1 固有写像
定義 1.1 (固有写像). 位相空間X、Yと連続写像f:X→Yに対して、fが 固有写像 (proper map) である、またはfが固有であるとは、Yの任意のコンパクト部分集合Kに対してf−1(K)がXのコンパクト部分集合であることをいう。
命題 1.2. 次が成り立つ。
- 位相空間Xの恒等写像idX:X→Xは固有である。
- Xを位相空間、Kをコンパクト空間とする。このとき、ある連続写像X→Kが固有であれば、Xはコンパクトである。特に、Pを一点からなる位相空間とすれば、唯一の連続写像X→Pが固有であることとXがコンパクトであることは同値である。
- Xを位相空間、A⊆Xを閉集合とすると、包含写像ιA:A→Xは固有閉写像である。
- Kをコンパクト空間、Xを Hausdorff 空間とするとき、任意の連続写像f:K→Xは固有閉写像である。
注意 1.3. コンパクト空間の間の連続写像は固有であるとは限らない。たとえば[0,1]に密着位相を入れた位相空間をI0とすると、恒等写像[0,1]→I0はコンパクト空間の間の連続写像であるが、I0∖{0}⊂I0という密着位相の入ったコンパクト空間の逆像(0,1]⊂[0,1]はコンパクトでない。
命題 1.4. 位相空間X、Y、Zと固有写像f:X→Y、g:Y→Zに対して、合成g∘f:X→Zは固有である。
証明.fとgは連続であるから、§E2.12 命題 1.10によりg∘fは連続である。K⊆Zをコンパクト部分集合とする。gが固有であるからg−1(K)はYのコンパクト部分集合であり、fが固有であるからf−1(g−1(K))はXのコンパクト部分集合である。§E1.1 命題 4.8により(g∘f)−1(K)=f−1(g−1(K))であるから、(g∘f)−1(K)はXのコンパクト部分集合である。▨
命題 1.5. 位相空間X、Yと固有閉写像f:X→Y、部分集合B⊆Yに対してA=f−1(B)とおく。このとき、値域と終域を制限した写像g:A→B、g(x)=f(x)は閉写像であって固有である。
証明.fは連続であるから§E2.12 補題 5.6 (1)によりgは連続であり、fは閉写像であるから§E2.12 補題 5.6 (3)によりgは閉写像である。
K⊆Bを部分空間Bのコンパクト部分集合とすると、§E2.19 補題 2.7によりKはYのコンパクト部分集合であり、fは固有であるからf−1(K)はXのコンパクト部分集合である。K⊆Bからf−1(K)⊆f−1(B)=Aであり、g−1(K)=f−1(K)であるから、ふたたび§E2.19 補題 2.7によりg−1(K)はAのコンパクト部分集合である。ゆえにgは固有である。▨
例 1.6.Yを無限集合、q∈Yを一つの元とし、D=Y∖{q}とおく。Yが無限集合であるからDも無限集合である。
OY={U⊆Y∣U⊆D}∪{Y}とおく。∅⊆DとY∈OYから∅とYはともにOYに属する。OYの元からなる族の和集合は、族の元にYが現れるならばYであり、そうでなければDに含まれる集合である。OYの二つの元の共通部分は、一方がYならば他方に等しく、ともにDに含まれるならばDに含まれる。したがって§E2.11 定義 1.1によりOYはYの位相である。この位相について次が成り立つ。
- Yはコンパクトである。
- 包含写像ιD:D→Yは連続であるが固有でない。
- コンパクトな位相空間からの連続写像は固有であるとは限らない。
証明.(1)を示す。(Ui)i∈IをYの開被覆とすると、q∈Ui0を満たすi0∈Iが存在する。q∈/DであるからUi0はDに含まれず、OYの定義によりUi0=Yである。したがって有限部分集合{i0}⊆Iが定める部分族はYの開被覆であり、§E2.19 定義 2.1によりYはコンパクトである。
(2)を示す。ιDは連続である(§E2.12 定理 4.4)。Dの部分空間位相は{U∩D∣U∈OY}であり、U⊆Dに対してU∩D=U、Y∩D=Dであるから、これはDのすべての部分集合からなる族、すなわち離散位相である。Dは無限集合であるから、§E2.19 例 2.9により部分空間Dはコンパクトでない。一方(1)によりY自身はYのコンパクト部分集合であり、ιD−1(Y)=Dである。ゆえにιDは固有でない。
