§B1.8極限の存在について

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ここまでは、一般項をnnの式として求めてから、その式の極限を計算してきました。しかし、本単元で扱った変形から一般項を直ちに得ることができない数列にも、収束するものがあります。

a1=1,an+1=2+ana_1 = 1, \qquad a_{n+1} = \sqrt{2 + a_n}

で定まる数列がその例です。a2=3a_2 = \sqrt3、a3=2+3a_3 = \sqrt{2+\sqrt3}と根号が積み重なっていき、本単元でここまで扱った変形からはana_nをnnの式で直ちに書くことができません。それでもこの数列は収束します。

本記事は、一般項を求めずに収束することを示す方法を扱います。使う道具は二つだけです。一つは実数の連続性を認めるための形、もう一つはそこから導く定理です。

1 収束することを、なぜ示す必要があるのか

「収束するとすれば極限値は何か」という問いには、多くの場合ただちに答えることができます。上の数列でlim⁡an=α\lim a_n = \alphaと置けば、漸化式の両辺の極限をとってα=2+α\alpha = \sqrt{2+\alpha}、すなわちα2−α−2=0\alpha^2 - \alpha - 2 = 0となり、α≥0\alpha \ge 0とあわせてα=2\alpha = 2を得ます。

しかしこの計算は、収束することを前提にしています。収束しない数列に同じ計算を当てはめると、存在しない値を求めたことになります。

例 1.1 (収束を確かめずに極限値を求めると誤りになる場合).b1=1b_1 = 1、bn+1=2bn+1b_{n+1} = 2b_n + 1で定まる数列について、lim⁡bn=β\lim b_n = \betaと置いて両辺の極限をとるとβ=2β+1\beta = 2\beta + 1、すなわちβ=−1\beta = -1となる。しかしbnb_nはすべて正であり、bn=2 n−1b_n = 2^{\,n} - 1であるから正の無限大に発散する。このβ=−1\beta = -1は、収束するという誤った前提から出た値である。

したがって、極限値を求める前に収束することそのものを示す必要があります。一般項が求まらない以上、その根拠は実数がもつ性質に求めるほかありません。

2 実数の連続性を、幅の形で認める

広義単調増加であって、どの項もMM以下である数列を考えます。項は増え続けながらMMを越えることができないので、どこかへ落ち着くように見えます。ところが、この「落ち着く先」が存在することは、数の範囲を有理数に限ると成り立ちません。

2\sqrt2の小数第nn位までを取った有限小数の列1, 1.4, 1.41, 1.414, …1,\ 1.4,\ 1.41,\ 1.414,\ \dotsは、広義単調増加でどの項も22以下ですが、有理数の中に落ち着く先がありません。落ち着く先が実数として存在することは、実数がもつ性質そのものです。

本単元は、この性質を次の形で認めて用います。

定理 2.1 (区間縮小法). 各n≥1n \ge 1について閉区間In=[an,bn]I_n = [a_n, b_n]が定まり、次の二つを満たすとする。

  1. すべてのnnについてIn+1⊆InI_{n+1} \subseteq I_nである。
  2. 区間の長さbn−anb_n - a_nは、nnを限りなく大きくすると00に近づく。

このとき、すべてのInI_nに属する実数がただ一つ存在する。

注意 2.2 (本単元が認めるのはこの一点であり、使い方も最小限にとどめる).定理 2.1は、実数の連続性を述べたものの一つの形である。実数の連続性には、上限の存在、コーシー列の収束など、互いに同値な言い換えがいくつもある。そのどれを出発点に選ぶかは設計の問題であり、本単元は区間縮小法を選ぶ。理由は、区間の幅を計算することができる形で得られ、証明がそのまま近似の手続きになるからである。

本単元が実数の連続性について認めるのは、この一点だけである。ここから導くのも、次の定理 3.1と、「関数の極限」で扱う中間値の定理に限る。上限と下限、コーシー列、部分列を用いる収束の一般論は「ε-論法と基礎解析」が扱う。

