§E6.23加群の根基と socle

最終更新

加群の極大部分加群は単純商加群を捉え、単純部分加群は加群の最小の構成要素を捉える。前者をすべて交わして得る加群根基と、後者をすべて足して得る socle は、加群を下から見る方法と上から見る方法を与える。本記事では両者の高階の列を比較し、環の Jacobson 根基がこれらの列をどこまで制御するかを仮定ごとに区別する。

本記事を通じてRRは単位元をもつ結合環とし、零環も許す。特に断らない限り、加群は左RR加群である。単純加群には§E6.20 定義 4.1、半単純加群には§E6.22 定義 2.1、Jacobson 根基には§E6.7 定義 4.1の規約を用いる。

1 加群根基と socle

空の共通部分と空の和を明示しておくことは、極大部分加群も単純部分加群ももたない加群を扱うために必要である。

定義 1.1. 左RR加群MMの極大部分加群全体の共通部分をMMの加群根基 (module radical) といい、

rad⁡R(M)\operatorname{rad}_R(M)

と書く。MMが極大部分加群をもたない場合には、空の共通部分をMMと定め、

rad⁡R(M):=M\operatorname{rad}_R(M):=M

とする。

定義 1.2. 左RR加群MMの単純部分加群全体の和をMMのsocle(ソークル) (socle) といい、

soc⁡R(M)\operatorname{soc}_R(M)

と書く。MMが単純部分加群をもたない場合には、空の和を零部分加群と定め、

soc⁡R(M):=0\operatorname{soc}_R(M):=0

とする。

単純加群SSについては、唯一の極大部分加群が00であり、唯一の非零単純部分加群がSSである。したがって

rad⁡R(S)=0,soc⁡R(S)=S\operatorname{rad}_R(S)=0, \qquad \operatorname{soc}_R(S)=S

である。零加群については二つの空族の規約から、根基も socle も零加群になる。

例 1.3 (有理数加群の二つの空族).Q\mathbb QをZ\mathbb Z加群とみなすと、

rad⁡Z(Q)=Q,soc⁡Z(Q)=0\operatorname{rad}_{\mathbb Z}(\mathbb Q)=\mathbb Q, \qquad \operatorname{soc}_{\mathbb Z}(\mathbb Q)=0

である。

実際、非零単純Z\mathbb Z加群SSと0≠s∈S0\neq s\in Sに対し、準同型Z→S\mathbb Z\to S、n↦nsn\mapsto nsは全射であり、その核はZ\mathbb Zの極大イデアルである。したがってSSはある素数ppに対するZ/pZ\mathbb Z/p\mathbb Zと同型である。ここでQ/N\mathbb Q/Nが非零単純になる部分群NNが存在すると仮定する。Q/N\mathbb Q/Nは可除群であり、可除群の商も可除群であるが、Z/pZ\mathbb Z/p\mathbb Zは可除群でない。したがってQ\mathbb Qは極大部分加群をもたない。

また、Q\mathbb Qの非零部分群SSと0≠x∈S0\neq x\in Sを取る。部分群Zx\mathbb ZxはSSの非零部分加群である。x/2∈Sx/2\in SならばZx\mathbb ZxはSSの真の部分加群であり、x/2∉Sx/2\notin Sならば2S2SはSSの非零真の部分加群である。後者で2S=S2S=Sならばx=2yx=2yとなるy∈Sy\in Sが存在してx/2=y∈Sx/2=y\in Sとなるため、実際に2S≠S2S\neq Sである。よって非零部分群SSは単純でなく、Q\mathbb Qは単純部分加群をもたない。

2 単純商と最大半単純部分加群

加群根基を計算するには、極大部分加群そのものよりも単純加群への写像を使う方が便利である。

定理 2.1. 左RR加群MMに対して

rad⁡R(M)=⋂S は単純左 R 加群f∈Hom⁡R(M,S)ker⁡f\operatorname{rad}_R(M) = \bigcap_{\substack{S\text{ は単純左 }R\text{ 加群}\\ f\in\operatorname{Hom}_R(M,S)}} \ker f

である。該当する単純加群への非零写像が存在しない場合、右辺はMMである。

証明.LLをMMの極大部分加群とする。商加群M/LM/Lは単純であり、自然な全射

qL ⁣:M⟶M/Lq_L\colon M\longrightarrow M/L

の核はLLである。したがって、右辺に現れる核の族はすべての極大部分加群を含む。

逆に、単純加群SSへの非零写像f ⁣:M→Sf\colon M\to Sを取る。像はSSの非零部分加群であるからSSに等しく、ffは全射である。第一同型定理によりM/ker⁡f≅SM/\ker f\cong Sなので、ker⁡f\ker fは極大部分加群である。零写像の核はMMであり、共通部分を変えない。よって両辺で交わしている真の部分加群の族は一致する。極大部分加群が存在しない場合には非零写像も存在せず、両辺はそれぞれの空族の規約によってMMになる。▨

socle は半単純部分加群をすべて集めたものとして特徴づけられる。

定理 2.2. 左RR加群MMに対してsoc⁡R(M)\operatorname{soc}_R(M)は半単純部分加群である。さらに、N⊆MN\subseteq Mが半単純部分加群ならば

N⊆soc⁡R(M)N\subseteq\operatorname{soc}_R(M)

