1 整列集合と始切片
「順序集合」は、集合の上の狭義全順序と整列順序を定めている。整列順序は§E1.8 命題 5.7により全順序であり、§E1.8 定義 1.6が与える付随する狭義順序は狭義全順序である。本記事は、この狭義順序の側を用いて、整列順序を備えた集合と、その部分のうち順序について前半をなすものに名前を与えるところから始める。
定義 1.1. 集合W上の狭義全順序<について、Wの空でないどの部分集合Sも<に関する最小元をもつとき、<はWを整列するといい、対(W,<)を整列集合 (well-ordered set) という。ここでtがSの<に関する最小元であるとは、t∈Sであって、tと異なるどのs∈Sについてもt<sが成り立つことをいう。
(W,<)を整列集合とする。Wの部分集合Iが、x∈Iとy<xからつねにy∈Iを導くとき、Iを(W,<)の始切片 (initial segment) という。W自身と異なる始切片を真の始切片という。a∈Wに対して
W<a={x∈W∣x<a}と書く。
集合Wについて、W上の整列順序(§E1.8 定義 5.6)に付随する狭義順序(§E1.8 定義 1.6)はWを整列し、逆にWを整列する狭義全順序<について「x<yまたはx=y」で定まる関係はW上の整列順序である。整列集合は、「順序集合」の整列順序を狭義の形で述べたものにほかならない。
x∈W<aとy<xからy<aが従うのでW<aは始切片である。狭義全順序は非反射的であるからa∈/W<aであり、W<aは真の始切片である。
例 1.2. 自然数全体N≥0は通常の大小について整列集合であり、a∈N≥0が定める始切片N<aはaより小さい自然数の全体である。N≥0に属さない元pを一つ取り、W=N≥0∪{p}に、N≥0の上では通常の大小を用い、どのn∈N≥0についてもn<pと定めた関係を入れる。Wの空でない部分集合Sについて、S∩N≥0が空でなければその最小元がSの最小元であり、空ならばS={p}で最小元はpである。よってWは整列集合であり、pが定める始切片はN≥0である。このWは、自然数をすべて並べ終えた後にもう一段を置いた並べ方を表す。
証明.W∖IはWの空でない部分集合であるから、最小元aをもつ。x<aとすると、aの最小性によりx∈/W∖Iであるからx∈Iである。逆にx∈Iとする。x=aならばa∈Iとなってa∈W∖Iに反する。a<xならば、Iが始切片であることからa∈Iとなり、同じく矛盾する。よってx<aである。以上よりI=W<aである。
W<a=W<bかつa=bとすると、a<bまたはb<aである。a<bの場合、a∈W<b=W<aからa<aとなって非反射性に反する。b<aの場合も同様である。よってaはただ一つである。▨
補題 1.4.(W,<)と(W′,<′)を整列集合とする。次が成り立つ。
- 写像f:W→Wがx<yからつねにf(x)<f(y)を導くならば、すべてのx∈Wについてx≤f(x)である。
- Wは自身のどの真の始切片とも順序同型でない。
- WからW′への順序同型は、存在すればただ一つである。
証明. 写像f:W→Wがx<yからつねにf(x)<f(y)を導くとし、S={x∈W∣f(x)<x}とおく。S=∅と仮定すると、Sは最小元x0をもつ。f(x0)<x0であるから、fの仮定によりf(f(x0))<f(x0)であり、f(x0)∈Sである。しかしf(x0)<x0はx0がSの最小元であることに反する。よってS=∅であり、<が全順序であることから、すべてのxについてx≤f(x)である。これで(1)が示された。
IをWの真の始切片、g:W→Iを順序同型とする。補題 1.3によりI=W<aを満たすa∈Wがある。gをWからWへの写像とみなすとx<yからg(x)<g(y)が従うので、(1)によりa≤g(a)である。一方g(a)∈W<aであるからg(a)<aであり、矛盾する。これで(2)が示された。
f,g:W→W′を順序同型とする。h=g−1∘fはWからWへの順序同型であり、hとh−1はいずれも順序を保つ。(1)により、すべてのx∈Wについてx≤h(x)かつx≤h−1(x)である。後者のxをh(x)で置き換えるとh(x)≤h−1(h(x))=xとなるので、h(x)=xである。よってhは恒等写像であり、f=gである。▨
例 1.5.補題 1.4の三つの主張は、整列性を落とすといずれも成り立たない。整数全体Zは通常の大小について狭義全順序集合であるが、Z自身が最小元をもたないので整列集合ではない。W={n∈Z∣n≤0}とすると、Wも最小元をもたない狭義全順序集合である。写像f:W→Wをf(n)=n−1で定めると、fはm<nからf(m)<f(n)を導くが、すべてのnについてf(n)<nであり、補題 1.4 (1)の結論は成り立たない。さらにfはWから真の始切片W<0={n∈Z∣n≤−1}への全単射であり、fとその逆写像n↦n+1はともに順序を保つので、Wは自身の真の始切片と順序同型である。またZについては、恒等写像とn↦n+1がともにZからZへの順序同型であり、相異なる順序同型が二つ存在する。
