§E5.20無限積と Mittag-Leffler の定理

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多項式の零点分解を整関数へ拡張するとき、無限個の一次因子をそのまま掛けるだけでは収束が保証されない。他方、極と主要部を無限個指定して有理型関数を作る場合にも、主要部をそのまま加えた級数は一般には収束しない。いずれの問題でも、有限部分から生じる特異な情報を保ったまま、無限の尾を収束させる補正が必要になる。

本記事は、対数の主値に基づく無限積の収束判定を共通の収束核とする。そのうえで、整数を極とする余接関数と整数を零点とする正弦関数を具体公式として扱い、任意の離散的な極を指定する Mittag-Leffler の定理と、任意の離散的な零点を指定する Weierstrass の因数分解定理へ進む。具体公式と一般構成の双方を通じて、極または零点の局所情報と、級数または積の大域的収束とがどのように両立するかを明らかにする。

Gamma 関数の Weierstrass 積と相反公式は本記事では扱わず、後続の記事では Gamma 関数を Euler 積分と Binet の積分表示から扱う。

1 無限積の収束

無限積を定義する前に、指数関数と対数の主値についての二つの評価を用意する。どちらも以下で繰り返し用いる。

補題 1.1. すべてのw∈Cw\in\mathbb Cについて

∣ew−1∣≤e∣w∣−1≤∣w∣ e∣w∣\bigl|e^{w}-1\bigr|\le e^{|w|}-1\le|w|\,e^{|w|}

が成り立つ。さらに、μ≥0\mu\ge0としa,b∈Ca,b\in\mathbb Cが∣a∣≤μ|a|\le\muかつ∣b∣≤μ|b|\le\muを満たすならば

∣ea−eb∣≤e3μ ∣a−b∣\bigl|e^{a}-e^{b}\bigr|\le e^{3\mu}\,|a-b|

が成り立つ。

証明.§E5.3 定義 1.3の級数は絶対収束するから、項ごとに絶対値で抑えることができる。またn≥1n\ge1についてn!≥(n−1)!n!\ge(n-1)!であるから

∣ew−1∣≤∑n≥1∣w∣nn!=e∣w∣−1≤∣w∣∑n≥1∣w∣n−1(n−1)!=∣w∣ e∣w∣\bigl|e^{w}-1\bigr|\le\sum_{n\ge1}\frac{|w|^{n}}{n!} =e^{|w|}-1 \le|w|\sum_{n\ge1}\frac{|w|^{n-1}}{(n-1)!}=|w|\,e^{|w|}

である。

後半を示す。§E5.3 命題 1.6によりea−eb=eb(ea−b−1)e^{a}-e^{b}=e^{b}\bigl(e^{a-b}-1\bigr)である。§E5.3 命題 1.7 (1)により∣eb∣=eRe⁡b≤e∣b∣≤eμ|e^{b}|=e^{\operatorname{Re}b}\le e^{|b|}\le e^{\mu}である。また∣a−b∣≤2μ|a-b|\le2\muであるから、前半の不等式により

∣ea−b−1∣≤∣a−b∣ e∣a−b∣≤∣a−b∣ e2μ\bigl|e^{a-b}-1\bigr|\le|a-b|\,e^{|a-b|}\le|a-b|\,e^{2\mu}

である。二つを掛けると∣ea−eb∣≤e3μ∣a−b∣\bigl|e^{a}-e^{b}\bigr|\le e^{3\mu}|a-b|を得る。▨

次の補題は、対数の主値から冪の有限和を引いた残りを評価するものである。初等因子の評価も、同じ補題から得られる。

補題 1.2.ppを非負整数とし、D(0,1)D(0,1)の上で

Lp(w)=Log⁡(1−w)+∑k=1pwkkL_{p}(w)=\operatorname{Log}(1-w)+\sum_{k=1}^{p}\frac{w^{k}}{k}

と定める。ここでLog⁡\operatorname{Log}は§E5.3 定義 2.7の対数の主値であり、p=0p=0のときは第二項を00と読んでL0(w)=Log⁡(1−w)L_{0}(w)=\operatorname{Log}(1-w)とする。このとき次が成り立つ。

  1. ∣w∣<1|w|<1ならば1−w1-wは切断平面D0=C∖(−∞,0]D_{0}=\mathbb C\setminus(-\infty,0]に属する。したがってLpL_{p}はD(0,1)D(0,1)の上で定義され、正則である。
  2. Lp(0)=0L_{p}(0)=0であり、∣w∣<1|w|<1についてLp′(w)=−wp1−wL_{p}'(w)=-\dfrac{w^{p}}{1-w}である。
  3. ∣w∣≤12|w|\le\tfrac12ならば∣Lp(w)∣≤2∣w∣p+1|L_{p}(w)|\le2|w|^{p+1}である。とくに∣w∣≤12|w|\le\tfrac12について∣Log⁡(1+w)∣≤2∣w∣\bigl|\operatorname{Log}(1+w)\bigr|\le2|w|である。

