§E8.7有限体の位数と乗法群

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体KKの標数char⁡K\operatorname{char}Kとは、1K1_Kをmm回加えて00となる正整数mmが存在するときの最小のそのようなmmをいい、そのような正整数が存在しないときは00と定める。

有限体の加法と乗法は、集合の有限性だけから強い制約を受ける。加法については、標数ppの素体を含む有限次元ベクトル空間として有限体を記述することができる。乗法については、体の中で方程式xd=1x^d=1が高々dd個の解しかもたないことにより、任意の有限乗法部分群が巡回群になる。

本記事では、後続の有限体の存在・一意性と原始元定理が用いる二つの結論を、仮定とともに確定する。

1 標数と素体

有限体FFに対して、単位元を1F1_Fと書く。自然な環準同型

ι:Z⟶F,m⟼m1F\iota:\mathbb Z\longrightarrow F,\qquad m\longmapsto m1_F

を考える。char⁡F=0\operatorname{char}F=0ならι\iotaは単射となり、無限集合Z\mathbb Zが有限集合FFに埋め込まれて矛盾する。したがってchar⁡F\operatorname{char}Fは正であり、体の正の標数は素数ppである。ゆえにker⁡ι=pZ\ker\iota=p\mathbb Zであり、im⁡ι≅Fp\operatorname{im}\iota\cong\mathbb F_pである。FFの任意の部分体は1F1_Fを含むためim⁡ι\operatorname{im}\iotaを含む。したがってim⁡ι\operatorname{im}\iotaはFFの素体である。

定理 1.1.FFを有限体とする。このとき、ある素数ppと正整数nnが一意に存在して

char⁡F=p,∣F∣=pn\operatorname{char}F=p,\qquad |F|=p^n

となる。さらに、FFの素体はFp≅Z/pZ\mathbb F_p\cong\mathbb Z/p\mathbb Zであり、n=[F:Fp]n=[F:\mathbb F_p]である。

証明.FFは有限集合なので、1F,2⋅1F,3⋅1F,…1_F,2\cdot1_F,3\cdot1_F,\ldotsの中に一致する二元がある。したがってm1F=0m1_F=0となる正整数mmが存在し、ker⁡ι=dZ\ker\iota=d\mathbb Zとなる正整数ddが存在する。準同型定理によりim⁡ι≅Z/dZ\operatorname{im}\iota\cong\mathbb Z/d\mathbb Zである。体の部分環im⁡ι\operatorname{im}\iotaは整域なので、ddは素数でなければならない。この素数をppとするとchar⁡F=p\operatorname{char}F=pであり、素体はFp\mathbb F_pである。

FFはFp\mathbb F_p上のベクトル空間である。FFが有限集合なので、その次元nnは有限である。F≠0F\ne0であるからn≥1n\ge1である。基底を一つ取ると、各元はnn個の係数によって一意に表され、各係数にはpp通りの選択がある。ゆえに

∣F∣=pn|F|=p^n

となる。位数から標数ppと指数nnは一意に定まる。▨

例 1.2 (位数が素数冪でない有限体は存在しない). 位数66の体が存在すると仮定すると、定理 1.1により6=pn6=p^nとなる素数ppと正整数nnが必要になる。しかし66は素数冪ではないため、そのような体は存在しない。これは、位数66の可換環Z/6Z\mathbb Z/6\mathbb Zが零因子をもつこととも整合する。

2 有限乗法部分群

有限体の乗法群に限らず、体の乗法群に含まれる有限部分群はすべて巡回群である。証明では、有限アーベル群の基本定理§E7.18 定理 6.3の次の結論を用いる。任意の非自明な有限アーベル群GGには、正整数1<n1∣n2∣⋯∣nr1<n_1\mid n_2\mid\cdots\mid n_rが存在して

G≅Cn1×⋯×CnrG\cong C_{n_1}\times\cdots\times C_{n_r}

となる。とくにGGのすべての元の位数はnrn_rを割り、GGの指数はnrn_rである。

定理 2.1.KKを体とし、GGをK×K^\timesの有限部分群とする。このときGGは巡回群である。

とくに、FFが位数qqの有限体なら

F×≅Cq−1F^\times\cong C_{q-1}

である。

証明.G={1}G=\{1\}ならGGは自明な巡回群である。以下ではG≠{1}G\ne\{1\}とする。K×K^\timesは可換群なので、GGは非自明な有限アーベル群である。§E7.18 定理 6.3の不変因子分解を取り、GGの指数をe=nre=n_rとする。すべてのg∈Gg\in Gはge=1g^e=1を満たすため、GGの全元はK[x]K[x]の多項式xe−1x^e-1の根である。体上の次数eeの非零多項式は高々ee個の根しかもたないので

∣G∣≤e.|G|\le e.