(3)を示す。T={a,b}に密着位相を入れ、写像g:Y→Tを、y∈Dに対してg(y)=a、g(q)=bと定める。密着位相を終域にもつ写像は連続である(§E2.12 例 1.11)。{a}は有限であるから§E2.19 例 2.3によりTのコンパクト部分集合であり、g−1({a})=Dである。(2)で示したとおり、部分空間Dはコンパクトでない。したがってYはコンパクトであるにもかかわらずgは固有でない。▨
補題 1.7.f:X→Yを固有写像とすると、任意のy∈Yに対してf−1({y})はXのコンパクト部分集合である。
証明.{y}⊂Yはコンパクト部分集合なので主張は固有写像の定義よりただちに従う。▨
命題 1.9. 通常の位相を入れたRの連続写像f:R→Rが固有であるための必要十分条件は、任意のM>0に対してあるR>0が存在し、∣x∣>Rを満たすすべてのx∈Rに対して∣f(x)∣>Mとなることである。
証明.Rの通常の距離は Euclid 距離のn=1の場合であるから、§E2.9 定理 4.3により、Rの部分集合がコンパクトであることと有界かつ閉であることは同値である。
fが固有であるとし、実数M>0をとる。[−M,M]はRの有界な閉集合であるから§E2.9 定理 4.3によりコンパクトであり、fが固有であることからL=f−1([−M,M])はRのコンパクト部分集合である。ふたたび§E2.9 定理 4.3によりLは有界であるから、L⊆[−R,R]を満たす実数R>0が存在する。∣x∣>Rを満たすx∈RはLに属さないから∣f(x)∣>Mである。
逆に、判定の条件が成り立つとし、K⊆Rをコンパクト部分集合とする。§E2.9 定理 4.3によりKは有界かつ閉であるから、K⊆[−M,M]を満たす実数M>0が存在する。条件が与える実数R>0をとると、∣x∣>Rを満たすxについて∣f(x)∣>Mであり、このときf(x)∈/Kである。したがってf−1(K)⊆[−R,R]であり、f−1(K)は有界である。KはRの閉集合でありfは連続であるから、§E2.12 命題 1.6によりf−1(K)はRの閉集合である。ゆえに§E2.9 定理 4.3によりf−1(K)はコンパクトであり、fは固有である。▨
2 完全写像
定義 2.1 (完全写像). 完全写像 (perfect map) とは、固有写像であって、さらに全射閉写像である位相空間の間の写像のことを言う。
例 2.2. 完全写像の定義が課す三つの条件のうち、どの二つも残る一つを導かない。
- S={a,b}とし、OdをSの離散位相、Os={∅,{a},S}とする。恒等写像idS:(S,Od)→(S,Os)は全射かつ固有であるが、閉写像でない。
- Xを無限集合に離散位相を入れた空間、Pを一点からなる位相空間とすると、唯一の写像cX:X→Pは全射かつ閉写像であるが、固有でない。
- S={a,b}に離散位相を入れ、A={a}とすると、包含写像ιA:A→Sは閉写像かつ固有であるが、全射でない。
証明.(1)を示す。Os⊆Odであるから、§E2.12 命題 5.7 (1)によりidSは連続である。恒等写像は全射である。Sは有限集合であるから、(S,Od)と(S,Os)のすべての部分集合は有限であり、§E2.19 例 2.3によりコンパクトである。したがって任意のコンパクト部分集合の逆像はコンパクトであり、idSは固有である。{b}∈Odであるが{b}∈/OsであるからOd⊆Osは成り立たず、§E2.12 命題 5.7 (2)によりidSは閉写像でない。
(2)を示す。Pの位相は{∅,P}であり、cX−1(∅)=∅とcX−1(P)=XはともにXの開集合であるから、cXは連続である。Xは空でないからcXは全射である。Xの閉集合Fに対してcX(F)はF=∅ならば∅、F=∅ならばPであり、いずれもPの閉集合であるからcXは閉写像である。Xは無限な離散空間であるから§E2.19 例 2.9によりコンパクトでなく、命題 1.2 (2)によりcXは固有でない。
(3)を示す。離散位相ではA={a}はSの閉集合であるから、命題 1.2 (3)によりιAは固有かつ閉写像である。b∈/ιA(A)={a}であるからιAは全射でない。▨
命題 2.3. 位相空間X、Yと完全写像f:X→Yに対して、XがコンパクトであることとYがコンパクトであることは同値である。