証明.(1)を示す。∣w∣<1|w|<1ならばRe⁡(1−w)≥1−∣w∣>0\operatorname{Re}(1-w)\ge1-|w|>0であるから、1−w1-wは半直線(−∞,0](-\infty,0]に属さない。ゆえに1−w∈D01-w\in D_{0}であり、§E5.3 命題 2.10によりLog⁡\operatorname{Log}はD0D_{0}の上で正則であるから、合成w↦Log⁡(1−w)w\mapsto\operatorname{Log}(1-w)はD(0,1)D(0,1)の上で正則である。多項式∑k=1pwk/k\sum_{k=1}^{p}w^{k}/kは整関数であるから、LpL_{p}はD(0,1)D(0,1)の上で正則である。

(2)を示す。Log⁡1=ln⁡1+iArg⁡1=0\operatorname{Log}1=\ln1+i\operatorname{Arg}1=0であり、和の各項はw=0w=0で00であるからLp(0)=0L_{p}(0)=0である。§E5.3 命題 2.10のLog⁡′z=1/z\operatorname{Log}'z=1/zと複素微分の連鎖律により

ddwLog⁡(1−w)=−11−w\frac{d}{dw}\operatorname{Log}(1-w)=\frac{-1}{1-w}

である。p≥1p\ge1のとき、等比数列の有限和によりw≠1w\ne1について∑k=1pwk−1=1−wp1−w\sum_{k=1}^{p}w^{k-1}=\dfrac{1-w^{p}}{1-w}であるから

Lp′(w)=−11−w+1−wp1−w=−wp1−wL_{p}'(w)=\frac{-1}{1-w}+\frac{1-w^{p}}{1-w}=-\frac{w^{p}}{1-w}

である。p=0p=0のときはL0′(w)=−1/(1−w)L_{0}'(w)=-1/(1-w)であり、w0=1w^{0}=1と読めば同じ式である。

(3)を示す。∣w∣≤12|w|\le\tfrac12とする。w=0w=0のときは両辺が00であるから、以下w≠0w\ne0とする。線分[0,w][0,w]の各点ttは∣t∣≤∣w∣≤12|t|\le|w|\le\tfrac12を満たすから[0,w]⊆D(0,1)[0,w]\subseteq D(0,1)であり、LpL_{p}はD(0,1)D(0,1)の上でLp′L_{p}'の原始関数である。§E5.4 定理 4.2により

Lp(w)=Lp(w)−Lp(0)=∫[0,w]Lp′(t) dt=−∫[0,w]tp1−t dtL_{p}(w)=L_{p}(w)-L_{p}(0)=\int_{[0,w]}L_{p}'(t)\,dt =-\int_{[0,w]}\frac{t^{p}}{1-t}\,dt

である。線分の上では∣t∣≤∣w∣|t|\le|w|かつ∣1−t∣≥1−∣t∣≥1−∣w∣≥12|1-t|\ge1-|t|\ge1-|w|\ge\tfrac12であるから

∣tp1−t∣≤2∣w∣p\left|\frac{t^{p}}{1-t}\right|\le2|w|^{p}

である。線分の長さは∣w∣|w|であるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により∣Lp(w)∣≤2∣w∣p⋅∣w∣=2∣w∣p+1|L_{p}(w)|\le2|w|^{p}\cdot|w|=2|w|^{p+1}である。

最後の主張は、p=0p=0の場合にwwを−w-wで置き換えて得られる。実際L0(−w)=Log⁡(1+w)L_{0}(-w)=\operatorname{Log}(1+w)であり、∣−w∣=∣w∣≤12|-w|=|w|\le\tfrac12であるから∣Log⁡(1+w)∣≤2∣w∣|\operatorname{Log}(1+w)|\le2|w|である。▨

無限積の収束を定義する。有限個の因子が00であることは許すが、それ以外の因子については対数の主値が定まることを要求する。

定義 1.3. 複素数の列(un)n≥1(u_{n})_{n\ge1}について、無限積∏n≥1un\prod_{n\ge1}u_{n}が収束する (convergence of an infinite product) とは、非負整数NNが存在して次の二つが成り立つことをいう。

  1. n>Nn>Nを満たすすべてのnnについてun∈D0=C∖(−∞,0]u_{n}\in D_{0}=\mathbb C\setminus(-\infty,0]である。したがって§E5.3 定義 2.7の対数の主値Log⁡un\operatorname{Log}u_{n}が定まる。
  2. 級数∑n>NLog⁡un\sum_{n>N}\operatorname{Log}u_{n}が収束する。

このとき無限積の値 (value of an infinite product) を

∏n≥1un=(∏n=1Nun)exp⁡(∑n>NLog⁡un)\prod_{n\ge1}u_{n} =\left(\prod_{n=1}^{N}u_{n}\right)\exp\left(\sum_{n>N}\operatorname{Log}u_{n}\right)

と定める。ここでN=0N=0のときは前の有限積を11と読む。

命題 1.4.∏n≥1un\prod_{n\ge1}u_{n}が収束すると仮定する。次が成り立つ。

  1. 定義 1.3の値は、定義 1.3 条件 (a)と定義 1.3 条件 (b)を満たすNNの取り方によらない。
  2. 部分積pM=∏n=1Munp_{M}=\prod_{n=1}^{M}u_{n}は、M→∞M\to\inftyのとき無限積の値へ収束する。
  3. 無限積の値が00であることと、un=0u_{n}=0を満たすnnが存在することは同値である。
  4. lim⁡n→∞un=1\lim_{n\to\infty}u_{n}=1である。