一方、不変因子分解から

∣G∣=n1⋯nr≥nr=e|G|=n_1\cdots n_r\ge n_r=e

である。したがって∣G∣=e|G|=eである。r≥2r\ge2ならn1>1n_1>1からn1⋯nr>nr=en_1\cdots n_r>n_r=eとなって矛盾するため、r=1r=1である。ゆえにG≅CeG\cong C_eは巡回群である。

有限体FFについては∣F×∣=∣F∣−1=q−1|F^\times|=|F|-1=q-1なので、最後の主張が従う。▨

例 2.2 (有限個の一の冪根).KKを体とし、n≥1n\ge1とする。KKに含まれるnn乗根全体

μn(K)={a∈K×∣an=1}\mu_n(K)=\{a\in K^\times\mid a^n=1\}

はK×K^\timesの有限部分群である。したがって定理 2.1により巡回群であり、その位数はnnを割る。実際、この巡回群の生成元をζ\zetaとするとζn=1\zeta^n=1であるから、ζ\zetaの位数、すなわちμn(K)\mu_n(K)の位数はnnを割る。

有限体FFでは、定理 2.1の生成元を乗法的原始元という。有限体そのものの存在と同型を除く一意性は、既に導入した「分解体」を用いて、分離多項式xpn−xx^{p^n}-xに対して後続の有限体の Galois 理論で証明する。

系 2.3.KKを有限体とし、L/KL/Kを有限拡大とする。このとき、あるθ∈L\theta\in Lが存在して

L=K(θ)L=K(\theta)

となる。

証明.d=[L:K]d=[L:K]とし、e1,…,ede_1,\ldots,e_dをLLのKK上の基底とする。KKは有限集合であるから、各x∈Lx\in Lは一意な表示

x=a1e1+⋯+aded(a1,…,ad∈K)x=a_1e_1+\cdots+a_de_d\qquad(a_1,\ldots,a_d\in K)

をもち、LLも有限集合である。定理 2.1をL×L^\timesに適用して、L×=⟨θ⟩L^\times=\langle\theta\rangleとなるθ∈L×\theta\in L^\timesを取る。

K(θ)K(\theta)はθ\thetaを含む体なので、すべての整数mmに対してθm∈K(θ)\theta^m\in K(\theta)である。LLの非零元はすべてあるθm\theta^mであり、零元もK(θ)K(\theta)に属する。したがってL⊆K(θ)L\subseteq K(\theta)である。逆の包含K(θ)⊆LK(\theta)\subseteq Lは、LLがKKとθ\thetaを含む体であることから従う。よってL=K(θ)L=K(\theta)である。▨

3 演習

問題 3.1.

  1. 有限整域が体であることを用いずに、有限体の素体がFp\mathbb F_pになることを証明せよ。
  2. 位数1616の有限体が存在すると仮定したとき、その標数と素体上の次元を求めよ。
  3. 定理 2.1の証明で、不変因子分解がC2×C6C_2\times C_6を与えた場合に、多項式x6−1x^6-1の根の個数と群の位数がどのように矛盾するかを説明せよ。
  4. KKの標数がnnを割らないとき、μn(K)\mu_n(K)の位数がnnを割ることに加えて、xn−1x^n-1に重根がないことを証明せよ。
  5. KKが有限体でL/KL/Kが有限拡大であるとする。LLが有限集合であることをKK-基底から示し、L×L^\timesの生成元θ\thetaについてL=K(θ)L=K(\theta)を証明せよ。

4 扱った範囲と次の記事

本記事では、有限体の位数が標数の素数冪であること、体の有限乗法部分群が巡回群であること、および有限体の有限拡大が単拡大であることを証明した。後の「原始元定理」では、この系と有限次分離拡大の中間体の有限性を用いて、原始元の存在を証明する。後続の有限体の Galois 理論では、xpn−xx^{p^n}-xの分解体として位数pnp^nの体を構成し、乗法群の巡回性を有限体の構造計算に用いる。

参考文献

  1. Serge Lang, Algebra, revised 3 ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2002.
  2. Rudolf Lidl and Harald Niederreiter, Finite Fields, 2nd ed., Encyclopedia of Mathematics and its Applications 20, Cambridge University Press, Cambridge, 1997.

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