1 基数の和・積・冪
定義 1.1.A,Bを集合とし、κ=∣A∣、λ=∣B∣とする。集合
A⊔B=(A×{0})∪(B×{1})をAとBの直和 (disjoint union) といい、AからBへの写像全体の集合をBAと書く。このとき
κ+λ=∣A⊔B∣,κλ=∣A×B∣,λκ=∣BA∣と定め、それぞれκとλの基数の和 (cardinal sum)、基数の積 (cardinal product)、およびλのκ乗としての基数の冪 (cardinal power) という。積はκ⋅λとも書く。
Aを等濃度な集合A′へ、Bを等濃度な集合B′へ取り替えても、右辺の三つの濃度は変わらない(命題 1.2)。したがってこの三つはκとλだけで決まり、代表集合A,Bの選び方に依存しない。A,Bには有限性・無限性・整列可能性のいずれも課さない。
命題 1.2.A,A′,B,B′を集合とし、AとA′が等濃度、BとB′が等濃度であるとする。このときA⊔BとA′⊔B′、A×BとA′×B′、BAとB′A′は、いずれも等濃度である。
証明. 全単射f:A→A′とg:B→B′を取る。写像
s:A⊔B→A′⊔B′,s(a,0)=(f(a),0),s(b,1)=(g(b),1)は、f−1とg−1から同じ形で作った写像を逆写像にもつので、§E1.1 命題 3.8により全単射である。写像
t:A×B→A′×B′,t(a,b)=(f(a),g(b))も同様に(a′,b′)↦(f−1(a′),g−1(b′))を逆写像にもつ全単射である。
写像u:BA→B′A′をu(h)=g∘h∘f−1で定める。h∈BAに対してg∘h∘f−1はA′からB′への写像であるから、uは定まる。u′(h′)=g−1∘h′∘fで定まる写像u′:B′A′→BAは
u′(u(h))=g−1∘g∘h∘f−1∘f=h,u(u′(h′))=g∘g−1∘h′∘f∘f−1=h′を満たすので、u′はuの逆写像であり、§E1.1 命題 3.8によりuは全単射である。▨
命題 1.3. 次が成り立つ。
- κを基数とすると、κと等濃度な基数はκ自身に限る。すなわち集合としてのκの濃度は基数κであり、∣κ∣=κである。
- κ,λを基数とすると、順序数κ,λそのものを代表集合に取ることができて、κ+λ=∣κ⊔λ∣、κλ=∣κ×λ∣、λκ=∣λκ∣である。最後の等式の右辺のλκはκからλへの写像全体の集合を表し、左辺のλκは基数の冪を表す。
- S,Yを集合とし、各s∈Sに対してAs=Yと定める。このとき§E1.2 定義 5.1の直積∏s∈SAsと写像集合YSのあいだに全単射が存在し、∏s∈SAs=∣Y∣∣S∣である。
証明.(1)「基数とアレフ」の§E1.21 定義 1.1により、基数とは、それより小さいどの順序数とも等濃でない順序数である。μをκと等濃度な基数とすると、μ<κならばκが基数であることに反し、κ<μならばμが基数であることに反する。順序数κ,μは§E1.16 定義 2.1の大小について比較可能であるからμ=κである。恒等写像はκからκへの全単射であるから、κ自身がκと等濃度な基数であり、∣κ∣=κである。
(2)(1)により∣κ∣=κかつ∣λ∣=λであるから、定義 1.1のA,Bとして順序数κ,λを取ればよい。
(3)§E1.2 定義 5.1により∏s∈SAsの元はSを定義域とし、各sでの値がAs=Yに属する族である。族xに対して、Sを定義域、Yを終域、xの値を対応とする写像x:S→Yを与えると、x↦xは∏s∈SAsからYSへの写像である。逆にh∈YSに対して、S上でhと同じ値を取る族を対応させると、二つの対応は互いに逆であるから、§E1.1 命題 3.8によりx↦xは全単射である。したがって定義 1.1により∏s∈SAs=∣YS∣=∣Y∣∣S∣である。▨
命題 1.4.κ,κ′,λ,λ′を集合の濃度とする。
- κ+λ=λ+κかつκλ=λκである。