証明.(1)を示す。NNとN′N'がともに定義 1.3 条件 (a)と定義 1.3 条件 (b)を満たすとし、N<N′N<N'としてよい。定義 1.3 条件 (a)によりN<n≤N′N<n\le N'を満たすnnについてun∈D0u_{n}\in D_{0}であり、対数の枝の定義(§E5.3 定義 2.4、§E5.3 命題 2.10)によりeLog⁡un=une^{\operatorname{Log}u_{n}}=u_{n}である。したがって§E5.3 命題 1.6により

∏n=N+1N′un=exp⁡(∑n=N+1N′Log⁡un)\prod_{n=N+1}^{N'}u_{n}=\exp\left(\sum_{n=N+1}^{N'}\operatorname{Log}u_{n}\right)

である。二つの級数∑n>NLog⁡un\sum_{n>N}\operatorname{Log}u_{n}と∑n>N′Log⁡un\sum_{n>N'}\operatorname{Log}u_{n}は有限個の項だけ異なるから、一方が収束すれば他方も収束し、

∑n>NLog⁡un=∑n=N+1N′Log⁡un+∑n>N′Log⁡un\sum_{n>N}\operatorname{Log}u_{n} =\sum_{n=N+1}^{N'}\operatorname{Log}u_{n}+\sum_{n>N'}\operatorname{Log}u_{n}

である。ゆえに

(∏n=1Nun)exp⁡(∑n>NLog⁡un)=(∏n=1Nun)(∏n=N+1N′un)exp⁡(∑n>N′Log⁡un)\left(\prod_{n=1}^{N}u_{n}\right)\exp\left(\sum_{n>N}\operatorname{Log}u_{n}\right) =\left(\prod_{n=1}^{N}u_{n}\right)\left(\prod_{n=N+1}^{N'}u_{n}\right) \exp\left(\sum_{n>N'}\operatorname{Log}u_{n}\right)

となり、二つのNNが与える値は一致する。

(2)を示す。NNを定義 1.3 条件 (a)と定義 1.3 条件 (b)を満たすように取り、SM=∑N<n≤MLog⁡unS_{M}=\sum_{N<n\le M}\operatorname{Log}u_{n}、S=∑n>NLog⁡unS=\sum_{n>N}\operatorname{Log}u_{n}とおく。M>NM>Nについて、(1)の計算と同じ変形によりpM=(∏n≤Nun)eSMp_{M}=\bigl(\prod_{n\le N}u_{n}\bigr)e^{S_{M}}である。SM→SS_{M}\to Sであり、§E5.3 命題 1.8により指数関数は正則であって、とくに連続であるから、eSM→eSe^{S_{M}}\to e^{S}である。ゆえにpMp_{M}は無限積の値へ収束する。

(3)を示す。指数関数は零点をもたない(§E5.3 命題 1.7 (1))から、値が00であることと∏n≤Nun=0\prod_{n\le N}u_{n}=0であることは同値である。un=0u_{n}=0を満たすn≤Nn\le Nが存在すればこの有限積は00であり、逆に有限積が00ならば、un=0u_{n}=0を満たすn≤Nn\le Nが存在する。またn>Nn>Nについてはun∈D0u_{n}\in D_{0}であるからun≠0u_{n}\ne0である。ゆえに主張の同値が成り立つ。

(4)を示す。収束する級数の一般項は00へ収束するからLog⁡un→0\operatorname{Log}u_{n}\to0である。指数関数は連続であり、n>Nn>Nについてun=eLog⁡unu_{n}=e^{\operatorname{Log}u_{n}}であるからun→e0=1u_{n}\to e^{0}=1である。▨

注意 1.5 (部分積の極限を定義に採らない理由).定義 1.3は、部分積の列が収束することを収束の定義に採っていない。すべてのnnについてun=12u_{n}=\tfrac12とすると、部分積は2−M2^{-M}であり00へ収束するが、どの因子も00ではない。部分積の極限を定義に採ると、この列も値00の収束する無限積となり、値が00であることから因子の零点を読み取ることができなくなる。定義 1.3のもとでは、命題 1.4 (3)のとおり、値が00であることと因子の一つが00であることが同値になる。与えた零点をもつ整関数を後で構成するとき、その関数の零点を数えるためには、この同値が必要である。

無限積が定める関数の正則性を示すために、一様収束についての二つの結果を、本単元の先行する記事「正規族と Montel の定理」から引く。以下、SSをC\mathbb Cの部分集合とし、SSの上の複素数値関数の列(gM)(g_{M})がggへ一様収束するとは、sup⁡z∈S∣gM(z)−g(z)∣\sup_{z\in S}|g_{M}(z)-g(z)|がM→∞M\to\inftyのとき00へ収束することをいう。この条件が成り立つならば、すべてのε>0\varepsilon>0について番号NNが存在して、M≥NM\ge Nとz∈Sz\in Sについて∣gM(z)−g(z)∣<ε|g_{M}(z)-g(z)|<\varepsilonが成り立つ。ゆえに一様収束する連続関数列の極限が連続であることは、§E5.17 補題 1.7がそのまま与える。

正則関数の列については、§E5.17 定理 2.1 (1)を用いる。同定理は、開集合Ω\Omegaに含まれるすべてのコンパクト集合の上での一様収束(§E5.17 定義 1.1)を仮定して、極限がΩ\Omegaの上で正則であることを述べる。本記事では、閉円板D‾(a,ρ)\overline D(a,\rho)の上での一様収束から、D(a,ρ)D(a,\rho)に含まれるコンパクト集合の上での一様収束を得て、Ω=D(a,ρ)\Omega=D(a,\rho)として同定理を適用する。

