1 閉集合の点列による判定
定義 1.1.Xを位相空間とする。
- 部分集合A⊆Xが 列閉 (sequentially closed) であるとは、A内の任意の点列(xn)n∈N≥1と任意のx∈Xに対して、xn→xならばx∈Aが成り立つことをいう。
- すべての列閉集合が閉であるとき、Xを 列型空間 (sequential space) という。
- 任意のA⊆Xと任意のx∈clX(A)に対して、xへ収束するA内の点列が存在するとき、Xを Fréchet–Urysohn 空間 (Fréchet–Urysohn space) という。
定義 1.2. 位相空間Xの部分集合Aに対して
sclX(A)={x∈X:A 内の点列で x へ収束するものが存在する}をAの 列閉包 (sequential closure) という。定値列と閉集合における極限の性質により
A⊆sclX(A)⊆clX(A)であり、A⊆BならばsclX(A)⊆sclX(B)である。Aが列閉であることはsclX(A)=Aと同値であり、Xが Fréchet–Urysohn であることはすべてのA⊆XについてsclX(A)=clX(A)が成り立つことと同値である。
補題 1.3.S={0}∪{1/n:n∈N≥1}⊆Rとする。Sはコンパクト距離空間であり、位相空間Xへの写像u:S→Xが連続であることとu(1/n)→u(0)は同値である。また、A⊆Xが列閉であることと、すべての連続写像u:S→Xに対してu−1(A)がSで閉であることは同値である。
証明.Sの開被覆から0を含む一つの開集合をとる。この開集合は1/nを有限個を除いて含むから、残りの点を覆う有限個の開集合を加えると有限部分被覆を得る。Sの非零の点は孤立点であり、0の近傍は{0}∪{1/n:n≥N}をあるN∈N≥1について含む。この近傍の記述から、uの連続性はu(1/n)→u(0)と同値である。
Aが列閉であるとする。u−1(A)が閉でなければ、0∈/u−1(A)かつu−1(A)は無限集合である。したがってu(1/nj)∈Aを満たす狭義増加列(nj)が存在し、u(1/nj)→u(0)∈/Aとなって矛盾する。逆にすべての逆像が閉であり、xn∈A、xn→xとする。u(1/n)=xn、u(0)=xと定めるとuは連続である。u−1(A)はすべての1/nを含む閉集合であるから0も含み、x∈Aとなる。▨
命題 1.4. 位相空間について、次の含意が成り立つ。
第一可算 ⟹ Freˊchet–Urysohn ⟹ 列型 ⟹ コンパクト生成.
証明.§E2.13 定理 7.4により第一可算空間は Fréchet–Urysohn である。Fréchet–Urysohn 空間の列閉集合Aについて、Aの各点はA内の点列の極限であるからAに属し、Aは閉である。
Xを列型空間、A⊆Xを k 閉集合とする。xn∈A、xn→xならば、§E2.38 補題 1.2によりK={x}∪{xn:n∈N≥1}はコンパクトである。A∩KはKで閉であり、K内でもxn→xであるからx∈Aとなる。したがってAは列閉であり、列型性により閉である。▨
命題 1.5. 列型空間の閉部分空間と開部分空間は列型である。
証明.Xを列型空間、F⊆Xを閉集合とし、A⊆FをFで列閉とする。A内の点列のXにおける極限はFに属し、Fにおける極限でもあるからAに属する。したがってAはXで列閉、ゆえに閉である。
U⊆Xを開集合とし、A⊆UをUで列閉とする。A∪(X∖U)内の点列がx∈Uに収束すれば、その点列は有限個の項を除いてAに属するのでx∈Aである。したがってA∪(X∖U)はXで列閉、ゆえに閉であり、AはUで閉である。▨
2 列型化
定義 2.1. 位相空間Xの台集合上に、S={0}∪{1/n:n∈N≥1}からXへのすべての連続写像による終位相を入れた空間を、Xの 列型化 (sequentialization) といい、sXと書く。補題 1.3によりsXの閉集合はsclX(F)=Fを満たす部分集合F⊆Xである。
命題 2.2. 任意の位相空間Xに対して、sXの位相はXの位相より細かい。点列(xn)と点xについて、Xでxn→xであることとsXでxn→xであることは同値である。さらにs(sX)=sXであり、sXは列型空間である。Xが列型であることとsX=Xは同値である。
証明.§E2.12 命題 3.9 (2)により恒等写像ηX:sX→Xは連続である。Xでxn→xならば、u(1/n)=xn、u(0)=xで定める写像u:S→Xは構造写像の一つであり、S→sXとしても連続である。したがってsXでもxn→xである。逆方向はηXの連続性から従う。
収束する点列と指定された極限の組が一致するから、補題 1.3により二度目の構成でも検査族は変わらず、s(sX)=sXとなる。最後の同値は閉集合の記述から従い、sXに適用するとsXの列型性を得る。▨
3 商表示と連続性
補題 3.1. 列型性は、任意の位相的直和および商像によって保たれる。
証明.q:X→Yを列型空間Xからの商写像とし、A⊆Yを列閉とする。qの連続性によってq−1(A)も列閉であり、Xの列型性から閉である。商性によってAは閉となるから、Yは列型である。
