1 正規性と閉部分空間
命題 1.1.Xを正規空間とし、C⊆XをXの閉集合とする。Cに部分空間位相を入れた空間は正規である。
証明.A,B⊆Cを、互いに交わらないCの閉集合とする。§E2.12 命題 4.6により、Xの閉集合A′、B′でA=A′∩C、B=B′∩Cを満たすものが存在する。CはXの閉集合であるから、AとBはXの二つの閉集合の共通部分としてXの閉集合である。A∩B=∅であるから、§E2.15 定義 1.7により、A⊆U、B⊆V、U∩V=∅を満たすXの開集合U,Vが存在する。§E2.12 定義 4.1によりU∩CとV∩CはCの開集合であり、A⊆U∩C、B⊆V∩C、(U∩C)∩(V∩C)=∅が成り立つ。したがってCは正規である。▨
例 1.2. 次の三つの類はいずれも正規である。
正規性は T1 性を含意しない。§E2.15 例 5.1 (2)により、二つ以上の元をもつ集合に密着位相を入れた空間は正規であるが T0 空間ですらない。
2 二進有理数と開集合族の構成
補題 2.1 (正規性の縮小補題). 位相空間Xについて、次の二条件は同値である。
- Xは正規である。
- 任意の閉集合FとF⊆Uを満たす開集合Uに対して、F⊆V⊆V⊆Uを満たす開集合Vが存在する。
証明.(1)⇒(2)を示す。Xが正規であり、F⊆Uとする。閉集合FとX∖Uは互いに交わらないから、正規性によりF⊆V、X∖U⊆Wを満たす互いに交わらない開集合V,Wが存在する。§E2.11 命題 2.5によりV∩W=∅からV⊆X∖W⊆Uである。
(2)⇒(1)を示す。互いに交わらない閉集合A,Bを取る。A⊆X∖Bに(2)を適用すると、A⊆V⊆V⊆X∖Bを満たす開集合Vが得られる。するとX∖VはBを含む開集合であり、Vと交わらない。したがってXは正規である。▨
定義 2.2 (二進有理数). 二進有理数 (dyadic rational) を、ある非負整数nと整数kによりk/2nと表される有理数と定める。[0,1]に属する二進有理数の集合をDとし、n≥0に対して
Dn={2nk0≤k≤2n}と書く。
補題 2.3. 二進有理数について次が成り立つ。
- n≥0に対してDn⊆Dn+1であり、
Dn+1∖Dn={2n+12j+10≤j<2n}
である。右辺の各元q=(2j+1)/2n+1についてrq=j/2n、sq=(j+1)/2nと置くと、rqはq未満のDnの元のうち最大のものであり、sqはqより大きいDnの元のうち最小のものである。とくにrqとsqはDnで隣り合い、Dnの隣り合う二元の間にはDn+1の元がただ一つだけ入る。
- 0≤a<b≤1を満たす実数a,bに対して、a<q<bを満たすq∈Dが存在する。
証明は演習とする(問題 9.1)。
補題 2.4.Xを正規空間とし、A,B⊆Xを互いに交わらない閉集合とする。このとき、Dで添字付けたXの開集合の族(Uq)q∈Dであって、
A⊆U0,U1=X∖B,および
q<q′⟹Uq⊆Uq′を同時に満たすものをとることができる。
証明.補題 2.1をA⊆X∖Bに適用し、A⊆U0⊆U0⊆X∖Bを満たす開集合U0を取る。U1=X∖Bと置く。
Xの開集合の全体をOと書く。整数n≥0と写像T:Dn→Oの対(n,T)であって、
T(0)=U0,T(1)=U1,r<s ⟹ T(r)⊆T(s)(r,s∈Dn)を満たすものの集合をSとする。Sの二つの元(n,T)、(n′,T′)に対して、n′=n+1でありT′のDnへの制限がTに一致するとき、かつそのときに限り(n,T)R(n′,T′)と定める。
D0={0,1}であるから、T0(0)=U0、T0(1)=U1で写像T0:D0→Oを定めることができ、U0⊆X∖B=U1であるから(0,T0)∈Sである。とくにSは空でない。
(n,T)∈Sをとる。補題 2.3 (1)により、Dn+1∖Dnの元qに対してrq<q<sqを満たすDnの隣り合う二元rq,sqが定まる。(n,T)∈SによりT(rq)⊆T(sq)であるから、補題 2.1をT(rq)⊆T(sq)へ適用して
T(rq)⊆Vq⊆Vq⊆T(sq)を満たす開集合Vqを取る。写像T′:Dn+1→Oを、Dn上ではTと一致させ、q∈Dn+1∖DnではT′(q)=Vqとして定める。
(n+1,T′)∈Sを示す。端点の条件はDn上でT′=Tであることから従う。a<bを満たすDn+1の二元をとり、T′(a)⊆T′(b)を示す。以下、§E2.11 命題 2.5 (1)によりW⊆Wを用いる。
aとbがともにDnに属する場合は、(n,T)∈Sの条件そのものである。
a∈Dn+1∖Dnかつb∈Dnの場合、bはaより大きいDnの元であるから、補題 2.3 (1)によるsaの最小性からsa≤bである。Vaの取り方からT′(a)=Va⊆T(sa)であり、sa=bならばこれが結論、sa<bならばT(sa)⊆T(sa)⊆T(b)をつないで結論を得る。a∈Dnかつb∈Dn+1∖Dnの場合、aはb未満のDnの元であるから、rbの最大性によりa≤rbである。Vbの取り方からT(rb)⊆Vb=T′(b)であり、a=rbならばこれが結論、a<rbならばT(a)⊆T(rb)⊆T(rb)をつないで結論を得る。
aとbがともにDn+1∖Dnに属する場合を考える。まずsa≤rbを示す。rb<saと仮定する。ra<a<bでありra∈Dnであるから、rbの最大性によりra≤rbである。一方rb∈Dnがrb<saを満たし、raとsaはDnで隣り合うからrb≤raである。ゆえにra=rbであり、saとsbはいずれもDnにおけるraの直後の元であるからsa=sbである。するとDnの隣り合う二元ra<saの間にDn+1の相異なる二元aとbが入り、補題 2.3 (1)の一意性に反する。したがってsa≤rbである。sa=rbならば
T′(a)=Va⊆T(sa)=T(rb)⊆T(rb)⊆Vb=T′(b)であり、sa<rbならばT(sa)⊆T(sa)⊆T(rb)を間に挟むことにより同じ鎖が閉じる。
