§B1.7数列の極限

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本単元はここまで、有限個の項についての計算を扱ってきました。本記事は、番号nnを限りなく大きくしたときに項ana_nがどのように振る舞うかを扱います。数列の振る舞いを、収束、正の無限大への発散、負の無限大への発散、振動の四つに分けて述べ、そのうえで極限値を求める計算を整えます。

本記事は、極限を「番号を限りなく大きくしたときに項が限りなく近づく値」という意味で用います。「限りなく近づく」をε\varepsilonとNNによって精密に定義することは、「ε-論法と基礎解析」が扱います。本記事は、収束することを認めたうえで極限値を求める段階です。一般項を求めることができない数列について、収束することそのものを示す方法は、「極限の存在について」が扱います。

1 収束、発散、振動

定義 1.1 (数列の極限). 数列{an}\{a_n\}について、nnを限りなく大きくしたときにana_nがある一定の値α\alphaに限りなく近づくならば、{an}\{a_n\}はα\alphaに収束するといい、

lim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha

と書く。このα\alphaを{an}\{a_n\}の極限値という。収束しない数列は発散するという。発散する場合は、さらに次の三つに分ける。

  1. nnを限りなく大きくしたときにana_nが限りなく大きくなるならば、{an}\{a_n\}は正の無限大に発散するといい、lim⁡n→∞an=∞\lim_{n\to\infty} a_n = \inftyと書く。
  2. nnを限りなく大きくしたときにana_nが限りなく小さくなるならば、{an}\{a_n\}は負の無限大に発散するといい、lim⁡n→∞an=−∞\lim_{n\to\infty} a_n = -\inftyと書く。
  3. 収束もせず、正の無限大にも負の無限大にも発散しないならば、{an}\{a_n\}は振動するという。

注意 1.2 (極限値は数列の項ではない). 極限値α\alphaは、その数列のどれかの項の値であるとは限らない。an=1na_n = \dfrac1nはどのn≥1n \ge 1についてもan≠0a_n \ne 0であるが、lim⁡n→∞an=0\lim_{n\to\infty} a_n = 0である。「ana_nが00に限りなく近づく」ことと「あるnnについてana_nが00に等しい」ことを、同じものとして扱わない。

注意 1.3 (∞\inftyは数ではない). 記号∞\inftyは、ana_nが限りなく大きくなるという振る舞いを表すために用いるものであり、一つの数を表すものではない。lim⁡n→∞an=∞\lim_{n\to\infty} a_n = \inftyは、極限値が∞\inftyという数であることを述べているのではなく、{an}\{a_n\}が正の無限大に発散することを述べている。

2 r nr^{\,n}の極限

等比数列の一般項はa r n−1a\,r^{\,n-1}の形なので、等比数列の極限はr nr^{\,n}の極限に帰着します。r nr^{\,n}の振る舞いは、rrの値によって五つに分かれます。

定理 2.1 (r nr^{\,n}の極限). 実数rrについて、数列{r n}\{r^{\,n}\}の振る舞いは次のとおりである。

  1. r>1r > 1のとき、正の無限大に発散する。
  2. r=1r = 1のとき、11に収束する。
  3. ∣r∣<1|r| < 1のとき、00に収束する。
  4. r=−1r = -1のとき、振動する。
  5. r<−1r < -1のとき、振動する。

したがって、{r n}\{r^{\,n}\}が収束するのは−1<r≤1-1 < r \le 1のときに限る。

証明.r>1r > 1のとき、r=1+hr = 1 + hを満たすh>0h > 0を取ることができます。数学的帰納法により、すべてのn≥1n \ge 1について(1+h) n≥1+nh(1+h)^{\,n} \ge 1 + nhが成り立ちます。h>0h > 0であるから1+nh1 + nhはnnを限りなく大きくすると限りなく大きくなり、r nr^{\,n}も限りなく大きくなります。よって 1 が成り立ちます。

