1 定義
定義 1.1.Rを整域とする。a,b∈Rに対して、あるc∈Rが存在して
b=acとなるとき、aはbを割る (divides) といい、a∣bと書く。
a,b∈Rに対して、ある単元u∈R×が存在してa=ubとなるとき、aとbは同伴 (associates) であるという。
aとbが同伴ならば、a∣bかつb∣aである。逆に、整域において非零元a,bが互いに割り合うならば、aとbは同伴である。実際、a=bc、b=adと書くとa=acdであり、a=0を消去してcd=1を得る。したがってcとdは単元である。零元についても0と同伴な元は0だけである。
定義 1.2.Rを整域とする。p∈Rが次の三条件を満たすとき、pを既約元 (irreducible element) という。
- p=0である。
- pは単元でない。
- p=abとなるa,b∈Rに対して、aまたはbは単元である。
p∈Rが次の三条件を満たすとき、pを素元 (prime element) という。
- p=0である。
- pは単元でない。
- p∣abとなるa,b∈Rに対して、p∣aまたはp∣bである。
定義 1.4.Rを整域とする。a,b∈Rに対して、d∈Rが次の二条件を満たすとき、dをaとbの最大公約元 (greatest common divisor) という。
- d∣aかつd∣bである。
- c∣aかつc∣bとなる任意のc∈Rに対して、c∣dである。
(a,b)=(0,0)の場合には、最大公約元を0とする。
最後の規約は二条件からも強制される。実際、0は0と0の公約元であるため、最大公約元dは0∣dを満たす。したがってd=0である。また、a=0のとき、aと0の最大公約元はaと同伴である。
命題 1.5.Rを整域とする。dとeがともにa,b∈Rの最大公約元ならば、dとeは同伴である。
証明.dはa,bの公約元であり、eは最大公約元であるからd∣eである。同様にe∣dである。
a=b=0ならば、定義の規約からd=e=0である。(a,b)=(0,0)ならば、最大公約元dとeはいずれも非零である。実際、d=0ならば0∣aかつ0∣bからa=b=0となる。したがって非零元d,eが互いに割り合うことから、dとeは同伴である。▨
定義 1.6. 整域Rに対して、写像
δ:R∖{0}⟶N≥0が存在し、任意のa,b∈R、b=0に対して、あるq,r∈Rが
a=bq+r,r=0またはδ(r)<δ(b)を満たすとき、RをEuclid 整域 (Euclidean domain) といい、δをEuclid 関数 (Euclidean function) という。商qと余りrは一意である必要はない。
定義 1.7. 整域Rの任意のイデアルが一つの元で生成されるとき、Rを単項イデアル整域 (principal ideal domain) といい、PID と略記する。零イデアルも(0)という単項イデアルに含める。
整域Rが次の二条件を満たすとき、Rを一意分解整域 (unique factorization domain) といい、UFD と略記する。
- 任意の非零非単元a∈Rは、ある単元u∈R×、整数n≥1および既約元p1,…,pnを用いて
a=up1⋯pn
と書くことができる。
- 非零非単元a∈Rに二つの表示
a=up1⋯pn=vq1⋯qm
があり、n,m≥1、u,vが単元、pi,qjが既約元ならば、n=mであり、ある置換σに対して各piはqσ(i)と同伴である。
零元と単元は、UFD における既約分解の存在条件と一意性条件の対象から除く。
2 Euclid 整域と PID
定理 2.1. 任意の Euclid 整域は単項イデアル整域である。
命題 2.2.Rを PID とし、a,b∈Rとする。イデアル(a,b)の生成元をdとすると、dはa,bの最大公約元であり、あるx,y∈Rが存在して
d=xa+ybとなる。特に、a,bの最大公約元が単元であることと(a,b)=Rであることは同値である。
証明.Rは PID であるため、あるd∈Rによって(a,b)=(d)と書くことができる。a,b∈(d)であるからd∣aかつd∣bである。c∣aかつc∣bとすると、cはa,bの任意の線形結合を割る。d∈(a,b)であるためc∣dとなり、dは最大公約元である。
d∈(a,b)であることから、あるx,y∈Rが存在してd=xa+ybとなる。a=b=0の場合には(a,b)=(0)であり、d=0と選べばd=0a+0bである。
dが単元ならば(d)=Rであるから(a,b)=Rである。逆に(a,b)=Rならば(d)=Rであり、1∈(d)であるためdは単元である。▨