である。したがってsoc⁡R(M)\operatorname{soc}_R(M)はMMの最大の半単純部分加群である。

証明.soc⁡R(M)\operatorname{soc}_R(M)はMMの単純部分加群全体の和である。単純加群は半単純であり、半単純部分加群の任意の和は§E6.22 命題 3.2によって半単純である。よってsoc⁡R(M)\operatorname{soc}_R(M)は半単純である。

N⊆MN\subseteq Mが半単純ならば、§E6.22 定理 2.3によりNNは自身の単純部分加群の和である。それらはすべてMMの単純部分加群でもあるため、定義からN⊆soc⁡R(M)N\subseteq\operatorname{soc}_R(M)となる。▨

命題 2.3.RRを単位元をもつ結合環、MMを左RR加群とする。このとき

soc⁡R(M)=⋂N⊆MN は本質的部分加群N\operatorname{soc}_R(M) = \bigcap_{\substack{N\subseteq M\\ N\text{ は本質的部分加群}}}N

である。

証明.S⊆MS\subseteq Mを単純部分加群、N⊆MN\subseteq Mを本質的部分加群とする。本質性からS∩N≠0S\cap N\neq0であり、SSの単純性からS∩N=SS\cap N=Sとなる。したがってS⊆NS\subseteq Nである。すべての単純部分加群SSの和と、すべての本質的部分加群NNの共通部分を取ると、

soc⁡R(M)⊆⋂N⊆MN は本質的部分加群N\operatorname{soc}_R(M) \subseteq \bigcap_{\substack{N\subseteq M\\ N\text{ は本質的部分加群}}}N

を得る。

本質的部分加群全体の共通部分をLLと置き、A⊆LA\subseteq Lを任意の部分加群とする。§E6.19 補題 1.5により、A∩C=0A\cap C=0であり、A⊕CA\oplus CがMMの本質的部分加群となる部分加群C⊆MC\subseteq Mが存在する。LLの定義からL⊆A⊕CL\subseteq A\oplus Cである。任意のx∈Lx\in Lをx=a+cx=a+c、a∈Aa\in A、c∈Cc\in Cと書くと、A⊆LA\subseteq Lなのでc=x−a∈C∩Lc=x-a\in C\cap Lである。したがって

L=A⊕(C∩L)L=A\oplus(C\cap L)

となる。AAは任意であったから、§E6.22 定理 2.3 (3)によりLLは半単純である。定理 2.2によって

L⊆soc⁡R(M)L\subseteq\operatorname{soc}_R(M)

であり、逆の包含も得られる。▨

3 写像、商および直和

socle は任意の準同型で前向きに移り、加群根基は全射で前向きに移る。この違いは、単純部分加群が像に移ることと、単純商への写像が全射との合成によって引き戻されることに対応する。

命題 3.1. 左RR線形写像f ⁣:M→Nf\colon M\to Nに対して

f(soc⁡R(M))⊆soc⁡R(N)f\bigl(\operatorname{soc}_R(M)\bigr) \subseteq\operatorname{soc}_R(N)

である。さらにffが全射ならば

f(rad⁡R(M))⊆rad⁡R(N)f\bigl(\operatorname{rad}_R(M)\bigr) \subseteq\operatorname{rad}_R(N)

である。

証明.S⊆MS\subseteq Mを単純部分加群とする。制限f∣Sf|_Sの像は零であるか、単純加群SSの非零準同型像として単純である。したがってf(S)⊆soc⁡R(N)f(S)\subseteq\operatorname{soc}_R(N)であり、すべてのSSの和を取れば第一の包含を得る。

ffが全射であるとする。任意の単純加群TTと写像g ⁣:N→Tg\colon N\to Tに対して、g∘f ⁣:M→Tg\circ f\colon M\to Tも左RR線形である。定理 2.1によりrad⁡R(M)⊆ker⁡(gf)\operatorname{rad}_R(M)\subseteq\ker(gf)である。したがって

g(f(rad⁡R(M)))=0g\bigl(f(\operatorname{rad}_R(M))\bigr)=0

となる。再び同じ特徴づけをNNへ適用すると第二の包含を得る。▨

命題 3.2.N⊆MN\subseteq Mを部分加群とする。このとき

rad⁡R(M/N)=⋂L は M の極大部分加群N⊆LLN\operatorname{rad}_R(M/N) = \frac{\displaystyle \bigcap_{\substack{L\text{ は }M\text{ の極大部分加群}\\N\subseteq L}}L}{N}

であり、該当するLLが存在しない場合には分子をMMとする。特に

rad⁡R(M)+NN⊆rad⁡R(M/N).\frac{\operatorname{rad}_R(M)+N}{N} \subseteq\operatorname{rad}_R(M/N).

