§E8.28五次方程式の標準形

最終更新

一般の五次方程式から四次項を消す平行移動だけでは、五次方程式の本質的な二つの係数が残る。さらに高次の多項式で根を写す Tschirnhaus 変換を用いると、分離的な五次方程式を

Z5+d1Z+d0=0Z^5+d_1Z+d_0=0

という Bring–Jerrard 標準形へ還元することができる。ただし、変換後の五根が相異なるとは限らない。本記事は、非衝突枝だけを選ぶことを仮定せず、衝突した枝を次数4以下の方程式へ還元して五根を回収する。

1 厳密な入力と像多項式

入力を

F(X)=A5X5+A4X4+A3X3+A2X2+A1X+A0∈C[X]F(X)=A_5X^5+A_4X^4+A_3X^3+A_2X^2+A_1X+A_0\in\mathbb C[X]

とする。係数が生成する部分体をK0⊂CK_0\subset\mathbb Cと書く。以下で補助方程式の根を選ぶたびに、K0K_0へその根を添加した有限代数拡大の中で計算する。したがって、平方根や立方根の主値を暗黙に選ばない。

定義 1.1.KKを体、P∈K[X]P\in K[X]をモニックな次数nnの多項式、T∈K[X]T\in K[X]とする。PPの根を重複度込みでx1,…,xnx_1,\ldots,x_nとしたとき、TTによる像多項式 (image polynomial) を

Q(Y)=Res⁡X(P(X),Y−T(X))=∏i=1n(Y−T(xi))Q(Y)=\operatorname{Res}_X(P(X),Y-T(X)) =\prod_{i=1}^n\bigl(Y-T(x_i)\bigr)

と定める。

この resultant の向きでは、QQはYYについてモニックである。像多項式の不要な係数を消すため、Newton 和を用いる。

§E8.16 定義 5.1は分離多項式の判別式を定義する。本記事では根像の衝突も判定するため、モニック多項式PPの根を重複度込みでx1,…,xnx_1,\ldots,x_nとし、同じ式

disc⁡(P)=∏i<j(xi−xj)2\operatorname{disc}(P)=\prod_{i<j}(x_i-x_j)^2

を分離的でない場合にも用いる。この積は根の対称式なので係数体に属し、零であることとPPが重根をもつことは同値である。したがって、変換後の判別式の零・非零は根像の衝突・非衝突を厳密に分ける。

補題 1.2.y1,…,y5y_1,\ldots,y_5を体の代数閉包の元とし、pk=∑iyikp_k=\sum_i y_i^kとする。

  1. p1=p2=0p_1=p_2=0なら ∏i(Y−yi)=Y5−p33Y2−p44Y−p55.\prod_i(Y-y_i)=Y^5-\frac{p_3}{3}Y^2-\frac{p_4}{4}Y-\frac{p_5}{5}.
  2. p1=p2=p3=0p_1=p_2=p_3=0なら ∏i(Y−yi)=Y5−p44Y−p55.\prod_i(Y-y_i)=Y^5-\frac{p_4}{4}Y-\frac{p_5}{5}.

証明.eje_jをy1,…,y5y_1,\ldots,y_5の第jj基本対称式とする。Newton の恒等式は

p1−e1=0,p2−e1p1+2e2=0,p3−e1p2+e2p1−3e3=0,p4−e1p3+e2p2−e3p1+4e4=0,p5−e1p4+e2p3−e3p2+e4p1−5e5=0\begin{aligned} p_1-e_1&=0,\\ p_2-e_1p_1+2e_2&=0,\\ p_3-e_1p_2+e_2p_1-3e_3&=0,\\ p_4-e_1p_3+e_2p_2-e_3p_1+4e_4&=0,\\ p_5-e_1p_4+e_2p_3-e_3p_2+e_4p_1-5e_5&=0 \end{aligned}

である。p1=p2=0p_1=p_2=0を代入すると、e1=e2=0e_1=e_2=0、e3=p3/3e_3=p_3/3、e4=−p4/4e_4=-p_4/4、e5=p5/5e_5=p_5/5を得る。∏i(Y−yi)=Y5−e1Y4+e2Y3−e3Y2+e4Y−e5\prod_i(Y-y_i)=Y^5-e_1Y^4+e_2Y^3-e_3Y^2+e_4Y-e_5へ代入すれば(1)の式を得る。p3=0p_3=0も仮定すれば(2)の式を得る。▨

2 次数と重根を先に分ける

Bring 変換は、真に五次で分離的な入力にだけ適用する。

定理 2.1.F∈C[X]F\in\mathbb C[X]に対して、次の分岐は排反かつ網羅的であり、各分岐は有限回の多項式演算で終わる。

  1. F=0F=0なら、零点集合はC\mathbb C全体であり、五つの根をもつ方程式として扱わない。
  2. A5=0A_5=0かつF≠0F\ne0なら、実際の次数は00以上44以下である。
  3. A5≠0A_5\ne0なら f=A5−1F=X5+a4X4+a3X3+a2X2+a1X+a0f=A_5^{-1}F=X^5+a_4X^4+a_3X^3+a_2X^2+a_1X+a_0 とする。d=gcd⁡(f,f′)≠1d=\gcd(f,f')\ne1なら、ffの相異なる根は次数4以下の平方自由多項式s=f/ds=f/dの根であり、各根の重複度も有限回の gcd によって回収することができる。
  4. d=1d=1なら、ffは分離的であり、後続の Tschirnhaus 変換へ進む。