以上により(n+1,T′)∈Sであり(n,T)R(n+1,T′)であるから、Sの任意の元はRに関する後続をもつ。(0,T0)を初期項として、すべてのk≥0について(nk,Tk)R(nk+1,Tk+1)を満たすSの列が得られる。Rの定義によりnk=kであり、Tk+1のDkへの制限はTkである。q∈Dに対してq∈Dnとなるnを選び、Uq=Tn(q)と定める。延長では既存の値を変えないので、この定義はnに依存しない。U0の取り方によりA⊆U0でありU1=X∖Bである。q<q′に対して両者を含むDnを取れば、(n,Tn)∈SによりUq⊆Uq′が得られる。▨
3 連続関数による分離
定理 3.1 (Urysohn の補題).Xを正規空間とし、A,B⊆Xを任意の互いに交わらない閉集合とする。このとき、すべてのx∈Aについてf(x)=0、すべてのx∈Bについてf(x)=1を満たす連続写像f:X→[0,1]が存在する。
証明.補題 2.4が与える、A⊆U0、U1=X∖Bおよびq<q′ならUq⊆Uq′を満たす(Uq)q∈Dを取る。x∈Xに対して
Qx={q∈D∣x∈Uq}と置き、Qx=∅ならf(x)=infQx、Qx=∅ならf(x)=1と定める。Qx=∅のときはQx⊆[0,1]であるから、§D1.4 命題 1.4により下限が存在する。いずれの場合も0≤f(x)≤1である。
x∈Aならx∈U0であり、0∈Qxであるからf(x)=0となる。x∈Bならx∈/Uqがすべてのq∈Dに対して成り立つ。実際、q<1ならUq⊆Uq⊆U1=X∖Bであり、q=1でもU1=X∖Bである。ゆえにQx=∅であり、f(x)=1である。
a≤1に対して
f−1((−∞,a))=q∈Dq<a⋃Uqが成り立つ。右辺に属するxではq∈Qxであるからf(x)≤q<aである。逆にf(x)<aなら、a≤1とあわせてf(x)<1であり、fの定義によりQx=∅である。補題 2.3 (2)によりf(x)<q<aを満たすq∈Dを取ることができる。f(x)=infQx<qであるから、下限の性質によりQxにq未満の元があり、とくにx∈Uq′⊆Uqとなるq′<qが存在する。
a≥0に対して
f−1((a,∞))=q∈Dq>a⋃(X∖Uq)も成り立つ。右辺に属するxでは、r<qならUr⊆Ur⊆Uq⊆Uqであるため、Qxはq未満の元を含まない。よってf(x)≥q>aである。逆にf(x)>aなら、補題 2.3 (2)によりa<q<q′<f(x)を満たすq,q′∈Dを取ることができる。x∈Uqならx∈Uq′となり、q′∈Qxからf(x)≤q′となって矛盾する。ゆえにx∈/Uqである。
a>1のときは、すべてのx∈Xについてf(x)≤1<aであるからf−1((−∞,a))=Xである。a<0のときは、すべてのx∈Xについてf(x)≥0>aであるからf−1((a,∞))=Xである。
二つの等式の右辺はいずれも開集合である。第一の右辺は開集合の和集合であり、第二の右辺では各補集合が開集合であるから、§E2.11 定義 1.1により開集合である。同じ定義によりX自身も開集合であるから、残りの二つの場合の逆像も開集合である。以上により§E2.13 例 2.7が与える半直線準開基のすべての元の逆像はXの開集合であり、§E2.13 命題 2.5によりf:X→Rは連続である。値域は[0,1]に含まれるから、§E2.12 定理 4.4により終域を[0,1]に取り替えた写像も連続である。▨
命題 3.2. 任意の互いに交わらない閉集合A,Bに対して、すべてのx∈Aについてf(x)=0、すべてのx∈Bについてf(x)=1を満たす連続写像f:X→[0,1]が存在する位相空間Xは正規である。
証明は演習とする(問題 9.8)。
系 3.3. 任意の T4 空間は T3½ 空間である。
証明. T4 空間Xの点xと、x∈/Fを満たす閉集合Fを取る。§E2.15 定義 1.8によりXは T1 かつ正規であり、T3½ を示すには完全正則性を示せば足りる。§E2.15 命題 1.5により{x}は閉集合であり、{x}とFは互いに交わらない。定理 3.1をA={x}、B=Fに適用すると、f(x)=0、およびすべてのy∈Fについてf(y)=1を満たす連続写像f:X→[0,1]が得られる。これは完全正則性の条件である。▨
系 3.5 (閉区間値の Urysohn の補題).c<c′とする。Xが正規空間であり、A,B⊆Xが互いに交わらない閉集合ならば、すべてのx∈Aについてg(x)=c、すべてのx∈Bについてg(x)=c′を満たす連続写像g:X→[c,c′]が存在する。
証明.定理 3.1によるf:X→[0,1]、包含写像ι:[0,1]→R(§E2.12 定義 4.2)、およびh(t)=c+(c′−c)tを取る。hは§E2.4 命題 3.4により連続であり、ιは§E2.12 定理 4.4により連続であるから、§E2.12 命題 1.10によりh∘ι∘fは連続である。0≤f(x)≤1から値は[c,c′]に入り、§E2.12 定理 4.4により終域を[c,c′]に取り替えた写像gも連続である。Aのすべての点でfが0を取り、Bのすべての点でfが1を取るため、gはAのすべての点でcを取り、Bのすべての点でc′を取る。▨
4 反復近似による有界な場合の拡張
定理 4.1 (Tietze の拡張定理(有界閉区間に値をとる場合)).(X,O)を正規空間、C⊆Xを閉集合とし、Cには部分空間位相を入れる。r>0とし、f:C→[−r,r]を連続写像とする。このとき、連続写像F:X→[−r,r]で、すべてのz∈CについてF(z)=f(z)を満たすものが存在する。
証明.§E2.12 定理 4.4 (1)により、包含写像との合成を通じてfを連続写像C→Rとみなす。
主張 4.1.1 (一段の近似).ρ>0とし、g:C→Rを連続写像で、すべてのz∈Cについて∣g(z)∣≤ρを満たすものとする。このとき、連続写像h:X→Rで次の二条件を満たすものが存在する。
- すべてのx∈Xについて∣h(x)∣≤ρ/3。
