§E8.17有限体の Galois 理論

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§E8.7 定理 1.1により、有限体の位数は素数冪に限られる。本記事では逆向きに、各素数冪q=prq=p^rに対して位数qqの体を構成し、その同型類が一つだけであることを証明する。構成の中心となる多項式はxq−xx^q-xであり、その根は加法、乗法および逆元について閉じている。

有限体のすべての有限拡大は Galois 拡大であり、Frobenius 自己同型が Galois 群を生成する。この一つの自己同型から、部分体、トレース、ノルムおよび絶対 Galois 群を統一的に記述することができる。

1 存在と一意性

定理 1.1.q=prq=p^rを素数ppの正整数冪とする。このとき位数qqの体が存在し、同型を除いて一意である。その体をFq\mathbb F_qと書くことができる。

Fq\mathbb F_qはFp[x]\mathbb F_p[x]の多項式xq−xx^q-xの分解体であり、その元は固定した代数閉包の中で

Fq={a∣aq=a}\mathbb F_q=\{a\mid a^q=a\}

と特徴づけられる。

証明.f=xq−x∈Fp[x]f=x^q-x\in\mathbb F_p[x]の分解体LLを取る。標数ppではq=0q=0なので

f′=qxq−1−1=−1f'=qx^{q-1}-1=-1

であり、ffは重根をもたない。したがってLLにあるffの根全体RRはちょうどqq個の元をもつ。

a,b∈Ra,b\in Rとする。標数ppにおける Frobenius の反復から

(a+b)q=aq+bq=a+b,(ab)q=aqbq=ab(a+b)^q=a^q+b^q=a+b,\qquad (ab)^q=a^qb^q=ab

となる。またa≠0a\ne0なら(a−1)q=(aq)−1=a−1(a^{-1})^q=(a^q)^{-1}=a^{-1}である。0,1∈R0,1\in Rでもあるため、RRはLLの部分体である。LLはffの根で生成されるのでL=RL=Rであり、∣L∣=q|L|=qとなる。したがって根集合R=LR=Lは位数qqの体を与え、存在の主張が従う。

EEを位数qqの任意の体とする。§E8.7 定理 1.1によりEEの標数はppである。各a∈E×a\in E^\timesについて、Lagrange の定理からaq−1=1a^{q-1}=1なのでaq=aa^q=aである。a=0a=0でも同じ等式が成り立つ。したがってEEの全元はxq−xx^q-xの根であり、根の個数が次数qqを超えないことから、EEはこの多項式のFp\mathbb F_p上の分解体である。ここで、分解体の一意性§E8.11 定理 5.1が与える結論は、同じ基礎体Fp\mathbb F_p上の同じ多項式の二つの分解体の間に、Fp\mathbb F_pを点ごとに固定する体同型が存在することである。§E8.11 定理 5.1をEEと先に構成したLLに適用すると、両者はFp\mathbb F_p上同型である。▨

以後、すべての有限体を一つの代数閉包F‾p\overline{\mathbb F}_pの部分体として扱う。定理 1.1の根による特徴づけにより、m∣nm\mid nならFpm⊆Fpn\mathbb F_{p^m}\subseteq\mathbb F_{p^n}である。実際、apm=aa^{p^m}=aならapn=aa^{p^n}=aとなる。

2 Frobenius 自己同型

命題 2.1.q=prq=p^rを素数冪とし、n≥1n\ge1とする。写像

Fr⁡q:Fqn⟶Fqn,a⟼aq\operatorname{Fr}_q:\mathbb F_{q^n}\longrightarrow\mathbb F_{q^n}, \qquad a\longmapsto a^q

はFq\mathbb F_q-自己同型であり、位数はnnである。さらに

Gal⁡(Fqn/Fq)=⟨Fr⁡q⟩≅Z/nZ\operatorname{Gal}(\mathbb F_{q^n}/\mathbb F_q) =\langle\operatorname{Fr}_q\rangle\cong\mathbb Z/n\mathbb Z

である。

証明. 標数ppにおける二項定理から(a+b)q=aq+bq(a+b)^q=a^q+b^qであり、乗法の保存も明らかなのでFr⁡q\operatorname{Fr}_qは体準同型である。a∈Fqa\in\mathbb F_qならaq=aa^q=aであるから、この準同型はFq\mathbb F_qを固定する。有限集合上の単射は全射なので自己同型である。

a∈Fqna\in\mathbb F_{q^n}についてaqn=aa^{q^n}=aであるためFr⁡qn=1\operatorname{Fr}_q^n=1である。0<d<n0<d<nについてFr⁡qd=1\operatorname{Fr}_q^d=1と仮定すると、qnq^n個の元がすべて次数qdq^dの非零多項式xqd−xx^{q^d}-xの根になり、根の個数の上界に反する。ゆえにFr⁡q\operatorname{Fr}_qの位数はnnである。

Fqn\mathbb F_{q^n}は分離多項式xqn−xx^{q^n}-xのFq\mathbb F_q上の分解体なので、有限 Galois 拡大である。拡大次数は、位数を比較して

