§E1.22基数算術

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「等濃度と可算性」の§E1.18 定義 1.1は、集合の大きさを全単射と単射の存在によって比べる方法を与え、「基数とアレフ」の§E1.21 定義 1.1は、その大きさを順序数の中の代表である基数として取り出した。これによって大きさを比べることはできるが、二つの大きさから新しい大きさを作る操作は、まだ何も定めていない。集合の直和・直積・写像全体の集合は、もとの二つの集合の大きさだけから大きさが決まる。この観察を演算として固定したものが基数の和・積・冪である。無限の領域では、この三つの演算の振る舞いが大きく分かれる。和と積は大きいほうの基数に一致する一方、冪は Cantor の定理により真に大きくなる。本記事は、三つの演算の定義から出発して、この分かれ方までを扱う。

1 基数の和・積・冪

定義 1.1.A,BA,Bを集合とし、κ=∣A∣\kappa=\lvert A\rvert、λ=∣B∣\lambda=\lvert B\rvertとする。集合

A⊔B=(A×{0})∪(B×{1})A\sqcup B=(A\times\{0\})\cup(B\times\{1\})

をAAとBBの直和 (disjoint union) といい、AAからBBへの写像全体の集合をBAB^{A}と書く。このとき

κ+λ=∣A⊔B∣,κλ=∣A×B∣,λκ=∣BA∣\kappa+\lambda=\lvert A\sqcup B\rvert, \qquad \kappa\lambda=\lvert A\times B\rvert, \qquad \lambda^{\kappa}=\lvert B^{A}\rvert

と定め、それぞれκ\kappaとλ\lambdaの基数の和 (cardinal sum)、基数の積 (cardinal product)、およびλ\lambdaのκ\kappa乗としての基数の冪 (cardinal power) という。積はκ⋅λ\kappa\cdot\lambdaとも書く。

AAを等濃度な集合A′A'へ、BBを等濃度な集合B′B'へ取り替えても、右辺の三つの濃度は変わらない(命題 1.2)。したがってこの三つはκ\kappaとλ\lambdaだけで決まり、代表集合A,BA,Bの選び方に依存しない。A,BA,Bには有限性・無限性・整列可能性のいずれも課さない。

命題 1.2.A,A′,B,B′A,A',B,B'を集合とし、AAとA′A'が等濃度、BBとB′B'が等濃度であるとする。このときA⊔BA\sqcup BとA′⊔B′A'\sqcup B'、A×BA\times BとA′×B′A'\times B'、BAB^{A}とB′A′B'^{A'}は、いずれも等濃度である。

証明. 全単射f ⁣:A→A′f\colon A\to A'とg ⁣:B→B′g\colon B\to B'を取る。写像

s ⁣:A⊔B→A′⊔B′,s(a,0)=(f(a),0),s(b,1)=(g(b),1)s\colon A\sqcup B\to A'\sqcup B',\qquad s(a,0)=(f(a),0),\qquad s(b,1)=(g(b),1)

は、f−1f^{-1}とg−1g^{-1}から同じ形で作った写像を逆写像にもつので、§E1.1 命題 3.8により全単射である。写像

t ⁣:A×B→A′×B′,t(a,b)=(f(a),g(b))t\colon A\times B\to A'\times B',\qquad t(a,b)=(f(a),g(b))

も同様に(a′,b′)↦(f−1(a′),g−1(b′))(a',b')\mapsto(f^{-1}(a'),g^{-1}(b'))を逆写像にもつ全単射である。

写像u ⁣:BA→B′A′u\colon B^{A}\to B'^{A'}をu(h)=g∘h∘f−1u(h)=g\circ h\circ f^{-1}で定める。h∈BAh\in B^{A}に対してg∘h∘f−1g\circ h\circ f^{-1}はA′A'からB′B'への写像であるから、uuは定まる。u′(h′)=g−1∘h′∘fu'(h')=g^{-1}\circ h'\circ fで定まる写像u′ ⁣:B′A′→BAu'\colon B'^{A'}\to B^{A}は

u′(u(h))=g−1∘g∘h∘f−1∘f=h,u(u′(h′))=g∘g−1∘h′∘f∘f−1=h′u'(u(h))=g^{-1}\circ g\circ h\circ f^{-1}\circ f=h, \qquad u(u'(h'))=g\circ g^{-1}\circ h'\circ f\circ f^{-1}=h'

を満たすので、u′u'はuuの逆写像であり、§E1.1 命題 3.8によりuuは全単射である。▨

命題 1.3. 次が成り立つ。

  1. κ\kappaを基数とすると、κ\kappaと等濃度な基数はκ\kappa自身に限る。すなわち集合としてのκ\kappaの濃度は基数κ\kappaであり、∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappaである。
  2. κ,λ\kappa,\lambdaを基数とすると、順序数κ,λ\kappa,\lambdaそのものを代表集合に取ることができて、κ+λ=∣κ⊔λ∣\kappa+\lambda=\lvert\kappa\sqcup\lambda\rvert、κλ=∣κ×λ∣\kappa\lambda=\lvert\kappa\times\lambda\rvert、λκ=∣λκ∣\lambda^{\kappa}=\lvert\lambda^{\kappa}\rvertである。最後の等式の右辺のλκ\lambda^{\kappa}はκ\kappaからλ\lambdaへの写像全体の集合を表し、左辺のλκ\lambda^{\kappa}は基数の冪を表す。
  3. S,YS,Yを集合とし、各s∈Ss\in Sに対してAs=YA_s=Yと定める。このとき§E1.2 定義 5.1の直積∏s∈SAs\prod_{s\in S}A_sと写像集合YSY^{S}のあいだに全単射が存在し、∣∏s∈SAs∣=∣Y∣∣S∣\bigl\lvert\prod_{s\in S}A_s\bigr\rvert=\lvert Y\rvert^{\lvert S\rvert}である。

証明.(1)「基数とアレフ」の§E1.21 定義 1.1により、基数とは、それより小さいどの順序数とも等濃でない順序数である。μ\muをκ\kappaと等濃度な基数とすると、μ<κ\mu<\kappaならばκ\kappaが基数であることに反し、κ<μ\kappa<\muならばμ\muが基数であることに反する。順序数κ,μ\kappa,\muは§E1.16 定義 2.1の大小について比較可能であるからμ=κ\mu=\kappaである。恒等写像はκ\kappaからκ\kappaへの全単射であるから、κ\kappa自身がκ\kappaと等濃度な基数であり、∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappaである。

(2)(1)により∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappaかつ∣λ∣=λ\lvert\lambda\rvert=\lambdaであるから、定義 1.1のA,BA,Bとして順序数κ,λ\kappa,\lambdaを取ればよい。

(3)§E1.2 定義 5.1により∏s∈SAs\prod_{s\in S}A_sの元はSSを定義域とし、各ssでの値がAs=YA_s=Yに属する族である。族xxに対して、SSを定義域、YYを終域、xxの値を対応とする写像x^ ⁣:S→Y\widehat x\colon S\to Yを与えると、x↦x^x\mapsto\widehat xは∏s∈SAs\prod_{s\in S}A_sからYSY^{S}への写像である。逆にh∈YSh\in Y^{S}に対して、SS上でhhと同じ値を取る族を対応させると、二つの対応は互いに逆であるから、§E1.1 命題 3.8によりx↦x^x\mapsto\widehat xは全単射である。したがって定義 1.1により∣∏s∈SAs∣=∣YS∣=∣Y∣∣S∣\bigl\lvert\prod_{s\in S}A_s\bigr\rvert=\lvert Y^{S}\rvert=\lvert Y\rvert^{\lvert S\rvert}である。▨

