§E5.24楕円積分と楕円函数への展望

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円の弧長に現れる積分は三角関数によって逆にすることができる。これに対して、四つの相異なる分岐点をもつ Legendre 標準形の積分からは、実周期と虚周期をもつ Jacobi の楕円函数が生じる。theta 函数は、この二重周期性を収束する級数と積によって表し、楕円積分の局所逆函数を複素平面上の有理型関数へ延ばす。

本記事は、完全楕円積分、theta 解析、Jacobi の楕円函数、modular lambda 函数の level 2 変換、および level 5 の Hermite 恒等式を扱う。最後の話題では、theta 積が定める枝から Jacobi の五次有理変換を導き、五つの三因子積を一つの五次方程式の根として記述する。

本記事を通じて用いる記号と規約を、はじめにまとめて置く。

注意 1 (記号と枝の規約). 上半平面と nome を

H={τ∈C:Im⁡τ>0},q=eπiτ \mathbb H=\{\tau\in\mathbb C:\operatorname{Im}\tau>0\},\qquad q=e^{\pi i\tau}

と置く。theta 函数の変数をzzとし、その基本的な準周期をπ\piとπτ\pi\tauに取る。kkは楕円積分の modulus、m=k2m=k^{2}は parameter であり、両者を同一視しない。qqの分数冪は多価であるから、実数α\alphaに対して

qα:=eπiτα q^{\alpha}:=e^{\pi i\tau\alpha}

と読む約束を置く。この約束の下では、実数α,β\alpha,\betaに対してqαqβ=qα+βq^{\alpha}q^{\beta}=q^{\alpha+\beta}が成り立ち、本記事に現れるq1/4q^{1/4}とq(n+1/2)2q^{(n+1/2)^{2}}は一意に定まる。

1 完全楕円積分と周期比

0<k<10<k<1に対する Legendre 標準形では、単位円板上の平方根の枝によって第一種楕円積分を定めることができる。完全楕円積分K(k)K(k)と補完全楕円積分K′(k)K'(k)の比は、Jacobi の楕円函数の周期比を与える。

補題 1.1.0<k<10<k<1とし、D={z∈C:∣z∣<1}D=\{z\in\mathbb C:|z|<1\}と置く。DDの上で1−z21-z^{2}と1−k2z21-k^{2}z^{2}は零をもたない。また、DDの上の正則関数ϱ\varrhoで

ϱ(z)2=(1−z2)(1−k2z2),ϱ(0)=1 \varrho(z)^{2}=(1-z^{2})(1-k^{2}z^{2}),\qquad \varrho(0)=1

を満たすものがただ一つ存在する。このϱ\varrhoはDDの上で零を取らず、0≤x<10\le x<1ではϱ(x)\varrho(x)は正の平方根(1−x2)(1−k2x2)\sqrt{(1-x^{2})(1-k^{2}x^{2})}に一致する。さらに1/ϱ1/\varrhoはDDの上に正則な原始関数をもつ。

証明.∣z∣<1|z|<1ならば∣z2∣<1|z^{2}|<1かつ∣k2z2∣<k2<1|k^{2}z^{2}|<k^{2}<1であるから、1−z21-z^{2}と1−k2z21-k^{2}z^{2}はどちらも零ではなく、円板{w∈C:∣w−1∣<1}\{w\in\mathbb C:|w-1|<1\}に属する。この円板は切断平面D0=C∖(−∞,0]D_{0}=\mathbb C\setminus(-\infty,0]に含まれるので、対数の主値(§E5.3 定義 2.7)を用いて

ϱ(z)=exp⁡ ⁣(Log⁡(1−z2)+Log⁡(1−k2z2)2) \varrho(z)=\exp\!\left( \frac{\operatorname{Log}(1-z^{2})+\operatorname{Log}(1-k^{2}z^{2})}2\right)

と置くことができる。§E5.3 命題 2.10によりLog⁡\operatorname{Log}はD0D_{0}の上で正則であるから、ϱ\varrhoはDDの上で正則である。指数関数は零を取らないのでϱ\varrhoもDDの上で零を取らない。exp⁡Log⁡w=w\exp\operatorname{Log}w=wからϱ(z)2=(1−z2)(1−k2z2)\varrho(z)^{2}=(1-z^{2})(1-k^{2}z^{2})が従い、ϱ(0)=exp⁡0=1\varrho(0)=\exp0=1である。0≤x<10\le x<1では1−x21-x^{2}と1−k2x21-k^{2}x^{2}が正の実数であるから、二つの対数の主値は実数であり、ϱ(x)\varrho(x)は正の平方根に一致する。

一意性を示す。ϱ1\varrho_{1}も同じ二条件を満たすとすると、DDの上で(ϱ1/ϱ)2=1(\varrho_{1}/\varrho)^{2}=1である。商ϱ1/ϱ\varrho_{1}/\varrhoは連結なDDの上の連続関数で、その値は{1,−1}\{1,-1\}に含まれるから定数である。z=0z=0における値が11であるから、この定数は11であり、ϱ1=ϱ\varrho_{1}=\varrhoである。

最後に、ϱ\varrhoが零を取らないので1/ϱ1/\varrhoはDDの上の正則関数である。DDは00に関して星形な領域であるから、§E5.5 定理 4.1により1/ϱ1/\varrhoはDDの上に正則な原始関数をもつ。▨

定義 1.2.0<k<10<k<1とし、k′=1−k2>0k'=\sqrt{1-k^{2}}>0と置く。補題 1.1のϱ\varrhoを用いて、∣x∣<1|x|<1に対して

F(x,k)=∫0xdtϱ(t)=∫0xdt(1−t2)(1−k2t2) F(x,k)=\int_{0}^{x}\frac{dt}{\varrho(t)} =\int_{0}^{x}\frac{dt}{\sqrt{(1-t^{2})(1-k^{2}t^{2})}}

と定める。積分路は単位円板内で00とxxを結ぶ任意の区分的に滑らかな曲線とする。同補題により1/ϱ1/\varrhoは正則な原始関数をもつので、原始関数をもつ関数の積分(§E5.4 定理 4.2)により積分値は積分路によらない。第一種完全楕円積分 (complete elliptic integral of the first kind) と補完全楕円積分 (complementary complete elliptic integral) を、不定積分の実軸上の極限

K(k)=lim⁡x↑1F(x,k),K′(k)=K(k′) K(k)=\lim_{x\uparrow1}F(x,k),\qquad K'(k)=K(k')

によって定める。

命題 1.3.0<k<10<k<1に対してK(k)K(k)とK′(k)K'(k)は有限な正の実数であり、

τ(k)=iK′(k)K(k) \tau(k)=i\frac{K'(k)}{K(k)}

はH\mathbb Hに属する。さらに、K(k)K(k)はkkの狭義単調増加関数、K′(k)K'(k)は狭義単調減少関数であり、

ρ(k)=K′(k)K(k) \rho(k)=\frac{K'(k)}{K(k)}

は(0,1)(0,1)上の狭義単調減少関数である。したがって、ρ\rhoは単射である。

証明.0≤t<10\le t<1では被積分関数は正である。また1−k2t2≥1−k21-k^{2}t^{2}\ge1-k^{2}であるから、

0<1(1−t2)(1−k2t2)≤11−k21−t2. 0<\frac{1}{\sqrt{(1-t^{2})(1-k^{2}t^{2})}} \le \frac{1}{\sqrt{1-k^{2}}\sqrt{1-t^{2}}}.

右辺の[0,1][0,1]上の積分はπ/(21−k2)\pi/(2\sqrt{1-k^{2}})である。比較判定によりK(k)K(k)は有限であり、正である。同じ議論を0<k′<10<k'<1に適用するとK′(k)K'(k)も有限な正の実数である。したがってIm⁡τ(k)=K′(k)/K(k)>0\operatorname{Im}\tau(k)=K'(k)/K(k)>0である。

0<k1<k2<10<k_1<k_2<1とする。0<t<10<t<1において

1(1−t2)(1−k12t2)<1(1−t2)(1−k22t2) \frac{1}{\sqrt{(1-t^2)(1-k_1^2t^2)}} <\frac{1}{\sqrt{(1-t^2)(1-k_2^2t^2)}}

であるから、積分するとK(k1)<K(k2)K(k_1)<K(k_2)を得る。補母数は1−k12>1−k22\sqrt{1-k_1^2}>\sqrt{1-k_2^2}を満たすため、KKの狭義単調増加性からK′(k1)>K′(k2)K'(k_1)>K'(k_2)が従う。すべての量が正であるから、

ρ(k1)=K′(k1)K(k1)>K′(k2)K(k1)>K′(k2)K(k2)=ρ(k2) \rho(k_1)=\frac{K'(k_1)}{K(k_1)} >\frac{K'(k_2)}{K(k_1)} >\frac{K'(k_2)}{K(k_2)}=\rho(k_2)

である。ゆえにρ\rhoは狭義単調減少であり、単射である。▨

一般の複素数kkでは二つの平方根の分岐を指定しなければならない。本記事はこの問題を扱わず、楕円積分の定義では常に0<k<10<k<1を仮定する。

2 theta 函数の解析

Jacobi の四つの theta 函数は、指数が二次式である級数によって定まる。Gaussian 型の優級数は、C×H\mathbb C\times\mathbb Hのコンパクト集合上の正規収束、二変数の正則性、および項別微分を同時に与える。

定義 2.1.(z,τ)∈C×H(z,\tau)\in\mathbb C\times\mathbb Hとq=eπiτq=e^{\pi i\tau}に対して、注意 1のqα=eπiταq^{\alpha}=e^{\pi i\tau\alpha}の約束の下で

ϑ1(z,τ)=−i∑n∈Z(−1)nq(n+1/2)2e(2n+1)iz,ϑ2(z,τ)=∑n∈Zq(n+1/2)2e(2n+1)iz,ϑ3(z,τ)=∑n∈Zqn2e2niz,ϑ4(z,τ)=∑n∈Z(−1)nqn2e2niz\begin{aligned} \vartheta _1(z,\tau) &=-i\sum_{n\in\mathbb Z}(-1)^nq^{(n+1/2)^2}e^{(2n+1)iz},\\ \vartheta _2(z,\tau) &=\sum_{n\in\mathbb Z}q^{(n+1/2)^2}e^{(2n+1)iz},\\ \vartheta _3(z,\tau) &=\sum_{n\in\mathbb Z}q^{n^2}e^{2niz},\\ \vartheta _4(z,\tau) &=\sum_{n\in\mathbb Z}(-1)^nq^{n^2}e^{2niz} \end{aligned}

と定める。これらをJacobi の四つの theta 函数 (Jacobi theta functions) という。theta 定数 (theta constants) を

a(τ)=ϑ2(0,τ),b(τ)=ϑ3(0,τ),c(τ)=ϑ4(0,τ) a(\tau)=\vartheta _2(0,\tau),\qquad b(\tau)=\vartheta _3(0,\tau),\qquad c(\tau)=\vartheta _4(0,\tau)

と書く。

theta 級数はC×H\mathbb C\times\mathbb Hの部分集合の上の複素数値関数の族であり、添字はZ\mathbb Zを動く。優級数による一様収束の判定をこの形で使うために、次の補題を先に置く。

補題 2.2.SSを空でない集合とし、un:S→Cu_{n}:S\to\mathbb C(n∈Zn\in\mathbb Z)とする。非負の実数の族(Mn)n∈Z(M_{n})_{n\in\mathbb Z}が、すべてのn∈Zn\in\mathbb Zとすべてのp∈Sp\in Sについて∣un(p)∣≤Mn|u_{n}(p)|\le M_{n}を満たし、かつ部分和TN=∑n=−NNMnT_{N}=\sum_{n=-N}^{N}M_{n}がN→∞N\to\inftyで有限の極限TTをもつとする。このとき、各p∈Sp\in Sについて級数∑n∈Zun(p)\sum_{n\in\mathbb Z}u_{n}(p)は絶対収束し、部分和の列σN(p)=∑n=−NNun(p)\sigma_{N}(p)=\sum_{n=-N}^{N}u_{n}(p)はSSの上で一様収束する。

証明.p∈Sp\in Sを固定する。a0=u0(p)a_{0}=u_{0}(p)、m≥1m\ge1に対してam=um(p)+u−m(p)a_{m}=u_{m}(p)+u_{-m}(p)と置くと、∑m=0Nam=σN(p)\sum_{m=0}^{N}a_{m}=\sigma_{N}(p)である。∑m=0N∣am∣≤TN≤T\sum_{m=0}^{N}|a_{m}|\le T_{N}\le Tであり、左辺はNNについて単調増加であるから、∑m≥0∣am∣\sum_{m\ge0}|a_{m}|は収束する。したがって§E5.3 補題 1.1により(σN(p))N(\sigma_{N}(p))_{N}は収束する。その極限をu(p)u(p)と書く。同じ評価から∑n=−NN∣un(p)∣≤T\sum_{n=-N}^{N}|u_{n}(p)|\le Tであり、級数は絶対収束する。

一様収束を示す。M>NM>Nについて

∣σM(p)−σN(p)∣≤∑N<∣n∣≤MMn=TM−TN≤T−TN |\sigma_{M}(p)-\sigma_{N}(p)| \le\sum_{N<|n|\le M}M_{n}=T_{M}-T_{N}\le T-T_{N}

であるから、M→∞M\to\inftyとして∣u(p)−σN(p)∣≤T−TN|u(p)-\sigma_{N}(p)|\le T-T_{N}を得る。右辺はppに依存せず、N→∞N\to\inftyで00へ収束する。ゆえに(σN)(\sigma_{N})はSSの上でuuへ一様収束する。▨

定義域が実区間で終域が実数である場合は、各項を上から押さえる数列による判定(§D1.22 定理 5.2)にある。上の補題は定義域の形にも終域の実数性にも依存せず、C\mathbb Cにおける絶対収束級数の収束だけを用いる。

定理 2.3. 四つの theta 級数はC×H\mathbb C\times\mathbb Hの任意のコンパクト部分集合の上で正規収束する。その和は(z,τ)(z,\tau)の二変数正則関数であり、各変数について任意回項別微分することができる。

証明.L⊂C×HL\subset\mathbb C\times\mathbb Hをコンパクト集合とする。連続関数Im⁡τ\operatorname{Im}\tauはLL上で正の最小値η\etaをもち、∣Im⁡z∣|\operatorname{Im}z|は有限な最大値MMをもつ。α∈{0,1/2}\alpha\in\{0,1/2\}とすると、各項の絶対値は

∣eπiτ(n+α)2e2i(n+α)z∣≤e−πη(n+α)2+2M∣n+α∣ \left|e^{\pi i\tau(n+\alpha)^2}e^{2i(n+\alpha)z}\right| \le e^{-\pi\eta(n+\alpha)^2+2M|n+\alpha|}

で抑えられる。右辺のn∈Zn\in\mathbb Zに関する和は、二次式の負の項が一次式の項を支配するため収束する。各α∈{0,1/2}\alpha\in\{0,1/2\}について、この右辺を優級数として補題 2.2をS=LS=Lへ適用すると、四級数はLL上で一様かつ絶対収束する。zzまたはτ\tauで有限回微分した級数には∣n+α∣|n+\alpha|の多項式因子だけが加わるので、同じ Gaussian 型の優級数を用いることができる。

正則性を確かめるために、一方の変数を固定する。τ∈H\tau\in\mathbb Hを固定し、L1⊂CL_{1}\subset\mathbb Cをコンパクト集合とすると、L1×{τ}L_{1}\times\{\tau\}はC×H\mathbb C\times\mathbb Hのコンパクト集合であるから、部分和の列はL1L_{1}の上で一様収束する。各部分和はzzの整関数であるから、Weierstrass の収束定理の§E5.17 定理 2.1 (1)により和はzzの整関数であり、§E5.17 定理 2.1 (2)によりzzに関する項別微分を任意回行うことができる。z∈Cz\in\mathbb Cを固定した場合も、H\mathbb Hのコンパクト集合L2L_{2}に対して{z}×L2\{z\}\times L_{2}を取れば同じ議論が成り立ち、和はτ\tauについてH\mathbb Hの上で正則であり、τ\tauに関する項別微分を任意回行うことができる。

和をffと書き、その一階偏導関数をfzf_{z}、fτf_{\tau}と書く。この二つが二変数の関数として連続であることを確かめる。項別微分が正当化されたので、zzまたはτ\tauで一度微分した級数の和はそれぞれfzf_{z}、fτf_{\tau}に等しい。第一段落によりこれらの級数はC×H\mathbb C\times\mathbb Hの任意のコンパクト集合の上で一様収束し、その部分和は有限和であるから(z,τ)(z,\tau)の二変数連続関数である。C×H\mathbb C\times\mathbb Hの各点はC×H\mathbb C\times\mathbb Hに含まれるコンパクトな近傍(閉円板の積)をもつから、fzf_{z}とfτf_{\tau}はその近傍の上で連続関数列の一様収束の極限であり、したがってC×H\mathbb C\times\mathbb Hの全体で二変数について連続である。

以上のもとで、十分小さいh,ℓ∈Ch,\ell\in\mathbb Cに対して線分上の微積分の基本定理から

f(z+h,τ+ℓ)−f(z,τ)=h∫01fz(z+th,τ+ℓ) dt+ℓ∫01fτ(z,τ+tℓ) dt=hfz(z,τ)+ℓfτ(z,τ)+o(∣h∣+∣ℓ∣)\begin{aligned} f(z+h,\tau+\ell)-f(z,\tau) &=h\int_0^1f_z(z+th,\tau+\ell)\,dt +\ell\int_0^1f_\tau(z,\tau+t\ell)\,dt\\ &=h f_z(z,\tau)+\ell f_\tau(z,\tau)+o(|h|+|\ell|) \end{aligned}

である。したがってffは二変数について複素 Fréchet 微分可能であり、正則である。▨

命題 2.4.z∈Cz\in\mathbb C、τ∈H\tau\in\mathbb H、j=1,2,3,4j=1,2,3,4とする。第一の準周期について

ϑ1ϑ2ϑ3ϑ4z↦z+π−−++\begin{array}{c|rrrr} &\vartheta _1&\vartheta _2&\vartheta _3&\vartheta _4\\ \hline z\mapsto z+\pi&-&-&+&+ \end{array}

が成り立つ。表の符号はϑj(z+π,τ)\vartheta_j(z+\pi,\tau)とϑj(z,τ)\vartheta_j(z,\tau)の比を表す。第二の準周期について

ϑ1(z+πτ,τ)=−q−1e−2izϑ1(z,τ),ϑ2(z+πτ,τ)=q−1e−2izϑ2(z,τ),ϑ3(z+πτ,τ)=q−1e−2izϑ3(z,τ),ϑ4(z+πτ,τ)=−q−1e−2izϑ4(z,τ)\begin{aligned} \vartheta _1(z+\pi\tau,\tau)&=-q^{-1}e^{-2iz}\vartheta _1(z,\tau),\\ \vartheta _2(z+\pi\tau,\tau)&= q^{-1}e^{-2iz}\vartheta _2(z,\tau),\\ \vartheta _3(z+\pi\tau,\tau)&= q^{-1}e^{-2iz}\vartheta _3(z,\tau),\\ \vartheta _4(z+\pi\tau,\tau)&=-q^{-1}e^{-2iz}\vartheta _4(z,\tau) \end{aligned}

が成り立つ。また、Tτ=τ+1T\tau=\tau+1に対して

ϑ1(z,τ+1)=eπi/4ϑ1(z,τ),ϑ2(z,τ+1)=eπi/4ϑ2(z,τ),ϑ3(z,τ+1)=ϑ4(z,τ),ϑ4(z,τ+1)=ϑ3(z,τ)\begin{aligned} \vartheta _1(z,\tau+1)&=e^{\pi i/4}\vartheta _1(z,\tau),& \vartheta _2(z,\tau+1)&=e^{\pi i/4}\vartheta _2(z,\tau),\\ \vartheta _3(z,\tau+1)&=\vartheta _4(z,\tau),& \vartheta _4(z,\tau+1)&=\vartheta _3(z,\tau) \end{aligned}

が成り立つ。

証明.zzをz+πz+\piに替えると、指数因子e2i(n+α)ze^{2i(n+\alpha)z}にe2πi(n+α)e^{2\pi i(n+\alpha)}が掛かる。α=1/2\alpha=1/2の前二式ではこの因子は−1-1、α=0\alpha=0の後二式では11である。

zzをz+πτz+\pi\tauに替えた級数では、e2πiτ(n+α)e^{2\pi i\tau(n+\alpha)}を二次指数へ吸収し、添字をn+1n+1に移す。例えば

