§E8.16トレース・ノルム・判別式

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有限拡大L/KL/Kの元α\alphaは、KK-線形空間LL上の乗法作用素を定める。その作用素のトレースと行列式が、体のトレースとノルムである。分離拡大では、これらはKK-埋め込みによる和と積になる。非分離拡大では同じ公式に非分離次数の重複度が現れ、この重複度を落とすと公式が誤りになる。

1 乗法作用素による定義

定義 1.1.L/KL/Kを次数nnの有限拡大、α∈L\alpha\in Lとする。KK-線形写像

mα ⁣:L⟶L,x⟼αxm_\alpha\colon L\longrightarrow L,\qquad x\longmapsto\alpha x

をα\alphaの乗法作用素 (multiplication operator) という。その特性多項式を

χα,L/K(T)=det⁡K(Tid⁡L−mα)\chi_{\alpha,L/K}(T)=\det_K(T\operatorname{id}_L-m_\alpha)

と書く。さらに

Tr⁡L/K(α)=tr⁡K(mα),NL/K(α)=det⁡K(mα)\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha)=\operatorname{tr}_K(m_\alpha),\qquad N_{L/K}(\alpha)=\det_K(m_\alpha)

と定め、それぞれL/KL/Kに関するトレース (field trace) とノルム (field norm) という。

§E3.20 定理 2.2により特性多項式は基底変換で変わらず、§E3.20 命題 2.4によりトレースと行列式は特性多項式の係数として基底に依存しない。後者の係数公式から

χα,L/K(T)=Tn−Tr⁡L/K(α)Tn−1+⋯+(−1)nNL/K(α)\chi_{\alpha,L/K}(T) =T^n-\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha)T^{n-1}+\cdots+(-1)^nN_{L/K}(\alpha)

である。トレースはKK-線形であり、ノルムは乗法的である。後者はmαβ=mαmβm_{\alpha\beta}=m_\alpha m_\betaと行列式の乗法性から従う。

例 1.2 (二次拡大のトレースとノルム).KKの標数が22でなく、d∈K×d\in K^\timesが平方でないとする。L=K(d)L=K(\sqrt d)においてα=a+bd\alpha=a+b\sqrt dと置く。基底(1,d)(1,\sqrt d)に関する乗法作用素の行列は

(abdba)\begin{pmatrix}a&bd\\b&a\end{pmatrix}

である。したがって

Tr⁡L/K(α)=2a,NL/K(α)=a2−b2d\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha)=2a,\qquad N_{L/K}(\alpha)=a^2-b^2d

である。

2 埋め込みによる表示と重複度

LsepL_{\mathrm{sep}}をL/KL/Kの最大分離部分体とし、

s=[L:K]s,q=[L:K]is=[L:K]_{\mathrm{s}},\qquad q=[L:K]_{\mathrm{i}}

と置く。§E8.12 定理 2.2により[L:K]=sq[L:K]=sqである。さらに、標数00ではL=LsepL=L_{\mathrm{sep}}かつq=1q=1であり、標数p>0p>0では§E8.12 命題 1.4によりL/LsepL/L_{\mathrm{sep}}は純非分離拡大である。KKの代数閉包Ω\Omegaへの相異なるKK-埋め込みを

σ1,…,σs ⁣:L⟶Ω\sigma_1,\ldots,\sigma_s\colon L\longrightarrow\Omega

とする。各埋め込みはLsepL_{\mathrm{sep}}上の埋め込みの一意な延長である。

定理 2.1.L/KL/Kを有限拡大、Ω\OmegaをKKの代数閉包、LsepL_{\mathrm{sep}}をL/KL/Kの最大分離部分体とする。s=[L:K]ss=[L:K]_{\mathrm{s}}、q=[L:K]iq=[L:K]_{\mathrm{i}}と置き、相異なるKK-埋め込みをσ1,…,σs ⁣:L→Ω\sigma_1,\ldots,\sigma_s\colon L\to\Omegaとする。任意のα∈L\alpha\in Lに対して

χα,L/K(T)=∏i=1s(T−σi(α))q\chi_{\alpha,L/K}(T) =\prod_{i=1}^s\bigl(T-\sigma_i(\alpha)\bigr)^q