- すべてのz∈Cについて∣g(z)−h(z)∣≤2ρ/3。
証明.Cの部分集合
A={z∈C∣g(z)≤−ρ/3},B={z∈C∣g(z)≥ρ/3}をとる。AとBは§E2.12 命題 1.6によりCの閉集合である。§E2.12 命題 4.6とCがXで閉じていることから、AとBはXでも閉集合であり、互いに交わらない。系 3.5を[c,c′]=[−ρ/3,ρ/3]へ適用し、A上で−ρ/3、B上でρ/3をとる連続写像h0:X→[−ρ/3,ρ/3]をとる。包含写像との合成をh:X→Rとすれば、§E2.12 定理 4.4 (1)と§E2.12 命題 1.10によりhは連続である。これにより主張 4.1.1 (1)が成り立つ。
z∈Cをとる。g(z)≤−ρ/3ならばh(z)=−ρ/3であり、−ρ≤g(z)≤−ρ/3から∣g(z)−h(z)∣≤2ρ/3を得る。g(z)≥ρ/3の場合も同様である。∣g(z)∣<ρ/3ならば、∣h(z)∣≤ρ/3により
∣g(z)−h(z)∣≤∣g(z)∣+∣h(z)∣<2ρ/3である。したがって主張 4.1.1 (2)が成り立つ。▨
X=∅ならばC=∅であり、空写像が結論を満たす。以下X=∅とする。
整数n≥0と連続写像H:X→Rの対(n,H)であって、
∣H(x)∣≤r(1−(32)n)(x∈X),∣f(z)−H(z)∣≤r(32)n(z∈C)を満たすものの集合をSとする。Sの二つの元(n,H)、(n′,H′)に対して、n′=n+1であり、すべてのx∈Xについて∣H′(x)−H(x)∣≤3r(2/3)nであるとき、かつそのときに限り(n,H)R(n′,H′)と定める。値0をとる定数写像H0は連続であり、fの値が[−r,r]に入ることから(0,H0)∈Sである。とくにSは空でない。
(n,H)∈Sをとる。HのCへの制限は、包含写像ιC:C→X(§E2.12 定理 4.4 (1))との合成として§E2.12 命題 1.10により連続であるから、残差g=f−H∣Cは§E2.16 補題 1.2 (1)により連続であり、(n,H)∈Sにより∣g(z)∣≤r(2/3)nである。主張 4.1.1をgとρ=r(2/3)nへ適用すると、連続写像h:X→Rで
∣h(x)∣≤3r(32)n,∣g(z)−h(z)∣≤r(32)n+1を満たすものが得られる。H′=H+hとおくと、H′は§E2.16 補題 1.2 (1)により連続であり、
∣H′(x)∣≤∣H(x)∣+∣h(x)∣≤r(1−(32)n)+3r(32)n=r(1−(32)n+1)であり、z∈Cについて∣f(z)−H′(z)∣=∣g(z)−h(z)∣≤r(2/3)n+1である。したがって(n+1,H′)∈Sかつ(n,H)R(n+1,H′)であり、Sの任意の元はRに関する後続をもつ。(0,H0)を初期項として、すべてのn≥0について(n,Hn)R(n+1,Hn+1)を満たすSの列をとる。
各Hnは連続であり∣Hn∣≤rを満たすから、§E2.16 定義 2.1のCb(X)に属する。m>nとx∈Xに対して
∣Hm(x)−Hn(x)∣≤k=n∑m−1∣Hk+1(x)−Hk(x)∣≤k=n∑m−13r(32)k≤r(32)nであるからd∞(Hm,Hn)≤r(2/3)nである。∣2/3∣<1であるから§B1.7 定理 2.1によりr(2/3)n→0であり、(Hn)は§E2.5 定義 1.1に従うCb(X)の Cauchy 列である。§E2.16 定理 2.6によりCb(X)は完備であるから、(Hn)はあるF∈Cb(X)へ収束する。とくにF:X→Rは連続である。
x∈Xを固定する。§E2.16 系 3.2 (2)により実数列(Hm(x))m≥0はF(x)へ収束する。nを固定すると、(Hm(x)−Hn(x))m>nはF(x)−Hn(x)へ収束し、その項はすべて−r(2/3)n以上r(2/3)n以下であるから、§E2.5 補題 5.4により
∣F(x)−Hn(x)∣≤r(32)nである。
z∈Cに対して
∣f(z)−F(z)∣≤∣f(z)−Hn(z)∣+∣Hn(z)−F(z)∣≤2r(32)nであり、右辺はn→∞で0に収束するからF(z)=f(z)である。また各x∈Xについて
∣F(x)∣≤∣Hn(x)∣+∣F(x)−Hn(x)∣≤r(1−(32)n)+r(32)n=rであるからFの値は[−r,r]に入り、§E2.12 定理 4.4 (3)により、終域を[−r,r]に制限したFも連続である。▨
系 4.2 (Tietze の拡張定理(任意の有界閉区間に値をとる場合)).(X,O)を正規空間、C⊆Xを閉集合とし、a<bを実数とする。連続写像f:C→[a,b]に対して、連続写像F:X→[a,b]で、すべてのz∈CについてF(z)=f(z)を満たすものが存在する。
証明は演習とする(問題 9.9)。
5 実数値関数の拡張
定理 5.1 (Tietze の拡張定理(開区間に値をとる場合)).(X,O)を正規空間、C⊆Xを閉集合とし、r>0とする。連続写像f:C→(−r,r)に対して、連続写像F:X→(−r,r)で、すべてのz∈CについてF(z)=f(z)を満たすものが存在する。
証明. 包含写像との合成によってfを[−r,r]に値をとる連続写像とみなし、定理 4.1が与える拡張をG:X→[−r,r]とする。
包含写像との合成を通じてGを実数値連続写像とみなし、Z=G−1({−r,r})とおく。{−r,r}はRの閉集合であるから、§E2.12 命題 1.6によりZはXの閉集合である。f(C)⊆(−r,r)であるからZ∩C=∅である。定理 3.1をZとCへ適用し、Z上で0、C上で1をとる連続写像k:X→[0,1]をとる。包含写像との合成を通じてkを実数値連続写像とみなすと、F=kGは§E2.16 補題 1.2 (1)により連続であり、C上でfに一致する。
x∈Xをとる。∣G(x)∣<rならば∣F(x)∣≤∣G(x)∣<rである。∣G(x)∣=rならばx∈Zであり、k(x)=0からF(x)=0である。したがってF(X)⊆(−r,r)であり、§E2.12 定理 4.4 (3)により、終域を(−r,r)に制限したFも連続である。▨