N⊆rad⁡R(M)N\subseteq\operatorname{rad}_R(M)ならば

rad⁡R(M/N)=rad⁡R(M)/N\operatorname{rad}_R(M/N) =\operatorname{rad}_R(M)/N

である。また、常に

soc⁡R(M)+NN⊆soc⁡R(M/N)\frac{\operatorname{soc}_R(M)+N}{N} \subseteq\operatorname{soc}_R(M/N)

である。

証明.M/NM/Nの部分加群とNNを含むMMの部分加群の対応は包含関係を保つため、M/NM/Nの極大部分加群はちょうどL/NL/Nの形である。ただしLLはNNを含むMMの極大部分加群を動く。したがって最初の等式を得る。

rad⁡R(M)\operatorname{rad}_R(M)はすべての極大部分加群に含まれるため、NNを含む極大部分加群の共通部分にも含まれる。これにNNを加えて商を取ると最初の包含を得る。N⊆rad⁡R(M)N\subseteq\operatorname{rad}_R(M)ならばMMのすべての極大部分加群がNNを含むため、共通部分の族はrad⁡R(M)\operatorname{rad}_R(M)を定める族全体になり、等号が成り立つ。

自然な全射q ⁣:M→M/Nq\colon M\to M/Nに命題 3.1の socle に関する主張を適用すると

q(soc⁡R(M))=soc⁡R(M)+NN⊆soc⁡R(M/N)q(\operatorname{soc}_R(M)) =\frac{\operatorname{soc}_R(M)+N}{N} \subseteq\operatorname{soc}_R(M/N)

を得る。▨

二つの商に関する包含は一般には等号でない。例えば素数ppに対してM=ZM=\mathbb Z、N=p2ZN=p^2\mathbb Zと置くと、rad⁡Z(Z)=0\operatorname{rad}_{\mathbb Z}(\mathbb Z)=0である一方、Z/p2Z\mathbb Z/p^2\mathbb Zの唯一の極大部分加群はpZ/p2Zp\mathbb Z/p^2\mathbb Zである。またM=ZM=\mathbb Z、N=pZN=p\mathbb Zと置くとsoc⁡Z(Z)=0\operatorname{soc}_{\mathbb Z}(\mathbb Z)=0である一方、Z/pZ\mathbb Z/p\mathbb Zは単純である。

定理 3.3. 左RR加群の族(Mi)i∈I(M_i)_{i\in I}に対して

rad⁡R(⨁i∈IMi)=⨁i∈Irad⁡R(Mi)\operatorname{rad}_R\left(\bigoplus_{i\in I}M_i\right) =\bigoplus_{i\in I}\operatorname{rad}_R(M_i)

および

soc⁡R(⨁i∈IMi)=⨁i∈Isoc⁡R(Mi)\operatorname{soc}_R\left(\bigoplus_{i\in I}M_i\right) =\bigoplus_{i\in I}\operatorname{soc}_R(M_i)

が成り立つ。

証明.x=(xi)∈⨁irad⁡R(Mi)x=(x_i)\in\bigoplus_i\operatorname{rad}_R(M_i)とし、単純加群SSへの写像f ⁣:⨁iMi→Sf\colon\bigoplus_iM_i\to Sを取る。各標準包含ιi ⁣:Mi→⨁iMi\iota_i\colon M_i\to\bigoplus_iM_iに対して、fιif\iota_iはMiM_iから単純加群への写像なので(fιi)(xi)=0(f\iota_i)(x_i)=0である。xxの台は有限であるから

f(x)=∑i(fιi)(xi)=0f(x)=\sum_i(f\iota_i)(x_i)=0

となる。核による特徴づけからx∈rad⁡R(⨁iMi)x\in\operatorname{rad}_R(\bigoplus_iM_i)である。

逆にx=(xi)∈rad⁡R(⨁iMi)x=(x_i)\in\operatorname{rad}_R(\bigoplus_iM_i)とする。各射影pi ⁣:⨁iMi→Mip_i\colon\bigoplus_iM_i\to M_iは全射なので、命題 3.1により

xi=pi(x)∈rad⁡R(Mi)x_i=p_i(x)\in\operatorname{rad}_R(M_i)

である。よって根基の等式を得る。

各soc⁡R(Mi)\operatorname{soc}_R(M_i)の元を標準包含で移すと⨁iMi\bigoplus_iM_iの socle に入るため、右辺は左辺に含まれる。逆にS⊆⨁iMiS\subseteq\bigoplus_iM_iを単純部分加群とし、0≠s∈S0\neq s\in Sを取る。単純性からS=RsS=Rsであり、ssの台を有限集合FFとするとS⊆⨁i∈FMiS\subseteq\bigoplus_{i\in F}M_iである。各iiについてpi(S)p_i(S)は零または単純であるため、pi(S)⊆soc⁡R(Mi)p_i(S)\subseteq\operatorname{soc}_R(M_i)となる。したがってS⊆⨁isoc⁡R(Mi)S\subseteq\bigoplus_i\operatorname{soc}_R(M_i)であり、すべてのSSの和を取れば逆の包含を得る。▨

4 Jacobson 根基との関係

J:=J(R)J:=J(R)と置く。§E6.7 系 4.4によりJJは両側イデアルであるから、左加群MMに対して

JM:={∑k=1nakxk|n≥0, ak∈J, xk∈M}JM:=\left\{\sum_{k=1}^n a_kx_k\mathrel{\middle|}n\geq0,\ a_k\in J,\ x_k\in M\right\}

は部分加群である。

定理 4.1. 任意の左RR加群MMに対して

J(R)M⊆rad⁡R(M)J(R)M\subseteq\operatorname{rad}_R(M)