列型空間の直和X=∐i∈IXiの列閉集合Aをとる。各成分の包含は連続であるから、Aの各成分での逆像は列閉、ゆえに閉である。§E2.12 命題 7.2 (1)によりAは閉である。▨
補題 3.2.S={0}∪{1/n:n∈N≥1}の任意個のコピーの位相的直和D=∐i∈ISは、局所コンパクトな距離化可能空間である。
証明.Iに離散距離δを入れる。§E2.1 定理 2.8により、
d((i,s),(j,t))=max{δ(i,j),∣s−t∣}はI×S上の距離である。0<r<1に対して
Bd((i,s),r)={i}×(S∩(s−r,s+r))であるから、dの位相は直和位相に一致する。各成分は開かつコンパクトであるから、Dは局所コンパクトである。▨
定理 3.3. 位相空間Xに対してS={0}∪{1/n:n∈N≥1}とし、SからXへの連続写像全体をΓ(X)とする。次の条件は同値である。
- Xは列型空間である。
- 自然な全射qS:DS(X)=∐u∈Γ(X)S⟶X,(u,t)⟼u(t)は商写像である。
- Xは距離空間の商像である。
- Xは局所コンパクト距離空間の商像である。
- 任意の位相空間Yと写像f:X→Yに対して、fが連続であることと、任意の点列(xn)と点xについてxn→xならばf(xn)→f(x)が成り立つことは同値である。
証明.補題 1.3と§E2.12 命題 7.2 (1)を適用すると、qS−1(A)が閉であることとAが列閉であることは同値である。定値写像がΓ(X)に属するのでqSは全射であり、直和の普遍性によって連続である。したがって(1)と(2)は同値である。
補題 3.2によりDS(X)は局所コンパクト距離空間となるから、(2)は(4)を導き、後者は(3)を導く。距離空間は§E2.13 命題 4.2により第一可算であるから、命題 1.4と補題 3.1により、その商像は列型である。
補題 1.3により、fが収束列とその極限を保つことは、すべてのu∈Γ(X)についてf∘uが連続であることと同値である。終位相の普遍性により、この条件はf:sX→Yの連続性と同値である。sX=Xならば(5)を得る。逆にこの判定を恒等集合写像X→sXに適用すると、命題 2.2によりこの写像は連続となり、X=sXを得る。▨
系 3.4. 列型空間Yから位相空間Xへの任意の連続写像f:Y→Xは、連続写像f:Y→sXと恒等写像ηX:sX→Xにより、一意にf=ηX∘fと分解される。
証明.命題 2.2によりf:Y→sXは収束列とその極限を保つから、定理 3.3 (5)により連続である。因子化の一意性は、ηXが恒等集合写像であることから従う。▨
系 3.5. 任意の位相空間Xに対して、恒等集合写像sX→kX→Xは連続である。したがってsXの位相はkXの位相より細かい。
補題 3.6. Fréchet–Urysohn 性は、任意の部分空間、任意の位相的直和、および継承的商像によって保たれる。
証明.Xを Fréchet–Urysohn 空間とし、B⊆X、A⊆B、x∈clB(A)とする。x∈clX(A)であるからA内の点列でXにおいてxへ収束するものが存在し、その点列はBでもxへ収束する。直和内の閉包点は、その点が属する開な成分内でも閉包点であるから、各成分の Fréchet–Urysohn 性を適用することができる。
q:X→Yを継承的商写像とし、A⊆Y、y∈clY(A)とする。§E2.37 定理 1.3 (3)により、q(x)=yを満たすx∈clX(q−1(A))が存在する。q−1(A)内でxへ収束する点列をqで送ると、A内でyへ収束する点列を得る。▨
補題 3.7. 位相空間Xのすべての部分空間がコンパクト生成であるとする。A⊆Xとx∈clX(A)∖Aに対して、コンパクト部分集合K⊆A∪{x}が存在して
x∈K,x∈clK(K∖{x})を満たす。
証明.Y=A∪{x}とおくと、§E2.12 命題 4.7 (1)によりAはYで閉でない。Yはコンパクト生成であるから、コンパクト部分集合K⊆YでA∩KがKで閉でないものが存在する。x∈/KならばA∩K=Kとなるので、x∈Kである。したがってA∩K=K∖{x}であり、その閉包へ加わる点はxだけである。非閉性からx∈clK(K∖{x})を得る。▨
定理 3.8. 位相空間Xについて、次の条件は同値である。
- Xは Fréchet–Urysohn 空間である。
- Xのすべての部分空間は列型である。
- 定理 3.3の自然な全射qS:DS(X)→Xは継承的商写像である。
- Xは距離空間の継承的商像である。
- Xは局所コンパクト距離空間の継承的商像である。
さらにXが Hausdorff ならば、Xのすべての部分空間がコンパクト生成であることも、これらの条件と同値である。
証明.補題 3.6と命題 1.4により、(1)は(2)を導く。逆にA⊆X、x∈clX(A)∖Aとし、部分空間A∪{x}をとる。この部分空間でAは閉でないから、列型性によってA内からxへ収束する点列が存在する。x∈Aの場合は定値列をとればよい。
Xが Fréchet–Urysohn であり、x∈clX(A)とする。xn∈A、xn→xとなる点列をとり、u(1/n)=xn、u(0)=xと定める。コピー{u}×Sの点(u,0)はqS−1(A)の閉包に属し、qS(u,0)=xである。連続性から逆の包含も成り立つので、§E2.37 定理 1.3 (3)によりqSは継承的商写像である。