零点の位数を数えるために、一次因子を分離した形についての補題を置く。

補題 1.6.a∈Ca\in\mathbb C、r>0r>0とし、ψ\psiをD(a,r)D(a,r)の上の正則関数でψ(a)≠0\psi(a)\ne0を満たすものとする。f(z)=(z−a)ψ(z)f(z)=(z-a)\psi(z)とおくと、aaはffの位数11の零点(§E5.8 定義 1.1)である。

証明.§E5.7 定理 2.1により、D(a,r)D(a,r)の上でψ(z)=∑k≥0dk(z−a)k\psi(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}(z-a)^{k}が成り立ちd0=ψ(a)≠0d_{0}=\psi(a)\ne0である。したがってD(a,r)D(a,r)の上でf(z)=∑k≥0dk(z−a)k+1f(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}(z-a)^{k+1}が成り立つ。右辺はaaを中心とする収束するべき級数であるから、§E5.7 系 2.2によりこれがffの Taylor 展開である。00次の係数は00、11次の係数はd0≠0d_{0}\ne0であるから、aaにおけるffの位数は11である。▨

次が本節の主定理である。仮定は、各点のまわりに取った閉円板の上で、因子から11を引いた関数の上限がすべての番号について有限であり、かつ有限個の番号を除いて総和可能である、という形で述べる。

定理 1.7.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合、(fn)n≥1(f_{n})_{n\ge1}をUUの上の正則関数の列とし、次を仮定する。

各z0∈Uz_{0}\in Uについて、r>0r>0と非負整数NNが存在して、閉円板D‾(z0,r)\overline D(z_{0},r)はUUに含まれ、すべてのn≥1n\ge1についてsup⁡∣z−z0∣≤r∣fn(z)∣<∞\sup_{|z-z_{0}|\le r}|f_{n}(z)|<\inftyであり、かつ∑n>N sup⁡∣z−z0∣≤r∣fn(z)∣<∞\sum_{n>N}\ \sup_{|z-z_{0}|\le r}|f_{n}(z)|<\inftyが成り立つ。

このとき次が成り立つ。

  1. 各z∈Uz\in Uについて無限積∏n≥1(1+fn(z))\prod_{n\ge1}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)は収束する。その値をP(z)P(z)と書く。
  2. PPはUUの上で正則である。
  3. 部分積PM=∏n=1M(1+fn)P_{M}=\prod_{n=1}^{M}(1+f_{n})は、UUに含まれるどのコンパクト集合(§E2.19 定義 2.1)の上でもPPへ一様収束する。
  4. z∈Uz\in Uについて、P(z)=0P(z)=0であることと、1+fn(z)=01+f_{n}(z)=0を満たすnnが存在することは同値である。さらにPPがUUのどの連結成分の上でも恒等的に00でないならば、PPの零点z0z_{0}における位数(§E5.8 定義 1.1)は、1+fn(z0)=01+f_{n}(z_{0})=0を満たす有限個のnnについての、1+fn1+f_{n}のz0z_{0}における零点の位数の和に等しい。

上限がすべての番号について有限であるという条件は、fnf_{n}が連続であって閉円板がコンパクトであることから従うが、本記事はその導出を用いないので、仮定として明示する。

証明.z0∈Uz_{0}\in Uを取り、仮定のrrとNNを取る。K=D‾(z0,r)K=\overline D(z_{0},r)、sn=sup⁡z∈K∣fn(z)∣s_{n}=\sup_{z\in K}|f_{n}(z)|とおく。仮定により、すべてのn≥1n\ge1についてsn<∞s_{n}<\inftyである。∑n>Nsn<∞\sum_{n>N}s_{n}<\inftyであるから、NNを大きく取り直して

∑n>Nsn≤12\sum_{n>N}s_{n}\le\frac12

としてよい。以下このNNを固定する。

n>Nn>Nとz∈Kz\in Kについて∣fn(z)∣≤sn≤12|f_{n}(z)|\le s_{n}\le\tfrac12である。補題 1.2 (1)により1+fn(z)∈D01+f_{n}(z)\in D_{0}であり、補題 1.2 (3)により

∣Log⁡(1+fn(z))∣≤2 ∣fn(z)∣≤2sn\bigl|\operatorname{Log}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)\bigr|\le2\,|f_{n}(z)|\le2s_{n}

である。M>NM>NについてSM(z)=∑N<n≤MLog⁡(1+fn(z))S_{M}(z)=\sum_{N<n\le M}\operatorname{Log}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)とおく。各z∈Kz\in Kについて∑n>N∣Log⁡(1+fn(z))∣≤2∑n>Nsn<∞\sum_{n>N}\bigl|\operatorname{Log}(1+f_{n}(z))\bigr|\le2\sum_{n>N}s_{n}<\inftyであるから、§E5.3 補題 1.1により級数S(z)=∑n>NLog⁡(1+fn(z))S(z)=\sum_{n>N}\operatorname{Log}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)は収束する。さらにM>NM>Nについて