命題 1.4.κ,κ′,λ,λ′\kappa,\kappa',\lambda,\lambda'を集合の濃度とする。

  1. κ+λ=λ+κ\kappa+\lambda=\lambda+\kappaかつκλ=λκ\kappa\lambda=\lambda\kappaである。
  2. κ≤κ′\kappa\leq\kappa'かつλ≤λ′\lambda\leq\lambda'ならばκ+λ≤κ′+λ′\kappa+\lambda\leq\kappa'+\lambda'かつκλ≤κ′λ′\kappa\lambda\leq\kappa'\lambda'である。
  3. κ+0=κ\kappa+0=\kappa、0⋅κ=00\cdot\kappa=0、1⋅κ=κ1\cdot\kappa=\kappa、κ1=κ\kappa^{1}=\kappa、κ0=1\kappa^{0}=1である。またλ≥1\lambda\geq1ならばκ≤κλ\kappa\leq\kappa\lambdaであり、κ≤κ+λ\kappa\leq\kappa+\lambdaである。
  4. 任意の集合AAについてA⊔A=A×2A\sqcup A=A\times 2である。とくに∣A∣=κ\lvert A\rvert=\kappaのときκ+κ=2κ\kappa+\kappa=2\kappaである。

証明. 代表集合A,A′,B,B′A,A',B,B'を∣A∣=κ\lvert A\rvert=\kappa、∣A′∣=κ′\lvert A'\rvert=\kappa'、∣B∣=λ\lvert B\rvert=\lambda、∣B′∣=λ′\lvert B'\rvert=\lambda'となるように取る。

(1)写像A⊔B→B⊔AA\sqcup B\to B\sqcup Aを(a,0)↦(a,1)(a,0)\mapsto(a,1)、(b,1)↦(b,0)(b,1)\mapsto(b,0)で定めると、同じ形の写像を逆写像にもつので全単射である。写像A×B→B×AA\times B\to B\times A、(a,b)↦(b,a)(a,b)\mapsto(b,a)も同様である。

(2)§E1.18 定義 1.1により単射f ⁣:A→A′f\colon A\to A'とg ⁣:B→B′g\colon B\to B'が存在する。命題 1.2の証明と同じ式で定めたs ⁣:A⊔B→A′⊔B′s\colon A\sqcup B\to A'\sqcup B'とt ⁣:A×B→A′×B′t\colon A\times B\to A'\times B'は、f,gf,gが単射であれば単射である。実際s(a,0)=s(a′,0)s(a,0)=s(a',0)ならばf(a)=f(a′)f(a)=f(a')からa=a′a=a'であり、第二の成分が異なる二元の像は第二の成分が異なる。t(a,b)=t(a′,b′)t(a,b)=t(a',b')ならばf(a)=f(a′)f(a)=f(a')かつg(b)=g(b′)g(b)=g(b')から(a,b)=(a′,b′)(a,b)=(a',b')である。

(3)0=∅0=\emptysetであるからA⊔∅=A×{0}A\sqcup\emptyset=A\times\{0\}であり、a↦(a,0)a\mapsto(a,0)は全単射である。A×∅=∅A\times\emptyset=\emptysetである。1={0}1=\{0\}であるから{0}×A→A\{0\}\times A\to A、(0,a)↦a(0,a)\mapsto aは全単射である。A{0}→AA^{\{0\}}\to A、h↦h(0)h\mapsto h(0)は全単射であり、A∅A^{\emptyset}は空写像だけからなる一元集合である。λ≥1\lambda\geq1ならばBBは元b0b_0をもち、a↦(a,b0)a\mapsto(a,b_0)は単射A→A×BA\to A\times Bである。a↦(a,0)a\mapsto(a,0)は単射A→A⊔BA\to A\sqcup Bである。

(4)§E1.16 定義 2.1の von Neumann 自然数により2={0,1}2=\{0,1\}であるから

A⊔A=(A×{0})∪(A×{1})=A×{0,1}=A×2A\sqcup A=(A\times\{0\})\cup(A\times\{1\})=A\times\{0,1\}=A\times 2

である。∣2∣=2\lvert 2\rvert=2であるから定義 1.1によりκ+κ=∣A×2∣=κ⋅2=2κ\kappa+\kappa=\lvert A\times 2\rvert=\kappa\cdot 2=2\kappaである。▨

命題 1.5.XXを任意の集合とする。このとき

∣P(X)∣=2∣X∣\lvert\mathcal P(X)\rvert=2^{\lvert X\rvert}

が成り立つ。

証明.2={0,1}2=\{0,1\}とし、S⊆XS\subseteq Xに対してその特性関数χS ⁣:X→2\chi_S\colon X\to 2を、x∈Sx\in SのときχS(x)=1\chi_S(x)=1、x∉Sx\notin SのときχS(x)=0\chi_S(x)=0と定める。写像Φ ⁣:P(X)→2X\Phi\colon\mathcal P(X)\to 2^{X}、Φ(S)=χS\Phi(S)=\chi_Sを考える。h∈2Xh\in 2^{X}に対してΨ(h)={x∈X∣h(x)=1}\Psi(h)=\{x\in X\mid h(x)=1\}とおくと、Ψ(h)⊆X\Psi(h)\subseteq Xである。任意のS⊆XS\subseteq XについてΨ(Φ(S))={x∈X∣χS(x)=1}=S\Psi(\Phi(S))=\{x\in X\mid\chi_S(x)=1\}=Sであり、任意のh∈2Xh\in 2^{X}とx∈Xx\in XについてχΨ(h)(x)=1\chi_{\Psi(h)}(x)=1とh(x)=1h(x)=1は同値で、値は00と11の二つしかないのでΦ(Ψ(h))=h\Phi(\Psi(h))=hである。よってΨ\PsiはΦ\Phiの逆写像であり、§E1.1 命題 3.8によりΦ\Phiは全単射である。定義 1.1により∣2X∣=∣2∣∣X∣=2∣X∣\lvert 2^{X}\rvert=\lvert 2\rvert^{\lvert X\rvert}=2^{\lvert X\rvert}であるから、結論を得る。▨

命題 1.6.κ,λ,μ\kappa,\lambda,\muを集合の濃度とする。

  1. (κλ)μ=κλμ(\kappa^{\lambda})^{\mu}=\kappa^{\lambda\mu}である。
  2. κλ+μ=κλκμ\kappa^{\lambda+\mu}=\kappa^{\lambda}\kappa^{\mu}である。
  3. (κλ)μ=κμλμ(\kappa\lambda)^{\mu}=\kappa^{\mu}\lambda^{\mu}である。

証明.∣C∣=κ\lvert C\rvert=\kappa、∣B∣=λ\lvert B\rvert=\lambda、∣A∣=μ\lvert A\rvert=\muとなる集合A,B,CA,B,Cを取る。

(1)写像F ⁣:CB×A→(CB)AF\colon C^{B\times A}\to(C^{B})^{A}を、h∈CB×Ah\in C^{B\times A}とa∈Aa\in A、b∈Bb\in Bに対してF(h)(a)(b)=h(b,a)F(h)(a)(b)=h(b,a)と定める。各aaについてF(h)(a)F(h)(a)はBBからCCへの写像であり、F(h)F(h)はAAからCBC^{B}への写像である。逆にk∈(CB)Ak\in(C^{B})^{A}に対してG(k)(b,a)=k(a)(b)G(k)(b,a)=k(a)(b)とおくとG(k)∈CB×AG(k)\in C^{B\times A}であり、G(F(h))=hG(F(h))=hかつF(G(k))=kF(G(k))=kである。よって§E1.1 命題 3.8によりFFは全単射であり、定義 1.1によりκλμ=∣CB×A∣=∣(CB)A∣=(κλ)μ\kappa^{\lambda\mu}=\lvert C^{B\times A}\rvert=\lvert(C^{B})^{A}\rvert=(\kappa^{\lambda})^{\mu}である。

(2)写像CB⊔A→CB×CAC^{B\sqcup A}\to C^{B}\times C^{A}をh↦(h1,h2)h\mapsto(h_1,h_2)、h1(b)=h(b,0)h_1(b)=h(b,0)、h2(a)=h(a,1)h_2(a)=h(a,1)と定める。(h1,h2)(h_1,h_2)からh(b,0)=h1(b)h(b,0)=h_1(b)、h(a,1)=h2(a)h(a,1)=h_2(a)によってhhが復元されるので、この写像は逆写像をもち、§E1.1 命題 3.8により全単射である。