が成り立つ。したがって

Tr⁡L/K(α)=q∑i=1sσi(α),NL/K(α)=(∏i=1sσi(α))q\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha) =q\sum_{i=1}^s\sigma_i(\alpha), \qquad N_{L/K}(\alpha) =\left(\prod_{i=1}^s\sigma_i(\alpha)\right)^q

である。整数qqはKKの元としてトレースの式に現れる。

証明. 有限次元KK-線形空間の自己準同型の特性多項式が係数体の拡大で変わらないという§E3.20 命題 3.3を用い、mαm_\alphaをL⊗KΩL\otimes_K\Omega上のΩ\Omega-線形作用素として調べる。分離拡大Lsep/KL_{\mathrm{sep}}/Kに対する§E8.8 定理 3.3をA=LsepA=L_{\mathrm{sep}}に適用すると、KK-埋め込みLsep→ΩL_{\mathrm{sep}}\to\Omegaによる分解

Lsep⊗KΩ≅∏i=1sΩL_{\mathrm{sep}}\otimes_K\Omega\cong\prod_{i=1}^s\Omega

を得る。この分解にLLをLsepL_{\mathrm{sep}}上でテンソルすると

L⊗KΩ≅∏i=1s(L⊗Lsep, σiΩ)L\otimes_K\Omega \cong\prod_{i=1}^s\left(L\otimes_{L_{\mathrm{sep}},\,\sigma_i}\Omega\right)

を与える。各因子はΩ\Omega上qq次元である。

KKの標数が00ならL=LsepL=L_{\mathrm{sep}}かつq=1q=1であり、各因子はΩ\Omegaそのものである。この場合、各因子上のmαm_\alphaはスカラーσi(α)\sigma_i(\alpha)の乗法なので、求める表示が直ちに従う。

KKの標数をp>0p>0とし、Bi=L⊗Lsep, σiΩB_i=L\otimes_{L_{\mathrm{sep}},\,\sigma_i}\Omegaと置く。任意のx∈Lx\in Lに対し、あるrrが存在してxpr∈Lsepx^{p^r}\in L_{\mathrm{sep}}となる。BiB_iでは

(x⊗1−1⊗σi(x))pr=0\bigl(x\otimes1-1\otimes\sigma_i(x)\bigr)^{p^r}=0

が成り立つ。右辺のσi(x)\sigma_i(x)は、σi∣Lsep\sigma_i|_{L_{\mathrm{sep}}}のLLへの一意な延長による値を表す。したがってBiB_i上のmαm_\alphaは、固有値σi(α)\sigma_i(\alpha)と冪零作用素の和であり、その特性多項式は(T−σi(α))q\bigl(T-\sigma_i(\alpha)\bigr)^qである。すべての因子について積を取れば、特性多項式の表示を得る。Tsq−1T^{sq-1}の係数と定数項を比較すると、トレースとノルムの表示が従う。▨

証明で用いたテンソル積分解では、x∈Lsepx\in L_{\mathrm{sep}}でない場合の記号σi(x)\sigma_i(x)は、制限埋め込みの一意な延長による値である。純非分離性によって延長が一意になることを用いている。

系 2.2.L/KL/Kが有限非分離拡大なら、Tr⁡L/K\operatorname{Tr}_{L/K}は零写像である。

証明. 非分離次数はq=pe>1q=p^e>1の形であり、KKの標数はppである。したがってq=0q=0がKKで成り立つ。定理 2.1のトレース表示から、すべてのα∈L\alpha\in LについてTr⁡L/K(α)=0\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha)=0となる。▨

例 2.3 (純非分離拡大では埋め込みを p 回数える).K=Fp(t)K=\mathbb F_p(t)、L=K(u)L=K(u)、up=tu^p=tとする。KK-埋め込みは一つだけであるが、非分離次数はppである。したがって

χu,L/K(T)=(T−u)p=Tp−t,Tr⁡L/K(u)=pu=0,NL/K(u)=up=t.\chi_{u,L/K}(T)=(T-u)^p=T^p-t,\qquad \operatorname{Tr}_{L/K}(u)=pu=0,\qquad N_{L/K}(u)=u^p=t.

