ここまでは、一般項をの式として求めてから、その式の極限を計算してきました。しかし、本単元で扱った変形から一般項を直ちに得ることができない数列にも、収束するものがあります。
で定まる数列がその例です。、と根号が積み重なっていき、本単元でここまで扱った変形からはをの式で直ちに書くことができません。それでもこの数列は収束します。
本記事は、一般項を求めずに収束することを示す方法を扱います。使う道具は二つだけです。一つは実数の連続性を認めるための形、もう一つはそこから導く定理です。
最終更新
ここまでは、一般項をの式として求めてから、その式の極限を計算してきました。しかし、本単元で扱った変形から一般項を直ちに得ることができない数列にも、収束するものがあります。
で定まる数列がその例です。、と根号が積み重なっていき、本単元でここまで扱った変形からはをの式で直ちに書くことができません。それでもこの数列は収束します。
本記事は、一般項を求めずに収束することを示す方法を扱います。使う道具は二つだけです。一つは実数の連続性を認めるための形、もう一つはそこから導く定理です。
「収束するとすれば極限値は何か」という問いには、多くの場合ただちに答えることができます。上の数列でと置けば、漸化式の両辺の極限をとって、すなわちとなり、とあわせてを得ます。
しかしこの計算は、収束することを前提にしています。収束しない数列に同じ計算を当てはめると、存在しない値を求めたことになります。
例 1.1 (収束を確かめずに極限値を求めると誤りになる場合).、で定まる数列について、と置いて両辺の極限をとると、すなわちとなる。しかしはすべて正であり、であるから正の無限大に発散する。このは、収束するという誤った前提から出た値である。
したがって、極限値を求める前に収束することそのものを示す必要があります。一般項が求まらない以上、その根拠は実数がもつ性質に求めるほかありません。
広義単調増加であって、どの項も以下である数列を考えます。項は増え続けながらを越えることができないので、どこかへ落ち着くように見えます。ところが、この「落ち着く先」が存在することは、数の範囲を有理数に限ると成り立ちません。
の小数第位までを取った有限小数の列は、広義単調増加でどの項も以下ですが、有理数の中に落ち着く先がありません。落ち着く先が実数として存在することは、実数がもつ性質そのものです。
本単元は、この性質を次の形で認めて用います。
定理 2.1 (区間縮小法). 各について閉区間が定まり、次の二つを満たすとする。
このとき、すべてのに属する実数がただ一つ存在する。
注意 2.2 (本単元が認めるのはこの一点であり、使い方も最小限にとどめる).定理 2.1は、実数の連続性を述べたものの一つの形である。実数の連続性には、上限の存在、コーシー列の収束など、互いに同値な言い換えがいくつもある。そのどれを出発点に選ぶかは設計の問題であり、本単元は区間縮小法を選ぶ。理由は、区間の幅を計算することができる形で得られ、証明がそのまま近似の手続きになるからである。
本単元が実数の連続性について認めるのは、この一点だけである。ここから導くのも、次の定理 3.1と、「関数の極限」で扱う中間値の定理に限る。上限と下限、コーシー列、部分列を用いる収束の一般論は「ε-論法と基礎解析」が扱う。
ただ一つであることの部分は、二つの実数がどちらもすべてのに属するならば、その差が長さ以下になってに近づくことから従う。
定理 3.1 (単調収束定理). 広義単調増加であって上に有界である数列は収束する。広義単調減少であって下に有界である数列も収束する。
証明.を広義単調増加で上に有界な数列とし、どの項も以下であるとします。閉区間の列を次のように作ります。まずとします。が定まったとき、その中点をとして
と定めます。
この作り方から、どのについても次の二つが保たれます。 () どの項も以下である。()を満たす番号がある。では、どの項も以下であり、自身が項ですから、両方が成り立ちます。で両方が成り立つとき、上の規則でを選ぶと、前の場合はどの項も以下なので () が保たれ、なので () も保たれます。後の場合はなので () が保たれ、より大きい項があるので () も保たれます。
作り方からであり、長さは半分ずつになるので
です。§B1.7 定理 2.1によりはに近づくので、長さもに近づきます。したがって定理 2.1により、すべてのに属する実数がただ一つ存在します。
このが極限であることを示します。を一つ固定し、() の番号をとすると、が広義単調増加であることから、のときです。また () からです。よってのときはに属し、もに属するので
が成り立ちます。右辺はを大きくするとに近づき、はいくらでも大きく取ることができるので、はに近づきます。すなわちです。
広義単調減少であって下に有界である場合は、が広義単調増加であって上に有界であることから、いま示したことを適用します。▨
注意 3.2 (仮定を一つでも外すことができないこと).は広義単調増加であるが上に有界でなく、収束しない。広義単調であることだけでは、収束の根拠にならない。逆に、は有界であるが広義単調でなく、収束しない。有界であることだけでも、根拠にならない。二つの仮定は、どちらもそのつど確かめる必要がある。
この定理を使う手順は、いつも同じ二段です。広義単調増加であることを示し、どの項も越えない値を一つ見つける。後半が不等式の評価にあたり、実際の作業のほとんどはここに入ります。
例 4.1 (根号が積み重なる数列).、で定まる数列が収束することを示し、極限値を求める。
はじめに、どの項も以下であることを示す。である。を仮定するとである。よって数学的帰納法により、すべてのについてが成り立つ。
次に、広義単調増加であることを示す。より、すなわちである。よってであり、両辺が以上であるからとなる。
よって定理 3.1によりは収束する。極限値をとすると、の両辺で極限をとってを得る。であるからである。
注意 4.2 (収束を示す段と、極限値を求める段を分ける).例 4.1では、収束することを先に示してから両辺の極限をとった。この順序を逆にすることはできない。例 1.1が示すとおり、収束しない数列に同じ計算を当てはめると、存在しない値が出る。答案では、「上に有界であること」「広義単調増加であること」「よって収束すること」を書いてから、極限値の計算に移る。
例 4.3 (値は求まらないが、収束することは示すことができる).が収束することを示す。
各項が正であるからは狭義単調増加である。上から押さえるために、のとき
を用いる。からまで足すと、右辺は打ち消し合ってになるから
である。よって定理 3.1によりは収束する。
この議論は極限値を与えない。実際の値はであるが、それを求めるには本単元の範囲を超える道具が要る。収束することを示すことと、極限値を求めることは別の作業である。
定理 3.1の証明で現れたは、極限値がどの範囲にあるかを示す幅そのものです。証明を追うことが、そのまま値を求める手続きになります。
例 5.1 (二分法でを挟む).について、、である。区間の中点でであるから、の符号が変わるのはの側である。これを繰り返すと、を含む閉区間の列が得られ、回目の幅はになる。
幅をより小さくすれば、区間のどの点を近似値として選んでも絶対誤差が未満であることを保証することができます。ただし、幅が小さいことだけでは小数第位が確定したとは限りません。区間がとの間のように桁の境界をまたぐ場合には、幅が未満でも第位が異なります。桁を確定するには、幅の評価に加えて、区間の両端を同じ規則で切り捨てた値または丸めた値が一致することを確認します。この手続きが極限値を与えることの根拠が定理 2.1であり、「絶対誤差をいくらでも小さくすることができる」という言い方の中身が、この幅の評価です。