全単射であり、(g∘f)−1=f−1∘g−1である。
証明.(1)定義 3.1の二つの等式はfとf−1を入れ替えても同じ条件であるから、fはf−1の逆写像である。よって命題 3.8によりf−1は全単射であり、逆写像の一意性から(f−1)−1=fである。
(2)命題 2.2 (1)と命題 2.2 (2)により
(f−1∘g−1)∘(g∘f)=f−1∘((g−1∘g)∘f)=f−1∘(idY∘f)=f−1∘f=idXであり、同じ計算により
(g∘f)∘(f−1∘g−1)=g∘((f∘f−1)∘g−1)=g∘(idY∘g−1)=g∘g−1=idZである。したがってf−1∘g−1はg∘fの逆写像であり、命題 3.8によりg∘fは全単射であって(g∘f)−1=f−1∘g−1である。▨
4 像と逆像
定義 4.1.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。S⊆Xに対して
f(S)={f(s)∣s∈S}⊆YをfによるSの像 (image) という。T⊆Yに対して
f−1(T)={x∈X∣f(x)∈T}⊆XをfによるTの逆像 (preimage) という。
例 4.3.f:Z→Zをf(n)=n2によって定める。S={−2,−1,0,1}に対してf(S)={4,1,0}である。T={0,1,2,3,4}に対してf−1(T)={−2,−1,0,1,2}であり、T′={2,3}に対しては、平方が2または3になる整数が存在しないのでf−1(T′)=∅である。
命題 4.4.XとYを集合、f:X→Yを写像とし、AとBをYの部分集合とする。
- f−1(∅)=∅かつf−1(Y)=Xである。
- f−1(A∩B)=f−1(A)∩f−1(B)である。
- f−1(A∪B)=f−1(A)∪f−1(B)である。
- f−1(A∖B)=f−1(A)∖f−1(B)である。
- f−1(Y∖A)=X∖f−1(A)である。すなわち、終域に関する補集合の逆像は、定義域に関する補集合である。
- nを1以上の整数とし、A1,…,AnをYの部分集合とすると、f−1(A1∩⋯∩An)=f−1(A1)∩⋯∩f−1(An)およびf−1(A1∪⋯∪An)=f−1(A1)∪⋯∪f−1(An)が成り立つ。
証明.(1)逆像の定義によりf−1(∅)={x∈X∣f(x)∈∅}であり、f(x)∈∅を満たすxは存在しないからf−1(∅)=∅である。また任意のx∈Xに対してf(x)∈Yであるからf−1(Y)=Xである。
(2)x∈Xに対して、x∈f−1(A∩B)が成り立つことはf(x)∈A∩Bが成り立つことであり、これはf(x)∈Aかつf(x)∈B、すなわちx∈f−1(A)かつx∈f−1(B)と同値である。
(3)x∈Xに対して、x∈f−1(A∪B)が成り立つことはf(x)∈Aまたはf(x)∈Bが成り立つことであり、これはx∈f−1(A)またはx∈f−1(B)と同値である。
(4)x∈Xに対して、x∈f−1(A∖B)が成り立つことはf(x)∈Aかつf(x)∈/Bが成り立つことであり、これはx∈f−1(A)かつx∈/f−1(B)と同値である。
(5)(4)によりf−1(Y∖A)=f−1(Y)∖f−1(A)であり、(1)によりf−1(Y)=Xである。
(6)n=1では二つの等式の両辺がともにf−1(A1)である。nについて二つの等式が成り立つとする。A1∩⋯∩An+1=(A1∩⋯∩An)∩An+1であるから、(2)と帰納法の仮定により
f−1(A1∩⋯∩An+1)=f−1(A1∩⋯∩An)∩f−1(An+1)=f−1(A1)∩⋯∩f−1(An+1)である。和集合についても、A1∪⋯∪An+1=(A1∪⋯∪An)∪An+1と(3)により同じ計算が成り立つ。したがって帰納法により、すべての1以上の整数nについて主張が成り立つ。▨