- κ≤κ′かつλ≤λ′ならばκ+λ≤κ′+λ′かつκλ≤κ′λ′である。
- κ+0=κ、0⋅κ=0、1⋅κ=κ、κ1=κ、κ0=1である。またλ≥1ならばκ≤κλであり、κ≤κ+λである。
- 任意の集合AについてA⊔A=A×2である。とくに∣A∣=κのときκ+κ=2κである。
証明. 代表集合A,A′,B,B′を∣A∣=κ、∣A′∣=κ′、∣B∣=λ、∣B′∣=λ′となるように取る。
(1)写像A⊔B→B⊔Aを(a,0)↦(a,1)、(b,1)↦(b,0)で定めると、同じ形の写像を逆写像にもつので全単射である。写像A×B→B×A、(a,b)↦(b,a)も同様である。
(2)§E1.18 定義 1.1により単射f:A→A′とg:B→B′が存在する。命題 1.2の証明と同じ式で定めたs:A⊔B→A′⊔B′とt:A×B→A′×B′は、f,gが単射であれば単射である。実際s(a,0)=s(a′,0)ならばf(a)=f(a′)からa=a′であり、第二の成分が異なる二元の像は第二の成分が異なる。t(a,b)=t(a′,b′)ならばf(a)=f(a′)かつg(b)=g(b′)から(a,b)=(a′,b′)である。
(3)0=∅であるからA⊔∅=A×{0}であり、a↦(a,0)は全単射である。A×∅=∅である。1={0}であるから{0}×A→A、(0,a)↦aは全単射である。A{0}→A、h↦h(0)は全単射であり、A∅は空写像だけからなる一元集合である。λ≥1ならばBは元b0をもち、a↦(a,b0)は単射A→A×Bである。a↦(a,0)は単射A→A⊔Bである。
(4)§E1.16 定義 2.1の von Neumann 自然数により2={0,1}であるから
A⊔A=(A×{0})∪(A×{1})=A×{0,1}=A×2である。∣2∣=2であるから定義 1.1によりκ+κ=∣A×2∣=κ⋅2=2κである。▨
命題 1.5.Xを任意の集合とする。このとき
∣P(X)∣=2∣X∣が成り立つ。
証明.2={0,1}とし、S⊆Xに対してその特性関数χS:X→2を、x∈SのときχS(x)=1、x∈/SのときχS(x)=0と定める。写像Φ:P(X)→2X、Φ(S)=χSを考える。h∈2Xに対してΨ(h)={x∈X∣h(x)=1}とおくと、Ψ(h)⊆Xである。任意のS⊆XについてΨ(Φ(S))={x∈X∣χS(x)=1}=Sであり、任意のh∈2Xとx∈XについてχΨ(h)(x)=1とh(x)=1は同値で、値は0と1の二つしかないのでΦ(Ψ(h))=hである。よってΨはΦの逆写像であり、§E1.1 命題 3.8によりΦは全単射である。定義 1.1により∣2X∣=∣2∣∣X∣=2∣X∣であるから、結論を得る。▨
命題 1.6.κ,λ,μを集合の濃度とする。
- (κλ)μ=κλμである。
- κλ+μ=κλκμである。
- (κλ)μ=κμλμである。
証明.∣C∣=κ、∣B∣=λ、∣A∣=μとなる集合A,B,Cを取る。
(1)写像F:CB×A→(CB)Aを、h∈CB×Aとa∈A、b∈Bに対してF(h)(a)(b)=h(b,a)と定める。各aについてF(h)(a)はBからCへの写像であり、F(h)はAからCBへの写像である。逆にk∈(CB)Aに対してG(k)(b,a)=k(a)(b)とおくとG(k)∈CB×Aであり、G(F(h))=hかつF(G(k))=kである。よって§E1.1 命題 3.8によりFは全単射であり、定義 1.1によりκλμ=∣CB×A∣=∣(CB)A∣=(κλ)μである。
(2)写像CB⊔A→CB×CAをh↦(h1,h2)、h1(b)=h(b,0)、h2(a)=h(a,1)と定める。(h1,h2)からh(b,0)=h1(b)、h(a,1)=h2(a)によってhが復元されるので、この写像は逆写像をもち、§E1.1 命題 3.8により全単射である。