である。

証明. 単純左RR加群SSと写像f ⁣:M→Sf\colon M\to Sを取る。単純左加群による Jacobson 根基の特徴づけ§E6.7 定理 4.3によりJS=0JS=0である。したがって

f(JM)=Jf(M)⊆JS=0f(JM)=Jf(M)\subseteq JS=0

となり、JM⊆ker⁡fJM\subseteq\ker fである。すべてのSSとffについて核を交わし、定理 2.1を用いると主張を得る。▨

有限生成性だけではこの包含は等号にならない。この点は後の正しい十分条件と区別する必要がある。

例 4.2 (有限生成加群で等号が破れる例). 素数ppを固定し、R=ZR=\mathbb Z、M=Z/p2ZM=\mathbb Z/p^2\mathbb Zとする。MMは巡回加群なので有限生成である。整数環の極大イデアル全体の共通部分は零であるから

J(Z)=0,J(Z)M=0J(\mathbb Z)=0, \qquad J(\mathbb Z)M=0

である。一方、MMの唯一の極大部分加群はpMpMなので

rad⁡Z(M)=pM≠0.\operatorname{rad}_{\mathbb Z}(M)=pM\neq0.

したがって、一般の有限生成加群に対するJ(R)M=rad⁡R(M)J(R)M=\operatorname{rad}_R(M)という主張は成り立たない。

有限生成性に射影性を加えると等号が回復する。

定理 4.3.PPを有限生成射影左RR加群とする。このとき

rad⁡R(P)=J(R)P\operatorname{rad}_R(P)=J(R)P

である。

証明. 左正則加群RR{}_RRの極大部分加群はRRの極大左イデアルであるから、二つの定義より

rad⁡R(RR)=J(R)=J(R)R\operatorname{rad}_R({}_RR)=J(R)=J(R)R

である。定理 3.3を有限直和へ適用すると、任意の非負整数nnについて

rad⁡R(Rn)=J(R)⊕n=J(R)Rn\operatorname{rad}_R(R^n)=J(R)^{\oplus n}=J(R)R^n

となる。

PPは有限生成なので、§E6.11 命題 1.2により、あるnnと全射π ⁣:Rn↠P\pi\colon R^n\twoheadrightarrow Pが存在する。PPは射影的なので、射影性の特徴づけ§E6.16 命題 1.2によりπ\piは分裂する。したがってQ:=ker⁡πQ:=\ker\piと置けば

Rn=P⊕QR^n=P\oplus Q

となる。ここでは分裂によるPPの像をPPと同一視した。直和公式とJ(R)J(R)の作用の成分表示から

rad⁡R(Rn)=rad⁡R(P)⊕rad⁡R(Q),\operatorname{rad}_R(R^n) =\operatorname{rad}_R(P)\oplus\operatorname{rad}_R(Q),J(R)Rn=J(R)P⊕J(R)QJ(R)R^n=J(R)P\oplus J(R)Q

である。両者が等しいことと直和分解の第一成分を比較すると

rad⁡R(P)=J(R)P\operatorname{rad}_R(P)=J(R)P

を得る。▨

もう一つの十分条件は、環の剰余がすべての加群を半単純にする場合である。この条件は加群の有限生成性を必要としない。

定理 4.4.R/J(R)R/J(R)が左半単純環ならば、任意の左RR加群MMに対して

rad⁡R(M)=J(R)M\operatorname{rad}_R(M)=J(R)M

である。

証明.M‾:=M/JM\overline M:=M/JMと置く。M‾\overline MへのRRの作用はR/JR/Jを通じて定まり、§E6.22 定理 4.2によりM‾\overline Mは半単純R/JR/J加群である。RR部分加群とR/JR/J部分加群は一致するため、M‾\overline Mは半単純RR加群でもある。

半単純加群は単純加群の直和である。非零元を取れば、ある単純直和因子への射影がその元を零でない元へ写す。定理 2.1により

rad⁡R(M‾)=0\operatorname{rad}_R(\overline M)=0

である。商加群に関する包含命題 3.2をN=JMN=JMへ適用すると

rad⁡R(M)+JMJM⊆rad⁡R(M‾)=0\frac{\operatorname{rad}_R(M)+JM}{JM} \subseteq\operatorname{rad}_R(\overline M)=0

となるため、rad⁡R(M)⊆JM\operatorname{rad}_R(M)\subseteq JMである。逆の包含は定理 4.1で証明済みである。▨

5 高階の根基列と socle 列

根基を繰り返す列は上から下へ進み、socle を商で繰り返す列は下から上へ進む。

定義 5.1. 左RR加群MMに対し、根基列 (radical series) を

rad⁡R0(M):=M,rad⁡Rn+1(M):=rad⁡R(rad⁡Rn(M))\operatorname{rad}_R^0(M):=M, \qquad \operatorname{rad}_R^{n+1}(M) :=\operatorname{rad}_R\bigl(\operatorname{rad}_R^n(M)\bigr)

によって帰納的に定める。

また、socle 列 (socle series) を

soc⁡R,0(M):=0\operatorname{soc}_{R,0}(M):=0

から始め、自然な射影

qn ⁣:M⟶M/soc⁡R,n(M)q_n\colon M\longrightarrow M/\operatorname{soc}_{R,n}(M)

に対して

soc⁡R,n+1(M):=qn−1(soc⁡R(M/soc⁡R,n(M)))\operatorname{soc}_{R,n+1}(M) :=q_n^{-1}\left( \operatorname{soc}_R\bigl(M/\operatorname{soc}_{R,n}(M)\bigr) \right)