命題 4.5.XとYを集合、f:X→Yを写像とし、AとBをXの部分集合とする。
- f(∅)=∅である。
- A⊆Bであるならばf(A)⊆f(B)である。
- f(A∪B)=f(A)∪f(B)である。
- f(A∩B)⊆f(A)∩f(B)である。
- f(A)∖f(B)⊆f(A∖B)である。
証明.(1)像の定義によりf(∅)={f(s)∣s∈∅}であり、∅には元が存在しないからf(∅)=∅である。
(2)y∈f(A)とするとy=f(a)を満たすa∈Aが存在する。仮定によりa∈Bであるからy∈f(B)である。
(3)y∈f(A∪B)とするとy=f(x)を満たすx∈A∪Bが存在する。x∈Aならばy∈f(A)であり、x∈Bならばy∈f(B)であるから、y∈f(A)∪f(B)である。逆の包含は、A⊆A∪BとB⊆A∪Bに(2)を適用して得られる。
(4)A∩B⊆AとA∩B⊆Bに(2)を適用するとf(A∩B)⊆f(A)かつf(A∩B)⊆f(B)である。
(5)y∈f(A)∖f(B)とすると、y=f(a)を満たすa∈Aが存在し、かつy∈/f(B)である。a∈Bであるとするとy=f(a)∈f(B)となって矛盾するのでa∈/Bである。したがってa∈A∖Bでありy∈f(A∖B)である。▨
例 4.6.命題 4.5 (4)と命題 4.5 (5)の包含を等号に変えることはできない。X={0,1}、Y={0}とし、f:X→Yをf(0)=f(1)=0によって定める。A={0}、B={1}とおくとA∩B=∅であるから、命題 4.5 (1)によりf(A∩B)=∅であり、一方f(A)=f(B)={0}であるからf(A)∩f(B)={0}である。またf(A)∖f(B)=∅であるのに対し、A∖B={0}であるからf(A∖B)={0}である。このfはf(0)=f(1)であって単射ではない。
命題 4.7.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。
- fが全射であることとf(X)=Yが成り立つこととは同値である。
- fˉ(x)=f(x)という等式によってXからf(X)への写像fˉが定まり、fˉは全射である。さらにfが単射であるならばfˉは全単射である。
証明.(1)像の定義によりf(X)⊆Yである。fが全射であるとすると、任意のy∈Yに対してf(x)=yを満たすx∈Xが存在するのでy∈f(X)であり、Y⊆f(X)が成り立つ。よってf(X)=Yである。逆にf(X)=Yであるとすると、任意のy∈Yはy∈f(X)を満たすのでf(x)=yを満たすx∈Xが存在する。よってfは全射である。
(2)各x∈Xに対してf(x)∈f(X)であるから、{(x,f(x))∣x∈X}はX×f(X)の部分集合であり、定義 1.1の条件を満たす。よってfˉはXからf(X)への写像である。y∈f(X)をとるとy=f(x)を満たすx∈Xが存在し、fˉ(x)=f(x)=yであるからfˉは全射である。fが単射であるとすると、fˉ(x)=fˉ(x′)はf(x)=f(x′)にほかならないのでx=x′であり、fˉは単射である。したがってfˉは全単射である。▨
命題 4.8.X、YおよびZを集合とし、f:X→Yとg:Y→Zを写像とする。
- 任意のC⊆Zに対して(g∘f)−1(C)=f−1(g−1(C))が成り立つ。
- 任意のA⊆Xに対して(g∘f)(A)=g(f(A))が成り立つ。
- 任意のS⊆Xに対してidX(S)=SかつidX−1(S)=Sが成り立つ。
証明.(1)x∈Xに対して、x∈(g∘f)−1(C)が成り立つことはg(f(x))∈Cが成り立つことであり、これはf(x)∈g−1(C)、すなわちx∈f−1(g−1(C))と同値である。
