§E8.10有限次 Galois 理論

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有限拡大L/KL/KのKK-自己同型は、KK係数多項式の根を別の根へ移す。自己同型が十分多い場合には、自己同型群から元の基礎体を固定体として回収することができる。有限 Galois 理論は、この条件を最小多項式の分解、埋め込みの個数、および自己テンソル積の直積分解へ翻訳する。

本記事では、有限拡大に対する埋め込み延長を先に証明する。この補題により、後続の「正規拡大と共役」を前提とせずに有限 Galois 対応と商群まで証明することができる。さらに、自己テンソル積を二通りのK[G]K[G]加群として表示し、有限長加群の Krull–Schmidt の定理を適用して正規基底定理を証明する。

1 Galois 群と埋め込みの延長

定義 1.1. 拡大L/KL/Kに対して、KKの各元を固定するLLの体自己同型全体を

Gal⁡(L/K)=Aut⁡K(L)\operatorname{Gal}(L/K)=\operatorname{Aut}_K(L)

と書き、L/KL/KのGalois 群 (Galois group) という。演算は写像の合成である。

定義 1.2. 有限拡大L/KL/KがGalois 拡大 (Galois extension) であるとは、

LGal⁡(L/K)={a∈L∣σ(a)=a(∀σ∈Gal⁡(L/K))}=KL^{\operatorname{Gal}(L/K)} =\{a\in L\mid \sigma(a)=a\quad(\forall\sigma\in\operatorname{Gal}(L/K))\}=K

が成り立つことをいう。

有限 Galois 理論で用いる埋め込み延長を、生成元を一つずつ添加して証明する。

補題 1.3.E/FE/Fを有限代数拡大とし、Ω\Omegaを代数的閉体とする。体埋め込みτ:F→Ω\tau:F\to\Omegaは、体埋め込みτ~:E→Ω\widetilde\tau:E\to\Omegaへ延長することができる。

証明.E=F(α1,…,αr)E=F(\alpha_1,\ldots,\alpha_r)と書き、Fi=F(α1,…,αi)F_i=F(\alpha_1,\ldots,\alpha_i)とおく。τi−1:Fi−1→Ω\tau_{i-1}:F_{i-1}\to\Omegaが構成されているとする。αi\alpha_iのFi−1F_{i-1}上の最小多項式をmim_iとする。τi−1\tau_{i-1}を係数へ施した多項式τi−1mi\tau_{i-1}m_iは、代数的閉体Ω\Omegaに根βi\beta_iをもつ。§E8.8 補題 2.1により、αi↦βi\alpha_i\mapsto\beta_iとしてτi−1\tau_{i-1}をFiF_iへ延長することができる。この操作を有限回反復して得られるτr\tau_rがτ~\widetilde\tauである。この証明は最小多項式の分離性を仮定していない。▨

2 Dedekind の独立性と Artin の固定体定理

有限 Galois 拡大の固定体を次数によって判定するため、自己同型を関数として線形独立に扱う。

補題 2.1 (Dedekind の独立性).σ1,…,σn:L→Ω\sigma_1,\ldots,\sigma_n:L\to\Omegaを相異なる体準同型とする。c1,…,cn∈Ωc_1,\ldots,c_n\in\Omegaが

∑i=1nciσi(x)=0(∀x∈L)\sum_{i=1}^{n}c_i\sigma_i(x)=0\qquad(\forall x\in L)

を満たすなら、c1=⋯=cn=0c_1=\cdots=c_n=0である。

証明. 非自明な関係が存在すると仮定し、非零係数をもつ項の個数が最小の関係を取る。番号を付け直して、すべてのcic_iが非零であるとする。項が一つならx=1x=1を代入して矛盾するため、n≥2n\ge2である。

σ1≠σn\sigma_1\ne\sigma_nなので、σ1(y)≠σn(y)\sigma_1(y)\ne\sigma_n(y)となるy∈Ly\in Lが存在する。xxをxyxyに置き換えた関係から、元の関係のσn(y)\sigma_n(y)倍を引くと