(3)写像(C×B)A→CA×BA(C\times B)^{A}\to C^{A}\times B^{A}をh↦(pr⁡1∘h,pr⁡2∘h)h\mapsto(\operatorname{pr}_1\circ h,\operatorname{pr}_2\circ h)と定める。ここでpr⁡1,pr⁡2\operatorname{pr}_1,\operatorname{pr}_2はC×BC\times Bの二つの成分を取り出す写像である。(k1,k2)(k_1,k_2)からh(a)=(k1(a),k2(a))h(a)=(k_1(a),k_2(a))によってhhが復元されるので、この写像も逆写像をもつ全単射である。▨

例 1.7.m,nm,nを自然数とすると、集合m={0,…,m−1}m=\{0,\dots,m-1\}とn={0,…,n−1}n=\{0,\dots,n-1\}は基数であり、命題 1.3 (1)により∣m∣=m\lvert m\rvert=m、∣n∣=n\lvert n\rvert=nである。m⊔nm\sqcup nはmm個とnn個の元からなる二つの部分に分かれるのでm+nm+n個の元をもち、m×nm\times nはmm行nn列の表としてmnmn個の元をもつ。nmn^{m}の元はmm個の各座標にnn個の値のいずれかを与えたものであるからnmn^{m}個ある。すなわち基数としての和・積・冪は、自然数についての和・積・冪と一致する。たとえば2+3=52+3=5、2⋅3=62\cdot 3=6、32=93^{2}=9である。

∣P(3)∣=23=8\lvert\mathcal P(3)\rvert=2^{3}=8である。実際3={0,1,2}3=\{0,1,2\}の部分集合は∅\emptyset、{0}\{0\}、{1}\{1\}、{2}\{2\}、{0,1}\{0,1\}、{0,2}\{0,2\}、{1,2}\{1,2\}、{0,1,2}\{0,1,2\}の八つであり、命題 1.5の特性関数による対応は、これらを順に(0,0,0)(0,0,0)、(1,0,0)(1,0,0)、(0,1,0)(0,1,0)、(0,0,1)(0,0,1)、(1,1,0)(1,1,0)、(1,0,1)(1,0,1)、(0,1,1)(0,1,1)、(1,1,1)(1,1,1)へ写す。

注意 1.8.定義 1.1の三つの演算と命題 1.2の不変性は、選択公理を用いていない。用いたのは対の存在、和集合、冪集合および分出であり、無限個の対象から同時に一つずつ選ぶ操作は現れない。

一方、任意の集合XXの濃度を順序数の中の代表として取り出すこと、すなわち∣X∣\lvert X\rvertを基数として読むことには選択公理が要る。「基数とアレフ」の§E1.21 定理 2.2がその段を担う。本記事の以下の主張のうち、基数について述べたものは選択公理を仮定せずに証明する。それらを整列可能とは限らない集合の濃度へ適用するときにだけ、この取り出しを経由する。

2 辞書式順序と Gödel 順序

定義 2.1.θ\thetaを順序数とする。順序数α,β\alpha,\betaに対して、大きくないほうを取り除いて残る順序数をmax⁡(α,β)\max(\alpha,\beta)と書く。(α,β),(γ,δ)∈θ×θ(\alpha,\beta),(\gamma,\delta)\in\theta\times\thetaに対して、関係(α,β)≺(γ,δ)(\alpha,\beta)\prec(\gamma,\delta)を、次の三つのいずれかが成り立つこととして定める。

  1. max⁡(α,β)<max⁡(γ,δ)\max(\alpha,\beta)<\max(\gamma,\delta)である。
  2. max⁡(α,β)=max⁡(γ,δ)\max(\alpha,\beta)=\max(\gamma,\delta)かつα<γ\alpha<\gammaである。
  3. max⁡(α,β)=max⁡(γ,δ)\max(\alpha,\beta)=\max(\gamma,\delta)かつα=γ\alpha=\gammaかつβ<δ\beta<\deltaである。

この≺\precをθ×θ\theta\times\thetaのGödel 順序 (Gödel ordering) という。

補題 2.2.θ\thetaを順序数とし、≺\precを定義 2.1の Gödel 順序とする。このとき次が成り立つ。

  1. ≺\precはθ×θ\theta\times\thetaの整列順序である。
  2. (α,β)∈θ×θ(\alpha,\beta)\in\theta\times\thetaとγ=max⁡(α,β)\gamma=\max(\alpha,\beta)に対して{(ξ,η)∈θ×θ∣(ξ,η)≺(α,β)}⊆(γ+1)×(γ+1)\{(\xi,\eta)\in\theta\times\theta\mid(\xi,\eta)\prec(\alpha,\beta)\}\subseteq(\gamma+1)\times(\gamma+1)が成り立つ。

証明.(1)(α,β)∈θ×θ(\alpha,\beta)\in\theta\times\thetaとする。§E1.16 定義 2.1によりθ\thetaは所属関係によって整列された推移的集合であるから、θ\thetaの任意の二元は大小について比較可能であり、max⁡(α,β)\max(\alpha,\beta)はα\alphaかβ\betaのいずれかに等しく、θ\thetaに属する。定義 2.1の三条件は、どの二つもmax⁡\maxの値またはα\alphaの値について両立しないので、(α,β)≺(γ,δ)(\alpha,\beta)\prec(\gamma,\delta)を与える条件は高々一つである。とくに(α,β)≺(α,β)(\alpha,\beta)\prec(\alpha,\beta)はどの条件からも成り立たない。

(α,β)≠(γ,δ)(\alpha,\beta)\neq(\gamma,\delta)とする。max⁡(α,β)≠max⁡(γ,δ)\max(\alpha,\beta)\neq\max(\gamma,\delta)ならば、比較可能性により定義 2.1 (1)がどちらか一方の向きで成り立つ。max⁡(α,β)=max⁡(γ,δ)\max(\alpha,\beta)=\max(\gamma,\delta)かつα≠γ\alpha\neq\gammaならば定義 2.1 (2)がどちらか一方の向きで成り立つ。max⁡\maxが等しくα=γ\alpha=\gammaならばβ≠δ\beta\neq\deltaであり、定義 2.1 (3)がどちらか一方の向きで成り立つ。よって相異なる二元は必ず一方の向きで比較される。

(α,β)≺(γ,δ)≺(ϵ,ζ)(\alpha,\beta)\prec(\gamma,\delta)\prec(\epsilon,\zeta)とし、m1=max⁡(α,β)m_1=\max(\alpha,\beta)、m2=max⁡(γ,δ)m_2=\max(\gamma,\delta)、m3=max⁡(ϵ,ζ)m_3=\max(\epsilon,\zeta)とおく。定義 2.1の三条件のいずれの場合もm1≤m2m_1\leq m_2かつm2≤m3m_2\leq m_3であるからm1≤m3m_1\leq m_3である。m1<m3m_1<m_3ならば定義 2.1 (1)により(α,β)≺(ϵ,ζ)(\alpha,\beta)\prec(\epsilon,\zeta)である。m1=m3m_1=m_3ならばm1=m2=m3m_1=m_2=m_3であり、定義 2.1 (2)と定義 2.1 (3)からα≤γ≤ϵ\alpha\leq\gamma\leq\epsilonを得る。α<ϵ\alpha<\epsilonならば定義 2.1 (2)により結論を得る。α=ϵ\alpha=\epsilonならばα=γ=ϵ\alpha=\gamma=\epsilonであり、定義 2.1 (3)からβ<δ<ζ\beta<\delta<\zetaを得るので、同じ条件により結論を得る。