補題 3.2により(3)は(5)を導き、後者は(4)を導く。距離空間の第一可算性、命題 1.4および補題 3.6により、距離空間の継承的商像は Fréchet–Urysohn である。
補題 3.6と命題 1.4により、Fréchet–Urysohn 空間のすべての部分空間はコンパクト生成である。逆にXを Hausdorff とし、Xのすべての部分空間がコンパクト生成であると仮定する。A⊆X、x∈clX(A)∖Aに対してZ=A∪{x}とおく。Zは Hausdorff であり、x∈clZ(A)である。
空でないZの開集合Uでx∈/clZ(U)を満たすものからなる、互いに素な族全体を包含で順序づける。空の族が属し、鎖の和集合も互いに素な族であるから、§E1.20 定理 2.1 (3)により極大な族Uが存在する。B=⋃U⊆Aとおく。x∈/clZ(B)ならば、Bと交わらないxの開近傍Wと、y∈W∖{x}を取ることができる。Hausdorff 性により、xとyの互いに素な開近傍H,Vを取る。O=W∩Vは空でない開集合であり、H∩O=∅によりx∈/clZ(O)である。OはUのどの元とも交わらないから、U∪{O}はUの真の拡大となり、極大性に反する。したがってx∈clZ(B)である。
補題 3.7により、コンパクト集合K⊆B∪{x}でx∈K∩clZ(K∖{x})となるものを取る。Kと交わるUの元全体をIとおく。Iが有限ならば、各U∈Iと交わらないxの開近傍の有限共通部分はK∖{x}と交わらず、x∈clZ(K∖{x})に反する。ゆえにIは無限であり、相異なるUn∈Iとan∈Un∩Kをn∈N≥1について選ぶことができる。
xの任意のZにおける開近傍Wに対して、{W}∪UはKの開被覆である。コンパクト性により、あるV1,…,Vr∈UについてK⊆W∪V1∪⋯∪Vrとなる。an∈/WならばUn∩Vi=∅となるiがあり、互いに素であることからUn=Viである。Unは相異なるから、このようなnは高々r個である。したがってan→xであり、各anはAに属する。x∈Aの場合には定値列があるので、Xは Fréchet–Urysohn である。▨
定理 3.9.X、Yを Hausdorff 空間、q:X→Yを商写像とし、Xは Fréchet–Urysohn であるとする。このとき、Yが Fréchet–Urysohn であることとqが継承的商写像であることは同値である。
証明.Yが Fréchet–Urysohn であるとし、B⊆Y、y∈clY(B)をとる。y∈Bならばy∈q(clX(q−1(B)))である。y∈/Bの場合、bn∈B、bn→yとなる点列をとり、C={bn:n∈N≥1}とおく。C∪{y}はコンパクトであり、Hausdorff 性により閉であるから、clY(C)=C∪{y}である。
q−1({y})∩clX(q−1(B))=∅と仮定する。連続性から
clX(q−1(C))⊆q−1(C∪{y})であり、左辺はq−1({y})と交わらない。したがってq−1(C)は閉である。商性によってCも閉となるが、y∈clY(C)∖Cに矛盾する。ゆえに§E2.37 定理 1.3 (3)が成り立ち、qは継承的商写像である。逆方向は補題 3.6から従う。▨
定理 3.10 (Ponomarev).T0空間Xについて、次の条件は同値である。
- Xは第一可算である。
- 距離空間MからXへの連続かつ開な全射が存在する。
証明.Xを空でない第一可算空間とし、Bを空でない開集合全体に離散位相を入れた空間とする。BN≥1の部分空間
M={(Un)n∈N≥1:{Un:n∈N≥1} はある点の開近傍基である}は、§E2.14 系 3.2により距離化可能である。同じ族が二点の開近傍基であるならば、二点の開近傍全体は一致するから、T0性によって二点は等しい。したがってu=(Un)∈Mにその開近傍基の基点を対応させる写像f:M→Xが定まる。第一可算性により各点の開近傍基を列にすることができるので、fは全射である。
有限列U1,…,Ur∈Bに対して、最初のr項をこの列に固定したMの基本開集合をC(U1,…,Ur)とおく。このとき
f(C(U1,…,Ur))=i=1⋂rUiである。左辺の点は指定された各開近傍に属する。逆にx∈⋂i=1rUiならば、xの可算開近傍基を有限列U1,…,Urの後へ付け足すとMの元となり、その像はxである。この像の等式によりfは開写像である。
f(u)∈Vとなる開集合V⊆Xに対して、u=(Un)が開近傍基であることからUn⊆Vとなるnが存在する。C(U1,…,Un)はuを含み、その像はUn⊆Vに含まれる。したがってf−1(V)は開であり、fは連続である。X=∅の場合は空の距離空間からの写像を取る。
f:M→Xを距離空間からの連続開全射とする。x∈Xに対してf(m)=xとなるmと、mの可算開近傍基(Vn)を取る。各f(Vn)はxの開近傍であり、xの開近傍Uに対してVn⊆f−1(U)となるnが存在するから、f(Vn)⊆Uである。ゆえに(f(Vn))はxの可算開近傍基であり、Xは第一可算である。▨
4 可算コンパクト空間の特徴付け
可算コンパクト性を Kuratowski 型の性質により特徴付けよう。