定理 2.3 (Euclid アルゴリズムと Bézout 等式).Rを Euclid 関数δをもつ Euclid 整域とする。任意のa,b∈Rに対して、Euclid アルゴリズムは有限回で停止する。(a,b)=(0,0)のとき、最後に得られる非零元dはa,bの最大公約元になる。ここで、b=0の場合には初期値aをdとする。さらに、あるx,y∈Rが存在して
d=xa+ybとなる。(a,b)=(0,0)の場合にはd=0、x=y=0とする。
証明. 最初にa=b=0とする。この場合には最大公約元の規約からd=0であり、
0=0a+0bである。
次に(a,b)=(0,0)とする。b=0ならばd:=aと置く。a=0であり、aはaと0の最大公約元である。また、a=1a+0bである。
以下ではb=0とする。r−1:=a、r0:=bと置く。ri=0である限り Euclid 整域の除法を適用し、
ri−1=qi+1ri+ri+1,ri+1=0またはδ(ri+1)<δ(ri)となるqi+1,ri+1∈Rを選ぶ。非零余りが続く間、
δ(r0)>δ(r1)>δ(r2)>⋯は非負整数の真の減少列である。そのような列は無限に続かないため、あるn≥0においてrn=0かつrn+1=0となる。
等式
ri+1=ri−1−qi+1riからri+1∈(ri−1,ri)であるため、
(ri,ri+1)⊆(ri−1,ri)となる。逆に
ri−1=qi+1ri+ri+1からri−1∈(ri,ri+1)であるため、逆包含も成り立つ。よって
(ri−1,ri)=(ri,ri+1)である。等式(ri−1,ri)=(ri,ri+1)を最後の段階まで繰り返すと、
(a,b)=(r−1,r0)=(r0,r1)=⋯=(rn,rn+1)=(rn)を得る。
d:=rnと置く。定理 2.1によりRは PID であり、(a,b)=(d)と命題 2.2から、dはa,bの最大公約元である。また、d=xa+ybを満たすx,y∈Rが存在する。
係数x,yは、最後の非零余りrnから順に
ri+1=ri−1−qi+1riを代入し、r−1=aとr0=bの線形結合へ戻すことによって求めることができる。商と余りの選択が一意でない場合でも、得られる最後の非零余りは常にa,bの最大公約元であるから、異なる選択による結果は互いに同伴である。▨
補題 2.4.Rを PID とし、a,b,c∈Rとする。a,bの最大公約元が単元であり、a∣bcならば、a∣cである。
補題 2.5 (Euclid の補題).Rを PID とし、p∈Rを既約元とする。p∣abとなるa,b∈Rに対して、p∣aまたはp∣bである。したがって、PID の既約元は素元である。
証明.dをp,aの最大公約元とする。d∣pであるからp=deとなるe∈Rが存在する。pは既約元であるため、dまたはeは単元である。
eが単元ならばd=e−1pであり、dはpと同伴である。さらにd∣aであるからp∣aである。
dが単元ならば、p,aの最大公約元は単元である。仮定p∣abと補題 2.4をp,a,bへ適用するとp∣bを得る。
いずれの場合にもp∣aまたはp∣bである。pは既約元であるから非零非単元でもあり、素元の定義を満たす。▨
命題 1.3と補題 2.5により、PID では素元と既約元が一致する。
3 PID における既約分解
命題 3.1.Rを PID とする。イデアルの任意の昇鎖
I1⊆I2⊆I3⊆⋯は停止する。すなわち、あるN≥1が存在して、すべてのn≥Nに対してIn=INとなる。
証明. 左R加群RRの部分加群はRのイデアルである。Rは PID なので、各部分加群は一元生成であり、特に有限生成である。§E6.20 命題 1.2によりRRは昇鎖条件を満たす。したがって、Rのイデアルの任意の昇鎖は停止する。▨
命題 3.2.Rを PID とする。任意の非零非単元a∈Rは、ある整数n≥1と既約元p1,…,pn∈Rを用いて
a=p1⋯pnと書くことができる。したがって、先頭の単元として1を取ることにより、UFD の存在条件も満たされる。
証明. 既約元の有限積に書くことができない非零非単元a0∈Rが存在すると仮定する。そのような元aiは既約でないので、非単元b,c∈Rを用いてai=bcと書くことができる。ai=0なのでb,cも非零である。b,cがともに既約元の有限積に書くことができれば、両方の分解を連結してaiの既約分解を得る。したがって、少なくとも一方は既約元の有限積に書くことができない。その因子をai+1、もう一方をeiと選ぶ。
