1 代数的独立性と純超越拡大
無限個の変数をもつ多項式も、各多項式が実際に用いる変数は有限個である。
定義 1.1. 体の包含K⊆Lと部分集合S⊆Lを考える。各s∈Sに変数Xsを対応させた評価準同型
evS:K[Xs∣s∈S]⟶L,Xs⟼sが単射であるとき、SはK上代数的に独立 (algebraically independent) であるという。評価準同型が単射でないとき、SはK上代数的に従属 (algebraically dependent) であるという。
同値な形で述べると、SがK上代数的に独立であるための必要十分条件は、任意の相異なるs1,…,sn∈Sと任意の非零多項式P∈K[X1,…,Xn]に対して
P(s1,…,sn)=0となることである。
定義 1.2. 体の包含K⊆Lに対し、K上代数的に独立な部分集合S⊆Lが存在してL=K(S)となるとき、L/Kを純超越拡大 (purely transcendental extension) と呼ぶ。
SがK上代数的に独立であるとき、評価準同型は分数体の同型
K(Xs∣s∈S) ∼ K(S)を誘導する。ここでA=K[Xs∣s∈S]とおき、評価準同型をj=evS:A→Lと書く。代数的独立性によりjは単射であり、体Lへの単射が存在するためAは整域である。分数体の最小性§E6.6 命題 3.3を適用すると、jはFrac(A)からLへの単射に延長され、その像はj(A)=K[S]を含むLの最小の部分体になる。K(S)の定義により、その部分体はK(S)であるから、この延長が表示した同型を与える。左辺は、有限個の変数だけを用いる多項式の比からなる有理関数体である。
例えば、不定元t1,…,tnはK上代数的に独立であり、K(t1,…,tn)/Kは純超越拡大である。一方、集合{t,t2}はX2−X12という非零多項式関係を満たすため、K上代数的に従属である。
超越基底は、純超越部分を最大まで選んだものである。
定義 1.3. 体の包含K⊆Lを考える。部分集合B⊆Lが次の二条件を満たすとき、BをL/Kの超越基底 (transcendence basis) と呼ぶ。
- BはK上代数的に独立である。
- L/K(B)は代数拡大である。
超越基底の濃度が一意であることを後で証明する。その一意な濃度をL/Kの超越次数 (transcendence degree) と呼び、
trdegKLと書く。
代数的独立集合へ元を一つ添加できるかどうかは、その元のK(B)上の代数性によって判定する。
補題 1.4. 体の包含K⊆L、K上代数的に独立な部分集合S⊆L、および元α∈L∖Sを考える。S∪{α}がK上代数的に独立であることと、αがK(S)上超越的であることは同値である。
証明.αがK(S)上代数的であると仮定する。K(S)係数の非零多項式関係の分母を払うと、有限個のs1,…,sr∈Sと非零多項式
P∈K[X1,…,Xr,T]が存在してP(s1,…,sr,α)=0となる。Sの代数的独立性により、分母を払った後の係数はすべて同時には零にならない。したがってS∪{α}は代数的に従属である。
逆に、S∪{α}が代数的に従属であると仮定する。α∈/Sであるから、αに対応する変数をSの元に対応する変数とは異なるTとして扱うことができる。したがって、有限個のs1,…,sr∈Sと非零多項式P∈K[X1,…,Xr,T]が存在して
P(s1,…,sr,α)=0となる。PをTの多項式とみる。SはK上代数的に独立であるから、P(s1,…,sr,T)はK(S)[T]の非零多項式である。さらに、この多項式のT次数が零ならば、その非零定数項がs1,…,srの非自明な多項式関係を与えるため、Sの代数的独立性に反する。したがって、この多項式のT次数は正であり、αはK(S)上代数的である。▨
この判定から、代数的独立集合が極大であることと超越基底であることが一致する。
系 1.5. 体の包含K⊆Lと、K上代数的に独立な部分集合B⊆Lを考える。Bが包含関係について極大なK上代数的独立集合であることと、BがL/Kの超越基底であることは同値である。