命題 4.1.Xを位相空間とする。このとき、次の主張は同値である:
- Xは可算コンパクトである。
- 任意の列型空間Sに対し、射影prS:X×S→Sは閉写像である。
- 射影prω+1:X×(ω+1)→ω+1は閉写像である。
証明.(2)⇒(3)は自明である。逆に(3)⇒(2)は定理 3.3により離散位相を入れた空間H:=Hom(ω+1,S)を用いて商写像(ω+1)×H→Sをとれば、仮定からX×(ω+1)×H→(ω+1)×Hは閉写像であり、よってその商であるX×S→Sも閉であることがわかる。残っていることは(1)⇔(3)を示すことである。
(1)⇒(3)を示す。F⊂X×(ω+1)を閉集合とする。I:=prω+1(F)∩ωが有限集合であれば閉なので無限集合であると仮定する。各n∈Iに対して(xn,n)∈Fとなる点xn∈Xをとれば、Xが可算コンパクトであることとIが無限集合であることから、点列(xn)n∈Iは集積点x∈Xを持つ。このとき、(x,ω)はX×(ω+1)の点列((xn,n))n∈Iの集積点であり、Fが閉であることから(x,ω)∈Fとなる。よってω∈prω+1(F)となり、prω+1(F)は閉である。
(3)⇒(1)の対偶を示す。(Cn)n∈ωを有限交差性を持つ閉部分集合の族であって⋂n∈ωCn=∅となるものとする。このとき、C:=⋃n∈ω(⋂k≤nCk)×{n}⊂X×(ω+1)は閉である。実際、任意のx∈Xに対し、⋂n∈ωCn=∅であることから、あるNが存在してx∈⋂k≤NCkが成り立つ。このとき(X∖⋂k≤NCk)×(N,ω]は(x,ω)を含みCと交わらない開集合である。よってCは閉である。一方、有限交差性からprω+1(C)=ωとなるが、これはω+1の閉集合でない。以上で示された。▨
5 例
定義 5.1. 可算個のS={0}∪{1/m:m∈N≥1}の位相的直和において、各コピーの0を一点∗に同一視した商空間を 可算列扇 (countable sequential fan) といい、Sωと書く。第nコピーの1/mの像をsn,mと書く。各sn,mは孤立点であり、∗の開近傍基は
Uf={∗}∪{sn,m:n,m∈N≥1, m≥f(n)},f:N≥1→N≥1で与えられる。実際、商写像による逆像が各コピーで開であるための条件は、0を含むコピーごとにその列の尾部を含むことである。
命題 5.2. 可算列扇Sωは Hausdorff な Fréchet–Urysohn 空間であるが、第一可算ではない。
証明. 異なる孤立点はそれぞれの一点開集合で分離される。∗とsn,mは、f(n)>mを満たすUfと{sn,m}で分離されるから、Sωは Hausdorff である。
A⊆Sω、∗∈A∖Aとする。各枝でA∩{sn,m:m∈N≥1}が有限ならば、各f(n)をその枝のAの点の添字より大きくとることによってUf∩A=∅となる。したがって、ある枝にAの点が無限個存在する。その枝で添字を狭義増加させた点列は∗へ収束する。孤立点がAに属するならばその点はAに属するから、定値列を用いればよい。ゆえにSωは Fréchet–Urysohn である。
(Vj)j∈N≥1が∗の可算近傍基であると仮定する。各jに対してsj,mj∈Vjとなるmjをとり、f(j)=mj+1とおく。どのVjもUfに含まれず、近傍基の性質に矛盾する。▨
補題 5.3. 可算列扇Sωの任意のコンパクト部分集合Kに対して、有限集合F⊆N≥1が存在し、
K⊆{∗}∪{sn,m:n∈F, m∈N≥1}が成り立つ。
証明.Kが無限本の枝に交わると仮定し、異なる枝から一点ずつ選んだ無限集合D⊆Kをとる。各枝の選んだ点を除くようにfをとればUf∩D=∅となり、他の点は孤立点であるからDはSωで閉である。したがってDはKの閉部分空間としてコンパクトである。一方、Dは無限離散空間であり、一点集合による開被覆は有限部分被覆をもたない。これは矛盾である。▨
定義 5.4.S={0}∪{1/m:m∈N≥1}のコピーT={∗}∪{xn:n∈N≥1}とTn={an}∪{xn,m:m∈N≥1}、n∈N≥1をとる。Tでは0に∗、1/nにxnが対応し、Tnでは0にan、1/mにxn,mが対応する。これらの位相的直和において各anとxnを同一視した商空間を Arens 空間 (Arens space) といい、S2と書く。
S2の各xn,mは孤立点である。xnの開近傍基は
Vn,M={xn}∪{xn,m:m≥M},M∈N≥1であり、∗の開近傍基は
WN,f={∗}∪n≥N⋃({xn}∪{xn,m:m≥f(n)}),N∈N≥1, f:N≥1→N≥1である。これらの近傍は、逆像がTおよび各Tnで開であるという商位相の条件から得られる。
補題 5.5. Arens 空間S2の孤立点全体をD={xn,m:n,m∈N≥1}とする。D内の点列が∗へ収束することはない。
証明.D内の点列(zj)をとる。ある枝{xn,m:m∈N≥1}に属する項が無限個あるならば、N>nを満たすWN,fはそのすべての項を除くから、(zj)は∗へ収束しない。どの枝に属する項も有限個であるならば、各枝について、その枝に現れる項の第二添字より大きいf(n)をとることができる。このときW1,fは点列のすべての項を除くから、やはり∗へ収束しない。▨
