1 Hex の定理
定義 1.1 (隣接).n∈N≥1とする。Znの点z,z′が 隣接する (adjacent) とは、z=z′であり、差z′−zが{0,1}nまたは{0,−1}nに属することをいう。
定義 1.2 (鎖).n∈N≥1とし、i=1,…,nについて、第i成分が1で他の成分が0であるZnの点をeiと書く。Znの点の列σ=(z0,z1,…,zn)が 鎖 (chain) であるとは、全単射π:{1,…,n}→{1,…,n}で、j=1,…,nについてzj−zj−1=eπ(j)を満たすものが存在することをいう。z0,…,znをσの 頂点 (vertex) といい、0≤j≤nについて、zj以外のn個の頂点からなる集合をσの第j面 (face) という。
0≤j≤nについて、σの第j隣接鎖 (neighboring chain) を次の点の列と定める。0<j<nのときはσのzjをzj−1+zj+1−zjに替えた列、j=0のときは(z1,…,zn,zn+z1−z0)、j=nのときは(z0+zn−1−zn,z0,…,zn−1)である。
補題 1.3.n∈N≥1とし、σ=(z0,…,zn)をZnの鎖とする。
- 0≤j<j′≤nならば、zj′−zjは{0,1}nに属し0でない。とくに、σの頂点は相異なり、どの二つも隣接する。
- 0≤j≤nとし、σ′=(y0,…,yn)をσの第j隣接鎖とする。0<j<nのときj∗=j、j=0のときj∗=n、j=nのときj∗=0とおく。このときσ′は鎖であり、yj∗はσの頂点でなく、σ′の第j∗面はσの第j面に等しい。さらに、σはσ′の第j∗隣接鎖である。
- 整数N≥0についてσの頂点がすべて{0,1,…,N}nに属するとき、0<j<nならば、σの第j隣接鎖の頂点もすべて{0,1,…,N}nに属する。
証明.πをσに対する定義 1.2の全単射とし、e1,…,enを同じ定義の点とする。z∈Znに対してs(z)=z1+⋯+znとおくと、s(ei)=1であるから、0≤l≤nについてs(zl)=s(z0)+lである。
(1)を示す。zj′−zj=eπ(j+1)+⋯+eπ(j′)であり、π(j+1),…,π(j′)は相異なるから、この差は{0,1}nに属し0でない。したがって相異なる添字の頂点は相異なり、隣接する。
(2)を示す。y=yj∗とおく。0<j<nのとき、y=zj−1+zj+1−zj=zj−1+eπ(j+1)であり、zj+1−y=eπ(j)であるから、σ′の隣り合う頂点の差は順にeπ(1),…,eπ(j−1),eπ(j+1),eπ(j),eπ(j+2),…,eπ(n)である。j=0のとき、y=zn+eπ(1)であり、差は順にeπ(2),…,eπ(n),eπ(1)である。j=nのとき、y=z0−eπ(n)であり、差は順にeπ(n),eπ(1),…,eπ(n−1)である。いずれの場合も差はe1,…,enを一度ずつ並べたものであるから、σ′は鎖である。s(y)は、0<j<nのときs(z0)+j、j=0のときs(z0)+n+1、j=nのときs(z0)−1である。j∈{0,n}のときs(y)はどのs(zl)とも異なるので、yはσの頂点でない。0<j<nのとき、s(zl)=s(y)を満たす頂点はzjだけであり、y−zj−1=eπ(j+1)=eπ(j)=zj−zj−1であるから、yはσの頂点でない。yj∗以外のσ′の頂点はσの第j面の点であり、σ′の頂点は相異なるので、σ′の第j∗面はσの第j面に等しい。
0<j<nのとき、yj−1+yj+1−yj=zj−1+zj+1−y=zjであるから、第j隣接鎖はσである。j=0のとき、σ′=(z1,…,zn,y)であり、y0+yn−1−yn=z1+zn−y=z1−eπ(1)=z0であるから、第n隣接鎖は(z0,z1,…,zn)=σである。j=nのとき、σ′=(y,z0,…,zn−1)であり、yn+y1−y0=zn−1+z0−y=zn−1+eπ(n)=znであるから、第0隣接鎖は(z0,…,zn−1,zn)=σである。
(3)を示す。0<j<nのとき、第j隣接鎖の頂点のうちσの頂点でないものはy=zj−1+eπ(j+1)であり、zj+1=y+eπ(j)である。よって各iについてzij−1≤yi≤zij+1であり、0≤yi≤Nである。▨
補題 1.4.n,k∈N≥1とし、A={0,1,…,k+1}n、H={1,…,k}nとおく。写像L:A→{1,…,n}は、各z∈A∖Hについて、zi=0を満たすiが存在するならばL(z)=min{i∣zi=0}であり、存在しないならばL(z)=min{i∣zi=k+1}であるとする。このとき、あるr∈{1,…,n}とAの点の列w0,…,wMで、すべてのlについてL(wl)=rであり、0≤l<Mについてwlとwl+1が隣接し、wr0=0かつwrM=k+1を満たすものが存在する。