証明.(1)、(2)および(3)は、係数列の最初の非零項によって排反かつ網羅的に定まる。A5≠0A_5\ne0の場合、§E8.8 定理 1.2によりd≠1d\ne1と重根の存在は同値である。

d≠1d\ne1とする。c0=dc_0=d、w1=f/c0w_1=f/c_0と置き、i=1,2,…i=1,2,\ldotsに対して

yi=gcd⁡(wi,ci−1),qi=wi/yi,wi+1=yi,ci=ci−1/yiy_i=\gcd(w_i,c_{i-1}),\qquad q_i=w_i/y_i,\qquad w_{i+1}=y_i,\qquad c_i=c_{i-1}/y_i

と定め、wi=1w_i=1になった時点で止める。ffの既約因子ppの重複度をmmとする。反復の第ii段では、m≥im\ge iのときに限りppはwiw_iを一回割り、m≥i+1m\ge i+1のときに限りppはyiy_iを一回割る。したがってppはqmq_mだけを一回割る。すべての既約因子について同じ議論を適用すると

f=∏i≥1qii,s=∏i≥1qi=f/df=\prod_{i\ge1}q_i^i,\qquad s=\prod_{i\ge1}q_i=f/d

を得る。各qiq_iは平方自由で、相異なるqiq_iは互いに素である。重根が少なくとも一つあるため、相異なる根の総数deg⁡s\deg sは44以下である。各根がどのqiq_iに属するかを調べれば、その重複度はiiである。次数は反復ごとに減少するため、反復は有限回で停止する。d=1d=1の場合の分離性も§E8.8 定理 1.2から従う。▨

以下ではA5≠0A_5\ne0かつgcd⁡(f,f′)=1\gcd(f,f')=1と仮定する。

3 四次項を消す平行移動

公式 3.1.

X=U−a45X=U-\frac{a_4}{5}

と置くと

g(U)=f(U−a45)=U5+b3U3+b2U2+b1U+b0g(U)=f\left(U-\frac{a_4}{5}\right) =U^5+b_3U^3+b_2U^2+b_1U+b_0

であり、

b3=a3−2a425,b2=a2−3a3a45+4a4325,b1=a1−2a2a45+3a3a4225−3a44125,b0=a0−a1a45+a2a4225−a3a43125+4a453125\begin{aligned} b_3&=a_3-\frac{2a_4^2}{5},\\ b_2&=a_2-\frac{3a_3a_4}{5}+\frac{4a_4^3}{25},\\ b_1&=a_1-\frac{2a_2a_4}{5}+\frac{3a_3a_4^2}{25}-\frac{3a_4^4}{125},\\ b_0&=a_0-\frac{a_1a_4}{5}+\frac{a_2a_4^2}{25} -\frac{a_3a_4^3}{125}+\frac{4a_4^5}{3125} \end{aligned}

となる。逆平行移動はX=U−a4/5X=U-a_4/5である。

証明.f(U−a4/5)f(U-a_4/5)の各冪を二項展開する。U4U^4の係数は5(−a4/5)+a4=05(-a_4/5)+a_4=0である。U3,U2,U,1U^3,U^2,U,1の係数を順に集めると表示した四式を得る。標数は00なので分母55は非零であり、U=X+a4/5U=X+a_4/5が逆写像である。▨

4 principal form への二次変換

ggの根をu1,…,u5u_1,\ldots,u_5とする。sk=∑iuiks_k=\sum_i u_i^kと書くと、Newton の恒等式から

s1=0,s2=−2b3,s3=−3b2,s4=2b32−4b1,s5=5b3b2−5b0s_1=0,\qquad s_2=-2b_3,\qquad s_3=-3b_2,\qquad s_4=2b_3^2-4b_1,\qquad s_5=5b_3b_2-5b_0

を得る。

定理 4.1.b3=0b_3=0なら恒等変換V=UV=Uを用いる。b3≠0b_3\ne0なら

PP(R)=5b3R2+15b2R+10b1−3b32P_{\mathrm P}(R)=5b_3R^2+15b_2R+10b_1-3b_3^2

の相異なる根をすべて取り、各根ρ\rhoに対して

η=2b35,T2,ρ(U)=U2+ρU+η\eta=\frac{2b_3}{5},\qquad T_{2,\rho}(U)=U^2+\rho U+\eta

と置く。このとき

hρ(V)=Res⁡U(g(U),V−T2,ρ(U))=V5+c2V2+c1V+c0h_\rho(V)=\operatorname{Res}_U(g(U),V-T_{2,\rho}(U)) =V^5+c_2V^2+c_1V+c_0

である。Pk=∑iT2,ρ(ui)kP_k=\sum_iT_{2,\rho}(u_i)^kとすれば

c2=−P33,c1=−P44,c0=−P55.c_2=-\frac{P_3}{3},\qquad c_1=-\frac{P_4}{4},\qquad c_0=-\frac{P_5}{5}.

補助二次方程式の判別式は

DP=225b22−200b3b1+60b33D_{\mathrm P}=225b_2^2-200b_3b_1+60b_3^3

であり、根号で書けば

ρ=−15b2±DP10b3\rho=\frac{-15b_2\mathbin\pm\sqrt{D_{\mathrm P}}}{10b_3}

である。DP=0D_{\mathrm P}=0の場合も一つの候補として続行する。

証明.b3=0b_3=0ならggは既に principal form である。b3≠0b_3\ne0とする。ti=T2,ρ(ui)t_i=T_{2,\rho}(u_i)と置くと

∑iti=s2+ρs1+5η=−2b3+5η=0.\sum_it_i=s_2+\rho s_1+5\eta=-2b_3+5\eta=0.