証明.Bが極大であると仮定する。α∈Bならばα∈K(B)であるから、αはK(B)上代数的である。α∈L∖Bならば、極大性によりB∪{α}は代数的に従属であり、補題 1.4によりαはK(B)上代数的である。したがってL/K(B)は代数拡大であり、Bは超越基底である。
逆に、Bが超越基底であると仮定する。任意のα∈L∖BはK(B)上代数的であるから、補題 1.4によりB∪{α}は代数的に従属である。したがって、Bを真に含むK上代数的に独立な部分集合は存在せず、Bは極大である。▨
2 超越基底の存在
任意の代数的独立集合を含む超越基底が存在する。
定理 2.1. 体の包含K⊆Lと、K上代数的に独立な部分集合S0⊆Lを考える。このとき、S0⊆Bを満たすL/Kの超越基底Bが存在する。
証明.S0を含むK上代数的に独立なLの部分集合全体をPとし、包含関係で順序づける。集合S0はPの元であるから、Pは空ではない。
C⊆Pを鎖とする。Cが空ならば、S0∈PがCの上界である。Cが空でないならば、U=⋃S∈CSとおく。各S∈CはS0を含むため、UもS0を含む。もしUが代数的に従属ならば、ある有限個の元u1,…,un∈Uが非自明な多項式関係を満たす。鎖Cは包含関係について全順序集合であるから、u1,…,unをすべて含むS∈Cが存在する。この多項式関係はSの代数的独立性に反する。したがってUは代数的に独立であり、U∈Pは鎖Cの上界である。
Zorn の補題§E1.20 定理 2.1により、Pには極大元Bが存在する。系 1.5によりBはL/Kの超越基底であり、定義からS0⊆Bである。▨
3 交換補題
超越基底の濃度を比較するために、一つの代数的に独立な元を別の元と交換する。
補題 3.1 (有限交換補題). 体の包含K⊆L、有限なK上代数的独立集合S⊆L、および元z∈Lを考える。zがK(S)上代数的かつK上超越的であると仮定する。このとき、あるs∈Sが存在し、
S′=(S∖{s})∪{z}はK上代数的に独立である。さらに、sはK(S′)上代数的であり、K(S,z)/K(S′)は代数拡大である。
証明.Sは有限集合であり、zはK(S)上代数的である。したがって、zがK(T)上代数的になる部分集合T⊆Sのうち、包含関係について極小なものを選ぶことができる。zはK上超越的であるからT=∅である。s∈Tを一つ取り、
F=K(T∖{s})とおく。Tの極小性により、zはF上超越的である。
一方、zはF(s)上代数的である。TはK上代数的に独立なのでsはF上超越的であり、F(s)は一変数有理関数体である。zが満たすF(s)係数の非零多項式を取り、係数の分母を払うと、非零多項式
P(X,Y)∈F[X,Y]でP(s,z)=0を満たすものを得る。PがXに依存しなければ、P(z)=0はzがF上超越的であることに反する。したがってPのX次数は正である。また、zはF上超越的であるから、P(X,z)はF(z)[X]の非零多項式である。ゆえにsはF(z)上代数的である。
集合
T′=(T∖{s})∪{z}はK上代数的に独立である。実際、T∖{s}はSの部分集合なのでK上代数的に独立であり、zはK(T∖{s})=F上超越的である。
U=S∖Tとおく。T′∪UがK上代数的に従属であると仮定し、U={u1,…,um}の順に元を添加するときに初めて従属が生じる元をujとする。このときujは
K(T′,u1,…,uj−1)上代数的であるから、この体を含むK(T,z,u1,…,uj−1)上でも代数的である。さらにzはK(T)上代数的なので、K(T,z,u1,…,uj−1)はK(T,u1,…,uj−1)上代数拡大である。代数性の推移性§E8.2 定理 5.1により、ujはK(T,u1,…,uj−1)上代数的になる。これはSの代数的独立性に反する。したがって
S′=T′∪U=(S∖{s})∪{z}はK上代数的に独立である。
既に示したようにsはF(z)⊆K(S′)上代数的である。K(S,z)=K(S′)(s)であるから、K(S,z)/K(S′)は代数拡大である。▨
有限交換補題を繰り返すと、有限な独立集合の要素数を比較することができる。
補題 3.2. 体の包含K⊆Lと有限なK上代数的独立集合S,C⊆Lを考える。Cの各元がK(S)上代数的であると仮定する。このとき
∣C∣≤∣S∣が成り立つ。
