§B1.10関数の極限

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数列の極限では、番号nnが1,2,3,…1, 2, 3, \dotsと飛び飛びに動きました。ここでは変数xxが連続的に動く場合を扱います。xxが値aaに近づくときf(x)f(x)が近づく先を、関数の極限といいます。

変数が連続的に動くので、近づき方が一通りではありません。aaより大きい側から近づくのか、小さい側から近づくのかで、f(x)f(x)の行き先が変わることがあります。この違いを最初に整理します。

1 右からの極限と左からの極限

定義 1.1 (片側からの極限).xxがaaより大きい値をとりながらaaに限りなく近づくときf(x)f(x)が値LLに限りなく近づくならば、LLをx→ax \to aにおけるffの右からの極限といい、lim⁡x→a+0f(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a+0} f(x) = Lと書く。xxがaaより小さい値をとりながら近づく場合を左からの極限といい、lim⁡x→a−0f(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a-0} f(x) = Lと書く。

定理 1.2 (極限が存在するための条件).lim⁡x→af(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = Lが成り立つのは、右からの極限と左からの極限がともに存在して、どちらもLLに等しいときであり、そのときに限る。

証明.x→ax\to aのときにf(x)→Lf(x)\to Lならば、x>ax>aに限って近づけても、x<ax<aに限って近づけてもf(x)f(x)はLLに近づきます。したがって二つの片側極限はともにLLです。

逆に、右から近づけた場合と左から近づけた場合のどちらでもf(x)f(x)がLLに近づくとします。aaと異なるxxはx>ax>aまたはx<ax<aのどちらか一方を満たすので、近づき方を片側に分けても行き先は常にLLです。したがってx→ax\to aのときf(x)→Lf(x)\to Lです。▨

例 1.3 (片側で値が食い違う関数).x≠0x \ne 0についてf(x)=∣x∣xf(x) = \dfrac{|x|}{x}と定める。x>0x > 0ではf(x)=1f(x) = 1、x<0x < 0ではf(x)=−1f(x) = -1であるから

lim⁡x→0+0f(x)=1,lim⁡x→0−0f(x)=−1\lim_{x \to 0+0} f(x) = 1, \qquad \lim_{x \to 0-0} f(x) = -1

である。二つが一致しないので、定理 1.2によりlim⁡x→0f(x)\displaystyle\lim_{x \to 0} f(x)は存在しない。

注意 1.4 (「存在しない」と「値が定まらない」を混同しない).例 1.3で存在しないのは極限であって、f(x)f(x)の値ではない。ffの値はx≠0x \ne 0のどこでも定まっている。逆に、f(a)f(a)が定まっていなくてもlim⁡x→af(x)\displaystyle\lim_{x \to a} f(x)が存在することがある。x2−4x−2\dfrac{x^2 - 4}{x - 2}はx=2x = 2で値をもたないが、x→2x \to 2の極限は44である。極限はx=ax = aにおける値と無関係に定まる。

2 変数を限りなく大きく、または小さくしたとき

xxを限りなく大きくしたときのf(x)f(x)の行き先をlim⁡x→∞f(x)\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x)、限りなく小さくしたときの行き先をlim⁡x→−∞f(x)\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x)と書きます。この二つも一致するとはかぎりません。

例 2.1 (正の側と負の側で行き先が違う場合).f(x)=xx2+1f(x) = \dfrac{x}{\sqrt{x^2 + 1}}とする。x>0x > 0では分母をx1+1/x2x\sqrt{1 + 1/x^2}と書くことができ、

lim⁡x→∞f(x)=1\lim_{x \to \infty} f(x) = 1

である。x<0x < 0ではx2=−x\sqrt{x^2} = -xであるから分母は−x1+1/x2-x\sqrt{1 + 1/x^2}となり、

lim⁡x→−∞f(x)=−1\lim_{x \to -\infty} f(x) = -1

である。x2=x\sqrt{x^2} = xと書いてしまうと、負の側で符号を取り違える。

3 不定形を整理する

多項式のように、考えている点で連続であることが分かっている関数では、代入によって極限を求めることができます。一般の関数では、f(a)f(a)が定まることだけからlim⁡x→af(x)=f(a)\lim_{x\to a}f(x)=f(a)を結論することはできません。連続性を確認するか、極限を別に計算する必要があります。代入すると00\dfrac00、∞∞\dfrac{\infty}{\infty}、∞−∞\infty - \inftyのような不定形になる場合は、式を変形してから極限を取ります。

  • 約分(00\dfrac00型): 分子と分母を因数分解して共通因数を消します。lim⁡x→2x2−4x−2=lim⁡x→2(x−2)(x+2)x−2=lim⁡x→2(x+2)=4\lim_{x \to 2}\frac{x^2 - 4}{x - 2} = \lim_{x \to 2}\frac{(x-2)(x+2)}{x-2} = \lim_{x\to2}(x+2) = 4
  • 最高次の項で割る(∞∞\dfrac{\infty}{\infty}型): 分子と分母を最高次の項で割ります。2x2+13x2−x\dfrac{2x^2 + 1}{3x^2 - x}は23\dfrac23に近づきます。
  • 有理化(∞−∞\infty - \infty型や根号を含む式): 共役な式を掛けて根号の差を消します。