(2)z∈(g∘f)(A)とすると、z=g(f(a))を満たすa∈Aが存在する。f(a)∈f(A)であるからz∈g(f(A))である。逆にz∈g(f(A))とするとz=g(y)を満たすy∈f(A)が存在し、さらにy=f(a)を満たすa∈Aが存在するのでz=g(f(a))=(g∘f)(a)∈(g∘f)(A)である。
(3)像の定義によりidX(S)={idX(s)∣s∈S}={s∣s∈S}=Sである。逆像の定義によりidX−1(S)={x∈X∣idX(x)∈S}={x∈X∣x∈S}=Sである。▨
命題 4.9.XとYを集合、f:X→Yを写像とする。任意のB⊆Yに対して
f(f−1(B))=B∩f(X)が成り立つ。
証明.y∈f(f−1(B))とすると、y=f(x)を満たすx∈f−1(B)が存在する。逆像の定義によりf(x)∈Bであるからy∈Bであり、またy=f(x)∈f(X)であるからy∈B∩f(X)である。
逆にy∈B∩f(X)とすると、y∈f(X)からy=f(x)を満たすx∈Xが存在する。f(x)=y∈Bであるからx∈f−1(B)であり、y=f(x)∈f(f−1(B))である。▨
命題 4.10.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。
- 任意のA⊆Xに対してA⊆f−1(f(A))が成り立ち、任意のB⊆Yに対してf(f−1(B))⊆Bが成り立つ。
- fが単射であるならば、任意のA⊆Xに対してf−1(f(A))=Aが成り立つ。
- fが全射であるならば、任意のB⊆Yに対してf(f−1(B))=Bが成り立つ。
証明.(1)a∈Aとするとf(a)∈f(A)であるから、逆像の定義によりa∈f−1(f(A))である。また命題 4.9によりf(f−1(B))=B∩f(X)⊆Bである。
(2)包含A⊆f−1(f(A))は(1)が与える。逆にx∈f−1(f(A))とするとf(x)∈f(A)であるから、f(x)=f(a)を満たすa∈Aが存在する。fが単射であるからx=a∈Aである。
(3)命題 4.9によりf(f−1(B))=B∩f(X)であり、命題 4.7 (1)によりf(X)=Yであるから、B∩f(X)=B∩Y=Bである。▨
例 4.11.命題 4.10 (2)と命題 4.10 (3)から単射性と全射性の仮定を落とすことはできない。X=Y={0,1}とし、f:X→Yをf(0)=f(1)=0によって定める。f(0)=f(1)であるからfは単射でなく、1はfの値として現れないからfは全射でもない。
A={0}に対してf(A)={0}でありf−1(f(A))={0,1}であるから、f−1(f(A))=Aである。B={1}に対してf−1(B)=∅でありf(f−1(B))=∅であるから、f(f−1(B))=Bである。後者はB∩f(X)={1}∩{0}=∅という命題 4.9の値に一致している。
命題 4.12.XとYを集合、f:X→Yを単射とし、AとBをXの部分集合とする。
- f(A∩B)=f(A)∩f(B)が成り立つ。
- f(A∖B)=f(A)∖f(B)が成り立つ。
証明.(1)包含f(A∩B)⊆f(A)∩f(B)は命題 4.5 (4)が与える。逆にy∈f(A)∩f(B)とすると、y=f(a)を満たすa∈Aとy=f(b)を満たすb∈Bが存在する。f(a)=f(b)とfの単射性からa=bであり、この元はA∩Bに属する。よってy∈f(A∩B)である。
(2)包含f(A)∖f(B)⊆f(A∖B)は命題 4.5 (5)が与える。逆にy∈f(A∖B)とすると、y=f(a)を満たすa∈A∖Bが存在し、y∈f(A)である。y∈f(B)であるとするとy=f(b)を満たすb∈Bが存在し、fの単射性からa=b∈Bとなってa∈/Bに反する。よってy∈/f(B)でありy∈f(A)∖f(B)である。▨
命題 4.13.XとYを集合とし、f:X→Yを全単射とする。
- 任意のT⊆Yに対して、fによるTの逆像と、逆写像f−1によるTの像とは一致する。