また

∑iti2=s4+2ρs3+(ρ2+2η)s2+2ρηs1+5η2=−25(5b3ρ2+15b2ρ+10b1−3b32).\begin{aligned} \sum_it_i^2 &=s_4+2\rho s_3+(\rho^2+2\eta)s_2+2\rho\eta s_1+5\eta^2\\ &=-\frac25\left(5b_3\rho^2+15b_2\rho+10b_1-3b_3^2\right). \end{aligned}

したがってPP(ρ)=0P_{\mathrm P}(\rho)=0ならP1=P2=0P_1=P_2=0である。補題 1.2をt1,…,t5t_1,\ldots,t_5に適用すると、像多項式と三係数の式を得る。補助二次方程式の通常の判別式を計算するとDPD_{\mathrm P}になる。DP=0D_{\mathrm P}=0は補助根が重なることを意味するだけであり、像の五根が衝突することを意味しない。▨

hρh_\rhoが分離的なら Bring 段へ進む。hρh_\rhoが重根をもつ場合は、補助根ρ\rhoを棄却せず、次の共通補題で低次数へ還元する。

5 衝突した根像の完全回収

定理 5.1.K⊂CK\subset\mathbb C、P∈K[X]P\in K[X]をモニックかつ分離的な次数55の多項式、T∈K[X]T\in K[X]を次数r≥1r\ge1の多項式とする。像多項式

Q(Y)=Res⁡X(P(X),Y−T(X))Q(Y)=\operatorname{Res}_X(P(X),Y-T(X))

が重根をもつと仮定し、Qsf=Q/gcd⁡(Q,Q′)Q_{\mathrm{sf}}=Q/\gcd(Q,Q')とする。LLをQsfQ_{\mathrm{sf}}の分解体、y1,…,ymy_1,\ldots,y_mをその相異なる根とし、

Gj(X)=monic⁡gcd⁡L[X](P(X),T(X)−yj)G_j(X)=\operatorname{monic}\gcd_{L[X]}(P(X),T(X)-y_j)

と置く。このとき

1≤m≤4,P=∏j=1mGj,∑j=1mdeg⁡Gj=5,1≤deg⁡Gj≤r.1\le m\le4,\qquad P=\prod_{j=1}^mG_j,\qquad \sum_{j=1}^m\deg G_j=5,\qquad 1\le\deg G_j\le r.

相異なるGjG_jは互いに素であり、GjG_jの根集合はTTによるyjy_jの fiber と一致する。したがって、QsfQ_{\mathrm{sf}}とすべてのGjG_jを解く操作は、PPの五根を重複なく完全に回収し、有限回で停止する。

証明.PPの相異なる根をx1,…,x5x_1,\ldots,x_5とする。像多項式はQ(Y)=∏i(Y−T(xi))Q(Y)=\prod_i(Y-T(x_i))である。QQが重根をもつため、相異なる像の個数m=deg⁡Qsfm=\deg Q_{\mathrm{sf}}は44以下であり、少なくとも11である。

GjG_jはPPとT−yjT-y_jの共通根を厳密に集めるから、その根集合は

{xi∣T(xi)=yj}\{x_i\mid T(x_i)=y_j\}

である。各xix_iはただ一つの fiber に属する。PPは分離的なので各GjG_jは平方自由であり、相異なる fiber は共通根をもたない。したがってGiG_iとGjG_jはi≠ji\ne jなら互いに素である。積∏jGj\prod_jG_jはPPの五根をそれぞれ一回ずつ根にもつモニック五次多項式なので、PPに等しい。この等式から次数和が55になる。GjG_jはT−yjT-y_jを割るのでdeg⁡Gj≤r\deg G_j\le rである。

拡張 Euclid の算法は、各jjについて

AjP+Bj(T−yj)=GjA_jP+B_j(T-y_j)=G_j

を有限回で与える。この等式は fiber の証明書になる。QsfQ_{\mathrm{sf}}の次数は44以下で、各GjG_jの次数はrr以下であり、対象となるjjも有限個である。したがって全操作は有限回で停止する。▨

principal 段ではr=2r=2なので、衝突した候補は次数4以下の像方程式と次数2以下の fiber 方程式へ還元される。各 fiber の根uuはx=u−a4/5x=u-a_4/5によって元の根へ戻る。

全ての principal 候補が衝突することは実際に起こる。

例 5.2 (二つの principal 候補がともに衝突する例).t2=−5t^2=-5とし、

p=−5+3t7,q=−3+6t7p=\frac{-5+3t}{7},\qquad q=\frac{-3+6t}{7}

と置く。多項式

f(X)=(X2−X+p)(X2+q)(X+1)=X5+3(3t−5)7X3+3t−57X2−27(3t+2)49X−3(13t+25)49\begin{aligned} f(X)&=(X^2-X+p)(X^2+q)(X+1)\\ &=X^5+\frac{3(3t-5)}7X^3+\frac{3t-5}7X^2 -\frac{27(3t+2)}{49}X-\frac{3(13t+25)}{49} \end{aligned}

は分離的であるが、principal 補助方程式の二根ρ=0,−1\rho=0,-1はいずれも根像を衝突させる。それでも定理 5.1は各候補から五根を完全に回収する。

証明. 因子の判別式と相異なる二因子の resultant を調べるか、積の判別式を直接計算すると

disc⁡(f)=−20736(9537070t−40680761)282475249≠0\operatorname{disc}(f) =-\frac{20736(9537070t-40680761)}{282475249}\ne0

となる。右辺が零ならt=40680761/9537070∈Qt=40680761/9537070\in\mathbb Qとなり、t2=−5t^2=-5に反する。したがってffは分離的である。係数を定理 4.1へ代入すると

PP(ρ)=15(3t−5)7ρ(ρ+1)P_{\mathrm P}(\rho)=\frac{15(3t-5)}7\rho(\rho+1)

