1 二つの標準形
最初に、Bézout の等式と素因数分解に必要な算術を局所的に証明し、∣G∣の各素因数pについてp-成分Gpを構成してGをそれらの直和へ分解する。次に、有限アーベルp群で最大位数の元aを取り、⟨a⟩上の準同型を群全体へ延長して⟨a⟩を直和因子として抽出し、位数に関する帰納法で初等因子表示を得る。一意性はpk−1A/pkAの位数から各初等因子の重複度を復元することによって示す。最後に、互いに素な巡回直因子をまとめる同型を用いて単因子表示を構成し、逆の素因数分解と組み合わせて二つの表示の一意性へ帰着する。
2 必要な算術補題
後の議論で用いる整数論の事実を確認する。
3 素数成分への分解
定義 3.1. 有限アーベル群Gと素数pに対して
Gp={x∈G∣pax=0 となる整数 a≥0 が存在する}とおき、Gの p-成分 (p-primary component) と呼ぶ。
補題 3.2 (素数成分分解).Gを有限アーベル群とし、
∣G∣=i=1∏tpieiを素因数分解とする。このとき各GpiはGの部分群であり、
G=Gp1⊕⋯⊕Gptが成り立つ。
証明.Gはアーベル群なので、pのべきで零になる二元の和と逆元もpのべきで零になる。したがってGpは部分群である。x∈Gpの位数はpのべきであり、§E7.6 定理 2.1によって∣G∣を割る。したがって
Gpi={x∈G∣pieix=0}とも表される。また、pと異なる素数qが∣Gp∣を割るならば、§E7.12 定理 6.1によってGpは位数qの元をもつことになり、その元がpのべきで零になることに反する。ゆえにGpは有限アーベルp群である。
N=∣G∣、ni=N/pieiとおく。gcd(ni,piei)=1であるから、前節の Bézout の等式によって
uini≡1(modpiei)を満たす整数uiが存在する。εi=uiniとおく。i=jならばpjej∣niであるから
εi≡{10(modpiei),(modpjej)となる。したがって∑iεi−1はすべてのpieiで割り切れる。整数pieiは互いに素であるから、§E6.27 補題 4.2 (3)よりN∣∑iεi−1である。
任意のx∈Gに対して
x=i=1∑tεixであり、pieiεix=uiNx=0なのでεix∈Gpiである。ゆえにGは各Gpiの和である。
この和が内部直和であることを示す。xi∈Gpiが∑ixi=0を満たすとする。両辺にεjを掛ける。i=jならばpiei∣εjなのでεjxi=0であり、εjxj=xjである。したがってxj=0となる。各jについて同じ議論が成り立つので、和は直和である。
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4 アーベルp群から巡回直和因子を抽出する
最大位数元が生成する部分群を直和因子として取り出すため、準同型の延長を群論だけで示す。
補題 4.1.pを素数、n≥1を整数とする。Aを有限アーベル群とし、その指数がpnを割る、すなわち、すべてのa∈Aがpna=0を満たすと仮定する。任意の部分群H≤Aと準同型
f:H⟶Cpnは、AからCpnへの準同型に延長することができる。
証明. 指数[A:H]に関する帰納法を用いる。H=Aならば、与えられた準同型f:H→Cpn自身がA上の延長である。H=Aとする。任意のy+H∈A/Hはpn(y+H)=Hを満たすので、その位数はpnを割り、pの冪である。非零元y+Hを一つ取り、その位数をprと書くと1≤r≤nである。x=pr−1yとおけば、x∈/Hかつpx∈Hである。
pnx=0であるからpn−1(px)=0であり、準同型性によってpn−1f(px)=0である。Cpnにおいてpn−1倍で零になる元はpの倍数である。したがってf(px)=pzを満たすz∈Cpnが存在する。
H′=H+⟨x⟩上で
f′(h+kx)=f(h)+kzと定める。この定義が表示によらないことを確認する。h+kx=h′+k′xならば(k−k′)x∈Hである。x+Hの位数はpなのでk−k′=pℓと表される。すると
f(h−h′)=f((k′−k)x)=−ℓf(px)=−pℓz=(k′−k)zであり、f(h)+kz=f(h′)+k′zが従う。よってf′は整定義されている。h1,h2∈Hと整数k1,k2に対して