(3)写像(C×B)A→CA×BAをh↦(pr1∘h,pr2∘h)と定める。ここでpr1,pr2はC×Bの二つの成分を取り出す写像である。(k1,k2)からh(a)=(k1(a),k2(a))によってhが復元されるので、この写像も逆写像をもつ全単射である。▨
例 1.7.m,nを自然数とすると、集合m={0,…,m−1}とn={0,…,n−1}は基数であり、命題 1.3 (1)により∣m∣=m、∣n∣=nである。m⊔nはm個とn個の元からなる二つの部分に分かれるのでm+n個の元をもち、m×nはm行n列の表としてmn個の元をもつ。nmの元はm個の各座標にn個の値のいずれかを与えたものであるからnm個ある。すなわち基数としての和・積・冪は、自然数についての和・積・冪と一致する。たとえば2+3=5、2⋅3=6、32=9である。
∣P(3)∣=23=8である。実際3={0,1,2}の部分集合は∅、{0}、{1}、{2}、{0,1}、{0,2}、{1,2}、{0,1,2}の八つであり、命題 1.5の特性関数による対応は、これらを順に(0,0,0)、(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)、(1,1,0)、(1,0,1)、(0,1,1)、(1,1,1)へ写す。
2 辞書式順序と Gödel 順序
定義 2.1.θを順序数とする。順序数α,βに対して、大きくないほうを取り除いて残る順序数をmax(α,β)と書く。(α,β),(γ,δ)∈θ×θに対して、関係(α,β)≺(γ,δ)を、次の三つのいずれかが成り立つこととして定める。
- max(α,β)<max(γ,δ)である。
- max(α,β)=max(γ,δ)かつα<γである。
- max(α,β)=max(γ,δ)かつα=γかつβ<δである。
この≺をθ×θのGödel 順序 (Gödel ordering) という。
補題 2.2.θを順序数とし、≺を定義 2.1の Gödel 順序とする。このとき次が成り立つ。
- ≺はθ×θの整列順序である。
- (α,β)∈θ×θとγ=max(α,β)に対して{(ξ,η)∈θ×θ∣(ξ,η)≺(α,β)}⊆(γ+1)×(γ+1)が成り立つ。
証明.(1)(α,β)∈θ×θとする。§E1.16 定義 2.1によりθは所属関係によって整列された推移的集合であるから、θの任意の二元は大小について比較可能であり、max(α,β)はαかβのいずれかに等しく、θに属する。定義 2.1の三条件は、どの二つもmaxの値またはαの値について両立しないので、(α,β)≺(γ,δ)を与える条件は高々一つである。とくに(α,β)≺(α,β)はどの条件からも成り立たない。
(α,β)=(γ,δ)とする。max(α,β)=max(γ,δ)ならば、比較可能性により定義 2.1 (1)がどちらか一方の向きで成り立つ。max(α,β)=max(γ,δ)かつα=γならば定義 2.1 (2)がどちらか一方の向きで成り立つ。maxが等しくα=γならばβ=δであり、定義 2.1 (3)がどちらか一方の向きで成り立つ。よって相異なる二元は必ず一方の向きで比較される。
(α,β)≺(γ,δ)≺(ϵ,ζ)とし、m1=max(α,β)、m2=max(γ,δ)、m3=max(ϵ,ζ)とおく。定義 2.1の三条件のいずれの場合もm1≤m2かつm2≤m3であるからm1≤m3である。m1<m3ならば定義 2.1 (1)により(α,β)≺(ϵ,ζ)である。m1=m3ならばm1=m2=m3であり、定義 2.1 (2)と定義 2.1 (3)からα≤γ≤ϵを得る。α<ϵならば定義 2.1 (2)により結論を得る。α=ϵならばα=γ=ϵであり、定義 2.1 (3)からβ<δ<ζを得るので、同じ条件により結論を得る。