証明.∣C∣に関する帰納法を用いる。Cが空ならば主張は成り立つ。Cが空でないと仮定し、c∈Cを一つ取る。単集合{c}はK上代数的に独立であるから、cはK上超越的である。仮定によりcはK(S)上代数的である。補題 3.1により、あるs∈Sが存在して
S′=(S∖{s})∪{c}はK上代数的に独立であり、K(S,c)/K(S′)は代数拡大である。
C∖{c}はK(c)上代数的に独立である。実際、K(c)係数の多項式関係の分母を払えば、Cの元に関するK係数の非自明な多項式関係が生じる。同じ理由によりS∖{s}はK(c)上代数的に独立である。
各d∈C∖{c}はK(S)上代数的であり、K(S,c)/K(S′)は代数拡大である。代数性の推移性§E8.2 定理 5.1により、dは
K(S′)=K(c)(S∖{s})上代数的である。基礎体をK(c)に取り替えて帰納法の仮定を適用すると
∣C∣−1≤∣S∣−1を得る。したがって∣C∣≤∣S∣である。▨
任意濃度の集合を比較するため、有限部分集合ごとの交換結果を一つの単射として整合させる。
補題 3.3 (有限支持族に対する Hall 補題). 集合C,Bと、各c∈Cに対応する有限部分集合Sc⊆Bを考える。任意の有限部分集合C0⊆Cに対して
c∈C0⋃Sc≥∣C0∣が成り立つと仮定する。選択公理のもとで、単射φ:C→Bで
φ(c)∈Sc(c∈C)を満たすものが存在する。
証明.Cが有限であると仮定し、∣C∣に関する帰納法を用いる。Cが空ならば主張は成り立つ。任意の空でない真部分集合D⊊Cについて
c∈D⋃Sc≥∣D∣+1が成り立つ場合、c0∈Cとb0∈Sc0を選ぶ。任意のH⊆C∖{c0}に対し、H=∅ならば
c∈H⋃Sc≥∣H∣+1である。各Scからb0を除いても和集合の元は高々一つしか減らないため、族{Sc∖{b0}}c∈C∖{c0}は Hall 条件を満たす。帰納法で得られるこの族の単射代表系とc0↦b0を合わせると、Cの単射代表系を得る。
任意の空でない真部分集合に対するこの不等式が成り立たない場合、ある空でない真部分集合D⊊Cが存在して
c∈D⋃Sc=∣D∣となる。帰納法によりDには単射代表系が存在する。C∖Dに属する各cについて、Scから⋃d∈DSdを除く。任意のH⊆C∖Dに対し、元の Hall 条件から
c∈H∪D⋃Sc≥∣H∣+∣D∣であり、D側で除く元は∣D∣個である。したがって残りの族も Hall 条件を満たす。帰納法によりC∖Dにも単射代表系が存在し、二つの代表系の像は互いに交わらない。以上により有限の場合が証明された。
Cを任意の集合とし、その有限部分集合全体をDと書く。各D∈Dに対して、D上の単射代表系全体
MD={f:D⟶B∣f は単射であり、すべての c∈D に対して f(c)∈Sc}を考える。有限の場合の結果により、各MDは空でない。
有限部分集合D0⊆Cに対し、
UD0={D∈D∣D0⊆D}とおく。
集合X上のフィルターとは、部分集合族F⊆P(X)であって、X∈F、有限交叉について閉じ、A∈FかつA⊆A′⊆XならばA′∈Fとなるものをいう。∅∈/Fを満たすフィルターを真のフィルターという。集合族B⊆P(X)が生成するフィルターは、Bの元の有限交叉を含むXの部分集合全体からなる。包含関係について極大な真のフィルターをウルトラフィルターという。
集合族{UD0∣D0∈D}に対して
UD1∩⋯∩UDr=UD1∪⋯∪Drである。右辺はD1∪⋯∪Drを元にもつため空集合ではない。したがって、この集合族がD上に生成するフィルターF0は真のフィルターである。
F0を含むD上の真のフィルター全体を包含関係で順序づける。この半順序集合はF0を元にもつため空ではない。鎖{Fi}i∈Iが空ならば、F0がその上界である。鎖が空でないならば、
F=i∈I⋃Fiとおく。各FiはDを含み、空集合を含まない。また、A,B∈Fならば、鎖の二元のうち大きいフィルターがAとBの両方を含むためA∩B∈Fである。上方閉性も、Aを含むいずれかのFiから従う。したがってFはF0を含む真のフィルターであり、鎖の上界である。
Zorn の補題§E1.20 定理 2.1により、F0を含む極大な真のフィルターUが存在する。この極大性から、任意のA⊆Dに対して