実数直線は開区間(−1,1)と同相であり、§E2.12 補題 6.4が同相写像φ(t)=t/(1+∣t∣)とその逆写像ψ(s)=s/(1−∣s∣)を明示的に与える。これを用いると、開区間版から実数値の場合が従う。
定理 5.2 (Tietze の拡張定理).(X,O)を正規空間、C⊆Xを閉集合とし、Cには部分空間位相を入れる。連続写像f:C→Rに対して、連続写像F:X→Rで、すべてのz∈CについてF(z)=f(z)を満たすものが存在する。
証明.§E2.12 補題 6.4が与える同相写像φ:R→(−1,1)をとる。§E2.12 命題 1.10によりg=φ∘f:C→(−1,1)は連続である。定理 5.1をr=1として適用し、gの連続な拡張G:X→(−1,1)をとる。ψ=φ−1とおけば、§E2.12 命題 1.10によりF=ψ∘G:X→Rは連続であり、z∈Cについて
F(z)=ψ(G(z))=ψ(g(z))=ψ(φ(f(z)))=f(z)である。▨
6 半連続関数の間への連続関数の挿入
定理 6.1 (Katětov–Tong の挿入定理).Xを位相空間とする。次の二条件は同値である。
- Xは正規である。
- 上半連続関数u:X→Rと下半連続関数v:X→Rがすべてのx∈Xについてu(x)≤v(x)を満たすならば、連続関数f:X→Rで
u(x)≤f(x)≤v(x)(x∈X)
を満たすものが存在する。
証明.(1)を仮定する。
主張 6.1.1.r>0、ε>0とし、上半連続関数a:X→Rと下半連続関数b:X→Rが−r≤a≤b≤rを満たすとする。このとき、連続関数h:X→[−r,r]でa−ε≤h≤b+εを満たすものが存在する。
証明.2r/m<εとなる正の整数mをとり、δ=2r/m、tk=−r+kδ(0≤k≤m)とおく。各0≤k<mについて
Ak={x∈X:b(x)≤tk},Bk={x∈X:a(x)≥tk+1}は§E2.12 命題 2.2により閉集合である。a≤bとtk<tk+1によりAk∩Bk=∅なので、定理 3.1によりAk上で0、Bk上で1をとる連続関数wk:X→[0,1]をとる。
h=−r+δk=0∑m−1wkは連続であり、−r≤h≤rである。x∈Xをとる。tk+1≤a(x)となる添字ではwk(x)=1であり、b(x)≤tkとなる添字ではwk(x)=0である。等間隔の分点を数えると
a(x)−δh(x)≤−r+δ∣{k:0≤k<m, tk+1≤a(x)}∣≤h(x),≤−r+δ∣{k:0≤k<m, tk<b(x)}∣≤b(x)+δを得る。δ<εなので主張が従う。▨
X=∅ならば空写像が(2)を満たす。X=∅とし、上半連続関数u:X→Rと下半連続関数v:X→Rをu≤vを満たすようにとる。まず、あるr>0に対して−r≤u≤v≤rである場合を扱う。εn=r2−n、f0=0とおく。u−εn≤fn≤v+εnを満たす有界連続関数fnが得られたとき、
an=max{u−fn,−εn},bn=min{v−fn,εn}とおく。anは上半連続であり、bnは下半連続である。実際、各t∈Rについて
{u−fn<t}{v−fn>t}=q∈Q⋃({u<q}∩{fn>q−t}),=q∈Q⋃({v>q}∩{fn<q−t})であり、右辺は開集合である。また、{an<t}はt>−εnなら{u−fn<t}、t≤−εnなら空集合である。{bn>t}もt<εnなら{v−fn>t}、t≥εnなら空集合である。
u−fn≤v−fn、u−fn≤εn、−εn≤v−fnにより
−εn≤an≤bn≤εnである。主張 6.1.1をr=εn、ε=εn+1として適用し、連続関数hn:X→[−εn,εn]で
an−εn+1≤hn≤bn+εn+1を満たすものをとる。fn+1=fn+hnとすれば、u−εn+1≤fn+1≤v+εn+1である。初期関数f0も所要の不等式を満たすので、以上の構成を繰り返して(fn)n≥0を得る。
各fnは∣fn∣≤r+εn≤2rを満たす。m>nについて
∥fm−fn∥∞≤k=n∑m−1∥hk∥∞≤k=n∑m−1r2−k≤2r2−nであるから、(fn)は有界連続関数の空間の Cauchy 列である。§E2.16 定理 2.6により、一様極限f∈Cb(X)が存在する。各点でu−εn≤fn≤v+εnの極限をとるとu≤f≤vを得る。
一般のu,v:X→Rに対して、§E2.12 補題 6.4の同相写像φ(t)=t/(1+∣t∣)をとる。この式からφは狭義単調増加である。φ∘uは上半連続、φ∘vは下半連続であり、φ∘u≤φ∘vである。半連続性は、−1<t<1について
{φ∘u<t}={u<φ−1(t)},{φ∘v>t}={v>φ−1(t)}であり、残りの水準では逆像が空集合またはXとなることから従う。有界な場合の結論をr=1として適用すると、φ∘u≤g≤φ∘vを満たす連続関数gが存在する。両端の値は(−1,1)に属するのでgも(−1,1)に値をもち、f=φ−1∘gは所要の連続関数である。
(2)を仮定する。A,B⊆Xを互いに交わらない閉集合とし、u=1B、v=1X∖Aとおく。§E2.12 命題 2.8によりuは上半連続、vは下半連続であり、A∩B=∅によりu≤vである。挿入した連続関数はA上で0、B上で1をとり、[0,1]に値をもつ。命題 3.2によりXは正規である。▨
7 角を除いた Tychonoff の板
定義 7.1 (Tychonoff の板).§E2.17 注意 4.1のとおり、順序数ω1+1とω+1には§E2.17 順序位相を入れる。直積T=(ω1+1)×(ω+1)に積位相を入れた空間を Tychonoff の板 (Tychonoff plank) という。Tから角の一点(ω1,ω)を除いた部分空間
P=T∖{(ω1,ω)}を 角を除いた Tychonoff の板 (deleted Tychonoff plank) という。
命題 7.2.TとPはいずれも T3½ 空間である。
証明.