と定める。

あるd≥0d\geq0についてrad⁡Rd(M)=0\operatorname{rad}_R^d(M)=0となるとき、そのような最小のddを下 Loewy 長 (lower Loewy length) という。あるd≥0d\geq0についてsoc⁡R,d(M)=M\operatorname{soc}_{R,d}(M)=Mとなるとき、そのような最小のddを上 Loewy 長 (upper Loewy length) という。

添字nnを明示している間は、soc⁡R,n(M)\operatorname{soc}_{R,n}(M)を単にsoc⁡n(M)\operatorname{soc}_n(M)と書く。

命題 5.2. 任意のn≥0n\geq0に対して

soc⁡n+1(M)/soc⁡n(M)=soc⁡R(M/soc⁡n(M))\operatorname{soc}_{n+1}(M)/\operatorname{soc}_n(M) = \operatorname{soc}_R\bigl(M/\operatorname{soc}_n(M)\bigr)

であり、この商加群は半単純である。さらに、soc⁡n+1(M)/soc⁡n(M)\operatorname{soc}_{n+1}(M)/\operatorname{soc}_n(M)はM/soc⁡n(M)M/\operatorname{soc}_n(M)の最大の半単純部分加群である。

証明. 最初の等式は逆像による定義と部分加群の対応から従う。右辺は定理 2.2により半単純であり、同じ定理により商加群の最大の半単純部分加群である。▨

鎖条件は、対応する列が停滞する前に必ず真に進むことを保証する。ただし Noether 性は根基列が有限回で零になることを意味せず、Artin 性は socle 列が有限回で全体になることを意味しない。

定理 5.3.MMを Noether 左RR加群とする。rad⁡Rn(M)≠0\operatorname{rad}_R^n(M)\neq0ならば

rad⁡Rn+1(M)⊊rad⁡Rn(M)\operatorname{rad}_R^{n+1}(M) \subsetneq\operatorname{rad}_R^n(M)

である。

証明.N:=rad⁡Rn(M)N:=\operatorname{rad}_R^n(M)と置く。Noether 加群の部分加群NNも Noether であり、§E6.20 命題 1.2により有限生成である。N≠0N\neq0なので、§E6.11 命題 1.5によりNNは極大部分加群LLをもつ。定義から

rad⁡R(N)⊆L⊊N\operatorname{rad}_R(N)\subseteq L\subsetneq N

である。rad⁡R(N)=rad⁡Rn+1(M)\operatorname{rad}_R(N)=\operatorname{rad}_R^{n+1}(M)なので主張を得る。▨

例 5.4 (Noether 加群の終わらない根基列). 体kk上の一変数形式的冪級数環R=k[[t]]R=k[[t]]を左正則加群とみなす。非零イデアルIIの元のtt次数の最小値をddとすると、次数ddの元はtdt^dと単元の積である。したがってI=(td)I=(t^d)であり、RRは Noether 環である。

RRの元は定数項が非零であることと単元であることが同値なので、(t)(t)は唯一の極大イデアルであり、

rad⁡R(R)=J(R)=(t)\operatorname{rad}_R(R)=J(R)=(t)

である。乗法写像R→(tn)R\to(t^n)、a↦atna\mapsto at^nは加群同型であるため、任意のn≥0n\geq0について

rad⁡Rn(R)=(tn)\operatorname{rad}_R^n(R)=(t^n)

となる。よって根基列は各段で真に減少するが、有限回では零にならない。

定理 5.5.MMを Artin 左RR加群とする。soc⁡n(M)≠M\operatorname{soc}_n(M)\neq Mならば

soc⁡n(M)⊊soc⁡n+1(M)\operatorname{soc}_n(M) \subsetneq\operatorname{soc}_{n+1}(M)

である。

証明.Q:=M/soc⁡n(M)Q:=M/\operatorname{soc}_n(M)と置く。QQはMMの商加群なので、Artin 性の短完全列に沿った遺伝§E6.20 命題 3.2により Artin である。仮定からQ≠0Q\neq0である。QQの非零部分加群全体へ Artin 性の極小元による特徴づけ§E6.20 命題 2.2を適用し、極小元SSを取る。SSは単純部分加群なので

0≠S⊆soc⁡R(Q)0\neq S\subseteq\operatorname{soc}_R(Q)

である。命題 5.2により

soc⁡n+1(M)/soc⁡n(M)=soc⁡R(Q)≠0,\operatorname{soc}_{n+1}(M)/\operatorname{soc}_n(M) =\operatorname{soc}_R(Q)\neq0,

したがって包含は真である。▨

6 左 Artin 環の半単純剰余環

ここからAAを左 Artin 環とし、J:=J(A)J:=J(A)と置く。最初にJJが有限個の極大左イデアルの共通部分であることを鎖条件から導く。

補題 6.1. 左 Artin 環AAには、ある非負整数ttと極大左イデアル

m1,…,mt\mathfrak m_1,\ldots,\mathfrak m_t

が存在して

J(A)=m1∩⋯∩mtJ(A)=\mathfrak m_1\cap\cdots\cap\mathfrak m_t

となる。t=0t=0のとき右辺はAAである。

証明. 極大左イデアルの有限個の共通部分全体をF\mathcal Fとし、空の共通部分AAもF\mathcal Fに含める。F\mathcal Fは空でない左イデアルの族である。左正則加群AA{}_AAは Artin なので、§E6.20 命題 2.2によりF\mathcal Fは包含関係について極小元IIをもつ。