この選択を反復すると、既約分解をもたない非零非単元aiと非零非単元eiが
ai=ai+1eiを満たす。この等式から(ai)⊆(ai+1)である。この包含が等号であると仮定すると、ai+1=aitとなるt∈Rが存在する。したがって
ai+1=ait=ai+1eitとなる。ai+1=0を整域で消去すると1=eitを得るため、eiは単元になる。eiが単元になる結論は、eiの選び方に反する。よって
(a0)⊊(a1)⊊(a2)⊊⋯は主イデアルの真の昇鎖である。
この昇鎖は命題 3.1に反する。したがって、既約元の有限積に書くことができない非零非単元は存在しない。各非零非単元は少なくとも一個の既約元を含む有限積に書くことができる。▨
定理 3.3.Rを、すべての既約元が素元である整域とする。単元u,v∈R×と既約元p1,…,pn,q1,…,qm∈Rに対して
up1⋯pn=vq1⋯qmとする。ここでn,m≥0とし、因子がない積は1とする。このときn=mであり、ある置換σに対して、各piはqσ(i)と同伴である。pi=εiqσ(i)、εi∈R×と書くと、uε1⋯εn=vである。
証明.n=0のとき、等式は
u=vq1⋯qmである。m≥1ならばq1∣uとなる。しかし単元の約元は単元である。実際、u=q1cならばq1(cu−1)=1である。q1が単元になる結論は、既約元q1が非単元であることに反する。したがってm=0であり、主張は成り立つ。
n≥1とし、n−1個以下の因子に対する主張を仮定する。m=0ならば等式からp1∣vとなり、先ほどと同様に既約元p1が単元であるという矛盾を得る。よってm≥1である。
p1は既約元であるため、仮定により素元である。表示された等式から
p1∣vq1⋯qmである。vは単元であるからp1∤vである。素元の条件を積へ繰り返し適用すると、あるjに対してp1∣qjとなる。因子の順序を入れ替え、j=1としてよい。
q1=p1cとなるc∈Rを取る。q1は既約元でありp1は非単元であるため、cは単元である。したがってp1とq1は同伴である。元の等式を
up1p2⋯pn=vp1cq2⋯qmと書き、非零元p1を消去すると
up2⋯pn=(vc)q2⋯qmを得る。vcは単元である。帰納法の仮定によりn−1=m−1であり、残りの因子も置換と同伴を除いて対応する。先に対応させたp1,q1を加えるとn=mであり、すべての因子が対応する。
同伴単元についての等式の証明は演習とする。▨
命題 3.4. 任意の単項イデアル整域は一意分解整域である。
証明.Rを PID とする。命題 3.2により、任意の非零非単元は既約元の有限積に書くことができる。補題 2.5により、Rのすべての既約元は素元である。したがって定理 3.3により、二つの既約分解は因子の順序と同伴を除いて一致する。既約分解の存在と一意性が定義 1.7の二条件を満たすため、Rは UFD である。▨
以上の結果をまとめると、包含関係
Euclid 整域⟹PID⟹UFD
が得られる。第一の矢印は除法における最小の Euclid 値から、第二の矢印は主イデアルの昇鎖停止と Euclid の補題から従う。
4 例
例 4.1 (整数環の Euclid 関数と最大公約元).Zの単元は1と−1である。実際、uv=1となる整数u,vに絶対値を取ると∣u∣∣v∣=1であるため、∣u∣=1となる。逆に1と−1はそれぞれ自分自身を逆元にもつ。
非零整数nに対して
δ(n):=∣n∣と定める。a,b∈Z、b=0とする。正整数∣b∣による整数の除法から、あるQ,r∈Zが存在して
a=Q∣b∣+r,0≤r<∣b∣となる。b>0ならばq:=Q、b<0ならばq:=−Qと置くと、いずれの場合にも
a=bq+rである。r=0であるか、r>0かつ
δ(r)=r<∣b∣=δ(b)である。したがってδは Euclid 関数であり、Zは Euclid 整域である。よってZは PID かつ UFD でもある。
252と198に Euclid アルゴリズムを適用すると、
2521985436=1⋅198+54,=3⋅54+36,=1⋅36+18,=2⋅18となる。最後の非零余りは18である。逆代入によって
18=54−36=54−(198−3⋅54)=4⋅54−198=4(252−198)−198=4⋅252−5⋅198を得る。したがって18は両方を割り、両方を割る任意の整数は表示された線形結合18も割るため、18は252,198の最大公約元である。−18も同伴な最大公約元である。