A={ω1}×[0,ω),B=[0,ω1)×{ω}と置く。いずれもPの部分集合である。
主張 7.3.1.AとBはPの閉集合であり、A∩B=∅である。
証明.Aの点の第一成分はω1であり、Bの点の第一成分はω1未満であるから、A∩B=∅である。
§E2.17 系 6.5によりω1+1とω+1は T1 空間であるから、§E2.15 命題 1.5により{ω1}はω1+1の閉集合であり、{ω}はω+1の閉集合である。§E2.12 命題 3.3 (1)により射影pr1,pr2は連続であるから、§E2.12 命題 1.6により
pr1−1({ω1})={ω1}×(ω+1),pr2−1({ω})=(ω1+1)×{ω}はいずれもTの閉集合である。
Pに属さないTの点は(ω1,ω)だけである。{ω1}×(ω+1)からこの点を除くと{ω1}×[0,ω)=Aが残り、(ω1+1)×{ω}からこの点を除くと[0,ω1)×{ω}=Bが残る。すなわち
A=({ω1}×(ω+1))∩P,B=((ω1+1)×{ω})∩Pであるから、§E2.12 命題 4.6によりAとBはPの閉集合である。▨
Pが正規であると仮定する。主張 7.3.1によりAとBは互いに交わらないPの閉集合であるから、§E2.15 定義 1.7により、A⊆U、B⊆V、U∩V=∅を満たすPの開集合U,Vが存在する。§E2.12 定義 4.1により、U=U∩P、V=V∩Pを満たすTの開集合U,Vが存在する。
n<ωを固定する。(ω1,n)∈A⊆Uであるから、§E2.14 補題 1.11と§E2.13 命題 1.2により(ω1,n)∈W1×W2⊆Uを満たす開集合W1⊆ω1+1、W2⊆ω+1が存在する。§E2.17 命題 4.3によりω1+1の点ω1の近傍基は(γ,ω1](γ<ω1)からなるから、(γn,ω1]⊆W1を満たすγn<ω1が存在する。n∈W2であるから
(γn,ω1]×{n}⊆W1×W2⊆Uである。各n<ωについてこのようなγnを一つずつ選び、列(γn)n<ωを得る。
{γn∣n<ω}はω1の可算部分集合であるから、§E2.17 補題 4.2により、すべてのn<ωについてγn≤βを満たす順序数β<ω1が存在する。§E1.21 定理 5.1によりω1は極限順序数であるから、α=β+1はω1未満である。すべてのn<ωについてγn≤β<α≤ω1であるから(α,n)∈(γn,ω1]×{n}⊆Uであり、α<ω1から(α,n)∈Pであるので(α,n)∈Uである。
α<ω1であるから(α,ω)∈B⊆Vである。ふたたび§E2.13 命題 1.2により、(α,ω)∈W1′×W2′⊆Vを満たす開集合W1′⊆ω1+1、W2′⊆ω+1が存在する。§E2.17 命題 4.3によりω+1の点ωの近傍基は(m,ω](m<ω)からなるから、(m,ω]⊆W2′を満たすm<ωが存在する。n=m+1と置くとn<ωかつm<nであるからn∈W2′であり、α∈W1′とあわせて(α,n)∈W1′×W2′⊆Vである。(α,n)∈Pであるから(α,n)∈Vである。
したがって(α,n)∈U∩Vである。一方でU∩V=∅であった。この二つは両立しないから、Pは正規でない。▨
8 正規性は直積で保たれない
定義 8.1 (閉離散集合).(X,O)を位相空間とし、E⊆Xとする。EがXの閉集合であり、かつ各x∈Eに対してW∩E={x}を満たすXの開集合Wが存在するとき、EをXの 閉離散集合 (closed discrete set) という。
補題 8.2 (Jones の補題).Xを正規空間、D⊆Xを稠密な部分集合、E⊆Xを閉離散な部分集合とする。このとき、基数の冪について
2∣E∣≤2∣D∣が成り立つ。
証明.A⊆Eをとる。X∖Aが開集合であることを示す。x∈X∖Aとする。x∈/Eならば、EがXの閉集合であるからX∖Eはxを含む開集合であり、A⊆EよりAと交わらない。x∈E∖Aならば、定義 8.1によりW∩E={x}を満たす開集合Wが存在し、A⊆Eかつx∈/AであるからW∩A⊆{x}∩A=∅である。いずれの場合もxはX∖Aに含まれる開集合をもつから、§E2.11 補題 2.6によりX∖Aは開集合である。したがってAはXの閉集合であり、同じ議論によりE∖AもXの閉集合である。
AとE∖Aは互いに交わらないXの閉集合であるから、§E2.15 定義 1.7により、A⊆UA、E∖A⊆VA、UA∩VA=∅を満たす開集合の対(UA,VA)が存在する。各A⊆Eに対して対(UA,VA)を一つずつ選び、写像
Φ:P(E)→P(D),Φ(A)=UA∩Dを定める。