∣S(z)−SM(z)∣≤∑n>M∣Log⁡(1+fn(z))∣≤2∑n>Msn\bigl|S(z)-S_{M}(z)\bigr|\le\sum_{n>M}\bigl|\operatorname{Log}(1+f_{n}(z))\bigr|\le2\sum_{n>M}s_{n}

であり、右辺はzzによらずM→∞M\to\inftyで00へ収束する。ゆえにSMS_{M}はKKの上でSSへ一様収束する。とくにz∈Kz\in KとM>NM>Nについて

∣S(z)∣≤2∑n>Nsn≤1,∣SM(z)∣≤2∑n>Nsn≤1(1)|S(z)|\le2\sum_{n>N}s_{n}\le1,\qquad |S_{M}(z)|\le2\sum_{n>N}s_{n}\le1 \tag{1}

である。

(1)と(2)を示す。z∈Kz\in Kについて、定義 1.3 条件 (a)と定義 1.3 条件 (b)がこのNNについて成り立つから、無限積∏n≥1(1+fn(z))\prod_{n\ge1}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)は収束し、その値は

P(z)=(∏n=1N(1+fn(z)))eS(z)(2)P(z)=\left(\prod_{n=1}^{N}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)\right)e^{S(z)} \tag{2}

である。1+fn1+f_{n}はD(z0,r)D(z_{0},r)の上で正則であり、その値はD0D_{0}に属するから、§E5.3 命題 2.10によりLog⁡(1+fn)\operatorname{Log}\bigl(1+f_{n}\bigr)はD(z0,r)D(z_{0},r)の上で正則である。したがって各SMS_{M}はD(z0,r)D(z_{0},r)の上で正則であり、D(z0,r)D(z_{0},r)に含まれるコンパクト集合はKKに含まれるから、SMS_{M}はそのようなコンパクト集合の上でSSへ一様収束し、(SM)M>N(S_{M})_{M>N}は(番号をM−NM-Nで付け替えて)§E5.17 定義 1.1の意味でD(z0,r)D(z_{0},r)の上でSSへ収束する。§E5.17 定理 2.1 (1)をΩ=D(z0,r)\Omega=D(z_{0},r)について適用すると、SSはD(z0,r)D(z_{0},r)の上で正則である。式 (2) の右辺はD(z0,r)D(z_{0},r)の上の正則関数の積であるから、PPはD(z0,r)D(z_{0},r)の上で正則である。z0z_{0}はUUの任意の点であるから、(1)と(2)が成り立つ。

(3)を示す。まずKKの上での一様収束を示す。n≤Nn\le Nについて∣1+fn(z)∣≤1+sn|1+f_{n}(z)|\le1+s_{n}であるから、c=∏n≤N(1+sn)c=\prod_{n\le N}(1+s_{n})とおくと、z∈Kz\in Kについて∣∏n≤N(1+fn(z))∣≤c\bigl|\prod_{n\le N}(1+f_{n}(z))\bigr|\le cである。ccは有限個の実数の積であり、仮定によりn≤Nn\le Nの各sns_{n}は有限であるから、ccは有限である。M>NM>NについてPM=(∏n≤N(1+fn))eSMP_{M}=\bigl(\prod_{n\le N}(1+f_{n})\bigr)e^{S_{M}}であるから、式 (2) と合わせて

∣PM(z)−P(z)∣≤c ∣eSM(z)−eS(z)∣\bigl|P_{M}(z)-P(z)\bigr|\le c\,\bigl|e^{S_{M}(z)}-e^{S(z)}\bigr|

である。式 (1) により∣SM(z)∣≤1|S_{M}(z)|\le1かつ∣S(z)∣≤1|S(z)|\le1であるから、補題 1.1をμ=1\mu=1について適用して

∣PM(z)−P(z)∣≤c e3 ∣SM(z)−S(z)∣\bigl|P_{M}(z)-P(z)\bigr|\le c\,e^{3}\,\bigl|S_{M}(z)-S(z)\bigr|

を得る。右辺はKKの上で一様に00へ収束するから、PMP_{M}はKKの上でPPへ一様収束する。

L⊆UL\subseteq Uをコンパクト集合とする。L=∅L=\varnothingのときは主張が直ちに成り立つので、L≠∅L\ne\varnothingとする。V\mathcal Vを、a∈La\in Lとρ>0\rho>0が定理の仮定の条件、すなわちD‾(a,ρ)⊆U\overline D(a,\rho)\subseteq Uであって、すべてのn≥1n\ge1についてsup⁡∣z−a∣≤ρ∣fn(z)∣<∞\sup_{|z-a|\le\rho}|f_{n}(z)|<\inftyであり、かつ非負整数NNが存在して∑n>Nsup⁡∣z−a∣≤ρ∣fn(z)∣<∞\sum_{n>N}\sup_{|z-a|\le\rho}|f_{n}(z)|<\inftyが成り立つ、を満たすような開円板D(a,ρ)D(a,\rho)の全体とする。V\mathcal Vは、LLとUUと(fn)(f_{n})から内包によって定まる集合であり、各点について半径を仮定によりLLの各点aaについてD(a,ρ)∈VD(a,\rho)\in\mathcal Vを満たすρ>0\rho>0が存在するから、V\mathcal VはLLを覆う。§E2.19 定義 2.1により有限個のD(a1,ρ1),…,D(ak,ρk)∈VD(a_{1},\rho_{1}),\ldots,D(a_{k},\rho_{k})\in\mathcal Vが存在してL⊆⋃j=1kD(aj,ρj)L\subseteq\bigcup_{j=1}^{k}D(a_{j},\rho_{j})である。上で示したことをz0=ajz_{0}=a_{j}、r=ρjr=\rho_{j}について適用すると、各jjについてPMP_{M}はD‾(aj,ρj)\overline D(a_{j},\rho_{j})の上でPPへ一様収束するから、

