1 収束、発散、振動
定義 1.1 (数列の極限). 数列{an}について、nを限りなく大きくしたときにanがある一定の値αに限りなく近づくならば、{an}はαに収束するといい、
n→∞liman=αと書く。このαを{an}の極限値という。収束しない数列は発散するという。発散する場合は、さらに次の三つに分ける。
- nを限りなく大きくしたときにanが限りなく大きくなるならば、{an}は正の無限大に発散するといい、limn→∞an=∞と書く。
- nを限りなく大きくしたときにanが限りなく小さくなるならば、{an}は負の無限大に発散するといい、limn→∞an=−∞と書く。
- 収束もせず、正の無限大にも負の無限大にも発散しないならば、{an}は振動するという。
2 rnの極限
等比数列の一般項はarn−1の形なので、等比数列の極限はrnの極限に帰着します。rnの振る舞いは、rの値によって五つに分かれます。
定理 2.1 (rnの極限). 実数rについて、数列{rn}の振る舞いは次のとおりである。
- r>1のとき、正の無限大に発散する。
- r=1のとき、1に収束する。
- ∣r∣<1のとき、0に収束する。
- r=−1のとき、振動する。
- r<−1のとき、振動する。
したがって、{rn}が収束するのは−1<r≤1のときに限る。
証明.r>1のとき、r=1+hを満たすh>0を取ることができます。数学的帰納法により、すべてのn≥1について(1+h)n≥1+nhが成り立ちます。h>0であるから1+nhはnを限りなく大きくすると限りなく大きくなり、rnも限りなく大きくなります。よって 1 が成り立ちます。
r=1のとき、すべてのnについてrn=1です。よって 2 が成り立ちます。
∣r∣<1かつr=0のとき、r1>1です。上で示したことから∣r∣n1=r1nは限りなく大きくなるので、∣r∣nは0に限りなく近づきます。r=0のときはすべてのnについてrn=0です。よって 3 が成り立ちます。
r=−1のとき、nが奇数ならばrn=−1、nが偶数ならばrn=1です。一定の値に近づくことはなく、限りなく大きくも小さくもならないので、振動します。
r<−1のとき、∣r∣>1であるから∣r∣nは限りなく大きくなり、rnの符号はnの偶奇によって交互に変わります。よって収束せず、正の無限大にも負の無限大にも発散しないので、振動します。▨
例 2.2 (公比の値で判定する).(32)nは32<1であるから0に収束する。(−21)nも−21<1であるから0に収束する。(−23)nは−23<−1であるから振動する。(23)nは23>1であるから正の無限大に発散する。
3 極限の四則計算
収束する数列どうしを足し合わせたり掛け合わせたりして作った数列については、極限値をもとの極限値から計算することができます。
定理 3.1 (極限の四則計算). 数列{an}と{bn}がともに収束し、limn→∞an=α、limn→∞bn=βであるとする。このとき次が成り立つ。
- 定数k、lについて、limn→∞(kan+lbn)=kα+lβである。
- limn→∞anbn=αβである。
- β=0であり、かつすべてのn≥1についてbn=0であるならば、limn→∞bnan=βαである。
大小関係についても、収束する二つの数列のあいだで次が成り立ちます。
定理 3.3 (極限の大小関係の保存). 数列{an}と{bn}がともに収束し、limn→∞an=α、limn→∞bn=βであるとする。すべてのn≥1についてan≤bnが成り立つならば、α≤βである。
例 3.5 (条件を外れた計算が誤りになる場合).an=n2、bn=nは、ともに正の無限大に発散する。この二つに定理 3.1の 1 を当てはめて、limn→∞(an−bn)を「∞−∞であるから0」と計算することはできない。実際、an−bn=n2−n=n(n−1)は正の無限大に発散する。
同じく両方が正の無限大に発散する組であっても、差の振る舞いは組ごとに異なる。an=n+1、bn=nの場合はan−bn=1であって1に収束し、an=n、bn=n2の場合はan−bn=n−n2であって負の無限大に発散する。