AAが極大左イデアルをもたない場合、定義からJ(A)=AJ(A)=Aであり、空の共通部分を選べばよい。極大左イデアルm\mathfrak mが存在する場合、I∩m∈FI\cap\mathfrak m\in\mathcal FかつI∩m⊆II\cap\mathfrak m\subseteq Iである。IIの極小性からI∩m=II\cap\mathfrak m=Iとなり、I⊆mI\subseteq\mathfrak mである。これはすべての極大左イデアルについて成り立つからI⊆J(A)I\subseteq J(A)である。一方、IIは有限個の極大左イデアルの共通部分なのでJ(A)⊆IJ(A)\subseteq Iである。よってI=J(A)I=J(A)となる。▨

定理 6.2. 左 Artin 環AAに対してA/J(A)A/J(A)は左半単純環である。

証明方針は、前補題で得た有限個の極大左イデアルを用い、A/J(A)A/J(A)を有限個の単純加群の直和へ対角的に埋め込むことである。半単純加群の部分加群も半単純であるため、この埋め込みから剰余環の左正則加群の半単純性が従う。

証明.補題 6.1の極大左イデアルm1,…,mt\mathfrak m_1,\ldots,\mathfrak m_tを取る。写像

Δ ⁣:A⟶⨁i=1tA/mi,a⟼(a+mi)i=1t\Delta\colon A\longrightarrow\bigoplus_{i=1}^t A/\mathfrak m_i, \qquad a\longmapsto(a+\mathfrak m_i)_{i=1}^t

は左AA線形であり、その核は

ker⁡Δ=⋂i=1tmi=J(A)\ker\Delta=\bigcap_{i=1}^t\mathfrak m_i=J(A)

である。したがってΔ\Deltaは単射

Δ‾ ⁣:A/J(A)\lhook\joinrel⟶⨁i=1tA/mi\overline\Delta\colon A/J(A) \lhook\joinrel\longrightarrow \bigoplus_{i=1}^t A/\mathfrak m_i

を誘導する。

各A/miA/\mathfrak m_iは§E6.22 命題 1.1により単純左AA加群であるから、右辺は半単純である。その部分加群であるA/J(A)A/J(A)も§E6.22 命題 3.1により半単純左AA加群である。J(A)J(A)はA/J(A)A/J(A)を零化するため、AA部分加群とA/J(A)A/J(A)部分加群は一致し、半単純性も一致する。よって左正則A/J(A)A/J(A)加群は半単純であり、A/J(A)A/J(A)は左半単純環である。

t=0t=0ならばJ(A)=AJ(A)=Aであり、A/J(A)=0A/J(A)=0である。右辺を空直和00とすれば同じ証明が成り立つ。▨

系 6.3.AAを左 Artin 環、MMを任意の左AA加群とする。このとき

rad⁡A(M)=J(A)M\operatorname{rad}_A(M)=J(A)M

である。

証明.定理 6.2によりA/J(A)A/J(A)は左半単純である。定理 4.4を適用すればよい。▨

7 Jacobson 根基の冪と socle 列

I◃AI\triangleleft Aを両側イデアル、MMを左AA加群とするとき

Ann⁡M(I):={x∈M∣Ix=0}\operatorname{Ann}_M(I) :=\{x\in M\mid Ix=0\}

と書く。IIの両側イデアル性から、これはMMの部分加群である。J0:=AJ^0:=Aと定めるので、単位的加群についてAnn⁡M(J0)=0\operatorname{Ann}_M(J^0)=0である。

定理 7.1.AAを左 Artin 環、J:=J(A)J:=J(A)、MMを任意の左AA加群とする。任意のn≥0n\geq0に対して

soc⁡A,n(M)=Ann⁡M(Jn)={x∈M∣Jnx=0}\operatorname{soc}_{A,n}(M) =\operatorname{Ann}_M(J^n) =\{x\in M\mid J^nx=0\}

である。

証明方針は、まずsoc⁡A(M)=Ann⁡M(J)\operatorname{soc}_A(M)=\operatorname{Ann}_M(J)を示し、その等式を逐次商M/soc⁡A,n(M)M/\operatorname{soc}_{A,n}(M)へ適用することである。前向きの包含にはJJが単純加群を零化することを使い、逆向きにはAnn⁡M(J)\operatorname{Ann}_M(J)が半単純環A/JA/J上の加群であることを使う。

証明. まずn=1n=1の等式を任意の左AA加群について示す。S⊆MS\subseteq Mを単純部分加群とすると、§E6.7 定理 4.3によりJS=0JS=0である。したがって

soc⁡A(M)⊆Ann⁡M(J)\operatorname{soc}_A(M)\subseteq\operatorname{Ann}_M(J)

である。

逆にAnn⁡M(J)\operatorname{Ann}_M(J)はA/JA/J上の加群である。定理 6.2と§E6.22 定理 4.2により、これは半単純A/JA/J加群であり、したがって半単純AA加群でもある。socle の最大半単純性定理 2.2から

Ann⁡M(J)⊆soc⁡A(M)\operatorname{Ann}_M(J)\subseteq\operatorname{soc}_A(M)