証明は演習とする(問題 6.3)。
命題 2.4. 位相空間X、Y、Zと完全写像f:X→Y、g:Y→Zに対して、合成g∘f:X→Zは完全である。
証明.fとgは全射であるから、§E1.1 命題 3.5によりg∘fは全射である。fとgは閉写像であるから、§E2.12 命題 5.3によりg∘fは閉写像である。fとgは固有であるから、命題 1.4によりg∘fは固有であり、とくに連続である。▨
命題 2.5. 位相空間X、Yと固有閉写像f:X→Y、部分集合B⊆f(X)に対してA=f−1(B)とおく。このとき、値域と終域を制限した写像g:A→B、g(x)=f(x)は完全である。
証明.fは連続であるから、§E2.12 補題 5.6 (1)によりgは連続である。
B⊂f(X)であるから、§E1.1 命題 4.9によりf(f−1(B))=B∩f(X)=Bである。g(A)=f(f−1(B))であるからg(A)=Bであり、gは全射である。
K⊆Bを部分空間Bのコンパクト部分集合とする。§E2.19 補題 2.7によりKはYのコンパクト部分集合である。fは固有であるからf−1(K)はXのコンパクト部分集合である。K⊆Bからf−1(K)⊆f−1(B)=Aであり、§E2.19 補題 2.7によりf−1(K)はAのコンパクト部分集合である。g−1(K)=f−1(K)であるから、g−1(K)はAのコンパクト部分集合である。
fは閉写像であるから、§E2.12 補題 5.6 (3)によりgは閉写像である。以上によりgは完全である。▨
3 被覆の押し出し
固有な閉写像に沿うと、定義域の側の開被覆から終域の側の開被覆を作ることができる。逆像がもとの被覆に収まるように作れることが、次の補題の要点である。
補題 3.1.X、Yを位相空間、f:X→Yを固有閉写像とする。U=(Ui)i∈IをXの開被覆とする。A∈[I]<∞に対し、
UA:=i∈A⋃Ui,VA:=Y∖f(X∖UA),f(U):=(VA∣A∈[I]<∞)と定義する。ただしここで[I]<∞はIの有限部分集合の集合である。このとき、次が成り立つ:
- 任意のA∈[I]<∞に対し、VA⊂Yは開集合であり、f−1(VA)⊂UAが成り立つ。
- f(U)はYの開被覆である。
- UがXの開基で、fが完全写像であれば、任意の点y∈Yと任意の開近傍y∈V⊂Yに対し、あるA∈[I]<∞が存在してf−1(y)⊂UA⊂f−1(V)が成り立つ。とくにこのとき、f(U)はYの開基である。
証明.(1)を示す。UA=⋃i∈AUiは開集合なので、X∖UAは閉集合であり、fが閉写像であることからf(X∖UA)はYの閉集合である。よってVA=Y∖f(X∖UA)は開集合である。さらにf(X∖UA)⊂Y∖VAであるから、X∖UA⊂f−1(Y∖VA)=X∖f−1(VA)であり、よってf−1(VA)⊂UAが成り立つ。
(2)を示す。y∈Yを任意にとれば、fが固有写像であることから、f−1(y)⊂Xはコンパクト部分集合である。よってあるAy∈[I]<∞が存在してf−1(y)⊂UAyが成り立つ。このときy∈VAyである。これはf(U)がYの被覆であることを意味している。
(3)を示す。点y∈Yと開近傍y∈V⊂Yを任意に取る。Uは開基なので、任意の点x∈f−1(y)に対してx∈Uix⊂f−1(V)となるix∈Iが存在する。f−1(y)はコンパクトなので、有限部分集合Ay⊂{ix∣x∈f−1(y)}⊂Iが存在してf−1(y)⊂⋃i∈AyUiが成り立つ。ここでAyの取り方から、任意のi∈Ayに対してUi⊂f−1(V)が成り立つので、よってf−1(y)⊂UA⊂f−1(V)となる。これはy∈VA⊂Vを示していて、よってf(U)はYの開基である。▨
系 3.2.f:X→Yを位相空間の間の完全写像とするとき、w(Y)≤max{w(X),ℵ0}が成り立つ。とくにXが第二可算ならばYも第二可算である。