f′((h1+k1x)+(h2+k2x))=f(h1+h2)+(k1+k2)z=f′(h1+k1x)+f′(h2+k2x)が成り立ち、f′(h)=f(h)である。したがってf′は準同型であり、fを延長する。
HはH′の真部分群なので[A:H′]<[A:H]である。帰納法によってf′はA全体へ延長する。
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補題 4.2. 有限アーベルp群Aは素数べき位数の巡回群の有限直和に分解する。
証明.∣A∣に関する帰納法を用いる。A=0ならば、空の直和が求める分解を与える。A=0とし、Aの元の位数の最大値をpnとする。位数pnの元aを取り、⟨a⟩をCpnと同一視する準同型
f0:⟨a⟩⟶Cpn,f0(a)=1を考える。すべてのx∈Aはpnx=0を満たすので、補題 4.1によってf0は準同型f:A→Cpnに延長する。
f(a)=1であるからfは全射である。任意のx∈Aに対し、f(x)=[k]pnとなる整数kを取れば、
x=ka+(x−ka)であり、x−ka∈kerfである。さらに、ka∈⟨a⟩∩kerfならば
0=f(ka)=[k]pnであるからpn∣kであり、ka=0となる。したがって⟨a⟩∩kerf=0であり、
A=⟨a⟩⊕kerfとなる。kerfはAより位数の小さい有限アーベルp群なので、帰納法によって巡回p群の直和に分解する。よってAも同じ性質をもつ。
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補題 3.2と補題 4.2を組み合わせると、有限アーベル群の初等因子表示の存在が従う。
5 初等因子の一意性
命題 5.1.Aを有限アーベルp群とする。各k≥1に対して
pk−1A/pkA=pdp,kによって非負整数dp,kを定める。初等因子pkの重複度mp,kは
mp,k=dp,k−dp,k+1に等しい。したがって有限アーベル群の初等因子は同型を除いて一意に定まる。
証明.Aが初等因子表示
A≅a≥1⨁Cpamp,aをもつとする。巡回直和因子Cpaは、a≥kの場合に限って
pk−1Cpa/pkCpaへ位数pの直和因子を一つ与える。a<kの場合には零群を与える。したがって
dp,k=a≥k∑mp,aであり、隣り合う二式の差を取ると
dp,k−dp,k+1=mp,kを得る。
各pk−1A/pkAは群Aだけから定まるので、数列(dp,k)k≥1は同型不変量である。十分大きいkではdp,k=0であり、上式によってすべての重複度を復元することができる。一般の有限アーベル群では補題 3.2によって各p-成分が群から一意に定まるため、すべての素数について同じ結論を適用することができる。
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この証明ではベクトル空間の次元を分類の入力として仮定していない。有限商群の位数という、元の群から直接定まる不変量だけを用いている。
6 単因子表示への変換
補題 6.1.n1,…,ntを互いに素な正の整数とし、N=n1⋯ntとする。このとき
CN≅Cn1⊕⋯⊕Cntである。
証明. 準同型
φ:CN⟶i=1⨁tCni,[x]N⟼([x]n1,…,[x]nt)を考える。[x]N=[y]NならばN∣x−yであり、各niはNを割るのでni∣x−yである。したがって[x]ni=[y]niがすべてのiについて成り立ち、φは整定義されている。また、
φ([x]N+[y]N)=([x+y]n1,…,[x+y]nt)=φ([x]N)+φ([y]N)なのでφは加法準同型である。φ([x]N)=0ならば、すべてのniがxを割る。§E6.27 補題 4.2 (3)によってN∣xであるから、kerφ=0である。定義域と終域はいずれも位数Nなので、単射φは全射でもある。
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命題 6.2. 初等因子表示から単因子表示を一意に構成することができ、逆に単因子表示から初等因子表示を一意に復元することができる。