を得る。

ρ=0\rho=0では、X2+qX^2+qの二根c,dc,dがc+d=0c+d=0を満たすのでc2+η=d2+ηc^2+\eta=d^2+\etaである。ρ=−1\rho=-1では、X2−X+pX^2-X+pの二根a,ba,bがa+b=1a+b=1を満たすのでa2−a+η=b2−b+ηa^2-a+\eta=b^2-b+\etaである。よって両候補で衝突が起こる。

ρ=0\rho=0の重複した fiber の gcd はX2+qX^2+q、ρ=−1\rho=-1の重複した fiber の gcd はX2−X+pX^2-X+pである。他の三根は互いに異なる像をもち、対応する三つの一次 gcd を与える。したがって各候補の fiber 次数は2,1,1,12,1,1,1であり、その積はff、次数和は55である。▨

6 Bring–Jerrard form への四次変換

principal form を

h(V)=V5+c2V2+c1V+c0h(V)=V^5+c_2V^2+c_1V+c_0

とし、hhは分離的であると仮定する。根をv1,…,v5v_1,\ldots,v_5とし、sn=∑ivins_n=\sum_i v_i^nと書く。 Newton 和の再帰は

sn+c2sn−3+c1sn−4+c0sn−5=0(n≥6)s_n+c_2s_{n-3}+c_1s_{n-4}+c_0s_{n-5}=0\qquad(n\ge6)

であり、必要な値は次の表で尽きる。

nsnnsn0510203−3c24−4c15−5c063c2277c1c288c0c2+4c129−3c23+9c0c110−10c1c22+5c0211−11c0c22−11c12c2123c24−24c0c1c2−4c13\begin{array}{c|l|c|l} n&s_n&n&s_n\\ \hline 0&5&1&0\\ 2&0&3&-3c_2\\ 4&-4c_1&5&-5c_0\\ 6&3c_2^2&7&7c_1c_2\\ 8&8c_0c_2+4c_1^2&9&-3c_2^3+9c_0c_1\\ 10&-10c_1c_2^2+5c_0^2&11&-11c_0c_2^2-11c_1^2c_2\\ 12&3c_2^4-24c_0c_1c_2-4c_1^3&& \end{array}

定理 6.1.c2=0c_2=0ならhhは既に Bring–Jerrard form であり、Z=VZ=Vと置く。c2≠0c_2\ne0なら

AB=27c24−160c13+300c0c1c2,BB=27c1c23−400c0c12+375c02c2,CB=18c12c22−45c0c23−250c02c1\begin{aligned} A_{\mathrm B}&=27c_2^4-160c_1^3+300c_0c_1c_2,\\ B_{\mathrm B}&=27c_1c_2^3-400c_0c_1^2+375c_0^2c_2,\\ C_{\mathrm B}&=18c_1^2c_2^2-45c_0c_2^3-250c_0^2c_1 \end{aligned}

と置き、

PB(A)=ABA2+BBA+CBP_{\mathrm B}(A)=A_{\mathrm B}A^2+B_{\mathrm B}A+C_{\mathrm B}

の相異なる根α\alphaをすべて取る。各α\alphaに対して

β=−5c0+4c1α3c2,τ=4c1+3c2α5\beta=-\frac{5c_0+4c_1\alpha}{3c_2},\qquad \tau=\frac{4c_1+3c_2\alpha}{5}

と定める。さらに

Wα,Γ(V)=V4+αV3+βV2+ΓV+τW_{\alpha,\Gamma}(V)=V^4+\alpha V^3+\beta V^2+\Gamma V+\tau

と置き、三次補助方程式

PC(Γ)=∑i=15Wα,Γ(vi)3=0P_{\mathrm C}(\Gamma)=\sum_{i=1}^5W_{\alpha,\Gamma}(v_i)^3=0

の相異なる根γ\gammaをすべて取る。このとき

T4,α,γ(V)=V4+αV3+βV2+γV+τT_{4,\alpha,\gamma}(V)=V^4+\alpha V^3+\beta V^2+\gamma V+\tau

による像多項式は

Rα,γ(Z)=Res⁡V(h(V),Z−T4,α,γ(V))=Z5+d1Z+d0R_{\alpha,\gamma}(Z)=\operatorname{Res}_V(h(V),Z-T_{4,\alpha,\gamma}(V)) =Z^5+d_1Z+d_0

であり、zi=T4,α,γ(vi)z_i=T_{4,\alpha,\gamma}(v_i)とすれば

d1=−14∑izi4,d0=−15∑izi5.d_1=-\frac14\sum_i z_i^4,\qquad d_0=-\frac15\sum_i z_i^5.

証明.W=Wα,ΓW=W_{\alpha,\Gamma}と略記する。最初に

∑iW(vi)=s4+αs3+βs2+Γs1+5τ=−4c1−3αc2+5τ=0\sum_iW(v_i)=s_4+\alpha s_3+\beta s_2+\Gamma s_1+5\tau =-4c_1-3\alpha c_2+5\tau=0

を得る。次にW2W^2を展開すると

∑iW(vi)2=s8+2αs7+(α2+2β)s6+(2αβ+2Γ)s5+(β2+2αΓ+2τ)s4+(2βΓ+2ατ)s3+5τ2.\begin{aligned} \sum_iW(v_i)^2={}&s_8+2\alpha s_7+(\alpha^2+2\beta)s_6 +(2\alpha\beta+2\Gamma)s_5\\ &+(\beta^2+2\alpha\Gamma+2\tau)s_4 +(2\beta\Gamma+2\alpha\tau)s_3+5\tau^2. \end{aligned}

Γ\Gammaの係数は2(−5c0−4αc1−3βc2)2(-5c_0-4\alpha c_1-3\beta c_2)なので、表示したβ\betaによって零になる。表のsns_nとβ,τ\beta,\tauを残りの項へ代入し、分母45c2245c_2^2を払って同類項を集めると