Sをθ×θの空でない部分集合とする。M={max(ξ,η)∣(ξ,η)∈S}はθの空でない部分集合であるから、§E1.16 定義 2.1により最小元γ0をもつ。S0={(ξ,η)∈S∣max(ξ,η)=γ0}は空でなく、{ξ∣(ξ,η)∈S0}はθの空でない部分集合であるから最小元α0をもつ。さらに{η∣(α0,η)∈S0}もθの空でない部分集合であるから最小元β0をもつ。(ξ,η)∈Sが(ξ,η)≺(α0,β0)を満たすとすると、定義 2.1 (1)ではmax(ξ,η)<γ0となってγ0の最小性に反し、定義 2.1 (2)では(ξ,η)∈S0かつξ<α0となってα0の最小性に反し、定義 2.1 (3)では(α0,η)∈S0かつη<β0となってβ0の最小性に反する。よって(α0,β0)はSの最小元であり、≺は整列順序である。
(2)(ξ,η)≺(α,β)とする。定義 2.1の三条件のいずれの場合もmax(ξ,η)≤max(α,β)=γであり、ξ≤max(ξ,η)かつη≤max(ξ,η)であるからξ≤γかつη≤γである。§E1.16 命題 4.2によりγ+1はγより真に大きい最小の順序数であるから、ξ≤γはξ<γ+1と同値であり、ηについても同様である。よって(ξ,η)∈(γ+1)×(γ+1)である。▨
例 2.3. 「順序集合」の§E1.8 定義 5.3は、第一座標を先に比較し、第一座標が等しい場合に第二座標を比較する辞書式順序を与える。ω×ω上のこの順序を<lexと書く。任意のη∈ωについて0<1から(0,η)<lex(1,0)であり、逆に(ξ,η)<lex(1,0)ならばξ<1またはξ=1かつη<0であるからξ=0である。したがって
{(ξ,η)∈ω×ω∣(ξ,η)<lex(1,0)}={0}×ωであり、η↦(0,η)はωからこの集合への全単射である。すなわち(1,0)より前の部分の濃度はすでにℵ0であって、ℵ0より小さくない。
同じ元を定義 2.1の Gödel 順序で見ると、(ξ,η)≺(1,0)を満たすのは、max(ξ,η)<1すなわち(ξ,η)=(0,0)の場合と、max(ξ,η)=1かつξ<1すなわち(ξ,η)=(0,1)の場合だけである。よって(1,0)より前の部分は二元集合{(0,0),(0,1)}であり、補題 2.2 (2)が与える(γ+1)×(γ+1)=2×2に収まっている。
この違いが以下の帰納法を可能にする。定理 3.2の証明は、各元より前の部分の濃度がκより真に小さいことを使う。辞書式順序ではこの評価が成り立たないので、そのままでは用いることができない。
3 無限基数の和と積
以下、基数κが無限であるとはω≤κが成り立つことをいう。
補題 3.1.κを無限基数とし、αをα<κを満たす順序数とする。このとき次が成り立つ。
- κは極限順序数である。
- α+1<κが成り立つ。したがってκの真の始切片に属する任意の順序数を一段だけ後続順序数へ進めても、なおκ未満にとどまる。
証明.(2)α<κとする。§E1.16 命題 4.2によりα+1はαより真に大きい最小の順序数であるから、α<κからα+1≤κを得る。α+1=κと仮定して矛盾を導く。
α<ωの場合を見る。「実数体の構成」の§E1.14 命題 1.2によりωは帰納的集合であるから、α∈ωからα+1∈ωである。するとκ=α+1<ωとなり、ω≤κに反する。
ω≤αの場合を見る。写像h:α+1→αを
h(α)=0,h(n)=n+1 (n<ω),h(ξ)=ξ (ω≤ξ<α)と定める。n<ωに対してωが帰納的集合であることからn+1<ω≤αであり、ω≤ξ<αに対してh(ξ)=ξ<αであるから、hの値はすべてαに属する。hは単射である。実際、値0を取るのはαだけであり(§E1.14 命題 1.2の Peano の公理により0は自然数の後続ではない)、ω未満の相異なる二つの自然数の後続は相異なり、ω以上の相異なる二元の像は相異なり、三つの場合の像はそれぞれ{0}、{n+1∣n<ω}、[ω,α)に含まれて互いに交わらない。hは全射でもある。実際ζ<αとすると、ζ=0ならばh(α)=ζであり、0=ζ<ωならば§E1.14 命題 1.2の帰納法によりζ=n+1を満たす自然数nが存在してh(n)=ζであり、ω≤ζならばh(ζ)=ζである。
