§E6.30PID 上の自由加群の部分加群

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PID 上の有限生成加群の構造定理から、有限階数の自由加群の部分加群は再び自由であると分かる。しかし、自由加群の基底が無限集合であると、部分加群は有限生成とは限らず、この構造定理をそのまま適用することはできない。例えば、F=⨁n∈N≥0ZenF=\bigoplus_{n\in\N}\Z e_nのうち係数の和が偶数である元全体は、無限階数の自由加群の部分加群である。この場合にも基底を構成することができるという事実は、有限生成という制約を外して自由加群の構造を扱ううえで重要であり、PID 上の射影加群が自由であることにもつながる。本記事では、任意階数の自由加群の部分加群の自由性と階数の上界を確立し、その射影加群への帰結を示す。

1 部分加群の基底

定理 1.1.RRを単項イデアル整域、IIを集合、FFを基底(ei)i∈I(e_i)_{i\in I}をもつ自由RR-加群、NNをFFの部分加群とする。このとき、ある部分集合J⊆IJ\subseteq Iで添字付けられたNNの基底が存在する。したがってNNは自由であり、基底の濃度を階数とすると

rank⁡RN≤rank⁡RF\operatorname{rank}_R N\leq\operatorname{rank}_R F

が成り立つ。

証明.§E1.20 定理 2.1 (2)によりIIに整列順序を入れ、§E1.16 定理 3.1により順序数κ\kappaと順序同型θ ⁣:κ→I\theta\colon\kappa\to Iを取る。eθ(α)e_{\theta(\alpha)}をuαu_\alphaと書き、各α≤κ\alpha\leq\kappaに対して

Fα=⨁β<αRuβ,Nα=N∩FαF_\alpha=\bigoplus_{\beta<\alpha}Ru_\beta, \qquad N_\alpha=N\cap F_\alpha

とおく。特にN0=0N_0=0、Nκ=NN_\kappa=Nである。

各α<κ\alpha<\kappaに対し、uαu_\alphaの係数を取るRR-線形写像をpα ⁣:Fα+1→Rp_\alpha\colon F_{\alpha+1}\to Rとする。Aα=pα(Nα+1)A_\alpha=p_\alpha(N_{\alpha+1})はRRのイデアルであり、pαp_\alphaのNα+1N_{\alpha+1}への制限の核はNαN_\alphaである。S={α<κ∣Aα≠0}S=\{\alpha<\kappa\mid A_\alpha\ne0\}とおく。RRは単項イデアル整域なので、各α∈S\alpha\in Sに対してAα=dαRA_\alpha=d_\alpha Rとなるdα≠0d_\alpha\ne0が存在し、pα(xα)=dαp_\alpha(x_\alpha)=d_\alphaとなるxα∈Nα+1x_\alpha\in N_{\alpha+1}が存在する。選択公理により、そのような対(dα,xα)(d_\alpha,x_\alpha)をすべてのα∈S\alpha\in Sについて選ぶ。

各α≤κ\alpha\leq\kappaに対して、族(xβ)β∈S∩α(x_\beta)_{\beta\in S\cap\alpha}はNαN_\alphaに値を取る。§E6.10 補題 1.4により、この族を標準基底の像とするRR-線形写像

φα ⁣:R⊕(S∩α)⟶Nα\varphi_\alpha\colon R^{\oplus(S\cap\alpha)}\longrightarrow N_\alpha

が一意に定まる。

φ0\varphi_0は零加群から零加群への同型である。α<κ\alpha<\kappaとし、φα\varphi_\alphaが同型であると仮定する。α∉S\alpha\notin SならばAα=0A_\alpha=0なのでNα+1=NαN_{\alpha+1}=N_\alphaであり、S∩(α+1)=S∩αS\cap(\alpha+1)=S\cap\alphaからφα+1=φα\varphi_{\alpha+1}=\varphi_\alphaである。α∈S\alpha\in Sならば、任意のy∈Nα+1y\in N_{\alpha+1}に対してpα(y)=adαp_\alpha(y)=a d_\alphaとなるa∈Ra\in Rが存在する。y−axα∈Nαy-a x_\alpha\in N_\alphaであるからNα+1=Nα+RxαN_{\alpha+1}=N_\alpha+Rx_\alphaである。また、axα∈Nαa x_\alpha\in N_\alphaならばadα=0a d_\alpha=0となる。RRは整域でdα≠0d_\alpha\ne0なのでa=0a=0であり、写像R→RxαR\to Rx_\alpha,a↦axαa\mapsto a x_\alphaは同型である。したがって