証明. 頂点がすべてAに属する鎖をAの鎖と呼び、Aの鎖σが完全であるとは、Lをσの頂点の集合へ制限した写像が{1,…,n}への全射であることをいう。σ=(z0,…,zn)を完全なAの鎖とすると、補題 1.3 (1)により相異なるn+1個の頂点がn個の値へ全射に写るので、L(zp)=L(zq)を満たす添字p<qがちょうど一組あり、他の頂点の値は互いに異なりL(zp)とも異なる。このp,qをσの重複添字と呼ぶ。Lがσの第j面の上で{1,…,n}への全射であることは、j∈{p,q}であることと同値である。
完全なAの鎖の全体を頂点の集合とするグラフΓを定める。Aは有限集合であり、鎖はAの点の列であるから、Γの頂点は有限個である。Γの相異なる二頂点を辺で結ぶのは、一方が他方の第j隣接鎖であって、Lが他方の第j面の上で全射であるようなjが存在するときとする。
主張 1.4.1.σをΓの頂点とし、p<qをその重複添字とする。Γにおいてσと辺で結ばれる頂点は、σの第p隣接鎖と第q隣接鎖のうちAの鎖であるものであり、この二つの隣接鎖は相異なる。
証明.j∈{p,q}とし、σの第j隣接鎖σ′がAの鎖であるとする。補題 1.3 (2)によりσ′の頂点の集合はσの第j面を含み、σの頂点でない点を含むので、σ′は完全であってσと異なり、σと辺で結ばれる。
逆に、Γの頂点σ′がσと辺で結ばれるとする。σ′がσの第j隣接鎖であってLがσの第j面の上で全射であるならば、j∈{p,q}である。σがσ′の第j隣接鎖であってLがσ′の第j面の上で全射であるならば、補題 1.3 (2)をσ′に適用すると、σ′はσの第j∗隣接鎖であり、σの第j∗面はσ′の第j面に等しいので、j∗∈{p,q}である。
補題 1.3 (2)により、第q隣接鎖の頂点の集合は第q面とσの頂点でない一点の和集合であり、zqを含まない。第p隣接鎖の頂点の集合は第p面を含み、p=qであるからzqを含む。よって二つの隣接鎖は相異なる。▨
0<j<nのとき、補題 1.3 (3)をN=k+1として用いると、Aの鎖の第j隣接鎖はAの鎖である。したがって主張 1.4.1により、Γの各頂点σと辺で結ばれる頂点は高々二つであり、それが二つ未満であるならば、σの重複添字jで、j∈{0,n}であって第j隣接鎖がAの鎖でないものが存在する。
0≤j≤nについてcj=e1+⋯+ejとおき(c0=0)、σ0=(c0,…,cn)とおく。σ0は恒等写像を全単射とするAの鎖である。0≤j<nについて、cjは第1成分から第j成分までが1、他の成分が0であるから、cj∈A∖HでありL(cj)=j+1である。よってLはσ0の第n面の上で全射であり、σ0はΓの頂点で、r0=L(cn)とおくとその重複添字はr0−1とnである。第n隣接鎖の頂点c0+cn−1−cn=−enはAに属さない。r0≥2ならば0<r0−1<nであるから、第r0−1隣接鎖はAの鎖である。r0=1ならば、第0隣接鎖の頂点のうちσ0の頂点でないものはcn+c1−c0=cn+e1であり、k≥1から2≤k+1であるのでAに属する。いずれの場合も、主張 1.4.1によりσ0と辺で結ばれる頂点はちょうど一つである。
Γの相異なる頂点の列τ0,…,τmで、τ0=σ0であり隣り合う二項が辺で結ばれ、末尾にΓの頂点を一つ加えて同じ条件を満たす列にすることができないものをとる。Γは有限であるから、列(σ0)から始めて末尾への追加を繰り返すとこのような列が得られ、σ0と辺で結ばれる頂点が存在するのでm≥1である。τmと辺で結ばれる頂点ρでτm−1と異なるものが存在したとすると、列を延長することができないのでρ=τlを満たすl≤m−2がある。l=0ならば、σ0は相異なるτ1とτmの両方と辺で結ばれ、σ0と辺で結ばれる頂点がちょうど一つであることに反する。1≤l≤m−2ならば、τlは相異なる三つの頂点τl−1,τl+1,τmと辺で結ばれ、辺で結ばれる頂点が高々二つであることに反する。よってτmと辺で結ばれる頂点はτm−1だけであり、τm=σ0である。
τm=(z0,…,zn)と書き、その全単射をπ、重複添字をp<qとする。τmと辺で結ばれる頂点は一つだけであり、0<j<nならば第j隣接鎖はAの鎖であるから、主張 1.4.1により、重複添字j∈{0,n}で第j隣接鎖がAの鎖でないものがある。