よってα+1とαは等濃度であり、κ=α+1という仮定からκとαが等濃度になる。α<κであるから、これは§E1.21 定義 1.1によりκが基数であることに反する。
以上によりα+1=κであり、α+1<κである。これで(2)が示された。
(1)上の議論はκ未満のどの順序数についても成り立つので、κはどの順序数の後続でもない。ω≤κからκ=0であるから、§E1.16 定義 4.1によりκは極限順序数である。▨
定理 3.2 (Hessenberg の定理).κを無限基数とする。このとき全単射p:κ×κ→κが存在し、
κ+κ=κ,κ⋅κ=κが成り立つ。
証明. 順序数κについての性質を「κが無限基数ならばκ×κからκへの全単射が存在する」と取り、「超限帰納法と超限再帰」の§E1.17 定理 1.1を順序数の全体にわたる形で用いる。すなわち、無限基数κを取り、κ未満のすべての無限基数μについてμ×μからμへの全単射が存在すると仮定して、κについて同じことを示す。
κ=ωのときは、「等濃度と可算性」の§E1.18 補題 3.8が全単射ω×ω→ωを与える。以下ω<κとする。
補題 2.2 (1)により、κ×κは定義 2.1の Gödel 順序≺によって整列される。「順序数」の§E1.16 定理 3.1により、順序同型f:(κ×κ,≺)→(θ,∈)をもつ順序数θがただ一つ存在する。
κ<θと仮定する。fは全射であるから、f(α,β)=κを満たす(α,β)∈κ×κが存在する。fは順序同型であるから、fのS={(ξ,η)∣(ξ,η)≺(α,β)}への制限はSから{ζ∣ζ<κ}=κへの全単射である。
γ=max(α,β)とおくとγ<κであり、補題 2.2 (2)によりS⊆(γ+1)×(γ+1)である。補題 3.1によりγ+1<κである。集合{ξ∣ξ≤γ+1, ξ は γ+1 と等濃度}はγ+1を含んで空でない順序数からなる集合であるから、§E1.16 命題 2.5 (3)により最小元μ0をもつ。μ0より小さい順序数がμ0と等濃度ならば、それはγ+1とも等濃度になって最小性に反するので、μ0は§E1.21 定義 1.1の意味の基数である。μ0≤γ+1<κである。
ν=max(μ0,ω)とおく。μ0<κかつω<κであるからν<κであり、ω≤νである。νは基数である。実際ω≤μ0ならばν=μ0であり、μ0<ωならばν=ωであって、ωより小さい順序数は自然数であるからωと等濃度でない。よってνはκ未満の無限基数であり、帰納の仮定により全単射q:ν×ν→νが存在する。
γ+1はμ0と等濃度でありμ0⊆νであるから、単射j:γ+1→νが存在する。したがって(ξ,η)↦q(j(ξ),j(η))は(γ+1)×(γ+1)からνへの単射である。fの逆写像をκへ制限したものはκからSへの全単射であり、これに上の単射のSへの制限を合成すると、単射κ→νを得る。一方ν<κからν⊆κであり、包含は単射ν→κである。「Dedekind–MacNeille 完備化」の§E1.11 定理 4.2によりκとνは等濃度となるが、ν<κであるから、これは§E1.21 定義 1.1によりκが基数であることに反する。よってθ≤κである。
θ≤κからθ⊆κであるから、fは単射κ×κ→κである。逆にα↦(α,0)は単射κ→κ×κである。§E1.11 定理 4.2により全単射p:κ×κ→κが存在する。
命題 1.3 (1)により∣κ∣=κであるから、定義 1.1とpによりκ⋅κ=∣κ×κ∣=κである。ω≤κから2≤κであり、命題 1.4 (4)と命題 1.4 (2)により
κ+κ=2κ≤κ⋅κ=κである。また命題 1.4 (3)によりκ≤κ+κであるから、§E1.18 定義 1.1の比較と§E1.11 定理 4.2によりκ+κ=κである。▨
系 3.3.κ,λを基数とし、0<κ≤λであってλは無限であるとする。このとき