命題 5.6. Arens 空間S2は Hausdorff な列型空間であるが、Fréchet–Urysohn 空間ではない。孤立点集合D={xn,m:n,m∈N≥1}の点列の極限全体はD∪{xn:n∈N≥1}であり、この集合の点列の極限全体はS2である。
証明. 異なる枝の点は互いに素な枝近傍で分離される。同じ枝のxnとxn,mはVn,M、M>mと一点集合で分離される。∗と第n枝の点はWN,f、N>nと枝近傍で分離され、孤立点どうしも一点集合で分離される。したがってS2は Hausdorff である。
定義に用いた各収束列空間は距離空間であり列型であるから、補題 3.1によりS2は列型である。各xn,m→xnにより、Dの点列の極限全体はD∪{xn:n∈N≥1}を含む。補題 5.5により∗は含まれず、これで極限全体が確定する。xn→∗により、もう一度点列の極限を加えるとS2全体を得る。一方、各WN,fはDと交わるから∗∈Dである。D内から∗へ収束する点列は存在しないので、S2は Fréchet–Urysohn ではない。▨
証明.sclX(A)=clX(A)となるA⊆Xを取る。sclX(A)が閉ならばclX(A)⊆sclX(A)となるので、この列閉包は閉でない。列型性により、yj∈sclX(A)、yj→x∈/sclX(A)となる列が存在する。yj∈Aとなる項が無限個あれば、その部分列によってx∈sclX(A)となる。したがって有限個の項を除き、yj∈/Aとすることができる。Hausdorff 性により、xを含まない任意の有限集合の外に尾部があるから、相異なる項の部分列へ移り、(yj)自身を相異なる点の列としてよい。
H0=Xとおく。Hn−1がxの開近傍として得られたとき、以前の添字より大きいjnを選び、xn=yjn∈Hn−1とする。Hausdorff 性により、Hn−1に含まれるxとxnの互いに素な開近傍Hn,Vnを取る。i<nならばVn⊆Hiであり、Hi∩Vi=∅であるから、Vnは互いに素である。
xn∈sclX(A)∖Aであるから、A内からxnへ収束する列を取ることができる。その尾部はVnに含まれ、任意の有限部分集合を有限個の項を除いて避ける。したがって相異なる項の部分列を取り、xn,m∈A∩Vn、xn,m→xnとすることができる。▨
定理 5.8. Hausdorff な列型空間Xについて、次の条件は同値である。
- Xは Fréchet–Urysohn 空間である。
- 部分空間Y⊆Xで、その列型化sYが Arens 空間S2と同相になるものは存在しない。
証明.Xが Fréchet–Urysohn ならば、補題 3.6により任意の部分空間Yも Fréchet–Urysohn であり、命題 2.2によりsY=Yである。命題 5.6によってS2は Fréchet–Urysohn でないから、sYと同相にならない。
Xが Fréchet–Urysohn でないとし、補題 5.7のA,x,xn,Vn,xn,mを取る。S={0}∪{1/n:n∈N≥1}⊆Rとし、部分空間
Y={x}∪{xn:n∈N≥1}∪{xn,m:n,m∈N≥1}に対して、S2の∗、xn、xn,mをそれぞれYのx、xn、xn,mに送る全単射をg:S2→Yとする。
各枝Bn={xn}∪{xn,m:m∈N≥1}はVn∩Yに等しいからYで開である。補題 1.3と§E2.19 定理 6.8により、0↦xn、1/m↦xn,mはSからBnへの同相写像である。したがってxn,mへ収束する列は最終的にその点に等しく、xnへ収束する列は最終的にBnに属し、その枝の収束列空間でxnへ収束する。これらの条件はS2の対応する点への収束条件と一致する。
Y内の列(zj)がxへ収束するとする。zj∈{xn,m:n,m∈N≥1}⊆Aとなる項が無限個あれば、その部分列によってx∈sclX(A)となるから、そのような項は有限個である。ゆえに(zj)は最終的にT={x}∪{xn:n∈N≥1}に属する。再び§E2.19 定理 6.8により、0↦x、1/n↦xnはSからTへの同相写像である。したがってxへの収束は、最終的にTに属し、各有限集合{x1,…,xN}を有限個の項を除いて避けることと同値である。S2でも補題 5.5により∗へ収束する列の孤立点の項は有限個であり、残る列の収束条件はWN,fの記述から同じである。
したがってgとg−1は収束列とその極限を保つ。命題 2.2によりYとsYは収束列と極限を共有するから、g:S2→sYとその逆写像も収束列と極限を保つ。両空間は列型であるので、定理 3.3 (5)により両写像は連続であり、sYはS2と同相である。▨
命題 5.9. Arens 空間S2の部分空間
Y={∗}∪{xn,m:n,m∈N≥1}では、コンパクト部分集合はすべて有限である。Yはコンパクト生成でも列型でもない。
証明.Yのコンパクト部分集合Kが無限であると仮定する。ある第n枝とKの交わりが無限ならば、その交わりをEとおく。N>nを満たすWN,f∩Yは第n枝を除き、∗以外の点は孤立点であるから、その枝の任意の部分集合はYで閉かつ離散である。したがってEはKの無限閉離散部分空間となる。すべての枝との交わりが有限ならば、無限本の枝からKの点を一点ずつ選んだ集合Eをとる。各枝で選んだ点を除くW1,f∩Yが存在するから、Eは再びYで閉かつ離散である。どちらの場合もEはコンパクトな無限離散空間となって矛盾する。