補題 1.6.(W,<)と(W′,<′)を整列集合、g:W→W′を順序同型とする。各a∈Wについて、gによるW<aの像は{y∈W′∣y<′g(a)}であり、gのW<aへの制限はこの集合への順序同型である。
証明.x<aとするとg(x)<′g(a)であるから、W<aの像は{y∈W′∣y<′g(a)}に含まれる。逆にy<′g(a)とする。gは全射であるからy=g(x)を満たすx∈Wがある。a≤xとするとg(a)≤′g(x)=yとなってy<′g(a)に反するので、x<aである。よって像はこの集合に一致する。制限は単射であって順序を保ち、その逆写像もg−1の制限として順序を保つ。▨
2 順序数
定義 2.1. 集合xが推移的集合 (transitive set) であるとは、xのどの元yについてもy⊆xが成り立つことをいう。
推移的集合αが次の四条件を満たすとき、すなわちαの二元β、γをβ∈γによって比べる関係がαを整列するとき、αを順序数 (ordinal) という。
- αのどの元βについてもβ∈βは成り立たない。
- αの元β、γ、δについて、β∈γとγ∈δからβ∈δが従う。
- αの相異なる二元β、γについて、β∈γとγ∈βのちょうど一方が成り立つ。
- αの空でないどの部分集合Sも∈に関する最小元をもつ。ここでtがSの∈に関する最小元であるとは、t∈Sであって、tと異なるどのs∈Sについてもt∈sが成り立つことをいう。
順序数α、βについて、α<βをα∈βの意味で用い、α≤βを「α<βまたはα=β」の意味で用いる。
空集合を0と書き、以下
0=∅,1={0},2={0,1},3={0,1,2}と、それより小さいものをすべて集めた集合として自然数を表す。この表し方による自然数を von Neumann 自然数という。
例 2.2.0=∅は元をもたないので推移的であり、空でない部分集合をもたないので、∈による比較は0を整列する。よって0は順序数である。1={0}の元は0だけであり0=∅⊆1であるから1は推移的である。1は相異なる二元をもたず、空でない部分集合は{0}だけでその最小元は0であるから、1は順序数である。2={0,1}については0⊆2と1={0}⊆2から推移性が従い、0∈1により0<1であって、空でない部分集合{0}、{1}、{0,1}の最小元はそれぞれ0、1、0である。よって2は順序数である。3={0,1,2}についても、0⊆3、1⊆3、2⊆3から推移性が従い、0<1<2と各部分集合の最小元を同じように確かめることができる。
命題 2.3.αを順序数とする。次が成り立つ。
- αのどの元も順序数である。
- α∈/αである。
- β∈αのときβ={γ∈α∣γ<β}である。すなわちαの元はαの真の始切片にほかならず、αはαより小さい順序数の全体からなる集合である。
証明.β∈αとする。αは推移的であるからβ⊆αであり、αを整列する関係を部分集合へ制限したものはその部分集合を整列する。実際、定義 2.1 条件 (a)、定義 2.1 条件 (b)および定義 2.1 条件 (c)は部分集合の元についても成り立ち、部分集合の空でない部分集合はαの空でない部分集合であるから定義 2.1 条件 (d)により最小元をもつ。βが推移的であることを示す。γ∈βかつδ∈γとすると、β⊆αによりγ∈αであり、αの推移性によりγ⊆αであるからδ∈αである。δ、γ、βはいずれもαの元でありδ∈γかつγ∈βであるから、定義 2.1 条件 (b)によりδ∈βである。よってγ⊆βであり、βは推移的集合である。ゆえにβは順序数であり、(1)が示された。
α∈αと仮定する。するとαはαの元であり、定義 2.1 条件 (a)によりα∈αは成り立たない。これは仮定に反する。よって(2)が成り立つ。
β∈αとする。αの推移性によりβ⊆αであるから
{γ∈α∣γ<β}={γ∈α∣γ∈β}=β∩α=βである。(1)によりαの元はすべて順序数であり、γ∈αとγ<αは同じ意味であるから、αはαより小さい順序数の全体からなる集合である。▨
補題 2.4. 順序数α、βがα⊆βかつα=βを満たすならば、α∈βである。
証明.β∖αはβの空でない部分集合であるから、定義 2.1 条件 (d)により∈に関する最小元γをもつ。γ⊆αを示す。δ∈γとすると、γ∈βとβの推移性によりδ∈βであり、γの最小性によりδ∈/β∖αであるからδ∈αである。次にα⊆γを示す。δ∈αとするとδ∈βであり、δとγはともにβの元であるから、定義 2.1 条件 (c)によりδ∈γ、δ=γ、γ∈δのいずれかが成り立つ。δ=γならばγ∈αとなってγ∈β∖αに反する。γ∈δならばδ∈αとαの推移性によりγ∈αとなり、同じく矛盾する。よってδ∈γである。以上よりα=γ∈βである。▨
命題 2.5. 次が成り立つ。
- 順序数α、βについて、α⊆βとα≤βは同値である。
- 順序数α、βについて、α<β、α=β、β<αのちょうど一つが成り立つ。