∑i=1n−1ci(σi(y)−σn(y))σi(x)=0(∀x∈L)\sum_{i=1}^{n-1}c_i\bigl(\sigma_i(y)-\sigma_n(y)\bigr)\sigma_i(x)=0 \qquad(\forall x\in L)

を得る。第一係数は非零なので、この式は元より項数が少ない非自明な関係である。最小性に反するため、非自明な関係は存在しない。▨

定理 2.2 (Artin の固定体定理).LLを体とし、HHをLLの自己同型からなる有限群とする。固定体を

LH={a∈L∣σ(a)=a(∀σ∈H)}L^H=\{a\in L\mid\sigma(a)=a\quad(\forall\sigma\in H)\}

とすると

[L:LH]=∣H∣[L:L^H]=|H|

である。

証明.H={σ1,…,σn}H=\{\sigma_1,\ldots,\sigma_n\}、K=LHK=L^Hとおく。

まず[L:K]≥n[L:K]\ge nを示す。[L:K]=d<n[L:K]=d<nと仮定し、w1,…,wdw_1,\ldots,w_dをLLのKK-基底とする。nn個のベクトル

(σi(w1),…,σi(wd))∈Ld(1≤i≤n)(\sigma_i(w_1),\ldots,\sigma_i(w_d))\in L^d\qquad(1\le i\le n)

はLL上一次従属である。したがって、すべてが零ではないc1,…,cn∈Lc_1,\ldots,c_n\in Lが存在して∑iciσi(wj)=0\sum_i c_i\sigma_i(w_j)=0が各jjについて成り立つ。任意のx∈Lx\in Lをx=∑jajwjx=\sum_j a_jw_j、aj∈Ka_j\in Kと書くと、各σi\sigma_iはKKを固定するので

∑iciσi(x)=∑jaj∑iciσi(wj)=0\sum_i c_i\sigma_i(x)=\sum_j a_j\sum_i c_i\sigma_i(w_j)=0

となる。これは補題 2.1に反する。

次に[L:K]≤n[L:K]\le nを示す。[L:K]>n[L:K]>nと仮定し、KK上一次独立なα1,…,αn+1∈L\alpha_1,\ldots,\alpha_{n+1}\in Lを取る。未知数x1,…,xn+1∈Lx_1,\ldots,x_{n+1}\in Lに関する方程式

∑j=1n+1σi(αj)xj=0(1≤i≤n)(2)\sum_{j=1}^{n+1}\sigma_i(\alpha_j)x_j=0\qquad(1\le i\le n) \tag{2}

は、未知数の個数が式の個数より多いので非自明解をもつ。非零成分の個数が最小の非自明解を取り、番号を付け直してx1≠0x_1\ne0とし、全成分をx1x_1で割ってx1=1x_1=1とする。

すべてのxjx_jがKKに属すれば、恒等写像に対応する式 (2) がαj\alpha_jの非自明なKK-係数一次関係になる。したがって、あるxkx_kはKKに属さず、あるτ∈H\tau\in Hについてτ(xk)≠xk\tau(x_k)\ne x_kである。式 (2) の各式へτ\tauを施すと、τσi\tau\sigma_iはHHの元を並べ替えるため、(τ(x1),…,τ(xn+1))(\tau(x_1),\ldots,\tau(x_{n+1}))も同じ方程式系の解である。元の解との差も解であり、第一成分は1−1=01-1=0、第kk成分は非零である。この差は元の解より非零成分が少ない非自明解なので、最小性に反する。

二つの不等式から[L:K]=n=∣H∣[L:K]=n=|H|を得る。▨

3 自己同型による特徴づけ

L/KL/Kを有限拡大とし、Ω\OmegaをKKの代数閉包、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。自己テンソル積に対して、第一因子を係数体とするLL-代数準同型

ΦL/K:L⊗KL⟶∏σ∈GL,a⊗b⟼(aσ(b))σ∈G(1)\Phi_{L/K}:L\otimes_K L\longrightarrow\prod_{\sigma\in G}L, \qquad a\otimes b\longmapsto\bigl(a\sigma(b)\bigr)_{\sigma\in G} \tag{1}