A∈UまたはD∖A∈Uのいずれかが成り立つ。実際、A∈/Uとする。UとAが生成するフィルターは極大性により真ではないため、あるV∈Uが存在してV∩A=∅となる。するとV⊆D∖Aと上方閉性からD∖A∈Uである。Aと補集合の両方がUに属すれば、その交わりである空集合も属するため、両方が属することはない。したがってUはウルトラフィルターである。
選択公理§E1.20 定理 2.1を用いて、すべてのD∈DについてfD∈MDを一つずつ選ぶ。各c∈Cとb∈Scに対し、
Ac,b={D∈D∣c∈D, fD(c)=b}とおく。有限個の集合Ac,b(b∈Sc)はU{c}を分割し、U{c}∈Uである。もしどのAc,bもUに属さなければ、それぞれの補集合がUに属し、それらとU{c}の有限交叉である空集合もUに属してしまう。したがって、少なくとも一つのAc,bがUに属する。相異なるb,b′∈Scに対してAc,b∩Ac,b′=∅なので、二つが同時にUに属することはない。したがって、b∈Scのうちちょうど一つについてAc,b∈Uとなる。その一意な元をφ(c)と定める。
もし相異なるc,c′∈Cがφ(c)=φ(c′)=bを満たすならば、
Ac,b∩Ac′,b∈Uとなるため、この交わりは空ではない。しかし交わりに属するDでは、単射fDがcとc′を同じbへ写すことになり、fDの単射性に反する。したがってφは単射である。▨
4 超越基底の濃度の一意性
交換補題と Hall 補題を用いて、二つの超越基底の間に単射を構成する。
定理 4.1. 体の包含K⊆Lに対し、BとCがともにL/Kの超越基底であると仮定する。このとき
∣B∣=∣C∣である。したがって定義 1.3の超越次数は超越基底の選び方に依存しない。
証明.L/K(B)は代数拡大であるから、各c∈CはK(B)上代数的である。cを消す一つの多項式関係に現れるBの元は有限個だけである。したがって、選択公理§E1.20 定理 2.1を用いて、すべてのc∈Cに対して有限部分集合Sc⊆Bを一つずつ選び、cがK(Sc)上代数的になるようにする。
有限部分集合C0⊆Cを任意に取って
S=c∈C0⋃Scとおく。C0とSは有限なK上代数的独立集合であり、C0の各元はK(S)上代数的である。補題 3.2により
∣C0∣≤∣S∣となる。したがって有限支持族{Sc}c∈Cは補題 3.3の Hall 条件を満たす。同補題により単射C→Bが存在する。
BとCの役割を交換すると、同じ議論によって単射B→Cが存在する。Schröder–Bernstein の定理§E1.11 定理 4.2により∣B∣=∣C∣である。▨
5 体の塔と超越次数
代数拡大へ任意の元を添加しても、代数性は保たれる。
補題 5.1. 体の包含F⊆E⊆LについてE/Fが代数拡大であると仮定し、部分集合S⊆Lを取る。このときE(S)/F(S)は代数拡大である。
証明.E(S)はF(S)にEのすべての元を添加して得られる。各e∈EはF上代数的であるから、同じ多項式によってF(S)上でも代数的である。E(S)の任意の元は、有限個のe1,…,er∈Eを用いる体F(S)(e1,…,er)に属する。§E8.2 定理 4.2により、この体はF(S)上有限次である。さらに、有限拡大の代数性§E8.2 命題 4.1により、この有限次拡大のすべての元、特に先ほど取った任意の元はF(S)上代数的である。したがってE(S)/F(S)は代数拡大である。▨
中間体の超越基底と上段の超越基底を合わせると、全体の超越基底になる。
定理 5.2 (超越次数の塔の公式). 体の包含K⊆E⊆Lに対し、
trdegKL=trdegKE+trdegELが成り立つ。右辺の加法は基数の加法である。
証明.定理 2.1を空集合から適用して、E/Kの超越基底BとL/Eの超越基底Cを取る。このときB∩C=∅である。実際、c∈C∩Bならばc∈Eであり、非零多項式X−c∈E[X]がcを根にもつ。これはCがE上代数的に独立であることに反する。
もしB∪CがK上代数的に従属ならば、有限個のb1,…,br∈Bとc1,…,cs∈Cおよび非零多項式
P∈K[X1,…,Xr,Y1,…,Ys]が存在して