ただ一つであることの部分は、二つの実数がどちらもすべてのInI_nに属するならば、その差が長さbn−anb_n - a_n以下になって00に近づくことから従う。

3 上に有界な広義単調増加数列は収束する

定理 3.1 (単調収束定理). 広義単調増加であって上に有界である数列は収束する。広義単調減少であって下に有界である数列も収束する。

証明.{an}\{a_n\}を広義単調増加で上に有界な数列とし、どの項もMM以下であるとします。閉区間の列を次のように作ります。まずI1=[a1,M]I_1 = [a_1, M]とします。Ik=[lk,rk]I_k = [l_k, r_k]が定まったとき、その中点をccとして

  • どの項もcc以下であるならばIk+1=[lk,c]I_{k+1} = [l_k, c]、
  • ccより大きい項があるならばIk+1=[c,rk]I_{k+1} = [c, r_k]

と定めます。

この作り方から、どのkkについても次の二つが保たれます。 (i\mathrm{i}) どの項もrkr_k以下である。(ii\mathrm{ii})lk≤aNl_k \le a_Nを満たす番号NNがある。k=1k = 1では、どの項もr1=Mr_1 = M以下であり、l1=a1l_1 = a_1自身が項ですから、両方が成り立ちます。IkI_kで両方が成り立つとき、上の規則でIk+1I_{k+1}を選ぶと、前の場合はどの項もcc以下なので (i\mathrm{i}) が保たれ、lk+1=lkl_{k+1} = l_kなので (ii\mathrm{ii}) も保たれます。後の場合はrk+1=rkr_{k+1} = r_kなので (i\mathrm{i}) が保たれ、ccより大きい項aNa_Nがあるので (ii\mathrm{ii}) も保たれます。

作り方からIk+1⊆IkI_{k+1} \subseteq I_kであり、長さは半分ずつになるので

rk−lk=M−a12 k−1r_k - l_k = \frac{M - a_1}{2^{\,k-1}}

です。§B1.7 定理 2.1により(12)k\left(\dfrac12\right)^{k}は00に近づくので、長さも00に近づきます。したがって定理 2.1により、すべてのIkI_kに属する実数α\alphaがただ一つ存在します。

このα\alphaが極限であることを示します。kkを一つ固定し、(ii\mathrm{ii}) の番号をNNとすると、{an}\{a_n\}が広義単調増加であることから、n≥Nn \ge Nのときlk≤aN≤anl_k \le a_N \le a_nです。また (i\mathrm{i}) からan≤rka_n \le r_kです。よってn≥Nn \ge Nのときana_nはIkI_kに属し、α\alphaもIkI_kに属するので

∣an−α∣≤rk−lk=M−a12 k−1|a_n - \alpha| \le r_k - l_k = \frac{M - a_1}{2^{\,k-1}}

が成り立ちます。右辺はkkを大きくすると00に近づき、kkはいくらでも大きく取ることができるので、ana_nはα\alphaに近づきます。すなわちlim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alphaです。

広義単調減少であって下に有界である場合は、{−an}\{-a_n\}が広義単調増加であって上に有界であることから、いま示したことを適用します。▨

注意 3.2 (仮定を一つでも外すことができないこと).an=na_n = nは広義単調増加であるが上に有界でなく、収束しない。広義単調であることだけでは、収束の根拠にならない。逆に、an=(−1) na_n = (-1)^{\,n}は有界であるが広義単調でなく、収束しない。有界であることだけでも、根拠にならない。二つの仮定は、どちらもそのつど確かめる必要がある。

4 上から押さえて収束を示す

この定理を使う手順は、いつも同じ二段です。広義単調増加であることを示し、どの項も越えない値を一つ見つける。後半が不等式の評価にあたり、実際の作業のほとんどはここに入ります。

例 4.1 (根号が積み重なる数列).a1=1a_1 = 1、an+1=2+ana_{n+1} = \sqrt{2 + a_n}で定まる数列が収束することを示し、極限値を求める。