∑n∈Zqn2e2ni(z+πτ)=q−1e−2iz∑m∈Zqm2e2miz \sum_{n\in\mathbb Z}q^{n^2}e^{2ni(z+\pi\tau)} =q^{-1}e^{-2iz}\sum_{m\in\mathbb Z}q^{m^2}e^{2miz}

である。(−1)n(-1)^nの有無と半整数の指数を同じ計算で追跡すると四式を得る。最後にeπi(n+1/2)2=eπi/4e^{\pi i(n+1/2)^2}=e^{\pi i/4}およびeπin2=(−1)ne^{\pi in^2}=(-1)^nを各級数へ代入すると、TTに関する四式を得る。すべての添字変更は正規収束により正当化される。▨

命題 2.5.z∈Cz\in\mathbb C、τ∈H\tau\in\mathbb Hとする。ϑ1\vartheta _1はzzの奇関数であり、ϑ2\vartheta _2、ϑ3\vartheta _3、ϑ4\vartheta _4はzzの偶関数である。すなわち

ϑ1(−z,τ)=−ϑ1(z,τ),ϑj(−z,τ)=ϑj(z,τ)(j=2,3,4) \vartheta _1(-z,\tau)=-\vartheta _1(z,\tau),\qquad \vartheta _j(-z,\tau)=\vartheta _j(z,\tau)\quad(j=2,3,4)

が成り立つ。とくにϑ1(0,τ)=0\vartheta _1(0,\tau)=0である。

証明.ϑ3\vartheta _3とϑ4\vartheta _4の級数でzzを−z-zに替え、添字をnnから−n-nへ移す。q(−n)2=qn2q^{(-n)^2}=q^{n^2}と(−1)−n=(−1)n(-1)^{-n}=(-1)^nであり、指数因子はe2nize^{2niz}に戻るので、二つの級数はもとの級数に一致する。

ϑ1\vartheta _1とϑ2\vartheta _2の級数でzzを−z-zに替え、添字をnnから−n−1-n-1へ移す。(−n−1)+1/2=−(n+1/2)(-n-1)+1/2=-(n+1/2)であるから二次の指数は変わらず、2(−n−1)+1=−(2n+1)2(-n-1)+1=-(2n+1)であるから指数因子はe(2n+1)ize^{(2n+1)iz}に戻る。ϑ2\vartheta _2にはほかに符号の因子がないのでϑ2(−z,τ)=ϑ2(z,τ)\vartheta _2(-z,\tau)=\vartheta _2(z,\tau)である。ϑ1\vartheta _1では(−1)−n−1=−(−1)n(-1)^{-n-1}=-(-1)^{n}であるから、全体の符号が反転してϑ1(−z,τ)=−ϑ1(z,τ)\vartheta _1(-z,\tau)=-\vartheta _1(z,\tau)を得る。添字の移動は正規収束(定理 2.3)により正当化される。z=0z=0を代入するとϑ1(0,τ)=−ϑ1(0,τ)\vartheta _1(0,\tau)=-\vartheta _1(0,\tau)であるからϑ1(0,τ)=0\vartheta _1(0,\tau)=0である。▨

Poisson の和公式と虚数変換のために、四つの theta 級数を一つの族

Θα,β(z,τ)=∑n∈Zeπiτ(n+α)2+2i(n+α)(z+πβ)(α,β∈{0,1/2}) \Theta_{\alpha,\beta}(z,\tau)=\sum_{n\in\mathbb Z} e^{\pi i\tau(n+\alpha)^{2}+2i(n+\alpha)(z+\pi\beta)} \qquad(\alpha,\beta\in\{0,1/2\})

へまとめる。α\alphaは格子の平行移動、β\betaは指数因子の平行移動に対応し、Poisson の和公式はこの二つを入れ替える。

定義 2.6. 右半平面R={w∈C:Re⁡w>0}R=\{w\in\mathbb C:\operatorname{Re}w>0\}では−π/2<Arg⁡Rw<π/2-\pi/2<\operatorname{Arg}_R w<\pi/2とし、

σ(w)=exp⁡ ⁣(log⁡∣w∣+iArg⁡Rw2) \sigma(w)=\exp\!\left(\frac{\log|w|+i\operatorname{Arg}_R w}{2}\right)

と定める。τ∈H\tau\in\mathbb Hに対しては−iτ∈R-i\tau\in Rであるから、

s(τ)=σ(−iτ) s(\tau)=\sigma(-i\tau)

と定めることができる。このssを虚数変換に用いる平方根の枝 (square-root branch for the imaginary transformation) という。

命題 2.7.定義 2.6のσ\sigmaとssについて、次が成り立つ。

  1. σ\sigmaはRRの上で正則であり、σ(w)2=w\sigma(w)^{2}=wを満たし、正の実軸の上で正値を取る。
  2. ssはH\mathbb Hの上の正則関数であり、s(τ)2=−iτs(\tau)^{2}=-i\tauとs(it)=ts(it)=\sqrt t(t>0t>0)を満たす。
  3. s1(τ)2=−iτs_{1}(\tau)^{2}=-i\tauとs1(it)=ts_{1}(it)=\sqrt t(t>0t>0)を満たすH\mathbb Hの上の正則関数s1s_{1}は、ssに限る。

証明.(1)を示す。w∈Rw\in Rに対してArg⁡Rw\operatorname{Arg}_R wは偏角の主値(§E5.3 定義 2.7)と一致し、R⊂D0=C∖(−∞,0]R\subset D_{0}=\mathbb C\setminus(-\infty,0]であるから、σ(w)=exp⁡(12Log⁡w)\sigma(w)=\exp(\tfrac12\operatorname{Log}w)である。§E5.3 命題 2.10によりLog⁡\operatorname{Log}はD0D_{0}の上で正則であるから、σ\sigmaはRRの上で正則である。σ(w)2=exp⁡(Log⁡w)=w\sigma(w)^{2}=\exp(\operatorname{Log}w)=wであり、w>0w>0ではLog⁡w=ln⁡w\operatorname{Log}w=\ln wが実数であるからσ(w)=e(ln⁡w)/2>0\sigma(w)=e^{(\ln w)/2}>0である。

(2)を示す。τ∈H\tau\in\mathbb Hに対して−iτ-i\tauの実部はIm⁡τ>0\operatorname{Im}\tau>0に等しいから、−iτ∈R-i\tau\in Rである。写像τ↦−iτ\tau\mapsto-i\tauは正則であるから、合成ssはH\mathbb Hの上で正則である。(1)によりs(τ)2=−iτs(\tau)^{2}=-i\tauである。τ=it\tau=it(t>0t>0)では−iτ=t>0-i\tau=t>0であるから、(1)によりs(it)=σ(t)=ts(it)=\sigma(t)=\sqrt tである。

(3)を示す。s1s_{1}もH\mathbb Hの上の正則関数で、s1(τ)2=−iτs_{1}(\tau)^{2}=-i\tauとs1(it)=ts_{1}(it)=\sqrt tを満たすとする。τ∈H\tau\in\mathbb Hでは−iτ≠0-i\tau\ne0であるからssは零を取らず、商s1/ss_{1}/sはH\mathbb Hの上の連続関数である。(s1/s)2=1(s_{1}/s)^{2}=1であるから、その値は{1,−1}\{1,-1\}に含まれる。H\mathbb Hは連結であるからs1/ss_{1}/sは定数であり、正の虚軸の上で11に等しい。ゆえにs1=ss_{1}=sである。▨

補題 2.8 (Gaussian 関数に対する Poisson の和公式).A,w∈CA,w\in\mathbb CがRe⁡A>0\operatorname{Re}A>0を満たすとし、

h(x)=e−πAx2+2wx(x∈R) h(x)=e^{-\pi Ax^{2}+2wx}\qquad(x\in\mathbb R)

と置く。Fourier 変換をh^(m)=∫Rh(x)e−2πimx dx\widehat h(m)=\int_{\mathbb R}h(x)e^{-2\pi imx}\,dxと定める。定義 2.6のσ\sigmaを用いてA−1/2=σ(A)−1A^{-1/2}=\sigma(A)^{-1}と書く。第一に、Gaussian 積分は

∫Re−πAx2+2wx dx=A−1/2ew2/(πA) \int_{\mathbb R}e^{-\pi Ax^{2}+2wx}\,dx=A^{-1/2}e^{w^{2}/(\pi A)}

を満たし、とくにh^(m)=A−1/2e(w−πim)2/(πA)\widehat h(m)=A^{-1/2}e^{(w-\pi im)^{2}/(\pi A)}である。第二に、任意のα∈R\alpha\in\mathbb Rに対して

∑n∈Zh(n+α)=∑m∈Ze2πimαh^(m) \sum_{n\in\mathbb Z}h(n+\alpha) =\sum_{m\in\mathbb Z}e^{2\pi im\alpha}\widehat h(m)

が成り立つ。両辺の級数は絶対収束する。

証明. まずRe⁡A>0\operatorname{Re}A>0に対して

∫Re−πAx2 dx=A−1/2 \int_{\mathbb R}e^{-\pi Ax^{2}}\,dx=A^{-1/2}

を示す。A>0A>0が実数のとき、A=1A=1への変数変換と、二重積分を極座標で計算する等式

(∫Re−πx2 dx)2=∫02π∫0∞e−πr2r dr dθ=1 \left(\int_{\mathbb R}e^{-\pi x^{2}}\,dx\right)^{2} =\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\infty}e^{-\pi r^{2}}r\,dr\,d\theta=1

から従う。Re⁡A>0\operatorname{Re}A>0では積分とそのAAによる導関数がコンパクト集合ごとに可積分な Gaussian 関数で抑えられるため、左辺はAAの正則関数である。右辺のA−1/2=σ(A)−1A^{-1/2}=\sigma(A)^{-1}も命題 2.7 (1)により右半平面の上で正則であり、正の実軸の上で両辺は一致する。正則関数の一致の定理(§E5.8 定理 3.1)により、等式は右半平面全体で成り立つ。

次に一次項を含む場合を示す。Re⁡A>0\operatorname{Re}A>0を固定すると、wwを含む積分は部分積分により微分方程式

ddw∫Re−πAx2+2wx dx=2wπA∫Re−πAx2+2wx dx \frac{d}{dw}\int_{\mathbb R}e^{-\pi Ax^{2}+2wx}\,dx =\frac{2w}{\pi A}\int_{\mathbb R}e^{-\pi Ax^{2}+2wx}\,dx

を満たす。w=0w=0における値は前段のA−1/2A^{-1/2}であるから、解はA−1/2ew2/(πA)A^{-1/2}e^{w^{2}/(\pi A)}である。e−2πimxe^{-2\pi imx}を掛けることはwwをw−πimw-\pi imに替えることであるから、h^(m)=A−1/2e(w−πim)2/(πA)\widehat h(m)=A^{-1/2}e^{(w-\pi im)^{2}/(\pi A)}を得る。この計算は実軸を複素平面内で平行移動することを必要としない。

最後に和公式を示す。G(x)=∑n∈Zh(x+n)G(x)=\sum_{n\in\mathbb Z}h(x+n)と置く。実数xxに対して

∣h(x)∣=e−π(Re⁡A)x2+2(Re⁡w)x |h(x)|=e^{-\pi(\operatorname{Re}A)x^{2}+2(\operatorname{Re}w)x}

であり、二次式の負の項が一次式の項を支配するから、この級数とxxに関する導関数列は[0,1][0,1]上で一様収束する。したがってGGは連続な11周期関数であり、そのmm番目の Fourier 係数は、絶対収束による和と積分の交換および区間の分割から

∫01G(x)e−2πimx dx=∫Rh(x)e−2πimx dx=h^(m) \int_{0}^{1}G(x)e^{-2\pi imx}\,dx =\int_{\mathbb R}h(x)e^{-2\pi imx}\,dx=\widehat h(m)

である。(w−πim)2/(πA)(w-\pi im)^{2}/(\pi A)の実部は−πm2Re⁡(A)/∣A∣2-\pi m^{2}\operatorname{Re}(A)/|A|^{2}を主要項にもつので、h^(m)\widehat h(m)も Gaussian 型に減衰し、その Fourier 級数は一様収束する。GGとこの Fourier 級数との差は連続な周期関数であり、すべての Fourier 係数が零である。この差を Fejér 核

ΦN(x)=1N(sin⁡πNxsin⁡πx)2 \Phi_N(x)=\frac1N\left(\frac{\sin \pi Nx}{\sin\pi x}\right)^2

と畳み込むと常に零になる。一方、ΦN≥0\Phi_N\ge0、∫01ΦN=1\int_0^1\Phi_N=1であり、任意の0<δ<1/20<\delta<1/2に対してδ≤∣x∣≤1/2\delta\le |x|\le1/2上の積分はN→∞N\to\inftyで零へ収束する。連続周期関数の一様連続性を用いると Fejér 平均はもとの関数へ一様収束するので、差は恒等的に零である。すなわちすべてのx∈Rx\in\mathbb RについてG(x)=∑m∈Zh^(m)e2πimxG(x)=\sum_{m\in\mathbb Z}\widehat h(m)e^{2\pi imx}が成り立つ。x=αx=\alphaを代入すると主張の和公式を得る。両辺の絶対収束は、上に述べたhhとh^\widehat hの Gaussian 型の減衰による。▨

定理 2.9.z∈Cz\in\mathbb C、τ∈H\tau\in\mathbb Hとし、定義 2.6のs(τ)s(\tau)を用いる。このとき

ϑ1(z/τ,−1/τ)=−is(τ)eiz2/(πτ)ϑ1(z,τ),ϑ2(z/τ,−1/τ)=s(τ)eiz2/(πτ)ϑ4(z,τ),ϑ3(z/τ,−1/τ)=s(τ)eiz2/(πτ)ϑ3(z,τ),ϑ4(z/τ,−1/τ)=s(τ)eiz2/(πτ)ϑ2(z,τ)\begin{aligned} \vartheta _1(z/\tau,-1/\tau) &=-i s(\tau)e^{iz^{2}/(\pi\tau)}\vartheta _1(z,\tau),\\ \vartheta _2(z/\tau,-1/\tau) &=s(\tau)e^{iz^{2}/(\pi\tau)}\vartheta _4(z,\tau),\\ \vartheta _3(z/\tau,-1/\tau) &=s(\tau)e^{iz^{2}/(\pi\tau)}\vartheta _3(z,\tau),\\ \vartheta _4(z/\tau,-1/\tau) &=s(\tau)e^{iz^{2}/(\pi\tau)}\vartheta _2(z,\tau) \end{aligned}

が成り立つ。

証明.α,β∈{0,1/2}\alpha,\beta\in\{0,1/2\}に対して

Θα,β(z,τ)=∑n∈Zeπiτ(n+α)2+2i(n+α)(z+πβ) \Theta_{\alpha,\beta}(z,\tau)= \sum_{n\in\mathbb Z} e^{\pi i\tau(n+\alpha)^2+2i(n+\alpha)(z+\pi\beta)}

と置く。Θα,β(z/τ,−1/τ)\Theta_{\alpha,\beta}(z/\tau,-1/\tau)の和へ補題 2.8を適用するため、

h(x)=exp⁡ ⁣(−πiτx2+2ix(zτ+πβ)) h(x)=\exp\!\left(-\frac{\pi i}{\tau}x^2 +2ix\left(\frac z\tau+\pi\beta\right)\right)

と置く。このhhはA=i/τA=i/\tau、w=i{z/τ+πβ}w=i\{z/\tau+\pi\beta\}としたh(x)=e−πAx2+2wxh(x)=e^{-\pi Ax^{2}+2wx}の形である。i/τ=iτ‾/∣τ∣2i/\tau=i\overline\tau/|\tau|^{2}の実部はIm⁡τ/∣τ∣2\operatorname{Im}\tau/|\tau|^{2}に等しく、τ∈H\tau\in\mathbb Hでは正であるから、同補題の仮定を満たす。 Fourier 変換を同補題と同じ規約で取ると、平方完成により

h^(m)=∫Rexp⁡ ⁣(−πiτx2+2ix(zτ+π(β−m)))dx=s(τ)eiz2/(πτ)eπiτ(m−β)2−2i(m−β)z\begin{aligned} \widehat h(m) &=\int_{\mathbb R}\exp\!\left( -\frac{\pi i}{\tau}x^2 +2ix\left(\frac z\tau+\pi(\beta-m)\right)\right)dx\\ &=s(\tau)e^{iz^2/(\pi\tau)} e^{\pi i\tau(m-\beta)^2-2i(m-\beta)z} \end{aligned}

を得る。実際、A=i/τA=i/\tauとw=i{z/τ+π(β−m)}w=i\{z/\tau+\pi(\beta-m)\}を補題 2.8の Gaussian 積分A−1/2ew2/(πA)A^{-1/2}e^{w^2/(\pi A)}へ代入すると、指数は

iz2πτ+2iz(β−m)+πiτ(m−β)2 \frac{iz^2}{\pi\tau}+2iz(\beta-m)+\pi i\tau(m-\beta)^2

となる。係数についてはA−1/2=s(τ)A^{-1/2}=s(\tau)である。実際、σ(i/τ)2=i/τ=s(τ)−2\sigma(i/\tau)^{2}=i/\tau=s(\tau)^{-2}であるから、H\mathbb Hの上の連続関数σ(i/τ)s(τ)\sigma(i/\tau)s(\tau)の値は{1,−1}\{1,-1\}に含まれる。H\mathbb Hは連結であるからこの関数は定数であり、τ=it\tau=itではσ(1/t)t=1\sigma(1/t)\sqrt t=1である。ゆえにσ(i/τ)=s(τ)−1\sigma(i/\tau)=s(\tau)^{-1}、すなわちA−1/2=σ(A)−1=s(τ)A^{-1/2}=\sigma(A)^{-1}=s(\tau)である。

格子をZ+α\mathbb Z+\alphaだけ平行移動した Poisson の和公式(補題 2.8)は

∑n∈Zh(n+α)=∑m∈Ze2πimαh^(m) \sum_{n\in\mathbb Z}h(n+\alpha) =\sum_{m\in\mathbb Z}e^{2\pi im\alpha}\widehat h(m)

である。右辺でr=−mr=-mと置くと、格子移動の因子はe−2πirαe^{-2\pi ir\alpha}となる。一方、

e2πiαβe2i(r+β)(z−πα)=e−2πirαe2i(r+β)z e^{2\pi i\alpha\beta} e^{2i(r+\beta)(z-\pi\alpha)} =e^{-2\pi ir\alpha}e^{2i(r+\beta)z}

である。したがって、

Θα,β(z/τ,−1/τ)=s(τ)eiz2/(πτ)e2πiαβΘβ,−α(z,τ) \Theta_{\alpha,\beta}(z/\tau,-1/\tau) =s(\tau)e^{iz^2/(\pi\tau)}e^{2\pi i\alpha\beta} \Theta_{\beta,-\alpha}(z,\tau)

を得る。正規収束により、格子の平行移動、積分との交換、および添字変更は正当化される。

Θ0,0=ϑ3\Theta_{0,0}=\vartheta _3、Θ1/2,0=ϑ2\Theta_{1/2,0}=\vartheta _2、Θ0,1/2=ϑ4\Theta_{0,1/2}=\vartheta _4である。またΘ1/2,1/2=−ϑ1\Theta_{1/2,1/2}=-\vartheta _1、Θ1/2,−1/2=ϑ1\Theta_{1/2,-1/2}=\vartheta _1である。四組の(α,β)(\alpha,\beta)を上の変換公式へ代入すると主張の四式を得る。(α,β)=(1/2,1/2)(\alpha,\beta)=(1/2,1/2)では左辺が−ϑ1(z/τ,−1/τ)-\vartheta _1(z/\tau,-1/\tau)、右辺の theta 函数がΘ1/2,−1/2=ϑ1\Theta_{1/2,-1/2}=\vartheta _1であり、e2πi(1/2)(1/2)=ie^{2\pi i(1/2)(1/2)}=iである。したがって、左辺の符号を移すと係数は−i-iになる。平方根の枝は命題 2.7 (3)により一意であるため、四式で同じs(τ)s(\tau)が現れる。▨

Jacobi の三重積は、theta 函数の積表示から零点とその単純性を読み取る手段を与える。二倍公式からは theta 定数の四次恒等式が従い、Wronskian 型の恒等式は Jacobi の楕円函数の導関数を決定する。

補題 2.10 (Durfee 正方形による分割母関数の分解).QQを形式変数とする。(Q;Q)j=∏r=1j(1−Qr)(Q;Q)_j=\prod_{r=1}^{j}(1-Q^r)、(Q;Q)0=1(Q;Q)_0=1と書くと、形式的冪級数として