証明. 各素数pについて、初等因子に現れる指数を重複度を含めて昇順に並べ、
ap,1≤ap,2≤⋯≤ap,rpとする。r=maxprpとおき、各列の左側に0を補って長さをrにそろえる。得られた指数をbp,1≤⋯≤bp,rとし、
di=p∏pbp,iと定める。指数列が昇順なのでdi∣di+1である。各iについて、異なる素数に属する巡回群を補題 6.1によってまとめると
p⨁Cpbp,i≅Cdiとなる。ただしbp,i=0の因子は零群として省く。この操作によって初等因子表示から単因子表示を得る。
逆に、各diを一意な素因数分解
di=p∏pbp,iに分け、補題 6.1を逆向きに適用すれば初等因子表示を得る。di∣di+1という条件は、各pについてbp,i≤bp,i+1であることと同値である。したがって二つの操作は互いに逆である。初等因子が命題 5.1によって一意であるため、単因子も一意である。
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定理 6.3 (有限アーベル群の基本定理). 任意の有限アーベル群Gは初等因子表示をもつ。各素数べきの重複度はGから一意に定まる。
同値な形として、Gは単因子表示
G≅Cd1⊕⋯⊕Cds,1<d1∣⋯∣dsをもち、列(d1,…,ds)も一意に定まる。零群については空の直和を用いる。
証明.Gが零群ならば、空の直和が初等因子表示と単因子表示の両方を与える。以下ではGが非零群であるとする。
補題 3.2により、Gは各素数pに属するp-成分の直和に分解する。各p-成分へ補題 4.2を適用すると、Gは素数べき位数の巡回群の有限直和に分解する。したがって初等因子表示が存在する。命題 5.1により、各初等因子の重複度はGから一意に定まる。
初等因子表示へ命題 6.2を適用すると、1<d1∣⋯∣dsを満たす単因子表示が得られる。同じ命題によって、単因子表示から初等因子表示を一意に復元することができる。初等因子表示が一意であるため、単因子の列(d1,…,ds)も一意に定まる。
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7 分類の例
例 7.1 (位数12のアーベル群).12=22⋅3である。2-成分の初等因子表示はC4またはC2⊕C2の二通りであり、3-成分はC3の一通りである。したがって位数12のアーベル群は
C4⊕C3またはC2⊕C2⊕C3の二種類に限る。補題 6.1によって、単因子表示はそれぞれ
C12,C2⊕C6となる。両者は位数が2を割る元の個数がそれぞれ2と4なので、互いに同型ではない。
例 7.2 (位数72のアーベル群).72=23⋅32である。初等因子表示
C2⊕C4⊕C9では、2に対する指数列が(1,2)、3に対する指数列が(2)である。短い列の左側に0を補うと
231(1)(0)2(2)(2)となる。列ごとに掛け合わせると、単因子は2と36である。したがって
C2⊕C4⊕C9≅C2⊕C36であり、2∣36も満たされる。
8 演習
問題 8.1.
- C12⊕C18の初等因子表示を求めよ。また、初等因子から単因子表示を構成せよ。
- 有限アーベルp群Aについてdp,1=4、dp,2=2、dp,3=1、dp,4=0であるとする。各初等因子pkの重複度を求めよ。
- 補題 4.1の証明で、Cpnにおいてpn−1w=0ならばw=pzと表されることを、剰余類の代表元を用いて示せ。
- 位数200=23⋅52の有限アーベル群の同型類を、初等因子表示ですべて列挙せよ。
解答.
- C12⊕C18≅C4⊕C3⊕C2⊕C9である。指数列をそろえると単因子は6,36となるため、C12⊕C18≅C6⊕C36である。元の表示12∤18は単因子表示ではないが、同じ群の表示である。
- mp,1=2、mp,2=1、mp,3=1である。
- w=[r]pnとするとpn∣pn−1rなのでp∣rであり、r=psと表される。よってw=p[s]pnである。
- 2-成分はC8、C4⊕C2、C23の三通り、5-成分はC25、C52の二通りである。したがって両者を一つずつ選ぶ六通りである。
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