注意 3.1 (変形の前に定義域を書き出す). 根号を含む式では根号の中が00以上である範囲を、分母を含む式では分母が00にならない範囲を、変形の前に書き出す。x2\sqrt{x^2}をxxと書き換える操作はx≥0x \ge 0でしか正しくなく、分子と分母をxxで割る操作はx≠0x \ne 0でしか正しくない。変形が正しい範囲と、極限を考えている範囲が重なっていることを確かめる。

数列の極限で認めた§B1.7 定理 3.1と§B1.7 定理 3.3は、関数の極限についても同じ形で成り立ちます。本記事はこれらも認めて用い、ε\varepsilonとδ\deltaによる精密な扱いは「ε-δ による関数の極限と連続性」が扱います。

4 連続性

定義 4.1 (点における連続性と、区間での連続性).ffがaaを含むある範囲で定義されており、lim⁡x→af(x)=f(a)\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = f(a)が成り立つとき、ffはaaで連続であるという。区間に属するどの点でも連続であるとき、ffはその区間で連続であるという。区間の端点では、区間の内側からの片側の極限で考える。

この定義は三つを同時に要求しています。f(a)f(a)が定まること、極限が存在すること、そして両者が等しいことです。どれか一つでも欠ければ、その点で連続ではありません。

例 4.2 (連続でない三つの型).

  1. f(x)=∣x∣xf(x) = \dfrac{|x|}{x}(x≠0x \ne 0)はx=0x = 0で値が定まらず、極限も存在しない。
  2. g(x)=x2−4x−2g(x) = \dfrac{x^2 - 4}{x - 2}(x≠2x \ne 2)はx→2x \to 2の極限が44であるが、g(2)g(2)が定まっていない。g(2)=4g(2) = 4と定めれば連続になる。
  3. h(x)h(x)を、x≠0x \ne 0のとき00、x=0x = 0のとき11と定める。極限も値も存在するが、極限00と値11が食い違う。

多項式はどの実数でも連続であり、分数関数と無理関数は、定義域に属するどの点でも連続です。

5 中間値の定理

閉区間で連続な関数のグラフは、途切れずにつながって見えます。この見え方を主張として述べたものが中間値の定理です。そして、この定理は絵から明らかなのではなく、実数の連続性から従います。証明は、数列の極限で認めた§B1.8 定理 2.1を用います。

定理 5.1 (中間値の定理).ffが閉区間[a,b][a, b]で連続であり、f(a)≠f(b)f(a) \ne f(b)であるとする。kkをf(a)f(a)とf(b)f(b)のあいだにある実数とすると、f(c)=kf(c) = kを満たすccが開区間(a,b)(a, b)に存在する。

証明.f(a)<k<f(b)f(a) < k < f(b)の場合を示します。f(b)<k<f(a)f(b) < k < f(a)の場合は−f-fと−k-kに置き換えるとこの場合に帰着します。

閉区間の列を次のように作ります。まずI1=[a,b]I_1 = [a, b]とします。Ij=[lj,rj]I_j = [l_j, r_j]が定まったとき、その中点をmmとして

  • f(m)≤kf(m) \le kならばIj+1=[m,rj]I_{j+1} = [m, r_j]、
  • f(m)>kf(m) > kならばIj+1=[lj,m]I_{j+1} = [l_j, m]

と定めます。この作り方から、どのjjについても

f(lj)≤k≤f(rj)f(l_j) \le k \le f(r_j)

が保たれます。j=1j = 1ではf(a)<k<f(b)f(a) < k < f(b)ですから成り立ち、Ij+1I_{j+1}をどちらに選んでもこの関係は保たれます。

Ij+1⊆IjI_{j+1} \subseteq I_jであり、長さは半分ずつになるのでrj−lj=b−a2 j−1r_j - l_j = \dfrac{b-a}{2^{\,j-1}}となり、00に近づきます。したがって§B1.8 定理 2.1により、すべてのIjI_jに属する実数ccがただ一つ存在します。

ljl_jもrjr_jもccとの差がrj−ljr_j - l_j以下ですから、jjを限りなく大きくすると、どちらもccに近づきます。ffはccで連続なので、定義 4.1によりf(lj)→f(c)f(l_j) \to f(c)、f(rj)→f(c)f(r_j) \to f(c)です。ここで、すべてのjjについてf(lj)≤k≤f(rj)f(l_j) \le k \le f(r_j)が成り立っているので、§B1.7 定理 3.3により

f(c)≤k≤f(c)f(c) \le k \le f(c)