Yは Hausdorff であるから、有限部分空間は離散空間である。したがってYのすべての部分集合は k 閉である。しかしD=Y∖{∗}はYで閉でないから、Yはコンパクト生成でない。命題 1.4によりYは列型でもない。S2自身は列型かつコンパクト生成であるから、両性質は任意の部分空間には遺伝しない。▨
命題 5.10. 最小の非可算順序数をω1とする。順序位相をもつ[0,ω1]はコンパクト Hausdorff 空間であり、コンパクト生成であるが列型でない。
証明.§E2.19 補題 7.1と§E2.17 系 4.4により[0,ω1]はコンパクト Hausdorff であり、§E2.38 命題 1.3によりコンパクト生成である。A=[0,ω1)内の点列(αn)をとる。§E2.17 補題 4.2により、すべてのαnを上から押さえるβ<ω1が存在する。ω1の開近傍(β,ω1]はすべての項を除くから、この点列はω1に収束しない。したがってAは列閉である。しかしω1の任意の開近傍はAと交わるからAは閉でなく、[0,ω1]は列型でない。▨
命題 5.11. 可算列扇Sωと通常の位相をもつ有理数空間Qは、ともに Hausdorff な Fréchet–Urysohn 空間である。しかしSω×Qはコンパクト生成でなく、したがって列型でも Fréchet–Urysohn でもない。
証明.命題 5.2によりSωは Hausdorff な Fréchet–Urysohn 空間である。Qは距離空間であるから、第一可算性と命題 1.4により Fréchet–Urysohn であり、Hausdorff である。各n,m∈N≥1について
an=n+12,rn,m=10m⌊10man⌋∈Q,An={(sn,m,rn,m):m∈N≥1}と定め、A=⋃n∈N≥1Anとおく。an∈/Q、an→0であり、0≤an−rn,m<10−mから各nについてrn,m→anである。
各AnはSω×Qで閉である。実際、第一座標が孤立点であるAnの外の点は、その一点集合と、必要ならば一つの有理数を除いたQの開集合との積によってAnから分離される。(∗,q)、q∈Qに対しては、q=anであるからqの実開区間JとM∈N≥1をとり、m≥Mならばrn,m∈/Jとすることができる。f(n)=MとすればUf×(J∩Q)はAnと交わらない。
(∗,0)の任意の積近傍Uf×Vをとる。あるε>0について(−ε,ε)∩Q⊆Vである。an<εとなるnをとり、次にm≥f(n)かつrn,m∈(−ε,ε)となるmをとると、(sn,m,rn,m)∈A∩(Uf×V)である。したがって(∗,0)∈A∖Aであり、Aは閉でない。
C⊆Sω×Qをコンパクト部分集合とする。第一射影pr1(C)はコンパクトであるから、補題 5.3により有限本の枝だけに交わる。その枝の添字集合をFとすると
A∩C=(n∈F⋃An)∩CはCで閉である。ゆえにAは k 閉でありながら閉でなく、Sω×Qはコンパクト生成でない。残りの結論は命題 1.4から従う。▨
6 閉包の反復と順序
定義 6.1. 位相空間Xの部分集合Aに対して、列閉包の反復を超限再帰によって
sclX0(A)=A,sclXα+1(A)=sclX(sclXα(A)),sclXλ(A)=α<λ⋃sclXα(A)と定める。最後の式は零でない極限順序数λに対するものである。すべてのA⊆XについてsclXα(A)=clX(A)となる順序数が存在するとき、その最小のものをXの 列型順序 (sequential order) という。列閉包とコンパクト閉包の反復ではXの位相を固定して部分集合を増大させる。これは、台集合を固定して位相を細かくするsXとkXの構成とは異なる操作である。
定理 6.2.Xを位相空間、A⊆Xとし、ω1を最小の非可算順序数とする。Aα=sclXα(A)とおくと
Aω1=clsX(A)であり、Aω1はAを含む最小の列閉集合である。特にXが列型ならばAω1=clX(A)である。Xが Fréchet–Urysohn ならばA1=clX(A)であるが、Arens 空間の孤立点集合についてはA1=A、A2=Aとなる。Xの列型順序が存在することとXが列型であることは同値であり、存在する場合はω1以下である。また、Xが Fréchet–Urysohn であることと、列型順序が存在して1以下であることは同値である。
証明.§E1.17 系 2.4により長さω1+1の族(Aα)α≤ω1を構成する。列閉包の単調性とB⊆sclX(B)により、この族は増大する。また、Aを含む任意の列閉集合Fに対して、超限帰納法でAα⊆Fがすべての段階で成り立つ。特にAα⊆clX(A)である。
Aω1内の点列(xn)がxへ収束するとする。ω1は極限順序数であるから、各nについてxn∈Aαnを満たすαn<ω1が存在する。§E2.17 補題 4.2により、すべてのαnを上から押さえるβ<ω1が存在する。したがってxn∈Aβであり、
x∈sclX(Aβ)=Aβ+1⊆Aω1.ゆえにAω1は列閉であり、先の包含によりAを含む最小の列閉集合である。