[Fqn:Fq]=n[\mathbb F_{q^n}:\mathbb F_q]=n

である。§E8.10 定理 3.1により Galois 群の位数もnnである。既にFr⁡q\operatorname{Fr}_qが生成する位数nnの部分群が存在するため、それが Galois 群全体である。▨

例 2.2 (F8\mathbb F_8の構成と原始元).x3+x+1x^3+x+1はF2\mathbb F_2に根をもたない三次多項式なので既約である。したがって

F8≅F2[x]/(x3+x+1)\mathbb F_8\cong\mathbb F_2[x]/(x^3+x+1)

である。xxの剰余類をα\alphaとするとα3=α+1\alpha^3=\alpha+1であり、

α, α2, α+1, α2+α, α2+α+1, α2+1, 1\alpha,\ \alpha^2,\ \alpha+1,\ \alpha^2+\alpha,\ \alpha^2+\alpha+1,\ \alpha^2+1,\ 1

は順にα,α2,…,α7\alpha,\alpha^2,\ldots,\alpha^7である。よってα\alphaはF8×\mathbb F_8^\timesの生成元である。Frobeniusa↦a2a\mapsto a^2はα↦α2↦α4↦α\alpha\mapsto\alpha^2\mapsto\alpha^4\mapsto\alphaと作用し、位数33の Galois 群を生成する。

3 部分体の分類

定理 3.1.qqを素数冪とし、n≥1n\ge1とする。Fq\mathbb F_qを含むFqn\mathbb F_{q^n}の部分体は、nnの正の約数ddに対するFqd\mathbb F_{q^d}に限る。対応する Galois 群の部分群は

Gal⁡(Fqn/Fqd)=⟨Fr⁡qd⟩\operatorname{Gal}(\mathbb F_{q^n}/\mathbb F_{q^d}) =\langle\operatorname{Fr}_q^d\rangle

である。

証明.d∣nd\mid nなら、xqd−xx^{q^d}-xの各根はxqn−xx^{q^n}-xの根なのでFqd⊆Fqn\mathbb F_{q^d}\subseteq\mathbb F_{q^n}である。Fr⁡qd\operatorname{Fr}_q^dの固定体は

{a∈Fqn∣aqd=a}=Fqd\{a\in\mathbb F_{q^n}\mid a^{q^d}=a\}=\mathbb F_{q^d}

である。

逆にFq⊆E⊆Fqn\mathbb F_q\subseteq E\subseteq\mathbb F_{q^n}を部分体とする。有限 Galois 対応§E8.10 定理 4.1により、EEは巡回群⟨Fr⁡q⟩\langle\operatorname{Fr}_q\rangleのある部分群の固定体である。位数nnの巡回群の部分群は、約数d∣nd\mid nに対する⟨Fr⁡qd⟩\langle\operatorname{Fr}_q^d\rangleに限る。等式

{a∈Fqn∣aqd=a}=Fqd\{a\in\mathbb F_{q^n}\mid a^{q^d}=a\}=\mathbb F_{q^d}

により、⟨Fr⁡qd⟩\langle\operatorname{Fr}_q^d\rangleの固定体はFqd\mathbb F_{q^d}である。したがってE=FqdE=\mathbb F_{q^d}である。▨

例 3.2 (六次拡大の部分体).Fq6/Fq\mathbb F_{q^6}/\mathbb F_qの中間体は

Fq,Fq2,Fq3,Fq6\mathbb F_q,\qquad\mathbb F_{q^2},\qquad\mathbb F_{q^3},\qquad\mathbb F_{q^6}

の四つである。例えばFq2\mathbb F_{q^2}の固定部分群は⟨Fr⁡q2⟩\langle\operatorname{Fr}_q^2\rangleであり、その位数は33である。

4 トレースとノルム

命題 4.1.a∈Fqna\in\mathbb F_{q^n}とする。このとき

Tr⁡Fqn/Fq(a)=∑i=0n−1aqi,N⁡Fqn/Fq(a)=∏i=0n−1aqi=a(qn−1)/(q−1).\operatorname{Tr}_{\mathbb F_{q^n}/\mathbb F_q}(a) =\sum_{i=0}^{n-1}a^{q^i}, \qquad \operatorname{N}_{\mathbb F_{q^n}/\mathbb F_q}(a) =\prod_{i=0}^{n-1}a^{q^i} =a^{(q^n-1)/(q-1)}.

