§E8.21Kummer 理論

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nn乗写像x↦xnx\mapsto x^nの核は一のnn乗根群μn\mu_nである。char⁡K∤n\operatorname{char}K\nmid nの場合、この写像は分離閉包KsK_sの乗法群上で全射になり、Kummer 完全列を与える。nn乗根を一つ選ぶとμn\mu_n値一次コサイクルが生じ、根の変更は基点変更による同値を与える。本記事では、この構成を直接調べ、nn乗根を添加する主等質空間がK×/K×nK^\times/K^{\times n}によって分類されることを証明する。

この分類はμn⊂K\mu_n\subset Kを仮定しなくても成り立つ。ただし、μn\mu_nがKKに含まれない場合にはGKG_Kがμn\mu_nへ円分指標を通じて非自明に作用する。その場合、Kummer 類は一般には巡回 Galois 拡大を定めず、nn乗根の主等質空間と巡回拡大を区別しなければならない。

1 Kummer 完全列

定理 1.1 (Kummer 完全列).KKを体とし、n≥2n\ge2をchar⁡K∤n\operatorname{char}K\nmid nを満たす整数とする。離散GKG_K-加群の列

1⟶μn⟶Ks×→(⋅)nKs×⟶1(1)1\longrightarrow\mu_n\longrightarrow K_s^\times \xrightarrow{(\cdot)^n}K_s^\times\longrightarrow1 \tag{1}

は完全である。GKG_Kのμn\mu_nへの作用は、円分指標χn:GK→(Z/nZ)×\chi_n:G_K\to(\mathbb Z/n\mathbb Z)^\timesによる作用である。

証明.nn乗写像の核は定義によりμn\mu_nである。任意のa∈Ks×a\in K_s^\timesに対してxn−ax^n-aは微分nxn−1nx^{n-1}と互いに素なので分離多項式である。KsK_sは分離閉体であるため、この多項式はKsK_sに根をもち、nn乗写像は全射である。すべての写像はGKG_Kの作用と可換する。

原始nn乗根ζn\zeta_nを選ぶと、§E8.20 定義 1.2によりσ(ζn)=ζnχn(σ)\sigma(\zeta_n)=\zeta_n^{\chi_n(\sigma)}である。したがってμn\mu_nの作用は円分指標によって与えられる。▨

定理 1.2.定理 1.1の仮定のもとで、K×/K×nK^\times/K^{\times n}と、連続な乗法一次コサイクル

z:GK⟶μn,zστ=zσ σ(zτ)z:G_K\longrightarrow\mu_n, \qquad z_{\sigma\tau}=z_\sigma\,\sigma(z_\tau)

を基点変更

zσ′=σ(ζ)ζzσ(ζ∈μn)z'_\sigma=\frac{\sigma(\zeta)}{\zeta}z_\sigma \qquad(\zeta\in\mu_n)

で同一視した同値類との間に、自然な群同型

K×/K×n→ ∼ {μn 値連続一次コサイクル}/ ⁣∼(2)K^\times/K^{\times n}\xrightarrow{\ \sim\ } \{\mu_n\text{ 値連続一次コサイクル}\}/\!\sim \tag{2}

がある。a∈K×a\in K^\timesの類は、KsK_sでαn=a\alpha^n=aとなるα\alphaを選んで定めるコサイクル

za,σ=σ(α)α∈μn(3)z_{a,\sigma}=\frac{\sigma(\alpha)}{\alpha}\in\mu_n \tag{3}

に対応する。この同値類が分類する対象は、方程式xn=ax^n=aの解全体

Xa={x∈Ks∣xn=a}X_a=\{x\in K_s\mid x^n=a\}

からなるμn\mu_n-主等質空間である。

証明.αn=a\alpha^n=aなら、式 (3) のnn乗はσ(a)/a=1\sigma(a)/a=1なのでza,σ∈μnz_{a,\sigma}\in\mu_nである。また

za,στ=στ(α)α=σ(α)α σ ⁣(τ(α)α)z_{a,\sigma\tau} =\frac{\sigma\tau(\alpha)}{\alpha} =\frac{\sigma(\alpha)}{\alpha}\, \sigma\!\left(\frac{\tau(\alpha)}{\alpha}\right)

であるから、zaz_aは一次コサイクルである。別の根ζα\zeta\alphaを選ぶと式 (3) はσ(ζ)za,σ/ζ\sigma(\zeta)z_{a,\sigma}/\zetaへ変わるので、同じ同値類を定める。さらにaaをacnac^n、c∈K×c\in K^\timesへ替えたときは根をαc\alpha cと選ぶことができ、コサイクルは変わらない。したがって式 (2) の写像は定まる。α\alphaの固定部分群は開いているため、zaz_aは連続である。根の積を選べばコサイクルも積になるため、この写像は群準同型である。