補題 4.2. 整数について次が成り立つ。
- 非負整数a,bがgcd(a,b)=1を満たすならば、ua+vb=1を満たす整数u,vが存在する。
- 正の整数n>1は素数の積に分解し、その素因数分解は素数の順序を除いて一意である。
- t≥1とし、正整数n1,…,ntは二つずつ互いに素であるとする。すべてのniが整数xを割るならば、積n1⋯ntもxを割る。
証明.例 4.1と定理 2.1によりZは PID であり、命題 3.4により UFD である。
(1)を示す。gcd(a,b)=1なので、a,bの最大公約元は1と同伴である。命題 2.2の Bézout 等式を単元倍して、ua+vb=1となる整数u,vを得る。この結論はa,bが非負整数で一方が零の場合にも成り立つ。実際、a=0ならばb=1なので(u,v)=(0,1)を取り、b=0ならばa=1なので(u,v)=(1,0)を取ればよい。
(2)を示す。整数環の単元は1,−1である。非零非単元r∈Zが非単元の積abに分解することと、∣r∣が1より大きい二つの正整数∣a∣,∣b∣の積に分解することは同値である。したがって、rが既約元であることと∣r∣が素数であることは同値である。Zの一意分解性により、n>1を既約元の積に分解し、各因子を正の同伴元に取り替えると
n=εp1⋯ps,ε∈{1,−1},pi>0となる。各piは素数であり、n>0なのでε=1である。同伴な正の素数は等しいから、既約分解の一意性により素数の順序以外の曖昧さはない。また、補題 2.5により、素数pと整数a,bに対してp∣abならばp∣aまたはp∣bである。
(3)を示す。t=1の場合は仮定そのものである。t≥2とし、t−1個の場合を仮定する。M=n1⋯nt−1と置くと、帰納法の仮定からx=Myとなる整数yが存在する。ntとMの公約数が1より大きければ、(2)により、その公約数を割る素数pが存在する。Euclid の補題を積Mに適用すると、p∣niを満たすi<tが存在する。p∣ntでもあるので、ni,ntが互いに素であることに反する。したがってgcd(nt,M)=1である。nt∣Myと補題 2.4からnt∣yを得る。よってMnt∣xである。▨
例 4.3 (体は Euclid 整域である).Fを体とする。体は零環でなく、非零元の積が非零であるため整域である。非零元x∈Fに対して
δ(x):=0と定める。a,b∈F、b=0に対して
q:=ab−1,r:=0と置けばa=bq+rである。余りが零であるため、Euclid 関数の不等式を確認する必要はない。よってFは Euclid 整域である。
定理 2.1によりFは PID である。実際、非零イデアルI⊆Fには非零元aが存在する。a−1a=1∈IであるためI=F=(1)である。零イデアルは(0)である。
さらに、Fには非零非単元が存在しない。したがって UFD の既約分解の存在条件は空虚に成り立ち、一意性条件を適用する表示も存在しない。よってFは UFD である。
例 4.4 (Z[−5]における既約元と素元). 複素数体の部分環
A=Z[−5]={a+b−5∣a,b∈Z}は整域である。Aの元α=a+b−5に対して
N(α):=αα=a2+5b2と置く。複素共役は積を保つので、α,β∈Aに対して
N(αβ)=αβαβ=N(α)N(β)である。非零元のノルムは正整数である。αβ=1ならばN(α)N(β)=1なのでN(α)=1である。方程式a2+5b2=1の整数解は(a,b)=(±1,0)だけであり、1,−1は単元である。したがってA×={1,−1}である。
ノルムが2または3となる元は存在しない。実際、b=0ならばa2+5b2≥5であり、b=0ならばノルムは整数の平方である。2=αβが非単元どうしの分解ならば、N(α),N(β)>1かつN(α)N(β)=4である。したがって両方のノルムは2となり、ノルム2の元が存在しないことに反する。よって2は既約元である。
一方、
6=2⋅3=(1+−5)(1−−5)である。2はこの積を割るが、1+−5も1−−5も割らない。実際、1±−5=2(a+b−5)ならば、実部を比較して1=2aを得るが、整数aはこの等式を満たさない。したがって2は素元でない。
さらに、3と1±−5も既約元である。N(3)=9の非単元二因子分解にはノルム3の元が必要であり、N(1±−5)=6の非単元二因子分解にはノルム2と3の元が必要である。いずれも存在しない。同伴な元のノルムは等しいが、N(2)=4、N(3)=9とN(1±−5)=6は異なる。よって6の二つの既約分解は、因子の順序と同伴を除いても一致しない。したがってAは UFD でなく、命題 3.4により PID でもない。