- 順序数からなる集合は、∈による比較について整列される。
証明.α≤βとする。α=βならばα⊆βであり、α∈βならばβの推移性によりα⊆βである。逆にα⊆βとすると、α=βであるか、補題 2.4によりα∈βであるから、α≤βである。これで(1)が示された。
γ=α∩βとおく。δ∈γとするとδ∈αかつδ∈βであり、αとβの推移性によりδ⊆αかつδ⊆βであるからδ⊆γである。よってγは推移的集合であり、αの部分集合として∈で整列されるから順序数である。γ=αかつγ=βと仮定すると、γ⊆αとγ⊆βに補題 2.4を適用してγ∈αかつγ∈βを得るので、γ∈α∩β=γとなり命題 2.3 (2)に反する。よってγ=αまたはγ=βであり、α⊆βまたはβ⊆αが成り立つから、(1)によりα≤βまたはβ≤αである。二つ以上が同時に成り立たないことを見る。α<βかつα=βならばα∈αとなって命題 2.3 (2)に反する。α<βかつβ<αならば、α∈βとβの推移性からα⊆βが、β∈αとαの推移性からβ⊆αが従うのでα=βであり、ふたたびα∈αとなって矛盾する。これで(2)が示された。
Aを順序数からなる集合とする。命題 2.3 (2)により∈はA上で非反射的であり、順序数の推移性によりβ∈γとγ∈δからβ∈δが従い、(2)により相異なる二元は比較可能である。SをAの空でない部分集合とし、α∈Sを取る。α∩S=∅ならば、β∈Sについてβ∈αは成り立たないので(2)によりα≤βであり、αがSの最小元である。α∩S=∅ならば、α∩Sは順序数αの空でない部分集合であるから、定義 2.1 条件 (d)により最小元γをもつ。β∈Sについてβ∈γと仮定すると、γ∈αとαの推移性によりβ∈αであるからβ∈α∩Sとなり、γの最小性に反する。よってγ≤βであり、γがSの最小元である。これで(3)が示された。▨
証明. そのような集合Ωが存在すると仮定する。命題 2.3 (1)によりΩの元の元はふたたび順序数であるからΩは推移的集合であり、命題 2.5 (3)により∈はΩを整列する。よってΩは順序数であり、Ω∈Ωとなって命題 2.3 (2)に反する。▨
3 順序型
定理 3.1. どの整列集合(W,<)に対しても、Wと順序同型な順序数がただ一つ存在する。
証明. 一意性を示す。αとβをWと順序同型な順序数とし、α=βと仮定する。命題 2.5 (2)により、α<βまたはβ<αであり、番号を付け替えてα<βとしてよい。命題 2.3 (3)によりαはβの真の始切片であり、βはWと、Wはαと順序同型であるから、βは自身の真の始切片αと順序同型である。これは補題 1.4 (2)に反する。よってα=βである。
存在を示す。Wの部分集合
D={a∈W∣W<a と順序同型な順序数が存在する}を§E1.13 定義 2.1により取る。a∈Dについて、W<aと順序同型な順序数は一意性の部分によりただ一つであるから、これをαaと書く。
a∈Dとし、g:W<a→αaを順序同型とする。c<aとすると、W<aにおいてcが定める始切片はW<cであるから、補題 1.6によりgの制限はW<cから(αa)<g(c)への順序同型であり、命題 2.3 (3)により(αa)<g(c)=g(c)である。g(c)は命題 2.3 (1)により順序数であるからc∈Dであり、αc=g(c)である。とくにDはWの始切片であり、c<aのときαc∈αaである。
対応a↦αaはDの各元に対して順序数をちょうど一つ定めるから、§E1.13 定義 5.1によりその像
A={αa∣a∈D}は集合である。Aが推移的であることを見る。γ∈αaとすると、g:W<a→αaを順序同型としてγ=g(c)を満たすc∈W<aがあり、前段によりγ=αcかつc∈Dであるからγ∈Aである。Aは順序数からなる集合であるから命題 2.5 (3)により∈で整列され、よってAは順序数である。
写像f:D→Aをf(a)=αaで定める。fは定義により全射である。c<aならば前段によりf(c)<f(a)であり、c=aならばc<aかa<cであるからf(c)=f(a)であって、fは単射である。またf(c)<f(a)のとき、c<aでないとすればa≤cでありf(a)≤f(c)となって命題 2.5 (2)に反するからc<aである。よってfは順序同型である。
D=Wと仮定する。DはWの真の始切片であるから、補題 1.3によりD=W<bを満たすb∈Wがある。するとW<bは順序数Aと順序同型であるからb∈D=W<bとなり、b<bとなって矛盾する。よってD=Wであり、Wは順序数Aと順序同型である。▨
定義 3.2.定理 3.1により、整列集合(W,<)と順序同型な順序数はただ一つである。これを(W,<)の順序型 (order type) といい、ot(W,<)と書く。順序<が文脈から定まるときはot(W)とも書く。
系 3.3.(W,<)を整列集合、g:W→ot(W)を順序同型とする。各a∈Wについてg(a)=ot(W<a)であり、