j=nであると仮定し、r=π(n)とおく。第n隣接鎖の頂点z0+zn−1−zn=z0−erはAに属さず、z0∈Aであるからzr0=0である。l<nについてzl=z0+eπ(1)+⋯+eπ(l)でありπ(1),…,π(l)はrと異なるので、zrl=0である。よって0≤l<nについてzl∈A∖Hであり、L(zl)=min{i∣zil=0}≤rである。nは重複添字であるからLは第n面{z0,…,zn−1}の上で全射であり、値nをとるのでr=nである。
Zl={i∣zil=0}とおくと、zlの成分はlについて減少しないのでZ0⊇Z1⊇⋯⊇Zn−1であり、L(zl)=minZlはlについて減少しない。L(z0),…,L(zn−1)は1,…,nを一度ずつとるのでL(zl)=l+1である。よってすべてのl<nについてl+1∈Zl⊆Z0であり、Z0={1,…,n}、すなわちz0=0である。
このとき1≤l<nについてZl={1,…,n}∖{π(1),…,π(l)}であり、minZl=l+1から{π(1),…,π(l)}={1,…,l}である。したがってπは恒等写像であり、τm=σ0となる。これはτm=σ0と両立しないので、j=nである。
よってj=0であり、0はτmの重複添字である。r=π(1)とおくと、第0隣接鎖の頂点zn+z1−z0=zn+erはAに属さず、zn∈Aであるからzrn=k+1である。1≤l≤nについてzrl=zrn=k+1である。Lは第0面{z1,…,zn}の上で全射であるから、第0面の点vでL(v)=rを満たすものがあり、vr=k+1である。
1≤l≤mについて、τl−1とτlは辺で結ばれるので、一方は他方の第j隣接鎖であって、Lは他方の第j面Flの上で全射である。補題 1.3 (2)によりFlはτl−1とτlの両方の頂点の集合に含まれる。Flの点でLの値がrであるものをulとする。u0=cr−1とおくと、u0はσ0の頂点であり、L(u0)=r、ur0=0である。um+1=vとおく。0≤l≤mについてulとul+1はともにτlの頂点であるから、補題 1.3 (1)により等しいか隣接する。列u0,…,um+1から直前の項に等しい項を取り除いた列をw0,…,wMとすると、w0=u0、wM=vであり、この列は主張の条件を満たす。▨
定理 1.5 (Hex の定理).n,k∈N≥1とし、H={1,…,k}nとおく。任意の写像L:H→{1,…,n}に対して、あるi∈{1,…,n}とHの点の列z0,…,zmで、すべてのlについてL(zl)=iであり、0≤l<mについてzlとzl+1が隣接し、zi0=1かつzim=kを満たすものが存在する。
証明.A={0,1,…,k+1}nとおく。z∈A∖Hはzi∈{0,k+1}を満たすiをもつので、zi=0を満たすiが存在するならばL(z)=min{i∣zi=0}、存在しないならばL(z)=min{i∣zi=k+1}と定めて、LをA上の写像へ延ばすことができる。補題 1.4により、あるrと、Lの値がすべてrで隣り合う二項が隣接するAの点の列w0,…,wMで、wr0=0かつwrM=k+1を満たすものがある。wra=0を満たす最大のaをとるとa<Mであり、b>aかつwrb=k+1を満たす最小のbをとる。aとbの選び方から、a<l<bならば1≤wrl≤kである。A∖Hの点zでL(z)=rを満たすものは、zi=0を満たすiが存在するならばzr=0を満たし、存在しないならばzr=k+1を満たす。よってa<l<bならばwl∈Hである。隣接する二点の第r成分の差の絶対値は1以下であるから、wrb−wra=k+1≥2からb−a≥2であり、wra+1=1、wrb−1=kである。したがってi=rと列wa+1,…,wb−1が主張の条件を満たす。▨
系 1.7.n∈N≥1とし、[0,1]nに Euclid 距離d2を入れる。実数δ>0と写像λ:[0,1]n→{1,…,n}に対して、あるi∈{1,…,n}と[0,1]nの点の列x0,…,xmで、すべてのlについてλ(xl)=iであり、0≤l<mについてd2(xl,xl+1)<δであり、xi0=0かつxim=1を満たすものが存在する。
証明.n/(k−1)<δを満たす整数k≥2をとる。z∈{1,…,k}nに対して、第j成分が(zj−1)/(k−1)である[0,1]nの点をp(z)とし、L(z)=λ(p(z))とおく。定理 1.5により、あるiと、Lの値がすべてiで隣り合う二項が隣接する{1,…,k}nの点の列z0,…,zmで、zi0=1かつzim=kを満たすものがある。xl=p(zl)とおくと、λ(xl)=i、xi0=0、xim=1である。zlとzl+1は隣接するので各成分の差の絶対値は1以下であり、d∞(xl,xl+1)≤1/(k−1)である。§E2.1 公式 4.2によりd2(xl,xl+1)≤n/(k−1)<δである。▨