SSをθ×θ\theta\times\thetaの空でない部分集合とする。M={max⁡(ξ,η)∣(ξ,η)∈S}M=\{\max(\xi,\eta)\mid(\xi,\eta)\in S\}はθ\thetaの空でない部分集合であるから、§E1.16 定義 2.1により最小元γ0\gamma_0をもつ。S0={(ξ,η)∈S∣max⁡(ξ,η)=γ0}S_0=\{(\xi,\eta)\in S\mid\max(\xi,\eta)=\gamma_0\}は空でなく、{ξ∣(ξ,η)∈S0}\{\xi\mid(\xi,\eta)\in S_0\}はθ\thetaの空でない部分集合であるから最小元α0\alpha_0をもつ。さらに{η∣(α0,η)∈S0}\{\eta\mid(\alpha_0,\eta)\in S_0\}もθ\thetaの空でない部分集合であるから最小元β0\beta_0をもつ。(ξ,η)∈S(\xi,\eta)\in Sが(ξ,η)≺(α0,β0)(\xi,\eta)\prec(\alpha_0,\beta_0)を満たすとすると、定義 2.1 (1)ではmax⁡(ξ,η)<γ0\max(\xi,\eta)<\gamma_0となってγ0\gamma_0の最小性に反し、定義 2.1 (2)では(ξ,η)∈S0(\xi,\eta)\in S_0かつξ<α0\xi<\alpha_0となってα0\alpha_0の最小性に反し、定義 2.1 (3)では(α0,η)∈S0(\alpha_0,\eta)\in S_0かつη<β0\eta<\beta_0となってβ0\beta_0の最小性に反する。よって(α0,β0)(\alpha_0,\beta_0)はSSの最小元であり、≺\precは整列順序である。

(2)(ξ,η)≺(α,β)(\xi,\eta)\prec(\alpha,\beta)とする。定義 2.1の三条件のいずれの場合もmax⁡(ξ,η)≤max⁡(α,β)=γ\max(\xi,\eta)\leq\max(\alpha,\beta)=\gammaであり、ξ≤max⁡(ξ,η)\xi\leq\max(\xi,\eta)かつη≤max⁡(ξ,η)\eta\leq\max(\xi,\eta)であるからξ≤γ\xi\leq\gammaかつη≤γ\eta\leq\gammaである。§E1.16 命題 4.2によりγ+1\gamma+1はγ\gammaより真に大きい最小の順序数であるから、ξ≤γ\xi\leq\gammaはξ<γ+1\xi<\gamma+1と同値であり、η\etaについても同様である。よって(ξ,η)∈(γ+1)×(γ+1)(\xi,\eta)\in(\gamma+1)\times(\gamma+1)である。▨

例 2.3. 「順序集合」の§E1.8 定義 5.3は、第一座標を先に比較し、第一座標が等しい場合に第二座標を比較する辞書式順序を与える。ω×ω\omega\times\omega上のこの順序を<lex<_{\mathrm{lex}}と書く。任意のη∈ω\eta\in\omegaについて0<10<1から(0,η)<lex(1,0)(0,\eta)<_{\mathrm{lex}}(1,0)であり、逆に(ξ,η)<lex(1,0)(\xi,\eta)<_{\mathrm{lex}}(1,0)ならばξ<1\xi<1またはξ=1\xi=1かつη<0\eta<0であるからξ=0\xi=0である。したがって

{(ξ,η)∈ω×ω∣(ξ,η)<lex(1,0)}={0}×ω\{(\xi,\eta)\in\omega\times\omega\mid(\xi,\eta)<_{\mathrm{lex}}(1,0)\}=\{0\}\times\omega

であり、η↦(0,η)\eta\mapsto(0,\eta)はω\omegaからこの集合への全単射である。すなわち(1,0)(1,0)より前の部分の濃度はすでにℵ0\aleph_0であって、ℵ0\aleph_0より小さくない。

同じ元を定義 2.1の Gödel 順序で見ると、(ξ,η)≺(1,0)(\xi,\eta)\prec(1,0)を満たすのは、max⁡(ξ,η)<1\max(\xi,\eta)<1すなわち(ξ,η)=(0,0)(\xi,\eta)=(0,0)の場合と、max⁡(ξ,η)=1\max(\xi,\eta)=1かつξ<1\xi<1すなわち(ξ,η)=(0,1)(\xi,\eta)=(0,1)の場合だけである。よって(1,0)(1,0)より前の部分は二元集合{(0,0),(0,1)}\{(0,0),(0,1)\}であり、補題 2.2 (2)が与える(γ+1)×(γ+1)=2×2(\gamma+1)\times(\gamma+1)=2\times 2に収まっている。

この違いが以下の帰納法を可能にする。定理 3.2の証明は、各元より前の部分の濃度がκ\kappaより真に小さいことを使う。辞書式順序ではこの評価が成り立たないので、そのままでは用いることができない。

3 無限基数の和と積

以下、基数κ\kappaが無限であるとはω≤κ\omega\leq\kappaが成り立つことをいう。

補題 3.1.κ\kappaを無限基数とし、α\alphaをα<κ\alpha<\kappaを満たす順序数とする。このとき次が成り立つ。

  1. κ\kappaは極限順序数である。
  2. α+1<κ\alpha+1<\kappaが成り立つ。したがってκ\kappaの真の始切片に属する任意の順序数を一段だけ後続順序数へ進めても、なおκ\kappa未満にとどまる。

証明.(2)α<κ\alpha<\kappaとする。§E1.16 命題 4.2によりα+1\alpha+1はα\alphaより真に大きい最小の順序数であるから、α<κ\alpha<\kappaからα+1≤κ\alpha+1\leq\kappaを得る。α+1=κ\alpha+1=\kappaと仮定して矛盾を導く。

α<ω\alpha<\omegaの場合を見る。「実数体の構成」の§E1.14 命題 1.2によりω\omegaは帰納的集合であるから、α∈ω\alpha\in\omegaからα+1∈ω\alpha+1\in\omegaである。するとκ=α+1<ω\kappa=\alpha+1<\omegaとなり、ω≤κ\omega\leq\kappaに反する。

ω≤α\omega\leq\alphaの場合を見る。写像h ⁣:α+1→αh\colon\alpha+1\to\alphaを

h(α)=0,h(n)=n+1 (n<ω),h(ξ)=ξ (ω≤ξ<α)h(\alpha)=0,\qquad h(n)=n+1\ (n<\omega),\qquad h(\xi)=\xi\ (\omega\leq\xi<\alpha)

と定める。n<ωn<\omegaに対してω\omegaが帰納的集合であることからn+1<ω≤αn+1<\omega\leq\alphaであり、ω≤ξ<α\omega\leq\xi<\alphaに対してh(ξ)=ξ<αh(\xi)=\xi<\alphaであるから、hhの値はすべてα\alphaに属する。hhは単射である。実際、値00を取るのはα\alphaだけであり(§E1.14 命題 1.2の Peano の公理により00は自然数の後続ではない)、ω\omega未満の相異なる二つの自然数の後続は相異なり、ω\omega以上の相異なる二元の像は相異なり、三つの場合の像はそれぞれ{0}\{0\}、{n+1∣n<ω}\{n+1\mid n<\omega\}、[ω,α)[\omega,\alpha)に含まれて互いに交わらない。hhは全射でもある。実際ζ<α\zeta<\alphaとすると、ζ=0\zeta=0ならばh(α)=ζh(\alpha)=\zetaであり、0≠ζ<ω0\neq\zeta<\omegaならば§E1.14 命題 1.2の帰納法によりζ=n+1\zeta=n+1を満たす自然数nnが存在してh(n)=ζh(n)=\zetaであり、ω≤ζ\omega\leq\zetaならばh(ζ)=ζh(\zeta)=\zetaである。

よってα+1\alpha+1とα\alphaは等濃度であり、κ=α+1\kappa=\alpha+1という仮定からκ\kappaとα\alphaが等濃度になる。α<κ\alpha<\kappaであるから、これは§E1.21 定義 1.1によりκ\kappaが基数であることに反する。