証明.§E2.13 定義 5.7により、∣I∣=w(X)を満たす添字集合Iで添字づけたXの開基U=(Ui)i∈Iをとる。補題 3.1 (3)によりf(U)=(VA)A∈[I]<∞はYの開基である。Iが有限ならば[I]<∞は有限であり、Iが無限ならば§E1.22 補題 6.3により∣[I]<∞∣=∣I∣である。A↦VAは[I]<∞から開基{VA∣A∈[I]<∞}への全射であり、§E1.20 系 2.4 (2)が与える切断は単射であるから、この開基の濃度はmax{w(X),ℵ0}以下である。ゆえに§E2.13 定義 5.7によりw(Y)≤max{w(X),ℵ0}である。後半は§E2.13 命題 5.8による。▨
4 コンパクト性と射影の閉性
補題 4.1.X、Zを位相空間、C⊆Xをコンパクト部分集合、z∈Zとし、NをC×{z}⊆Nを満たすX×Zの開集合とする。このとき、C⊆Uとz∈Vを満たすXの開集合UとZの開集合VでU×V⊆Nを満たすものが存在する。
証明.C=∅のときはU=∅、V=Zとおけばよい。以下ではC=∅とする。
U={U′⊆X∣U′ は開集合であり、z∈V′ と U′×V′⊆N を満たす Z の開集合 V′ が存在する}とおく。x∈Cをとると(x,z)∈C×{z}⊆Nである。§E2.14 補題 1.11と§E2.13 命題 1.2により、x∈U′、z∈V′、U′×V′⊆Nを満たすXの開集合U′とZの開集合V′が存在する。したがってU′∈Uであり、UはCを覆う。
Cはコンパクトであるから、§E2.19 命題 2.6により、C⊆U1∪⋯∪Unを満たすU1,…,Un∈Uが存在する。C=∅であるからn≥1である。各iに対してz∈ViとUi×Vi⊆Nを満たすZの開集合Viを§E1.18 補題 2.6により同時にとり、
U=i=1⋃nUi,V=i=1⋂nViとおく。§E2.11 定義 1.1によりUとVは開集合であり、C⊆Uかつz∈Vである。(x,w)∈U×Vをとると、x∈Uiを満たすiが存在し、w∈V⊆Viであるから(x,w)∈Ui×Vi⊆Nである。ゆえにU×V⊆Nである。▨
定理 4.2 (Kuratowski–Mrówka の定理).Xを位相空間とする。次の二条件は同値である。
- Xはコンパクトである。
- 任意の位相空間Zに対して、射影prZ:X×Z→Zは閉写像である。
証明.(1)⇒(2)を示す。Zを位相空間、AをX×Zの閉集合とし、z∈Z∖prZ(A)をとる。任意のx∈Xに対して(x,z)∈/Aであるから、N=(X×Z)∖AはX×{z}を含む開集合である。Xはコンパクトであるから、補題 4.1をC=Xに適用して、X⊆Uとz∈Vを満たす開集合U⊆X、V⊆ZでU×V⊆Nを満たすものを得る。U⊆XとあわせてU=Xであるから(X×V)∩A=∅である。w∈V∩prZ(A)とすると(x,w)∈Aを満たすx∈Xが存在し、(x,w)∈X×Vとなって(X×V)∩A=∅に反する。したがってV⊆Z∖prZ(A)である。zは任意であったから、§E2.11 補題 2.6によりZ∖prZ(A)は開集合であり、prZ(A)はZの閉集合である。
(2)⇒(1)を示す。Λを空でない集合、(Fλ)λ∈Λを有限交差性をもつXの閉集合の族とし、⋂λ∈ΛFλ=∅であると仮定する。
D={Fλ1∩⋯∩Fλk∣k∈Z≥1, λ1,…,λk∈Λ}とおく。Dの各元は有限個の閉集合の共通部分であるからXの閉集合であり、有限交差性により空でない。Λ=∅であるからD=∅であり、Dの二つの元の共通部分はふたたびDの元である。また、添字を一つだけとる場合を含むことから⋂D∈DD=⋂λ∈ΛFλ=∅である。
Xに属さない元∞を一つとり、Z=X∪{∞}とおく。Zの部分集合の族を
OZ={W⊆Z∣∞∈W ならば D⊆W を満たす D∈D が存在する}と定める。∞∈/∅であるから∅∈OZであり、Dは空でなく、その元DはD⊆Zを満たすからZ∈OZである。OZの元からなる族の和集合が∞を含むならば、∞を含む元Wがあり、D⊆Wを満たすD∈Dが和集合に含まれる。OZの二つの元W1、W2の共通部分が∞を含むならば、D1⊆W1とD2⊆W2を満たすD1,D2∈DをとるとD1∩D2∈DかつD1∩D2⊆W1∩W2である。したがって§E2.11 定義 1.1によりOZはZの位相である。とくに、各D∈Dに対して{∞}∪Dは∞を含むZの開集合である。