ot(W)={ot(W<a)∣a∈W}が成り立つ。
証明.α=ot(W)とおく。補題 1.6によりgの制限はW<aからα<g(a)への順序同型であり、命題 2.3 (3)によりα<g(a)=g(a)である。g(a)は命題 2.3 (1)により順序数であるから、定理 3.1の一意性によりg(a)=ot(W<a)である。gはWからαへの全単射であるから、αの元の全体はg(a)の全体、すなわちot(W<a)の全体である。▨
例 3.5. 整列集合であるという仮定を狭義全順序集合に弱めると、定理 3.1は成り立たない。Zは通常の大小について狭義全順序集合である。順序数はいずれも整列集合であり、順序同型は空でない部分集合の最小元を最小元へ移すので、順序数と順序同型な狭義全順序集合は整列集合である。Zは最小元をもたないので整列集合ではなく、したがってどの順序数とも順序同型でない。有理数全体Qについても同様である。
例 3.6.x={1}={{∅}}とする。xの元は1だけであるから、∈による比較はxを整列し、xは順序数1と順序同型な整列集合である。しかし0∈1かつ0∈/xであるから1⊆xは成り立たず、xは推移的集合ではないので順序数ではない。順序数の定義から推移性を落とすと、xと1のように順序同型で相異なる集合がともに順序数となり、定理 3.1の一意性が失われる。推移性は、順序型を集合として一つに選び出すための条件である。
4 後続順序数と極限順序数
定義 4.1. 順序数αに対して
α+1=α∪{α}と定め、これをαの後続 (successor) という。順序数βが、ある順序数αについてβ=α+1と表されるとき、βを後続順序数 (successor ordinal) という。0でも後続順序数でもない順序数を極限順序数 (limit ordinal) という。
命題 4.2.αを順序数とする。次が成り立つ。
- α+1は順序数である。
- α<α+1であり、順序数βがα<βを満たすならばα+1≤βである。すなわちα+1はαより真に大きい順序数のうち最小である。
- 順序数βについて、β<α+1とβ≤αは同値である。したがってα<β<α+1を満たす順序数βは存在しない。
- αは、0、後続順序数、極限順序数のうちちょうど一つに属する。
証明.x∈α+1とするとx∈αまたはx=αである。前者ではαの推移性によりx⊆α⊆α+1であり、後者ではx=α⊆α+1である。よってα+1は推移的集合である。α+1の元はαの元とα自身であり、命題 2.3 (1)によりいずれも順序数であるから、命題 2.5 (3)により∈はα+1を整列する。ゆえにα+1は順序数であり、(1)が示された。
α∈α∪{α}であるからα<α+1である。順序数βがα<βを満たすとすると、α∈βでありβの推移性によりα⊆βであるからα∪{α}⊆βである。命題 2.5 (1)によりα+1≤βである。これで(2)が示された。
β≤αとする。命題 2.5 (1)によりβ⊆α⊆α+1である。β=α+1とするとα∈α+1=β⊆αとなって命題 2.3 (2)に反するのでβ=α+1であり、ふたたび命題 2.5 (1)によりβ<α+1である。逆にβ<α+1とするとβ∈α∪{α}であるからβ∈αまたはβ=αであり、β≤αである。α<β<α+1を満たすβがあるとすると、いま示したことによりβ≤αとなり命題 2.5 (2)に反する。これで(3)が示された。
αが0でも後続順序数でもなければ、極限順序数の定義によりαは極限順序数である。よって三つの場合の少なくとも一つが成り立つ。極限順序数は0でも後続順序数でもないから、αが極限順序数であることは他の二つのいずれとも同時には成り立たない。α=0であって、順序数βについてα=β+1と表されると仮定すると、β∈β∪{β}=α=∅となって矛盾する。よってαが0であることと後続順序数であることも同時には成り立たない。これで(4)が示された。▨
系 4.3.λを極限順序数とする。順序数βがβ<λを満たすならば、β+1<λである。
証明.β<λとすると命題 4.2 (2)によりβ+1≤λである。λは極限順序数であるから後続順序数ではなく、λ=β+1である。よってβ+1<λである。▨
補題 4.4.Aを順序数からなる集合とする。和集合⋃Aについて次が成り立つ。
- 各α∈Aについてα≤⋃Aである。
- 順序数δが各α∈Aについてα≤δを満たすならば、⋃A≤δである。
- 順序数ηがη<⋃Aを満たすならば、η<αを満たすα∈Aが存在する。
- ⋃Aは順序数である。
証明.⋃Aは§E1.13 定義 3.1により集合である。x∈⋃Aとするとx∈αを満たすα∈Aがあり、xは命題 2.3 (1)により順序数であって、αの推移性によりx⊆α⊆⋃Aである。よって⋃Aは順序数からなる推移的集合であり、命題 2.5 (3)により∈で整列されるから順序数である。これで(4)が示された。
α∈Aについてα⊆⋃Aであるから、命題 2.5 (1)によりα≤⋃Aであり、(1)が成り立つ。