sup⁡z∈L∣PM(z)−P(z)∣≤max⁡1≤j≤k sup⁡z∈D‾(aj,ρj)∣PM(z)−P(z)∣\sup_{z\in L}|P_{M}(z)-P(z)| \le\max_{1\le j\le k}\ \sup_{z\in\overline D(a_{j},\rho_{j})}|P_{M}(z)-P(z)|

であり、右辺は有限個の項の最大値として00へ収束する。ゆえにPMP_{M}はLLの上でPPへ一様収束する。

(4)を示す。z∈Uz\in Uを取り、z0=zz_{0}=zとして上のKK、NN、SSを取る。n>Nn>Nについては1+fn(z)∈D01+f_{n}(z)\in D_{0}であるから1+fn(z)≠01+f_{n}(z)\ne0である。指数関数は零点をもたない(§E5.3 命題 1.7 (1))から、式 (2) により、P(z)=0P(z)=0であることと∏n≤N(1+fn(z))=0\prod_{n\le N}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)=0であること、すなわち1+fn(z)=01+f_{n}(z)=0を満たすn≤Nn\le Nが存在することは同値である。ゆえに前半の同値がUUの各点について成り立つ。

位数についての主張を示す。PPがUUのどの連結成分の上でも恒等的に00でないと仮定し、z0z_{0}をPPの零点とし、WWをz0z_{0}を含むUUの連結成分とする。PPがD(z0,r)D(z_{0},r)の上で恒等的に00であるとすると、D(z0,r)⊆WD(z_{0},r)\subseteq WでありWWは領域であるから、§E5.8 定理 3.1をf=Pf=P、g=0g=0として適用するとPPはWWの上で恒等的に00となり、仮定に反する。ゆえにPPはD(z0,r)D(z_{0},r)の上で恒等的に00ではない。式 (2) とeS≠0e^{S}\ne0により、n≤Nn\le Nの各因子1+fn1+f_{n}もD(z0,r)D(z_{0},r)の上で恒等的に00ではない。

J={n≤N:1+fn(z0)=0}J=\{n\le N : 1+f_{n}(z_{0})=0\}とおき、n∈Jn\in Jについてmnm_{n}を1+fn1+f_{n}のz0z_{0}における零点の位数とする。§E5.8 命題 1.2により、D(z0,r)D(z_{0},r)の上の正則関数hnh_{n}で1+fn(z)=(z−z0)mnhn(z)1+f_{n}(z)=(z-z_{0})^{m_{n}}h_{n}(z)かつhn(z0)≠0h_{n}(z_{0})\ne0を満たすものが存在する。m=∑n∈Jmnm=\sum_{n\in J}m_{n}とおき

H(z)=(∏n∈Jhn(z))(∏n≤N, n∉J(1+fn(z)))eS(z)H(z)=\left(\prod_{n\in J}h_{n}(z)\right) \left(\prod_{n\le N,\ n\notin J}\bigl(1+f_{n}(z)\bigr)\right)e^{S(z)}

とおくと、HHはD(z0,r)D(z_{0},r)の上で正則でありH(z0)≠0H(z_{0})\ne0であって、式 (2) によりP(z)=(z−z0)mH(z)P(z)=(z-z_{0})^{m}H(z)である。HHのz0z_{0}における Taylor 展開(§E5.7 定理 2.1)をH(z)=∑k≥0dk(z−z0)kH(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}(z-z_{0})^{k}とするとd0=H(z0)≠0d_{0}=H(z_{0})\ne0であり、D(z0,r)D(z_{0},r)の上でP(z)=∑k≥0dk(z−z0)k+mP(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}(z-z_{0})^{k+m}が成り立つ。右辺はz0z_{0}を中心とする収束するべき級数であるから、§E5.7 系 2.2によりこれがPPの Taylor 展開であり、mm次より低い次数の係数は00、mm次の係数はd0≠0d_{0}\ne0である。ゆえにPPのz0z_{0}における位数はmmである。▨

2 極を指定する具体公式:余接関数

整数を極とする具体的な有理型関数としてC(w)=πcot⁡(πw)C(w)=\pi\cot(\pi w)を扱う。極と留数、および半整数を辺上にもつ正方形の境界での一様な評価が、部分分数展開を支える。

補題 2.1.C(w)=πcot⁡(πw)=πcos⁡(πw)sin⁡(πw)C(w)=\pi\cot(\pi w)=\pi\dfrac{\cos(\pi w)}{\sin(\pi w)}とおく。次が成り立つ。