この写像が単射であることを示す。αn=a\alpha^n=a、βn=b\beta^n=bから得たコサイクルが同値であるとし、あるζ∈μn\zeta\in\mu_nについて

σ(β)β=σ(ζ)ζσ(α)α\frac{\sigma(\beta)}{\beta} =\frac{\sigma(\zeta)}{\zeta}\frac{\sigma(\alpha)}{\alpha}

がすべてのσ∈GK\sigma\in G_Kに対して成り立つとする。この等式はc=β/(ζα)c=\beta/(\zeta\alpha)がGKG_Kに固定されることを意味するのでc∈K×c\in K^\timesであり、b/a=cnb/a=c^nとなる。ゆえに[a]=[b][a]=[b]である。

全射性を示すため、μn\mu_n値連続一次コサイクルzzを取る。zzをKs×K_s^\times値コサイクルとみなし、乗法版 Hilbert の定理 90§E8.18 定理 4.3を適用すると、あるα∈Ks×\alpha\in K_s^\timesが存在してzσ=σ(α)/αz_\sigma=\sigma(\alpha)/\alphaとなる。zσn=1z_\sigma^n=1であるからαn\alpha^nはGKG_Kに固定される。したがってa=αn∈K×a=\alpha^n\in K^\timesであり、zzは[a][a]の像である。

XaX_aにはμn\mu_nが乗法で自由かつ推移的に作用し、GKG_Kの作用とσ(ζα)=σ(ζ)σ(α)\sigma(\zeta\alpha)=\sigma(\zeta)\sigma(\alpha)の意味で両立する。基点α\alphaを別の根ζα\zeta\alphaへ替えたときのコサイクルの変化は上で定めた同値関係そのものである。したがって式 (2) はμn\mu_n-主等質空間XaX_aの同型類も分類する。▨

式 (2) はμn⊂K\mu_n\subset Kを仮定していない。したがって、任意の体で成立する結論は nn乗根の主等質空間の分類であり、巡回拡大の分類ではない。

2 一の冪根を含む場合

以下この節ではμn⊂K\mu_n\subset Kを追加で仮定する。このときGKG_Kのμn\mu_nへの作用は自明であり、一次コサイクル条件は連続準同型条件になる。さらに基点変更ではσ(ζ)/ζ=1\sigma(\zeta)/\zeta=1なので、異なるコサイクルが同値になることはない。したがって式 (2) は自然な群同型

K×/K×n→ ∼ Hom⁡cont(GK,μn)K^\times/K^{\times n}\xrightarrow{\ \sim\ } \operatorname{Hom}_{\mathrm{cont}}(G_K,\mu_n)

を与える。

命題 2.1.μn⊂K\mu_n\subset Kとし、[a]∈K×/K×n[a]\in K^\times/K^{\times n}に対応する指標をza:GK→μnz_a:G_K\to\mu_nとする。d=#im⁡zad=\#\operatorname{im}z_a、L=Ksker⁡zaL=K_s^{\ker z_a}とおくと、L/KL/Kは次数ddの巡回 Galois 拡大であり、d∣nd\mid nである。さらにL=K(α)L=K(\alpha)、αn=a\alpha^n=aと書くことができる。

この対応が記録するのは、拡大L/KL/Kだけでなく、単射

Gal⁡(L/K)→ ∼ im⁡za⊆μn,σ⟼σ(α)α\operatorname{Gal}(L/K)\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{im}z_a\subseteq\mu_n, \qquad \sigma\longmapsto\frac{\sigma(\alpha)}{\alpha}

を備えた標識付き巡回拡大である。

証明.μn\mu_nの作用が自明なのでzaz_aは連続準同型である。開正規部分群ker⁡za\ker z_aの固定体LLは有限 Galois 拡大であり

Gal⁡(L/K)≅im⁡za\operatorname{Gal}(L/K)\cong\operatorname{im}z_a

である。μn\mu_nは巡回群なので像も位数d∣nd\mid nの巡回群である。

式 (3) から、σ(α)=α\sigma(\alpha)=\alphaとza(σ)=1z_a(\sigma)=1は同値である。したがってα\alphaの固定部分群はker⁡za\ker z_aであり、Galois 対応によりK(α)=LK(\alpha)=Lとなる。最後の同型が標識を与える。▨