順序数δが各α∈Aについてα≤δを満たすとする。命題 2.5 (1)によりα⊆δであるから⋃A⊆δであり、ふたたび命題 2.5 (1)により⋃A≤δである。これで(2)が示された。
η<⋃Aとするとη∈⋃Aであるから、η∈αを満たすα∈Aが存在し、η<αである。これで(3)が示された。▨
順序数からなる集合Aについて、(1)と(2)により、⋃AはAの上界のうち最小のものである。この最小上界をsupAと書く。したがって
supA=⋃A
である。
命題 4.5. 順序数αについて次が成り立つ。
- α=β+1と表されるならば⋃α=βである。
- αが0または極限順序数ならば⋃α=α、すなわちα=sup{β∣β<α}である。
証明.α=β+1=β∪{β}とすると
⋃α=(⋃β)∪β=βである。最後の等号は、βの推移性により⋃β⊆βであることによる。これで(1)が示された。
αは推移的であるから⋃α⊆αである。α=0のときは両辺が空集合であり、等号が成り立つ。αを極限順序数とし、β∈αとする。系 4.3によりβ+1<αであり、β∈β+1であるからβ∈⋃αである。よってα⊆⋃αであり、⋃α=αである。supの定め方により⋃α=supαであり、命題 2.3 (3)によりαはαより小さい順序数の全体であるから、α=sup{β∣β<α}である。これで(2)が示された。▨
定義 4.6. 順序数nについて、nとnのどの元も0であるか後続順序数であるとき、nを有限順序数 (finite ordinal) という。
補題 4.7. 次が成り立つ。
- 有限順序数の元はふたたび有限順序数である。
- 有限順序数nについて、n+1はふたたび有限順序数である。
- 集合Xが0を元にもち、Xのどの元xについてもx∪{x}を元にもつならば、Xは有限順序数をすべて元にもつ。
証明.nを有限順序数、mをnの元とする。mは命題 2.3 (1)により順序数であり、mの元はnの推移性によりnの元であるから0であるか後続順序数であり、m自身もnの元であるから0であるか後続順序数である。よってmは有限順序数であり、(1)が示された。
nを有限順序数とする。命題 4.2 (1)によりn+1は順序数である。n+1の元はnとnの元であり、どれも0であるか後続順序数である。n+1自身は後続順序数であるから、n+1は有限順序数である。これで(2)が示された。
Xを0を元にもち、どの元xについてもx∪{x}を元にもつ集合とする。有限順序数nでn∈/Xを満たすものがあると仮定し、T={m∈n+1∣m∈/X}とおく。n∈n+1であるからTは順序数n+1(命題 4.2 (1))の空でない部分集合であり、定義 2.1 条件 (d)により最小元mをもつ。m∈n+1であるから命題 4.2 (3)によりm≤nであり、m=nならば仮定により、m<nならば(1)により、いずれにせよmは有限順序数である。m=0=∅ならばm∈Xとなってm∈Tに反するのでm=0であり、有限順序数の定義によりmは後続順序数であってm=k+1と表される。k∈mかつm≤nであるからk∈n+1であり、k<mとmの最小性によりk∈/T、すなわちk∈Xである。Xの仮定によりm=k∪{k}∈Xとなり、m∈Tに反する。よって有限順序数はすべてXに属し、(3)が示された。▨
命題 4.8. 有限順序数の全体は集合である。これをωと書くと、次が成り立つ。
- ωは極限順序数である。
- どの極限順序数λについてもω≤λである。
- 順序数βについて、β<ωと「βは有限順序数である」は同値である。
証明. 「集合の存在原理」の無限公理により、∅を元にもち、xを元にもてばx∪{x}も元にもつ集合Iが存在する。補題 4.7 (3)により有限順序数はすべてIに属する。ゆえに
ω={n∈I∣n は有限順序数である}は§E1.13 定義 2.1により集合であり、有限順序数の全体である。
補題 4.7 (1)によりωの元の元はふたたび有限順序数であるからωは推移的集合であり、順序数からなる集合として命題 2.5 (3)により∈で整列されるので、ωは順序数である。0は有限順序数であるから0∈ωであり、ω=0である。ω=β+1と表されると仮定するとβ∈ωであるからβは有限順序数であり、補題 4.7 (2)によりβ+1も有限順序数である。するとω=β+1∈ωとなり命題 2.3 (2)に反する。よってωは0でも後続順序数でもなく、(1)が成り立つ。
λを極限順序数とする。0⊆λであるから命題 2.5 (1)により0≤λであり、λ=0であるから0<λ、すなわち0∈λである。β∈λとすると、βは命題 2.3 (1)により順序数であり、系 4.3によりβ+1=β∪{β}∈λである。よって補題 4.7 (3)により有限順序数はすべてλに属し、ω⊆λである。命題 2.5 (1)により(2)が成り立つ。
ωは有限順序数の全体であり、β<ωとβ∈ωは同じ意味であるから、(3)が成り立つ。▨