を得る。よってsoc⁡A(M)=Ann⁡M(J)\operatorname{soc}_A(M)=\operatorname{Ann}_M(J)である。

n=0n=0では

soc⁡A,0(M)=0=Ann⁡M(A)=Ann⁡M(J0)\operatorname{soc}_{A,0}(M)=0 =\operatorname{Ann}_M(A) =\operatorname{Ann}_M(J^0)

である。あるn≥0n\geq0について

soc⁡A,n(M)=Ann⁡M(Jn)\operatorname{soc}_{A,n}(M)=\operatorname{Ann}_M(J^n)

が成り立つと仮定する。x∈Mx\in Mに対し、先ほど証明したn=1n=1の等式を商加群M/soc⁡A,n(M)M/\operatorname{soc}_{A,n}(M)へ適用すると、

x∈soc⁡A,n+1(M)  ⟺  J(x+soc⁡A,n(M))=0  ⟺  Jx⊆soc⁡A,n(M)  ⟺  Jn(Jx)=0  ⟺  Jn+1x=0\begin{aligned} x\in\operatorname{soc}_{A,n+1}(M) &\iff J\bigl(x+\operatorname{soc}_{A,n}(M)\bigr)=0\\ &\iff Jx\subseteq\operatorname{soc}_{A,n}(M)\\ &\iff J^n(Jx)=0\\ &\iff J^{n+1}x=0 \end{aligned}

となる。したがって帰納法により、すべてのnnについて等式が成り立つ。▨

例 7.2 (切断多項式環の二つの列). 体kk、整数m≥1m\geq1に対して

A:=k[t]/(tm),J:=(t‾)A:=k[t]/(t^m), \qquad J:=(\overline t)

と置く。AAは有限次元kk代数なので左 Artin 環であり、A/J≅kA/J\cong kである。左正則加群AA{}_AAについて

rad⁡An(A)=Jn=(t‾n)(0≤n≤m)\operatorname{rad}_A^n(A)=J^n=(\overline t^n) \qquad(0\leq n\leq m)

である。また定理 7.1により

soc⁡A,n(A)=Ann⁡A(Jn)=(t‾m−n)(0≤n≤m).\operatorname{soc}_{A,n}(A) =\operatorname{Ann}_A(J^n) =(\overline t^{m-n}) \qquad(0\leq n\leq m).

したがって根基列は指数を増やしながら下降し、socle 列は逆向きに同じイデアルを上昇する。上下の Loewy 長はいずれもmmである。

8 右加群と反対環

右RR加群は左RopR^{\mathrm{op}}加群とみなす。右部分加群と左RopR^{\mathrm{op}}部分加群、単純性、半単純性および鎖条件はこの読み替えで変わらない。

命題 8.1. 右RR加群MMについて、極大右部分加群の共通部分をrad⁡(M)\operatorname{rad}(M)、単純右部分加群の和をsoc⁡(M)\operatorname{soc}(M)と定めると、左加群について本記事で証明した核による特徴づけ、最大半単純性、商および任意直和の公式がすべて成り立つ。さらに次が成り立つ。

  1. 任意の右RR加群MMに対してMJ(R)⊆rad⁡(M)MJ(R)\subseteq\operatorname{rad}(M)である。
  2. 有限生成射影右RR加群PPに対してrad⁡(P)=PJ(R)\operatorname{rad}(P)=PJ(R)である。
  3. R/J(R)R/J(R)が右半単純ならば、任意の右RR加群MMに対してrad⁡(M)=MJ(R)\operatorname{rad}(M)=MJ(R)である。
  4. RRが右 Artin 環ならばR/J(R)R/J(R)は右半単純であり、任意の右RR加群MMとn≥0n\geq0に対して soc⁡n(M)={x∈M∣xJ(R)n=0}\operatorname{soc}_n(M) =\{x\in M\mid xJ(R)^n=0\} である。

証明.§E6.1 定義 4.1により、右RR加群は左RopR^{\mathrm{op}}加群である。極大部分加群、単純部分加群、商および直和は集合と加法群を変えないため、一般の公式はRopR^{\mathrm{op}}上の結果をそのまま読み替えればよい。

極大右イデアルによる Jacobson 根基の特徴づけ§E6.7 定理 5.1により

J(Rop)=J(R)J(R^{\mathrm{op}})=J(R)

が集合として成り立つ。また、恒等写像が環同型

Rop/J(Rop)≅(R/J(R))opR^{\mathrm{op}}/J(R^{\mathrm{op}}) \cong(R/J(R))^{\mathrm{op}}

を誘導する。したがって左辺の左半単純性はR/J(R)R/J(R)の右半単純性を意味する。左RopR^{\mathrm{op}}加群に対する積J(Rop)MJ(R^{\mathrm{op}})Mは右RR加群の記法ではMJ(R)MJ(R)である。有限生成性、射影性および Artin 性も反対環への読み替えでそれぞれ対応する。したがって定理 4.1、定理 4.3、定理 4.4、定理 6.2および定理 7.1をRopR^{\mathrm{op}}へ適用すると四つの主張を得る。▨

9 演習

問題 9.1.