1(Q;Q)∞=∑j=0∞Qj2(Q;Q)j2 \frac1{(Q;Q)_\infty} =\sum_{j=0}^{\infty}\frac{Q^{j^2}}{(Q;Q)_j^2}

が成り立つ。∣Q∣<1|Q|<1では、両辺は絶対収束する解析関数としても一致する。

証明. 分割とは、正の整数の有限な非増加列μ1≥⋯≥μℓ>0\mu_1\ge\cdots\ge\mu_\ell>0であり、その大きさを∣μ∣=∑rμr|\mu|=\sum_r\mu_rとする。各行に左からμr\mu_r個の箱を並べた図を Ferrers 図という。1/(Q;Q)∞=∏r≥1(1−Qr)−11/(Q;Q)_\infty=\prod_{r\ge1}(1-Q^r)^{-1}では、因子(1−Qr)−1(1-Q^r)^{-1}のQrmQ^{rm}が大きさrrの部分をmm個選ぶことを表すため、QnQ^nの係数は大きさnnの分割の個数である。

Ferrers 図の左上隅に入る最大の正方形を Durfee 正方形といい、その一辺をjjとする。この正方形はQj2Q^{j^2}に寄与する。正方形の右側の図は高々jj行をもち、下側の図は各行の長さが高々jjである。 Ferrers 図を主対角線で転置する共役操作により、高々jj行の分割と各行の長さが高々jjの分割は全単射に対応する。後者では大きさ1,…,j1,\ldots,jの各部分の個数を独立に選ぶことができるため、その母関数は

∏r=1j11−Qr=1(Q;Q)j \prod_{r=1}^{j}\frac1{1-Q^r}=\frac1{(Q;Q)_j}

である。したがって、右側と下側の二つの図はそれぞれ1/(Q;Q)j1/(Q;Q)_jを与える。Durfee 正方形の一辺と二つの残余図から元の Ferrers 図を一意に復元することができるため、jjについて和を取れば主張の形式的等式を得る。∣Q∣<1|Q|<1では、各係数が非負である実変数0≤∣Q∣<10\le |Q|<1における母関数の収束を優級数として用いると、両辺は絶対収束し、形式的等式は解析的等式を与える。▨

補題 2.11 (Jacobi の三重積).∣q∣<1|q|<1とw≠0w\ne0に対して

∑n∈Zqn2wn=∏r=1∞(1−q2r)(1+q2r−1w)(1+q2r−1w−1) \sum_{n\in\mathbb Z}q^{n^{2}}w^{n} =\prod_{r=1}^{\infty}(1-q^{2r})(1+q^{2r-1}w)(1+q^{2r-1}w^{-1})

が成り立つ。両辺は、領域

Ω={(q,w)∈C2:∣q∣<1, w≠0} \Omega=\{(q,w)\in\mathbb C^{2}:|q|<1,\ w\ne0\}

の任意のコンパクト部分集合の上で正規収束する。すなわち、収束はwwについてだけでなくqqについても一様である。

証明.Q=q2Q=q^{2}、(Q;Q)j=∏r=1j(1−Qr)(Q;Q)_j=\prod_{r=1}^{j}(1-Q^r)、(Q;Q)0=1(Q;Q)_0=1と書く。有限個の因子からxxをjj回選ぶ場合を、その添字0≤r1<⋯<rj0\le r_1<\cdots<r_jによって分類する。差r1,r2−r1−1,…,rj−rj−1−1r_1,r_2-r_1-1,\ldots,r_j-r_{j-1}-1を独立に和を取ると

∏r=0∞(1+xQr)=∑j=0∞Qj(j−1)/2(Q;Q)jxj \prod_{r=0}^{\infty}(1+xQ^r) =\sum_{j=0}^{\infty}\frac{Q^{j(j-1)/2}}{(Q;Q)_j}x^j

を得る。この展開はまず形式的冪級数の係数の等式であり、∣Q∣<1|Q|<1では両辺がコンパクト集合上で絶対収束するため解析関数の等式でもある。

主張の右辺をP(w)P(w)と書く。上の展開をx=qwx=qwとx=qw−1x=qw^{-1}に適用すると、PPの定数項は

(Q;Q)∞∑j=0∞Qj2(Q;Q)j2=1 (Q;Q)_\infty\sum_{j=0}^{\infty}\frac{Q^{j^2}}{(Q;Q)_j^2}=1

である。最後の等式は補題 2.10による。

積の添字を一つずらすと

P(Qw)=q−1w−1P(w) P(Qw)=q^{-1}w^{-1}P(w)

となる。P(w)=∑n∈ZcnwnP(w)=\sum_{n\in\mathbb Z}c_nw^nと Laurent 展開すればcn+1=q2n+1cnc_{n+1}=q^{2n+1}c_nであり、定数項c0=1c_0=1と合わせてcn=qn2c_n=q^{n^2}を得る。

正規収束を示す。L⊂ΩL\subset\Omegaをコンパクト集合とすると、連続関数∣q∣|q|、∣w∣|w|、∣w∣−1|w|^{-1}はLLの上で最大値をもつので、∣q∣≤q0<1|q|\le q_{0}<1と∣w∣+∣w∣−1≤M0|w|+|w|^{-1}\le M_{0}を満たす定数q0q_{0}とM0M_{0}が存在する。するとLLの上で∑r∣q∣2r−1(∣w∣+∣w∣−1)≤M0∑rq02r−1<∞\sum_r |q|^{2r-1}(|w|+|w|^{-1})\le M_{0}\sum_r q_{0}^{2r-1}<\inftyである。また∣w∣≤M0|w|\le M_{0}と∣w∣−1≤M0|w|^{-1}\le M_{0}から∣q∣n2∣w∣n≤q0n2M0∣n∣|q|^{n^{2}}|w|^{n}\le q_{0}^{n^{2}}M_{0}^{|n|}であり、二次の指数が一次の指数を支配するため∑nq0n2M0∣n∣\sum_n q_{0}^{n^{2}}M_{0}^{|n|}は収束する。したがって、無限積と Laurent 級数はともにLLの上で正規収束し、Laurent 展開との比較も正当化される。▨

命題 2.12.z∈Cz\in\mathbb C、τ∈H\tau\in\mathbb H、q=eπiτq=e^{\pi i\tau}とする。このとき

ϑ1(z)=2q1/4sin⁡z∏r≥1(1−q2r)(1−2q2rcos⁡2z+q4r),ϑ2(z)=2q1/4cos⁡z∏r≥1(1−q2r)(1+2q2rcos⁡2z+q4r),ϑ3(z)=∏r≥1(1−q2r)(1+2q2r−1cos⁡2z+q4r−2),ϑ4(z)=∏r≥1(1−q2r)(1−2q2r−1cos⁡2z+q4r−2)\begin{aligned} \vartheta _1(z)&=2q^{1/4}\sin z\prod_{r\ge1}(1-q^{2r}) (1-2q^{2r}\cos2z+q^{4r}),\\ \vartheta _2(z)&=2q^{1/4}\cos z\prod_{r\ge1}(1-q^{2r}) (1+2q^{2r}\cos2z+q^{4r}),\\ \vartheta _3(z)&=\prod_{r\ge1}(1-q^{2r}) (1+2q^{2r-1}\cos2z+q^{4r-2}),\\ \vartheta _4(z)&=\prod_{r\ge1}(1-q^{2r}) (1-2q^{2r-1}\cos2z+q^{4r-2}) \end{aligned}

が成り立つ。ここでは各 theta 函数の第二変数を省略した。また、b(τ)≠0b(\tau)\ne0かつϑ1′(0,τ)=a(τ)b(τ)c(τ)\vartheta _1'(0,\tau)=a(\tau)b(\tau)c(\tau)である。格子Λτ=πZ+πτZ\Lambda_\tau=\pi\mathbb Z+\pi\tau\mathbb Zによる剰余類で表すと、四函数の零点はそれぞれ

零点(modΛτ)ϑ10ϑ2π/2ϑ3(π+πτ)/2ϑ4πτ/2\begin{array}{c|c} &\text{零点}\pmod{\Lambda_\tau}\\ \hline \vartheta _1&0\\ \vartheta _2&\pi/2\\ \vartheta _3&(\pi+\pi\tau)/2\\ \vartheta _4&\pi\tau/2 \end{array}

であり、すべて単純である。

証明. 四つの積表示を補題 2.11への代入によって順に導く。以下では注意 1のqα=eπiταq^{\alpha}=e^{\pi i\tau\alpha}の約束を用いるので、実数α,β\alpha,\betaについてqαqβ=qα+βq^{\alpha}q^{\beta}=q^{\alpha+\beta}が成り立つ。

ϑ3\vartheta _3とϑ4\vartheta _4では、定義の級数がそのまま三重積の左辺の形をしている。w=e2izw=e^{2iz}を代入するとq2r−1w=q2r−1e2izq^{2r-1}w=q^{2r-1}e^{2iz}、q2r−1w−1=q2r−1e−2izq^{2r-1}w^{-1}=q^{2r-1}e^{-2iz}であり、二つの因子の積は1+2q2r−1cos⁡2z+q4r−21+2q^{2r-1}\cos2z+q^{4r-2}である。したがってϑ3\vartheta _3の表示を得る。w=−e2izw=-e^{2iz}を代入すると、同じ二因子の積は1−2q2r−1cos⁡2z+q4r−21-2q^{2r-1}\cos2z+q^{4r-2}となり、左辺は∑nqn2(−1)ne2niz=ϑ4(z)\sum_n q^{n^2}(-1)^ne^{2niz}=\vartheta _4(z)であるから、ϑ4\vartheta _4の表示を得る。

ϑ2\vartheta _2では、代入の前に級数の形を整える。(n+1/2)2=n2+n+1/4(n+1/2)^2=n^2+n+1/4であるから

q(n+1/2)2e(2n+1)iz=q1/4eiz qn2(qe2iz)n q^{(n+1/2)^2}e^{(2n+1)iz} =q^{1/4}e^{iz}\,q^{n^2}\left(qe^{2iz}\right)^{n}

であり、ϑ2(z)=q1/4eiz∑nqn2wn\vartheta _2(z)=q^{1/4}e^{iz}\sum_{n}q^{n^2}w^{n}(ただしw=qe2izw=qe^{2iz})と書くことができる。三重積へw=qe2izw=qe^{2iz}を代入するとq2r−1w=q2re2izq^{2r-1}w=q^{2r}e^{2iz}、q2r−1w−1=q2r−2e−2izq^{2r-1}w^{-1}=q^{2r-2}e^{-2iz}であるから

ϑ2(z)=q1/4eiz∏r≥1(1−q2r)(1+q2re2iz)(1+q2r−2e−2iz) \vartheta _2(z)=q^{1/4}e^{iz}\prod_{r\ge1}(1-q^{2r}) \left(1+q^{2r}e^{2iz}\right)\left(1+q^{2r-2}e^{-2iz}\right)

である。最後の型の因子からr=1r=1のもの、すなわち1+e−2iz1+e^{-2iz}を前へ出すと

q1/4eiz(1+e−2iz)=q1/4(eiz+e−iz)=2q1/4cos⁡z q^{1/4}e^{iz}\left(1+e^{-2iz}\right)=q^{1/4}\left(e^{iz}+e^{-iz}\right)=2q^{1/4}\cos z

となり、残る因子は添字をrrからr+1r+1へ移して1+q2re−2iz1+q^{2r}e^{-2iz}(r≥1r\ge1)となる。(1+q2re2iz)(1+q2re−2iz)=1+2q2rcos⁡2z+q4r\left(1+q^{2r}e^{2iz}\right)\left(1+q^{2r}e^{-2iz}\right)=1+2q^{2r}\cos2z+q^{4r}であるから、主張のϑ2\vartheta _2の表示を得る。

ϑ1\vartheta _1はϑ2\vartheta _2の各項へ因子−i(−1)n-i(-1)^nを掛けたものであるから、同じ変形でϑ1(z)=−i q1/4eiz∑nqn2wn\vartheta _1(z)=-i\,q^{1/4}e^{iz}\sum_{n}q^{n^2}w^{n}(ただしw=−qe2izw=-qe^{2iz})となる。三重積の二因子は1−q2re2iz1-q^{2r}e^{2iz}と1−q2r−2e−2iz1-q^{2r-2}e^{-2iz}になり、r=1r=1の因子を前へ出すと

−i q1/4eiz(1−e−2iz)=−i q1/4(eiz−e−iz)=2q1/4sin⁡z -i\,q^{1/4}e^{iz}\left(1-e^{-2iz}\right) =-i\,q^{1/4}\left(e^{iz}-e^{-iz}\right)=2q^{1/4}\sin z

である。残る因子の積は1−2q2rcos⁡2z+q4r1-2q^{2r}\cos2z+q^{4r}であるから、主張のϑ1\vartheta _1の表示を得る。

零点を読み取る。ϑ1\vartheta _1のzzに依存する因子は

sin⁡z∏r≥1(1−q2re2iz)(1−q2re−2iz) \sin z\prod_{r\ge1}(1-q^{2r}e^{2iz})(1-q^{2r}e^{-2iz})

である。sin⁡z\sin zの零点はπZ\pi\mathbb Zであり、後二因子の零点はそれぞれ−rπτ+πZ-r\pi\tau+\pi\mathbb Zとrπτ+πZr\pi\tau+\pi\mathbb Zである。Im⁡τ>0\operatorname{Im}\tau>0であるから、一つの格子点で二つの因子が同時に零になることはなく、各因子の零点は単純である。零でない残りの積因子と11との差の絶対値の和は収束するため、その積も零でない。したがって、ϑ1\vartheta _1の零点はちょうどΛτ\Lambda_\tauであり、すべて単純である。

同様に、ϑ2\vartheta _2の因子cos⁡z\cos zと(1+q2re2iz)(1+q2re−2iz)(1+q^{2r}e^{2iz})(1+q^{2r}e^{-2iz})は零点の剰余類π/2\pi/2を与える。ϑ3\vartheta _3の因子(1+q2r−1e2iz)(1+q2r−1e−2iz)(1+q^{2r-1}e^{2iz})(1+q^{2r-1}e^{-2iz})は剰余類(π+πτ)/2(\pi+\pi\tau)/2を与え、ϑ4\vartheta _4の因子(1−q2r−1e2iz)(1−q2r−1e−2iz)(1-q^{2r-1}e^{2iz})(1-q^{2r-1}e^{-2iz})は剰余類πτ/2\pi\tau/2を与える。先と同じ非重複性と正規収束により、ϑ2\vartheta _2、ϑ3\vartheta _3、ϑ4\vartheta _4の零点もすべて単純であり、ほかに零点はない。

00はϑ3\vartheta _3の零点剰余類に属さないため、b(τ)≠0b(\tau)\ne0である。最後にϑ1\vartheta _1の積をz=0z=0で微分すると

ϑ1′(0,τ)=2q1/4∏r≥1(1−q2r)3 \vartheta _1'(0,\tau)=2q^{1/4}\prod_{r\ge1}(1-q^{2r})^3

を得る。一方、残りの三つの積をz=0z=0で掛け合わせ、

∏r≥1(1+q2r)(1−q4r−2)=1 \prod_{r\ge1}(1+q^{2r})(1-q^{4r-2})=1

を用いると、その積も右辺に一致する。この積の等式は1+q2r=(1−q4r)/(1−q2r)1+q^{2r}=(1-q^{4r})/(1-q^{2r})を代入し、偶数番目と奇数番目の因子へ分けると得られる。したがって、ϑ1′(0,τ)=a(τ)b(τ)c(τ)\vartheta _1'(0,\tau)=a(\tau)b(\tau)c(\tau)である。▨

命題 2.13.z∈Cz\in\mathbb C、τ∈H\tau\in\mathbb Hとし、

A=ϑ3(0,2τ),B=ϑ2(0,2τ),X=ϑ3(2z,2τ),Y=ϑ2(2z,2τ) A=\vartheta _3(0,2\tau),\quad B=\vartheta _2(0,2\tau),\quad X=\vartheta _3(2z,2\tau),\quad Y=\vartheta _2(2z,2\tau)

と置く。このとき

ϑ3(z,τ)2=AX+BY,ϑ4(z,τ)2=AX−BY,ϑ2(z,τ)2=BX+AY,ϑ1(z,τ)2=BX−AY\begin{array}{ll} \vartheta _3(z,\tau)^2=AX+BY,&\vartheta _4(z,\tau)^2=AX-BY,\\ \vartheta _2(z,\tau)^2=BX+AY,&\vartheta _1(z,\tau)^2=BX-AY \end{array}

が成り立つ。とくに、a=a(τ)a=a(\tau)、b=b(τ)b=b(\tau)、c=c(τ)c=c(\tau)に対して

b2=A2+B2,c2=A2−B2,a2=2AB b^2=A^2+B^2,\qquad c^2=A^2-B^2,\qquad a^2=2AB

である。

証明. 左辺の二つの theta 級数を掛けて二重和として展開する。例えばϑ3(z,τ)2\vartheta _3(z,\tau)^2では、添字をm,n∈Zm,n\in\mathbb Zとするとm+nm+nとm−nm-nは同じ偶奇性をもつ。両者が偶数の場合にm+n=2rm+n=2r、m−n=2sm-n=2sと置くと、その部分和はAXAXになる。両者が奇数の場合にm+n=2r+1m+n=2r+1、m−n=2s+1m-n=2s+1と置くと、その部分和はBYBYになる。したがってϑ3(z,τ)2=AX+BY\vartheta _3(z,\tau)^2=AX+BYである。(−1)m(-1)^mの因子を加える場合と半整数添字の場合にも同じ変換を行い、偶奇による符号を保つと、残りの三つの関数等式を得る。二重和は絶対収束するため、和の順序変更と添字変換は正当化される。z=0z=0と置くとX=AX=A、Y=BY=Bとなるので、初めの三式からb2=A2+B2b^2=A^2+B^2、c2=A2−B2c^2=A^2-B^2、a2=2ABa^2=2ABが従う。▨

定理 2.14 (Jacobi の四次恒等式).z∈Cz\in\mathbb C、τ∈H\tau\in\mathbb Hとし、a=a(τ)a=a(\tau)、b=b(τ)b=b(\tau)、c=c(τ)c=c(\tau)とする。このとき

b4=a4+c4 b^{4}=a^{4}+c^{4}

である。また、

a2ϑ4(z)2=b2ϑ1(z)2+c2ϑ2(z)2,b2ϑ4(z)2=c2ϑ3(z)2+a2ϑ1(z)2,ϑ1′(z)ϑ4(z)−ϑ1(z)ϑ4′(z)=c2ϑ2(z)ϑ3(z)\begin{aligned} a^{2}\vartheta _4(z)^{2} &=b^{2}\vartheta _1(z)^{2}+c^{2}\vartheta _2(z)^{2},\\ b^{2}\vartheta _4(z)^{2} &=c^{2}\vartheta _3(z)^{2}+a^{2}\vartheta _1(z)^{2},\\ \vartheta _1'(z)\vartheta _4(z)-\vartheta _1(z)\vartheta _4'(z) &=c^{2}\vartheta _2(z)\vartheta _3(z) \end{aligned}

が成り立つ。すべての theta 函数の第二変数は同じτ\tauである。

証明.命題 2.13の記号を用いる。同命題の theta 定数二倍公式からb4−c4=4A2B2=a4b^{4}-c^{4}=4A^{2}B^{2}=a^{4}が従う。また同命題の四つの関数等式からX,YX,Yを消去すると、主張の初めの二つのzzに関する恒等式を得る。

最後の式の左辺をW(z)W(z)と置く。命題 2.12により、各 theta 函数の零点は、準周期格子の移動を除けば、ϑ1\vartheta _1では00、ϑ2\vartheta _2ではπ/2\pi/2、ϑ3\vartheta _3では(π+πτ)/2(\pi+\pi\tau)/2、ϑ4\vartheta _4ではπτ/2\pi\tau/2にあり、いずれも単純である。

z2=π/2z_2=\pi/2とする。奇偶性(命題 2.5)とπ\piに関する準周期性からϑ1(π−z)=ϑ1(z)\vartheta _1(\pi-z)=\vartheta _1(z)、ϑ4(π−z)=ϑ4(z)\vartheta _4(\pi-z)=\vartheta _4(z)である。したがってϑ1′(z2)=ϑ4′(z2)=0\vartheta _1'(z_2)=\vartheta _4'(z_2)=0であり、W(z2)=0W(z_2)=0である。次にz3=(π+πτ)/2z_3=(\pi+\pi\tau)/2とする。二つの準周期公式と奇偶性(命題 2.5)から、f=ϑ1,ϑ4f=\vartheta _1,\vartheta _4の双方に対して

f(2z3−z)=−q−1e2izf(z) f(2z_3-z)=-q^{-1}e^{2iz}f(z)