埋め込みを一度だけ数えたT−uT-uは、次数ppの乗法作用素の特性多項式ではない。

3 塔に対する推移性

推移性の証明には、係数体を制限した線形写像のトレースと行列式を用いる。

補題 3.1.L/KL/Kを有限拡大とし、A∈Mr(L)A\in M_r(L)をLrL^r上のLL-線形写像とみなす。同じ写像をKK-線形写像とみなしたとき、

tr⁡K(A)=Tr⁡L/K(tr⁡LA),det⁡K(A)=NL/K(det⁡LA)\operatorname{tr}_K(A)=\operatorname{Tr}_{L/K}(\operatorname{tr}_L A), \qquad \det_K(A)=N_{L/K}(\det_L A)

が成り立つ。

証明.LLのKK-基底を一つ固定する。A=(aij)A=(a_{ij})をKK上のブロック行列として書くと、(i,j)(i,j)ブロックはmaijm_{a_{ij}}の行列である。したがってKK上のトレースは対角ブロックのトレースの和であり、

tr⁡K(A)=∑iTr⁡L/K(aii)=Tr⁡L/K(tr⁡LA)\operatorname{tr}_K(A)=\sum_i\operatorname{Tr}_{L/K}(a_{ii}) =\operatorname{Tr}_{L/K}(\operatorname{tr}_L A)

となる。

行列式の等式を示す。AAが特異なら両辺は零である。AAが可逆なら、AAは基本行列とdiag⁡(a,1,…,1)\operatorname{diag}(a,1,\ldots,1)の形の対角行列の積に分解できる。行加算に対応する基本行列はKK上でも行列式11であり、そのLL上の行列式のノルムも11である。行交換は三回の行加算と対角行列によって表すことができる。対角行列diag⁡(a,1,…,1)\operatorname{diag}(a,1,\ldots,1)のKK上の行列式は、ma ⁣:L→Lm_a\colon L\to Lの行列式NL/K(a)N_{L/K}(a)である。したがって生成元ごとに等式が成り立ち、行列式の乗法性により任意の可逆なAAについて成り立つ。▨

定理 3.2.K⊆L⊆MK\subseteq L\subseteq Mを有限拡大の塔とする。任意のα∈M\alpha\in Mに対して

Tr⁡M/K(α)=Tr⁡L/K(Tr⁡M/L(α)),\operatorname{Tr}_{M/K}(\alpha) =\operatorname{Tr}_{L/K}\bigl(\operatorname{Tr}_{M/L}(\alpha)\bigr),NM/K(α)=NL/K(NM/L(α))N_{M/K}(\alpha) =N_{L/K}\bigl(N_{M/L}(\alpha)\bigr)

が成り立つ。

証明.MMのLL-基底を取り、mα ⁣:M→Mm_\alpha\colon M\to Mの行列をA∈Mr(L)A\in M_r(L)とする。LLのKK-基底と組み合わせると、この行列を係数体をKKへ制限した行列がmαm_\alphaのKK-線形行列になる。補題 3.1を適用すると

Tr⁡M/K(α)=tr⁡K(A)=Tr⁡L/K(tr⁡LA)=Tr⁡L/K(Tr⁡M/L(α))\operatorname{Tr}_{M/K}(\alpha) =\operatorname{tr}_K(A) =\operatorname{Tr}_{L/K}(\operatorname{tr}_L A) =\operatorname{Tr}_{L/K}(\operatorname{Tr}_{M/L}(\alpha))

を得る。同じ補題の行列式の等式から

NM/K(α)=det⁡K(A)=NL/K(det⁡LA)=NL/K(NM/L(α))N_{M/K}(\alpha)=\det_K(A) =N_{L/K}(\det_L A) =N_{L/K}(N_{M/L}(\alpha))

を得る。▨

4 トレース形式と分離性

定義 4.1.L/KL/Kを有限拡大とする。KK-双線形形式

bL/K ⁣:L×L⟶K,(x,y)⟼Tr⁡L/K(xy)b_{L/K}\colon L\times L\longrightarrow K,\qquad (x,y)\longmapsto\operatorname{Tr}_{L/K}(xy)

を トレース形式 (trace form) という。KK-基底B=(b1,…,bn)\mathcal B=(b_1,\ldots,b_n)の判別式 (discriminant of a basis) を

disc⁡L/K(B)=det⁡(Tr⁡L/K(bibj))1≤i,j≤n\operatorname{disc}_{L/K}(\mathcal B) =\det\bigl(\operatorname{Tr}_{L/K}(b_ib_j)\bigr)_{1\le i,j\le n}