が得られます。したがってf(c)=kf(c) = kです。f(a)≠kf(a) \ne kかつf(b)≠kf(b) \ne kですからccはaaともbbとも異なり、開区間(a,b)(a, b)に属します。▨

注意 5.2 (仮定を一つでも外すと結論が成り立たないこと). 連続であるという仮定を外すことはできない。x≠0x \ne 0で∣x∣x\dfrac{|x|}{x}、x=0x = 0で00と定めた関数は[−1,1][-1, 1]で−1-1と11を値にとるが、12\dfrac12を値にとる点は存在しない。

閉区間であることは、定理 5.1を両端の値f(a),f(b)f(a),f(b)によって述べるための仮定です。開区間(0,1)(0,1)上のf(x)=xf(x)=xも、区間内の二点で取る値の間にあるすべての値を取ります。したがって、閉区間であることが中間値の性質そのものに必要であるとは限りません。ただし、開区間では両端の値f(0),f(1)f(0),f(1)が定まらないので、上の定理をそのまま適用することはできません。

例 5.3 (方程式に解が存在することを示す).x3−3x+1=0x^3 - 3x + 1 = 0が0<x<10 < x < 1に解をもつことを示す。f(x)=x3−3x+1f(x) = x^3 - 3x + 1は多項式なので[0,1][0, 1]で連続であり、

f(0)=1>0,f(1)=−1<0f(0) = 1 > 0, \qquad f(1) = -1 < 0

である。00はf(1)f(1)とf(0)f(0)のあいだにあるから、定理 5.1によりf(c)=0f(c) = 0を満たすccが(0,1)(0, 1)に存在する。

注意 5.4 (存在を示すことと、値を求めることは別である).定理 5.1が与えるのはccの存在であって、ccの値ではない。証明が区間を半分ずつ狭めているので、その手順をそのまま計算に使えばccを好きな精度まで求めることができる。存在の証明と、値を求める手続きが同じものになっている例である。

閑話休題:ラマヌジャンの無限に深い根号 1911 年、インドの数学雑誌に、無名の事務員から次の問題が投稿されました。

1+21+31+41+⋯= ?\sqrt{1 + 2\sqrt{1 + 3\sqrt{1 + 4\sqrt{1 + \cdots}}}} = \ ?

根号が無限に深く入れ子になった式です。数か月のあいだ解答が届かず、投稿者本人が答えを示しました。値は33です。投稿者はラマヌジャンでした。

もとになるのは恒等式x+1=1+x(x+2)x + 1 = \sqrt{1 + x(x + 2)}です。x+2x + 2の部分に同じ恒等式を(xxをx+1x+1に取り替えて)代入する操作を繰り返すと、上の入れ子が現れます。x=2x = 2とすれば値は33になります。

ただし、この操作だけでは等号は正当化されません。無限に続く式は、それ自体では意味を持たず、有限で切った列の極限として初めて意味を持ちます。有限で切った式の値が33に近づくことを、上下から評価して確かめる必要があります。この見方は、無限級数、無限積、連分数のいずれにも共通します。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の極限を求めよ。

解法の型0/00/0 は因数分解して約分、∞/∞\infty/\infty は最高次で割る

  1. 例題 1

    lim⁡x→3x2−x−6x−3\lim_{x \to 3} \dfrac{x^{2}-x-6}{x-3}
  2. 例題 2

    lim⁡x→∞x2+x+24x2−x−4\lim_{x \to \infty} \dfrac{x^{2}+x+2}{4x^{2}-x-4}
  3. 例題 3

    lim⁡x→−3x2−9x+3\lim_{x \to -3} \dfrac{x^{2}-9}{x+3}
  4. 例題 4

    lim⁡x→4x2−7x+12x−4\lim_{x \to 4} \dfrac{x^{2}-7x+12}{x-4}
  5. 例題 5

    lim⁡x→−3x2+7x+12x+3\lim_{x \to -3} \dfrac{x^{2}+7x+12}{x+3}

解法の型sin⁡xx→1\dfrac{\sin x}{x}\to1 と (1+1n)n→e\left(1+\dfrac1n\right)^n\to e の形に持ち込む

  1. 例題 1

    lim⁡n→∞(1+1n)2n\lim_{n \to \infty} \left(1 + \dfrac{1}{n}\right)^{2n}
  2. 例題 2

    lim⁡n→∞(1+1n)3n\lim_{n \to \infty} \left(1 + \dfrac{1}{n}\right)^{3n}
  3. 例題 3

    lim⁡x→0sin⁡2xx\lim_{x \to 0} \dfrac{\sin 2x}{x}
  4. 例題 4

    lim⁡x→0sin⁡5xx\lim_{x \to 0} \dfrac{\sin 5x}{x}
  5. 例題 5

    lim⁡x→0sin⁡3xx\lim_{x \to 0} \dfrac{\sin 3x}{x}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の極限を求めよ。

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