が成り立つ。z=z3z=z_3では右辺の係数が11である。微分するとf′(z3)=−if(z3)f'(z_3)=-if(z_3)となるので、W(z3)=0W(z_3)=0である。準周期公式を用いると、格子で移したすべての零点でも同じ消滅が成り立つ。ϑ2ϑ3\vartheta _2\vartheta _3の零点は単純であり、そこでWWも消えるから、商W/(ϑ2ϑ3)W/(\vartheta _2\vartheta _3)は各零点の穿孔近傍で有界である。ゆえに除去可能性と有界性の同値性(§E5.11 命題 3.2)により、この商の特異点は除去可能である。準周期公式を分子と分母へ代入すると、この商はπ\piとπτ\pi\tauを周期にもつ。基本平行四辺形の閉包上で有界であり、周期性により複素平面全体で有界であるから、Liouville の定理(§E5.9 定理 4.1)により定数である。z=0z=0ではW(0)=ϑ1′(0)c=abc2W(0)=\vartheta _1'(0)c=abc^{2}、ϑ2(0)ϑ3(0)=ab\vartheta _2(0)\vartheta _3(0)=abであるから、定数はc2c^{2}である。▨

3 Jacobi の楕円函数と逆函数

純虚数のτ=it\tau=itに対する theta 定数は modulus と二つの完全周期を定める。theta 函数の商として構成したsn⁡\operatorname{sn}、cn⁡\operatorname{cn}、dn⁡\operatorname{dn}は微分方程式を満たし、sn⁡\operatorname{sn}は Legendre の楕円積分の局所逆函数となる。

命題 3.1.t>0t>0とし、τ=it\tau=itと置く。このときq=e−πt∈(0,1)q=e^{-\pi t}\in(0,1)であり、theta 定数a=a(it)a=a(it)、b=b(it)b=b(it)、c=c(it)c=c(it)はいずれも正の実数である。

証明.q=eπi(it)=e−πtq=e^{\pi i(it)}=e^{-\pi t}であり、t>0t>0から0<q<10<q<1である。命題 2.12の積表示へz=0z=0を代入すると

a=2q1/4∏r≥1(1−q2r)(1+q2r)2,b=∏r≥1(1−q2r)(1+q2r−1)2,c=∏r≥1(1−q2r)(1−q2r−1)2 a=2q^{1/4}\prod_{r\ge1}(1-q^{2r})(1+q^{2r})^{2},\quad b=\prod_{r\ge1}(1-q^{2r})(1+q^{2r-1})^{2},\quad c=\prod_{r\ge1}(1-q^{2r})(1-q^{2r-1})^{2}

である。0<q<10<q<1であるから、q1/4>0q^{1/4}>0であり、各因子1−q2r1-q^{2r}、1+q2r1+q^{2r}、1+q2r−11+q^{2r-1}、1−q2r−11-q^{2r-1}はすべて正である。無限積は正規収束するので、三つの値はいずれも実数であり、正の数の極限として00以上である。さらに、命題 2.12によりϑ2\vartheta _2、ϑ3\vartheta _3、ϑ4\vartheta _4の零点剰余類はそれぞれπ/2\pi/2、(π+πτ)/2(\pi+\pi\tau)/2、πτ/2\pi\tau/2であって、Im⁡τ>0\operatorname{Im}\tau>0から00はいずれにも属さないので、aa、bb、ccはいずれも00ではない。したがって、三つの値はいずれも正の実数である。▨

定義 3.2.τ=it\tau=it、t>0t>0とし、命題 3.1の正の実数a=a(it)a=a(it)、b=b(it)b=b(it)、c=c(it)c=c(it)を用いる。theta 定数から

Kϑ=πb22,k=a2b2,k′=c2b2 K_\vartheta=\frac{\pi b^{2}}2,\qquad k=\frac{a^{2}}{b^{2}},\qquad k'=\frac{c^{2}}{b^{2}}

と定める。kkをmodulus (modulus)、k′k'を補母数 (complementary modulus) という。

命題 3.3.τ=it\tau=it、t>0t>0とし、定義 3.2のKϑK_\vartheta、kk、k′k'を用いる。このときKϑ>0K_\vartheta>0であり、

k2+k′2=1,0<k<1,0<k′<1 k^{2}+k'^{2}=1,\qquad 0<k<1,\qquad 0<k'<1

が成り立つ。とくにk′=1−k2k'=\sqrt{1-k^{2}}である。

証明.命題 3.1によりa,b,c>0a,b,c>0であるから、Kϑ=πb2/2>0K_\vartheta=\pi b^{2}/2>0であり、k>0k>0とk′>0k'>0である。定理 2.14のb4=a4+c4b^{4}=a^{4}+c^{4}をb4b^{4}で割ると

1=a4b4+c4b4=k2+k′2 1=\frac{a^{4}}{b^{4}}+\frac{c^{4}}{b^{4}}=k^{2}+k'^{2}

を得る。c>0c>0であるからa4=b4−c4<b4a^{4}=b^{4}-c^{4}<b^{4}であり、k2<1k^{2}<1、すなわちk<1k<1である。同様にa>0a>0からc4<b4c^{4}<b^{4}であり、k′<1k'<1である。k′>0k'>0とk2+k′2=1k^{2}+k'^{2}=1からk′=1−k2k'=\sqrt{1-k^{2}}である。▨

定義 3.4.τ=it\tau=it、t>0t>0とし、定義 3.2のKϑ,k,k′K_\vartheta,k,k'を用いる。u∈Cu\in\mathbb Cに対してv=πu/(2Kϑ)v=\pi u/(2K_\vartheta)と置き、

sn⁡(u,k)=baϑ1(v,τ)ϑ4(v,τ),cn⁡(u,k)=caϑ2(v,τ)ϑ4(v,τ),dn⁡(u,k)=cbϑ3(v,τ)ϑ4(v,τ)\begin{aligned} \operatorname{sn}(u,k)&=\frac{b}{a}\frac{\vartheta _1(v,\tau)}{\vartheta _4(v,\tau)},\\ \operatorname{cn}(u,k)&=\frac{c}{a}\frac{\vartheta _2(v,\tau)}{\vartheta _4(v,\tau)},\\ \operatorname{dn}(u,k)&=\frac{c}{b}\frac{\vartheta _3(v,\tau)}{\vartheta _4(v,\tau)} \end{aligned}

と定める。これら三つをJacobi の楕円函数 (Jacobi elliptic functions) という。

命題 3.5.τ=it\tau=it、t>0t>0とし、

Lϑ=2KϑZ+2itKϑZ L_\vartheta=2K_\vartheta\mathbb Z+2itK_\vartheta\mathbb Z

と置く。定義 3.4の三つの商はuuの有理型関数である。その零点は

零点(modLϑ)sn⁡0cn⁡Kϑdn⁡Kϑ+itKϑ\begin{array}{c|c} &\text{零点}\pmod{L_\vartheta}\\ \hline \operatorname{sn}&0\\ \operatorname{cn}&K_\vartheta\\ \operatorname{dn}&K_\vartheta+itK_\vartheta \end{array}

であり、すべて単純である。三函数は共通してitKϑ(modLϑ)itK_\vartheta\pmod{L_\vartheta}に単純な極をもち、ほかに極をもたない。分子と分母の零点の相殺はない。

証明. 分子と分母はuuの整関数であり、分母はu=0u=0でc>0c>0であるから恒等的に零ではない。したがって、三つの商は有理型関数である。命題 2.12により、vv平面における分子の零点剰余類は00、π/2\pi/2、(π+πτ)/2(\pi+\pi\tau)/2であり、分母の零点剰余類はπτ/2\pi\tau/2である。u=2Kϑv/πu=2K_\vartheta v/\piとτ=it\tau=itを代入すると、主張の四つの剰余類を得る。

四つの剰余類は互いに異なる。実際、二つが一致すれば、それらの差を2Kϑm+2itKϑn2K_\vartheta m+2itK_\vartheta nと表すことができるはずであるが、実部と虚部を比較するとmmまたはnnが半整数になり、m,n∈Zm,n\in\mathbb Zに反する。したがって、分子と分母の零点は相殺しない。 theta 函数の零点はすべて単純であるため、各商の零点は単純である。また、分母の単純零点では分子が零でないため、極の位数判定(§E5.11 命題 3.4)により各商は単純な極をもつ。▨

定理 3.6.τ=it\tau=it、t>0t>0とし、命題 3.3の0<k<10<k<1を用いる。命題 3.5の有理型関数は、uuの有理型関数として

sn⁡2u+cn⁡2u=1,dn⁡2u+k2sn⁡2u=1 \operatorname{sn}^{2}u+\operatorname{cn}^{2}u=1, \qquad \operatorname{dn}^{2}u+k^{2}\operatorname{sn}^{2}u=1

および

sn⁡′u=cn⁡udn⁡u,cn⁡′u=−sn⁡udn⁡u,dn⁡′u=−k2sn⁡ucn⁡u \operatorname{sn}'u=\operatorname{cn}u\operatorname{dn}u,\qquad \operatorname{cn}'u=-\operatorname{sn}u\operatorname{dn}u,\qquad \operatorname{dn}'u=-k^{2}\operatorname{sn}u\operatorname{cn}u

を満たす。またsn⁡(0)=0\operatorname{sn}(0)=0、cn⁡(0)=dn⁡(0)=1\operatorname{cn}(0)=\operatorname{dn}(0)=1、sn⁡′(0)=1\operatorname{sn}'(0)=1である。第二変数kkは式の中で省略した。

証明.定理 2.14の初めの二つの関数恒等式を各定義へ代入すると、二つの二次恒等式を直ちに得る。次に商の微分法と同定理の Wronskian 型恒等式から

ddusn⁡u=baπ2Kϑϑ1′(v)ϑ4(v)−ϑ1(v)ϑ4′(v)ϑ4(v)2=cn⁡udn⁡u \frac{d}{du}\operatorname{sn}u =\frac{b}{a}\frac{\pi}{2K_\vartheta} \frac{\vartheta _1'(v)\vartheta _4(v)-\vartheta _1(v)\vartheta _4'(v)} {\vartheta _4(v)^2} =\operatorname{cn}u\operatorname{dn}u

を得る。最後の等号では2Kϑ=πb22K_\vartheta=\pi b^{2}を用いた。第一の二次恒等式を微分すると、cn⁡\operatorname{cn}が零でない近傍でcn⁡′=−sn⁡dn⁡\operatorname{cn}'=-\operatorname{sn}\operatorname{dn}を得る。両辺は有理型関数であり、空でない開集合で一致するから、一致の定理により全平面で一致する。同様に第二の二次恒等式を微分するとdn⁡′=−k2sn⁡cn⁡\operatorname{dn}'=-k^{2}\operatorname{sn}\operatorname{cn}を得る。

u=0u=0の値は theta 函数の定義と奇偶性(命題 2.5)から従う。またϑ1′(0)=abc\vartheta _1'(0)=abcであるから

sn⁡′(0)=baπ2Kϑabcc=1 \operatorname{sn}'(0)=\frac ba\frac{\pi}{2K_\vartheta}\frac{abc}{c}=1

である。▨

定理 3.7.τ=it\tau=it、t>0t>0とし、命題 3.3の0<k<10<k<1を用いる。このとき、00のある近傍では

F(sn⁡(u,k),k)=u F(\operatorname{sn}(u,k),k)=u

が成り立つ。さらにKϑ=K(k)K_\vartheta=K(k)であり、K′(k)=tK(k)K'(k)=tK(k)である。したがって、theta 函数の周期比τ=it\tau=itは完全楕円積分から得られる周期比iK′(k)/K(k)iK'(k)/K(k)に一致する。

証明.sn⁡(0)=0\operatorname{sn}(0)=0、sn⁡′(0)=1\operatorname{sn}'(0)=1であるから、局所的な単射性と導関数の関係(§E5.10 定理 3.1)により、sn⁡\operatorname{sn}は00のある近傍UUで単射である。開写像定理(§E5.10 定理 1.1)によりsn⁡(U)\operatorname{sn}(U)は開集合であり、逆函数ggは連続である。w0=sn⁡(u0)w_0=\operatorname{sn}(u_0)とすると

g(w)−g(w0)w−w0=u−u0sn⁡(u)−sn⁡(u0)⟶1sn⁡′(u0) \frac{g(w)-g(w_0)}{w-w_0} =\frac{u-u_0}{\operatorname{sn}(u)-\operatorname{sn}(u_0)} \longrightarrow\frac1{\operatorname{sn}'(u_0)}

である。UUを縮小してsn⁡′\operatorname{sn}'が零を取らないようにすれば、ggは正則である。さらにUUを十分小さく取ると、二つの二次恒等式と00における値により

1−sn⁡2u=cn⁡u,1−k2sn⁡2u=dn⁡u \sqrt{1-\operatorname{sn}^{2}u}=\operatorname{cn}u,\qquad \sqrt{1-k^{2}\operatorname{sn}^{2}u}=\operatorname{dn}u

となる正則な平方根の枝を取ることができる。連鎖律により

dduF(sn⁡u,k)=sn⁡′u(1−sn⁡2u)(1−k2sn⁡2u)=1. \frac{d}{du}F(\operatorname{sn}u,k) =\frac{\operatorname{sn}'u} {\sqrt{(1-\operatorname{sn}^{2}u)(1-k^{2}\operatorname{sn}^{2}u)}}=1.

両辺はu=0u=0で零であるから、局所的な逆函数関係を得る。この主張は局所的であり、複素平面全体でFFが一価であることを主張しない。

次に0≤v≤π/20\le v\le\pi/2を考える。0<q<10<q<1の積表示から、この区間ではϑ4(v)>0\vartheta _4(v)>0であり、内部ではϑ2(v)>0\vartheta _2(v)>0とϑ3(v)>0\vartheta _3(v)>0である。したがってsn⁡′u=cn⁡udn⁡u>0\operatorname{sn}'u=\operatorname{cn}u\operatorname{dn}u>0であり、sn⁡(0)=0\operatorname{sn}(0)=0である。また同じ積表示からϑ1(π/2,τ)=a\vartheta _1(\pi/2,\tau)=a、ϑ4(π/2,τ)=b\vartheta _4(\pi/2,\tau)=bであるため、sn⁡(Kϑ)=1\operatorname{sn}(K_\vartheta)=1である。変数変換x=sn⁡ux=\operatorname{sn}uと導関数公式から

Kϑ=∫01dx(1−x2)(1−k2x2)=K(k) K_\vartheta=\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{(1-x^2)(1-k^2x^2)}}=K(k)

を得る。

虚数変換をz=0z=0、τ=it\tau=itに適用すると

a(i/t)=t c(it),b(i/t)=t b(it) a(i/t)=\sqrt t\,c(it),\qquad b(i/t)=\sqrt t\,b(it)

である。したがってi/ti/tに対応する modulus はk′=c2/b2k'=c^{2}/b^{2}であり、Kϑ(i/t)=tKϑ(it)K_\vartheta(i/t)=tK_\vartheta(it)である。前段の積分表示をi/ti/tにも適用すればK(k′)=tK(k)K(k')=tK(k)、すなわちK′(k)=tK(k)K'(k)=tK(k)を得る。ゆえにiK′(k)/K(k)=it=τiK'(k)/K(k)=it=\tauである。▨

系 3.8.0<k0<10<k_0<1とし、

t0=K′(k0)K(k0),τ0=it0 t_0=\frac{K'(k_0)}{K(k_0)},\qquad \tau_0=it_0

と置く。τ0\tau_0の theta 定数から定義 3.2によって得られる modulus をk~\widetilde kとすると、k~=k0\widetilde k=k_0である。したがって、定義 3.4は任意の0<k0<10<k_0<1に対してsn⁡(u,k0)\operatorname{sn}(u,k_0)、cn⁡(u,k0)\operatorname{cn}(u,k_0)、dn⁡(u,k0)\operatorname{dn}(u,k_0)を与える。この同一視の下で、命題 3.5の格子は

2K(k0)Z+2iK′(k0)Z 2K(k_0)\mathbb Z+2iK'(k_0)\mathbb Z

であり、零点と共通極の剰余類も同命題に記したとおりである。

証明.定理 3.7をτ0=it0\tau_0=it_0に適用すると

K′(k~)K(k~)=t0=K′(k0)K(k0) \frac{K'(\widetilde k)}{K(\widetilde k)}=t_0 =\frac{K'(k_0)}{K(k_0)}

を得る。命題 1.3によりρ(k)=K′(k)/K(k)\rho(k)=K'(k)/K(k)は(0,1)(0,1)上で単射であるから、k~=k0\widetilde k=k_0である。また同じ定理からKϑ=K(k0)K_\vartheta=K(k_0)とt0Kϑ=K′(k0)t_0K_\vartheta=K'(k_0)が従うため、格子の表示も得られる。▨

定理 3.9.0<k<10<k<1とし、系 3.8によって得られる Jacobi の楕円函数を用いる。K=K(k)K=K(k)、K′=K′(k)K'=K'(k)と置く。このとき

u↦u+2Ku↦u+2iK′sn⁡−+cn⁡−−dn⁡+−\begin{array}{c|cc} &u\mapsto u+2K&u\mapsto u+2iK'\\ \hline \operatorname{sn}&-&+\\ \operatorname{cn}&-&-\\ \operatorname{dn}&+&- \end{array}

が成り立つ。したがってsn⁡\operatorname{sn}は4K,2iK′4K,2iK'、cn⁡\operatorname{cn}は4K,4iK′4K,4iK'、dn⁡\operatorname{dn}は2K,4iK′2K,4iK'をそれぞれ二つの独立な周期としてもつ。表の−-は反周期、++は周期を表す。

証明.v=πu/(2K)v=\pi u/(2K)であり、τ=iK′/K\tau=iK'/Kである。したがってu↦u+2Ku\mapsto u+2Kはv↦v+πv\mapsto v+\pi、u↦u+2iK′u\mapsto u+2iK'はv↦v+πτv\mapsto v+\pi\tauに対応する。命題 2.4を定義 3.4の三つの商へ代入すると、共通因子q−1e−2ivq^{-1}e^{-2iv}が分子と分母で消え、表の符号を得る。各反周期を二回適用すれば対応する周期を得る。KKは正の実数、iK′iK'は零でない純虚数であるから、二つの周期は実線型独立である。▨

楕円積分の芽は、四つの分岐点±1,±1/k\pm1,\pm1/kを避ける曲線に沿って解析接続することができる。局所的な平方根と原始関数をつなぐと、各枝は theta 商として構成したsn⁡\operatorname{sn}の局所逆函数になり、異なる枝の差または和は周期と結び付く。

補題 3.10.0<k<10<k<1とし、

P(x)=(1−x2)(1−k2x2),Xk=C∖{−1,1,−1/k,1/k} P(x)=(1-x^{2})(1-k^{2}x^{2}),\qquad X_k=\mathbb C\setminus\{-1,1,-1/k,1/k\}

と置く。PPはXkX_kの上で零を取らない。さらに次が成り立つ。

  1. B⊆XkB\subseteq X_kを開円板とすると、BBの上の正則関数ϱ\varrhoでϱ2=P\varrho^{2}=Pを満たすものが存在する。そのような関数はちょうど二つあり、一方は他方の−1-1倍である。どちらもBBの上で零を取らない。
  2. (1)のϱ\varrhoに対して、1/ϱ1/\varrhoはBBの上に正則な原始関数をもつ。
  3. V⊆XkV\subseteq X_kを領域とし、ϱ\varrhoをVVの上の正則関数でϱ2=P\varrho^{2}=Pを満たすもの、ffをVVの上の正則関数でVVの各点においてf′(x)2P(x)=1f'(x)^{2}P(x)=1を満たすものとする。このとき、VVの全体でf′=1/ϱf'=1/\varrhoであるか、VVの全体でf′=−1/ϱf'=-1/\varrhoであるかのいずれか一方だけが成り立つ。

証明.P(x)=0P(x)=0はx2=1x^{2}=1またはk2x2=1k^{2}x^{2}=1と同値であり、0<k<10<k<1であるからこれはx∈{−1,1,−1/k,1/k}x\in\{-1,1,-1/k,1/k\}と同値である。ゆえにPPはXkX_kの上で零を取らない。