κ+λ=κλ=λが成り立つ。さらに全単射κ⊔λ→λと全単射κ×λ→λが存在する。
証明.κ≤λと命題 1.4 (2)によりκ+λ≤λ+λかつκλ≤λλである。定理 3.2によりλ+λ=λかつλλ=λであるから、κ+λ≤λかつκλ≤λである。
κ>0であるから、κとλの役割を入れ替えて命題 1.4 (3)を用いるとλ≤λκかつλ≤λ+κである。命題 1.4 (1)によりλκ=κλかつλ+κ=κ+λであるから、λ≤κλかつλ≤κ+λである。
命題 1.3 (1)により∣κ∣=κ、∣λ∣=λであるから、命題 1.3 (2)によりκ+λ=∣κ⊔λ∣、κλ=∣κ×λ∣である。以上の二つの向きの不等式は、§E1.18 定義 1.1により単射κ⊔λ→λと単射λ→κ⊔λ、および単射κ×λ→λと単射λ→κ×λの存在を意味する。§E1.11 定理 4.2により全単射κ⊔λ→λと全単射κ×λ→λが存在し、κ+λ=κλ=λである。▨
例 3.4.λを無限基数とする。系 3.3をκ=2に適用すると2+λ=2λ=λである。命題 1.4 (4)とあわせるとλ+λ=2λ=λであり、これは定理 3.2の和の等式の別の形である。κ=1に適用すると1+λ=λである。
ℵ0とℵ1は基数であるから、ℵ0+ℵ0=ℵ0⋅ℵ0=ℵ0、ℵ0+ℵ1=ℵ0⋅ℵ1=ℵ1である。「基数とアレフ」の§E1.21 定義 4.1によりℵ0=ωであるから、前者は§E1.18 補題 3.8が与える全単射ω×ω→ωの言い換えである。
補題 3.7. 選択公理を仮定する。μを無限基数、Iを∣I∣≤μを満たす集合とし、(Ai)i∈Iを、各i∈Iについて∣Ai∣≤μを満たす集合の族とする。このとき
i∈I⋃Ai≤μが成り立つ。
証明.μは基数であるから§E1.21 定理 2.2 (3)により∣μ∣=μである。各i∈Iについて∣Ai∣≤μ=∣μ∣であるから、単射ui:Ai→μが存在する。選択公理により、この単射をすべてのi∈Iについて同時に選ぶ。さらに各x∈⋃i∈IAiに対してx∈Ai(x)を満たすi(x)∈Iを一つ選び、v(x)=(i(x),ui(x)(x))と定める。v(x)=v(y)ならばi(x)=i(y)であり、ui(x)の単射性からx=yである。よってvは⋃i∈IAiからI×μへの単射である。したがって命題 1.4 (2)と定理 3.2により
i∈I⋃Ai≤∣I∣⋅μ≤μ⋅μ=μを得る。▨
4 冪に対する下からの評価
系 4.1.κを集合の濃度とする。このとき
κ<2κが成り立つ。すなわちκ≤2κであり、かつ2κ≰κである。とくにκが基数である場合にもこれが成り立つ。
証明.∣X∣=κを満たす集合Xを取る。「Cantor の定理」の§E1.19 定理 1.1により∣X∣<∣P(X)∣である。命題 1.5により∣P(X)∣=2∣X∣=2κであるからκ<2κである。§E1.18 定義 1.1の狭義比較はκ≤2κかつ2κ≰κを意味する。
κが基数である場合は、命題 1.3 (1)によりX=κと取ることができる。▨
5 連続体濃度
定義 5.1. 濃度2ℵ0を連続体濃度 (cardinality of the continuum) といい、cと書く。すなわちc=2ℵ0である。ここでℵ0は「基数とアレフ」の§E1.21 定義 4.1が与えるアレフであり、ℵ0=ωである。
命題 5.2. 選択公理を仮定する。このとき次が成り立つ。
- cは基数である。
- ℵ0<cであり、cは非可算な無限基数である。
証明.(1)命題 1.3 (2)により2ℵ0は写像集合2ωの濃度である。「基数とアレフ」の§E1.21 定理 2.2により、集合2ωと等濃な基数がただ一つ存在するので、cは基数である。
(2)系 4.1によりℵ0<cであるから、cは非可算な無限基数である。▨
定理 5.3. 実数全体の集合Rについて
∣R∣=c=2ℵ0が成り立つ。
証明.x∈Rに対して