  1. Q\mathbb QをZ\mathbb Z加群とみなし、極大部分加群と単純部分加群が存在しないことをそれぞれ示せ。二つの空族の規約から根基と socle を求めよ。
  2. 素数ppに対し、Z/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zの根基と socle を求めよ。m=2m=2を用いて、J(R)M=rad⁡R(M)J(R)M=\operatorname{rad}_R(M)が有限生成性だけからは従わないことを説明せよ。
  3. 商加群に関する二つの包含が真になりうる例をそれぞれ与えよ。またN⊆rad⁡R(M)N\subseteq\operatorname{rad}_R(M)のときの根基の等式を証明せよ。
  4. 任意直和について根基と socle が成分ごとの直和に一致することを、単純加群への写像と成分射影から再構成せよ。
  5. Noether 加群の根基列と Artin 加群の socle 列について、各段が非終端ならば次の包含が真になることを証明せよ。この主張だけでは列が有限回で終端するとは限らない理由も述べよ。
  6. 左 Artin 環AAについてJ(A)J(A)の有限共通部分表示からA/J(A)A/J(A)の半単純性を証明し、soc⁡A,n(M)=Ann⁡M(J(A)n)\operatorname{soc}_{A,n}(M)=\operatorname{Ann}_M(J(A)^n)を導け。右 Artin 環の場合も反対環によって述べよ。
解答 (演習の解答).
  1. Q\mathbb Qの商は可除群なので非零単純群Z/pZ\mathbb Z/p\mathbb Zにならず、極大部分加群は存在しない。非零部分群SSと0≠x∈S0\neq x\in Sに対し、x/2x/2がSSに属するかどうかでZx\mathbb Zxまたは2S2Sが非零真の部分加群を与える。よって単純部分加群も存在せず、根基はQ\mathbb Q、socle は00である。
  2. m≥1m\geq1について唯一の極大部分加群はp(Z/pmZ)p(\mathbb Z/p^m\mathbb Z)なので根基はこれに等しい。位数ppの唯一の部分加群pm−1(Z/pmZ)p^{m-1}(\mathbb Z/p^m\mathbb Z)が socle である。m=2m=2ではJ(Z)=0J(\mathbb Z)=0だが加群根基は非零のpMpMである。
  3. 根基にはM=ZM=\mathbb Z、N=p2ZN=p^2\mathbb Zを取ると、左辺は零だが商の根基はpZ/p2Zp\mathbb Z/p^2\mathbb Zである。socle にはM=ZM=\mathbb Z、N=pZN=p\mathbb Zを取ると、左辺は零だが商は単純である。N⊆rad⁡R(M)N\subseteq\operatorname{rad}_R(M)ならばすべての極大部分加群がNNを含むので、部分加群対応で得る共通部分の族が変わらない。
  4. 根基については、各成分の根基に属する有限台の元を単純加群への写像が零へ写す。逆包含は各成分射影が全射であることから従う。socle については各成分の単純部分加群を標準包含で移す。一方、直和内の単純部分加群は一つの非零元で生成され、その元の有限台に含まれ、各成分射影の像が零または単純になる。
  5. 根基列の非零な段は Noether 部分加群なので有限生成であり、極大部分加群をもつ。その共通部分は一つの極大部分加群に含まれるため真に小さい。socle 列の真の段による商は非零 Artin 加群であり、極小非零部分加群、すなわち単純部分加群をもつため次の層は非零である。ただし Noether 性は昇鎖条件、Artin 性は降鎖条件であり、ここで現れる反対向きの列の有限停止をそれぞれ単独では保証しない。
  6. 極大左イデアルの有限共通部分の族から極小元を選ぶと、それはすべての極大左イデアルに含まれるためJ(A)J(A)に等しい。対角写像はA/J(A)A/J(A)を有限個の単純加群A/miA/\mathfrak m_iの直和へ埋め込み、その部分加群としてA/J(A)A/J(A)は半単純である。まずsoc⁡A(M)=Ann⁡M(J)\operatorname{soc}_A(M)=\operatorname{Ann}_M(J)を、単純加群がJJで零化されることとAnn⁡M(J)\operatorname{Ann}_M(J)がA/JA/J上半単純であることから示す。これを逐次商へ適用すると、Jx⊆soc⁡A,n(M)Jx\subseteq\operatorname{soc}_{A,n}(M)とJn+1x=0J^{n+1}x=0の同値から帰納法が進む。右側はRopR^{\mathrm{op}}へ同じ証明を適用し、左作用JxJxを右作用xJxJに読み替える。

▨

10 範囲の境界

本記事は、加群根基と socle を単純商および単純部分加群から構成し、Loewy 列と Jacobson 根基の冪を結び付けた。有限生成加群だけではJ(R)M=rad⁡R(M)J(R)M=\operatorname{rad}_R(M)が成り立たないことを明示し、有限生成射影性またはR/J(R)R/J(R)の半単純性という正しい十分条件を与えた。本質的部分加群の定義は「本質拡大と入射包絡」で扱った。小部分加群、半完全環および射影被覆の理論は後続の単元へ委ねる。

参考文献

  1. T. Y. Lam, Lectures on Modules and Rings, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1999.加群根基、socle、Loewy 列および Jacobson 根基との関係の標準的な定式化を参考にした。
  2. Frank W. Anderson and Kent R. Fuller, Rings and Categories of Modules, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, 1992.根基と socle の商・直和に関する性質、および Artin 環上の socle 列を参考にした。

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