(1)を示す。ccをBBの中心とする。BBはccに関して星形な領域であり、PPはBBの上で零を取らないから、P′/PP'/PはBBの上で正則である。§E5.5 定理 4.1により、BBの上の正則関数hhでh′=P′/Ph'=P'/Pを満たすものが存在する。このときBBの各点で

(Pe−h)′=P′e−h−Ph′e−h=e−h(P′−PP′P)=0 \left(Pe^{-h}\right)'=P'e^{-h}-Ph'e^{-h}=e^{-h}\left(P'-P\frac{P'}{P}\right)=0

である。x∈Bx\in Bに対して線分[c,x][c,x]はBBに含まれるから、§E5.4 定理 4.2を零関数とその原始関数Pe−hPe^{-h}へ適用してP(x)e−h(x)=P(c)e−h(c)P(x)e^{-h(x)}=P(c)e^{-h(c)}を得る。この共通の値をκ\kappaと書くとκ=P(c)e−h(c)≠0\kappa=P(c)e^{-h(c)}\ne0であり、BBの上でP=κehP=\kappa e^{h}である。零でない複素数κ\kappaの平方根μ\mu、すなわちμ2=κ\mu^{2}=\kappaを満たす複素数を一つ選び、ϱ=μeh/2\varrho=\mu e^{h/2}と置く。ϱ\varrhoはBBの上で正則であり、ϱ2=μ2eh=κeh=P\varrho^{2}=\mu^{2}e^{h}=\kappa e^{h}=Pを満たす。指数関数は零を取らないからϱ\varrhoも零を取らない。ϱ2=P\varrho^{2}=Pを満たす関数はすべて零を取らない。

個数を数える。ϱ1\varrho_{1}もBBの上の正則関数でϱ12=P\varrho_{1}^{2}=Pを満たすとすると、BBの上で(ϱ1/ϱ)2=1(\varrho_{1}/\varrho)^{2}=1である。商ϱ1/ϱ\varrho_{1}/\varrhoは連結なBBの上の連続関数であり、その値は{1,−1}\{1,-1\}に含まれるから定数である。ゆえにϱ1=ϱ\varrho_{1}=\varrhoまたはϱ1=−ϱ\varrho_{1}=-\varrhoである。逆に−ϱ-\varrhoも条件を満たし、ϱ\varrhoが零を取らないのでϱ≠−ϱ\varrho\ne-\varrhoである。したがって条件を満たす関数はちょうど二つである。

(2)を示す。ϱ\varrhoは零を取らないから1/ϱ1/\varrhoはBBの上の正則関数であり、BBは星形な領域であるから、§E5.5 定理 4.1により1/ϱ1/\varrhoはBBの上に正則な原始関数をもつ。

(3)を示す。仮定からVVの各点でf′(x)2=1/P(x)=(1/ϱ(x))2f'(x)^{2}=1/P(x)=\left(1/\varrho(x)\right)^{2}であるから、

(f′−1ϱ)(f′+1ϱ)=0 \left(f'-\frac1\varrho\right)\left(f'+\frac1\varrho\right)=0

がVVの全体で成り立つ。二つの因子はどちらもVVの上の正則関数である。f′−1/ϱf'-1/\varrhoがVVの上で恒等的に00であれば第一の場合を得る。そうでないとき、ZZをf′−1/ϱf'-1/\varrhoの零点の集合とすると、§E5.8 定理 3.1をf′−1/ϱf'-1/\varrhoと定数関数00へ適用して、ZZはVVに属する集積点をもたない。ゆえにZZの各点はV∖ZV\setminus Zの点の極限であり、V∖ZV\setminus ZはVVの中で稠密である。V∖ZV\setminus Zの各点では第一の因子が零でないからf′+1/ϱ=0f'+1/\varrho=0であり、連続性によりVVの全体でf′+1/ϱ=0f'+1/\varrho=0である。これが第二の場合である。二つの場合が同時に成り立つことはない。実際、両方が成り立てばf′=0f'=0となり、f′2P=1f'^{2}P=1に反する。▨

曲線のコンパクトな像は、一様な半径をもつ有限個の円板で順に覆うことができる。各円板上の平方根と原始関数を隣り合う共通部分で一致させると、F0F_0の曲線に沿う解析接続が得られる。

補題 3.11.0<k<10<k<1とし、PPとXkX_kを補題 3.10のとおりとする。γ:[0,1]→Xk\gamma:[0,1]\to X_kをγ(0)=0\gamma(0)=0を満たす連続な曲線とする。このとき、§E5.19 定義 3.1の意味でγ\gammaに沿う解析接続(ft,Ut)t∈[0,1](f_{t},U_{t})_{t\in[0,1]}であって、次の三条件を満たすものが存在する。

  1. (f0,U0)(f_{0},U_{0})がx=0x=0において定める芽は、定義 1.2のF(⋅,k)F(\cdot,k)が定める芽F0F_0に等しい。
  2. 各t∈[0,1]t\in[0,1]についてUtU_{t}はXkX_kに含まれる開円板である。
  3. 各t∈[0,1]t\in[0,1]について、UtU_{t}の各点でft′(x)2P(x)=1f_{t}'(x)^{2}P(x)=1が成り立つ。

証明.c∈Xkc\in X_kに対して

r(c)=min⁡{∣c−1∣, ∣c+1∣, ∣c−1/k∣, ∣c+1/k∣} r(c)=\min\{|c-1|,\,|c+1|,\,|c-1/k|,\,|c+1/k|\}

と置くと、rrはXkX_kの上の正の連続関数であり、∣x−c∣<r(c)|x-c|<r(c)ならばxxは四つの分岐点のいずれとも異なるから、開円板D(c,r(c))D(c,r(c))はXkX_kに含まれる。

γ\gammaは有界閉区間の上の連続写像であるから、像Γ=γ([0,1])\Gamma=\gamma([0,1])はXkX_kに含まれるコンパクト集合であり、γ\gammaは一様連続である。連続関数rrはΓ\Gammaの上で正の最小値をもつので、

ε=12min⁡c∈Γr(c)>0 \varepsilon=\frac12\min_{c\in\Gamma}r(c)>0

と置くことができる。0=γ(0)∈Γ0=\gamma(0)\in\Gammaでありr(0)=min⁡{1,1/k}=1r(0)=\min\{1,1/k\}=1であるから、2ε≤r(0)=12\varepsilon\le r(0)=1である。一様連続性により、∣s−t∣≤1/n|s-t|\le1/nを満たすすべてのs,t∈[0,1]s,t\in[0,1]について∣γ(s)−γ(t)∣<ε|\gamma(s)-\gamma(t)|<\varepsilonが成り立つ正の整数nnを取ることができる。tj=j/nt_{j}=j/n、cj=γ(tj)c_{j}=\gamma(t_{j})、Bj=D(cj,2ε)B_{j}=D(c_{j},2\varepsilon)(j=0,1,…,nj=0,1,\ldots,n)と置く。2ε≤r(cj)2\varepsilon\le r(c_{j})であるからBj⊆XkB_{j}\subseteq X_kである。また∣cj+1−cj∣<ε<2ε|c_{j+1}-c_{j}|<\varepsilon<2\varepsilonであるからcj+1∈Bj∩Bj+1c_{j+1}\in B_{j}\cap B_{j+1}であり、二つの開円板の共通部分は凸であるから、Bj∩Bj+1B_{j}\cap B_{j+1}は空でない凸開集合、すなわち領域である。

BjB_{j}の上の正則関数gjg_{j}を、各j∈{0,1,…,n}j\in\{0,1,\ldots,n\}についてBjB_{j}の各点でgj′(x)2P(x)=1g_{j}'(x)^{2}P(x)=1が成り立ち、各j∈{0,1,…,n−1}j\in\{0,1,\ldots,n-1\}についてBj∩Bj+1B_{j}\cap B_{j+1}の上でgj+1=gjg_{j+1}=g_{j}が成り立つように、jjの小さいほうから順に定める。

j=0j=0の場合。c0=γ(0)=0c_{0}=\gamma(0)=0であり2ε≤12\varepsilon\le1であるから、B0B_{0}は補題 1.1の単位円板DDに含まれる。同補題のϱ\varrhoのB0B_{0}への制限はB0B_{0}の上でϱ2=P\varrho^{2}=Pを満たす。同補題により1/ϱ1/\varrhoはDDの上に正則な原始関数HHをもち、定義 1.2の積分は§E5.4 定理 4.2によりF(x,k)=H(x)−H(0)F(x,k)=H(x)-H(0)に等しいから、F(⋅,k)F(\cdot,k)はDDの上で1/ϱ1/\varrhoの原始関数である。そこでg0=F(⋅,k)∣B0g_{0}=F(\cdot,k)|_{B_{0}}と置くと、B0B_{0}の各点でg0′=1/ϱg_{0}'=1/\varrhoであり、したがってg0′2P=1g_{0}'^{2}P=1である。

jjからj+1j+1へ進む段。gjg_{j}が定まったとし、Ω=Bj∩Bj+1\Omega=B_{j}\cap B_{j+1}と置く。補題 3.10 (1)により、Bj+1B_{j+1}の上の正則関数ϱ\varrhoでϱ2=P\varrho^{2}=Pを満たすものを取る。Ω\OmegaはXkX_kに含まれる領域であり、ϱ\varrhoのΩ\Omegaへの制限とgjg_{j}のΩ\Omegaへの制限は補題 3.10 (3)の仮定を満たすから、Ω\Omegaの上でgj′=1/ϱg_{j}'=1/\varrhoであるかgj′=−1/ϱg_{j}'=-1/\varrhoである。後者の場合にはϱ\varrhoを−ϱ-\varrhoで置き換える。補題 3.10 (1)により−ϱ-\varrhoもBj+1B_{j+1}の上の平方根であるから、この置き換えの後はΩ\Omegaの上でgj′=1/ϱg_{j}'=1/\varrhoである。補題 3.10 (2)により1/ϱ1/\varrhoの原始関数GGをBj+1B_{j+1}の上に取り、

gj+1=G−G(cj+1)+gj(cj+1) g_{j+1}=G-G(c_{j+1})+g_{j}(c_{j+1})

と置く。cj+1∈Bjc_{j+1}\in B_{j}であるから右辺は定まる。gj+1′=1/ϱg_{j+1}'=1/\varrhoであるからBj+1B_{j+1}の各点でgj+1′2P=1g_{j+1}'^{2}P=1が成り立つ。またΩ\Omegaの上で(gj+1−gj)′=0(g_{j+1}-g_{j})'=0であり、Ω\Omegaは凸でcj+1∈Ωc_{j+1}\in\Omegaであるから、§E5.4 定理 4.2を線分に沿って適用して、Ω\Omegaの上でgj+1−gjg_{j+1}-g_{j}は定数gj+1(cj+1)−gj(cj+1)=0g_{j+1}(c_{j+1})-g_{j}(c_{j+1})=0に等しい。すなわちΩ\Omegaの上でgj+1=gjg_{j+1}=g_{j}である。

族を定める。t∈[0,1]t\in[0,1]に対して、tj≤tt_{j}\le tを満たす最大のj∈{0,1,…,n}j\in\{0,1,\ldots,n\}をj(t)j(t)と書き、

Ut=Bj(t),ft=gj(t) U_{t}=B_{j(t)},\qquad f_{t}=g_{j(t)}

と定める。0≤t−tj(t)<1/n0\le t-t_{j(t)}<1/nであるから∣γ(t)−cj(t)∣<ε<2ε|\gamma(t)-c_{j(t)}|<\varepsilon<2\varepsilonであり、γ(t)∈Ut\gamma(t)\in U_{t}である。各UtU_{t}はXkX_kに含まれる開円板であり、UtU_{t}の各点でft′2P=1f_{t}'^{2}P=1が成り立つ。(f0,U0)=(g0,B0)(f_{0},U_{0})=(g_{0},B_{0})でありg0g_{0}はF(⋅,k)F(\cdot,k)の制限であるから、x=0x=0における芽はF0F_0である。よって(1)、(2)、(3)は満たされている。

§E5.19 定義 3.1の条件を確かめる。t∈[0,1]t\in[0,1]を取り、j=j(t)j=j(t)と書く。

ttがtj<t<tj+1t_{j}<t<t_{j+1}を満たす場合はδt=min⁡{t−tj, tj+1−t}>0\delta_{t}=\min\{t-t_{j},\,t_{j+1}-t\}>0と置く。∣s−t∣<δt|s-t|<\delta_{t}を満たすs∈[0,1]s\in[0,1]はtj<s<tj+1t_{j}<s<t_{j+1}を満たすからj(s)=jj(s)=jであり、(fs,Us)=(ft,Ut)(f_{s},U_{s})=(f_{t},U_{t})である。∣s−tj∣<1/n|s-t_{j}|<1/nよりγ(s)∈Bj=Ut∩Us\gamma(s)\in B_{j}=U_{t}\cap U_{s}であり、同一の関数要素はγ(s)\gamma(s)において同値である。

t=tjt=t_{j}である場合はδt=1/n\delta_{t}=1/nと置く。∣s−tj∣<1/n|s-t_{j}|<1/nを満たすs∈[0,1]s\in[0,1]について、s≥tjs\ge t_{j}ならば、j<nj<nのときはs<tj+1s<t_{j+1}であり、j=nj=nのときはs=1=tns=1=t_{n}であるから、いずれの場合もj(s)=jj(s)=jであり、前段と同じ理由で条件が成り立つ。s<tjs<t_{j}ならばj≥1j\ge1であり、tj−1<s<tjt_{j-1}<s<t_{j}であるからj(s)=j−1j(s)=j-1である。∣s−tj−1∣<1/n|s-t_{j-1}|<1/nと∣s−tj∣<1/n|s-t_{j}|<1/nによりγ(s)∈Bj−1∩Bj=Us∩Ut\gamma(s)\in B_{j-1}\cap B_{j}=U_{s}\cap U_{t}である。Bj−1∩BjB_{j-1}\cap B_{j}はγ(s)\gamma(s)を含む開集合であり、その上でgj−1=gjg_{j-1}=g_{j}が成り立つから、(fs,Us)(f_{s},U_{s})と(ft,Ut)(f_{t},U_{t})はγ(s)\gamma(s)において同値である。

以上により(ft,Ut)t∈[0,1](f_{t},U_{t})_{t\in[0,1]}はγ\gammaに沿う解析接続である。▨

次の補題は、この族に限らず、F0F_0から出発するXkX_k内のどの解析接続についても成り立つ。

補題 3.12.0<k<10<k<1とし、Xk=C∖{−1,1,−1/k,1/k}X_k=\mathbb C\setminus\{-1,1,-1/k,1/k\}と置く。γ:[0,1]→Xk\gamma:[0,1]\to X_kをγ(0)=0\gamma(0)=0を満たす連続な曲線とし、(ft,Ut)t∈[0,1](f_{t},U_{t})_{t\in[0,1]}を§E5.19 定義 3.1の意味でγ\gammaに沿う解析接続であって、(f0,U0)(f_{0},U_{0})がx=0x=0において定める芽が定義 1.2の芽F0F_0に等しいものとする。またsn⁡(⋅,k)\operatorname{sn}(\cdot,k)を系 3.8によって定まる Jacobi の楕円函数とする。このとき、各t∈[0,1]t\in[0,1]について、ftf_{t}はUtU_{t}のどの点でもsn⁡\operatorname{sn}の極を値に取らず、UtU_{t}の全体で

sn⁡(ft(x),k)=x \operatorname{sn}(f_{t}(x),k)=x

が成り立つ。とくに、延長(f1,U1)(f_{1},U_{1})の定義域U1U_{1}がXkX_kに含まれる連結開円板DDである場合、u=f1u=f_{1}はDDの上でsn⁡(u(x),k)=x\operatorname{sn}(u(x),k)=xを満たす。

証明.定理 3.7により、00のある近傍でF(sn⁡(u,k),k)=uF(\operatorname{sn}(u,k),k)=uが成り立つ。同定理の証明で取った近傍UUの上でsn⁡\operatorname{sn}は単射であり、その逆写像をggと書くと、x∈sn⁡(U)x\in\operatorname{sn}(U)に対してF0(x)=F(sn⁡(g(x),k),k)=g(x)F_0(x)=F(\operatorname{sn}(g(x),k),k)=g(x)である。したがってsn⁡(F0(x),k)=sn⁡(g(x),k)=x\operatorname{sn}(F_0(x),k)=\operatorname{sn}(g(x),k)=xである。ここでUUはsn⁡\operatorname{sn}が正則である00の近傍であるから、ggの値はsn⁡\operatorname{sn}の極ではない。仮定によりf0f_{0}はx=0x=0を含むある開集合の上でF(⋅,k)F(\cdot,k)と一致する。その開集合とsn⁡(U)\operatorname{sn}(U)とU0U_{0}の共通部分をW0W_{0}と置くと、W0W_{0}はx=0x=0を含む空でない開集合であり、W0W_{0}の各点でf0(x)=F0(x)=g(x)f_{0}(x)=F_0(x)=g(x)はsn⁡\operatorname{sn}の極ではなく、sn⁡(f0(x),k)=x\operatorname{sn}(f_{0}(x),k)=xが成り立つ。

ここで局所的な等式を一つの関数要素の全体へ延ばす。VVを領域、ffをVVの上の正則関数とし、VVに含まれる空でないある開集合の各点xxについてf(x)f(x)がsn⁡\operatorname{sn}の極ではなくsn⁡(f(x),k)=x\operatorname{sn}(f(x),k)=xが成り立つとする。このとき、同じことがVVの全体で成り立つ。

xxのある近傍の各点でffの値がsn⁡\operatorname{sn}の極ではなく、その近傍の上でsn⁡∘f\operatorname{sn}\circ fが恒等写像に一致するようなx∈Vx\in Vの全体をAAと置く。定義からAAは開集合であり、仮定により空でない。AAがVVにおいて閉じていることを示す。x0∈Vx_0\in VをAAの触点とし、AAの点列xm→x0x_m\to x_0を取る。もしf(x0)f(x_0)がsn⁡\operatorname{sn}の極(命題 3.5)であれば、ffの連続性から∣sn⁡(f(xm),k)∣→∞|\operatorname{sn}(f(x_m),k)|\to\inftyとなるはずであるが、xm∈Ax_m\in Aであるからこの値はxmx_mに等しく、収束する列として有界である。ゆえにf(x0)f(x_0)はsn⁡\operatorname{sn}の極ではなく、sn⁡\operatorname{sn}はその点の近傍で正則である。したがって、x0x_0を中心とする円板D0⊆VD_0\subseteq Vでsn⁡∘f\operatorname{sn}\circ fが正則になるものを取ることができる。D0∩AD_0\cap Aは空でない開集合であり、その上でsn⁡∘f\operatorname{sn}\circ fは恒等写像に一致するから、一致の定理(§E5.8 定理 3.1)によりD0D_0の上でも一致する。ゆえにx0∈Ax_0\in Aである。AAはVVにおいて空でない開かつ閉な集合であり、VVは連結であるからA=VA=Vである。関数要素の定義域は領域である(§E5.19 定義 2.1)から、この主張は各(ft,Ut)(f_{t},U_{t})へ適用することができる。

t∈[0,1]t\in[0,1]を任意に固定し、

S={s∈[0,t]:Us の全体で fs の値は sn⁡ の極でなく sn⁡(fs(x),k)=x が成り立つ} S=\{s\in[0,t] : U_{s}\text{ の全体で }f_{s}\text{ の値は }\operatorname{sn}\text{ の極でなく } \operatorname{sn}(f_{s}(x),k)=x\text{ が成り立つ}\}

と置く。出発点の芽に関する等式と直前の局所から大域への議論により0∈S0\in Sである。SSは空でなくttを上界にもつから、実数の完備性により上限s∗=sup⁡Ss^{*}=\sup Sが定まる。