  1. sin⁡(πw)=0\sin(\pi w)=0であることとw∈Zw\in\mathbb Zであることは同値である。したがってCCはC∖Z\mathbb C\setminus\mathbb Zの上で正則である。
  2. w∉Zw\notin\mathbb Zについて、q=e2πiwq=e^{2\pi iw}とおくとC(w)=πiq+1q−1C(w)=\pi i\dfrac{q+1}{q-1}である。とくにC(−w)=−C(w)C(-w)=-C(w)である。
  3. 各整数nnについて、D(n,1)D(n,1)の上の正則関数HnH_{n}で、Hn(n)=1H_{n}(n)=1かつ0<∣w−n∣<10<|w-n|<1の範囲でC(w)=Hn(w)w−nC(w)=\dfrac{H_{n}(w)}{w-n}を満たすものが存在する。したがってnnはCCの単純極であり、Res⁡(C,n)=1\operatorname{Res}(C,n)=1である。

証明.§E5.3 定義 1.5により

cos⁡(πw)=eiπw+e−iπw2,sin⁡(πw)=eiπw−e−iπw2i\cos(\pi w)=\frac{e^{i\pi w}+e^{-i\pi w}}{2},\qquad \sin(\pi w)=\frac{e^{i\pi w}-e^{-i\pi w}}{2i}

である。分子と分母に2i eiπw2i\,e^{i\pi w}を掛けると、sin⁡(πw)≠0\sin(\pi w)\ne0のとき

cot⁡(πw)=cos⁡(πw)sin⁡(πw)=i e2πiw+1e2πiw−1\cot(\pi w)=\frac{\cos(\pi w)}{\sin(\pi w)} =i\,\frac{e^{2\pi iw}+1}{e^{2\pi iw}-1}

であり、π\pi倍して(2)の前半を得る。(2)の後半は、q′=e−2πiw=1/qq'=e^{-2\pi iw}=1/qとおくと

πi q′+1q′−1=πi 1+q1−q=−πi q+1q−1\pi i\,\frac{q'+1}{q'-1}=\pi i\,\frac{1+q}{1-q}=-\pi i\,\frac{q+1}{q-1}

であることによる(分子と分母にqqを掛けた)。

(1)を示す。sin⁡(πw)=0\sin(\pi w)=0であることはeiπw=e−iπwe^{i\pi w}=e^{-i\pi w}と同値であり、§E5.3 命題 1.7 (3)により、これは2iπw=2πik2i\pi w=2\pi ikを満たす整数kkが存在すること、すなわちw∈Zw\in\mathbb Zであることと同値である。§E5.3 命題 1.8によりe±iπwe^{\pm i\pi w}は整関数であるからcos⁡(πw)\cos(\pi w)とsin⁡(πw)\sin(\pi w)も整関数であり、CCはsin⁡(πw)≠0\sin(\pi w)\ne0となる点、すなわちC∖Z\mathbb C\setminus\mathbb Zの上で正則である。

(3)を示す。g(u)=∑k≥0uk(k+1)!g(u)=\sum_{k\ge0}\dfrac{u^{k}}{(k+1)!}とおく。k≥0k\ge0について∣u∣k/(k+1)!≤∣u∣k/k!|u|^{k}/(k+1)!\le|u|^{k}/k!であり、§E5.3 定義 1.3の級数はすべてのuuについて絶対収束するから、∑k≥0∣u∣k/(k+1)!\sum_{k\ge0}|u|^{k}/(k+1)!はすべてのuuについて収束する。ゆえに§E5.7 定理 1.2 (2)によりこのべき級数の収束半径は∞\inftyであり、§E5.7 定理 1.5によりggは整関数である。さらに

eu−1=∑k≥1ukk!=u∑k≥1uk−1k!=u g(u)e^{u}-1=\sum_{k\ge1}\frac{u^{k}}{k!}=u\sum_{k\ge1}\frac{u^{k-1}}{k!}=u\,g(u)

である。g(0)=1g(0)=1であり、u≠0u\ne0かつg(u)=0g(u)=0ならばeu=1e^{u}=1であるから、§E5.3 命題 1.7 (2)によりu=2πiku=2\pi ik(kkは00でない整数)となり∣u∣≥2π|u|\ge2\piである。ゆえに∣u∣<2π|u|<2\piの範囲でg(u)≠0g(u)\ne0である。

整数nnを固定し、u=2πi(w−n)u=2\pi i(w-n)とおく。§E5.3 命題 1.7 (2)によりe2πin=1e^{2\pi in}=1であるから、§E5.3 命題 1.6によりq=e2πiw=e2πi(w−n)q=e^{2\pi iw}=e^{2\pi i(w-n)}であり、

q−1=eu−1=u g(u)=2πi(w−n) g(2πi(w−n))q-1=e^{u}-1=u\,g(u)=2\pi i(w-n)\,g\bigl(2\pi i(w-n)\bigr)

である。∣w−n∣<1|w-n|<1ならば∣u∣=2π∣w−n∣<2π|u|=2\pi|w-n|<2\piであるからg(u)≠0g(u)\ne0である。したがって

Hn(w)=e2πiw+12 g(2πi(w−n))H_{n}(w)=\frac{e^{2\pi iw}+1}{2\,g\bigl(2\pi i(w-n)\bigr)}

はD(n,1)D(n,1)の上で正則であり、(2)により0<∣w−n∣<10<|w-n|<1で

C(w)=πi⋅q+12πi(w−n) g(u)=Hn(w)w−nC(w)=\pi i\cdot\frac{q+1}{2\pi i(w-n)\,g(u)}=\frac{H_{n}(w)}{w-n}