∑iW(vi)2=245c22(ABα2+BBα+CB)\sum_iW(v_i)^2 =\frac{2}{45c_2^2} \left(A_{\mathrm B}\alpha^2+B_{\mathrm B}\alpha+C_{\mathrm B}\right)

を得る。この集約ではα2\alpha^2、α\alpha、定数項を順に集めれば、係数がそれぞれAB,BB,CBA_{\mathrm B},B_{\mathrm B},C_{\mathrm B}になるため、式を再現することができる。したがってPB(α)=0P_{\mathrm B}(\alpha)=0なら像の第一、第二 Newton 和が零になる。

PCP_{\mathrm C}はΓ\Gammaについて真に三次である。実際、係数をPC=q3Γ3+q2Γ2+q1Γ+q0P_{\mathrm C}=q_3\Gamma^3+q_2\Gamma^2+q_1\Gamma+q_0と書くと

q3=s3=−3c2,q2=3(s6+αs5+βs4),q1=3{s9+2αs8+(α2+2β)s7+2αβs6+(β2+2τ)s5+2ατs4+2βτs3},q0=s12+3αs11+3βs10+3τs8+3α2s10+6αβs9+6ατs7+3β2s8+6βτs6+3τ2s4+α3s9+3α2βs8+3α2τs6+3αβ2s7+6αβτs5+3ατ2s3+β3s6+3β2τs4+5τ3.\begin{aligned} q_3={}&s_3=-3c_2,\\ q_2={}&3(s_6+\alpha s_5+\beta s_4),\\ q_1={}&3\{s_9+2\alpha s_8+(\alpha^2+2\beta)s_7+2\alpha\beta s_6\\ &\qquad +(\beta^2+2\tau)s_5+2\alpha\tau s_4+2\beta\tau s_3\},\\ q_0={}&s_{12}+3\alpha s_{11}+3\beta s_{10}+3\tau s_8 +3\alpha^2s_{10}+6\alpha\beta s_9+6\alpha\tau s_7\\ &+3\beta^2s_8+6\beta\tau s_6+3\tau^2s_4 +\alpha^3s_9+3\alpha^2\beta s_8+3\alpha^2\tau s_6\\ &+3\alpha\beta^2s_7+6\alpha\beta\tau s_5+3\alpha\tau^2s_3 +\beta^3s_6+3\beta^2\tau s_4+5\tau^3. \end{aligned}

この式は(V4+αV3+βV2+τ)3(V^4+\alpha V^3+\beta V^2+\tau)^3の多項展開であり、上の Newton 和表だけから全係数を有限回で検算することができる。q3=−3c2≠0q_3=-3c_2\ne0なので、PCP_{\mathrm C}は必ず根をもつ三次式である。

PC(γ)=0P_{\mathrm C}(\gamma)=0なら像の第三 Newton 和も零になる。補題 1.2 (2)をz1,…,z5z_1,\ldots,z_5に適用すると、resultant はZ5+d1Z+d0Z^5+d_1Z+d_0となり、二係数の式も得る。▨

二次補助式が恒等的に零になれば、α\alphaの選び方が未確定になる。しかし、分離的なhhではこの退化は起こらない。

補題 6.2.c2≠0c_2\ne0とする。AB=BB=CB=0A_{\mathrm B}=B_{\mathrm B}=C_{\mathrm B}=0なら、h(V)=V5+c2V2+c1V+c0h(V)=V^5+c_2V^2+c_1V+c_0は重根をもつ。

証明. 恒等式

3c2CB=−5c0AB+2c1BB3c_2C_{\mathrm B}=-5c_0A_{\mathrm B}+2c_1B_{\mathrm B}

をまず確認する。実際、右辺は

−135c0c24+800c0c13−1500c02c1c2+54c12c23−800c0c13+750c02c1c2=54c12c23−135c0c24−750c02c1c2=3c2CB\begin{aligned} &-135c_0c_2^4+800c_0c_1^3-1500c_0^2c_1c_2\\ &\quad+54c_1^2c_2^3-800c_0c_1^3+750c_0^2c_1c_2\\ &=54c_1^2c_2^3-135c_0c_2^4-750c_0^2c_1c_2 =3c_2C_{\mathrm B} \end{aligned}

となる。したがってAB=BB=0A_{\mathrm B}=B_{\mathrm B}=0を調べれば十分である。t3=c2t^3=c_2となるt∈C×t\in\mathbb C^\timesを取り、

P=c1t4,Q=c0t5,h~(Y)=t−5h(tY)=Y5+Y2+PY+QP=\frac{c_1}{t^4},\qquad Q=\frac{c_0}{t^5},\qquad \widetilde h(Y)=t^{-5}h(tY)=Y^5+Y^2+PY+Q

と置く。AB=BB=0A_{\mathrm B}=B_{\mathrm B}=0をttの冪で割ると

27−160P3+300QP=0,27P−400QP2+375Q2=027-160P^3+300QP=0,\qquad 27P-400QP^2+375Q^2=0

を得る。第一式からP≠0P\ne0であり、N=160P3−27N=160P^3-27と置けばQ=N/(300P)Q=N/(300P)である。第二式へ代入し、240P2240P^2を掛けると

N2−320P3N+6480P3=0,N^2-320P^3N+6480P^3=0,

すなわち

25600(P3)2−6480P3−729=025600(P^3)^2-6480P^3-729=0

となる。ゆえに

P3=2780またはP3=−27320.P^3=\frac{27}{80}\quad\text{または}\quad P^3=-\frac{27}{320}.