Nα+1=Nα⊕RxαN_{\alpha+1}=N_\alpha\oplus Rx_\alpha

であり、φα\varphi_\alphaが同型であることと合わせてφα+1\varphi_{\alpha+1}も同型である。

0<λ≤κ0<\lambda\leq\kappaを極限順序数とし、すべてのα<λ\alpha<\lambdaでφα\varphi_\alphaが同型であると仮定する。任意のy∈Nλy\in N_\lambdaは基底(uβ)β<λ(u_\beta)_{\beta<\lambda}に関して有限台をもつ。λ\lambdaは極限順序数なので、その台のすべての添字より大きいα<λ\alpha<\lambdaを取ることができる。台が空の場合はα=0\alpha=0とする。するとy∈Nαy\in N_\alphaであり、φα\varphi_\alphaの全射性からyyはφλ\varphi_\lambdaの像に属する。一方、z∈ker⁡φλz\in\ker\varphi_\lambdaもS∩λS\cap\lambda上の有限台をもつので、あるα<λ\alpha<\lambdaに対してz∈R⊕(S∩α)z\in R^{\oplus(S\cap\alpha)}である。φλ\varphi_\lambdaのこの部分加群への制限は、φα\varphi_\alphaと包含Nα⊆NλN_\alpha\subseteq N_\lambdaの合成に等しい。φα\varphi_\alphaは単射なのでz=0z=0であり、φλ\varphi_\lambdaは同型である。

§E1.17 定理 1.1 (1)と§E1.17 定理 1.1 (3)を順序数κ+1\kappa+1に適用すると、すべてのα≤κ\alpha\leq\kappaに対してφα\varphi_\alphaは同型である。特に§E6.10 定義 1.6 (3)より(xα)α∈S(x_\alpha)_{\alpha\in S}はNNの基底であり、J=θ(S)⊆IJ=\theta(S)\subseteq Iとおけば(xθ−1(j))j∈J(x_{\theta^{-1}(j)})_{j\in J}が所要の基底となる。非零可換環上の基底の濃度は§E6.10 系 2.11により不変なので、#J≤#I\#J\leq\#Iが階数不等式を与える。▨

注意 1.2.RRを単項イデアル整域、FFを有限階数の自由RR-加群、NNをFFの部分加群とする。RRのすべてのイデアルは一元生成なので、§E6.21 定理 1.2 (4)よりRRは Noether 環である。§E6.21 命題 7.1によりNNは有限生成である。また、FFは§E6.29 命題 7.3によりねじれなしであり、その部分加群NNもねじれなしである。したがって§E6.29 命題 10.2を適用することでもNNの自由性が従う。無限階数の場合にはNNが有限生成であるとは限らないため、この構造定理をそのまま適用することはできない。

例 1.3.F=⨁n∈N≥0ZenF=\bigoplus_{n\in\N}\Z e_nとし、NNを係数の和が偶数である元全体とする。係数の和を22で割った余りを取る準同型F→Z/2ZF\to\Z/2\Zの核がNNなので、NNはFFの部分加群である。このとき

x0=2e0,xn=en−e0(n∈N≥1)x_0=2e_0,\qquad x_n=e_n-e_0\quad(n\in\NN)

はNNの基底となる。実際、y=∑n∈N≥0anen∈Ny=\sum_{n\in\N}a_ne_n\in Nに対して、有限和∑n∈N≥0an\sum_{n\in\N}a_nは偶数なので

y=∑n∈N≥0an2x0+∑n∈N≥1anxny=\frac{\sum_{n\in\N}a_n}{2}x_0 +\sum_{n\in\NN}a_nx_n

と書くことができる。右辺の係数は、n∈N≥1n\in\NNに対するene_nの係数を比較し、次にe0e_0の係数を比較すると一意に定まる。各ene_nはNNに属さないので、この基底はFFの標準基底の部分族ではない。さらにNNはFFの直和因子ではない。実際、F=N⊕QF=N\oplus Qと書くことができるならば、e0=n+qe_0=n+q(n∈Nn\in N,q∈Qq\in Q)と分解すると、2q=2e0−2n∈N∩Q=02q=2e_0-2n\in N\cap Q=0となる。FFの元の係数は整数なので2q=02q=0からq=0q=0が従い、e0=n∈Ne_0=n\in Nとなるが、e0e_0の係数の和は奇数である。

2 射影加群への帰結

系 2.1.RRを単項イデアル整域とする。任意の射影RR-加群は自由である。

証明.PPを射影RR-加群とする。§E6.16 命題 1.2 (3)により、ある自由RR-加群FFとRR-加群QQに対してF≅P⊕QF\cong P\oplus Qとなる。この同型によりPPをFFの部分加群と同一視すると、定理 1.1よりPPは自由である。▨

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