C(x)={q∈Q∣ι(q)<x}とおく。ここでι:Q→Rは「実数体の構成」の§E1.14 定理 3.1が与える順序を保つ体の埋め込みである。x<yとすると、§E1.14 定理 3.6によりx<ι(q)<yを満たす有理数qが存在する。ιは順序を保つ単射であるから、このqはC(y)に属してC(x)に属さない。よってx=yならば§E1.14 定理 3.5 (3)によりx<yかy<xのいずれかが成り立ち、いずれの場合もC(x)=C(y)である。すなわちC:R→P(Q)は単射である。
「等濃度と可算性」の§E1.18 定理 4.1によりQは可算であるから、§E1.18 定義 1.2により全単射N≥0→Qが存在し、∣Q∣=∣N≥0∣=ℵ0である。命題 1.5により∣P(Q)∣=2ℵ0であるから、§E1.18 定義 1.1により∣R∣≤2ℵ0である。
逆向きには、「Cantor の定理」の§E1.19 定理 2.9 (2)が、部分集合S⊆Z≥0にその指示関数の三進値を対応させる単射P(Z≥0)→Rを与える。Z≥0=N≥0であるから命題 1.5により∣P(Z≥0)∣=2ℵ0であり、2ℵ0≤∣R∣である。
§E1.11 定理 4.2により∣R∣=2ℵ0であり、定義 5.1により∣R∣=cである。▨
例 5.4.定義 5.1と命題 1.6、定理 3.2を組み合わせると、cについての等式が計算だけで得られる。
c⋅c=2ℵ0⋅2ℵ0=2ℵ0+ℵ0=2ℵ0=cである。ここで第二の等式は命題 1.6 (2)、第三の等式は定理 3.2のℵ0+ℵ0=ℵ0による。同様に
cℵ0=(2ℵ0)ℵ0=2ℵ0⋅ℵ0=2ℵ0=cである。一方系 4.1によりc<2cであり、命題 1.5により2c=∣P(R)∣であるから、実数の部分集合全体の濃度はcより真に大きい。
6 演習
問題 6.1 (Gödel 順序によるω×ωの順序型).定義 2.1の Gödel 順序をω×ωに入れたとき、その順序型がωであることを示せ。すなわち、定理 3.2の証明で得た順序同型が、κ=ωの場合にはθ=ωを与えることを確かめよ。
解答.
≺をω×ωの Gödel 順序とし、§E1.16 定理 3.1が与える順序数をθ、順序同型をf:(ω×ω,≺)→(θ,∈)とする。
各(α,β)∈ω×ωについて、S={(ξ,η)∈ω×ω∣(ξ,η)≺(α,β)}とおき、γ=max(α,β)とおく。γ<ωであり、補題 2.2 (2)によりS⊆(γ+1)×(γ+1)である。fは順序同型であるから、fのSへの制限はSから順序数f(α,β)への全単射である。§E1.14 命題 1.2によりγ+1は自然数であるから(γ+1)×(γ+1)は有限集合であり、§E1.18 補題 2.4 (1)によりSも有限集合である。ω≤f(α,β)と仮定すると、ω⊆f(α,β)であるから、この全単射の逆写像をωへ制限して単射ω→Sを得る。§E1.18 定義 1.2 (1)により全単射n→Sを満たすn<ωが存在するから、その逆写像と合成して単射ω→nを得るが、§E1.21 命題 1.3によりωは基数であるから、これは§E1.21 命題 1.2 (3)に反する。よってf(α,β)<ωである。fは全射であるからθのどの元もf(α,β)の形であり、θ⊆ω、すなわちθ≤ωである。
逆にθ<ωとすると、ω×ωはθと等濃度な有限集合になる。しかしn↦(n,0)はωからω×ωへの単射であり、ωは有限でないので矛盾する。よってθ=ωである。
なお、≺によるω×ωの並びは(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)、(0,2)、(1,2)、(2,0)、(2,1)、(2,2)、(0,3)、… であり、maxの値が0,1,2,3,…と増える各段が有限個の元からなる。▨
問題 6.2 (有限列全体の濃度).κを無限基数とする。補題 6.3を、選択公理を用いずに示せ。
解答.