同じ巡回拡大でも標識を変えると異なる指標になる。標識を忘れた対象を正確に記述すると次のようになる。

命題 2.2.[a],[b]∈K×/K×n[a],[b]\in K^\times/K^{\times n}の位数が同じ正整数ddであるとする。対応する標識を忘れた固定体がKsK_s内で等しいことと、あるu∈(Z/dZ)×u\in(\mathbb Z/d\mathbb Z)^\timesについて

[b]=[a]u[b]=[a]^u

となることは同値である。

証明.[b]=[a]u[b]=[a]^uなら、対応する指標はzb=zauz_b=z_a^uである。uuは位数ddの像に自己同型として作用するため、二つの指標の核は等しく、固定体も等しい。

逆に固定体が等しければ二つの指標の核は等しい。したがって両指標は同じ巡回商群を位数ddのμn\mu_nの部分群へ同型に写す。その二つの同型の差は位数ddの巡回群の自己同型なので、あるu∈(Z/dZ)×u\in(\mathbb Z/d\mathbb Z)^\timesによる冪乗である。式 (2) の全単射から[b]=[a]u[b]=[a]^uを得る。▨

3 Kummer 対と有限アーベル拡大

定義 3.1.μn⊂K\mu_n\subset Kとし、B≤K×/K×nB\le K^\times/K^{\times n}を有限部分群とする。各[b]∈B[b]\in Bについてβbn=b\beta_b^n=bとなる元をKsK_sで選び

LB=K(βb∣[b]∈B)L_B=K(\beta_b\mid[b]\in B)

とおく。Kummer 対 (Kummer pairing) を

⟨ , ⟩B:Gal⁡(LB/K)×B⟶μn,⟨σ,[b]⟩B=σ(βb)βb(4)\langle\ ,\ \rangle_B: \operatorname{Gal}(L_B/K)\times B\longrightarrow\mu_n, \qquad \langle\sigma,[b]\rangle_B=\frac{\sigma(\beta_b)}{\beta_b} \tag{4}

で定める。

代表元をbbからbcnbc^nへ替え、根をβbc\beta_bcへ替えても式 (4) は変わらない。根を別のものへ替えるとμn⊂K\mu_n\subset Kの元を掛けるだけなので、やはり値は変わらない。

補題 3.2.AAを指数がnnを割る有限アーベル群とし、μn\mu_nを位数nnの巡回群とする。このとき

∣Hom⁡(A,μn)∣=∣A∣(5)|\operatorname{Hom}(A,\mu_n)|=|A| \tag{5}

である。また、任意のa∈A∖{1}a\in A\setminus\{1\}に対して、ψ(a)≠1\psi(a)\ne1を満たすψ∈Hom⁡(A,μn)\psi\in\operatorname{Hom}(A,\mu_n)が存在する。

証明. 有限アーベル群の基本定理§E7.18 定理 6.3により、nnの約数d1,…,drd_1,\ldots,d_rが存在して

A≅Cd1×⋯×CdrA\cong C_{d_1}\times\cdots\times C_{d_r}

と書くことができる。実際、基本定理による各巡回因子の位数はAAの指数を割るため、nnも割る。

CdiC_{d_i}の生成元をeie_iとする。準同型Cdi→μnC_{d_i}\to\mu_nはeie_iの像によって一意に定まり、像として選ぶことができる元は

μn[di]={ζ∈μn∣ζdi=1}\mu_n[d_i]=\{\zeta\in\mu_n\mid\zeta^{d_i}=1\}

である。di∣nd_i\mid nでありμn\mu_nは位数nnの巡回群なので、μn[di]\mu_n[d_i]は位数did_iの部分群である。したがって

∣Hom⁡(Cdi,μn)∣=di|\operatorname{Hom}(C_{d_i},\mu_n)|=d_i

となる。直積の各成分へ制限することにより

Hom⁡(A,μn)≅∏i=1rHom⁡(Cdi,μn)\operatorname{Hom}(A,\mu_n) \cong\prod_{i=1}^r\operatorname{Hom}(C_{d_i},\mu_n)

であるから、両辺の位数を取ると式 (5) を得る。

a≠1a\ne1とし、表示した直積分解における第ii成分aia_iが自明でない添字iiを選ぶ。原始nn乗根ζn\zeta_nを一つ取り、eie_iをζnn/di\zeta_n^{n/d_i}へ写し、他の巡回因子を11へ写す準同型をψ\psiとする。ζnn/di\zeta_n^{n/d_i}の位数はdid_iなので、ai≠1a_i\ne1からψ(a)≠1\psi(a)\ne1が従う。▨