Δ={(t,t)∣t∈X}⊆X×Zとおき、A=Δとする。x∈Xをとると、⋂D∈DD=∅からx∈/Dを満たすD∈Dが存在する。DはXの閉集合であるからU=X∖DはXの開集合でありx∈Uである。W={∞}∪DとおくとU×Wは(x,∞)を含むX×Zの開集合である(§E2.14 補題 1.11)。(t,t)∈U×Wを満たすt∈Xがあるとすると、t∈Wとt=∞からt∈Dであり、t∈U=X∖Dと両立しない。したがって(U×W)∩Δ=∅であり、§E2.11 命題 7.2 (2)により(x,∞)∈/Aである。
xはXの任意の元であったからA∩(X×{∞})=∅であり、prZ(A)⊆Z∖{∞}=Xである。一方Δ⊆AからX=prZ(Δ)⊆prZ(A)である。ゆえにprZ(A)=Xである。AはX×Zの閉集合であるから、仮定(2)によりXはZの閉集合である。他方Z∖X={∞}であり、Dの元はすべて空でないXの部分集合であるからD⊆{∞}を満たすD∈Dは存在せず、{∞}はOZに属さない。したがってXはZの閉集合でなく、これはXがZの閉集合であることと両立しない。
ゆえに⋂λ∈ΛFλ=∅であり、§E2.19 定理 3.2によりXはコンパクトである。▨
命題 4.5.Xを位相空間、Kをコンパクトな位相空間とする。このとき、射影prX:X×K→Xは固有閉写像である。さらにKが空でなければ、prXは完全写像である。
証明.§E2.12 命題 3.3 (1)を§E2.14 定義 1.9の始位相へ適用すると、prXは連続である。
prXが閉写像であることを示す。AをX×Kの閉集合とし、x∈X∖prX(A)をとる。任意のk∈Kに対して(x,k)∈/Aであるから、N=(X×K)∖Aは{x}×Kを含むX×Kの開集合である。Kはコンパクトであるから、§E2.19 補題 5.1によりx∈WかつW×K⊆Nを満たすXの開集合Wが存在する。w∈W∩prX(A)とすると(w,k)∈Aを満たすk∈Kが存在し、(w,k)∈W×K⊆NとなってN∩A=∅と両立しない。ゆえにW⊆X∖prX(A)であり、xは任意であったから、§E2.11 補題 2.6によりX∖prX(A)は開集合であって、prX(A)はXの閉集合である。
prXが固有であることを示す。C⊆Xをコンパクト部分集合とするとprX−1(C)=C×Kである。§E2.14 補題 1.13により、C×KがX×Kから受ける部分空間位相は、部分空間CとKの積位相に一致する。部分空間CとKはいずれもコンパクト空間であるから、§E2.19 定理 5.3によりこの積位相を入れたC×Kはコンパクトであり、§E2.19 定義 2.1によりC×KはX×Kのコンパクト部分集合である。ゆえにprXは固有である。▨
5 普遍閉性
定義 5.1 (普遍閉写像). 位相空間X、Y、Zと写像f:X→Yに対して、写像f×idZ:X×Z→Y×Zを
(f×idZ)(x,z)=(f(x),z)によって定める。
位相空間X、Yと連続写像f:X→Yに対して、fが 普遍閉写像 (universally closed map) である、またはfが普遍閉であるとは、任意の位相空間Zに対してf×idZ:X×Z→Y×Zが閉写像であることをいう。
命題 5.2. 位相空間X、Yと普遍閉写像f:X→Y、部分集合B⊆Yに対してA=f−1(B)とおく。このとき、値域と終域を制限した写像g:A→B、g(x)=f(x)は普遍閉である。
証明.fは連続であるから、§E2.12 補題 5.6 (1)によりgは連続である。
Zを位相空間とする。(x,z)∈X×Zに対して(f×idZ)(x,z)=(f(x),z)∈B×Zであることとf(x)∈Bであること、すなわちx∈Aであることは同値であるから、
(f×idZ)−1(B×Z)=A×Zである。また(a,z)∈A×Zに対して(g×idZ)(a,z)=(g(a),z)=(f(a),z)=(f×idZ)(a,z)であるから、g×idZはf×idZの値域と終域を上の全逆像とB×Zへ制限した写像である。
§E2.14 補題 1.13により、A×Zの積位相はX×Zから定まる部分空間位相に一致し、B×Zの積位相はY×Zから定まる部分空間位相に一致する。fは普遍閉であるからf×idZは閉写像であり、§E2.12 補題 5.6 (3)によりg×idZは閉写像である。Zは任意であったからgは普遍閉である。▨
定理 5.3. 位相空間X、Yと連続写像f:X→Yについて、次の三条件は同値である。
- fは閉写像であり、任意のy∈Yに対してf−1({y})はXのコンパクト部分集合である。