を定める。

定理 3.1. 有限拡大L/KL/Kについて、次の条件は同値である。

  1. LG=KL^{G}=Kである。
  2. ∣G∣=[L:K]|G|=[L:K]である。
  3. L/KL/Kは分離拡大であり、任意のKK-埋め込みL→ΩL\to\Omegaの像がLLに等しい。
  4. 任意のα∈L\alpha\in Lの最小多項式mα,Km_{\alpha,K}がL[x]L[x]で相異なる一次式の積に分解する。
  5. 式 (1) のΦL/K\Phi_{L/K}がLL-代数同型である。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。LGL^GはKKを含む。Artin の固定体定理定理 2.2を有限群GGへ適用すると

[L:LG]=∣G∣≤[L:K][L:L^G]=|G|\le [L:K]

である。したがってLG=KL^G=Kと∣G∣=[L:K]|G|=[L:K]は同値である。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。GGはKK-埋め込みL→ΩL\to\Omegaの集合に含まれる。§E8.8 定理 2.3により

∣G∣≤#Hom⁡K(L,Ω)≤[L:K].|G|\le\#\operatorname{Hom}_K(L,\Omega)\le[L:K].

両端が等しいので、すべての不等式が等号である。したがってL/KL/Kは分離的であり、すべてのKK-埋め込みL→ΩL\to\OmegaはGGに属するため、その像はLLである。

(3)⇒\Rightarrow(4)を示す。α∈L\alpha\in Lとし、β∈Ω\beta\in\Omegaをmα,Km_{\alpha,K}の根とする。α↦β\alpha\mapsto\betaはKK-同型K(α)→K(β)K(\alpha)\to K(\beta)を定める。補題 1.3により、この同型はKK-埋め込みL→ΩL\to\Omegaへ延長する。(3)により像はLLなのでβ∈L\beta\in Lである。またL/KL/Kは分離的なのでmα,Km_{\alpha,K}に重根はない。ゆえにmα,Km_{\alpha,K}はL[x]L[x]で相異なる一次式の積に分解する。

(4)⇒\Rightarrow(3)を示す。(4)から各元の最小多項式は分離的なので、L/KL/Kは分離拡大である。τ:L→Ω\tau:L\to\OmegaをKK-埋め込みとする。各α∈L\alpha\in Lについてτ(α)\tau(\alpha)はmα,Km_{\alpha,K}の根であり、(4)によりLLに属する。したがってτ(L)⊆L\tau(L)\subseteq Lである。τ\tauは有限次元KK-線形空間LLの単射線形自己写像なので全射であり、τ(L)=L\tau(L)=Lとなる。

(2)⇒\Rightarrow(5)を示す。既に示した(3)と原始元定理§E8.9 定理 3.1によりL=K(α)L=K(\alpha)となるα\alphaを取ることができる。m=mα,Km=m_{\alpha,K}とすると、(4)により

m(x)=∏σ∈G(x−σ(α))m(x)=\prod_{\sigma\in G}(x-\sigma(\alpha))

であり、根は相異なる。したがって

L⊗KL≅L⊗KK[x]/(m)≅L[x]/(m)≅∏σ∈GLL\otimes_KL \cong L\otimes_K K[x]/(m) \cong L[x]/(m) \cong\prod_{\sigma\in G}L

となる。最後の同型は中国剰余定理による。この合成はa⊗ba\otimes bを(aσ(b))σ(a\sigma(b))_{\sigma}へ写すので、式 (1) のΦL/K\Phi_{L/K}である。

(5)⇒\Rightarrow(2)を示す。定義域のLL-次元は[L:K][L:K]、終域のLL-次元は∣G∣|G|なので、同型なら[L:K]=∣G∣[L:K]=|G|である。以上ですべての条件が同値になった。▨