2 立方体の被覆次元
補題 2.1.n∈N≥1とし、i=1,…,nについて実数ai<biをとり、Q=∏i=1n[ai,bi]={x∈Rn∣ai≤xi≤bi (i=1,…,n)}とおく。
- Qはコンパクトである。
- φ(y)=(a1+(b1−a1)y1,…,an+(bn−an)yn)で定まる写像φ:[0,1]n→Qは同相写像である。さらに各iについて、φはyi=0を満たす点の全体をxi=aiを満たす点の全体へ、yi=1を満たす点の全体をxi=biを満たす点の全体へ写す。
- RnにおけるQの境界∂Qは、xi∈{ai,bi}を満たすiが存在するx∈Qの全体に等しい。
証明.πi:Rn→Rを第i成分への射影とする。
(1)を示す。[ai,bi]は補集合が二つの開半直線の和集合であるからRの閉集合であり、§E2.12 命題 1.6 (2)によりQ=⋂i=1nπi−1([ai,bi])はRnの閉集合である。x,y∈Qについて、§E2.1 公式 4.2によりd2(x,y)≤nd∞(x,y)≤nmaxi(bi−ai)であるから、Qは有界である。§E2.9 定理 4.3によりQはコンパクトである。
(2)を示す。同じ式で写像Φ:Rn→Rnを定め、Ψ(x)=((x1−a1)/(b1−a1),…,(xn−an)/(bn−an))で写像Ψ:Rn→Rnを定める。ΦとΨの各成分は一つの成分の一次関数であるから、ΦとΨは連続であり、互いに逆写像である。ai+(bi−ai)yi∈[ai,bi]であることはyi∈[0,1]であることと同値であるからΦ([0,1]n)=Qであり、φは同相写像Φの制限として[0,1]nからQへの同相写像である。ai+(bi−ai)yi=aiはyi=0と同値であり、ai+(bi−ai)yi=biはyi=1と同値であるから、面についての主張も成り立つ。
(3)の証明は演習とする(問題 4.1)。▨
補題 2.2.(X,d)を距離空間、n≥0を整数とし、U=(Ut)t∈IをordU≤nを満たすXの有限開被覆とする。このとき、Xの有限開被覆W=(Ws)s∈Sと写像κ:S→{0,1,…,n}で、W≺Uであり、κ(s)=κ(s′)を満たす相異なる任意のs,s′∈SについてWs∩Ws′=∅となるものが存在する。
証明.X=∅ならばS=∅とすればよい。あるt0∈IについてUt0=Xならば、S={t0}、Wt0=X、κ(t0)=0とすればよい。以下、X=∅であり、すべてのt∈IについてX∖Ut=∅であるとする。
t∈Iに対してgt(x)=d(x,X∖Ut)とおく。§E2.10 命題 5.2 (1)によりgtは連続である。X∖Utは閉集合であるから、§E2.10 命題 5.2 (2)により、gt(x)>0であることはx∈Utであることと同値である。1≤∣T∣≤n+1を満たすT⊆Iの全体をSとし、T∈Sに対して
hT(x)=t∈Tmingt(x)−s∈I∖Tmaxgs(x),WT={x∈X∣hT(x)>0}とおく。ただしT=Iのときは第 2 項を0と読む。§E2.16 補題 1.2 (1)と§E2.16 補題 1.2 (2)によりhTは連続であり、WTは開集合である。κ(T)=∣T∣−1とおく。
x∈WTならば、hT(x)>0とすべてのsについてgs(x)≥0であることから、各t∈Tについてgt(x)≥mint′∈Tgt′(x)>0であり、x∈Utである。よって各T∈SについてTの元tTを一つ選ぶとWT⊆UtTであり、T↦tTは細分射である。
x∈Xとし、T(x)={t∈I∣x∈Ut}とおく。Uは被覆であるからT(x)=∅であり、§E2.47 補題 1.5 (1)により∣T(x)∣≤n+1であるからT(x)∈Sである。t∈T(x)ならばgt(x)>0であり、s∈/T(x)ならばgs(x)=0であるから、x∈WT(x)である。よってW=(WT)T∈SはXの有限開被覆であり、W≺Uである。
T,T′∈Sが相異なり∣T∣=∣T′∣を満たすとする。t∈T∖T′とs∈T′∖Tが存在し、WTの点ではgt>gs、WT′の点ではgs>gtであるから、WT∩WT′=∅である。▨
命題 2.3.n∈N≥1とし、[0,1]nに Euclid 距離d2を入れる。Uを[0,1]nの有限開被覆で、その各元の直径が1未満であるものとする。このとき、V≺UかつordV≤n−1を満たす[0,1]nの有限開被覆Vは存在しない。