Φが単射であることを示す。A,B⊆EをA=Bを満たす二つの部分集合とする。AとBの役割を入れ替えてよいので、p∈A∖Bを満たすpが存在するとしてよい。p∈A⊆UAであり、p∈E∖B⊆VBであるから、UA∩VBはpを含む空でない開集合である。DはXで稠密であるから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりd∈UA∩VB∩Dを満たす点dが存在する。ここでΦ(A)=Φ(B)と仮定すると、d∈UA∩D=UB∩Dからd∈UBであり、d∈VBとあわせてUB∩VB=∅となる。これはUB∩VB=∅に反する。したがってΦ(A)=Φ(B)である。
Φは単射であるから、§E1.18 定義 1.1により∣P(E)∣≤∣P(D)∣である。§E1.22 命題 1.5により∣P(E)∣=2∣E∣、∣P(D)∣=2∣D∣であるから、2∣E∣≤2∣D∣が成り立つ。▨
定義 8.3 (Sorgenfrey 平面). Sorgenfrey 直線をRℓと書く。§E2.17 命題 8.2により、半開区間[a,b)(a<bは実数)の全体はRℓの開基である。直積Rℓ×Rℓに積位相を入れた空間を Sorgenfrey 平面 (Sorgenfrey plane) という。
定理 8.4. Sorgenfrey 平面は正規でない。とくに、正規空間の二つの直積は正規であるとは限らない。
証明.X=Rℓ×Rℓと置く。
§E2.17 系 8.4によりQはRℓで稠密であるから、§E2.14 補題 1.12によりD=Q×QはXで稠密である。
E={(x,−x)∣x∈R}がXの閉離散集合であることを示す。(u,v)∈X∖Eをとるとu+v=0である。ε=∣u+v∣/2>0と置く。§E2.17 命題 8.2により[u,u+ε)と[v,v+ε)はRℓの開集合であるから、§E2.14 補題 1.11によりR=[u,u+ε)×[v,v+ε)はXの開集合である。(s,t)∈Rならばu≤s<u+εかつv≤t<v+εであるから
u+v≤s+t<u+v+2εである。u+v>0ならばs+t≥u+v>0であり、u+v<0ならばu+v+2ε=u+v+∣u+v∣=0からs+t<0である。いずれの場合もs+t=0であるからR∩E=∅である。よってX∖Eの各点はX∖Eに含まれる開集合をもち、§E2.11 補題 2.6によりX∖Eは開集合であるから、EはXの閉集合である。x∈Rに対してW=[x,x+1)×[−x,−x+1)と置く。Rと同じ理由によりWはXの開集合である。(y,−y)∈Wならばy≥xかつ−y≥−xすなわちy≤xであるからy=xである。したがってW∩E={(x,−x)}であり、定義 8.1によりEは閉離散である。
x↦(x,−x)はRからEへの全単射であるから、§E1.18 定義 1.1により∣E∣=∣R∣であり、§E1.22 定理 5.3により∣E∣=cである。§E1.18 定理 4.1によりQは可算であるから、§E1.18 定理 5.2によりD=Q×Qも可算であり、§E1.22 定義 5.1により2∣D∣=2ℵ0=cである。
Xが正規であると仮定する。補題 8.2をDとEへ適用すると
2c=2∣E∣≤2∣D∣=cを得る。一方、§E1.22 系 4.1によりc<2cであり、§E1.18 定義 1.1で定める狭義比較により、これは2c≰cを含む。2c≤cと2c≰cは両立しない。したがってXは正規でない。
§E2.17 系 8.3によりRℓは正規であるから、Xは正規空間の二つの直積であって正規でないものである。▨
9 演習
問題 9.1 (二進有理数の段と稠密性).補題 2.3の証明を完成させよ。
解答.
補題 2.3 (1)を示す。k/2n=2k/2n+1であるからDn⊆Dn+1である。Dn+1の元でDnに属さないものは、分子が奇数であるものに限る。0≤k≤2n+1の奇数は一意に2j+1と書け、範囲は0≤j<2nとなる。q=(2j+1)/2n+1と置く。分母を2n+1に揃えるとDnの元の分子は偶数であり、2j+1を挟む最も近い偶数は2jと2j+2であるから、rq=j/2n=2j/2n+1はq未満のDnの元のうち最大、sq=(j+1)/2n=(2j+2)/2n+1はqより大きいDnの元のうち最小であり、両者はDnで隣り合う。逆にDnの隣り合う二元はこの形のj/2n<(j+1)/2nに限り、その間にあるDn+1の元は分子が2jと2j+2の間にある奇数に対応するものだけであるから、qただ一つである。
補題 2.3 (2)を示す。2n≥nがすべての正の整数nについて帰納法で成り立つから、§D1.4 命題 2.1によりn>1/(b−a)を満たす正の整数nを取れば2−n≤1/n<b−aである。§E2.5 補題 6.1によりm−1≤2na<mを満たす整数mを取ると、2na<m≤2na+1<2nbである。したがってq=m/2nはa<q<bを満たす。0≤a<b≤1であるから0<q<1であり、q∈Dである。▨
問題 9.2 (Urysohn 関数の零点集合).定理 3.1のfについて、f−1({0})=Aが一般には成り立たないことを、例によって示せ。
解答.