はじめに、次の推移を確かめる。s,r∈[0,1]s,r\in[0,1]が∣r−s∣<δs|r-s|<\delta_{s}を満たすとする。ここでδs\delta_{s}は§E5.19 定義 3.1がssに対して与える正数である。このときγ(r)∈Us∩Ur\gamma(r)\in U_{s}\cap U_{r}であり、(fr,Ur)(f_{r},U_{r})と(fs,Us)(f_{s},U_{s})はγ(r)\gamma(r)において同値であるから、γ(r)\gamma(r)を含む開集合W⊆Us∩UrW\subseteq U_{s}\cap U_{r}の上でfs=frf_{s}=f_{r}が成り立つ。UsU_{s}の全体で結論が成り立てば、WWの各点でfrf_{r}の値はsn⁡\operatorname{sn}の極ではなくsn⁡(fr(x),k)=x\operatorname{sn}(f_{r}(x),k)=xが成り立つから、直前の局所から大域への議論によりUrU_{r}の全体でも結論が成り立つ。UsU_{s}とUrU_{r}の役割は対称であるから、逆向きも同様である。

s∗∈Ss^{*}\in Sを示す。δ=δs∗\delta=\delta_{s^{*}}と置く。s∗s^{*}はSSの上界のうち最小のものでありs∗−δ<s∗s^{*}-\delta<s^{*}であるから、s∗−δs^{*}-\deltaはSSの上界ではない。したがってs∗−δ<s≤s∗s^{*}-\delta<s\le s^{*}を満たすs∈Ss\in Sが存在する。∣s∗−s∣<δ|s^{*}-s|<\deltaであるから、上の推移によりUs∗U_{s^{*}}の全体で結論が成り立ち、s∗∈Ss^{*}\in Sである。

s∗=ts^{*}=tを示す。s∗<ts^{*}<tと仮定し、s∗<r<min⁡{t,s∗+δ}s^{*}<r<\min\{t,s^{*}+\delta\}を満たすrrを取る。∣r−s∗∣<δ|r-s^{*}|<\deltaであるから、上の推移によりUrU_{r}の全体で結論が成り立ち、r∈Sr\in Sである。これはr>s∗=sup⁡Sr>s^{*}=\sup Sに反する。ゆえにs∗=ts^{*}=tであり、t∈St\in Sである。

t∈[0,1]t\in[0,1]は任意であったから、すべてのttについて結論が成り立つ。とくにU1U_{1}がXkX_kに含まれる連結開円板DDである場合、u=f1u=f_{1}はDDの上でsn⁡(u(x),k)=x\operatorname{sn}(u(x),k)=xを満たす。▨

命題 3.13.0<k<10<k<1とし、

Xk=C∖{−1,1,−1/k,1/k},Pk=iK′(k)+2K(k)Z+2iK′(k)Z X_k=\mathbb C\setminus\{-1,1,-1/k,1/k\},\qquad \mathcal P_k=iK'(k)+2K(k)\mathbb Z+2iK'(k)\mathbb Z

と置き、P(x)=(1−x2)(1−k2x2)P(x)=(1-x^{2})(1-k^{2}x^{2})とする。

  1. x=0x=0における定義 1.2の芽F0:x↦uF_0:x\mapsto uは、xx平面のXkX_k内の曲線であってx=0x=0を始点とするどの連続な曲線に沿っても解析接続することができる。
  2. F0F_0のu=0u=0における局所逆の芽s0:u↦xs_0:u\mapsto xは、uu平面のC∖Pk\mathbb C\setminus\mathcal P_k内の曲線であってu=0u=0を始点とするどの連続な曲線σ\sigmaに沿っても解析接続することができる。さらに、σ\sigmaに沿うs0s_0の解析接続の各径数ttにおける関数要素がσ(t)\sigma(t)において定める芽は、系 3.8の theta 商sn⁡(u,k)\operatorname{sn}(u,k)がσ(t)\sigma(t)において定める芽に等しい。
  3. D⊆XkD\subseteq X_kを連結開円板とする。x=0x=0を始点とするXkX_k内の曲線を二つ取り、(1)が与えるそれぞれに沿うF0F_0の解析接続であって、延長の定義域がDDであるものを考え、得られたDDの上の二つの枝を正則関数u1(x),u2(x)u_1(x),u_2(x)と表す。補題 3.12により、j=1,2j=1,2についてsn⁡(uj(x),k)=x\operatorname{sn}(u_j(x),k)=xが成り立つ。さらにDDの各点でuj′(x)2P(x)=1u_j'(x)^{2}P(x)=1が成り立ち、DDの全体でu1′=u2′u_1'=u_2'であるか、DDの全体でu1′=−u2′u_1'=-u_2'であるかのいずれか一方だけが成り立つ。u1′=u2′u_1'=u_2'である場合、差u1−u2u_1-u_2は定数であり、u1=u2u_1=u_2であるか、非零の定数u1−u2u_1-u_2がsn⁡\operatorname{sn}の周期である。u1′=−u2′u_1'=-u_2'である場合、和u1+u2=Cu_1+u_2=Cは定数であり、C−2K(k)=0C-2K(k)=0であるか、非零のC−2K(k)C-2K(k)がsn⁡\operatorname{sn}の周期である。したがって、二つの枝は反射u↦2K(k)−uu\mapsto2K(k)-uと周期移動によって関係する。

証明.F0F_0とs0s_0は§E5.19 定義 2.1の芽であり、曲線に沿う解析接続は§E5.19 定義 3.1の意味で用いる。

(1)は補題 3.11そのものである。同補題が構成する族は、隣り合う円板の共通部分で平方根の枝と積分定数を選び直したものであるから、曲線を一周したときに符号または積分定数が変わり得る。したがってこの操作はFFをXkX_k上の一価関数として定めない。

(2)を示す。定理 3.7により、s0:u↦xs_0:u\mapsto xはsn⁡(u,k)\operatorname{sn}(u,k)のu=0u=0における芽である。命題 3.5と系 3.8により、theta 商はuu平面でちょうどPk\mathcal P_kに極をもつ。Pk\mathcal P_kの相異なる二点の差は2K(k)m+2iK′(k)n2K(k)m+2iK'(k)n((m,n)≠(0,0)(m,n)\ne(0,0))の形であり、その絶対値は2min⁡{K(k),K′(k)}2\min\{K(k),K'(k)\}以上であるから、Pk\mathcal P_kはC\mathbb Cの閉集合であり、C∖Pk\mathbb C\setminus\mathcal P_kは開集合である。σ:[0,1]→C∖Pk\sigma:[0,1]\to\mathbb C\setminus\mathcal P_kをσ(0)=0\sigma(0)=0を満たす連続な曲線とし、各ttに対してdt=inf⁡{∣σ(t)−p∣:p∈Pk}>0d_{t}=\inf\{|\sigma(t)-p| : p\in\mathcal P_k\}>0と置いて、Vt=D(σ(t),dt)⊆C∖PkV_{t}=D(\sigma(t),d_{t})\subseteq\mathbb C\setminus\mathcal P_k、ht=sn⁡(⋅,k)h_{t}=\operatorname{sn}(\cdot,k)のVtV_{t}への制限と定める。σ\sigmaの連続性により、∣s−t∣<δt|s-t|<\delta_{t}を満たすssについて∣σ(s)−σ(t)∣<dt|\sigma(s)-\sigma(t)|<d_{t}となる正数δt\delta_{t}を取ることができる。このときσ(s)∈Vt∩Vs\sigma(s)\in V_{t}\cap V_{s}であり、hth_{t}とhsh_{s}はどちらも同一の正則関数の制限であるから、σ(s)\sigma(s)を含む開集合Vt∩VsV_{t}\cap V_{s}の上で一致する。ゆえに(ht,Vt)t∈[0,1](h_{t},V_{t})_{t\in[0,1]}はσ\sigmaに沿う解析接続であり、(h0,V0)(h_{0},V_{0})が定める芽はs0s_0である。したがってs0s_0はσ\sigmaに沿って解析接続することができる。さらに、s0s_0をσ\sigmaに沿って接続する族が別に与えられたとすると、解析接続の一意性(§E5.19 定理 3.2)により、その族の各ttにおける関数要素は(ht,Vt)(h_{t},V_{t})とσ(t)\sigma(t)において同値である。この議論は theta 商を先に一価の有理型関数として構成したことを用いており、FFの大域的一価性を用いていない。

(3)を示す。補題 3.12により、j=1,2j=1,2についてDDの上でsn⁡(uj(x),k)=x\operatorname{sn}(u_j(x),k)=xが成り立ち、uju_jの値はsn⁡\operatorname{sn}の極ではない。定理 3.6の二つの二次恒等式と導関数公式から、有理型関数の恒等式

(sn⁡′w)2=cn⁡2wdn⁡2w=(1−sn⁡2w)(1−k2sn⁡2w) \left(\operatorname{sn}'w\right)^{2} =\operatorname{cn}^{2}w\operatorname{dn}^{2}w =\left(1-\operatorname{sn}^{2}w\right)\left(1-k^{2}\operatorname{sn}^{2}w\right)

を得る。sn⁡(uj(x),k)=x\operatorname{sn}(u_j(x),k)=xの両辺をxxで微分するとsn⁡′(uj(x))uj′(x)=1\operatorname{sn}'(u_j(x))u_j'(x)=1であり、上の恒等式をw=uj(x)w=u_j(x)で評価すると(sn⁡′(uj(x)))2=(1−x2)(1−k2x2)=P(x)\left(\operatorname{sn}'(u_j(x))\right)^{2}=(1-x^{2})(1-k^{2}x^{2})=P(x)であるから、DDの各点でuj′(x)2P(x)=1u_j'(x)^{2}P(x)=1が成り立つ。DDはXkX_kに含まれる領域であり、補題 3.10 (1)によりDDの上にはϱ2=P\varrho^{2}=Pを満たす正則関数ϱ\varrhoが存在するから、補題 3.10 (3)をu1u_1とu2u_2のそれぞれへ適用すると、uj′u_j'は1/ϱ1/\varrhoと−1/ϱ-1/\varrhoのいずれか一方に等しい。ゆえにDDの全体でu1′=u2′u_1'=u_2'であるかu1′=−u2′u_1'=-u_2'であり、uj′u_j'は零を取らないので二つが同時に成り立つことはない。

u1′=u2′u_1'=u_2'である場合。(u1−u2)′=0(u_1-u_2)'=0でありDDは円板であるから、§E5.4 定理 4.2を線分に沿って適用してu1−u2=Cu_1-u_2=Cは定数である。C=0C=0なら二つは同じ枝である。C≠0C\ne0とする。u2′(x)≠0u_2'(x)\ne0であるためu2u_2は定数でなく、開写像定理(§E5.10 定理 1.1)によりu2(D)u_2(D)は開集合である。u1=u2+Cu_1=u_2+Cとsn⁡(u1(x),k)=x=sn⁡(u2(x),k)\operatorname{sn}(u_1(x),k)=x=\operatorname{sn}(u_2(x),k)により、sn⁡(w+C,k)=sn⁡(w,k)\operatorname{sn}(w+C,k)=\operatorname{sn}(w,k)がこの開集合で成り立つ。一致の定理により、この等式は両辺が有限である領域から有理型関数の等式へ延長されるので、非零のCCは周期である。

u1′=−u2′u_1'=-u_2'である場合。同じ理由でu1+u2=Cu_1+u_2=Cは定数である。このときw=u2(x)w=u_2(x)と置くとC−w=u1(x)C-w=u_1(x)であるから、開集合u2(D)u_2(D)の上でsn⁡(C−w,k)=sn⁡(w,k)\operatorname{sn}(C-w,k)=\operatorname{sn}(w,k)が成り立ち、一致の定理により有理型関数の等式となる。一方、定理 3.9の周期は theta 商の準周期性から独立に得られている。sn⁡\operatorname{sn}の奇関数性(命題 2.5)と2K2Kに関する反周期性からsn⁡(2K−w,k)=sn⁡(w,k)\operatorname{sn}(2K-w,k)=\operatorname{sn}(w,k)が従う。等式sn⁡(C−w,k)=sn⁡(w,k)\operatorname{sn}(C-w,k)=\operatorname{sn}(w,k)においてwwを2K−w2K-wに替えると、左辺はsn⁡(w+C−2K,k)\operatorname{sn}(w+C-2K,k)となり、右辺はsn⁡(2K−w,k)=sn⁡(w,k)\operatorname{sn}(2K-w,k)=\operatorname{sn}(w,k)となる。したがって

sn⁡(w+C−2K,k)=sn⁡(w,k) \operatorname{sn}(w+C-2K,k)=\operatorname{sn}(w,k)

を得る。C−2K=0C-2K=0でなければ、この等式はC−2KC-2Kが非零の周期であることを示す。▨

例 3.14 (q→0q\to0における三角関数への退化).τ=it\tau=itとし、t→∞t\to\infty、すなわちq=e−πt→0q=e^{-\pi t}\to0とする。以下でf∼gf\sim gは、ggが零でない点について比f/gf/gがt→∞t\to\inftyで11へ収束することを表す。また、集合SSの上で収束が一様であるとは、SSに属してその式が定義される点についての差の絶対値の上限が、t→∞t\to\inftyで00へ収束することをいう。命題 2.12の四つの積表示から

a∼2q1/4,b→1,c→1,K→π2,k→0 a\sim2q^{1/4},\quad b\to1,\quad c\to1,\quad K\to\frac\pi2,\quad k\to0

である。またϑ1(v)∼2q1/4sin⁡v\vartheta _1(v)\sim2q^{1/4}\sin v、ϑ2(v)∼2q1/4cos⁡v\vartheta _2(v)\sim2q^{1/4}\cos v、ϑ3(v),ϑ4(v)→1\vartheta _3(v),\vartheta _4(v)\to1であり、これら四つの収束はvvのコンパクト集合の上で一様である。

これらの根拠は次のとおりである。vvの動く範囲を含むコンパクト集合SSを固定し、M=sup⁡v∈S∣cos⁡2v∣<∞M=\sup_{v\in S}|\cos2v|<\inftyと置く。上の四つの積表示に現れる無限積の因子は1+ar(v)1+a_{r}(v)の形をしており、0<q<10<q<1に対して∣ar(v)∣≤q2r|a_{r}(v)|\le q^{2r}または∣ar(v)∣≤2Mq2r−1+q4r−2|a_{r}(v)|\le2Mq^{2r-1}+q^{4r-2}で抑えられるから、∑r≥1∣ar(v)∣\sum_{r\ge1}|a_{r}(v)|はvvに依存しないqqの等比級数

q21−q2+2Mq1−q2+q21−q4 \frac{q^{2}}{1-q^{2}}+\frac{2Mq}{1-q^{2}}+\frac{q^{2}}{1-q^{4}}

以下であり、この上界はq→0q\to0で00へ収束する。有限積についての不等式

∣∏r=1N(1+ar)−1∣≤∏r=1N(1+∣ar∣)−1≤e∑r≥1∣ar∣−1 \left|\prod_{r=1}^{N}(1+a_{r})-1\right| \le\prod_{r=1}^{N}(1+|a_{r}|)-1 \le e^{\sum_{r\ge1}|a_{r}|}-1

をN→∞N\to\inftyとすると、四つの無限積と11との差はSSの上で一様に00へ収束する。したがってϑ3,ϑ4\vartheta _3,\vartheta _4は11へ、ϑ1/(2q1/4sin⁡v)\vartheta _1/(2q^{1/4}\sin v)とϑ2/(2q1/4cos⁡v)\vartheta _2/(2q^{1/4}\cos v)は11へ、いずれもSSの上で一様に収束する。v=0v=0を代入するとb→1b\to1、c→1c\to1を得、ϑ2\vartheta _2の表示からa∼2q1/4a\sim2q^{1/4}を得る。定義 3.2のKϑ=πb2/2K_\vartheta=\pi b^{2}/2とk=a2/b2k=a^{2}/b^{2}、および定理 3.7のK(k)=KϑK(k)=K_\varthetaから、K→π/2K\to\pi/2とk→0k\to0が従う。ゆえに極を避けたuuのコンパクト集合の上で

sn⁡(u,k)→sin⁡u,cn⁡(u,k)→cos⁡u,dn⁡(u,k)→1 \operatorname{sn}(u,k)\to\sin u,\qquad \operatorname{cn}(u,k)\to\cos u,\qquad \operatorname{dn}(u,k)\to1

となる。以上により、ここで扱った三つの函数sn⁡\operatorname{sn}、cn⁡\operatorname{cn}、dn⁡\operatorname{dn}は、虚周期2iK′(k)2iK'(k)が無限遠へ移るこの極限で、それぞれsin⁡\sin、cos⁡\cos、および定数関数11へ収束する。一般の二重周期函数についてはこの例では何も主張しない。

4 modular lambda 函数と level 2

theta 定数の比a4/b4a^{4}/b^{4}は、modular lambda 函数を定める。虚数変換と準周期公式はSSとTTに対する基本変換を与え、theta の二倍公式はλ(τ)\lambda(\tau)とλ(2τ)\lambda(2\tau)の代数関係を与える。

定義 4.1.τ∈H\tau\in\mathbb Hに対して

λ(τ)=a(τ)4b(τ)4=ϑ2(0,τ)4ϑ3(0,τ)4 \lambda(\tau)=\frac{a(\tau)^{4}}{b(\tau)^{4}} =\frac{\vartheta _2(0,\tau)^{4}}{\vartheta _3(0,\tau)^{4}}

と定める。この関数をmodular lambda 函数 (modular lambda function) という。命題 2.12によりb(τ)≠0b(\tau)\ne0であるから、右辺はH\mathbb Hの各点で定まる。ここでλ=k2\lambda=k^{2}であってkkではない。

命題 4.2.定義 4.1のλ\lambdaはH\mathbb Hの上で正則である。またτ=it\tau=it(t>0t>0)では、定義 3.2の moduluskkと parameterm=k2m=k^{2}に対してλ(it)=k2=m\lambda(it)=k^{2}=mが成り立つ。

証明.定理 2.3により、τ↦a(τ)=ϑ2(0,τ)\tau\mapsto a(\tau)=\vartheta _2(0,\tau)とτ↦b(τ)=ϑ3(0,τ)\tau\mapsto b(\tau)=\vartheta _3(0,\tau)はH\mathbb Hの上で正則である。命題 2.12によりb(τ)≠0b(\tau)\ne0であるから、商a4/b4a^{4}/b^{4}はH\mathbb Hの上で正則である。τ=it\tau=itでは定義 3.2によりk=a2/b2k=a^{2}/b^{2}であるから、λ(it)=(a2/b2)2=k2=m\lambda(it)=(a^{2}/b^{2})^{2}=k^{2}=mである。▨

定理 4.3.τ∈H\tau\in\mathbb Hとし、Sτ=−1/τS\tau=-1/\tau、Tτ=τ+1T\tau=\tau+1と置く。このとき

λ(Sτ)=1−λ(τ),λ(Tτ)=λ(τ)λ(τ)−1 \lambda(S\tau)=1-\lambda(\tau), \qquad \lambda(T\tau)=\frac{\lambda(\tau)}{\lambda(\tau)-1}

が成り立つ。とくにλ(i)=1/2\lambda(i)=1/2である。

証明.定理 2.9をz=0z=0に適用するとa(Sτ)=s(τ)c(τ)a(S\tau)=s(\tau)c(\tau)、b(Sτ)=s(τ)b(τ)b(S\tau)=s(\tau)b(\tau)である。四次恒等式から

λ(Sτ)=c4b4=1−a4b4=1−λ(τ) \lambda(S\tau)=\frac{c^{4}}{b^{4}}=1-\frac{a^{4}}{b^{4}}=1-\lambda(\tau)

を得る。TTに関する公式ではa(Tτ)=eπi/4a(τ)a(T\tau)=e^{\pi i/4}a(\tau)、b(Tτ)=c(τ)b(T\tau)=c(\tau)である。(eπi/4)4=−1(e^{\pi i/4})^{4}=-1という位相因子の符号を保つと

λ(Tτ)=−a4c4=a4/b4a4/b4−1 \lambda(T\tau)=-\frac{a^{4}}{c^{4}} =\frac{a^{4}/b^{4}}{a^{4}/b^{4}-1}

となる。最後にS(i)=iS(i)=iであるから、第一式にτ=i\tau=iを代入するとλ(i)=1−λ(i)\lambda(i)=1-\lambda(i)、すなわちλ(i)=1/2\lambda(i)=1/2である。▨

系 4.4. すべてのτ∈H\tau\in\mathbb Hに対してa(τ)≠0a(\tau)\ne0かつc(τ)≠0c(\tau)\ne0である。さらに

1−λ(τ)=c(τ)4b(τ)4 1-\lambda(\tau)=\frac{c(\tau)^{4}}{b(\tau)^{4}}

であり、λ(τ)≠0\lambda(\tau)\ne0かつλ(τ)≠1\lambda(\tau)\ne1である。すなわちλ\lambdaはH\mathbb Hの上で値00と値11を取らない。

証明.命題 2.12により、ϑ2\vartheta _2の零点はΛτ\Lambda_\tauによる剰余類π/2\pi/2に、ϑ4\vartheta _4の零点は剰余類πτ/2\pi\tau/2に限られる。00がこの二つの剰余類に属さないことを見る。π/2=πm+πτn\pi/2=\pi m+\pi\tau nを満たすm,n∈Zm,n\in\mathbb Zがあるとすると、1/2=m+τn1/2=m+\tau nである。Im⁡τ>0\operatorname{Im}\tau>0であるから虚部の比較によりn=0n=0となり、m=1/2m=1/2となってm∈Zm\in\mathbb Zに反する。πτ/2=πm+πτn\pi\tau/2=\pi m+\pi\tau nの場合は虚部の比較によりn=1/2n=1/2となり、同じく矛盾する。したがってa(τ)=ϑ2(0,τ)≠0a(\tau)=\vartheta _2(0,\tau)\ne0かつc(τ)=ϑ4(0,τ)≠0c(\tau)=\vartheta _4(0,\tau)\ne0である。

定理 2.14のb4=a4+c4b^{4}=a^{4}+c^{4}をb4b^{4}で割ると1=λ(τ)+c4/b41=\lambda(\tau)+c^{4}/b^{4}であるから、1−λ(τ)=c4/b41-\lambda(\tau)=c^{4}/b^{4}である。a≠0a\ne0からλ(τ)=a4/b4≠0\lambda(\tau)=a^{4}/b^{4}\ne0であり、c≠0c\ne0から1−λ(τ)≠01-\lambda(\tau)\ne0、すなわちλ(τ)≠1\lambda(\tau)\ne1である。▨

定義 4.5.N≥2N\ge2を整数とする。二変数多項式ΦN∈C[X,Y]∖{0}\Phi_N\in\mathbb C[X,Y]\setminus\{0\}が

ΦN(λ(τ),λ(Nτ))=0(τ∈H) \Phi_N(\lambda(\tau),\lambda(N\tau))=0\qquad(\tau\in\mathbb H)

を満たすとき、この多項式関係を modular lambda 函数のレベルNNの modular 方程式 (level-NNmodular equation for the modular lambda function) という。本記事では level 2 の lambda 方程式に加え、同じ theta 定数の八乗根を用いる level 5 の枝付き方程式を証明する。

命題 4.6.τ=it\tau=it(t>0t>0)とし、平方根は正の実数を取るものとする。この場合は

λ(2τ)=(1−1−λ(τ)1+1−λ(τ))2 \lambda(2\tau)= \left(\frac{1-\sqrt{1-\lambda(\tau)}} {1+\sqrt{1-\lambda(\tau)}}\right)^{2}

が成り立つ。一方、任意のτ∈H\tau\in\mathbb Hに対してx=λ(τ)x=\lambda(\tau)、y=λ(2τ)y=\lambda(2\tau)と置けば

x2(1+y)2−4y(2−x)2=0 x^{2}(1+y)^{2}-4y(2-x)^{2}=0

が成り立つ。したがって、この全H\mathbb H上の多項式関係は定義 4.5の意味でレベル22の modular 方程式である。

証明.命題 2.13を用いる。A=ϑ3(0,2τ)A=\vartheta _3(0,2\tau)、B=ϑ2(0,2τ)B=\vartheta _2(0,2\tau)とすると

b(τ)2=A2+B2,c(τ)2=A2−B2. b(\tau)^2=A^2+B^2,\qquad c(\tau)^2=A^2-B^2.