P(b1,…,br,c1,…,cs)=0となる。PをY1,…,Ysの多項式とみると、その係数はK[b1,…,br]⊆Eに属する。CはE上代数的に独立であるから、すべての係数をb1,…,brで評価した値が零でなければならない。BはK上代数的に独立であるから、各係数多項式自体が零である。これはPが非零であることに矛盾する。したがってB∪CはK上代数的に独立である。
E/K(B)は代数拡大である。補題 5.1により
E(C)/K(B)(C)=E(C)/K(B∪C)は代数拡大である。また、L/E(C)は代数拡大である。代数性の推移性§E8.2 定理 5.1により、L/K(B∪C)は代数拡大である。したがってB∪CはL/Kの超越基底である。
定理 4.1により、
trdegKL=∣B∪C∣=∣B∣+∣C∣=trdegKE+trdegELが成り立つ。▨
6 有理関数体と有限生成体拡大
有理関数体では、変数そのものが超越基底になる。
例 6.1 (有理関数体の超越次数). 不定元の集合{ti∣i∈I}はK上代数的に独立である。したがって{ti∣i∈I}はK(ti∣i∈I)/Kの超越基底であり、
trdegKK(ti∣i∈I)=∣I∣である。特に、一変数有理関数体の超越次数は1であり、n変数有理関数体の超越次数はnである。
有限生成体拡大では、有限個の生成元の中から超越基底を選ぶことができる。
定理 6.2. 体の包含K⊆Lに対し、
L=K(α1,…,αn)と仮定する。このとき、{α1,…,αn}のある部分集合BがL/Kの超越基底となり、L/K(B)は有限次拡大である。特に
trdegKL≤nである。
証明. 有限集合{α1,…,αn}の中から、包含関係について極大なK上代数的独立部分集合Bを選ぶ。有限集合の部分集合を有限回比較すれば選ぶことができるため、この選択に Zorn の補題は要らない。
αi∈/Bと仮定する。Bの極大性によりB∪{αi}はK上代数的に従属である。補題 1.4によりαiはK(B)上代数的である。したがってLはK(B)に有限個の代数的な元を添加して得られる。§E8.2 定理 4.2によりL/K(B)は有限次拡大である。ゆえにBはL/Kの超越基底であり、∣B∣≤nである。▨
例 6.3 (代数的な部分をもつ有限生成拡大).tをK上超越的な元とし、αをK(t)上代数的な元とする。L=K(t,α)とおくと、{t}はL/Kの超越基底である。実際、tはK上超越的であり、L/K(t)は代数拡大である。したがって
trdegKL=1である。さらにαの最小多項式の次数が有限であるため、L/K(t)は有限次拡大である。
7 演習
問題 7.1 (超越次数の塔の公式). 体K上代数的に独立な元u,vを取り、αをK(u)上代数的な元とする。E=K(u,α)およびL=K(u,v,α)とおく。trdegKE、trdegEL、trdegKLを求め、超越次数の塔の公式を確認せよ。
解答.
uはK上超越的であり、αはK(u)上代数的であるから、{u}はE/Kの超越基底である。したがって
trdegKE=1である。
u,vはK上代数的に独立である。αはK(u)上代数的であり、E=K(u)(α)であるから、§E8.2 定理 3.1によりE/K(u)は有限次拡大である。したがって§E8.2 命題 4.1によりE/K(u)は代数拡大である。もしvがE上代数的ならば、L=E(v)と§E8.2 定理 3.1によりL/Eは有限次拡大であり、§E8.2 命題 4.1によりL/Eは代数拡大である。代数性の推移性§E8.2 定理 5.1によりL/K(u)は代数拡大となるため、v∈LはK(u)上代数的になる。これはu,vのK上の代数的独立性に反する。したがってvはE上超越的であり、L=E(v)であるから{v}はL/Eの超越基底である。ゆえに
trdegEL=1である。
また、{u,v}はK上代数的に独立であり、L/K(u,v)はαを添加して得られる代数拡大である。したがって{u,v}はL/Kの超越基底であり、
trdegKL=2である。以上から
trdegKL=2=1+1=trdegKE+trdegELとなり、塔の公式を確認することができる。▨