第二式の最後の表示はa=0a=0に対してもn≥1n\ge1の範囲で成り立つ。

証明.命題 2.1によりFqn/Fq\mathbb F_{q^n}/\mathbb F_qの埋め込みは1,Fr⁡q,…,Fr⁡qn−11,\operatorname{Fr}_q,\ldots,\operatorname{Fr}_q^{n-1}である。分離拡大に対するトレースとノルムの埋め込み表示§E8.16 定理 2.1を適用すると、和と積の二式を得る。a≠0a\ne0なら

∏i=0n−1aqi=a1+q+⋯+qn−1=a(qn−1)/(q−1).\prod_{i=0}^{n-1}a^{q^i}=a^{1+q+\cdots+q^{n-1}} =a^{(q^n-1)/(q-1)}.

a=0a=0の場合は両辺が00である。▨

トレースとノルムの値がFq\mathbb F_qに属することは、Frobenius を作用させると和の項と積の項が巡回的に置換されることからも直接確認することができる。

5 絶対 Galois 群

副有限整数環を有限巡回群の逆極限

Z^=lim←⁡n≥1Z/nZ\widehat{\mathbb Z}=\varprojlim_{n\ge1}\mathbb Z/n\mathbb Z

と定める。遷移写像はm∣nm\mid nに対する剰余写像である。

定理 5.1.qqを素数冪とする。Fq\mathbb F_qの代数閉包は

F‾q=⋃n≥1Fqn\overline{\mathbb F}_q=\bigcup_{n\ge1}\mathbb F_{q^n}

であり、絶対 Galois 群は

Gal⁡(F‾q/Fq)≅Z^\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb F}_q/\mathbb F_q) \cong\widehat{\mathbb Z}

である。この同型で、Frobeniusa↦aqa\mapsto a^qは1∈Z^1\in\widehat{\mathbb Z}に対応し、その生成する巡回部分群は絶対 Galois 群で稠密である。

証明.α∈F‾q\alpha\in\overline{\mathbb F}_qはFq\mathbb F_q上代数的なので、E=Fq(α)E=\mathbb F_q(\alpha)は有限拡大である。d=[E:Fq]d=[E:\mathbb F_q]とおけば、EEはFq\mathbb F_q上dd次元の線形空間なので∣E∣=qd|E|=q^dである。a∈E×a\in E^\timesに Lagrange の定理を適用するとaqd−1=1a^{q^d-1}=1であり、a=0a=0と併せて、EEの全元がxqd−xx^{q^d}-xの根である。一方、固定した代数閉包内のFqd\mathbb F_{q^d}は定理 1.1により、この多項式のqdq^d個の根全体である。EEもqdq^d個の根をもつので、

E=FqdE=\mathbb F_{q^d}

が固定した代数閉包の中で成り立つ。したがって表示された合併は代数閉包全体を尽くす。

§E8.12 系 3.3によりFq\mathbb F_qは完全体であり、定義§E8.12 定義 3.1によりFq\mathbb F_q上のすべての代数拡大は分離的である。したがってF‾q\overline{\mathbb F}_qは分離閉包でもある。また、無限次 Galois 拡大の逆極限表示§E8.13 定理 2.2は、Galois 拡大L/KL/Kの Galois 群が、その有限 Galois 部分拡大の Galois 群の逆極限に制限写像で同型になることを与える。直前に証明した等式と定理 3.1により、F‾q/Fq\overline{\mathbb F}_q/\mathbb F_qの有限 Galois 部分拡大はFqn\mathbb F_{q^n}で尽くされ、m∣nm\mid nに対する制限写像は巡回群の剰余写像に対応する。ゆえに§E8.13 定理 2.2と命題 2.1から

Gal⁡(F‾q/Fq)≅lim←⁡nGal⁡(Fqn/Fq)≅lim←⁡nZ/nZ=Z^.\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb F}_q/\mathbb F_q) \cong\varprojlim_n\operatorname{Gal}(\mathbb F_{q^n}/\mathbb F_q) \cong\varprojlim_n\mathbb Z/n\mathbb Z =\widehat{\mathbb Z}.

§E8.13 命題 2.4により、この逆極限同型は Krull 位相に関する同相でもある。各有限商で Frobenius は1 mod n1\bmod nに対応する。Z\mathbb Zの像はすべての有限商へ全射なので、逆極限位相で稠密である。▨

6 演習

問題 6.1.

  1. xpr−xx^{p^r}-xの根全体が逆元について閉じていることを、零元を分けて証明せよ。
  2. Gal⁡(Fq12/Fq)\operatorname{Gal}(\mathbb F_{q^{12}}/\mathbb F_q)の各部分群と、対応するすべての中間体を列挙せよ。
  3. a∈Fq2a\in\mathbb F_{q^2}について、トレースがa+aqa+a^q、ノルムがaq+1a^{q+1}になることを確認し、両者がFq\mathbb F_qに属することを直接証明せよ。
  4. Z^\widehat{\mathbb Z}の元が、m∣nm\mid nに対して整合する剰余類族(an mod n)n(a_n\bmod n)_nであることを説明し、Frobenius の冪Fr⁡qk\operatorname{Fr}_q^kに対応する族を書け。

7 扱った範囲と次の記事

本記事では、有限体の存在と一意性、Frobenius による有限 Galois 群、部分体、トレース、ノルムおよび絶対 Galois 群を記述した。次の記事では、一般の絶対 Galois 群が離散加群へ作用する場合の一次コホモロジーを定義し、Hilbert の定理 90 を証明する。

参考文献

  1. Rudolf Lidl and Harald Niederreiter, Finite Fields, 2nd ed., Encyclopedia of Mathematics and its Applications 20, Cambridge University Press, Cambridge, 1997.
  2. Jean-Pierre Serre, Local Fields, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1979.

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