sXの閉集合はXの列閉集合であるから、Aを含む最小の列閉集合Aω1はclsX(A)に等しい。Xが列型ならば命題 2.2によりsX=Xであるから、Aω1=clX(A)を得る。Fréchet–Urysohn 空間の結論は列閉包の定義から従う。Arens 空間の結論は命題 5.6の二段階の極限の記述から従う。
列型空間については、全部分集合に共通する到達段階ω1があるので列型順序が存在する。逆に列型順序が存在し、F⊆Xが列閉であるならば、すべての反復がFに等しいからF=clX(F)となる。したがってXは列型である。Fréchet–Urysohn 性については、列閉包の定義によりsclX(A)=clX(A)がすべてのAで成り立つことが必要十分である。▨
補題 6.3. 位相空間Xの部分集合Aに対して
sclX(A)⊆kclX(A)が成り立つ。また、すべての順序数αについて
sclXα(A)⊆kclXα(A)⊆clX(A)が成り立つ。
証明.xn∈A、xn→xに対して、§E2.38 補題 1.2によりK={x}∪{xn:n∈N≥1}はコンパクトであり、x∈clK(A∩K)⊆kclX(A)である。
反復の包含は超限帰納法で従う。後続段階では定義 1.2と§E2.38 補題 4.2による二つの作用素の単調性と一段階の包含を用い、極限段階ではそれまでの包含の和集合を取る。通常の閉包はコンパクト閉包でも不変であるから、すべての段階がclX(A)に含まれる。▨
定理 6.4. 列型空間Xのコンパクト順序と列型順序について
コンパクト順序 ≤ 列型順序 ≤ ω1が成り立つ。
証明.Xが列型で、その列型順序がσであるならば、補題 6.3により、すべてのA⊆Xに対して
clX(A)=sclXσ(A)⊆kclXσ(A)⊆clX(A)となる。したがってコンパクト順序はσ以下であり、定理 6.2によりσ≤ω1である。▨
例 6.5. 次が成り立つ。
- Arens 空間S2の列型順序は2である。
- コンパクト Hausdorff 空間[0,ω1]のコンパクト順序は1であるが、列型順序は存在しない。
証明.A⊆S2とする。孤立点がAに属するならばその点はAに属する。xn∈A∖Aならば、第n枝のAの点の第二添字は非有界であるから、その枝内でxnへ収束するAの点列を取ることができる。
∗∈A∖Aとし、
I={n∈N≥1:xn∈A または {m:xn,m∈A} は無限}とおく。Iが有限ならばn≥Nでn∈/IとなるNを取る。各n≥Nについてf(n)をその枝のAの点の第二添字より大きく取り、n<Nでは任意に定めると、WN,f∩A=∅となる。これは∗∈Aに反するので、Iは無限である。各n∈Iについてxn∈sclS2(A)であり、Iの狭義増加な枚挙に沿う列は∗へ収束する。ゆえに∗∈sclS22(A)である。これで任意のAについてA=sclS22(A)を得る。命題 5.6の孤立点集合は一段階では閉包へ達しないから、列型順序は正確に2である。
§E2.38 例 4.4によりコンパクト空間のコンパクト順序は1以下である。[0,ω1)は[0,ω1]で閉でないので、この空間のコンパクト順序は0ではない。列型順序が存在しないことは命題 5.10と定理 6.2から従う。▨
7 列型空間の濃度と可算コンパクト性
定理 7.1. Hausdorff な列型空間Xの任意の部分集合Aに対して
∣clX(A)∣≤∣A∣ℵ0が成り立つ。連続体濃度をc=2ℵ0とすると、∣A∣≤cならば∣clX(A)∣≤cであり、∣A∣=cならば∣clX(A)∣=cである。特に、可分な列型 Hausdorff 空間の濃度はc以下である。
証明.Aが有限ならば、Hausdorff 性によりAは閉であり、∣A∣≤∣A∣ℵ0である。A=∅の場合には両辺が0である。κ=∣A∣を無限とし、μ=κℵ0とおく。§E1.22 命題 1.6 (1)と§E1.22 系 3.3により
μℵ0=κℵ0⋅ℵ0=μ,μ≥2ℵ0≥ℵ1である。任意のB⊆Xについて、Hausdorff 性により一つの点列の極限は高々一つであるから、∣sclX(B)∣≤∣B∣ℵ0となる。
Aα=sclXα(A)とおく。∣A0∣=κ≤μであり、∣Aα∣≤μならば∣Aα+1∣≤μℵ0=μである。極限段階λ≤ω1では、先行するすべての段階の濃度がμ以下であるならば、§E1.22 系 3.3により
∣Aλ∣≤∣λ∣⋅μ≤ℵ1⋅μ=μとなる。超限帰納法と定理 6.2により、∣clX(A)∣=∣Aω1∣≤μを得る。
§E1.22 例 5.4によりcℵ0=cであるから、∣A∣≤cの場合の上界が従う。∣A∣=cならばA⊆clX(A)により逆の不等式も成り立つ。可分空間では高々可算な稠密部分集合Aを取ればX=clX(A)であり、同じ上界を得る。▨
例 7.2.X={0,1}に密着位相{∅,X}を入れる。空集合の閉包は空であり、空でない部分集合の一点を値とする定値列はXの各点へ収束するから、Xは Fréchet–Urysohn 空間である。Xの閉集合は∅とXだけであるから、A={0}に対してclX(A)=Xであり、
∣clX(A)∣=2>1=∣A∣ℵ0となる。したがって定理 7.1から Hausdorff 性の仮定を外すことはできない。