前者ではQ=9/(100P)Q=9/(100P)である。y=−2P/3y=-2P/3と置いて直接代入するとh~(y)=h~′(y)=0\widetilde h(y)=\widetilde h'(y)=0となる。後者ではQ=−27/(200P)Q=-27/(200P)である。3z2+4z+8=03z^2+4z+8=0の一根を取り、y=Pzy=Pzと置く。z2=(−4z−8)/3z^2=(-4z-8)/3から

z4=128z+6427z^4=\frac{128z+64}{27}

を得る。これとP3=−27/320P^3=-27/320を用いると

h~′(Pz)P=5P3z4+2z+1=0,\frac{\widetilde h'(Pz)}{P}=5P^3z^4+2z+1=0,h~(Pz)P2=P3z5+z2+z+85=0\frac{\widetilde h(Pz)}{P^2}=P^3z^5+z^2+z+\frac85=0

となる。したがって両場合にh~\widetilde hは重根をもち、変数の非零な拡大縮小を戻せばhhも重根をもつ。▨

したがって、分離的なhhでは(AB,BB)≠(0,0)(A_{\mathrm B},B_{\mathrm B})\ne(0,0)である。AB≠0A_{\mathrm B}\ne0なら二次方程式として全根を取り、AB=0A_{\mathrm B}=0ならBB≠0B_{\mathrm B}\ne0なので唯一の根α=−CB/BB\alpha=-C_{\mathrm B}/B_{\mathrm B}を取る。AB≠0A_{\mathrm B}\ne0の場合の判別式と根は

DB=BB2−4ABCB,α=−BB±DB2ABD_{\mathrm B}=B_{\mathrm B}^2-4A_{\mathrm B}C_{\mathrm B},\qquad \alpha=\frac{-B_{\mathrm B}\mathbin\pm\sqrt{D_{\mathrm B}}}{2A_{\mathrm B}}

である。三次補助式の判別式は

DC=q22q12−4q3q13−4q23q0−27q32q02+18q3q2q1q0D_{\mathrm C}=q_2^2q_1^2-4q_3q_1^3-4q_2^3q_0-27q_3^2q_0^2+18q_3q_2q_1q_0

である。DBD_{\mathrm B}またはDCD_{\mathrm C}が零の場合も、相異なる補助根だけを取って続行する。

ここまでに現れる退化条件と除算を一つの表にまとめる。

段 条件または分母 処理
入力 全係数が零 零多項式として終端する
入力 A5=0A_5=0、かつ非零 実際の次数0から4へ送る
モニック化 A5≠0A_5\ne0 A5A_5で割り、分母を記録する
重根 gcd⁡(f,f′)≠1\gcd(f,f')\ne1 平方因子分解と次数4以下の平方自由部分へ送る
平行移動 55 複素数体では非零なので常に実行する
principal b3=0b_3=0 恒等変換を用い、10b310b_3で割らない
principal b3≠0b_3\ne0 10b310b_3を分母として式 (P) の全根を取る
principal DP=0D_{\mathrm P}=0 重複した補助根を一候補として続行する
principal 像 disc⁡(h)=0\operatorname{disc}(h)=0 principal collision として低次数 fiber へ送る
Bring c2=0c_2=0 恒等変換を用い、3c23c_2で割らない
Bring 二次 AB≠0A_{\mathrm B}\ne0 2AB2A_{\mathrm B}を分母として全根を取る
Bring 二次 AB=0A_{\mathrm B}=0 BB≠0B_{\mathrm B}\ne0なので−CB/BB-C_{\mathrm B}/B_{\mathrm B}を取る
Bring 二次 DB=0D_{\mathrm B}=0 重複した補助根を一候補として続行する
Bring 三次 q3=−3c2≠0q_3=-3c_2\ne0 真の三次方程式の全ての相異なる根を取る
Bring 三次 DC=0D_{\mathrm C}=0 重複した補助根をまとめて続行する
Bring 像 disc⁡(R)=0\operatorname{disc}(R)=0 Bring collision として低次数 fiber へ送る
補間逆 det⁡M2\det M_2またはdet⁡M4\det M_4 非衝突時だけ非零である。零の場合は単値逆を作らず fiber inverse を用いる

恒等零の Bring 二次式は補題 6.2により分離入力から到達しないため、自由なα\alphaを選ぶ実行分岐は存在しない。

Bring 像多項式の判別式は

disc⁡(Z5+d1Z+d0)=256d15+3125d04\operatorname{disc}(Z^5+d_1Z+d_0)=256d_1^5+3125d_0^4

である。実際、R(Z)=Z5+d1Z+d0R(Z)=Z^5+d_1Z+d_0と置くとR′(Z)=5Z4+d1R'(Z)=5Z^4+d_1である。R′R'の四根をξ1,…,ξ4\xi_1,\ldots,\xi_4とすれば、ξj5=−(d1/5)ξj\xi_j^5=-(d_1/5)\xi_jなので

R(ξj)=d0+4d15ξj.R(\xi_j)=d_0+\frac{4d_1}{5}\xi_j.

ξj\xi_jはZ4+d1/5Z^4+d_1/5の根であるから

disc⁡(R)=Res⁡(R,R′)=55∏j=14R(ξj)=55(d04+(4d15)4d15)=3125d04+256d15.\begin{aligned} \operatorname{disc}(R) &=\operatorname{Res}(R,R') =5^5\prod_{j=1}^4R(\xi_j)\\ &=5^5\left(d_0^4+\left(\frac{4d_1}{5}\right)^4\frac{d_1}{5}\right) =3125d_0^4+256d_1^5. \end{aligned}

ここでは五次式の判別式の符号(−1)5⋅4/2(-1)^{5\cdot4/2}が11であることを用いた。値が零でない候補は非衝突枝であり、値が零の候補は定理 5.1へ送る。後者ではr=4r=4なので、次数4以下の平方自由像方程式と次数4以下の fiber 方程式からhhの五根を回収する。principal 段が非衝突であったため、後で構成する principal 逆写像を各 fiber の根へ適用し、元のffの五根へ戻すことができる。