と定める。

基底を行列P∈GL⁡n(K)P\in\operatorname{GL}_n(K)で変換すると Gram 行列はPTBPP^{\mathsf T}BPへ変わるため、判別式は(det⁡P)2(\det P)^2倍になる。したがって、判別式が零であるかどうかは基底に依存しない。

定理 4.2.L/KL/Kを有限拡大とする。トレース形式bL/Kb_{L/K}が非退化であることと、L/KL/Kが分離拡大であることは同値である。

L/KL/Kが分離的で次数がnnであり、相異なるKK-埋め込みをσ1,…,σn ⁣:L→Ω\sigma_1,\ldots,\sigma_n\colon L\to\Omegaとすると、任意のKK-基底B=(b1,…,bn)\mathcal B=(b_1,\ldots,b_n)に対して

disc⁡L/K(B)=det⁡(σi(bj))i,j2≠0\operatorname{disc}_{L/K}(\mathcal B) =\det\bigl(\sigma_i(b_j)\bigr)_{i,j}^2\ne0

が成り立つ。

証明.L/KL/Kが非分離的なら、系 2.2によりトレースは零写像であり、トレース形式も零形式なので退化している。

L/KL/Kが分離的であるとする。埋め込み表示から

Tr⁡L/K(bibj)=∑k=1nσk(bi)σk(bj)\operatorname{Tr}_{L/K}(b_ib_j) =\sum_{k=1}^n\sigma_k(b_i)\sigma_k(b_j)

である。S=(σi(bj))i,jS=(\sigma_i(b_j))_{i,j}と置くと、トレース形式の Gram 行列はSTSS^{\mathsf T}Sである。したがって

disc⁡L/K(B)=det⁡(S)2\operatorname{disc}_{L/K}(\mathcal B)=\det(S)^2

となる。分離拡大に対する標準分解

L⊗KΩ⟶Ωn,x⊗c⟼(cσ1(x),…,cσn(x))L\otimes_K\Omega\longrightarrow\Omega^n,\qquad x\otimes c\longmapsto(c\sigma_1(x),\ldots,c\sigma_n(x))

はΩ\Omega-代数同型である。その行列がSSなのでdet⁡(S)≠0\det(S)\ne0である。よって Gram 行列は可逆であり、トレース形式は非退化である。▨

5 多項式の判別式と交代群

定義 5.1.f∈K[X]f\in K[X]を次数nnのモニックな分離多項式とし、代数閉包における相異なる根をα1,…,αn\alpha_1,\ldots,\alpha_nとする。

Df=∏1≤i<j≤n(αi−αj),disc⁡(f)=Df2D_f=\prod_{1\le i<j\le n}(\alpha_i-\alpha_j), \qquad \operatorname{disc}(f)=D_f^2

と定める。disc⁡(f)\operatorname{disc}(f)をffの判別式 (discriminant of a polynomial) という。

判別式が基礎体に属することは、分解体の Galois 群の作用から直接従う。

命題 5.2.定義 5.1の仮定のもとで

disc⁡(f)∈K×\operatorname{disc}(f)\in K^\times

が成り立つ。

証明.FFをffの分解体とする。多項式ffは分離的であるから、F/KF/Kは有限 Galois 拡大である。G=Gal⁡(F/K)G=\operatorname{Gal}(F/K)とし、g∈Gg\in Gが根に与える置換をπg∈Sn\pi_g\in S_nとする。Vandermonde 積の交代性により

g(Df)=sgn⁡(πg)Dfg(D_f)=\operatorname{sgn}(\pi_g)D_f

であるから、g(Df2)=Df2g(D_f^2)=D_f^2である。したがってDf2∈FGD_f^2\in F^Gであり、有限 Galois 対応§E8.10 定理 4.1による等式FG=KF^G=Kからdisc⁡(f)=Df2∈K\operatorname{disc}(f)=D_f^2\in Kを得る。分離性により各差αi−αj\alpha_i-\alpha_jは零でないため、Df2≠0D_f^2\ne0である。よってdisc⁡(f)∈K×\operatorname{disc}(f)\in K^\timesとなる。▨