X=R、A={0}、B={1}とし、f(x)=min{1,max{0,x}}と置く。通常の距離をもつRは§E2.15 定理 3.2 (2)により T4 空間である。f(0)=0、f(1)=1であり、∣f(x)−f(y)∣≤∣x−y∣であるから、§E2.4 命題 3.4によりfは連続である。一方、f−1({0})=(−∞,0]であってAと一致しない。したがって、Urysohn の補題はA⊆f−1({0})を与えるが、等号までは主張しない。等号が成り立つためには、Aが可算個の開集合の共通部分であることが必要である。実際、[0,1/n)は[0,1]の開集合であるからf−1([0,1/n))はXの開集合であり、f−1({0})=⋂n≥1f−1([0,1/n))である。逆に、すべての閉集合が可算個の開集合の共通部分として書ける正規空間では、閉集合ごとに等号を達成するfをとることができる。この類の空間は後続の単元が扱う。▨
問題 9.3 (Tietze の一段近似の評価).Xを正規空間、C⊆Xを閉集合とし、ρ>0と、すべてのz∈Cについて∣g(z)∣≤ρを満たす連続写像g:C→Rをとる。定理 4.1の証明は、しきい値と補正関数の値をρ/3にとって、∣h∣≤ρ/3と∣g−h∣≤2ρ/3を満たす連続写像h:X→Rを作っている。しきい値をt∈(0,ρ]に取り替えて同じ構成を行い、残差の上界を三つの場合に分けて求めよ。その上界を最小にするtがρ/3であることを示せ。
解答.
しきい値をt∈(0,ρ]とし、同じ構成をtに対して行う。A={z∈C∣g(z)≤−t}とB={z∈C∣g(z)≥t}は、gの連続性と§E2.12 命題 1.6によりCの閉集合であり、§E2.12 命題 4.6とCがXで閉じていることからXの閉集合でもある。この二つは互いに交わらない。系 3.5を[−t,t]へ適用すると、A上で−t、B上でtをとる連続写像h:X→[−t,t]が得られる。補正の大きさは∣h(x)∣≤tである。
残差を三つの場合に分けて評価する。g(z)≤−tの場合、h(z)=−tであり、−ρ≤g(z)≤−tから−(ρ−t)≤g(z)−h(z)≤0、すなわち∣g(z)−h(z)∣≤ρ−tである。g(z)≥tの場合、h(z)=tであり、t≤g(z)≤ρから0≤g(z)−h(z)≤ρ−t、すなわち∣g(z)−h(z)∣≤ρ−tである。∣g(z)∣<tの場合、∣h(z)∣≤tとあわせて∣g(z)−h(z)∣≤∣g(z)∣+∣h(z)∣<2tである。したがって残差の上界はmax{ρ−t,2t}である。
t↦ρ−tは狭義単調減少、t↦2tは狭義単調増加であるから、max{ρ−t,2t}は二つの値が一致するtで最小になる。ρ−t=2tからt=ρ/3であり、このとき上界は2ρ/3である。t<ρ/3ならばρ−t>2ρ/3、t>ρ/3ならば2t>2ρ/3であるから、ρ/3以外のしきい値はより大きい上界しか与えない。これがしきい値と補正関数の値をρ/3に選ぶ理由であり、t=ρ/3とした結果が定理 4.1の証明の一段の近似である。▨
解答.
通常の距離をもつX=Rをとる。Xは§E2.15 定理 3.2 (2)により正規空間である。C=R∖{0}とおく。
CはXの閉集合ではない。実際、X∖C={0}である。0を含む開集合Uに対して、§E2.2 定義 1.1により(−δ,δ)=B(0,δ)⊆Uを満たすδ>0が存在するので、Uは0以外の点を含みU={0}である。したがって{0}は開集合ではない。
f:C→[−1,1]をf(x)=x/∣x∣で定める。x∈Cとε>0をとる。x>0ならばW=(0,∞)、x<0ならばW=(−∞,0)とおく。WはXの開集合であってW⊆Cであるから、W=W∩CはCの開集合であり、x∈Wである。y∈Wについてf(y)=f(x)であるから∣f(y)−f(x)∣=0<εである。よって§E2.12 補題 1.9によりfは実数値写像として連続であり、§E2.12 定理 4.4 (3)により終域を[−1,1]に制限しても連続である。
連続写像F:X→RがC上でfに一致すると仮定する。§E2.12 補題 1.9をF、点0、ε=1へ適用すると、0の開近傍W0であって、y∈W0について∣F(y)−F(0)∣<1を満たすものが存在する。§E2.2 定義 1.1により(−δ,δ)⊆W0を満たすδ>0をとる。δ/2と−δ/2はともにW0∩Cに属し、F(δ/2)=f(δ/2)=1、F(−δ/2)=f(−δ/2)=−1である。したがって
2=∣F(δ/2)−F(−δ/2)∣≤∣F(δ/2)−F(0)∣+∣F(0)−F(−δ/2)∣<2となり、矛盾である。よってそのようなFは存在しない。
Xが正規空間でありfが連続であるから、この例が満たさない定理 5.2の仮定はCが閉集合であることだけである。fの値は[−1,1]に収まり、[−1,1]に値をとる連続な拡張があれば包含写像との合成によって実数値の連続な拡張が得られるので、同じ例は系 4.2についても閉集合という仮定を落とすことができないことを示す。閉性が働くのは定理 4.1の証明の一段の近似であり、そこではCの閉集合AとBが§E2.12 命題 4.6とCの閉性によりXの閉集合になることによって、系 3.5をXにおいて適用することができる。▨
問題 9.5 (開区間値への修正段階).定理 4.1の結論を満たす拡張がCの外で端点±rをとる例を挙げよ。さらに、端点の値を±(r−ε)で切り落とす素朴な方法が拡張であることを壊すのに対して、定理 5.1の証明が用いるkを掛ける操作がこれを壊さない理由を述べよ。
解答.