- fは閉写像であり、かつ固有である。
- fは普遍閉である。
証明.(1)⇒(3)を示す。Zを位相空間、AをX×Zの閉集合とし、(y,z)∈(Y×Z)∖(f×idZ)(A)をとる。仮定によりC=f−1({y})はXのコンパクト部分集合である。x∈Cに対して(x,z)∈Aであるとすると(f×idZ)(x,z)=(y,z)となって(y,z)の取り方に反するから、C×{z}はN=(X×Z)∖Aに含まれる。Nは開集合であるから、補題 4.1により、C⊆Uとz∈Vを満たす開集合U⊆X、V⊆ZでU×V⊆N、すなわち(U×V)∩A=∅を満たすものが存在する。
W=Y∖f(X∖U)とおく。fが閉写像であることからf(X∖U)はYの閉集合であり、WはYの開集合である。y∈f(X∖U)とするとf(x)=yを満たすx∈X∖Uが存在し、x∈C⊆Uとなってx∈/Uと両立しないから、y∈Wである。またf(x)∈Wかつx∈/Uとするとf(x)∈f(X∖U)となってf(x)∈Wと両立しないから、f−1(W)⊆Uである。
(y′,z′)∈(W×V)∩(f×idZ)(A)とすると、(x,z′)∈Aかつf(x)=y′を満たすx∈Xが存在する。y′∈Wからx∈f−1(W)⊆Uであり、z′∈Vとあわせて(x,z′)∈U×Vとなる。これは(U×V)∩A=∅と両立しない。WはYの開集合、VはZの開集合であるから、W×VはY×Zの開集合である(§E2.14 補題 1.11)。したがってW×Vは(f×idZ)(A)と交わらない(y,z)の開近傍である。(y,z)は任意であったから、§E2.11 補題 2.6により(Y×Z)∖(f×idZ)(A)は開集合であり、(f×idZ)(A)は閉集合である。Zは任意であったからfは普遍閉である。
(3)⇒(2)を示す。P={p}を一点からなる位相空間とし、§E2.14 補題 1.14で定めた記号を用いてsX:X→X×Pと射影prY:Y×P→Yをとる。x∈Xに対して
prY((f×idP)(sX(x)))=prY((f(x),p))=f(x)であるからf=prY∘(f×idP)∘sXである。§E2.14 補題 1.14によりsXとprYは同相写像であり、同相写像は連続な全単射であるから§E2.12 命題 6.3 (3)により閉写像である。仮定によりf×idPは閉写像であるから、§E2.12 命題 5.3を二度用いてfは閉写像である。
K⊆Yをコンパクト部分集合とし、A=f−1(K)、g:A→K、g(x)=f(x)とおく。命題 5.2によりgは普遍閉である。Zを位相空間とすると、g×idZ:A×Z→K×Zは閉写像であり、Kはコンパクトであるから定理 4.2により射影prZ:K×Z→Zは閉写像である。したがって§E2.12 命題 5.3により合成prZ∘(g×idZ)は閉写像である。(a,z)∈A×Zに対してprZ((g×idZ)(a,z))=zであるから、この合成は射影prZ:A×Z→Zに等しい。Zは任意であったから、定理 4.2により部分空間Aはコンパクトである。すなわちf−1(K)はXのコンパクト部分集合であり、fは固有である。
(2)⇒(1)を示す。y∈Yをとる。{y}は有限であるから§E2.19 例 2.3によりYのコンパクト部分集合であり、fが固有であることからf−1({y})はXのコンパクト部分集合である。閉写像であることは(2)が課しているから、(1)が成り立つ。▨
系 5.4.Pを一点からなる位相空間、Xを位相空間とし、cX:X→Pを唯一の写像とする。cXが普遍閉であることとXがコンパクトであることとは同値である。
証明は演習とする(問題 6.4)。
系 5.5. 位相空間X、Yと連続写像f:X→Yについて、次の三条件は同値である。
- fは完全である。
- fは全射であり、かつ普遍閉である。
- fは全射かつ閉写像であり、任意のy∈Yに対してf−1({y})はXのコンパクト部分集合である。
6 演習
問題 6.1.補題 1.7の証明を完成させよ。また、位相空間X′、Y′と連続写像h:X′→Y′であって、任意のy∈Y′に対してh−1({y})がX′のコンパクト部分集合であり、かつhが固有でないものが存在することを、例を挙げて証明せよ。
解答.