以上によりα+1≠κ\alpha+1\neq\kappaであり、α+1<κ\alpha+1<\kappaである。これで(2)が示された。

(1)上の議論はκ\kappa未満のどの順序数についても成り立つので、κ\kappaはどの順序数の後続でもない。ω≤κ\omega\leq\kappaからκ≠0\kappa\neq0であるから、§E1.16 定義 4.1によりκ\kappaは極限順序数である。▨

定理 3.2 (Hessenberg の定理).κ\kappaを無限基数とする。このとき全単射p ⁣:κ×κ→κp\colon\kappa\times\kappa\to\kappaが存在し、

κ+κ=κ,κ⋅κ=κ\kappa+\kappa=\kappa, \qquad \kappa\cdot\kappa=\kappa

が成り立つ。

証明. 順序数κ\kappaについての性質を「κ\kappaが無限基数ならばκ×κ\kappa\times\kappaからκ\kappaへの全単射が存在する」と取り、「超限帰納法と超限再帰」の§E1.17 定理 1.1を順序数の全体にわたる形で用いる。すなわち、無限基数κ\kappaを取り、κ\kappa未満のすべての無限基数μ\muについてμ×μ\mu\times\muからμ\muへの全単射が存在すると仮定して、κ\kappaについて同じことを示す。

κ=ω\kappa=\omegaのときは、「等濃度と可算性」の§E1.18 補題 3.8が全単射ω×ω→ω\omega\times\omega\to\omegaを与える。以下ω<κ\omega<\kappaとする。

補題 2.2 (1)により、κ×κ\kappa\times\kappaは定義 2.1の Gödel 順序≺\precによって整列される。「順序数」の§E1.16 定理 3.1により、順序同型f ⁣:(κ×κ,≺)→(θ,∈)f\colon(\kappa\times\kappa,\prec)\to(\theta,{\in})をもつ順序数θ\thetaがただ一つ存在する。

κ<θ\kappa<\thetaと仮定する。ffは全射であるから、f(α,β)=κf(\alpha,\beta)=\kappaを満たす(α,β)∈κ×κ(\alpha,\beta)\in\kappa\times\kappaが存在する。ffは順序同型であるから、ffのS={(ξ,η)∣(ξ,η)≺(α,β)}S=\{(\xi,\eta)\mid(\xi,\eta)\prec(\alpha,\beta)\}への制限はSSから{ζ∣ζ<κ}=κ\{\zeta\mid\zeta<\kappa\}=\kappaへの全単射である。

γ=max⁡(α,β)\gamma=\max(\alpha,\beta)とおくとγ<κ\gamma<\kappaであり、補題 2.2 (2)によりS⊆(γ+1)×(γ+1)S\subseteq(\gamma+1)\times(\gamma+1)である。補題 3.1によりγ+1<κ\gamma+1<\kappaである。集合{ξ∣ξ≤γ+1, ξ は γ+1 と等濃度}\{\xi\mid\xi\leq\gamma+1,\ \xi\text{ は }\gamma+1\text{ と等濃度}\}はγ+1\gamma+1を含んで空でない順序数からなる集合であるから、§E1.16 命題 2.5 (3)により最小元μ0\mu_0をもつ。μ0\mu_0より小さい順序数がμ0\mu_0と等濃度ならば、それはγ+1\gamma+1とも等濃度になって最小性に反するので、μ0\mu_0は§E1.21 定義 1.1の意味の基数である。μ0≤γ+1<κ\mu_0\leq\gamma+1<\kappaである。

ν=max⁡(μ0,ω)\nu=\max(\mu_0,\omega)とおく。μ0<κ\mu_0<\kappaかつω<κ\omega<\kappaであるからν<κ\nu<\kappaであり、ω≤ν\omega\leq\nuである。ν\nuは基数である。実際ω≤μ0\omega\leq\mu_0ならばν=μ0\nu=\mu_0であり、μ0<ω\mu_0<\omegaならばν=ω\nu=\omegaであって、ω\omegaより小さい順序数は自然数であるからω\omegaと等濃度でない。よってν\nuはκ\kappa未満の無限基数であり、帰納の仮定により全単射q ⁣:ν×ν→νq\colon\nu\times\nu\to\nuが存在する。

γ+1\gamma+1はμ0\mu_0と等濃度でありμ0⊆ν\mu_0\subseteq\nuであるから、単射j ⁣:γ+1→νj\colon\gamma+1\to\nuが存在する。したがって(ξ,η)↦q(j(ξ),j(η))(\xi,\eta)\mapsto q(j(\xi),j(\eta))は(γ+1)×(γ+1)(\gamma+1)\times(\gamma+1)からν\nuへの単射である。ffの逆写像をκ\kappaへ制限したものはκ\kappaからSSへの全単射であり、これに上の単射のSSへの制限を合成すると、単射κ→ν\kappa\to\nuを得る。一方ν<κ\nu<\kappaからν⊆κ\nu\subseteq\kappaであり、包含は単射ν→κ\nu\to\kappaである。「Dedekind–MacNeille 完備化」の§E1.11 定理 4.2によりκ\kappaとν\nuは等濃度となるが、ν<κ\nu<\kappaであるから、これは§E1.21 定義 1.1によりκ\kappaが基数であることに反する。よってθ≤κ\theta\leq\kappaである。

θ≤κ\theta\leq\kappaからθ⊆κ\theta\subseteq\kappaであるから、ffは単射κ×κ→κ\kappa\times\kappa\to\kappaである。逆にα↦(α,0)\alpha\mapsto(\alpha,0)は単射κ→κ×κ\kappa\to\kappa\times\kappaである。§E1.11 定理 4.2により全単射p ⁣:κ×κ→κp\colon\kappa\times\kappa\to\kappaが存在する。

命題 1.3 (1)により∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappaであるから、定義 1.1とppによりκ⋅κ=∣κ×κ∣=κ\kappa\cdot\kappa=\lvert\kappa\times\kappa\rvert=\kappaである。ω≤κ\omega\leq\kappaから2≤κ2\leq\kappaであり、命題 1.4 (4)と命題 1.4 (2)により

κ+κ=2κ≤κ⋅κ=κ\kappa+\kappa=2\kappa\leq\kappa\cdot\kappa=\kappa

である。また命題 1.4 (3)によりκ≤κ+κ\kappa\leq\kappa+\kappaであるから、§E1.18 定義 1.1の比較と§E1.11 定理 4.2によりκ+κ=κ\kappa+\kappa=\kappaである。▨

系 3.3.κ,λ\kappa,\lambdaを基数とし、0<κ≤λ0<\kappa\leq\lambdaであってλ\lambdaは無限であるとする。このとき

κ+λ=κλ=λ\kappa+\lambda=\kappa\lambda=\lambda

が成り立つ。さらに全単射κ⊔λ→λ\kappa\sqcup\lambda\to\lambdaと全単射κ×λ→λ\kappa\times\lambda\to\lambdaが存在する。

証明.κ≤λ\kappa\leq\lambdaと命題 1.4 (2)によりκ+λ≤λ+λ\kappa+\lambda\leq\lambda+\lambdaかつκλ≤λλ\kappa\lambda\leq\lambda\lambdaである。定理 3.2によりλ+λ=λ\lambda+\lambda=\lambdaかつλλ=λ\lambda\lambda=\lambdaであるから、κ+λ≤λ\kappa+\lambda\leq\lambdaかつκλ≤λ\kappa\lambda\leq\lambdaである。

κ>0\kappa>0であるから、κ\kappaとλ\lambdaの役割を入れ替えて命題 1.4 (3)を用いるとλ≤λκ\lambda\leq\lambda\kappaかつλ≤λ+κ\lambda\leq\lambda+\kappaである。命題 1.4 (1)によりλκ=κλ\lambda\kappa=\kappa\lambdaかつλ+κ=κ+λ\lambda+\kappa=\kappa+\lambdaであるから、λ≤κλ\lambda\leq\kappa\lambdaかつλ≤κ+λ\lambda\leq\kappa+\lambdaである。