r=1r = 1のとき、すべてのnnについてr n=1r^{\,n} = 1です。よって 2 が成り立ちます。

∣r∣<1|r| < 1かつr≠0r \ne 0のとき、∣1r∣>1\left|\dfrac1r\right| > 1です。上で示したことから1∣r∣ n=∣1r∣ n\dfrac{1}{|r|^{\,n}} = \left|\dfrac1r\right|^{\,n}は限りなく大きくなるので、∣r∣ n|r|^{\,n}は00に限りなく近づきます。r=0r = 0のときはすべてのnnについてr n=0r^{\,n} = 0です。よって 3 が成り立ちます。

r=−1r = -1のとき、nnが奇数ならばr n=−1r^{\,n} = -1、nnが偶数ならばr n=1r^{\,n} = 1です。一定の値に近づくことはなく、限りなく大きくも小さくもならないので、振動します。

r<−1r < -1のとき、∣r∣>1|r| > 1であるから∣r∣ n|r|^{\,n}は限りなく大きくなり、r nr^{\,n}の符号はnnの偶奇によって交互に変わります。よって収束せず、正の無限大にも負の無限大にも発散しないので、振動します。▨

例 2.2 (公比の値で判定する).(23) n\left(\dfrac23\right)^{\,n}は∣23∣<1\left|\dfrac23\right| < 1であるから00に収束する。(−12) n\left(-\dfrac12\right)^{\,n}も∣−12∣<1\left|-\dfrac12\right| < 1であるから00に収束する。(−32) n\left(-\dfrac32\right)^{\,n}は−32<−1-\dfrac32 < -1であるから振動する。(32) n\left(\dfrac32\right)^{\,n}は32>1\dfrac32 > 1であるから正の無限大に発散する。

3 極限の四則計算

収束する数列どうしを足し合わせたり掛け合わせたりして作った数列については、極限値をもとの極限値から計算することができます。

定理 3.1 (極限の四則計算). 数列{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}がともに収束し、lim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha、lim⁡n→∞bn=β\lim_{n\to\infty} b_n = \betaであるとする。このとき次が成り立つ。

  1. 定数kk、llについて、lim⁡n→∞(k an+l bn)=kα+lβ\lim_{n\to\infty}(k\,a_n + l\,b_n) = k\alpha + l\betaである。
  2. lim⁡n→∞anbn=αβ\lim_{n\to\infty} a_n b_n = \alpha\betaである。
  3. β≠0\beta \ne 0であり、かつすべてのn≥1n \ge 1についてbn≠0b_n \ne 0であるならば、lim⁡n→∞anbn=αβ\lim_{n\to\infty}\dfrac{a_n}{b_n} = \dfrac{\alpha}{\beta}である。

注意 3.2 (前提は「両方が収束すること」である).定理 3.1は、{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}の両方が収束することを前提としている。どちらか一方でも発散する場合には、この規則を用いることはできない。商については、極限値β\betaが00でないことに加えて、各項bnb_nが00でないことも必要である。

大小関係についても、収束する二つの数列のあいだで次が成り立ちます。

定理 3.3 (極限の大小関係の保存). 数列{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}がともに収束し、lim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha、lim⁡n→∞bn=β\lim_{n\to\infty} b_n = \betaであるとする。すべてのn≥1n \ge 1についてan≤bna_n \le b_nが成り立つならば、α≤β\alpha \le \betaである。

注意 3.4 (等号が消えないこと、および本記事が認めて用いること). すべてのnnについてan<bna_n < b_nという狭義の不等号が成り立っていても、極限ではα<β\alpha < \betaとはかぎらない。an=0a_n = 0、bn=1nb_n = \dfrac1nはどのnnでもan<bna_n < b_nを満たすが、極限はどちらも00である。結論として書くことができるのはα≤β\alpha \le \betaまでである。

定理 3.1と定理 3.3は、本記事では認めて用いる。どちらも極限値を計算したり比べたりするための規則であり、その証明はε\varepsilonを用いた収束の定義から行う。証明は「極限の性質の証明」が扱う。

例 3.5 (条件を外れた計算が誤りになる場合).an=n2a_n = n^2、bn=nb_n = nは、ともに正の無限大に発散する。この二つに定理 3.1の 1 を当てはめて、lim⁡n→∞(an−bn)\lim_{n\to\infty}(a_n - b_n)を「∞−∞\infty - \inftyであるから00」と計算することはできない。実際、an−bn=n2−n=n(n−1)a_n - b_n = n^2 - n = n(n-1)は正の無限大に発散する。