証明.V≺UかつordV≤n−1を満たす有限開被覆Vが存在すると仮定する。n−1≥0であるから、補題 2.2により、[0,1]nの有限開被覆W=(Ws)s∈Sと写像κ:S→{0,…,n−1}で、W≺Vであり、κの値が等しい相異なる添字の元が交わらないものがある。§E2.19 補題 1.3 (2)によりW≺Uであるから、各WsはUのある元に含まれ、その直径は1未満である。
[0,1]nは補題 2.1 (1)によりコンパクトであるから、§E2.9 定理 3.1 (1)⇔(2)により点列コンパクトであり、§E2.9 補題 2.3によりWは Lebesgue 数δをもつ。各x∈[0,1]nに対してB(x,δ)⊆Wsxを満たすsx∈Sを選び、λ(x)=κ(sx)+1とおく。系 1.7により、あるiと[0,1]nの点の列x0,…,xmで、すべてのlについてλ(xl)=i、d2(xl,xl+1)<δであり、xi0=0かつxim=1を満たすものがある。0≤l<mについて、xl+1∈B(xl,δ)⊆Wsxlかつxl+1∈B(xl+1,δ)⊆Wsxl+1であり、κ(sxl)=κ(sxl+1)=i−1であるから、sxl=sxl+1である。よってs=sx0についてx0,xm∈Wsであり、§E2.1 公式 4.2によりd2(x0,xm)≥∣xim−xi0∣=1であるから、Wsの直径は1以上である。これはWsの直径が1未満であることと両立しないので、Vは存在しない。▨
補題 2.4.n∈N≥1とする。v∈Znとx∈Rnに対して、n+1個の実数0,x1−v1,…,xn−vnの最大値から最小値を引いた値をμv(x)と書き、S(v)={x∈Rn∣μv(x)<1}とおく。
- 各S(v)はRnの開集合であり、x∈S(v)ならば、すべてのiについて∣xi−vi∣<1である。
- 族(S(v))v∈ZnはRnの被覆であり、その位数はn以下である。
証明.(1)を示す。各x↦xi−viは連続であるから、§E2.16 補題 1.2 (1)と§E2.16 補題 1.2 (2)によりμvは連続であり、S(v)=μv−1((−∞,1))は開集合である。x∈S(v)ならば、0とxi−viはともに最小値と最大値の間にあり、その差は1未満であるから、∣xi−vi∣<1である。
(2)を示す。x∈Rnを固定し、各iについてai≤xi<ai+1を満たす整数aiをとり、fi=xi−aiとおく。0≤fi<1であるから、a=(a1,…,an)について0,f1,…,fnの最大値と最小値の差は1未満である。したがってx∈S(a)であり、族(S(v))v∈ZnはRnの被覆である。
x∈S(v)を満たすv∈Znをとる。(1)により∣xi−vi∣<1であるから、fi=0ならばvi=aiであり、fi>0ならばvi∈{ai,ai+1}である。A(v)={i∣vi=ai+1}とおく。i∈/A(v)、j∈A(v)ならば、xi−vi=fi、xj−vj=fj−1であり、μv(x)<1から
fi−(fj−1)<1,fi<fjである。
f1,…,fnのうち正で相異なる値をb1<⋯<bqと並べる(0≤q≤n)。A(v)=∅ならば、minj∈A(v)fj=brを満たすrがある。i∈/A(v)ならばfi<brであり、i∈A(v)ならばfi≥brであるから、
A(v)={i∣fi≥br}である。したがってA(v)は空集合またはこれらq個の集合のいずれかであり、A(v)が定まると各viも定まる。よってxを含むS(v)は高々q+1≤n+1個であり、§E2.47 補題 1.5 (1)により族(S(v))v∈Znの位数はn以下である。▨
定理 2.5 (Lebesgue の被覆定理). 任意のn∈N≥1について、dim[0,1]n=nである。
証明.[0,1]nに Euclid 距離d2を入れる。補題 2.1 (1)により[0,1]nはコンパクトであり、§E2.9 定理 3.1 (1)⇔(2)により点列コンパクトである。
各x∈[0,1]nについて、開球B(x,1/3)は§E2.2 補題 1.2により開集合であり、三角不等式によりその直径は2/3以下である。[0,1]nはコンパクトであるから、有限個の点x1,…,xNについて(B(xj,1/3))1≤j≤Nは[0,1]nの有限開被覆である。命題 2.3により、この被覆は位数n−1以下の有限開被覆を細分としてもたないので、条件dim[0,1]n≤n−1は成り立たず、§E2.47 補題 1.5 (2)によりdim[0,1]n≥nである。
