1 部分和による定義
無限級数の和は、記号を形式的に足し続けたものではありません。
定義 1.1 (無限級数の収束と和). 数列{ak}の第n部分和を
Sn=k=1∑nakとします。数列{Sn}が有限の値Sに収束するとき、無限級数∑k=1∞akは収束するといい、その和を
k=1∑∞ak=Sと定めます。部分和が有限の値に収束しないとき、級数は発散するといいます。
2 無限等比級数
有限等比数列の和から、収束条件と和を導きます。
定理 2.1 (無限等比級数). 初項a=0、公比rの無限等比級数
k=1∑∞ark−1は、∣r∣<1の場合に限って収束し、その和は
1−raです。
証明.r=1のとき、第n部分和は§B1.1 公式 2.3より
Sn=1−ra(1−rn)です。∣r∣<1ならばrn→0なので、Sn→a/(1−r)です。
r=1ならばSn=naであり、有限の値に収束しません。r=−1ならば部分和がa,0を繰り返します。∣r∣>1ならば項arn−1自体が0に近づかないので、定理 4.1に反します。▨
例 2.2 (循環小数を分数へ直す). 循環小数0.27=0.272727…は
10027+100227+100327+⋯という無限等比級数です。初項は27/100、公比は1/100なので、
0.27=1−1/10027/100=9927=113です。
例 2.3 (限りなく続く図形の長さ). 長さ1の線分を半分にし、残った線分をさらに半分にする操作を続けます。各段階で新しく取り出す長さは
21,41,81,…です。この総和は、初項1/2、公比1/2の無限等比級数なので
1−1/21/2=1です。有限段階の部分和は常に1未満であり、極限として1になります。
面積についても、各段階で加える面積が一定の比で小さくなるなら、同じ方法を用いることができます。長さの比がrである相似図形では、面積の比はr2である点を区別します。
3 項が打ち消し合う級数
各項を隣の項との差に分解することができると、部分和の中間項が消えます。
例 3.1 (望遠鏡級数). 部分分数分解により
k(k+1)1=k1−k+11です。第n部分和は
Sn=k=1∑n(k1−k+11)=1−n+11となります。したがって
k=1∑∞k(k+1)1=1です。
4 収束に必要な条件
級数が収束するなら、各項は0に近づかなければなりません。
定理 4.1 (級数の一般項に関する必要条件).∑k=1∞akが収束するならば、
n→∞liman=0です。
証明. 第n部分和をSnとすると、an=Sn−Sn−1です。級数がSに収束するならばSn→SかつSn−1→Sなので、極限の差からan→S−S=0です。▨
逆は成り立ちません。一般項が0に近づいても、部分和が有限の値に収束しない場合があります。
定理 4.2 (調和級数の発散). 調和級数
k=1∑∞k1は発散します。
証明.2m項までの部分和を、項数が1,1,2,4,…,2m−1個である群に分けます。第j群
2j−1+11+⋯+2j1には2j−1個の項があり、各項は1/2j以上です。したがって第j群の和は1/2以上です。ゆえに
S2m≥1+2mとなり、mを大きくすると部分和はいくらでも大きくなります。よって調和級数は正の無限大へ発散します。▨
調和級数では1/n→0ですが、級数は発散します。したがって「一般項が0に近づく」は収束の必要条件であり、十分条件ではありません。
5 演習
- 0.135を無限等比級数として表し、分数へ直します。
- 最初の正方形の一辺を1とし、一辺の長さが直前の正方形の1/3である正方形を順に加えるとき、面積の総和を求めます。
- ∑k=1∞(k+2)(k+3)1の部分和を求め、その極限を計算します。
- 一般項が0に近づくことだけでは級数の収束を結論することができない理由を、調和級数を用いて説明します。
各計算では、最初に第n部分和を有限和として求め、その後にn→∞の極限を取ります。