定理 3.3.μn⊂K\mu_n\subset Kとし、B≤K×/K×nB\le K^\times/K^{\times n}を有限部分群とする。LB/KL_B/Kは指数がnnを割る有限アーベル Galois 拡大であり、式 (4) は両側で非退化な完全双線形対である。とくに

Gal⁡(LB/K)≅Hom⁡(B,μn),[LB:K]=∣B∣.(6)\operatorname{Gal}(L_B/K)\cong\operatorname{Hom}(B,\mu_n), \qquad [L_B:K]=|B|. \tag{6}

証明. 各多項式xn−bx^n-bは、μn⊂K\mu_n\subset Kなのでβb\beta_bを一つ含む体ではすべての根をもち、char⁡K∤n\operatorname{char}K\nmid nなので分離的である。有限個の生成元を選べばLBL_Bはそれらの多項式の分解体になるため、有限 Galois 拡大である。各自己同型はそれぞれのβb\beta_bをμn\mu_n倍するので、Galois 群はアーベル群であり、その各元の位数はnnを割る。

式 (4) は両変数について群準同型である。左側で全ての[b][b]と自明に対をなすσ\sigmaは、すべてのβb\beta_bを固定するためLBL_B全体を固定し、σ=1\sigma=1である。右側で全てのσ\sigmaと自明に対をなす[b][b]については、βb\beta_bがGal⁡(LB/K)\operatorname{Gal}(L_B/K)に固定されるためβb∈K\beta_b\in Kであり、[b]=1[b]=1となる。したがって対は両側で非退化である。

BBとGal⁡(LB/K)\operatorname{Gal}(L_B/K)はいずれも指数がnnを割る有限アーベル群である。補題 3.2により∣Hom⁡(B,μn)∣=∣B∣|\operatorname{Hom}(B,\mu_n)|=|B|および∣Hom⁡(Gal⁡(LB/K),μn)∣=∣Gal⁡(LB/K)∣|\operatorname{Hom}(\operatorname{Gal}(L_B/K),\mu_n)|=|\operatorname{Gal}(L_B/K)|である。両側の非退化性が与える二つの単射の位数を比較すると等号になり、式 (6) と完全性を得る。▨

定理 3.4.μn⊂K\mu_n\subset Kとする。対応

B⟼LBB\longmapsto L_B

は、K×/K×nK^\times/K^{\times n}の有限部分群BBと、KsK_s内の指数がnnを割る有限アーベル Galois 拡大L/KL/Kとの間の全単射である。逆対応は

L⟼BL={[b]∈K×/K×n∣b=βn となる β∈L× が存在する}L\longmapsto B_L=\{[b]\in K^\times/K^{\times n}\mid b=\beta^n \text{ となる }\beta\in L^\times\text{ が存在する}\}

である。

証明. 前定理によりLB/KL_B/Kは指定された型の拡大である。またB⊆BLBB\subseteq B_{L_B}である。L/KL/Kが指数がnnを割る有限アーベル Galois 拡大である場合、自然な写像

κL:BL⟶Hom⁡(Gal⁡(L/K),μn),[βn]⟼(σ⟼σ(β)β)(7)\kappa_L:B_L\longrightarrow\operatorname{Hom}(\operatorname{Gal}(L/K),\mu_n), \qquad [\beta^n]\longmapsto\left(\sigma\longmapsto\frac{\sigma(\beta)}{\beta}\right) \tag{7}

を考える。根または代表元を変えても指標は変わらない。指標が自明ならβ∈K\beta\in Kなので、κL\kappa_Lは単射である。一方、任意の指標は乗法版 Hilbert の定理 90§E8.18 定理 4.3によりσ(β)/β\sigma(\beta)/\betaと書くことができ、そのnn乗はKKに属する。したがってκL\kappa_Lは全射である。

L=LBL=L_Bとすると、式 (6) により式 (7) の終域の位数は∣B∣|B|である。B⊆BLBB\subseteq B_{L_B}なのでBLB=BB_{L_B}=Bを得る。

逆にL/KL/Kを指数がnnを割る有限アーベル Galois 拡大とし、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。式 (7) により、BLB_LはGGの指標群全体と同型である。補題 3.2により有限アーベル群の指標は各非自明な元を分離するため、これらの指標の核の共通部分は自明である。対応する根をすべて添加した体の固定部分群も自明なのでL=LBLL=L_{B_L}である。二つの対応は互いに逆である。▨

例 3.5 (二つの平方根からなる Kummer 拡大).char⁡K≠2\operatorname{char}K\ne2とし、a,b∈K×/K×2a,b\in K^\times/K^{\times2}が生成する部分群BBの位数が44であるとする。μ2⊂K\mu_2\subset Kは自動的に成り立つ。Kummer 対により