Uを[0,1]nの有限開被覆とし、§E2.9 補題 2.3によりその Lebesgue 数δをとる。2nt<δを満たす実数t>0をとり、v∈Znに対して、補題 2.4のS(v)を用いてWv={y∈[0,1]n∣y/t∈S(v)}とおく。y↦y/tは連続であるから、補題 2.4 (1)によりWvは[0,1]nの開集合である。y∈Wvならば、補題 2.4 (1)により各iについて∣yi/t−vi∣<1であり、0≤yi≤1から−1<vi<1/t+1である。よってWv=∅を満たすvの全体Vは有限集合である。
補題 2.4 (2)により、各y∈[0,1]nについてy/t∈S(v)を満たすvが存在するので、(Wv)v∈Vは[0,1]nの有限開被覆である。相異なるn+2個のv∈VについてWvの共通部分に点yがあれば、y/tが対応するn+2個のS(v)の共通部分に属することになるので、補題 2.4 (2)と§E2.47 補題 1.5 (1)によりord(Wv)v∈V≤nである。
v∈Vについてy∈Wvを一つとると、任意のy′∈Wvと各iについて∣yi′−yi∣≤t∣yi′/t−vi∣+t∣vi−yi/t∣<2tであるから、§E2.1 公式 4.2によりd2(y,y′)<2nt<δであり、Wv⊆B(y,δ)である。δはUの Lebesgue 数であるからB(y,δ)はUのある元に含まれ、§E2.19 補題 1.3 (3)により(Wv)v∈V≺Uである。
よって条件dim[0,1]n≤nが成り立ち、§E2.47 補題 1.5 (2)によりdim[0,1]n≤nである。dim[0,1]n≥nとあわせてdim[0,1]n=nである。▨
補題 2.6.m,n∈N≥1とする。
- Rnの空でない開集合は、[0,1]nと同相な部分空間を含む。
- Rnのコンパクトな部分集合Kが[0,1]mと同相ならば、m≤nである。
証明.(1)を示す。UをRnの空でない開集合とし、a∈Uをとる。B(a,ε)⊆Uを満たす実数ε>0があり、η=ε/(2n)とおいてQ=∏i=1n[ai−η,ai+η]とする。y∈Qならば、§E2.1 公式 4.2によりd2(a,y)≤nd∞(a,y)≤nη<εであるからQ⊆Uであり、補題 2.1 (2)によりQは[0,1]nと同相である。
(2)を示す。Kは空でないコンパクト集合であるから、§E2.9 系 4.1により有界な閉集合である。b∈Kをとり、DをKの直径とし、R=maxi∣bi∣+D+1とおく。y∈Kについて∣yi∣≤∣bi∣+d2(y,b)≤∣bi∣+D<Rであるから、K⊆C=[−R,R]nである。KはRnの閉集合であるから、§E2.12 命題 4.6によりK=K∩CはCの閉集合である。補題 2.1 (2)によりCは[0,1]nと同相であるから、§E2.47 命題 2.1 (1)、定理 2.5、および§E2.47 命題 2.4により
m=dim[0,1]m=dimK≤dimC=dim[0,1]n=nである。▨
定理 2.7.m,n∈N≥1とし、UをRnの空でない開集合、VをRmの空でない開集合とする。UとVが同相ならばm=nである。
証明.h:V→Uを同相写像とする。補題 2.6 (1)により、Vは[0,1]mと同相な部分空間K′を含む。補題 2.1 (1)により[0,1]mはコンパクトであるから、§E2.19 定理 4.2によりK′とK=h(K′)はコンパクトである。hの制限はK′からKへの同相写像であるから、KはRnのコンパクトな部分集合で[0,1]mと同相であり、補題 2.6 (2)によりm≤nである。h−1に同じ議論を適用するとn≤mであり、m=nである。▨
3 Poincaré–Miranda の定理
定理 3.1 (Poincaré–Miranda の定理).n∈N≥1とし、i=1,…,nについて実数ai<biをとり、Q=∏i=1n[ai,bi]⊆Rnとおく。連続写像f=(f1,…,fn):Q→Rnが、各iについて、xi=aiを満たす任意のx∈Qでfi(x)≤0を満たし、xi=biを満たす任意のx∈Qでfi(x)≥0を満たすならば、f(x)=0を満たすx∈Qが存在する。
証明.補題 2.1 (2)の同相写像φ:[0,1]n→Qについて、f∘φは連続であり、その第i成分はyi=0を満たすyで0以下、yi=1を満たすyで0以上である。f∘φの零点yに対してφ(y)はfの零点であるから、Q=[0,1]nの場合を示せば十分である。
fが[0,1]n上で零点をもたないと仮定する。各fiは連続であるから、N(x)=maxi∣fi(x)∣で定まるNは§E2.16 補題 1.2 (2)により連続であり、すべてのxについてN(x)>0である。[0,1]nは補題 2.1 (1)により空でないコンパクト空間であるから、§E2.19 定理 4.4によりNは最小値ε>0をとる。