系 7.3.Xを列型空間、λを共終数が非可算な極限順序数とする。閉集合族(Fα)α<λがα≤βのときFα⊆Fβを満たすならば、⋃α<λFαは閉である。特に、この結論はλ=ω1に対して成り立つ。
証明.F=⋃α<λFα内の点列xn→xに対して、xn∈Fαnとなるαn<λを取る。λの共終数は非可算であるから、{αn:n∈N≥1}は共終でなく、すべてのαnを上から押さえるβ<λが存在する。増大性から各xn∈Fβであり、Fβは閉なのでx∈Fβ⊆Fである。したがってFは列閉であり、列型性により閉である。ω1の場合は§E1.23 定理 2.10による。▨
例 7.4. 通常の実数空間において、Fn=[0,1−1/n]、n∈N≥1は閉集合の増大列であるが、その和集合[0,1)は閉でない。したがって系 7.3の共終数に対する仮定を可算共終数へ広げることはできない。
定理 7.5. 列型 Hausdorff 空間が可算コンパクトであることと、点列コンパクトであることは同値である。
証明.Xを可算コンパクトな列型 Hausdorff 空間とし、X内の点列(xn)をとる。ある値が無限回現れれば定値部分列が存在するので、どの値も有限回しか現れない場合を考える。D={xn:n∈N≥1}は可算無限集合であるから、§E2.23 系 5.2 (1)により集積点xをもつ。B=D∖{x}とおくと、x∈clX(B)∖Bであり、Bは閉でない。
列型性により、B内の点列(bj)とy∈X∖Bでbj→yとなるものが存在する。Hausdorff 性により有限集合は閉であり、y∈/Bであるから、(bj)はBの任意の有限部分集合を有限個の項を除いて避ける。帰納的に狭義増加な添字列(jk)と(nk)を選び、bjk=xnkとすることができる。実際、jk,nkまで選んだ後、bjk+1が有限集合B∩{x1,…,xnk}を避けるようにjk+1>jkをとり、bjk+1の出現位置nk+1をとればnk+1>nkである。したがって(xnk)はyへ収束する部分列であり、Xは点列コンパクトである。
逆方向は§E2.23 定理 3.3により、任意の位相空間で成り立つ。▨
8 kω空間との比較
例 8.1. 可算列扇Sωはkω空間である。具体的には
Kn={∗}∪{si,m:1≤i≤n, m∈N≥1},n∈N≥1が定義のコンパクト増大列となる。一方、頂点∗はコンパクト近傍をもたず、Sωは局所コンパクトではない。
証明. 各i∈N≥1についてsi,m→∗であるから、補題 1.3により{∗}∪{si,m:m∈N≥1}は標準収束列空間の連続像としてコンパクトである。その有限和Knもコンパクトであり、(Kn)は増大してSωを覆う。補題 5.3により、任意のコンパクト部分集合は有限本の枝だけに交わるから、あるKnに含まれる。Sωは命題 5.2と命題 1.4により Hausdorff なコンパクト生成空間であるので、§E2.38 定理 5.3の吸収列による特徴づけから、(Kn)はkωの閉集合判定を与える。
∗の任意の近傍は、基本開近傍Ufを含む。Ufはすべての枝に交わるから、有限本の枝だけに交わるコンパクト部分集合に含まれることはない。したがって∗はコンパクト近傍をもたない。▨
命題 8.2.kω空間Xに対して、定義の閉集合判定を満たすコンパクト部分集合の増大列(Kn)で、各Knが距離化可能であるものが存在するならば、Xは列型である。
証明. 自然な全射q:∐n∈N≥1Kn→Xは、直和の成分ごとの閉集合判定とkωの閉集合判定により商写像である。各Knは距離化可能であるから列型であり、補題 3.1により直和とその商像Xも列型である。▨
例 8.3. コンパクト Hausdorff 空間[0,ω1]はkω空間であるが列型ではない。
証明.[0,ω1]についてはすべてのnでKn=[0,ω1]とすればkωの条件を満たし、列型でないことは命題 5.10による。▨
9 演習
問題 9.1. Arens 空間S2の部分空間
Y={∗}∪{xn,m:n,m∈N≥1}に対して、kYとsYの位相を求めよ。
解答.
命題 5.9により、Yのコンパクト部分集合はすべて有限である。Yは Hausdorff であるから、各有限部分空間は離散空間である。したがってYの任意の部分集合は k 閉であり、k 化の閉集合の記述によりkYの閉集合はYの全部分集合となる。ゆえにkYは離散空間である。
Y内でyj→yとする。補題 1.3によりC={y}∪{yj:j∈N≥1}はコンパクトであるから有限である。Hausdorff 性によりC∖{y}はYで閉であり、その補集合はyの開近傍である。したがって(yj)は有限個の項を除いてyに等しい。ゆえにYの任意の部分集合は列閉であり、列型化の閉集合の記述によりsYの閉集合もYの全部分集合となる。したがってsYも離散空間である。▨
問題 9.2.Xを可算コンパクトな位相空間、Sを列型空間の部分空間である空間とするとき、射影prS:S×X→Sは閉であることを示せ。
解答.
Sを部分空間として含む列型空間Tをとる。命題 4.1により、射影p:T×X→Tは閉写像である。p−1(S)=S×Xであり、pの全逆像p−1(S)と終域Sへの制限はprS:S×X→Sに一致する。したがって§E2.12 補題 5.6 (3)によりprSは閉写像である。▨