定理 5.3.KKを標数が22でない体、f∈K[X]f\in K[X]を次数nnのモニックな分離多項式、FFをffの分解体とする。根の順序を固定してG=Gal⁡(F/K)G=\operatorname{Gal}(F/K)をSnS_nの部分群とみなす。このとき、次の条件は同値である。

  1. disc⁡(f)\operatorname{disc}(f)はKKの非零平方である。
  2. G⊆AnG\subseteq A_nである。

証明.g∈Gg\in Gが根に与える置換をπg∈Sn\pi_g\in S_nとする。Vandermonde 積の交代性から

g(Df)=sgn⁡(πg)Dfg(D_f)=\operatorname{sgn}(\pi_g)D_f

である。

G⊆AnG\subseteq A_nなら、すべてのg∈Gg\in GがDfD_fを固定する。§E8.10 定理 4.1によりFG=KF^G=KなのでDf∈K×D_f\in K^\timesであり、disc⁡(f)=Df2\operatorname{disc}(f)=D_f^2はKKの非零平方である。

逆にdisc⁡(f)=d2\operatorname{disc}(f)=d^2を満たすd∈K×d\in K^\timesが存在するとする。(Df/d)2=1(D_f/d)^2=1である。KKの標数は22でないから、X2−1=(X−1)(X+1)X^2-1=(X-1)(X+1)の根は11と−1-1だけであり、Df=±d∈KD_f=\pm d\in Kとなる。したがって任意のg∈Gg\in GがDfD_fを固定する。Df≠0D_f\ne0なのでsgn⁡(πg)=1\operatorname{sgn}(\pi_g)=1であり、πg∈An\pi_g\in A_nとなる。ゆえにG⊆AnG\subseteq A_nである。▨

標数22では1=−11=-1であるため、Vandermonde 積への作用から置換の符号を区別することができない。この理由により、定理 5.3は標数22を除外している。

例 5.4 (二次多項式の判別式).KKの標数が22でないとし、f(X)=X2−df(X)=X^2-dを分離的とする。根をd,−d\sqrt d,-\sqrt dの順に取ると

Df=2d,disc⁡(f)=4dD_f=2\sqrt d,\qquad \operatorname{disc}(f)=4d

である。4d4dがKKの平方であることはddがKKの平方であることと同値である。この場合に限って分解体はKK自身であり、Galois 群は自明群A2A_2に含まれる。

6 演習

問題 6.1 (問題). 次の各問に答えよ。

  1. L/KL/Kを次数nnの有限拡大とする。a∈Ka\in Kに対してTr⁡L/K(a)=na\operatorname{Tr}_{L/K}(a)=naおよびNL/K(a)=anN_{L/K}(a)=a^nを証明せよ。
  2. K=QK=\mathbb Q、L=Q(2)L=\mathbb Q(\sqrt2)とし、α=3+22\alpha=3+2\sqrt2とする。Tr⁡L/K(α)\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha)とNL/K(α)N_{L/K}(\alpha)を求めよ。
  3. 標数が22でない体KK上のモニックな分離三次多項式ffについて、disc⁡(f)\operatorname{disc}(f)がKKの平方であり、かつffが既約であるなら、Galois 群が位数33の巡回群であることを証明せよ。
解答 (解答).
  1. a∈Ka\in Kに対する乗法作用素はaid⁡La\operatorname{id}_Lである。KK-基底に関する行列はaInaI_nなので、そのトレースはnana、行列式はana^nである。
  2. 二つの埋め込みは2↦2\sqrt2\mapsto\sqrt2と2↦−2\sqrt2\mapsto-\sqrt2である。したがって Tr⁡L/K(α)=(3+22)+(3−22)=6,\operatorname{Tr}_{L/K}(\alpha)=(3+2\sqrt2)+(3-2\sqrt2)=6, NL/K(α)=(3+22)(3−22)=1N_{L/K}(\alpha)=(3+2\sqrt2)(3-2\sqrt2)=1 である。
  3. 既約三次多項式の Galois 群は三つの根へ推移的に作用する。定理 5.3により Galois 群はA3A_3に含まれる。A3A_3の推移的部分群はA3A_3自身だけである。A3A_3は位数33の巡回群なので、結論が従う。

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参考文献

  1. Serge Lang, Algebra, revised 3 ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2002.トレース、ノルムおよび判別式の記述を参考にした。
  2. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.判別式と Galois 群の符号の記述を参考にした。

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