例 3.2 (最初の Galois 群).L=Q(2)L=\mathbb Q(\sqrt2)とすると、Q\mathbb Q-自己同型は恒等写像と2↦−2\sqrt2\mapsto-\sqrt2の二つである。したがって

Gal⁡(L/Q)≅Z/2Z.\operatorname{Gal}(L/\mathbb Q)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z.

a=23a=\sqrt[3]2、ω\omegaを11の原始三乗根とし、M=Q(a,ω)M=\mathbb Q(a,\omega)とする。§E8.6 例 4.1により[M:Q]=6[M:\mathbb Q]=6である。MMは分離多項式x3−2x^3-2の分解体であり、分離的な根で生成されるため§E8.8 系 2.4により分離拡大である。また、任意のQ\mathbb Q-埋め込みは三つの根を置換してMMを保つ。したがって定理 3.1 (2)により∣Gal⁡(M/Q)∣=6|\operatorname{Gal}(M/\mathbb Q)|=6である。根への作用はS3S_3への単射を与え、両群の位数が66なので

Gal⁡(M/Q)≅S3\operatorname{Gal}(M/\mathbb Q)\cong S_3

となる。

例 3.3 (自己テンソル積が直積にならない例).u=t3u=t^3とおき、L=Q(t)L=\mathbb Q(t)、K=Q(u)K=\mathbb Q(u)とする。§E8.9 例 4.1のn=3n=3の基底計算により、1,t,t21,t,t^2はLLのKK-基底である。したがって[L:K]=3[L:K]=3であり、ttが満たす三次多項式X3−uX^3-uはttのKK上の最小多項式である。

KKを固定するLLの自己同型は恒等写像だけである。実際、ttの像はX3−uX^3-uの根であり、代数閉包内でその根はt,ζ3t,ζ32tt,\zeta_3t,\zeta_3^2tである。ここでζ3\zeta_3は11の原始三乗根である。Q(t)\mathbb Q(t)に属するQ\mathbb Q上代数的な元はQ\mathbb Qの元に限る。実際、非定数のc=f(t)/g(t)c=f(t)/g(t)に対してf(X)−cg(X)∈Q(c)[X]f(X)-cg(X)\in\mathbb Q(c)[X]はttを根にもつ非零多項式である。ccがQ\mathbb Q上代数的ならttもQ\mathbb Q上代数的となり、ttの超越性に反する。したがってζ3∉Q(t)\zeta_3\notin\mathbb Q(t)であり、ζ3t,ζ32t\zeta_3t,\zeta_3^2tもLLに属さない。したがって∣G∣=1<3|G|=1<3である。

実際に

L⊗KL≅L[X]/(X3−t3)≅L[X]/((X−t)(X2+tX+t2))L\otimes_KL\cong L[X]/(X^3-t^3) \cong L[X]/\bigl((X-t)(X^2+tX+t^2)\bigr)

である。第二因子の判別式は−3t2-3t^2である。−3-3がQ(t)\mathbb Q(t)の平方なら、互いに素なf,g∈Q[t]f,g\in\mathbb Q[t]によってf2=−3g2f^2=-3g^2と書けるが、両辺の最高次係数を比較すると矛盾する。したがって−3t2-3t^2はLLの平方ではなく、第二因子はL[X]L[X]で既約である。ゆえにL⊗KLL\otimes_KLはL3L^3には分解せず、定理 3.1 (5)が失敗する。

4 有限 Galois 対応

定理 4.1 (Galois の基本定理).L/KL/Kを有限 Galois 拡大とし、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。対応

M⟼Gal⁡(L/M),H⟼LHM\longmapsto\operatorname{Gal}(L/M), \qquad H\longmapsto L^H

は、中間体K⊆M⊆LK\subseteq M\subseteq Lと部分群H≤GH\le Gの間の包含を反転する全単射であり、互いに逆である。さらにH=Gal⁡(L/M)H=\operatorname{Gal}(L/M)とおくと

[L:M]=∣H∣,[M:K]=[G:H][L:M]=|H|,\qquad [M:K]=[G:H]