同じく両方が正の無限大に発散する組であっても、差の振る舞いは組ごとに異なる。an=n+1a_n = n + 1、bn=nb_n = nの場合はan−bn=1a_n - b_n = 1であって11に収束し、an=na_n = n、bn=n2b_n = n^2の場合はan−bn=n−n2a_n - b_n = n - n^2であって負の無限大に発散する。

4 不定形を整理する

定義 4.1 (不定形).{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}がともに正の無限大に発散するとき、an−bna_n - b_nやanbn\dfrac{a_n}{b_n}の極限は、二つの数列の選び方によって変わり、それぞれが発散するという事実だけからは定まらない。このように、各部分の極限だけからは全体の極限が定まらない形を不定形という。∞−∞\infty - \infty、∞∞\dfrac{\infty}{\infty}、0×∞0 \times \infty、00\dfrac00がこれにあたる。

不定形は、答えではなく、式を変形する必要がある状態を表します。分数式では分子と分母を分母の最高次の項で割り、根号を含む差では有理化して、定理 3.1を用いることのできる形へ直します。

例 4.2 (分数式の極限).lim⁡n→∞3n2−n2n2+1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2 - n}{2n^2 + 1}は∞∞\dfrac{\infty}{\infty}の不定形である。分子と分母をn2 (≠0)n^2\ (\ne 0)で割ると

3n2−n2n2+1=3−1n2+1n2\frac{3n^2 - n}{2n^2 + 1} = \frac{3 - \dfrac1n}{2 + \dfrac{1}{n^2}}

となる。lim⁡n→∞1n=0\lim_{n\to\infty}\dfrac1n = 0かつlim⁡n→∞1n2=0\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n^2} = 0であり、分母の極限22は00ではなく、各項の分母2+1n22 + \dfrac1{n^2}も00ではないから、定理 3.1の 3 を用いることができ、極限は32\dfrac32である。

例 4.3 (根号を含む差の極限).lim⁡n→∞(n2+n−n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\sqrt{n^2 + n} - n\right)は∞−∞\infty - \inftyの不定形である。n≥1n \ge 1のときn2+n+n>0\sqrt{n^2 + n} + n > 0であるから、この式にn2+n+n\sqrt{n^2 + n} + nを掛けて割ると

n2+n−n=(n2+n)−n2n2+n+n=nn2+n+n=11+1n+1\sqrt{n^2 + n} - n = \frac{(n^2 + n) - n^2}{\sqrt{n^2 + n} + n} = \frac{n}{\sqrt{n^2 + n} + n} = \frac{1}{\sqrt{1 + \dfrac1n} + 1}

となる。最後の等号では、分子と分母をn (>0)n\ (> 0)で割った。lim⁡n→∞1n=0\lim_{n\to\infty}\dfrac1n = 0であるから、極限は12\dfrac12である。

5 Σ\Sigmaを含む式の極限

Σ\Sigmaを含む式の極限は、和の公式によってnnの式へ直してから求めます。

例 5.1 (Σ\Sigmaを含む式の極限).lim⁡n→∞1n3∑k=1nk2\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n^3}\sum_{k=1}^{n}k^2を求める。∑k=1nk2=n(n+1)(2n+1)6\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}であるから

1n3∑k=1nk2=n(n+1)(2n+1)6n3=16(1+1n)(2+1n)\frac{1}{n^3}\sum_{k=1}^{n}k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6n^3} = \frac16\left(1 + \frac1n\right)\left(2 + \frac1n\right)

である。lim⁡n→∞1n=0\lim_{n\to\infty}\dfrac1n = 0であるから、定理 3.1の 2 により、極限は16⋅1⋅2=13\dfrac16\cdot 1\cdot 2 = \dfrac13である。

注意 5.2 (項ごとに極限を取らない).例 5.1で、和の各項k2n3\dfrac{k^2}{n^3}は、kkを固定してnnを限りなく大きくすると00に近づく。しかし、そこから和の極限が00であると結論することはできない。定理 3.1の 1 が扱うのは、nnによらない個数の項の和である。Σ\Sigmaを含む式では項の個数そのものがnnとともに増えるので、この規則を項ごとに当てはめることはできない。先に和をnnの式へ直してから極限を取る。