5 演習
問題 5.1 (Euclid 整域・PID・UFD の確認). 次の各問に答えよ。
- 整域Rにおける整除、同伴、既約元、素元および最大公約元を定義せよ。零元と単元が既約元・素元から除かれること、(0,0)の最大公約元、および UFD の存在条件から零元・単元が除かれることを明記せよ。また、Zの Euclid 関数δ(n)=∣n∣に対し、3=2⋅1+1=2⋅2−1の二つの除法が条件を満たすことを確かめ、商と余りの一意性が必要か答えよ。
- 定理 2.1の証明を完成させよ。さらに、Euclid アルゴリズムが有限回で停止する理由と、各段階で(ri−1,ri)=(ri,ri+1)となる理由を証明せよ。最後の非零余りが最大公約元であり、Bézout 等式を満たすことを導け。PID 性の証明では、非零イデアルから Euclid 値が最小の元を選べ。
- 252と198に Euclid アルゴリズムを適用し、最大公約元を求めよ。さらに、その最大公約元を252と198の整数係数線形結合として表し、252x+198y=18を満たすすべての整数対(x,y)を求めよ。
- 命題 1.3と補題 2.4の証明を完成させよ。さらに、PID で既約元が素元であることを導け。
- PID のイデアルの昇鎖の合併がイデアルであることを証明し、その昇鎖が停止することを示せ。既約分解をもたない非零非単元があると仮定して主イデアルの真の昇鎖を構成し、既約分解の存在を証明せよ。
- 定理 3.3の同伴単元についての等式の証明を完成させよ。さらに、すべての既約元が素元である整域で、二つの既約分解が順序と同伴を除いて一致することを証明せよ。因子が零個の場合を扱い、対応する同伴単元を先頭の単元へ吸収した後の等式も示せ。既約分解の存在、既約元の素元性および一意性から PID が UFD であることを導け。
- 例 4.4の環Aについて、N(α)=4,6,9を満たす元αをそれぞれすべて求めよ。得られた元の既約性と同伴関係を調べ、2が既約だが素でないことと、6の二つの既約分解が一致しないことを確かめよ。また、Euclid アルゴリズムの停止を保証する性質を述べ、整域の元の因数分解と加群の直和分解を区別せよ。
解答 (演習の解答).
-
a∣bとはb=acとなるc∈Rが存在することであり、a,bが同伴であるとはa=ubとなる単元uが存在することである。既約元pは非零非単元で、p=abならばa,bの一方が単元となる元である。素元pは非零非単元で、p∣abならばp∣aまたはp∣bとなる元である。dがa,bの最大公約元であるとは、dが両方を割り、両方を割る任意の元がdを割ることである。(0,0)の最大公約元は0とする。零元と単元は既約元・素元に含めず、UFD の存在条件も非零非単元だけを対象にする。Euclid 整域では、a=bq+rとr=0またはδ(r)<δ(b)を満たせばよく、q,rの一意性は要求しない。整数の二つの除法では、商と余りはそれぞれ(q,r)=(1,1),(2,−1)であり、いずれも∣r∣=1<2を満たす。
-
Rを Euclid 整域とする。非零余りが続く限りδ(ri+1)<δ(ri)であり、非負整数の真の減少列は無限に続かないため、アルゴリズムは停止する。等式ri+1=ri−1−qi+1riは(ri,ri+1)⊆(ri−1,ri)を与え、等式ri−1=qi+1ri+ri+1は逆包含を与える。したがって最後の非零余りをdとすれば(a,b)=(d)である。よってdはa,bを割り、任意の公約元はdを割る。またd∈(a,b)からd=xa+ybを得る。Euclid 整域のイデアルIについて、I=0なら(0)である。I=0ならIの非零元のうちδが最小の元dを選ぶ。a∈Iをa=dq+rと割るとr=a−dq∈Iであり、r=0はdの最小性に反する。よってr=0なので、任意のa∈Iは(d)に属する。逆にd∈Iから(d)⊆Iであり、I=(d)となる。したがってRは PID である。
-
除法列は
252=198+54,198=3⋅54+36,54=36+18,36=2⋅18
である。最後の非零余りは18である。逆代入により
18=54−36=4⋅54−198=4⋅252−5⋅198
となる。したがって最大公約元として18を選ぶことができる。
252x+198y=18を18で割ると14x+11y=1である。特解(4,−5)との差を取れば
14(x−4)=−11(y+5)