[0,1]nとRnに Euclid 距離d2を入れると、§E2.9 定理 5.1によりfは一様連続であり、d2(x,x′)<ηならばd2(f(x),f(x′))<εとなる実数η>0が存在する。
各x∈[0,1]nについて∣fi(x)∣≥εを満たすiが存在するので、その最小値をλ(x)とする。系 1.7により、あるiと[0,1]nの点の列x0,…,xmで、すべてのlについてλ(xl)=i、d2(xl,xl+1)<ηであり、xi0=0かつxim=1を満たすものがある。
仮定によりfi(x0)≤0であり、∣fi(x0)∣≥εであるからfi(x0)≤−εである。同様にfi(xm)≥εである。
fi(xl)≥εを満たす最小のlをとるとl≥1であり、fi(xl−1)<εと∣fi(xl−1)∣≥εからfi(xl−1)≤−εである。よって∣fi(xl)−fi(xl−1)∣≥2εである。一方、d2(xl−1,xl)<ηであるから、§E2.1 公式 4.2により∣fi(xl)−fi(xl−1)∣≤d2(f(xl),f(xl−1))<εである。ε>0であるから二つの評価は両立せず、fは零点をもつ。▨
系 3.2.n∈N≥1とし、i=1,…,nについて実数ai<biをとり、Q=∏i=1n[ai,bi]⊆Rnとおく。RnにおけるQの境界∂QはQのレトラクトでない。
証明. レトラクションr:Q→∂Qが存在すると仮定する。c=((a1+b1)/2,…,(an+bn)/2)とおき、f(x)=r(x)−cで連続写像f:Q→Rnを定める。x∈Qがxi=aiを満たすならば、補題 2.1 (3)によりx∈∂Qであるからr(x)=xであり、fi(x)=ai−ci<0である。同様に、xi=biならばfi(x)=bi−ci>0である。定理 3.1により、r(x)=cを満たすx∈Qが存在する。すべてのiについてai<ci<biであるから、補題 2.1 (3)によりc∈/∂Qであるが、r(x)∈∂Qである。これらは両立しないので、∂QはQのレトラクトでない。▨
系 3.3 (Brouwer の不動点定理).n∈N≥1とし、i=1,…,nについて実数ai<biをとり、Q=∏i=1n[ai,bi]⊆Rnとおく。任意の連続写像g:Q→Qに対して、g(x)=xを満たすx∈Qが存在する。
証明.f(x)=x−g(x)で連続写像f:Q→Rnを定める。g(x)∈Qであるから、xi=aiならばfi(x)=ai−gi(x)≤0であり、xi=biならばfi(x)=bi−gi(x)≥0である。定理 3.1によりf(x)=0を満たすx∈Qがあり、g(x)=xである。▨
注意 3.4.n=2の場合の定理 3.1と系 3.2は、記事「Jordan の曲線定理」で、平面の弧が平面を分離しないことと Jordan の曲線定理の証明に用いる。
定理 3.5 (Lebesgue の分離定理).n∈N≥1とする。各i=1,…,nについて、Ui,Viを[0,1]nの互いに交わらない開集合で、xi=0を満たすx∈[0,1]nがすべてUiに属し、xi=1を満たすx∈[0,1]nがすべてViに属するものとし、Li=[0,1]n∖(Ui∪Vi)とおく。このときL1∩⋯∩Ln=∅である。
証明.[0,1]nに Euclid 距離dを入れ、Pi=[0,1]n∖Vi、Ri=[0,1]n∖Uiとおく。Ui∩Vi=∅であるから、Piはxi=0を満たす点をすべて含み、Riはxi=1を満たす点をすべて含むので、PiとRiは空でない閉集合である。fi(x)=d(x,Pi)−d(x,Ri)とおくと、§E2.10 命題 5.2 (1)によりfiは連続である。§E2.10 命題 5.2 (2)により、d(x,Pi)=0であることはx∈Piであることと同値であり、d(x,Ri)=0であることはx∈Riであることと同値である。x∈Uiならばx∈Piかつx∈/Riであるからfi(x)<0であり、x∈Viならばx∈/Piかつx∈Riであるからfi(x)>0であり、x∈Liならばx∈Pi∩Riであるからfi(x)=0である。[0,1]nはUi、Vi、Liの和集合であるから、fi(x)=0であることはx∈Liであることと同値である。また、xi=0ならばfi(x)<0であり、xi=1ならばfi(x)>0である。f=(f1,…,fn):[0,1]n→Rnは連続であるから、定理 3.1によりf(x)=0を満たすx∈[0,1]nが存在し、x∈L1∩⋯∩Lnである。▨
4 演習
解答.