命題 1.3 (1)により∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappa、∣λ∣=λ\lvert\lambda\rvert=\lambdaであるから、命題 1.3 (2)によりκ+λ=∣κ⊔λ∣\kappa+\lambda=\lvert\kappa\sqcup\lambda\rvert、κλ=∣κ×λ∣\kappa\lambda=\lvert\kappa\times\lambda\rvertである。以上の二つの向きの不等式は、§E1.18 定義 1.1により単射κ⊔λ→λ\kappa\sqcup\lambda\to\lambdaと単射λ→κ⊔λ\lambda\to\kappa\sqcup\lambda、および単射κ×λ→λ\kappa\times\lambda\to\lambdaと単射λ→κ×λ\lambda\to\kappa\times\lambdaの存在を意味する。§E1.11 定理 4.2により全単射κ⊔λ→λ\kappa\sqcup\lambda\to\lambdaと全単射κ×λ→λ\kappa\times\lambda\to\lambdaが存在し、κ+λ=κλ=λ\kappa+\lambda=\kappa\lambda=\lambdaである。▨

例 3.4.λ\lambdaを無限基数とする。系 3.3をκ=2\kappa=2に適用すると2+λ=2λ=λ2+\lambda=2\lambda=\lambdaである。命題 1.4 (4)とあわせるとλ+λ=2λ=λ\lambda+\lambda=2\lambda=\lambdaであり、これは定理 3.2の和の等式の別の形である。κ=1\kappa=1に適用すると1+λ=λ1+\lambda=\lambdaである。

ℵ0\aleph_0とℵ1\aleph_1は基数であるから、ℵ0+ℵ0=ℵ0⋅ℵ0=ℵ0\aleph_0+\aleph_0=\aleph_0\cdot\aleph_0=\aleph_0、ℵ0+ℵ1=ℵ0⋅ℵ1=ℵ1\aleph_0+\aleph_1=\aleph_0\cdot\aleph_1=\aleph_1である。「基数とアレフ」の§E1.21 定義 4.1によりℵ0=ω\aleph_0=\omegaであるから、前者は§E1.18 補題 3.8が与える全単射ω×ω→ω\omega\times\omega\to\omegaの言い換えである。

注意 3.5. 順序数の和と基数の和は別の演算であり、記号が重なるので区別が要る。順序数としては1+ω=ω1+\omega=\omegaであるがω+1≠ω\omega+1\neq\omegaである。実際ω+1\omega+1は最大元ω\omegaをもつ順序数であり、補題 3.1の証明が示すとおりω\omegaとは相異なる。一方、基数としては系 3.3により1+ℵ0=ℵ0+1=ℵ01+\aleph_0=\aleph_0+1=\aleph_0である。

すなわち、順序数の和は交換律を満たさず、後続を取ると必ず真に大きい順序数になるが、基数の和は命題 1.4 (1)により交換律を満たし、無限基数へ有限の基数を加えても値が変わらない。ω+1\omega+1という表記が現れたときは、それが順序数の後続であるか基数の和であるかを文脈で確かめる必要がある。本記事では、α+1\alpha+1という表記は§E1.16 定義 4.1の順序数の後続を表す。

注意 3.6.定理 3.2と系 3.3の証明は、選択公理を用いていない。用いた道具は、定義 2.1が明示的に与える整列順序、§E1.16 定理 3.1の順序型の存在と一意性、§E1.17 定理 1.1の超限帰納法、§E1.18 補題 3.8の具体的な全単射、§E1.11 定理 4.2の Schröder–Bernstein の定理、補題 3.1の後続の評価、本記事の命題 1.3と命題 1.4の各項、および分出だけである。Schröder–Bernstein の定理が選択公理を用いないことは§E1.11 注意 4.3が確かめている。

ただし§E1.16 定理 3.1は置換公理スキーマを用いる。すなわち定理 3.2は選択公理を用いずに証明することができるが、置換公理スキーマには依存する。

補題 3.7. 選択公理を仮定する。μ\muを無限基数、IIを∣I∣≤μ\lvert I\rvert\leq\muを満たす集合とし、(Ai)i∈I(A_i)_{i\in I}を、各i∈Ii\in Iについて∣Ai∣≤μ\lvert A_i\rvert\leq\muを満たす集合の族とする。このとき

∣⋃i∈IAi∣≤μ\left\lvert\bigcup_{i\in I}A_i\right\rvert\leq\mu

が成り立つ。

証明.μ\muは基数であるから§E1.21 定理 2.2 (3)により∣μ∣=μ\lvert\mu\rvert=\muである。各i∈Ii\in Iについて∣Ai∣≤μ=∣μ∣\lvert A_i\rvert\leq\mu=\lvert\mu\rvertであるから、単射ui ⁣:Ai→μu_i\colon A_i\to\muが存在する。選択公理により、この単射をすべてのi∈Ii\in Iについて同時に選ぶ。さらに各x∈⋃i∈IAix\in\bigcup_{i\in I}A_iに対してx∈Ai(x)x\in A_{i(x)}を満たすi(x)∈Ii(x)\in Iを一つ選び、v(x)=(i(x),ui(x)(x))v(x)=(i(x),u_{i(x)}(x))と定める。v(x)=v(y)v(x)=v(y)ならばi(x)=i(y)i(x)=i(y)であり、ui(x)u_{i(x)}の単射性からx=yx=yである。よってvvは⋃i∈IAi\bigcup_{i\in I}A_iからI×μI\times\muへの単射である。したがって命題 1.4 (2)と定理 3.2により

∣⋃i∈IAi∣≤∣I∣⋅μ≤μ⋅μ=μ\left\lvert\bigcup_{i\in I}A_i\right\rvert\leq\lvert I\rvert\cdot\mu\leq\mu\cdot\mu=\mu

を得る。▨

4 冪に対する下からの評価

系 4.1.κ\kappaを集合の濃度とする。このとき

κ<2κ\kappa<2^{\kappa}

が成り立つ。すなわちκ≤2κ\kappa\leq2^{\kappa}であり、かつ2κ≰κ2^{\kappa}\nleq\kappaである。とくにκ\kappaが基数である場合にもこれが成り立つ。

証明.∣X∣=κ\lvert X\rvert=\kappaを満たす集合XXを取る。「Cantor の定理」の§E1.19 定理 1.1により∣X∣<∣P(X)∣\lvert X\rvert<\lvert\mathcal P(X)\rvertである。命題 1.5により∣P(X)∣=2∣X∣=2κ\lvert\mathcal P(X)\rvert=2^{\lvert X\rvert}=2^{\kappa}であるからκ<2κ\kappa<2^{\kappa}である。§E1.18 定義 1.1の狭義比較はκ≤2κ\kappa\leq2^{\kappa}かつ2κ≰κ2^{\kappa}\nleq\kappaを意味する。

κ\kappaが基数である場合は、命題 1.3 (1)によりX=κX=\kappaと取ることができる。▨

注意 4.2. 基数κ\kappaを固定したとき、2κ2^{\kappa}がアレフ階層のどこに位置するかは、本単元が扱う公理からは決まらない。系 4.1による下からの評価のほかに、2κ2^{\kappa}には共終数による制約が課される。後者は「共終数と König の定理」が扱う。

5 連続体濃度

定義 5.1. 濃度2ℵ02^{\aleph_0}を連続体濃度 (cardinality of the continuum) といい、c\mathfrak cと書く。すなわちc=2ℵ0\mathfrak c=2^{\aleph_0}である。ここでℵ0\aleph_0は「基数とアレフ」の§E1.21 定義 4.1が与えるアレフであり、ℵ0=ω\aleph_0=\omegaである。

命題 5.2. 選択公理を仮定する。このとき次が成り立つ。

  1. c\mathfrak cは基数である。
  2. ℵ0<c\aleph_0<\mathfrak cであり、c\mathfrak cは非可算な無限基数である。