となる。14と11は互いに素なので、補題 2.4により11∣x−4である。x−4=11t、t∈Zと書いて代入するとy+5=−14tを得る。逆に任意のt∈Zに対して、この整数対は元の等式を満たす。したがって解はちょうど
(x,y)=(4+11t,−5−14t),t∈Z
である。
-
素元pをp=abと書くと、p∣aまたはp∣bである。a=pcならp=pcbから非零元pを消去して1=cbを得るためbは単元である。b=pcならばp=apcから1=acを得るためaは単元である。よってpは既約である。PID でa,bの最大公約元が単元なら、Bézout 等式を単元の逆元倍して1=xa+ybと書くことができる。a∣bcならc=xac+ybcの右辺をaが割るためa∣cである。既約元pと元aの最大公約元dはpを割る。既約性からdが単元であるか、dがpと同伴である。後者ならp∣aであり、前者ならp∣abと互いに素な元に対する補題からp∣bである。よってpは素元である。
-
PIDRの昇鎖I1⊆I2⊆⋯に対し、I=⋃n≥1Inと置く。0∈I1⊆Iである。x∈Ii、y∈Ijならば、k=max{i,j}に対してx,y∈Ikなのでx−y∈Ik⊆Iである。r∈Rとx∈Iiに対してrx∈Ii⊆Iでもある。よってIはイデアルである。PID ではI=(a)と書くことができ、a∈INとなるNが存在するためI=(a)⊆IN⊆Iであり、任意のn≥Nに対してIN⊆In⊆I=INとなり、鎖はINで停止する。既約分解をもたない非零非単元a0が存在すると仮定する。既約元の有限積として表されない非零非単元aiは既約でないため、二つの非零非単元の積に分解される。両因子が既約元の有限積として表されるならばaiもそのように表されるため、少なくとも一方は表されない。その一方をai+1、他方をeiと置けば、ai=ai+1eiである。すると(ai)⊊(ai+1)である。等号ならai+1=ait=ai+1eitからeiが単元となるためである。この真の昇鎖は停止条件に反するので、すべての非零非単元は既約分解をもつ。
-
等式up1⋯pn=vq1⋯qmで、n=0なら左辺は単元である。m>0なら既約元q1が単元を割って単元となる矛盾が生じるためm=0である。n,m>0なら、素元p1は右辺のあるqjを割る。qjの既約性から両者は同伴であり、順序を入れ替えて共通因子を消去する。因子数に関する帰納法によってn=mかつ全因子が対応する。pi=εiqσ(i)、εi∈R×と書き、元の等式へ代入すると
u(ε1⋯εn)qσ(1)⋯qσ(n)=vq1⋯qn
となる。置換は積を変えないので、非零積q1⋯qnを消去してuε1⋯εn=vを得る。n=0ならば両方の積は1であり、この等式はu=vである。PID では既約分解が存在し、Euclid の補題により既約元が素元であるため、この一意性を適用して UFD の二条件を得る。
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α=a+b−5と置く。N(α)=4ならば5b2≤4なのでb=0、a=±2であり、解は±2である。N(α)=6ならばb=0,±1である。b=0ではa2=6に解がなく、b=±1ではa=±1である。したがって解は±(1+−5),±(1−−5)である。N(α)=9でもb=0,±1であり、b=0ならばa=±3、b=±1ならばa=±2である。解は±3,±(2+−5),±(2−−5)となる。ノルム2,3の元は存在しないので、列挙したすべての元は既約である。単元は±1だけなので、同伴関係は符号の違いだけである。異なるノルムの元は同伴でなく、同じノルムについても、列挙した組の間では符号を変えても一致しない。2は6=(1+−5)(1−−5)を割るが、実係数が奇数である両因子を割らない。よって2は素元でなく、2⋅3と(1+−5)(1−−5)は異なる既約分解である。
Euclid アルゴリズムの停止を保証するのは、非零余りの Euclid 値が非負整数の真の減少列になることである。尺度は一般の Euclid 関数である。体上の一変数多項式環における次数を尺度とする除法、既約判定、Eisenstein の判定法および既約多項式による商体は、後続の多項式環の範囲で扱う。主イデアルの元の分解と、PID 上加群の直和分解とは別の問題である。Smith 標準形と PID 上有限生成加群の構造定理は後続の加群構造論で扱う。
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