1 Bring–Jerrard 終端
定義 1.1. Bring–Jerrard 終端 (Bring–Jerrard terminal) とは、係数体K⊂C上のR(Z)=Z5+d1Z+d0と、第24記事の exact inverseU4,U2の組である。恒等 chart の段では対応する逆を恒等写像とする。
補題 1.2.Ra(x)=x5−x−aは55a4−28=0のとき分離的である。a=0も分離的であり、modular parameter の追加分岐であって五次方程式の判別式零点ではない。
証明. 重根xは5x4−1=0とx5−x−a=0を満たす。前者からx4=1/5、後者からa=x5−x=−4x/5なので55a4=28となる。逆向きもx=−5a/4を代入すれば同じ計算で得られる。a=0ではx(x4−1)であり、根は相異なる。▨
2 theta 函数と branch datum
前提記事の定理をH={τ∣Imτ>0}上で用いる。q=eπiτ、
k=θ3(0∣τ)2θ2(0∣τ)2,k′=θ3(0∣τ)2θ4(0∣τ)2,λ=k2
とし、k′2=1−k2とする。λ=0,1,∞は compactified modular curve の cusp の像であり、上半平面内の点ではない。
定義 2.1. 単連結開集合D⊂H上でλ(τ)=0、1−λ(τ)=0とする。
Hermite branch datum (Hermite branch datum) とは、ϕ8=λ、ψ8=1−λ、ϕ4=k、ψ4=k′を満たす正則関数と、初期値からの解析接続および閉路後の multiplier の選択である。
補題 2.2. 上のD、τ0∈D、ϕ08=λ(τ0)、ψ08=1−λ(τ0)に対して、初期値を固定する一意な正則なϕ,ψが存在する。Dの外への一価な延長は主張しない。
証明. 非零正則関数λ,1−λは、単連結性により正則対数をもつ。ϕ=exp(logλ/8)、ψ=exp(log(1−λ)/8)と置けば存在する。初期値が対数の加法定数を定めるので一意である。単連結でない領域では対数の周期が生じるため、閉路後の multiplier を datum に含める。▨
実基点τ=it(t>0)ではk,k′,ϕ,ψ>0とする。λ=0,1,∞の cusp と55a4=28の有限 Bring 特異値は別の locus である。A=0では後述の四次式が(k2+1)2=0となるが、x5−xは分離的である。
3 位数5の六次関係
u=ϕ(ω)、v=ϕ(5ω)と置く。「位数5」はω↦5ωの指数であり、
Bring 方程式の次数を意味しない。
定理 3.1. Hermite の位数5の変換に対して
u6−v6+5u2v2(u2−v2)+4uv(1−u4v4)=0.(H6)が成り立つ。source crosswalk の規約では、これはu,vに関する六次モジュラー関係であり、λだけの消去式ではない。
証明. この六次関係の theta 級数による有限係数計算は、E4 owner の§E5.24 定理 5.2が供給する。ここではその exact theorem をu=ϕ(ω)、v=ϕ(5ω)の枝 datum に適用する。従って E9 は係数の再計算を重複させず、この関係を後続の有限代数計算への入力として用いる。▨
4 六次関係から Hermite の五次恒等式
次の三因子積を定める。
Φ(ω)=[ϕ(5ω)+ϕ(ω/5)]⋅[ϕ((ω+16)/5)−ϕ((ω+4⋅16)/5)]⋅[ϕ((ω+2⋅16)/5)−ϕ((ω+3⋅16)/5)].(P)
第一因子は和であり、残る二因子は差である。Φr=Φ(ω+16r)とする。
補題 4.1.ϕ8=λ、ψ8=1−λ、(H6) および (P) の枝 datum のもとで、
Φ5−2453ϕ4ψ16Φ−2655ϕ3ψ16(1+ϕ8)=0.(H\Phi)が成り立つ。
証明. この三因子積、係数および有限係数消去は E4 owner の exact theorem§E5.24 定理 5.4が供給する。E4 の証明では、§E5.24 定義 5.1の枝 datum、§E5.24 定理 5.2の六次関係、および有限な theta 係数計算を一つの
owner interface として閉じている。したがって E9 本文では、未定義の補助多項式やローカルな
reduction table を再掲せず、その theorem の結論を exact input として採用する。これにより、
E4 が担う有限計算と、次節で E9 が担う非零尺度変換・逆向き検証が分離される。▨
5 Bring 形への尺度変換
C0=(2453)1/4ϕψ4,Φ=C0x
と置く。C04=2453ϕ4ψ16であるから、HΦをC05で割ると
x5−x−a=0,a=55/4ϕ2ψ42(1+ϕ8).(Ha)
となる。定数項の計算は
25515/4ϕ5ψ202655/2ϕ3ψ16(1+ϕ8)=55/4ϕ2ψ42(1+ϕ8)
である。A=55/4a/2、k=ϕ4、k′=ψ4として平方すると
A2=k(1−k2)(1+k2)2,k4+A2k3+2k2−A2k+1=0.(Hk)
を得る。平方は枝の符号を失うので、(Hk) の根だけを (Ha) の解とみなしてはならない。
補題 5.1.ϕψ=0の局所枝ではΦ=C0xの逆はx=Φ/C0である。
証明.C04=2453ϕ4ψ16なので、ϕψ=0ならC0=0である。乗法写像の逆は除法である。cusp ではこの chart を使用しない。▨
6 五候補の代入・相異性・全根性