4 不定形を整理する
不定形は、答えではなく、式を変形する必要がある状態を表します。分数式では分子と分母を分母の最高次の項で割り、根号を含む差では有理化して、定理 3.1を用いることのできる形へ直します。
例 4.2 (分数式の極限).n→∞lim2n2+13n2−nは∞∞の不定形である。分子と分母をn2 (=0)で割ると
2n2+13n2−n=2+n213−n1となる。limn→∞n1=0かつlimn→∞n21=0であり、分母の極限2は0ではなく、各項の分母2+n21も0ではないから、定理 3.1の 3 を用いることができ、極限は23である。
例 4.3 (根号を含む差の極限).n→∞lim(n2+n−n)は∞−∞の不定形である。n≥1のときn2+n+n>0であるから、この式にn2+n+nを掛けて割ると
n2+n−n=n2+n+n(n2+n)−n2=n2+n+nn=1+n1+11となる。最後の等号では、分子と分母をn (>0)で割った。limn→∞n1=0であるから、極限は21である。
5 Σを含む式の極限
Σを含む式の極限は、和の公式によってnの式へ直してから求めます。
例 5.1 (Σを含む式の極限).n→∞limn31k=1∑nk2を求める。k=1∑nk2=6n(n+1)(2n+1)であるから
n31k=1∑nk2=6n3n(n+1)(2n+1)=61(1+n1)(2+n1)である。limn→∞n1=0であるから、定理 3.1の 2 により、極限は61⋅1⋅2=31である。
6 広義単調と有界
漸化式で定まる数列の極限を扱う前に、数列の振る舞いを述べるための語を導入します。
定義 6.1 (広義単調と有界). 数列{an}について、次のように定める。
- すべてのn≥1についてan≤an+1が成り立つとき、{an}は広義単調増加であるという。すべてのn≥1についてan+1≤anが成り立つとき、{an}は広義単調減少であるという。広義単調増加または広義単調減少である数列を広義単調であるという。
- ある実数Mが存在して、すべてのn≥1についてan≤Mが成り立つとき、{an}は上に有界であるという。ある実数mが存在して、すべてのn≥1についてm≤anが成り立つとき、{an}は下に有界であるという。上に有界かつ下に有界である数列を有界であるという。
この二つの語は、収束することを示すために使います。広義単調増加であって上に有界である数列は収束します。この主張と、その根拠である実数の連続性は「極限の存在について」が扱います。本記事は、語を導入するところまでとします。
7 漸化式で定まる数列の極限
漸化式で定まる数列については、まず本単元で扱った変形によって一般項をnの式で求めることができるかどうかを調べます。求めることができる場合は、その式の極限を取ります。
例 7.1 (一般項を求めてから極限を取る).a1=0、an+1=21an+1(n≥1)とする。α=21α+1の解はα=2であるからan+1−2=21(an−2)であり、a1−2=−2より
an−2=−2(21)n−1である。21<1であるから定理 2.1の 3 により(21)n−1は0に収束し、limn→∞an=2である。
本単元で扱った変形から一般項を直ちに得られない場合は、収束することを仮定したうえで、極限値が満たす関係を導きます。
例 7.2 (収束を仮定して極限値が満たす関係を導く).a1=2、an+1=21(an+an2)(n≥1)とする。a1>0であり、an>0ならばan+1>0であるから、すべてのn≥1についてan>0であり、an2を書くことができる。
本記事では、この数列の一般項を求めることによる方法を用いません。そこで、{an}が正の値に収束することを仮定し、その極限値をα (>0)とする。{an+1}は{an}の番号を一つずらしたものであるから、同じ値αに収束する。α=0かつすべてのnでan=0であるから、漸化式の両辺に定理 3.1を用いることができて
α=21(α+α2)を得る。両辺に2αを掛けると2α2=α2+2、すなわちα2=2であり、α>0と合わせてα=2である。