6 広義単調と有界

漸化式で定まる数列の極限を扱う前に、数列の振る舞いを述べるための語を導入します。

定義 6.1 (広義単調と有界). 数列{an}\{a_n\}について、次のように定める。

  • すべてのn≥1n \ge 1についてan≤an+1a_n \le a_{n+1}が成り立つとき、{an}\{a_n\}は広義単調増加であるという。すべてのn≥1n \ge 1についてan+1≤ana_{n+1} \le a_nが成り立つとき、{an}\{a_n\}は広義単調減少であるという。広義単調増加または広義単調減少である数列を広義単調であるという。
  • ある実数MMが存在して、すべてのn≥1n \ge 1についてan≤Ma_n \le Mが成り立つとき、{an}\{a_n\}は上に有界であるという。ある実数mmが存在して、すべてのn≥1n \ge 1についてm≤anm \le a_nが成り立つとき、{an}\{a_n\}は下に有界であるという。上に有界かつ下に有界である数列を有界であるという。

この二つの語は、収束することを示すために使います。広義単調増加であって上に有界である数列は収束します。この主張と、その根拠である実数の連続性は「極限の存在について」が扱います。本記事は、語を導入するところまでとします。

7 漸化式で定まる数列の極限

漸化式で定まる数列については、まず本単元で扱った変形によって一般項をnnの式で求めることができるかどうかを調べます。求めることができる場合は、その式の極限を取ります。

例 7.1 (一般項を求めてから極限を取る).a1=0a_1 = 0、an+1=12an+1a_{n+1} = \dfrac12 a_n + 1(n≥1n \ge 1)とする。α=12α+1\alpha = \dfrac12\alpha + 1の解はα=2\alpha = 2であるからan+1−2=12 (an−2)a_{n+1} - 2 = \dfrac12\,(a_n - 2)であり、a1−2=−2a_1 - 2 = -2より

an−2=−2(12) n−1a_n - 2 = -2\left(\frac12\right)^{\,n-1}

である。∣12∣<1\left|\dfrac12\right| < 1であるから定理 2.1の 3 により(12) n−1\left(\dfrac12\right)^{\,n-1}は00に収束し、lim⁡n→∞an=2\lim_{n\to\infty} a_n = 2である。

本単元で扱った変形から一般項を直ちに得られない場合は、収束することを仮定したうえで、極限値が満たす関係を導きます。

例 7.2 (収束を仮定して極限値が満たす関係を導く).a1=2a_1 = 2、an+1=12(an+2an)a_{n+1} = \dfrac12\left(a_n + \dfrac{2}{a_n}\right)(n≥1n \ge 1)とする。a1>0a_1 > 0であり、an>0a_n > 0ならばan+1>0a_{n+1} > 0であるから、すべてのn≥1n \ge 1についてan>0a_n > 0であり、2an\dfrac{2}{a_n}を書くことができる。

本記事では、この数列の一般項を求めることによる方法を用いません。そこで、{an}\{a_n\}が正の値に収束することを仮定し、その極限値をα (>0)\alpha\ (> 0)とする。{an+1}\{a_{n+1}\}は{an}\{a_n\}の番号を一つずらしたものであるから、同じ値α\alphaに収束する。α≠0\alpha \ne 0かつすべてのnnでan≠0a_n \ne 0であるから、漸化式の両辺に定理 3.1を用いることができて

α=12(α+2α)\alpha = \frac12\left(\alpha + \frac{2}{\alpha}\right)

を得る。両辺に2α2\alphaを掛けると2α2=α2+22\alpha^2 = \alpha^2 + 2、すなわちα2=2\alpha^2 = 2であり、α>0\alpha > 0と合わせてα=2\alpha = \sqrt2である。

注意 7.3 (この議論が示したこと).例 7.2が示したのは、「{an}\{a_n\}が正の値に収束するならば、その極限値は2\sqrt2である」という主張である。{an}\{a_n\}が収束すること自体は示していない。収束することを示すには、この数列が広義単調減少であって下に有界であることから収束を導く必要がある。その根拠となる実数の連続性は「実数の連続性」が、広義単調で有界な数列が収束することは「単調収束定理」が扱う。

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