7 非衝突枝の厳密な逆変換

根像が相異なる場合、根集合上の逆を二次方程式または四次方程式の多価な逆代入として作らない。商代数で補間する。

定理 7.1.KKを体、n≥2n\ge2とする。P∈K[X]P\in K[X]とQ∈K[Y]Q\in K[Y]をモニックかつ分離的な次数nnの多項式、T∈K[X]T\in K[X]とし、

Q(Y)=Res⁡X(P(X),Y−T(X))Q(Y)=\operatorname{Res}_X(P(X),Y-T(X))

を仮定する。さらに、TTが代数閉包におけるPPの根集合上で単射であると仮定する。K[X]/(P)K[X]/(P)の基底1,X,…,Xn−11,X,\ldots,X^{n-1}において、0≤j<n0\le j<nごとにT(X)jT(X)^jのPPによる余りの係数ベクトルを第jj列とする行列をM∈Mn(K)M\in M_n(K)とする。また、XXの剰余類の係数ベクトルを

eX=(0,1,0,…,0)T∈Kne_X=(0,1,0,\ldots,0)^{\mathsf T}\in K^n

とする。このときMMは可逆である。q=M−1eX=(q0,…,qn−1)Tq=M^{-1}e_X=(q_0,\ldots,q_{n-1})^{\mathsf T}とし、

U(Y)=q0+q1Y+⋯+qn−1Yn−1U(Y)=q_0+q_1Y+\cdots+q_{n-1}Y^{n-1}

と置くとU∈K[Y]U\in K[Y]であり、

U(T(X))≡X(modP(X)),T(U(Y))≡Y(modQ(Y))U(T(X))\equiv X\pmod{P(X)},\qquad T(U(Y))\equiv Y\pmod{Q(Y)}

を満たす。さらに

(det⁡M)2=disc⁡(Q)disc⁡(P).(\det M)^2=\frac{\operatorname{disc}(Q)}{\operatorname{disc}(P)}.

証明.PPの根をx1,…,xnx_1,\ldots,x_n、yi=T(xi)y_i=T(x_i)とし、順序をこの対応で固定する。PPとQQは分離的で、TTは単射なので、xix_iもyiy_iもそれぞれ相異なる。Vandermonde 行列を

EX=(xij)1≤i≤n, 0≤j<n,EY=(yij)1≤i≤n, 0≤j<nE_X=(x_i^j)_{1\le i\le n,\ 0\le j<n},\qquad E_Y=(y_i^j)_{1\le i\le n,\ 0\le j<n}

とする。列の定義からEXM=EYE_XM=E_Yである。両 Vandermonde 行列は可逆なのでMMも可逆である。また

(det⁡EX)2=disc⁡(P),(det⁡EY)2=disc⁡(Q)(\det E_X)^2=\operatorname{disc}(P),\qquad (\det E_Y)^2=\operatorname{disc}(Q)

であるから、行列式比の式を得る。

Mq=eXMq=e_XはU(T(X))≡X(modP)U(T(X))\equiv X\pmod Pを係数で表した式である。各xix_iへ代入するとU(yi)=xiU(y_i)=x_iとなるため、T(U(yi))=yiT(U(y_i))=y_iである。QQは相異なるyiy_iをすべて根にもつモニック次数nnの多項式なので、T(U(Y))−YT(U(Y))-YのQQによる余りはnn個の相異なる根をもつ次数nn未満の多項式であり、零である。これが第二の合同式を与える。▨

principal 非衝突枝にはこの定理を(P,Q,T)=(g,h,T2)(P,Q,T)=(g,h,T_2)として適用し、次数4以下の逆多項式U2U_2を得る。 Bring 非衝突枝には(P,Q,T)=(h,R,T4)(P,Q,T)=(h,R,T_4)として適用し、次数4以下の逆多項式U4U_4を得る。恒等変換の段では対応する逆も恒等写像とし、補間行列を作らない。

8 全分岐の終端と後続記事への受渡し

定理 8.1. 任意のF∈C[X]F\in\mathbb C[X]に対して、本記事の構成は有限回で次の四つの排反な前処理結果の一つを返す。

  1. F=0F=0である。この場合は零多項式終端を返し、有限な根の多重集合を返さない。

  2. F≠0F\ne0かつ実際の次数が00以上44以下である。この場合は低次数終端を返す。得られた低次数方程式を解くと、次数00の場合は空集合を、次数11以上44以下の場合はFFの根を重複度込みで得る。

  3. FFは重根をもつ真の五次式である。この場合は次数4以下の平方自由部分ssと平方因子分解f=∏iqiif=\prod_iq_i^iを返す。ssを解き、根が属するqiq_iの添字iiを付けると、FFの根を重複度込みで得る。

  4. FFは分離的な真の五次式である。この場合は、補助方程式の相異なる根に添字付けられた非空有限族T(F)\mathcal T(F)を返す。T(F)\mathcal T(F)の各要素は、次の三種類のタグ付き終端のちょうど一つである。

    • principal 衝突終端。次数4以下の像方程式と次数2以下の fiber 方程式をもつ。
    • Bring 衝突終端。次数4以下の像方程式と次数4以下の fiber 方程式をもつ。
    • 非衝突 Bring–Jerrard 終端。R(Z)=Z5+d1Z+d0R(Z)=Z^5+d_1Z+d_0と単値逆 X=U2(U4(Z))−a45X=U_2(U_4(Z))-\frac{a_4}{5} をもつ。

(4)では、T(F)\mathcal T(F)の各終端が独立にFFの相異なる五根を過不足なく回収する。同じ入力が複数の終端をもつ場合があるため、相異なる終端同士が排反であるとは主張しない。