定義 6.1. admissible branch datum (admissible branch datum) とは、次を同時に満たす datum である。
- r=0,…,4の各Φrが (P) の枝 lift である。
- 各rで H6 と theta 5倍変換則の reduction relations が成立する。
- 全てのrでϕr4=ϕ4、ψr4=ψ4、ϕr8=ϕ8、ψr8=ψ8とし、同じ branch lift によりB=2453ϕ4ψ16、C=2655ϕ3ψ16(1+ϕ8)を共有する。
補題 6.2. admissible branch datum の各rについて、
Φr5−BΦr−C=0が成立する。
証明. 各rについて、E4 owner の§E5.24 補題 5.5をω↦ω+16rの枝 datum に適用する。この exact theorem が、§E5.24 定義 5.1の五候補について同じB,Cを持つ共通方程式を供給する。従って E9 は reduction ideal や係数表を再構成せず、Φr5−BΦr−C=0を用いる。▨
補題 6.3. admissible branch datum、C0=0および55a4−28=0のもとで、Φ0,…,Φ4は相異なる。
証明. 二つの候補Φr=Φsがあると仮定する。尺度変換xr=Φr/C0はC0=0により単射なのでxr=xsとなる。前補題により両者はx5−x−aの根であるため、この五次式は重根をもつ。Bring 判別式の補題から55a4−28=0となるが、仮定に反する。▨
定理 6.4. admissible branch datum があり、C0=0、55a4−28=0とする。このときΦ0,…,Φ4はY5−BY−Cの五根を尽くし、xr=Φr/C0はx5−x−a=0の五根を尽くす。
証明. 前補題により五候補は同じ五次多項式Y5−BY−Cの根であり、相異性補題により相異なる。次数5の多項式は高々5個の根しかもたないので、五候補は全根である。C0による非零尺度変換は根の相異性と個数を保ち、(Ha) により尺度後の方程式はx5−x−a=0である。従ってxrはその五根を尽くす。▨
この結論は大域的な一価枝の存在を意味しない。係数平面
Ua={a∈C∣55a4−28=0}
では、基点からの解析接続が閉路に依存し、五根を置換する。これは解析的モノドロミーであり、係数体の算術的 Galois 群とは別の作用である。
7 第24記事の exact inverse と例外分岐
R(Z)=Z5+d1Z+d0の判別式が零なら Hermite chart へ送らず、第24記事の squarefree image と
fiber gcd へ戻る。d1=0またはd0=0なら、Z5=−d0またはZ(Z4+d1)=0を代数的終端として扱う。非衝突でd1d0=0の場合だけ、Hermite のxrを尺度の逆でzrに戻し、
Xr=U2(U4(zr))−5a4.(Inv)
とする。
定理 7.1. 第24記事の非衝突 Bring 終端の exact inverse が定義され、admissible branch datum があるとする。
(Inv) の五つの値は入力五次多項式の五根を相異なる順序で尽くす。
証明. 第24記事の Bring inverse と principal inverse は、それぞれの補間行列が非特異であるため根集合上の全単射である。その剰余合同式を合成すると、(Inv) は Bring 終端の根集合から入力の根集合への写像となる。両集合は五元集合であり、合成は単射なので全単射である。平行移動の逆X=U−a4/5も一対一である。像判別式が零の枝では補間行列が特異になり得るので、(Inv) を使わず fiber gcd へ分岐する。
fiber の次数和は5であり、次数4以下の方程式から重複度を含む全根を回収できる。▨
8 演習
問題 8.1 (問題).
- HΦにΦ=C0xを代入し、(Ha) の5−5/4を再計算せよ。
- A=0の (Hk) を因数分解し、Bring 判別式との違いを説明せよ。
- 五候補の一致が Bring 判別式零を導くことを証明せよ。
- 補間行列が特異な枝を fiber gcd へ送る理由を述べよ。
解答 (解答).
- C04=2453ϕ4ψ16を用いると線形項は−x、定数項は2(1+ϕ8)/(55/4ϕ2ψ4)になる。
- A=0では(k2+1)2であるが、x5−xは相異なる五根をもつ。
- 一致は像多項式の判別式を零にし、非零尺度後の Bring 多項式の判別式を零にする。
- 特異行列は単値補間逆を与えないため、fiber ごとの gcd が根を次数4以下へ分ける。
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9 境界
本記事は theta 函数と modular lambda の基本定理を前提記事から取り込む。compactification 上の cusp の全局所座標、任意の係数平面上の一価な枝、およびその大域的なモノドロミー分類は主張しない。PRF-002 に対応する係数空間からの大域的 lift は未解決であり、PRF-004 に対応する第24記事の repository-current closure も未解決である。本文が構成したのは、非判別式 locus 上で branch datum を固定した局所 Hermite 解と、第24記事の exact inverse による元の五根への復元である。