命題 4.9.§E1.14 命題 1.2が与える最小の帰納的集合N≥0は、命題 4.8が有限順序数全体として与えるωに等しい。この同一視のもとで、各n∈ωについて
S(n)=n+1=n∪{n}が成り立つ。
証明.N≥0は0を元にもち、各n∈N≥0についてS(n)=n∪{n}を元にもつ。したがって補題 4.7 (3)により、有限順序数はすべてN≥0に属する。よってω⊆N≥0である。
X={n∈N≥0∣n は有限順序数である}とおく。0∈Xである。n∈Xとすると、補題 4.7 (2)によりn+1=n∪{n}は有限順序数であり、N≥0の帰納性によりS(n)=n∪{n}∈N≥0である。したがってS(n)=n+1∈Xであり、Xは帰納的集合である。§E1.14 命題 1.2の最小性によりN≥0⊆Xであり、X⊆ωであるからN≥0⊆ωである。
二つの包含によりN≥0=ωである。各n∈ωについて、自然数の後続と順序数の後続はともにn∪{n}であるから、S(n)=n+1=n∪{n}が成り立つ。▨
5 順序数の和と積
命題 5.1.α、βを順序数とする。集合
S(α,β)=({0}×α)∪({1}×β)の上の関係≺を、(i,ξ)≺(j,η)を「i<j、またはi=jかつξ<η」によって定め、直積β×α上の辞書式順序<lex(§E1.8 定義 5.3)を、(η,ξ)<lex(η′,ξ′)を「η<η′、またはη=η′かつξ<ξ′」によって定める。次が成り立つ。
- ≺はS(α,β)を整列する。
- <lexはβ×αを整列する。
証明.≺の非反射性と推移性は、0<1と、αおよびβの上の<の非反射性と推移性から従う。相異なる二元(i,ξ)と(j,η)については、i=jならばi<jとj<iのちょうど一方が、i=jならばξ<ηとη<ξのちょうど一方が成り立つ。TをS(α,β)の空でない部分集合とする。T0={ξ∈α∣(0,ξ)∈T}が空でなければ、T0はαの空でない部分集合であるから最小元ξ0をもち、(0,ξ0)がTの最小元である。T0が空ならばT⊆{1}×βであり、T1={η∈β∣(1,η)∈T}の最小元η0について(1,η0)がTの最小元である。これで(1)が示された。
∈はβとαをそれぞれ整列するから、これらに付随する≤はいずれも整列順序である。よって§E1.8 定理 5.10 (1)によりβ×α上の≤lexは整列順序であり、§E1.8 命題 5.4によりそれに付随する狭義順序は<lexである。ゆえに<lexはβ×αを整列し、(2)が示された。▨
定義 5.2. 順序数α、βに対して、命題 5.1の二つの整列集合の順序型として
α+β=ot(S(α,β),≺),α⋅β=ot(β×α,<lex)と定め、それぞれαとβの順序数の和 (sum of ordinals)、順序数の積 (product of ordinals) という。S(α,β)はαの後にβを並べた並べ方であり、β×αの上の辞書式順序はαをβ個並べた並べ方である。
命題 5.3.α、β、γを順序数とする。次が成り立つ。
- α+0=αかつ0+α=αである。
- α+1=α∪{α}である。すなわち和としてのα+1はαの後続に一致する。
- α⋅0=0、0⋅α=0、α⋅1=αかつ1⋅α=αである。
- β<γならばα+β<α+γである。
証明.S(α,0)={0}×αであり、ξ↦(0,ξ)はαからS(α,0)への全単射であって、ξ<ξ′と(0,ξ)≺(0,ξ′)は同値である。αは順序数であるから、定理 3.1の一意性によりα+0=αである。S(0,α)={1}×αについてもξ↦(1,ξ)が同じ性質をもつので0+α=αである。これで(1)が示された。
1={0}であるからS(α,1)=({0}×α)∪{(1,0)}である。写像h:S(α,1)→α∪{α}をh(0,ξ)=ξおよびh(1,0)=αで定めると、hは全単射である。(0,ξ)≺(0,ξ′)とξ<ξ′は同値であり、(0,ξ)≺(1,0)かつξ∈αであるから、hは順序を保ち反映する。α∪{α}は命題 4.2 (1)により順序数であるから、一意性によりα+1=α∪{α}である。これで(2)が示された。
0×α=∅であるからα⋅0=ot(∅)=0であり、α×0=∅であるから0⋅α=ot(∅)=0である。1×α={0}×αであり、(0,ξ)↦ξは順序を保つ全単射であるからα⋅1=αである。α×1=α×{0}であり、(η,0)↦ηは順序を保つ全単射であるから1⋅α=αである。これで(3)が示された。
β<γとし、g:S(α,γ)→α+γを順序同型とする。β∈γであるから(1,β)∈S(α,γ)であり、(1,β)が定める始切片は
{(i,ξ)∈S(α,γ)∣(i,ξ)≺(1,β)}=({0}×α)∪({1}×β)=S(α,β)である。系 3.3によりg(1,β)=ot(S(α,β))=α+βであり、g(1,β)∈α+γであるからα+β<α+γである。これで(4)が示された。▨