証明.定理 2.1が零多項式、非零低次数、重根五次および分離五次を排反かつ網羅的に分ける。非零低次数の場合はモニック化が根と重複度を変えない。重根五次の場合は、同定理で証明したf=∏iqiif=\prod_iq_i^iが相異なる根とその重複度を回収する。

以下では分離五次の場合を考える。平行移動は全単射である。b3=0b_3=0なら principal 恒等枝が一つ存在し、b3≠0b_3\ne0なら二次補助方程式が少なくとも一根をもつ。各候補は、像判別式の零・非零によって principal 衝突終端と Bring 段へ排反に分かれる。

Bring 段では、c2=0c_2=0なら恒等枝が一つ存在する。c2≠0c_2\ne0なら補題 6.2により二次補助式は二次式または非零一次式であり、少なくとも一根をもつ。各根に対する三次補助式は先頭係数−3c2≠0-3c_2\ne0をもち、少なくとも一根をもつ。各 Bring 候補は、像判別式の零・非零によって Bring 衝突終端と非衝突標準形へ排反に分かれる。

principal 補助式の次数は2以下、Bring 二次補助式の次数は2以下、Bring 三次補助式の次数は3なので、生成される終端の族は有限である。各到達段には少なくとも一つの補助根または恒等 chart があるため、族は空でない。各候補の判別式分岐は排反であり、その候補は三種類の終端のちょうど一つに入る。ただし、異なる補助根から生じる終端は同時に存在し得る。

衝突枝では定理 5.1が積の恒等式と次数和55を与えるため、五根を一回ずつ回収する。非衝突枝では定理 7.1により各変換が根集合上の全単射であり、表示した合成逆がRRの五根をffの五根へ一対一に戻す。以上で前処理結果の排反性、終端族の有限非空性、候補ごとのタグ付き終端の一意性、停止性および適用される各場合の根の完全性が従う。▨

後続の楕円函数による解法へ渡すのは、(4)の有限族に属する非衝突 Bring–Jerrard 終端だけである。受渡しデータは次を含む。

データ 内容
標準形 R(Z)=Z5+d1Z+d0R(Z)=Z^5+d_1Z+d_0と非零の判別式256d15+3125d04256d_1^5+3125d_0^4
principal chart 恒等変換、または採用したρ\rho、補助二次式、T2T_2とU2U_2
Bring chart 恒等変換、または採用したα,γ\alpha,\gamma、二次・三次補助式、T4T_4とU4U_4
係数体 補助根を添加した順序と、C\mathbb Cへの採用した埋め込み
逆証明書 補間行列の行列式と二つの剰余合同式
例外記録 調べた他候補と、零になった像判別式

d1=0d_1=0ならZ5=−d0Z^5=-d_0、d0=0d_0=0ならZ(Z4+d1)=0Z(Z^4+d_1)=0なので、分離的な標準形は根基と四次方程式だけで解くことができる。d0d1≠0d_0d_1\ne0の枝だけが楕円函数の経路を必要とする。後続記事は同じ chart、補助根および係数体の埋め込みを保持し、返した各根zzにU2(U4(z))−a4/5U_2(U_4(z))-a_4/5を適用しなければならない。衝突終端は後続記事へ渡さない。

9 演習

問題 9.1 (問題).

  1. g(U)=U5+U3+310U+1g(U)=U^5+U^3+\frac{3}{10}U+1に対して principal 補助方程式を求め、ρ=0\rho=0が重根であることを示せ。
  2. 定理 5.1で、QQにおけるyjy_jの重複度がdeg⁡Gj\deg G_jに等しいことを証明せよ。
  3. 定理 7.1でTTが単射でない場合にMMが特異になることを、行列式比を使わずに示せ。
解答 (解答).
  1. b3=1,b2=0,b1=3/10b_3=1,b_2=0,b_1=3/10なので PP(R)=5R2+3−3=5R2.P_{\mathrm P}(R)=5R^2+3-3=5R^2. したがってρ=0\rho=0が重根であり、η=2/5\eta=2/5である。補助根の重複と根像の衝突は別の条件なので、次に像多項式の判別式を検査する必要がある。
  2. Q(Y)=∏i(Y−T(xi))Q(Y)=\prod_i(Y-T(x_i))におけるyjy_jの重複度は、T(xi)=yjT(x_i)=y_jを満たす添字iiの個数である。PPは分離的なので、その個数は同じ fiber の根を一回ずつもつGjG_jの次数に等しい。
  3. T(xi)=T(xj)T(x_i)=T(x_j)となるi≠ji\ne jを取る。EXM=EYE_XM=E_Yであり、EYE_Yの第ii行と第jj行は等しい。したがってEYE_Yは特異である。EXE_Xは可逆なので、MMは特異である。

▨

参考文献

  1. Victor S. Adamchik and David J. Jeffrey, Polynomial Transformations of Tschirnhaus, Bring and Jerrard, ACM SIGSAM Bulletin 37 (2003), no. 3, 90–94.二次 Tschirnhaus 変換と四次 Bring 変換の係数条件を参考にした。
  2. Erland Samuel Bring, Transformation of Algebraic Equations, translated by Alexander Chen, Yang-Hui He, and John McKay, arXiv:1711.09253v1, 2017.principal form から三項形への歴史的な変換を参考にした。
  3. William Rowan Hamilton, Inquiry into the Validity of a Method recently proposed by George B. Jerrard, Esq. for Transforming and Resolving Equations of Elevated Degrees, in: Report of the Sixth Meeting of the British Association for the Advancement of Science, John Murray, London, 1837, pp. 295–348.変換後の方程式だけでは元の根を回収したことにならないという歴史的な注意を参考にした。

前提記事