である。

HHがGGの正規部分群であることとM/KM/Kが Galois 拡大であることは同値である。この場合、制限写像は同型

G/H→ ∼ Gal⁡(M/K)G/H\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{Gal}(M/K)

を与える。

証明.H≤GH\le Gとする。定義からH⊆Gal⁡(L/LH)H\subseteq\operatorname{Gal}(L/L^H)である。定理 2.2により[L:LH]=∣H∣[L:L^H]=|H|なので、埋め込み数の評価から∣Gal⁡(L/LH)∣≤[L:LH]=∣H∣|\operatorname{Gal}(L/L^H)|\le[L:L^H]=|H|である。したがってGal⁡(L/LH)=H\operatorname{Gal}(L/L^H)=Hとなる。

中間体MMを取る。α∈L\alpha\in LのMM上の最小多項式は、KK上の最小多項式をM[x]M[x]で割り切る。定理 3.1 (4)により後者はL[x]L[x]で相異なる一次式の積に分解するため、前者も同じ性質をもつ。したがってL/ML/Mは Galois 拡大であり、LGal⁡(L/M)=ML^{\operatorname{Gal}(L/M)}=Mである。二つの対応が互いに逆であることが示された。包含が反転することは定義から従う。次数の二式は Artin の固定体定理と塔の公式から従う。

正規部分群と商群の主張を示す。まず、任意のσ∈G\sigma\in GとH≤GH\le Gに対して

LσHσ−1=σ(LH)(3)L^{\sigma H\sigma^{-1}}=\sigma(L^H) \tag{3}

である。実際、a∈LHa\in L^Hなら(σhσ−1)(σa)=σh(a)=σa(\sigma h\sigma^{-1})(\sigma a)=\sigma h(a)=\sigma aであり、逆向きはσ−1\sigma^{-1}を用いて得られる。したがってHHが正規であることと、対応するM=LHM=L^Hがすべてのσ∈G\sigma\in Gでσ(M)=M\sigma(M)=Mを満たすことは同値である。

HHが正規なら、制限写像

ρ:G⟶Gal⁡(M/K),σ⟼σ∣M\rho:G\longrightarrow\operatorname{Gal}(M/K),\qquad\sigma\longmapsto\sigma|_M

が定義され、その核はHHである。この写像は全射である。実際、τ∈Gal⁡(M/K)\tau\in\operatorname{Gal}(M/K)をM→L⊆ΩM\to L\subseteq\OmegaというKK-埋め込みとみなし、補題 1.3でL→ΩL\to\Omegaへ延長する。L/KL/Kは Galois なので定理 3.1 (3)により延長の像はLLであり、延長はGGの元である。準同型定理からG/H≅Gal⁡(M/K)G/H\cong\operatorname{Gal}(M/K)を得る。また

∣Gal⁡(M/K)∣=∣G/H∣=[G:H]=[M:K]|\operatorname{Gal}(M/K)|=|G/H|=[G:H]=[M:K]

なので、定理 3.1 (2)によりM/KM/Kは Galois 拡大である。

逆にM/KM/Kが Galois 拡大なら、σ∈G\sigma\in Gとa∈Ma\in Mに対してσ(a)\sigma(a)はma,Km_{a,K}の根である。この最小多項式はM[x]M[x]で分解するためσ(a)∈M\sigma(a)\in Mであり、σ(M)=M\sigma(M)=Mとなる。式 (3) によりHHは正規である。▨

例 4.2 (Q(2,3)\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)の対応).L=Q(2,3)L=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)とすると[L:Q]=4[L:\mathbb Q]=4であり、符号を独立に変える二つの自己同型

σ(2)=−2,σ(3)=3,τ(2)=2,τ(3)=−3\sigma(\sqrt2)=-\sqrt2,\quad\sigma(\sqrt3)=\sqrt3, \qquad \tau(\sqrt2)=\sqrt2,\quad\tau(\sqrt3)=-\sqrt3