証明.(1)命題 1.3 (2)により2ℵ02^{\aleph_0}は写像集合2ω2^{\omega}の濃度である。「基数とアレフ」の§E1.21 定理 2.2により、集合2ω2^{\omega}と等濃な基数がただ一つ存在するので、c\mathfrak cは基数である。

(2)系 4.1によりℵ0<c\aleph_0<\mathfrak cであるから、c\mathfrak cは非可算な無限基数である。▨

定理 5.3. 実数全体の集合R\mathbb Rについて

∣R∣=c=2ℵ0\lvert\mathbb R\rvert=\mathfrak c=2^{\aleph_0}

が成り立つ。

証明.x∈Rx\in\mathbb Rに対して

C(x)={q∈Q∣ι(q)<x}C(x)=\{q\in\mathbb Q\mid \iota(q)<x\}

とおく。ここでι ⁣:Q→R\iota\colon\mathbb Q\to\mathbb Rは「実数体の構成」の§E1.14 定理 3.1が与える順序を保つ体の埋め込みである。x<yx<yとすると、§E1.14 定理 3.6によりx<ι(q)<yx<\iota(q)<yを満たす有理数qqが存在する。ι\iotaは順序を保つ単射であるから、このqqはC(y)C(y)に属してC(x)C(x)に属さない。よってx≠yx\neq yならば§E1.14 定理 3.5 (3)によりx<yx<yかy<xy<xのいずれかが成り立ち、いずれの場合もC(x)≠C(y)C(x)\neq C(y)である。すなわちC ⁣:R→P(Q)C\colon\mathbb R\to\mathcal P(\mathbb Q)は単射である。

「等濃度と可算性」の§E1.18 定理 4.1によりQ\mathbb Qは可算であるから、§E1.18 定義 1.2により全単射N≥0→Q\mathbb N_{\geq0}\to\mathbb Qが存在し、∣Q∣=∣N≥0∣=ℵ0\lvert\mathbb Q\rvert=\lvert\mathbb N_{\geq0}\rvert=\aleph_0である。命題 1.5により∣P(Q)∣=2ℵ0\lvert\mathcal P(\mathbb Q)\rvert=2^{\aleph_0}であるから、§E1.18 定義 1.1により∣R∣≤2ℵ0\lvert\mathbb R\rvert\leq2^{\aleph_0}である。

逆向きには、「Cantor の定理」の§E1.19 定理 2.9 (2)が、部分集合S⊆Z≥0S\subseteq\mathbb Z_{\geq0}にその指示関数の三進値を対応させる単射P(Z≥0)→R\mathcal P(\mathbb Z_{\geq0})\to\mathbb Rを与える。Z≥0=N≥0\mathbb Z_{\geq0}=\mathbb N_{\geq0}であるから命題 1.5により∣P(Z≥0)∣=2ℵ0\lvert\mathcal P(\mathbb Z_{\geq0})\rvert=2^{\aleph_0}であり、2ℵ0≤∣R∣2^{\aleph_0}\leq\lvert\mathbb R\rvertである。

§E1.11 定理 4.2により∣R∣=2ℵ0\lvert\mathbb R\rvert=2^{\aleph_0}であり、定義 5.1により∣R∣=c\lvert\mathbb R\rvert=\mathfrak cである。▨

例 5.4.定義 5.1と命題 1.6、定理 3.2を組み合わせると、c\mathfrak cについての等式が計算だけで得られる。

c⋅c=2ℵ0⋅2ℵ0=2ℵ0+ℵ0=2ℵ0=c\mathfrak c\cdot\mathfrak c=2^{\aleph_0}\cdot2^{\aleph_0}=2^{\aleph_0+\aleph_0}=2^{\aleph_0}=\mathfrak c

である。ここで第二の等式は命題 1.6 (2)、第三の等式は定理 3.2のℵ0+ℵ0=ℵ0\aleph_0+\aleph_0=\aleph_0による。同様に

cℵ0=(2ℵ0)ℵ0=2ℵ0⋅ℵ0=2ℵ0=c\mathfrak c^{\aleph_0}=(2^{\aleph_0})^{\aleph_0}=2^{\aleph_0\cdot\aleph_0}=2^{\aleph_0}=\mathfrak c

である。一方系 4.1によりc<2c\mathfrak c<2^{\mathfrak c}であり、命題 1.5により2c=∣P(R)∣2^{\mathfrak c}=\lvert\mathcal P(\mathbb R)\rvertであるから、実数の部分集合全体の濃度はc\mathfrak cより真に大きい。

注意 5.5. 本記事が定めた三つの演算と、定理 3.2・系 3.3・系 4.1の三つの評価は、以後の記事が無限の大きさを扱う共通の言葉になる。「共終数と König の定理」は、無限基数を共終数によって正則基数と特異基数に分け、その分解の各段で本記事の和と積の評価を用いる。c\mathfrak cの共終数が可算より大きいこと、したがってc\mathfrak cがℵω\aleph_\omegaに一致しないことも、同じ記事が示す。

6 演習

問題 6.1 (Gödel 順序によるω×ω\omega\times\omegaの順序型).定義 2.1の Gödel 順序をω×ω\omega\times\omegaに入れたとき、その順序型がω\omegaであることを示せ。すなわち、定理 3.2の証明で得た順序同型が、κ=ω\kappa=\omegaの場合にはθ=ω\theta=\omegaを与えることを確かめよ。

解答.

≺\precをω×ω\omega\times\omegaの Gödel 順序とし、§E1.16 定理 3.1が与える順序数をθ\theta、順序同型をf ⁣:(ω×ω,≺)→(θ,∈)f\colon(\omega\times\omega,\prec)\to(\theta,{\in})とする。

各(α,β)∈ω×ω(\alpha,\beta)\in\omega\times\omegaについて、S={(ξ,η)∈ω×ω∣(ξ,η)≺(α,β)}S=\{(\xi,\eta)\in\omega\times\omega\mid(\xi,\eta)\prec(\alpha,\beta)\}とおき、γ=max⁡(α,β)\gamma=\max(\alpha,\beta)とおく。γ<ω\gamma<\omegaであり、補題 2.2 (2)によりS⊆(γ+1)×(γ+1)S\subseteq(\gamma+1)\times(\gamma+1)である。ffは順序同型であるから、ffのSSへの制限はSSから順序数f(α,β)f(\alpha,\beta)への全単射である。§E1.14 命題 1.2によりγ+1\gamma+1は自然数であるから(γ+1)×(γ+1)(\gamma+1)\times(\gamma+1)は有限集合であり、§E1.18 補題 2.4 (1)によりSSも有限集合である。ω≤f(α,β)\omega\leq f(\alpha,\beta)と仮定すると、ω⊆f(α,β)\omega\subseteq f(\alpha,\beta)であるから、この全単射の逆写像をω\omegaへ制限して単射ω→S\omega\to Sを得る。§E1.18 定義 1.2 (1)により全単射n→Sn\to Sを満たすn<ωn<\omegaが存在するから、その逆写像と合成して単射ω→n\omega\to nを得るが、§E1.21 命題 1.3によりω\omegaは基数であるから、これは§E1.21 命題 1.2 (3)に反する。よってf(α,β)<ωf(\alpha,\beta)<\omegaである。ffは全射であるからθ\thetaのどの元もf(α,β)f(\alpha,\beta)の形であり、θ⊆ω\theta\subseteq\omega、すなわちθ≤ω\theta\leq\omegaである。

逆にθ<ω\theta<\omegaとすると、ω×ω\omega\times\omegaはθ\thetaと等濃度な有限集合になる。しかしn↦(n,0)n\mapsto(n,0)はω\omegaからω×ω\omega\times\omegaへの単射であり、ω\omegaは有限でないので矛盾する。よってθ=ω\theta=\omegaである。

なお、≺\precによるω×ω\omega\times\omegaの並びは(0,0)(0,0)、(0,1)(0,1)、(1,0)(1,0)、(1,1)(1,1)、(0,2)(0,2)、(1,2)(1,2)、(2,0)(2,0)、(2,1)(2,1)、(2,2)(2,2)、(0,3)(0,3)、… であり、max⁡\maxの値が0,1,2,3,…0,1,2,3,\dotsと増える各段が有限個の元からなる。▨

問題 6.2 (有限列全体の濃度).κ\kappaを無限基数とする。補題 6.3を、選択公理を用いずに示せ。

解答.