τ=it\tau=itでは命題 3.1によりb,cb,cは正であり、2τ=2it2\tau=2itについて同じ命題を適用するとA,BA,Bも正である。したがって

1−λ(τ)=c2b2=A2−B2A2+B2 \sqrt{1-\lambda(\tau)}=\frac{c^2}{b^2} =\frac{A^2-B^2}{A^2+B^2}

であり、右辺からB2/A2B^2/A^2を解けば主張の二倍公式を得る。

r=y>0r=\sqrt y>0と置くと、二倍公式はx=4r/(1+r)2x=4r/(1+r)^2と同値である。この関係をx(1+y)=2r(2−x)x(1+y)=2r(2-x)と書き、両辺を二乗してr2=yr^2=yを代入するとx2(1+y)2=4y(2−x)2x^{2}(1+y)^{2}=4y(2-x)^{2}を得る。平方根を消去して得た多項式は必要条件である。本節ではx,yx,yが元の正の平方根を満たす値から出発しているため、二乗による余分な解を採用してはいない。

次に、τ∈H\tau\in\mathbb Hに対して

G(τ)=λ(τ)2(1+λ(2τ))2−4λ(2τ)(2−λ(τ))2 G(\tau)=\lambda(\tau)^2(1+\lambda(2\tau))^2 -4\lambda(2\tau)(2-\lambda(\tau))^2

と置く。命題 4.2によりλ\lambdaはH\mathbb H上で正則であり、τ∈H\tau\in\mathbb Hなら2τ∈H2\tau\in\mathbb Hである。したがって、GGはH\mathbb H上で正則である。前段の計算はG(it)=0G(it)=0がすべてのt>0t>0に対して成り立つことを示している。正の虚軸は、例えばi(1+1/n)→i∈Hi(1+1/n)\to i\in\mathbb HによりH\mathbb H内に集積点をもつ。正則関数の一致の定理(§E5.8 定理 3.1)からG≡0G\equiv0がH\mathbb H上で成り立つ。等式G≡0G\equiv0が主張の全H\mathbb H上の多項式恒等式である。▨

5 level 5 の六次関係と Hermite の有限 certificate

theta 積は、八乗根の枝を上半平面上で直接固定する。q=eπiτq=e^{\pi i\tau}とし、

ϕ(τ)=2q1/8∏n≥11+q2n1+q2n−1,ψ(τ)=∏n≥11−q2n−11+q2n−1 \phi(\tau)=\sqrt2q^{1/8}\prod_{n\ge1}\frac{1+q^{2n}}{1+q^{2n-1}}, \qquad \psi(\tau)=\prod_{n\ge1}\frac{1-q^{2n-1}}{1+q^{2n-1}}

と置く。積表示と四次恒等式からϕ8=λ\phi^8=\lambda、ψ8=1−λ\psi^8=1-\lambdaが成り立つ。また、ϕ(it),ψ(it)>0\phi(it),\psi(it)>0であり、分数冪の規約からϕ(τ+8)=−ϕ(τ)\phi(\tau+8)=-\phi(\tau)、ϕ(τ+16)=ϕ(τ)\phi(\tau+16)=\phi(\tau)を得る。以下では、この積が cusp の近くで定める芽と、その芽から指定した道に沿って得られる解析接続だけを用いる。

定義 5.1. 許容される枝 datum (admissible branch datum of order five) とは、theta 積が cusp の近くで定める芽、またはその芽を指定した道に沿って解析接続したものをいう。ω∈H\omega\in\mathbb Hとし、同じ許容される枝 datum に対してu=ϕ(ω)u=\phi(\omega)、v=ϕ(5ω)v=\phi(5\omega)と置く。さらに

Φ(ω)=[ϕ(5ω)+ϕ(ω/5)]⋅[ϕ((ω+16)/5)−ϕ((ω+64)/5)]⋅[ϕ((ω+32)/5)−ϕ((ω+48)/5)]\begin{aligned} \Phi(\omega)={}&[\phi(5\omega)+\phi(\omega/5)]\\ &\cdot[\phi((\omega+16)/5)-\phi((\omega+64)/5)]\\ &\cdot[\phi((\omega+32)/5)-\phi((\omega+48)/5)] \end{aligned}

と置き、Φr=Φ(ω+16r)\Phi_r=\Phi(\omega+16r)(r=0,…,4r=0,\ldots,4)とする。u,vu,vを位数55の枝変数 (order-five branch variables)、Φ\Phiを三因子積 (three-factor product) という。

定理 5.2. 上の枝変数は

u6−v6+5u2v2(u2−v2)−4uv(1−u4v4)=0 u^6-v^6+5u^2v^2(u^2-v^2)-4uv(1-u^4v^4)=0

を満たす。

証明. Jacobi が五次の変換に用いた二つの変数を theta 商から作る。ν∈{1,5}\nu\in\{1,5\}に対してaν=a(νω)a_\nu=a(\nu\omega)、bν=b(νω)b_\nu=b(\nu\omega)、cν=c(νω)c_\nu=c(\nu\omega)と置き、

x(z)=b1a1ϑ1(z,ω)ϑ4(z,ω),y(z)=b5a5ϑ1(5z,5ω)ϑ4(5z,5ω) x(z)=\frac{b_1}{a_1}\frac{\vartheta _1(z,\omega)}{\vartheta _4(z,\omega)}, \qquad y(z)=\frac{b_5}{a_5}\frac{\vartheta _1(5z,5\omega)}{\vartheta _4(5z,5\omega)}

と置く。命題 2.12によりaν,bν,cνa_\nu,b_\nu,c_\nuは零でない。また、Lω=2πZ+πωZ\mathcal L_\omega=2\pi\Z+\pi\omega\ZとL5ω=2πZ+5πωZ\mathcal L_{5\omega}=2\pi\Z+5\pi\omega\Zに対して

5Lω⊂L5ω,[L5ω:5Lω]=5 5\mathcal L_\omega\subset\mathcal L_{5\omega}, \qquad [\mathcal L_{5\omega}:5\mathcal L_\omega]=5

である。命題 2.4によりxxとyyはともにLω\mathcal L_\omegaを周期格子にもつ。命題 2.12の単純零点を上の格子包含で引き戻すと、Eω=C/LωE_\omega=\C/\mathcal L_\omega上の零点と極は次の表になる。

零点(modLω)極(modLω)x0, ππω/2, π+πω/2yjπ/5 (0≤j≤9)πω/2+jπ/5 (0≤j≤9)\begin{array}{c|c|c} &\text{零点}\pmod{\mathcal L_\omega}&\text{極}\pmod{\mathcal L_\omega}\\ \hline x&0,\ \pi&\pi\omega/2,\ \pi+\pi\omega/2\\ y&j\pi/5\ (0\le j\le9)&\pi\omega/2+j\pi/5\ (0\le j\le9) \end{array}

すべての零点と極は単純である。特にx:Eω→P1x:E_\omega\to\mathbb P^1は次数22である。theta 函数の奇偶性と準周期性から

x(π−z)=x(z),y(π−z)=y(z),x(−z)=−x(z),y(−z)=−y(z) x(\pi-z)=x(z),\qquad y(\pi-z)=y(z),\qquad x(-z)=-x(z),\qquad y(-z)=-y(z)

を得る。従ってxxの一般のファイバー{z,π−z}\{z,\pi-z\}上でyyは同じ値を取り、y=R(x)y=R(x)を満たす有理関数RRが存在する。yyの十個の零点はz↦π−zz\mapsto\pi-zで五対になるため、RRの分子の次数は55である。yyの十個の極のうちj=0,5j=0,5の二点はxxの二つの極であり、残る八点は四対になる。従ってRRの分母の次数は44であり、RRはx=∞x=\inftyに単純な極をもつ。さらにRRは奇関数でR(0)=0R(0)=0であるから、R=U/VR=U/Vを互いに素でV(0)=1V(0)=1となるように書けば、UUは奇な次数55の多項式、VVは偶な次数44の多項式である。

theta 積からaν/bν=ϕ(νω)2a_\nu/b_\nu=\phi(\nu\omega)^2である。定理 2.14を二つの theta 商へ代入すると

x′(z)2=b14(1−x(z)2)(1−u8x(z)2),y′(z)2=25b54(1−y(z)2)(1−v8y(z)2).\begin{aligned} x'(z)^2&=b_1^4(1-x(z)^2)(1-u^8x(z)^2),\\ y'(z)^2&=25b_5^4(1-y(z)^2)(1-v^8y(z)^2). \end{aligned}

z=0z=0で値11を取る平方根の枝を選ぶ。λ=v4\lambda=v^4と置き、1+2α=5b52/b121+2\alpha=5b_5^2/b_1^2と定めると、上の二式から

dy(1−y2)(1−λ2y2)=(1+2α)dx(1−x2)(1−u8x2) \frac{dy}{\sqrt{(1-y^2)(1-\lambda^2y^2)}} =(1+2\alpha)\frac{dx}{\sqrt{(1-x^2)(1-u^8x^2)}}

となる。Jacobi の五次の変換の係数比較をこのR=U/VR=U/Vへ適用する。分母と分子、およびy=−1y=-1の逆像にあるx=−1x=-1以外の二重零点を

V=1+b′x2+b′′x4,U=x(a+a′x2+a′′x4),A=1+αx+βx2\begin{aligned} V&=1+b'x^2+b''x^4,\\ U&=x(a+a'x^2+a''x^4),\\ A&=1+\alpha x+\beta x^2 \end{aligned}

と置く。微分式を二乗して分母を払い、y=−1y=-1の逆像を表す多項式を因数分解するとV+U=(1+x)A2V+U=(1+x)A^2を得る。この等式の同次係数を比較すると、次の有限表を得る。

比較する係数得られる等式x,x2a=1+2α,b′=2α+2β+α2x3,x4,x5a′=2β+α2+2αβ,b′′=β(2α+β),a′′=β2\begin{array}{c|l} \text{比較する係数}&\text{得られる等式}\\ \hline x,x^2&a=1+2\alpha,\quad b'=2\alpha+2\beta+\alpha^2\\ x^3,x^4,x^5&a'=2\beta+\alpha^2+2\alpha\beta,\quad b''=\beta(2\alpha+\beta),\quad a''=\beta^2 \end{array}

原点でx′(0)=b12x'(0)=b_1^2、y′(0)=5b52y'(0)=5b_5^2である。従って、係数表のR′(0)=a=1+2αR'(0)=a=1+2\alphaは次の式で theta 商の乗数と一致する。

R′(0)=y′(0)x′(0)=5b52b12=1+2α R'(0)=\frac{y'(0)}{x'(0)}=\frac{5b_5^2}{b_1^2}=1+2\alpha

q=eπiω→0q=e^{\pi i\omega}\to0とすると theta 級数から

b1=1+2q+O(q4),b5=1+2q5+O(q20),1+2α=5+O(q),α=2+O(q) b_1=1+2q+O(q^4),\qquad b_5=1+2q^5+O(q^{20}), \qquad 1+2\alpha=5+O(q),\qquad \alpha=2+O(q)

を得る。従って、Jacobi の係数α\alphaの cusp における枝はα→2\alpha\to2である。

theta 級数の添字を一つ移すと、τ∈H\tau\in\mathbb Hに対して

ϑ1(z+πτ/2,τ)=ie−iz−πiτ/4ϑ4(z,τ),ϑ4(z+πτ/2,τ)=ie−iz−πiτ/4ϑ1(z,τ)\begin{aligned} \vartheta _1(z+\pi\tau/2,\tau) &=i e^{-iz-\pi i\tau/4}\vartheta _4(z,\tau),\\ \vartheta _4(z+\pi\tau/2,\tau) &=i e^{-iz-\pi i\tau/4}\vartheta _1(z,\tau) \end{aligned}

を得る。a1/b1=u2a_1/b_1=u^2、a5/b5=v2a_5/b_5=v^2であるから、二つの theta 商は

x(z+πω/2)=1u4x(z),y(z+πω/2)=1v4y(z) x(z+\pi\omega/2)=\frac1{u^4x(z)}, \qquad y(z+\pi\omega/2)=\frac1{v^4y(z)}

を満たす。k=u4k=u^4と置くと、y=R(x)y=R(x)から次の相反恒等式を得る。

R ⁣(1kx)=1λR(x) R\!\left(\frac1{kx}\right)=\frac1{\lambda R(x)}

この恒等式へR=U/VR=U/Vを代入して負冪を払うと

a′′+a′k2x2+ak4x4kx(b′′+b′k2x2+k4x4)=V(x)λx(a+a′x2+a′′x4) \frac{a''+a'k^2x^2+ak^4x^4} {kx(b''+b'k^2x^2+k^4x^4)} =\frac{V(x)}{\lambda x(a+a'x^2+a''x^4)}

となる。両辺の分子と分母は互いに素であり、UUの次数が55なのでa′′=β2≠0a''=\beta^2\ne0である。従って、二組の分子と分母は同じ定数倍だけ異なる。分子の定数項を比較すると、その定数はa′′a''であり、

a′′+a′k2x2+ak4x4=a′′V(x),k(b′′+b′k2x2+k4x4)=λa′′(a+a′x2+a′′x4)\begin{aligned} a''+a'k^2x^2+ak^4x^4&=a''V(x),\\ k(b''+b'k^2x^2+k^4x^4) &=\lambda a''(a+a'x^2+a''x^4) \end{aligned}

を得る。第一式のx2,x4x^2,x^4係数と第二式のx4x^4係数を比較すると

a′k2=a′′b′,ak4=a′′b′′,k5=λ(a′′)2 a'k^2=a''b',\qquad ak^4=a''b'',\qquad k^5=\lambda(a'')^2

となる。最後の式とa′′=β2a''=\beta^2からβ4=k5/λ\beta^4=k^5/\lambdaを得る。そこで

w=u5β w=\frac{u^5}{\beta}

と定める。k=u4k=u^4なのでw4=λ=v4w^4=\lambda=v^4であり、β=u5/w\beta=u^5/wである。また、後二つの係数関係から

k(2α+β)=λβ(1+2α) k(2\alpha+\beta)=\lambda\beta(1+2\alpha)

を得る。theta 積からk5/λ→256k^5/\lambda\to256、λ/k→0\lambda/k\to0であるため、α→2\alpha\to2とこの等式からβ→−4\beta\to-4を得る。一方、最初の二つの係数関係からkkを消去し、係数表を代入すると

0=(a′)2b′′−aa′′(b′)2=−2α2β(β−1){α3−2β(1+α+β)} 0=(a')^2b''-aa''(b')^2 =-2\alpha^2\beta(\beta-1) \{\alpha^3-2\beta(1+\alpha+\beta)\}

となる。従って cusp の近傍では

α3=2β(1+α+β) \alpha^3=2\beta(1+\alpha+\beta)

が成り立つ。さらに、係数表を直接展開すると

b′(α−2β)−a′(2−α)=2{α3−2β(1+α+β)}=0 b'(\alpha-2\beta)-a'(2-\alpha) =2\{\alpha^3-2\beta(1+\alpha+\beta)\}=0

を与える。cusp ではa′→−20a'\to-20なので、最初の係数関係と上の等式から

u2(2−α)=w2(α−2β) u^2(2-\alpha)=w^2(\alpha-2\beta)

を得る。分母を用いない二つの等式へk=u4k=u^4、λ=w4\lambda=w^4、β=u5/w\beta=u^5/wを代入すると

2αw(1−uw3)=u(w4−u4),α(w2+u2)=2u2(1+u3w) 2\alpha w(1-uw^3)=u(w^4-u^4),\qquad \alpha(w^2+u^2)=2u^2(1+u^3w)

となる。α\alphaを交差乗算で消去すれば

(u2+w2)(u4−w4)+4uw(1+u3w)(1−uw3)=0, (u^2+w^2)(u^4-w^4)+4uw(1+u^3w)(1-uw^3)=0,

すなわち

u6−w6+5u2w2(u2−w2)+4uw(1−u4w4)=0 u^6-w^6+5u^2w^2(u^2-w^2)+4uw(1-u^4w^4)=0

を得る。正の虚軸上の変換後の周期比は5ω5\omegaであり、上の theta 商の定義からw4=v4w^4=v^4である。さらにIm⁡ω→∞\operatorname{Im}\omega\to\inftyとすると、theta 積からv∼u5/4>0v\sim u^5/4>0である。一方、表示したα→2\alpha\to2を二つの多項式等式へ代入するとw∼−u5/4w\sim-u^5/4となる。従ってw/v=−1w/v=-1であり、これは Fricke の符号規約w/v=(−1)(52−1)/8=−1w/v=(-1)^{(5^2-1)/8}=-1と一致する。よってw=−vw=-vである。代入すると主張の符号をもつ六次式が得られる。両辺は theta 積が定める正則関数なので一致の定理によってH\mathbb Hへ延長され、さらに解析接続の一意性によってすべての許容される枝 datum で成り立つ。▨

六次式から Hermite の五次式を得る有限計算を記述する。以下ではz=ϕ(ω)z=\phi(\omega)、h=ϕ(5ω)h=\phi(5\omega)と置き、添字を55を法として読む。また

Aj=ϕ ⁣(ω+16j5),dr=(Ar+1−Ar−1)(Ar+2−Ar−2) A_j=\phi\!\left(\frac{\omega+16j}{5}\right),\qquad d_r=(A_{r+1}-A_{r-1})(A_{r+2}-A_{r-2})