- 任意のA⊆Xに対してf(X∖A)=Y∖f(A)が成り立つ。
証明.(1)T⊆Yとし、f−1によるTの像をf−1[T]と書いて区別する。x∈f−1[T]とするとx=f−1(y)を満たすy∈Tが存在し、f(x)=f(f−1(y))=y∈TであるからxはfによるTの逆像に属する。逆にxがfによるTの逆像に属するとするとf(x)∈Tであり、y=f(x)とおけばf−1(y)=f−1(f(x))=xであるからx∈f−1[T]である。
(2)fは単射であるから、命題 4.12 (2)によりf(X∖A)=f(X)∖f(A)である。fは全射であるから、命題 4.7 (1)によりf(X)=Yである。▨
5 演習
問題 5.1.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。次の三条件が同値であることを証明せよ。
- fは単射である。
- 任意のA⊆Xに対してf−1(f(A))=Aが成り立つ。
- 任意のA,B⊆Xに対してf(A∩B)=f(A)∩f(B)が成り立つ。
解答.
(1)⇒(2)は命題 4.10 (2)が与え、(1)⇒(3)は命題 4.12 (1)が与える。
(2)⇒(1)を示す。x,x′∈Xがf(x)=f(x′)を満たすとする。A={x}とおくとf(A)={f(x)}であり、f(x′)=f(x)∈f(A)であるからx′∈f−1(f(A))である。仮定によりf−1(f(A))=A={x}であるからx′=xである。
(3)⇒(1)を示す。x,x′∈Xがf(x)=f(x′)を満たし、x=x′であるとする。A={x}、B={x′}とおくとA∩B=∅であるから、命題 4.5 (1)によりf(A∩B)=∅である。一方f(A)=f(B)={f(x)}であるからf(A)∩f(B)={f(x)}であり、これは空集合ではない。これは仮定に反するのでx=x′である。▨
問題 5.2.X、YおよびZを集合とし、f:X→Yとg:Y→Zを写像とする。g∘fが全単射であり、かつfが全射であるならば、fとgはともに全単射であることを証明せよ。
解答.
g∘fは単射であるから、命題 3.6 (1)によりfは単射である。仮定によりfは全射であるから、fは全単射である。
g∘fは全射であるから、命題 3.6 (2)によりgは全射である。gの単射性を示す。y,y′∈Yがg(y)=g(y′)を満たすとする。fが全射であるからf(x)=yとf(x′)=y′を満たすx,x′∈Xが存在し、(g∘f)(x)=g(y)=g(y′)=(g∘f)(x′)である。g∘fが単射であるからx=x′であり、y=f(x)=f(x′)=y′である。よってgは単射であり、gは全単射である。▨
問題 5.3.XとYを集合とし、f:X→Yを写像とする。fが全射であることと、Yの部分集合T、T′についてf−1(T)=f−1(T′)が成り立つならばつねにT=T′が成り立つこととは同値であることを証明せよ。
解答.
fが全射であるとし、Yの部分集合T、T′がf−1(T)=f−1(T′)を満たすとする。命題 4.10 (3)によりT=f(f−1(T))かつT′=f(f−1(T′))であるから、T=f(f−1(T))=f(f−1(T′))=T′である。
逆に、fが全射でないと仮定する。命題 4.7 (1)によりf(X)=Yであり、f(X)⊆Yであるからy0∈Y∖f(X)をとることができる。T={y0}、T′=∅とおくと、f(x)=y0を満たすx∈Xは存在しないのでf−1(T)=∅であり、命題 4.4 (1)によりf−1(T′)=∅である。したがってf−1(T)=f−1(T′)であるが、y0∈Tかつy0∈/T′であるからT=T′である。よって、f−1(T)=f−1(T′)からつねにT=T′が従うならば、fは全射である。▨