定理 3.2が与える全単射p:κ×κ→κを一つ固定する。自然数nについての再帰によって写像en:κn→κの族を次のように定める。e0はκ0の唯一の元である空列を0へ写す写像とし、長さn+1の列を長さnの列sと最後の項αの対と読んで
en+1(s,α)=p(en(s),α)と定める。pは一つの写像として固定されているので、この族は§E1.17 定理 2.1の自然数に対する場合として一意に定まり、各nについて全単射を選ぶ操作は現れない。
n≥1のときenは単射である。実際e1((α))=p(0,α)であるから、pの単射性によりe1は単射である。enが単射でen+1(s,α)=en+1(s′,α′)ならばpの単射性からen(s)=en(s′)かつα=α′となり、帰納の仮定からs=s′である。
写像E:κ<ω→ω×κを、長さnの列sに対してE(s)=(n,en(s))と定める。長さが異なる二つの列の像は第一成分が異なり、長さが等しい相異なる二つの列の像はenの単射性から第二成分が異なる(長さ0の列は一つしかない)。よってEは単射である。ω≤κと系 3.3によりℵ0⋅κ=κであるから、ω×κからκへの全単射が存在し、合成して単射κ<ω→κを得る。
逆にα↦(α)は単射κ→κ<ωである。§E1.11 定理 4.2により∣κ<ω∣=κである。用いた原理は定理 3.2、系 3.3、§E1.17 定理 2.1および§E1.11 定理 4.2である。このうち前二者と§E1.11 定理 4.2が選択公理を用いないことは注意 3.6が述べており、§E1.17 定理 2.1が置換公理スキーマだけを要求することはその主張文が述べている。
有限部分集合s⊆κは、その元を増加順に並べた有限列へ一意に写る。この対応は[κ]<ωからκ<ωへの単射であるから、∣[κ]<ω∣≤κである。逆にα↦{α}はκから[κ]<ωへの単射である。§E1.11 定理 4.2により∣[κ]<ω∣=κである。▨
補題 6.3.κを無限基数とする。κの元からなる有限列の全体κ<ω=⋃n<ωκnと、κの有限部分集合の全体[κ]<ωは、いずれも濃度κをもつ。
証明. 有限列については、解答が、一つ固定した全単射κ×κ→κを自然数について再帰して符号化することにより、選択公理を用いずに∣κ<ω∣=κを示している。有限部分集合についても同じ解答が、各集合を一意な増加列へ写し、一点集合による下界と Schröder–Bernstein の定理で結論を得る。▨
問題 6.4 (冪の単調性と連続体濃度). 集合の濃度κ≤λと濃度μについてμκ≤μλが成り立つとは限らないことを、μ=0の場合の反例によって示せ。またμ≥1ならばμκ≤μλが成り立つことを示し、これを用いてℵ0≤cから2ℵ0≤2cを導け。
解答.
μ=0、κ=0、λ=1とする。命題 1.4 (3)により00=1であり、01=∣∅{0}∣は{0}から∅への写像全体の濃度であるから0である。κ≤λであるが1≤0は成り立たないので、μ≥1という条件を外すことはできない。
μ≥1とする。∣M∣=μ、∣K∣=κ、∣L∣=λとなる集合を取り、§E1.18 定義 1.1により単射j:K→Lを取る。μ≥1からMの元m0を一つ取る。h∈MKに対してΘ(h)∈MLを、y=j(x)の形のときΘ(h)(y)=h(x)、そうでないときΘ(h)(y)=m0と定める。jは単射であるからxはyから一意に定まり、Θは定まる。Θ(h)=Θ(h′)ならば、各x∈Kについてh(x)=Θ(h)(j(x))=Θ(h′)(j(x))=h′(x)であるからh=h′である。よってΘは単射であり、μκ≤μλである。
定義 5.1と系 4.1によりℵ0<cであるからℵ0≤cであり、μ=2≥1として2ℵ0≤2cを得る。定義 5.1により左辺はcであるからc≤2cである。この不等式は系 4.1が与える狭義の不等式より弱い。▨