が Galois 群を生成する。したがってG={1,σ,τ,στ}≅(Z/2Z)2G=\{1,\sigma,\tau,\sigma\tau\}\cong(\mathbb Z/2\mathbb Z)^2である。位数二の三つの部分群に対する固定体は

L⟨σ⟩=Q(3),L⟨τ⟩=Q(2),L⟨στ⟩=Q(6)L^{\langle\sigma\rangle}=\mathbb Q(\sqrt3),\qquad L^{\langle\tau\rangle}=\mathbb Q(\sqrt2),\qquad L^{\langle\sigma\tau\rangle}=\mathbb Q(\sqrt6)

である。各部分群は正規なので、三つの二次中間拡大はすべてQ\mathbb Q上 Galois である。

5 分解体の次数と正規基底

既存の分解体記事から、Galois 群を用いる次数評価を本記事へ移す。

命題 5.1.f∈K[x]f\in K[x]を次数nnの分離多項式とし、LLをffの分解体とする。このとき

[L:K]∣n![L:K]\mid n!

である。

証明.LLはffの根で生成される。各根はKK上分離的なので、§E8.8 系 2.4によりL/KL/Kは分離拡大である。また、任意のKK-埋め込みL→ΩL\to\Omegaはffの根をffの根へ写すため、LLを保つ。定理 3.1 (3)によりL/KL/Kは Galois 拡大である。

G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)はffの相異なるnn個の根を置換する。すべての根を固定する自己同型は、それらで生成されるLLの全元を固定するため恒等写像である。したがって作用は単射準同型G↪SnG\hookrightarrow S_nを与える。Lagrange の定理と[L:K]=∣G∣[L:K]=|G|により

[L:K]=∣G∣∣∣Sn∣=n![L:K]=|G|\mid|S_n|=n!

を得る。▨

正規基底定理では群環と加群を用いる。群環の構成は§E6.1 定義 6.1と§E6.1 命題 6.2、左加群と有限直和の規約は§E6.2 定義 1.1と§E6.2 定義 6.2に従う。

命題 5.2.L/KL/Kを有限 Galois 拡大、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)、n=[L:K]n=[L:K]、R=K[G]R=K[G]とする。T=L⊗KLT=L\otimes_KLに対して、GGを第二因子だけへ

τ⋅(x⊗y):=x⊗τ(y)(τ∈G)(4)\tau\cdot(x\otimes y):=x\otimes\tau(y) \qquad(\tau\in G) \tag{4}

によって作用させ、線形に拡張してTTを左RR加群とする。このとき、左RR加群として

T≅L⊕n,T≅R⊕n(5)T\cong L^{\oplus n}, \qquad T\cong R^{\oplus n} \tag{5}

が成り立つ。第一の右辺では、GGが各成分のLLへ体自己同型として作用する。

証明. 各τ∈G\tau\in Gに対する式 (4) の写像は、テンソル積上の誘導写像id⁡L⊗τ\operatorname{id}_L\otimes\tauである(§E6.14 命題 6.1)。したがって写像は良定義なKK線形自己同型であり、群作用の等式から左RR加群構造が定まる。

e1,…,ene_1,\ldots,e_nをLLのKK-基底とする。写像

α:T⟶L⊕n,∑i=1nei⊗yi⟼(y1,…,yn)(6)\alpha:T\longrightarrow L^{\oplus n}, \qquad \sum_{i=1}^ne_i\otimes y_i\longmapsto(y_1,\ldots,y_n) \tag{6}

を考える。基底の双対写像ei∗:L→Ke_i^*:L\to Kを第一因子へ施すと各yiy_iを回収できるため、式 (6) の表示は一意である。逆写像は(yi)i↦∑iei⊗yi(y_i)_i\mapsto\sum_i e_i\otimes y_iであり、GGは第二因子と各成分だけへ作用する。よってα\alphaはRR線形同型である。

次に、定理 3.1 (5)の自己テンソル積同型

Φ:T→ ∼ ∏σ∈GL,Φ(x⊗y)σ=xσ(y)(7)\Phi:T\xrightarrow{\ \sim\ }\prod_{\sigma\in G}L, \qquad \Phi(x\otimes y)_\sigma=x\sigma(y) \tag{7}