{y}は有限集合であるから§E2.19 例 2.3によりYのコンパクト部分集合であり、fが固有であることからf−1({y})はXのコンパクト部分集合である。
例を与える。例 1.6で定めた空間をY0、そこで定めた元をq∈Y0、部分集合をD=Y0∖{q}とし、X′=D、Y′=Y0、h=ιD:D→Y0とおく。y∈Dに対してh−1({y})={y}であり、h−1({q})=∅である。いずれも有限集合であるから§E2.19 例 2.3によりDのコンパクト部分集合である。一方例 1.6 (2)によりhは固有でない。▨
問題 6.2. 第一成分、第二成分への射影R2→Rのどちらの像も閉でないような閉部分集合F⊂R2の例を与えよ。
解答.
たとえばF={(x,1/x)∣x>0}とすればよい。▨
解答.
Xがコンパクトであるとする。fは連続かつ全射であるから、§E2.19 定理 4.2によりf(X)=Yはコンパクトである。
逆にYがコンパクトであるとする。fは固有であるからf−1(Y)=Xはコンパクトである。▨
解答.
Pの位相は{∅,P}であり、cX−1(∅)=∅とcX−1(P)=XはともにXの開集合であるから、cXは連続である。Xの閉集合Fに対してcX(F)は、F=∅ならば∅、F=∅ならばPであり、いずれもPの閉集合であるから、cXはつねに閉写像である。したがって定理 5.3により、cXが普遍閉であることはcXが固有であることと同値である。命題 1.2 (2)により、これはXがコンパクトであることと同値である。▨
問題 6.5 (閉部分集合への制限).X、Yを位相空間、f:X→Yを固有写像とし、C⊆Xを閉集合とする。Cには部分空間位相を入れ、包含写像をιC:C→Xと書く。合成f∘ιC:C→Yが固有であることを示せ。
解答.
命題 1.2 (3)によりιCは固有である。命題 1.4により固有写像の合成は固有であるから、f∘ιCは固有である。▨
問題 6.6 (実数直線上の固有写像).命題 1.9の判定を用いて、通常の位相を入れたR上の写像x↦x2が固有であり、x↦arctanxが固有でないことを証明せよ。
解答.
x↦x2が定める写像をuとおく。a∈Rと実数ε>0に対してδ=min{1,ε/(2∣a∣+1)}とおくと、∣x−a∣<δを満たすxについて
∣x2−a2∣=∣x−a∣∣x+a∣≤∣x−a∣(∣x−a∣+2∣a∣)<δ(1+2∣a∣)≤εである。(a−δ,a+δ)はaの開近傍であるから、§E2.12 補題 1.9によりuは連続である。実数M>0に対してR=Mとおくと、∣x∣>Rを満たすxについて∣u(x)∣=x2>Mである。ゆえにuは固有である。
x↦arctanxが定める写像をvとおく。§D1.24 定理 4.6と§D1.14 命題 1.2によりvは連続である。§D1.24 定義 4.4によりarctanはtanの(−π/2,π/2)への制限の逆写像であるから、すべてのx∈Rについて∣v(x)∣<π/2である。M=π/2に対しては、どのような実数R>0をとっても、∣x∣>Rを満たすxについて∣v(x)∣>Mが成り立つことはない。ゆえにvは固有でない。▨