K(a,b)/KK(\sqrt a,\sqrt b)/K

は次数44の Galois 拡大で、Galois 群はHom⁡(B,μ2)≅C2×C2\operatorname{Hom}(B,\mu_2)\cong C_2\times C_2である。二つの生成元の符号を独立に変える自己同型が、BBの双対基底になる。

4 一の冪根を含まない場合の捻れ

命題 4.1.μn\mu_nがKKに含まれるとは仮定しない。K′=K(μn)K'=K(\mu_n)、H=GK′=ker⁡χnH=G_{K'}=\ker\chi_nとする。Kummer 類[a][a]のコサイクルzaz_aをHHへ制限すると準同型

za∣H:H⟶μnz_a|_H:H\longrightarrow\mu_n

になるが、γ∈GK\gamma\in G_Kとτ∈H\tau\in Hに対して

za(γτγ−1)=γ(za(τ))=za(τ)χn(γ)(8)z_a(\gamma\tau\gamma^{-1}) =\gamma(z_a(\tau)) =z_a(\tau)^{\chi_n(\gamma)} \tag{8}

という捻れた同変性を満たす。

証明.HHはμn\mu_nへ自明に作用するため、コサイクル条件をHHに制限すると準同型条件になる。z=zaz=z_aと書く。コサイクル条件とzγ−1=γ−1(zγ−1)z_{\gamma^{-1}}=\gamma^{-1}(z_\gamma^{-1})を用いると

zγτγ−1=zγ γ(zτ) γτ(zγ−1).z_{\gamma\tau\gamma^{-1}} =z_\gamma\,\gamma(z_\tau)\,\gamma\tau(z_{\gamma^{-1}}).

τ\tauはμn\mu_nを固定するため、最後の因子はzγ−1z_\gamma^{-1}になり、可換性から第一因子と相殺する。よってzγτγ−1=γ(zτ)z_{\gamma\tau\gamma^{-1}}=\gamma(z_\tau)である。最後の等号は円分指標の定義による。▨

例 4.2 (Q\mathbb Q上の三乗根主等質空間).K=QK=\mathbb Q、n=3n=3、a=2a=2とする。式 (3) のコサイクル同値類は主等質空間x3=2x^3=2を定める。しかしμ3⊄Q\mu_3\not\subset\mathbb Qであり、Q(23)/Q\mathbb Q(\sqrt[3]2)/\mathbb Qは Galois 拡大ではない。K′=Q(μ3)K'=\mathbb Q(\mu_3)へ移すとK′(23)/K′K'(\sqrt[3]2)/K'は巡回三次拡大になるが、複素共役はその指標を逆数へ移す。これは式 (8) でχ3\chi_3が−1-1を取る場合である。したがって元の Kummer 類をQ\mathbb Q上の巡回三次拡大と同一視することはできない。

5 演習

問題 5.1.

  1. Kummer コサイクル式 (3) が、μn\mu_nへの作用を含むコサイクル条件を満たすことを計算せよ。
  2. μn⊂K\mu_n\subset Kのとき、一つの非零 Kummer 類が定めるものが標識付き巡回拡大である理由を説明し、標識を忘れる単元作用を記述せよ。
  3. 定理 3.3の左右の非退化性をそれぞれ証明し、どちらがLBL_Bの生成条件を用いるかを明記せよ。
  4. B=⟨[a1],…,[ar]⟩B=\langle[a_1],\ldots,[a_r]\rangleに対して、[LB:K]=∣B∣[L_B:K]=|B|が生成元の個数ではなくBBの位数で決まる理由を説明せよ。
  5. μn⊄K\mu_n\not\subset Kの場合に式 (8) の右辺をza(τ)z_a(\tau)に置き換えることができない理由を、円分指標から説明せよ。

6 扱った範囲と次の記事

本記事では、Kummer 類を常にμn\mu_n-主等質空間として分類し、μn⊂K\mu_n\subset Kの場合に限って標識付き巡回拡大および指数がnnを割る有限アーベル拡大の分類へ進んだ。μn⊄K\mu_n\not\subset Kの場合には円分指標による捻れを保持した。標数がppの場合のpp-冪次巡回拡大はpp乗写像では分離的に扱えないため、次の記事で Witt ベクトルと Artin–Schreier–Witt 写像を用いる。

参考文献

  1. Jean-Pierre Serre, Galois Cohomology, Springer, Berlin, 1997.
  2. Serge Lang, Algebra, revised 3 ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2002.
  3. The Stacks Project Authors, The Stacks Project.Tag 03PK、Tag 09I6 を参考にした。

前提記事