πi:Rn→Rを第i成分への射影とし、P=∏i=1n(ai,bi)=⋂i=1nπi−1((ai,bi))とおく。πiは連続であるから、PはRnの開集合であり、P⊆QであるからP⊆int(Q)である。
x∈Q∖Pとすると、xi∈{ai,bi}を満たすiがある。x∈int(Q)であると仮定すると、int(Q)は開集合であるから、B(x,ε)⊆int(Q)⊆Qを満たす実数ε>0がある。xi=aiならば第i成分だけをai−ε/2に替えた点、xi=biならば第i成分だけをbi+ε/2に替えた点は、xとの Euclid 距離がε/2であるからB(x,ε)に属するが、Qに属さない。これはB(x,ε)⊆Qと両立しないので、x∈/int(Q)である。したがってint(Q)=Pである。
補題 2.1 (1)と§E2.9 系 4.1によりQはRnの閉集合であるからQ=Qであり、§E2.11 命題 2.8 (1)により∂Q=Q∖int(Q)=Q∖Pである。Q∖Pは、xi∈{ai,bi}を満たすiが存在するx∈Qの全体である。▨
問題 4.2.e1=(1,0)、e2=(0,1)とする。Z2の二点z,z′の間の関係として、隣接の代わりに「z′−zがe1,−e1,e2,−e2のいずれかに等しい」という関係を用いると、定理 1.5の結論がn=k=2の場合に成り立たなくなることを、写像L:{1,2}2→{1,2}を具体的に与えて示せ。
解答.
L(1,1)=L(2,2)=1、L(1,2)=L(2,1)=2と定める。
i=1とする。値が1の点は(1,1)と(2,2)だけであり、第1成分が1のものは(1,1)、2のものは(2,2)である。したがって、値がすべて1で(1,1)から始まり(2,2)で終わる列は、隣り合う二項として(1,1)と(2,2)を含む。(2,2)−(1,1)=(1,1)とその符号を替えた(−1,−1)はe1,−e1,e2,−e2のいずれでもないので、隣り合う二項が替えた関係を満たすそのような列は存在しない。
i=2とする。値が2の点は(2,1)と(1,2)だけであり、第2成分が1のものは(2,1)、2のものは(1,2)である。(1,2)−(2,1)=(−1,1)とその符号を替えた(1,−1)もe1,−e1,e2,−e2のいずれでもないので、同様にそのような列は存在しない。
よって替えた関係については、どのiについても結論の列は存在しない。一方、本来の隣接については(1,1)と(2,2)が隣接するので、i=1について列(1,1),(2,2)が定理 1.5の結論を満たす。▨
問題 4.3.m,n∈N≥1がm<nを満たすとし、UをRnの空でない開集合とする。UからRmへの連続な単射は存在しないことを示せ。
解答.
連続な単射h:U→Rmが存在すると仮定する。補題 2.6 (1)により、Uは[0,1]nと同相な部分空間K′を含む。補題 2.1 (1)により[0,1]nはコンパクトであるから、§E2.19 定理 4.2によりK′とK=h(K′)はコンパクトである。Rmは距離空間であるから§E2.15 定理 3.2 (1)により Hausdorff 空間であり、その部分空間Kも Hausdorff 空間である。hの制限K′→Kは連続な全単射であるから、§E2.19 定理 6.8により同相写像である。よってKはRmのコンパクトな部分集合で[0,1]nと同相であり、補題 2.6 (2)によりn≤mである。これはm<nと両立しないので、連続な単射hは存在しない。▨