定理 4.1が与えるのは終域を[−r,r]とする拡張であり、その値が端点±rをとらないことは主張に含まれない。実際、通常の距離をもつX=Rは§E2.15 定理 3.2 (2)により正規空間であり、C=(−∞,0]は補集合(0,∞)が開集合であるから閉集合である。r=1とし、f:C→(−1,1)を定数0とする。G0(x)=min{1,max{0,x}}は∣G0(x)−G0(y)∣≤∣x−y∣を満たすので§E2.4 命題 3.4により連続であり、§E2.12 定理 4.4 (3)により[−1,1]に値をとる写像としても連続で、C上でfに一致する。しかしG0(1)=1である。すなわち、有界閉区間版の結論を満たす拡張がCの外で端点をとることがある。
以下、定理 5.1の証明と同じく、連続写像f:C→(−r,r)に対して定理 4.1が与える拡張をG:X→[−r,r]とする。切り落としの操作をTε(s)=min{r−ε,max{−(r−ε),s}}(0<ε<r)とすると、Tε∘Gの値は[−(r−ε),r−ε]⊆(−r,r)に入るが、∣f(z)∣>r−εを満たすz∈Cが存在すればTε(G(z))=f(z)であり、Tε∘Gはfの拡張でなくなる。そのようなfは実在する。別の例としてX=C=R(Rは自身の閉集合である)、r=1をとり、fを§E2.12 補題 6.4のφ(t)=t/(1+∣t∣)とする。0<ε<1に対してt=1/εとおくとφ(t)=1/(1+ε)であり、(1−ε)(1+ε)=1−ε2<1からφ(t)>1−εである。したがって、どのεを選んでも切り落としは拡張性を保たない。
kを掛ける操作が拡張性を保つのは、値を変える場所がCと交わらないからである。包含写像との合成を通じてGを実数値連続写像とみなすと(§E2.12 定理 4.4 (1))、{−r,r}はRの閉集合であるから、§E2.12 命題 1.6によりZ=G−1({−r,r})はXの閉集合である。z∈CについてG(z)=f(z)∈(−r,r)であるからZ∩C=∅であり、定理 3.1がZ上で0、C上で1をとる連続写像k:X→[0,1]を与える。C上でk=1であることがkGをfの拡張に保ち、Z上でk=0であることが端点の値を消す。kGの値が(−r,r)に収まることの確認は定理 5.1の証明が行う。切り落としが値の大きさだけを見てCの上の値まで動かすのに対して、kを掛ける操作は端点をとる点の全体Zを閉集合として取り出し、Cから分離したうえでC上の値を保ってZ上の値を0にする。▨
問題 9.6 (角の一点を除くことの必要性). 板の全体TにおいてA′={ω1}×[0,ω]とB′=[0,ω1]×{ω}と置く。A′とB′がTの閉集合であることを示し、定理 7.3の証明をPからTへ移したときに失われる仮定がどれであるかを述べよ。
解答.
§E2.17 系 6.5によりω1+1とω+1は T1 空間であるから、§E2.15 命題 1.5により[0,ω1)=(ω1+1)∖{ω1}はω1+1の開集合であり、[0,ω)=(ω+1)∖{ω}はω+1の開集合である。§E2.12 命題 3.3 (1)により射影pr1,pr2は連続であるから、T∖A′=pr1−1([0,ω1))とT∖B′=pr2−1([0,ω))はいずれもTの開集合であり、A′とB′はTの閉集合である。
定理 7.3の証明が導くのは、Aを含む開集合とBを含む開集合が交わることである。この論法はPをT、AをA′、BをB′に置き換えてもそのまま通り、A′⊆UとB′⊆Vを満たすTの開集合U,Vに対してU∩V=∅を与える。失われるのは二つの閉集合が互いに交わらないという仮定である。実際(ω1,ω)∈A′∩B′であるから、正規性はA′とB′の対について何も要求せず、この結論はTが正規であるかどうかについて何も述べない。角の一点を除くとAとBは互いに交わらないPの閉集合になり、同じ論法が正規性の否定になる。▨
問題 9.7 (Sorgenfrey 直線の閉離散集合の濃度). Sorgenfrey 直線Rℓには、濃度がcである閉離散集合が存在しないことを、補題 8.2から示せ。
解答.
§E2.17 系 8.3によりRℓは正規であり、§E2.17 系 8.4によりQはRℓで稠密である。
E⊆Rℓを閉離散集合とし、∣E∣=cであると仮定する。§E1.18 定理 4.1によりQは可算であるから、§E1.22 定義 5.1により2∣Q∣=2ℵ0=cである。補題 8.2をD=QとEへ適用すると2c≤cを得る。一方§E1.22 系 4.1によりc<2cであり、§E1.18 定義 1.1で定める狭義比較により2c≰cであるから、この二つは両立しない。ゆえに濃度cの閉離散集合は存在しない。定理 8.4の証明の反対角線はRℓ×Rℓの濃度cの閉離散集合であったから、閉離散集合の濃度を押し上げているのは直積をとる操作である。▨
解答.
互いに交わらない閉集合A,Bを取る。仮定のfに対して
V=f−1([0,1/3)),W=f−1((2/3,1])と置く。§E2.12 定義 4.1により[0,1/3)と(2/3,1]は[0,1]の互いに交わらない開集合である。したがってV,Wは開集合であり、A⊆V、B⊆Wを満たす。§E1.1 命題 4.4によりV∩W=∅であるから、Xは正規である。▨
解答.
c=(a+b)/2、r=(b−a)/2とおく。§E2.12 定理 4.4 (1)により、包含写像との合成を通じてfを連続写像C→Rとみなす。このとき実数値写像f0=f−cは§E2.16 補題 1.2 (1)により連続であり、その値は[−r,r]に入る。§E2.12 定理 4.4 (3)によりf0:C→[−r,r]も連続である。定理 4.1が与える拡張をF0:X→[−r,r]とする。包含写像との合成を通じてF0を実数値連続写像とみなせば、F=F0+cは連続であり、C上でfに一致する。さらにF(X)⊆[c−r,c+r]=[a,b]であるから、§E2.12 定理 4.4 (3)により、終域を[a,b]に制限したFも連続である。▨