例 5.4.1+ω=ωである。実際、S(1,ω)={(0,0)}∪({1}×ω)であり、写像h:S(1,ω)→ωをh(0,0)=0およびh(1,n)=n+1で定める。n<ωならば、命題 4.8 (1)と系 4.3によりn+1<ωであるから、hの値はωに属する。m∈ωかつm=0とすると、mは命題 4.8 (3)により有限順序数であり、0でないから後続順序数であって、m=n+1と表される。このときn∈mとωの推移性によりn<ωであるから、hは全射である。n+1=n′+1ならば命題 4.5 (1)によりn=n′である。またn∈n+1であるからn+1=∅=0であり、h(0,0)=0=n+1=h(1,n)である。よってhは単射である。n<n′ならば命題 4.2 (2)によりn+1≤n′<n′+1であり、逆にn+1<n′+1ならば命題 4.2 (3)によりn+1≤n′であってn<n′であるから、hは{1}×ωの上で順序を保ち反映する。また(0,0)≺(1,n)であり0<n+1である。よってhは順序同型であり、ωが順序数であることと定理 3.1の一意性により1+ω=ωである。
一方命題 5.3 (2)によりω+1=ω∪{ω}であり、ω∈ω+1かつ命題 2.3 (2)によりω∈/ωであるからω+1=ωである。したがって1+ω=ω+1であり、順序数の和は可換ではない。また命題 5.3 (1)により0+ω=ωであるから、0<1であるのに0+ω=1+ωである。すなわち命題 5.3 (4)の狭義単調性は、左の引数については成り立たない。
例 5.5.ω⋅2=ω+ωである。実際、2={0,1}であるから2×ω=({0}×ω)∪({1}×ω)=S(ω,ω)であり、2×ωの上の辞書式順序はS(ω,ω)の上の≺と同じ関係である。よって両者の順序型は等しい。
2⋅ω=ω⋅2である。2⋅ωはω×2の順序型である。ω×2の元(n,i)が(0,0)と異なるとき、i=1ならば(n,0)が、i=0かつn=0ならば、nは命題 4.8 (3)により有限順序数で0でないから後続順序数m+1と表され(m,1)が、それぞれ(n,i)未満の元の全体の最大元である。すなわちω×2では、最小元以外のどの元についても、それ未満の元の全体が最大元をもつ。一方S(ω,ω)の元(1,0)は最小元ではなく、それ未満の元の全体{0}×ωは最大元をもたない。補題 1.6により順序同型は始切片を始切片へ全単射で移すので、始切片が最大元をもつかどうかは順序同型で保たれる。よってω×2とS(ω,ω)は順序同型ではなく、定理 3.1の一意性により2⋅ω=ω⋅2である。したがって順序数の積も可換ではない。
6 置換公理スキーマとω+ω
命題 6.1.A={ω+n∣n<ω}は集合であり、
ω+ω=supA=⋃Aが成り立つ。
証明. 対応n↦ω+nはωの各元に対して順序数をちょうど一つ定めるから、§E1.13 定義 5.1によりAは集合である。
g:S(ω,ω)→ω+ωを順序同型とする。n<ωについて、(1,n)が定める始切片はS(ω,n)であるから、系 3.3によりg(1,n)=ω+nである。またk<ωについて、(0,k)が定める始切片は{0}×kであり、ξ↦(0,ξ)はこれとkとの順序同型であるからg(0,k)=kである。gは全射であるから
ω+ω={k∣k<ω}∪Aである。
各n<ωについて命題 5.3 (4)によりω+n<ω+ωであるから、ω+ωはAの上界であり、補題 4.4 (2)によりsupA≤ω+ωである。supA<ω+ωと仮定すると、前段によりsupAはω未満の順序数kであるか、あるn<ωについてω+nである。前者では、命題 5.3 (1)によりω+0=ωでありk<ωであるからsupA<ω+0となって、ω+0∈Aと補題 4.4 (1)に反する。後者では、命題 4.8 (1)と系 4.3によりn+1<ωであり、命題 5.3 (4)によりω+n<ω+(n+1)であるから、ω+(n+1)∈Aと補題 4.4 (1)にふたたび反する。よってsupA=ω+ωであり、supの定め方によりsupA=⋃Aである。▨
注意 6.2.命題 6.1の証明が置換公理スキーマを用いるのは、各n<ωに対して定まる順序数ω+nを一つの集合Aに集める箇所である。個々のnについては、ωから後続を取る操作をn段たどってω+nを得ることができ、置換公理スキーマを必要としない。しかし、それらを集めたAが集合であることは、対の公理、和集合の公理、冪集合の公理および分出公理スキーマからは一般には従わない。
このことを、置換公理スキーマを除くとω+ωが存在しない、と述べてはならない。正確には次のとおりである。置換公理スキーマを欠く体系には、内部に各ω+nが存在してもω+ωを順序数としてもたないモデルがある。すなわち、各n<ωに対するω+nの存在だけを根拠としてω+ωの存在を一般に証明することはできない。これは体系についての主張ではなくモデルについての相対化した主張であり、そのようなモデルの構成は「公理的集合論」が扱う。
7 演習
問題 7.1.Aを順序数からなる空でない集合とする。⋂AがAの最小元であることを証明せよ。
解答.
