§E7.4対称群

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有限集合の並べ替えは、写像の合成によって群をなす。本記事では、置換を互いに素な巡回置換へ分解し、その分解が因子の順序と巡回表示の開始点を除いて一意であることを証明する。置換の積は

στ=σ∘τ,(στ)(x)=σ(τ(x))\sigma\tau=\sigma\circ\tau,\qquad (\sigma\tau)(x)=\sigma(\tau(x))

とし、右側の置換から先に作用させる。

1 有限集合上の置換

定義 1.1.XXを有限集合とする。XXからXXへの全単射をXXの置換 (permutation) という。置換全体の集合をSym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)と書き、写像の合成を積とする。

X={1,…,n}X=\{1,\ldots,n\}のとき、Sym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)をSnS_nと書き、nn次対称群 (symmetric group of degree n) という。

命題 1.2. 有限集合XXに対して、Sym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)は写像の合成に関して群である。さらに、∣X∣=n|X|=nならば

∣Sym⁡(X)∣=n!|\operatorname{Sym}(X)|=n!

である。

証明. 二つの全単射の合成は全単射であるため、積はSym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)上で閉じている。写像の合成は結合的であり、恒等写像id⁡X\operatorname{id}_Xは単位元である。全単射σ\sigmaの逆写像σ−1\sigma^{-1}も全単射であり、

σσ−1=σ−1σ=id⁡X\sigma\sigma^{-1}=\sigma^{-1}\sigma=\operatorname{id}_X

を満たす。したがってSym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)は群である。

n=0n=0のとき、空集合から空集合への写像は一つだけであり、0!=10!=1と一致する。n≥1n\geq1のとき、XXの元を一つの順序で並べる。第1の元の像にはnn通り、第2の元の像には残るn−1n-1通りがある。同じ選択を続けると、全単射の個数はn(n−1)⋯1=n!n(n-1)\cdots1=n!である。▨

対称群の積は一般に可換ではない。

例 1.3 (S3S_3の非可換性).α=(1 2)\alpha=(1\,2)、β=(2 3)\beta=(2\,3)とする。積を右側から作用させると

(αβ)(1)=2,(βα)(1)=3(\alpha\beta)(1)=2,\qquad (\beta\alpha)(1)=3

である。したがってαβ≠βα\alpha\beta\neq\beta\alphaであり、S3S_3は非可換群である。

2 巡回置換と台

定義 2.1.XXの相異なる元a1,…,ara_1,\ldots,a_rに対して、r≥2r\geq2とする。

a1↦a2↦⋯↦ar↦a1a_1\mapsto a_2\mapsto\cdots\mapsto a_r\mapsto a_1

と移し、a1,…,ara_1,\ldots,a_r以外の元を固定する置換を

(a1 a2 ⋯ ar)(a_1\,a_2\,\cdots\,a_r)

と書き、長さrrの巡回置換 (cycle) という。

置換σ∈Sym⁡(X)\sigma\in\operatorname{Sym}(X)の台 (support of a permutation) を

supp⁡(σ)={x∈X∣σ(x)≠x}\operatorname{supp}(\sigma)=\{x\in X\mid \sigma(x)\neq x\}

によって定める。二つの置換の台が交わらないとき、その二つの置換は互いに素 (disjoint permutations) であるという。

巡回表示の開始点は置換を変えない。例えば

(a1 a2 ⋯ ar)=(a2 ⋯ ar a1)(a_1\,a_2\,\cdots\,a_r) =(a_2\,\cdots\,a_r\,a_1)

である。一方、巡回する向きを逆にすれば逆置換になる。

命題 2.2. 有限集合XX上の互いに素な置換α,β\alpha,\betaに対して

αβ=βα\alpha\beta=\beta\alpha

が成り立つ。

証明.x∈Xx\in Xを任意に取る。x∉supp⁡(α)∪supp⁡(β)x\notin\operatorname{supp}(\alpha)\cup \operatorname{supp}(\beta)ならば、二つの積はいずれもxxを固定する。

x∈supp⁡(α)x\in\operatorname{supp}(\alpha)とする。台が交わらないためβ(x)=x\beta(x)=xである。また、α\alphaは自身の台を自身へ移すのでα(x)∈supp⁡(α)\alpha(x)\in\operatorname{supp}(\alpha)であり、β(α(x))=α(x)\beta(\alpha(x))=\alpha(x)である。したがって

(αβ)(x)=α(x)=(βα)(x)(\alpha\beta)(x)=\alpha(x)=(\beta\alpha)(x)

となる。x∈supp⁡(β)x\in\operatorname{supp}(\beta)の場合もα\alphaとβ\betaを交換した同じ計算で等式を得る。すべてのx∈Xx\in Xで値が一致するため、αβ=βα\alpha\beta=\beta\alphaである。▨

3 互いに素な巡回置換への分解

3.1 証明方針

置換σ\sigmaの反復によって有限集合XXを軌道へ分ける。各非自明な軌道ではσ\sigma自身が一つの巡回置換として作用するため、存在が得られる。一意性については、互いに素な巡回因子のうち、動かされる元xxを含む因子の台がxxの軌道に一致することを示す。

定理 3.1 (互いに素な巡回置換への分解). 有限集合XXの任意の置換σ\sigmaは、互いに素な長さ2以上の巡回置換の積として表される。恒等置換は空積によって表す。