定理 3.2が与える全単射p ⁣:κ×κ→κp\colon\kappa\times\kappa\to\kappaを一つ固定する。自然数nnについての再帰によって写像en ⁣:κn→κe_n\colon\kappa^{n}\to\kappaの族を次のように定める。e0e_0はκ0\kappa^{0}の唯一の元である空列を00へ写す写像とし、長さn+1n+1の列を長さnnの列ssと最後の項α\alphaの対と読んで

en+1(s,α)=p(en(s),α)e_{n+1}(s,\alpha)=p(e_n(s),\alpha)

と定める。ppは一つの写像として固定されているので、この族は§E1.17 定理 2.1の自然数に対する場合として一意に定まり、各nnについて全単射を選ぶ操作は現れない。

n≥1n\geq1のときene_nは単射である。実際e1((α))=p(0,α)e_1((\alpha))=p(0,\alpha)であるから、ppの単射性によりe1e_1は単射である。ene_nが単射でen+1(s,α)=en+1(s′,α′)e_{n+1}(s,\alpha)=e_{n+1}(s',\alpha')ならばppの単射性からen(s)=en(s′)e_n(s)=e_n(s')かつα=α′\alpha=\alpha'となり、帰納の仮定からs=s′s=s'である。

写像E ⁣:κ<ω→ω×κE\colon\kappa^{<\omega}\to\omega\times\kappaを、長さnnの列ssに対してE(s)=(n,en(s))E(s)=(n,e_n(s))と定める。長さが異なる二つの列の像は第一成分が異なり、長さが等しい相異なる二つの列の像はene_nの単射性から第二成分が異なる(長さ00の列は一つしかない)。よってEEは単射である。ω≤κ\omega\leq\kappaと系 3.3によりℵ0⋅κ=κ\aleph_0\cdot\kappa=\kappaであるから、ω×κ\omega\times\kappaからκ\kappaへの全単射が存在し、合成して単射κ<ω→κ\kappa^{<\omega}\to\kappaを得る。

逆にα↦(α)\alpha\mapsto(\alpha)は単射κ→κ<ω\kappa\to\kappa^{<\omega}である。§E1.11 定理 4.2により∣κ<ω∣=κ\lvert\kappa^{<\omega}\rvert=\kappaである。用いた原理は定理 3.2、系 3.3、§E1.17 定理 2.1および§E1.11 定理 4.2である。このうち前二者と§E1.11 定理 4.2が選択公理を用いないことは注意 3.6が述べており、§E1.17 定理 2.1が置換公理スキーマだけを要求することはその主張文が述べている。

有限部分集合s⊆κs\subseteq\kappaは、その元を増加順に並べた有限列へ一意に写る。この対応は[κ]<ω[\kappa]^{<\omega}からκ<ω\kappa^{<\omega}への単射であるから、∣[κ]<ω∣≤κ\lvert[\kappa]^{<\omega}\rvert\leq\kappaである。逆にα↦{α}\alpha\mapsto\{\alpha\}はκ\kappaから[κ]<ω[\kappa]^{<\omega}への単射である。§E1.11 定理 4.2により∣[κ]<ω∣=κ\lvert[\kappa]^{<\omega}\rvert=\kappaである。▨

補題 6.3.κ\kappaを無限基数とする。κ\kappaの元からなる有限列の全体κ<ω=⋃n<ωκn\kappa^{<\omega}=\bigcup_{n<\omega}\kappa^nと、κ\kappaの有限部分集合の全体[κ]<ω[\kappa]^{<\omega}は、いずれも濃度κ\kappaをもつ。

証明. 有限列については、解答が、一つ固定した全単射κ×κ→κ\kappa\times\kappa\to\kappaを自然数について再帰して符号化することにより、選択公理を用いずに∣κ<ω∣=κ\lvert\kappa^{<\omega}\rvert=\kappaを示している。有限部分集合についても同じ解答が、各集合を一意な増加列へ写し、一点集合による下界と Schröder–Bernstein の定理で結論を得る。▨

問題 6.4 (冪の単調性と連続体濃度). 集合の濃度κ≤λ\kappa\leq\lambdaと濃度μ\muについてμκ≤μλ\mu^{\kappa}\leq\mu^{\lambda}が成り立つとは限らないことを、μ=0\mu=0の場合の反例によって示せ。またμ≥1\mu\geq1ならばμκ≤μλ\mu^{\kappa}\leq\mu^{\lambda}が成り立つことを示し、これを用いてℵ0≤c\aleph_0\leq\mathfrak cから2ℵ0≤2c2^{\aleph_0}\leq2^{\mathfrak c}を導け。

解答.

μ=0\mu=0、κ=0\kappa=0、λ=1\lambda=1とする。命題 1.4 (3)により00=10^{0}=1であり、01=∣∅{0}∣0^{1}=\lvert\emptyset^{\{0\}}\rvertは{0}\{0\}から∅\emptysetへの写像全体の濃度であるから00である。κ≤λ\kappa\leq\lambdaであるが1≤01\leq0は成り立たないので、μ≥1\mu\geq1という条件を外すことはできない。

μ≥1\mu\geq1とする。∣M∣=μ\lvert M\rvert=\mu、∣K∣=κ\lvert K\rvert=\kappa、∣L∣=λ\lvert L\rvert=\lambdaとなる集合を取り、§E1.18 定義 1.1により単射j ⁣:K→Lj\colon K\to Lを取る。μ≥1\mu\geq1からMMの元m0m_0を一つ取る。h∈MKh\in M^{K}に対してΘ(h)∈ML\Theta(h)\in M^{L}を、y=j(x)y=j(x)の形のときΘ(h)(y)=h(x)\Theta(h)(y)=h(x)、そうでないときΘ(h)(y)=m0\Theta(h)(y)=m_0と定める。jjは単射であるからxxはyyから一意に定まり、Θ\Thetaは定まる。Θ(h)=Θ(h′)\Theta(h)=\Theta(h')ならば、各x∈Kx\in Kについてh(x)=Θ(h)(j(x))=Θ(h′)(j(x))=h′(x)h(x)=\Theta(h)(j(x))=\Theta(h')(j(x))=h'(x)であるからh=h′h=h'である。よってΘ\Thetaは単射であり、μκ≤μλ\mu^{\kappa}\leq\mu^{\lambda}である。

定義 5.1と系 4.1によりℵ0<c\aleph_0<\mathfrak cであるからℵ0≤c\aleph_0\leq\mathfrak cであり、μ=2≥1\mu=2\geq1として2ℵ0≤2c2^{\aleph_0}\leq2^{\mathfrak c}を得る。定義 5.1により左辺はc\mathfrak cであるからc≤2c\mathfrak c\leq2^{\mathfrak c}である。この不等式は系 4.1が与える狭義の不等式より弱い。▨

参考文献

  1. Thomas Jech, Set Theory, 3rd millennium ed., Springer Monographs in Mathematics, Springer, Berlin, 2003.基数の定義、Hessenberg の定理、無限基数の和・積の評価、および選択公理の使用箇所を参考にした。
  2. Karel Hrbacek and Thomas Jech, Introduction to Set Theory, 3rd ed., Marcel Dekker, New York, 1999.基数の和・積・冪の定義と指数法則、および代表集合の取り替えに関する不変性を参考にした。
  3. Herbert B. Enderton, Elements of Set Theory, Academic Press, 1977.冪集合の濃度と連続体濃度の関係、および Cantor の定理による下からの評価を参考にした。

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