はじめに、どの項も22以下であることを示す。a1=1≤2a_1 = 1 \le 2である。an≤2a_n \le 2を仮定するとan+1=2+an≤2+2=2a_{n+1} = \sqrt{2 + a_n} \le \sqrt{2+2} = 2である。よって数学的帰納法により、すべてのnnについてan≤2a_n \le 2が成り立つ。

次に、広義単調増加であることを示す。0≤an≤20 \le a_n \le 2よりan(2−an)≥0a_n(2 - a_n) \ge 0、すなわち2an≥an 22a_n \ge a_n^{\,2}である。よって2+an≥2an≥an 22 + a_n \ge 2a_n \ge a_n^{\,2}であり、両辺が00以上であるからan+1=2+an≥ana_{n+1} = \sqrt{2+a_n} \ge a_nとなる。

よって定理 3.1により{an}\{a_n\}は収束する。極限値をα\alphaとすると、an+1 2=2+ana_{n+1}^{\,2} = 2 + a_nの両辺で極限をとってα2=2+α\alpha^2 = 2 + \alphaを得る。α≥a1=1>0\alpha \ge a_1 = 1 > 0であるからα=2\alpha = 2である。

注意 4.2 (収束を示す段と、極限値を求める段を分ける).例 4.1では、収束することを先に示してから両辺の極限をとった。この順序を逆にすることはできない。例 1.1が示すとおり、収束しない数列に同じ計算を当てはめると、存在しない値が出る。答案では、「上に有界であること」「広義単調増加であること」「よって収束すること」を書いてから、極限値の計算に移る。

例 4.3 (値は求まらないが、収束することは示すことができる).sn=∑k=1n1k2s_n = \displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k^{2}}が収束することを示す。

各項が正であるから{sn}\{s_n\}は狭義単調増加である。上から押さえるために、k≥2k \ge 2のとき

1k2<1k(k−1)=1k−1−1k\frac{1}{k^{2}} < \frac{1}{k(k-1)} = \frac{1}{k-1} - \frac1k

を用いる。k=2k = 2からnnまで足すと、右辺は打ち消し合って1−1n1 - \dfrac1nになるから

sn<1+(1−1n)<2s_n < 1 + \left(1 - \frac1n\right) < 2

である。よって定理 3.1により{sn}\{s_n\}は収束する。

この議論は極限値を与えない。実際の値はπ26\dfrac{\pi^{2}}{6}であるが、それを求めるには本単元の範囲を超える道具が要る。収束することを示すことと、極限値を求めることは別の作業である。

5 幅の評価が、そのまま近似の精度になる

定理 3.1の証明で現れたrk−lk=M−a12 k−1r_k - l_k = \dfrac{M-a_1}{2^{\,k-1}}は、極限値がどの範囲にあるかを示す幅そのものです。証明を追うことが、そのまま値を求める手続きになります。

例 5.1 (二分法で2\sqrt2を挟む).f(x)=x2−2f(x) = x^{2} - 2について、f(1)=−1<0f(1) = -1 < 0、f(2)=2>0f(2) = 2 > 0である。区間[1,2][1, 2]の中点1.51.5でf(1.5)=0.25>0f(1.5) = 0.25 > 0であるから、ffの符号が変わるのは[1,1.5][1, 1.5]の側である。これを繰り返すと、2\sqrt2を含む閉区間の列が得られ、kk回目の幅は12 k−1\dfrac{1}{2^{\,k-1}}になる。

幅を10−310^{-3}より小さくすれば、区間のどの点を近似値として選んでも絶対誤差が10−310^{-3}未満であることを保証することができます。ただし、幅が小さいことだけでは小数第33位が確定したとは限りません。区間が1.41491.4149と1.41511.4151の間のように桁の境界をまたぐ場合には、幅が10−310^{-3}未満でも第33位が異なります。桁を確定するには、幅の評価に加えて、区間の両端を同じ規則で切り捨てた値または丸めた値が一致することを確認します。この手続きが極限値を与えることの根拠が定理 2.1であり、「絶対誤差をいくらでも小さくすることができる」という言い方の中身が、この幅の評価です。

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