α0∈Aを一つ取ると⋂A⊆α0であるから、⋂Aは§E1.13 定義 2.1により集合である。x∈⋂Aとすると、各α∈Aについてx∈αであり、命題 2.3 (1)によりxは順序数であって、αの推移性によりx⊆αである。よってx⊆⋂Aであり、⋂Aは推移的集合である。⋂Aは順序数α0の部分集合であるから命題 2.5 (3)により∈で整列され、順序数である。
各α∈Aについて⋂A⊆αであるから、命題 2.5 (1)により⋂A≤αである。⋂A∈/Aと仮定すると、各α∈Aについて⋂A=αであるから⋂A<α、すなわち⋂A∈αである。よって⋂A∈⋂Aとなり、命題 2.3 (2)に反する。ゆえに⋂A∈Aであり、⋂AはAの最小元である。▨
問題 7.2. 順序数α、β、γについて(α+β)+γ=α+(β+γ)が成り立つことを証明せよ。
解答.
集合
T=({0}×α)∪({1}×β)∪({2}×γ)の上の関係≺Tを、(i,ξ)≺T(j,η)を「i<j、またはi=jかつξ<η」によって定める。≺TがTを整列することと、ot(T)が両辺に等しいこととを示す。
f:S(α,β)→α+βを順序同型とし、Φ:T→S(α+β,γ)を
Φ(0,ξ)=(0,f(0,ξ)),Φ(1,η)=(0,f(1,η)),Φ(2,ζ)=(1,ζ)で定める。fは全単射であるからΦも全単射である。i≤1かつj≤1のとき、(i,ξ)≺T(j,η)とS(α,β)における(i,ξ)≺(j,η)は同じ条件であり、fは順序同型であるから、Φはこれらの元の間で順序を保ち反映する。i≤1かつj=2のときは(i,ξ)≺T(2,ζ)とΦ(i,ξ)≺Φ(2,ζ)がともに成り立ち、i=j=2のときは第二成分の大小が両辺で一致する。よってΦは全単射であって≺Tと≺を互いに移す。命題 5.1 (1)により≺はS(α+β,γ)を整列するから、≺Tの非反射性、推移性および比較可能性はΦを通じて≺のそれらから従い、Tの空でない部分集合Uについては、Φによる像の最小元のΦによる逆像がUの最小元である。ゆえに≺TはTを整列し、Φは順序同型であるからot(T)=(α+β)+γである。
同様にg:S(β,γ)→β+γを順序同型とし、Ψ:T→S(α,β+γ)を
Ψ(0,ξ)=(0,ξ),Ψ(1,η)=(1,g(0,η)),Ψ(2,ζ)=(1,g(1,ζ))で定めると、同じ確認によりΨは順序同型であり、ot(T)=α+(β+γ)である。よって(α+β)+γ=α+(β+γ)である。▨
問題 7.3.2⋅ω=ωが成り立つことを証明せよ。
解答.
はじめに、整列集合(V,<)とVに属さない元pについて、V∪{p}にVの順序を延長してpを最大元とする順序を入れると、その順序型がot(V)+1であることを見る。e:V→ot(V)を順序同型とし、e(p)=ot(V)と延長すると、これはV∪{p}からot(V)∪{ot(V)}への順序を保つ全単射であり、命題 5.3 (2)により後者はot(V)+1である。
λ=2⋅ω=ot(ω×2,<lex)とおく。系 3.3により、λの元はω×2の元(n,i)が定める始切片I(n,i)の順序型である。ot(I(n,i))が有限順序数でないような(n,i)の全体をTとし、T=∅と仮定して<lexに関する最小元(n,i)を取る。I(0,0)=∅の順序型は0であるから(n,i)=(0,0)である。例 5.5で見たとおり、i=1のときは(n,0)が、i=0かつn=0のときはn=m+1と表して(m,1)が、I(n,i)の最大元である。その最大元をqと書くとI(n,i)=Iq∪{q}であり、q<lex(n,i)と(n,i)の最小性によりot(Iq)は有限順序数であるから、はじめに見たことによりot(I(n,i))=ot(Iq)+1であり、補題 4.7 (2)によりこれも有限順序数である。これは(n,i)∈Tに反する。よってT=∅であり、λの元はすべて有限順序数であるから、命題 4.8 (3)によりλ⊆ωであり、命題 2.5 (1)によりλ≤ωである。
ω×2は空でないからλ=0である。λ=μ+1と表されると仮定すると、命題 4.2 (3)によりμはλの最大元であるから、順序同型によりω×2も最大元をもつ。しかし(n,i)∈ω×2に対して、命題 4.8 (1)と系 4.3によりn+1<ωであり(n,i)<lex(n+1,0)であるから、ω×2は最大元をもたない。よってλは極限順序数であり、命題 4.8 (2)によりω≤λである。以上と命題 2.5 (2)によりλ=ωである。▨
順序数の全体にわたる帰納法と、順序数を添字とする族の再帰的な定義は「超限帰納法と超限再帰」が扱い、その極限段では補題 4.4の上限がそのまま用いられる。集合の濃度を順序数によって表す基数は「基数とアレフ」が扱い、可算な順序数の全体の上限として最小の非可算基数を得るところで、注意 3.4と同じ役割の置換公理スキーマがふたたび働く。