を用いる。この同型へ至る固定体と次数の議論は補題 2.1を用いている。終域に

(τ⋅v)σ:=vστ(8)(\tau\cdot v)_\sigma:=v_{\sigma\tau} \tag{8}

と作用させる。純テンソルについて

Φ(τ⋅(x⊗y))σ=xσ(τ(y))=Φ(x⊗y)στ=(τ⋅Φ(x⊗y))σ\Phi\bigl(\tau\cdot(x\otimes y)\bigr)_\sigma =x\sigma(\tau(y)) =\Phi(x\otimes y)_{\sigma\tau} =\bigl(\tau\cdot\Phi(x\otimes y)\bigr)_\sigma

であるから、Φ\PhiはRR線形同型である。

v=(vσ)σ∈Gv=(v_\sigma)_{\sigma\in G}の各成分を基底表示

vσ=∑i=1nci,σei(ci,σ∈K)v_\sigma=\sum_{i=1}^nc_{i,\sigma}e_i \qquad(c_{i,\sigma}\in K)

で書き、

β(v)i:=∑σ∈Gci,σσ−1∈R(1≤i≤n)(9)\beta(v)_i:=\sum_{\sigma\in G}c_{i,\sigma}\sigma^{-1}\in R \qquad(1\le i\le n) \tag{9}

と定める。係数族(ci,σ)(c_{i,\sigma})と群環の係数は一対一に対応するため、β\betaはKK線形全単射である。さらに、ρ=στ\rho=\sigma\tauと添字を置き換えると

β(τ⋅v)i=∑σ∈Gci,στσ−1=∑ρ∈Gci,ρτρ−1=τβ(v)i\begin{aligned} \beta(\tau\cdot v)_i &=\sum_{\sigma\in G}c_{i,\sigma\tau}\sigma^{-1} =\sum_{\rho\in G}c_{i,\rho}\tau\rho^{-1}\\ &=\tau\beta(v)_i \end{aligned}

となる。したがってβ:∏σ∈GL→R⊕n\beta:\prod_{\sigma\in G}L\to R^{\oplus n}はRR線形同型である。α\alphaとβ∘Φ\beta\circ\Phiが式 (5) の二つの同型を与える。▨

補題 5.3.RRを単位元をもつ結合環、M,NM,Nを有限長左RR加群、rrを正の整数とする。

M⊕r≅N⊕rM^{\oplus r}\cong N^{\oplus r}

ならばM≅NM\cong Nである。

証明.§E6.26 定理 2.2により、MMとNNを有限個の直既約加群の直和へ分解できる。両方の分解に現れる直既約加群の同型類をU1,…,UsU_1,\ldots,U_sとし、その多重度をそれぞれaj,bja_j,b_jと書く。零回の直和を許せば

M≅⨁j=1sUj⊕aj,N≅⨁j=1sUj⊕bjM\cong\bigoplus_{j=1}^sU_j^{\oplus a_j}, \qquad N\cong\bigoplus_{j=1}^sU_j^{\oplus b_j}

となる。仮定の同型と Krull–Schmidt の一意性から、各jjについて

raj=rbjra_j=rb_j

を得る。r≥1r\ge1なので整数の等式としてrrを消去でき、aj=bja_j=b_jとなる。したがって二つの直既約分解は置換を除いて一致し、M≅NM\cong Nである。▨

5.1 証明方針

有限 Galois 拡大L/KL/Kに対し、命題 5.2は自己テンソル積をL⊕nL^{\oplus n}とK[G]⊕nK[G]^{\oplus n}の双方に同型な有限長K[G]K[G]加群として表示する。補題 5.3を適用してL≅K[G]L\cong K[G]を得た後、群環の単位元の像を正規基底の生成元とする。

定理 5.4 (正規基底定理).L/KL/Kを有限 Galois 拡大とし、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。このとき、あるθ∈L\theta\in Lが存在して