と置く。このときΦr=(h+Ar)dr\Phi_r=(h+A_r)d_rである。

補題 5.3 (五次 orbit の有限正規形).B=2000z4(1−z8)2B=2000z^4(1-z^8)^2、C=6455z3(1−z8)2(1+z8)C=64\sqrt{5^5}z^3(1-z^8)^2(1+z^8)とする。五つのΦr\Phi_rの基本対称式をeie_iと書けば

e1=e2=e3=0,e4=−B,e5=−C e_1=e_2=e_3=0,\qquad e_4=-B,\qquad e_5=-C

が成り立つ。

証明. 六次式を(u,v)=(Aj,z)(u,v)=(A_j,z)に適用し、ϕ(ω+16j)=z\phi(\omega+16j)=zを用いると、AjA_jは

F(X,z)=X6+4z5X5+5z2X4−5z4X2−4zX−z6 F(X,z)=X^6+4z^5X^5+5z^2X^4-5z^4X^2-4zX-z^6

の根である。六次式の左辺を

R=z6−h6+5z4h2−5z2h4−4zh+4z5h5 R=z^6-h^6+5z^4h^2-5z^2h^4-4zh+4z^5h^5

と置くと、F(−h,z)=−R=0F(-h,z)=-R=0である。したがってF(X,z)=(X+h)P(X)F(X,z)=(X+h)P(X)であり、

P(X)=X5+(4z5−h)X4+(h2−4hz5+5z2)X3+(−h3+4h2z5−5hz2)X2+(h4−4h3z5+5h2z2−5z4)X+(−h5+4h4z5−5h3z2+5hz4−4z).\begin{aligned} P(X)={}&X^5+(4z^5-h)X^4+(h^2-4hz^5+5z^2)X^3\\ &+(-h^3+4h^2z^5-5hz^2)X^2\\ &+(h^4-4h^3z^5+5h^2z^2-5z^4)X\\ &+(-h^5+4h^4z^5-5h^3z^2+5hz^4-4z). \end{aligned}

特に、PPの根の基本対称式は

s1=h−4z5,s2=h2−4hz5+5z2,s3=h3−4h2z5+5hz2,s4=h4−4h3z5+5h2z2−5z4,s5=h5−4h4z5+5h3z2−5hz4+4z\begin{aligned} s_1&=h-4z^5,\\ s_2&=h^2-4hz^5+5z^2,\\ s_3&=h^3-4h^2z^5+5hz^2,\\ s_4&=h^4-4h^3z^5+5h^2z^2-5z^4,\\ s_5&=h^5-4h^4z^5+5h^3z^2-5hz^4+4z \end{aligned}

である。ここまでの多項式除算の剰余は−R-Rであり、六次式のほかに根の順序を仮定していない。

巡回順序を theta 積から選ぶ。D=∑rdrD=\sum_rd_r、N=∑rArdrN=\sum_rA_rd_rと置くとe1=hD+Ne_1=hD+Nである。五ラベルの巡回順序は回転で割ると5!/5=245!/5=24個ある。相異なる五ラベルをもつ巡回順序は反転で固定されないため、反転も同一視した無向巡回順序は24/2=1224/2=12個ある。次に表示する六順序は、二歩取り(step-two、星形五角形)変換で対にしたLLの符号類の代表である。

(0,1,2,3,4), (0,1,2,4,3), (0,1,3,2,4),(0,1,3,4,2), (0,1,4,2,3), (0,1,4,3,2).\begin{gathered} (0,1,2,3,4),\ (0,1,2,4,3),\ (0,1,3,2,4),\\ (0,1,3,4,2),\ (0,1,4,2,3),\ (0,1,4,3,2). \end{gathered}

巡回順序c=(c0,c1,c2,c3,c4)c=(c_0,c_1,c_2,c_3,c_4)に対して

dr(c)=(Acr+1−Acr−1)(Acr+2−Acr−2),Dc=∑rdr(c),Nc=∑rAcrdr(c),Lc=hDc+Nc\begin{aligned} d_r^{(c)}&=(A_{c_{r+1}}-A_{c_{r-1}})(A_{c_{r+2}}-A_{c_{r-2}}),\\ D_c&=\sum_rd_r^{(c)},\qquad N_c=\sum_rA_{c_r}d_r^{(c)},\qquad L_c=hD_c+N_c \end{aligned}

と置く。さらにc(2)=(c0,c2,c4,c1,c3)c^{(2)}=(c_0,c_2,c_4,c_1,c_3)と置く。添字を55を法として計算すると、c(2)c^{(2)}における量は

dr(c(2))=−d2r(c),Dc(2)=−Dc,Nc(2)=−Nc,Lc(2)=−Lc d_r^{(c^{(2)})}=-d_{2r}^{(c)},\qquad D_{c^{(2)}}=-D_c,\qquad N_{c^{(2)}}=-N_c,\qquad L_{c^{(2)}}=-L_c

を満たす。二歩取り変換を二回行うと反転順序になるため、この変換は十二個の無向巡回順序の上で対合を定める。この対合は不動点をもたない。実際、c(2)c^{(2)}がccの回転または反転と一致するならば、位置添字の写像r↦2rr\mapsto2rはr↦r+kr\mapsto r+kまたはr↦−r+kr\mapsto-r+kと一致するはずであるが、一次項の係数22は1,−11,-1のどちらとも55を法として一致しない。表示した六代表と二歩取りで対応する順序は、次の十二順序を尽くす。

cc(2)(0,1,2,3,4)(0,2,4,1,3)(0,1,2,4,3)(0,2,3,1,4)(0,1,3,2,4)(0,3,4,1,2)(0,1,3,4,2)(0,3,2,1,4)(0,1,4,2,3)(0,4,3,1,2)(0,1,4,3,2)(0,4,2,1,3)\begin{array}{c|c} c&c^{(2)}\\ \hline (0,1,2,3,4)&(0,2,4,1,3)\\ (0,1,2,4,3)&(0,2,3,1,4)\\ (0,1,3,2,4)&(0,3,4,1,2)\\ (0,1,3,4,2)&(0,3,2,1,4)\\ (0,1,4,2,3)&(0,4,3,1,2)\\ (0,1,4,3,2)&(0,4,2,1,3) \end{array}

従って十二順序のいずれかでL=0L=0となることと、表示した六代表のいずれかでL=0L=0となることは同値である。また、

∏十二無向順序L=∏c∈CLcLc(2)=(−1)6(∏c∈CLc)2=(∏c∈CLc)2 \prod_{\text{十二無向順序}}L =\prod_{c\in\mathcal C}L_cL_{c^{(2)}} =(-1)^6\left(\prod_{c\in\mathcal C}L_c\right)^2 =\left(\prod_{c\in\mathcal C}L_c\right)^2

である。ここでC\mathcal Cは表示した六代表の集合である。各代表でL=hD+NL=hD+Nを作り、六個の積をs1,…,s5s_1,\ldots,s_5で対称化して上の五式を代入すると

∏c∈CLc=327680RQ \prod_{c\in\mathcal C}L_c=327680RQ

となる。ここで、同じ計算を再現するための辞書式正規形は

Q=h12−8h11z5+16h10z10+10h10z2−40h9z7+15h8z4+40h7z9+8h7z−25h6z14−59h6z6+100h5z19−92h5z11+40h5z3−125h4z16+140h4z8−40h3z5+125h2z18−115h2z10+16h2z2−100hz15+92hz7+125z20−224z12+100z4.\begin{aligned} Q={}&h^{12}-8h^{11}z^5+16h^{10}z^{10}+10h^{10}z^2-40h^9z^7+15h^8z^4\\ &+40h^7z^9+8h^7z-25h^6z^{14}-59h^6z^6+100h^5z^{19}-92h^5z^{11}\\ &+40h^5z^3-125h^4z^{16}+140h^4z^8-40h^3z^5+125h^2z^{18}\\ &-115h^2z^{10}+16h^2z^2-100hz^{15}+92hz^7+125z^{20}-224z^{12}+100z^4. \end{aligned}

ζ=e2πi/5\zeta=e^{2\pi i/5}、t=q1/40t=q^{1/40}と置く。積表示にH(T)=∏n≥1(1+T2n)/(1+T2n−1)H(T)=\prod_{n\ge1}(1+T^{2n})/(1+T^{2n-1})を用いると

Aj=2 ζjtH(ζ3jt8),h=2 t25H(t200) A_j=\sqrt2\,\zeta^jtH(\zeta^{3j}t^8),\qquad h=\sqrt2\,t^{25}H(t^{200})

である。各巡回順序に対するL/(22t3)L/(2\sqrt2t^3)の主係数は次の表になる。

巡回順序L/(22t3) の主係数(0,1,2,3,4)0(0,1,2,4,3)−4(ζ3+2ζ+2)(0,1,3,2,4)−4(2ζ3+2ζ2+1)(0,1,3,4,2)−4(2ζ2+ζ+2)(0,1,4,2,3)−4ζ(2ζ2+ζ+2)(0,1,4,3,2)4(ζ−1)2(ζ+1)\begin{array}{c|l} \text{巡回順序}&L/(2\sqrt2t^3)\text{ の主係数}\\ \hline (0,1,2,3,4)&0\\ (0,1,2,4,3)&-4(\zeta^3+2\zeta+2)\\ (0,1,3,2,4)&-4(2\zeta^3+2\zeta^2+1)\\ (0,1,3,4,2)&-4(2\zeta^2+\zeta+2)\\ (0,1,4,2,3)&-4\zeta(2\zeta^2+\zeta+2)\\ (0,1,4,3,2)&4(\zeta-1)^2(\zeta+1) \end{array}

1+ζ+ζ2+ζ3+ζ4=01+\zeta+\zeta^2+\zeta^3+\zeta^4=0から、正規順序以外の五係数はいずれも非零である。二歩取りで対応する順序の係数はそれぞれの負であるから、十二順序のうち、cusp の近くでL=0L=0となるのは正規順序と対応する順序が作る一つの符号類だけである。R=0R=0なので六代表の積は零である。正規順序ではL=e1L=e_1、対応する順序ではL=−e1L=-e_1であるから、この符号類が与える等式はe1=0e_1=0である。一致の定理によりe1=0e_1=0は許容される枝 datum の全体で成り立つ。

残る消去では、次の順序を固定する。

  1. drd_rを展開してeie_iを作る。
  2. L=hD+N=0L=hD+N=0を用いてNNを−hD-hDへ置換する。
  3. A0,…,A4A_0,\ldots,A_4の対称式をs1,…,s5s_1,\ldots,s_5へ書き換える。
  4. 上のsis_iを代入し、hhをzzより先に取る辞書式順序でRRにより除算する。

この有限簡約の代表式と出力は

e2=−25hs5−5h2s4−34s32+2s2s4−12hs2s3−34h2s22−5s1s5+3hs1s4+2h2s1s3=30R,e3=0,e4+B=−5R(33h6−132h5z5+165h4z2−165h2z4+132hz−400z14+367z6).\begin{aligned} e_2={}&-25hs_5-5h^2s_4-\frac34s_3^2+2s_2s_4-\frac12hs_2s_3 -\frac34h^2s_2^2\\ &-5s_1s_5+3hs_1s_4+2h^2s_1s_3=30R,\\ e_3={}&0,\\ e_4+B={}&-5R(33h^6-132h^5z^5+165h^4z^2-165h^2z^4\\ &\hspace{43mm}+132hz-400z^{14}+367z^6). \end{aligned}

最後にΔ=∏i<j(Ai−Aj)\Delta=\prod_{i<j}(A_i-A_j)とすれば、正規巡回順序では∏rdr=Δ\prod_rd_r=\Deltaである。したがって

e5=−P(−h)Δ,e52=P(−h)2disc⁡X(P). e_5=-P(-h)\Delta,\qquad e_5^2=P(-h)^2\operatorname{disc}_X(P).

P(−h)2disc⁡X(P)−C2P(-h)^2\operatorname{disc}_X(P)-C^2を同じ順序でRRにより除算すると

P(−h)2disc⁡X(P)−C2=RQ5 P(-h)^2\operatorname{disc}_X(P)-C^2=RQ_5

となり、剰余は零である。ここでQ5Q_5はこの等式で一意に定まる116116項の整数係数多項式であり、辞書式の先頭項は−46656h24-46656h^{24}、末項は38400000z838400000z^8である。この項数と両端の係数は、上の終結式と同じ簡約順序を用いた再計算の検査値になる。

符号を決めるため cusp の主項を調べる。積表示から

Φr=−210 ζ3rt3(1+O(t8)),22(ζ−ζ−1)(ζ2−ζ−2)=−210 \Phi_r=-2\sqrt{10}\,\zeta^{3r}t^3(1+O(t^8)), \qquad 2\sqrt2(\zeta-\zeta^{-1})(\zeta^2-\zeta^{-2})=-2\sqrt{10}

である。cusp の近くではC≠0C\ne0なので、e52=C2e_5^2=C^2とこの主項からe5/C=−1e_5/C=-1となる。一致の定理によってe5=−Ce_5=-Cは許容される枝 datum の全体へ延長される。従って表示した五つの基本対称式を得る。また、上のAjA_jの積表示からΦr(t)=Φ0(ζrt)\Phi_r(t)=\Phi_0(\zeta^rt)である。1 の冪根による抽出公式

15∑r=04G(ζrt)=∑5∣n[tn]G(t) tn \frac15\sum_{r=0}^4G(\zeta^rt)=\sum_{5\mid n}[t^n]G(t)\,t^n

と Newton の恒等式で同じ計算を照合すると、R0R_0を指数が55の倍数である項を残す作用素として

m12345R0(Φm)0004B/5−C\begin{array}{c|ccccc} m&1&2&3&4&5\\ \hline R_0(\Phi^m)&0&0&0&4B/5&-C \end{array}

を得る。これは五つの基本対称式と同値であり、巡回順序を根集合だけから推測していない。▨

定理 5.4. 許容される枝 datum に対して

Φ5−2453ϕ4ψ16Φ+2655ϕ3ψ16(1+ϕ8)=0 \Phi^5-2^4 5^3\phi^4\psi^{16}\Phi +2^6\sqrt{5^5}\phi^3\psi^{16}(1+\phi^8)=0

が成り立つ。

証明.補題 5.3でB=2453ϕ4ψ16B=2^4 5^3\phi^4\psi^{16}、C=2655ϕ3ψ16(1+ϕ8)C=2^6\sqrt{5^5}\phi^3\psi^{16}(1+\phi^8)である。Vieta の公式により

∏r=04(Y−Φr)=Y5−BY+C \prod_{r=0}^4(Y-\Phi_r)=Y^5-BY+C

となる。r=0r=0を代入すれば主張を得る。▨

補題 5.5.C0=(2453)1/4ϕψ4≠0C_0=(2^4 5^3)^{1/4}\phi\psi^4\ne0、

a=2(1+ϕ8)55/4ϕ2ψ4 a=\frac{2(1+\phi^8)}{5^{5/4}\phi^2\psi^4}

とする。cusp 基点から枝 datum へ至る指定経路上で55a4≠285^5a^4\ne2^8が成り立つならば、Φ0,…,Φ4\Phi_0,\ldots,\Phi_4は相異なり、xr=Φr/C0x_r=\Phi_r/C_0は

x5−x+a=0 x^5-x+a=0

の五根を尽くす。

証明.t=q1/40t=q^{1/40}とした cusp の近くでは

∏0≤r<s≤4(Φs−Φr)=(−210)10t30∏r<s(ζ3s−ζ3r)(1+O(t8)),\begin{aligned} \prod_{0\le r<s\le4}(\Phi_s-\Phi_r) ={}&(-2\sqrt{10})^{10}t^{30} \prod_{r<s}(\zeta^{3s}-\zeta^{3r})(1+O(t^8)), \end{aligned}

であり、右辺の Vandermonde 係数は非零である。従って cusp に十分近い基点で五つの根の芽は相異なる。

C04=BC_0^4=BかつC/C05=aC/C_0^5=aであるから、直前の因数分解をY=C0xY=C_0xで尺度化すると

∏r=04(x−xr)=x5−x+a \prod_{r=0}^4(x-x_r)=x^5-x+a

を得る。この多項式の判別式は55a4−285^5a^4-2^8である。判別式非零領域では局所逆函数定理により五つの単純根は互いに交わらない正則な根のグラフを定める。許容される枝 datum の指定経路に沿う根のグラフの持ち上げは一意であるため、cusp 基点の異なる五つの芽のラベルは経路の終点でも合流しない。従ってx0,…,x4x_0,\ldots,x_4は相異なる五根であり、次数から全根を尽くす。▨

6 演習

問題 6.1.

  • 定理 2.3の証明で、コンパクト集合LLからIm⁡τ≥η>0\operatorname{Im}\tau\ge\eta>0と∣Im⁡z∣≤M|\operatorname{Im}z|\le Mを取り出した箇所を特定し、theta 級数を抑える Gaussian 型の優級数を再現する。LLのコンパクト性を外すと、この優級数を取ることができない理由も述べる。
  • 命題 2.12のϑ2\vartheta _2の導出で、w=qe2izw=qe^{2iz}を代入した後にr=1r=1の因子を前へ出す操作を再現し、その因子が2q1/4cos⁡z2q^{1/4}\cos zを与えることを確かめる。
  • 命題 2.4を用いて、sn⁡\operatorname{sn}、cn⁡\operatorname{cn}、dn⁡\operatorname{dn}について2K2Kと2iK′2iK'が周期であるか反周期であるかを判定し、定理 3.9の表と照合して各函数の二つの周期を述べる。
  • 定理 4.3の証明で、τ↦τ+1\tau\mapsto\tau+1の変換によりaaに掛かるeπi/4e^{\pi i/4}を四乗したときの符号を追跡し、λ(τ+1)\lambda(\tau+1)の公式を導く箇所を特定する。
  • 命題 4.6のx=4y/(1+y)2x=4\sqrt y/(1+\sqrt y)^{2}から平方根を消去し、xxとyyの多項式関係を確かめる。両辺を二乗する操作によって余分な解が生じ得る理由も述べる。
  • 定義 4.1と定義 1.2を照らし合わせ、完全楕円積分の被積分関数を moduluskkと parameterm=k2m=k^{2}の二通りで書き、modular lambda 函数が両者のどちらに等しいかを述べる。λ=k\lambda=kと置いた場合に矛盾する定義と恒等式も特定する。
  • 定理 5.2の二つのα\alphaの等式からα\alphaを消去し、w=−vw=-vを代入して六次関係の末項の符号を確かめる。さらに補題 5.3のe2e_2の代表式へs1,…,s5s_1,\ldots,s_5を代入し、剰余が30R30Rになることを確かめる。

7 扱わない範囲

本記事は、一般の複素母数kkに対する平方根と楕円積分の分岐、第二種および第三種楕円積分の一般論、格子と Riemann 面による楕円函数の幾何学的理論、楕円曲線の代数幾何、および modular 形式の一般論を扱わない。modular lambda 函数については、H\mathbb Hの上で00と11を取らないことまでを示し、値域がC∖{0,1}\mathbb C\setminus\{0,1\}の全体に及ぶこと、合同部分群Γ(2)\Gamma(2)による被覆、および cusp の近傍における局所座標は扱わない。また、一般の次数NNに対する modular 方程式の存在証明、五次方程式の係数からの大域的な一価枝の構成、および五次方程式の Bring--Jerrard 変換と根の復元は「体論入門」が扱う。本記事は、同単元が用いる位数 5 の六次関係と Hermite の五次恒等式を、Jacobi の五次有理変換の係数比較と有限 orbit の正規形として供給する。cusp では積表示の主項だけを用い、 compactification 上の局所理論と modular lambda 函数の全射性は扱わない。

参考文献

  1. National Institute of Standards and Technology, NIST Digital Library of Mathematical Functions.Legendre の楕円積分、theta 函数、Jacobi の楕円函数、および modular lambda 函数の記法を参考にした。
  2. E. T. Whittaker and G. N. Watson, A Course of Modern Analysis, 5th ed., Cambridge University Press, 2021.theta 函数の積表示、変換公式、および Jacobi の楕円函数との関係を参考にした。
  3. Derek F. Lawden, Elliptic Functions and Applications, Applied Mathematical Sciences, Springer, 1989.Jacobi の楕円函数の周期と楕円積分との逆函数関係を参考にした。
  4. C. G. J. Jacobi, Fundamenta nova theoriae functionum ellipticarum, in: Gesammelte Werke, vol. I, G. Reimer, Berlin, 1881.五次有理変換の係数比較と相反条件を参考にした。
  5. Robert Fricke, Die elliptischen Funktionen und ihre Anwendungen, vol. II, Springer, Berlin, 2012, originally published 1922.位数 5 の枝の符号、六次関係、および Hermite の五次方程式を参考にした。

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