この分解は、巡回因子を並べる順序と、各巡回表示における開始点の巡回移動を除いて一意である。

証明.x,y∈Xx,y\in Xに対して、ある整数kkが存在してy=σk(x)y=\sigma^k(x)となるときx∼yx\sim yと定める。x=σ0(x)x=\sigma^0(x)であるから反射律が成り立つ。y=σk(x)y=\sigma^k(x)ならばx=σ−k(y)x=\sigma^{-k}(y)であるから対称律が成り立つ。y=σk(x)y=\sigma^k(x)かつz=σℓ(y)z=\sigma^\ell(y)ならばz=σk+ℓ(x)z=\sigma^{k+\ell}(x)であるから推移律が成り立つ。したがって∼\simは同値関係であり、XXをσ\sigmaの軌道へ分割する。

軌道OOを一つ取り、a∈Oa\in Oとする。XXは有限であるから、a,σ(a),σ2(a),…a,\sigma(a),\sigma^2(a),\ldotsの中には同じ元が二度現れる。全単射σ\sigmaの逆写像を用いると、ある正の整数rrが存在してσr(a)=a\sigma^r(a)=aとなる。そのようなrrの最小値を取れば

a,σ(a),…,σr−1(a)a,\sigma(a),\ldots,\sigma^{r-1}(a)

は相異なり、軌道OOのすべての元を尽くす。r≥2r\geq2の軌道に対して

cO=(a σ(a) … σr−1(a))c_O=(a\,\sigma(a)\,\ldots\,\sigma^{r-1}(a))

と定める。この巡回表示はaaの選び方を変えても開始点が巡回移動するだけである。

相異なる軌道から得られる巡回置換の台は交わらない。非自明な軌道に対応するcOc_Oをすべて掛けると、各非自明な軌道上ではσ\sigmaと同じ値を取り、一元だけの軌道上ではσ\sigmaと積の双方がその元を固定する。したがって、その積はσ\sigmaに等しい。互いに素な置換は命題 2.2によって可換であるため、因子の順序は積を変えない。

一意性を示す。σ=c1⋯ct\sigma=c_1\cdots c_tが互いに素な長さ2以上の巡回置換の積であるとする。x∈supp⁡(σ)x\in\operatorname{supp}(\sigma)を取ると、xxはただ一つの因子cic_iの台に属する。他の因子はcic_iの台を各点ごとに固定するため、任意の整数kkに対して

σk(x)=cik(x)\sigma^k(x)=c_i^k(x)

が成り立つ。したがってcic_iの台はxxのσ\sigma軌道に一致し、その軌道上でcic_iはσ\sigmaと同じ作用をする。よってcic_iは

(x σ(x) … σr−1(x))(x\,\sigma(x)\,\ldots\,\sigma^{r-1}(x))

に限られる。各因子は非自明な軌道と一対一に対応するため、別の分解との違いは因子の順序と各巡回表示の開始点だけである。▨

例 3.2 (巡回分解の計算).σ∈S7\sigma\in S_7が

1↦3↦2↦1,4↦7↦41\mapsto3\mapsto2\mapsto1,\qquad 4\mapsto7\mapsto4

と作用し、5,65,6を固定するとする。このとき

σ=(1 3 2)(4 7)\sigma=(1\,3\,2)(4\,7)

である。二つの因子は互いに素であるため、順序を交換しても同じ置換を表す。固定点5,65,6は分解に書かない。

4 互換分解

定義 4.1. 長さ2の巡回置換(a b)(a\,b)を互換 (transposition) という。

定理 4.2. 有限集合上の任意の置換は、有限個の互換の積として表すことができる。

証明. 長さr≥2r\geq2の巡回置換について

(a1 a2 ⋯ ar)=(a1 ar)(a1 ar−1)⋯(a1 a2)(1)(a_1\,a_2\,\cdots\,a_r) =(a_1\,a_r)(a_1\,a_{r-1})\cdots(a_1\,a_2) \tag{1}

が成り立つ。実際、右辺はa1a_1をa2a_2へ移し、2≤j<r2\leq j<rに対してaja_jをaj+1a_{j+1}へ移し、ara_rをa1a_1へ移す。a1,…,ara_1,\ldots,a_r以外の元はすべての因子によって固定されるため、右辺は左辺と一致する。

定理 3.1によって任意の置換は有限個の巡回置換の積であり、各巡回因子へ (1) を適用すれば互換の積を得る。恒等置換は互換を一つも含まない空積で表される。▨

互いに素でない巡回置換については、因子の順序を自由に交換することはできない。

例 4.3 (台が交わる互換の非可換性).S3S_3の互換(1 2)(1\,2)と(2 3)(2\,3)の台は元22を共有する。

((1 2)(2 3))(1)=2,((2 3)(1 2))(1)=3((1\,2)(2\,3))(1)=2,\qquad ((2\,3)(1\,2))(1)=3

であるから、二つの互換は可換ではない。互いに素であるという仮定を命題 2.2から除くことはできない。

5 演習

問題 5.1.

  1. (1 4 3 2)−1(1\,4\,3\,2)^{-1}を一つの巡回置換として表せ。
  2. σ=(1 3 5)(2 4)\sigma=(1\,3\,5)(2\,4)とτ=(1 2)\tau=(1\,2)に対して、στ\sigma\tauとτσ\tau\sigmaの巡回分解を求めよ。
  3. 互いに素な巡回分解で固定点を長さ1の巡回置換として自由に挿入すると、一意性の声明をどのように変更する必要があるか説明せよ。
解答 (演習の要点).

第1問は(1 2 3 4)(1\,2\,3\,4)である。第2問は右側から作用させて各元の軌道を追跡する。第3問では、長さ1の因子の挿入と削除も一意性から除外する必要がある。本記事では固定点を分解に書かないことによって、その曖昧さを除いた。▨

参考文献

  1. Michael Artin, Algebra, 2nd ed., Pearson, Boston, 2011.置換、巡回置換、互換、対称群の扱いを参考にした。
  2. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.巡回分解と互換分解の扱いを参考にした。

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