{σ(θ)∣σ∈G}\{\sigma(\theta)\mid\sigma\in G\}

がLLのKK-基底になる。

証明.n=[L:K]=∣G∣n=[L:K]=|G|、R=K[G]R=K[G]と置く。命題 5.2により

L⊕n≅L⊗KL≅R⊕nL^{\oplus n}\cong L\otimes_KL\cong R^{\oplus n}

が左RR加群として成り立つ。LLとRRは有限次元KK-ベクトル空間である。RR-部分加群の真の包含鎖はKK-部分空間の次元を真に増加させるため、LLとRRは有限長RR加群である。補題 5.3をr=nr=nとして適用すると、左RR加群同型

f:R→ ∼ Lf:R\xrightarrow{\ \sim\ }L

を得る。群環の単位元に対応する群の単位元を1G1_Gと書き、θ=f(1G)\theta=f(1_G)と置く。任意のσ∈G\sigma\in GについてRR線形性から

f(σ)=f(σ1G)=σf(1G)=σ(θ)f(\sigma)=f(\sigma 1_G)=\sigma f(1_G)=\sigma(\theta)

である。群の元σ∈G\sigma\in GはRRのKK-基底をなすため、その像{σ(θ)∣σ∈G}\{\sigma(\theta)\mid\sigma\in G\}はLLのKK-基底である。▨

例 5.5 (二次拡大の正規基底).L=Q(2)L=\mathbb Q(\sqrt2)、K=QK=\mathbb Qとし、非自明な自己同型をσ(2)=−2\sigma(\sqrt2)=-\sqrt2とする。θ=1+2\theta=1+\sqrt2の共役は

θ=1+2,σ(θ)=1−2\theta=1+\sqrt2, \qquad \sigma(\theta)=1-\sqrt2

である。a,b∈Qa,b\in\mathbb Qに対して

a(1+2)+b(1−2)=0a(1+\sqrt2)+b(1-\sqrt2)=0

ならば、有理部分と2\sqrt2の係数を比較してa+b=0a+b=0とa−b=0a-b=0を得るため、a=b=0a=b=0である。二つの共役は二次拡大L/KL/Kの正規基底をなす。

6 演習

問題 6.1.

  1. L/KL/Kが有限 Galois 拡大でMMが中間体であるとする。L/ML/Mが Galois 拡大であることを、最小多項式の分解条件から証明せよ。
  2. 定理 3.1 (5)の自己テンソル積の同型を、L=K(α)L=K(\alpha)と中国剰余定理から再構成せよ。
  3. L=Q(2,3)L=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)について、各中間体に対応する部分群と二つの次数公式を確認せよ。
  4. 分離多項式の分解体への Galois 群の作用が根の置換として忠実であることを証明し、命題 5.1を再現せよ。
  5. 命題 5.2の式 (8) が左群作用を定めることを確認し、式 (9) の逆写像を係数によって構成せよ。
  6. 補題 5.3で有限長性を外した一般の加群に同じ結論を主張していない理由を説明し、正規基底定理の証明で有限長性を確認した箇所を特定せよ。

7 扱った範囲と次の記事

本記事では、有限 Galois 拡大を固定体、自己同型数、埋め込み、最小多項式および自己テンソル積によって特徴づけ、Artin の固定体定理、有限 Galois 対応および正規基底定理を証明した。次の記事では、共役と正規拡大を定義し、有限段階の埋め込み延長を無限代数拡大へ拡張して、分解体と代数閉包の一意性を証明する。

参考文献

  1. Emil Artin, Galois Theory, 2nd ed., Notre Dame Mathematical Lectures 2, Dover Publications, 1997, originally published 1944.
  2. Serge Lang, Algebra, revised 3 ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2002.
  3. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.
  4. T. R. Berger and Irving Reiner, A Proof of the Normal Basis Theorem, The American Mathematical Monthly 82 (1975), no. 9, 915–918.Krull–Schmidt の定理を用いる正規基底定理の一様証明を参考にした。

前提記事

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