が成り立つ。Hn(n)=1+12⋅1=1≠0H_{n}(n)=\dfrac{1+1}{2\cdot1}=1\ne0であるから、§E5.11 命題 3.4によりnnはCCの位数11の極であり、§E5.12 命題 1.2によりRes⁡(C,n)=Hn(n)=1\operatorname{Res}(C,n)=H_{n}(n)=1である。▨

補題 2.2.NNを正の整数とし、

QN={w∈C:∣Re⁡w∣≤N+12, ∣Im⁡w∣≤N+12}Q_{N}=\Bigl\{w\in\mathbb C : |\operatorname{Re}w|\le N+\tfrac12,\ |\operatorname{Im}w|\le N+\tfrac12\Bigr\}

とおき、∂QN\partial Q_{N}をその正の向きの境界とする。このとき∂QN\partial Q_{N}は整数を通らず、c0=eπ+1eπ−1c_{0}=\dfrac{e^{\pi}+1}{e^{\pi}-1}とおくと、∂QN\partial Q_{N}のすべての点wwについて

∣C(w)∣=∣πcot⁡(πw)∣≤πc0|C(w)|=|\pi\cot(\pi w)|\le\pi c_{0}

が成り立つ。定数c0c_{0}はNNによらない。

証明.∂QN\partial Q_{N}の各点wwは∣Re⁡w∣=N+12|\operatorname{Re}w|=N+\tfrac12または∣Im⁡w∣=N+12|\operatorname{Im}w|=N+\tfrac12を満たす。前者ならば実部が整数でなく、後者ならば虚部が00でないから、どちらの場合もwwは整数ではない。ゆえに補題 2.1 (1)によりsin⁡(πw)≠0\sin(\pi w)\ne0であり、補題 2.1 (2)の表示を用いることができる。q=e2πiwq=e^{2\pi iw}とおく。§E5.3 命題 1.7 (1)により∣q∣=e−2πIm⁡w|q|=e^{-2\pi\operatorname{Im}w}である。

Im⁡w=N+12≥12\operatorname{Im}w=N+\tfrac12\ge\tfrac12のとき∣q∣≤e−π|q|\le e^{-\pi}であり、Im⁡w=−(N+12)≤−12\operatorname{Im}w=-\bigl(N+\tfrac12\bigr)\le-\tfrac12のとき∣q∣≥eπ|q|\ge e^{\pi}である。

∣q∣≥eπ|q|\ge e^{\pi}の場合、∣q−1∣≥∣q∣−1>0|q-1|\ge|q|-1>0であるから

∣q+1q−1∣≤∣q∣+1∣q∣−1=1+2∣q∣−1≤1+2eπ−1=c0\left|\frac{q+1}{q-1}\right|\le\frac{|q|+1}{|q|-1}=1+\frac{2}{|q|-1}\le1+\frac{2}{e^{\pi}-1}=c_{0}

である。∣q∣≤e−π|q|\le e^{-\pi}の場合、∣q−1∣≥1−∣q∣>0|q-1|\ge1-|q|>0であるから

∣q+1q−1∣≤1+∣q∣1−∣q∣=−1+21−∣q∣≤−1+21−e−π=1+e−π1−e−π=c0\left|\frac{q+1}{q-1}\right|\le\frac{1+|q|}{1-|q|}=-1+\frac{2}{1-|q|} \le-1+\frac{2}{1-e^{-\pi}}=\frac{1+e^{-\pi}}{1-e^{-\pi}}=c_{0}

である。最後の等号は、分子と分母にeπe^{\pi}を掛けて得られる。

Re⁡w=ε(N+12)\operatorname{Re}w=\varepsilon\bigl(N+\tfrac12\bigr)(ε\varepsilonは11または−1-1)とし、y=Im⁡wy=\operatorname{Im}wとおく。§E5.3 命題 1.6により

q=e2πiw=eεiπ(2N+1)e−2πyq=e^{2\pi iw}=e^{\varepsilon i\pi(2N+1)}e^{-2\pi y}

である。§E5.3 命題 1.7 (2)によりeε2πiN=1e^{\varepsilon 2\pi iN}=1であるから、再び§E5.3 命題 1.6によりeεiπ(2N+1)=eεiπe^{\varepsilon i\pi(2N+1)}=e^{\varepsilon i\pi}である。(eεiπ)2=eε2πi=1\bigl(e^{\varepsilon i\pi}\bigr)^{2}=e^{\varepsilon2\pi i}=1であるからeεiπ=1e^{\varepsilon i\pi}=1またはeεiπ=−1e^{\varepsilon i\pi}=-1であり、eεiπ=1e^{\varepsilon i\pi}=1とすると§E5.3 命題 1.7 (2)によりεiπ=2πik\varepsilon i\pi=2\pi ikを満たす整数kkが存在してε=2k\varepsilon=2kとなり、ε\varepsilonが11または−1-1であることに反する。ゆえにeεiπ=−1e^{\varepsilon i\pi}=-1であり、t=e−2πy>0t=e^{-2\pi y}>0とおくとq=−tq=-tである。したがって

∣q+1q−1∣=∣1−t∣1+t≤1≤c0\left|\frac{q+1}{q-1}\right|=\frac{|1-t|}{1+t}\le1\le c_{0}

である。最後の不等号はeπ+1>eπ−1>0e^{\pi}+1>e^{\pi}-1>0による。

どちらの場合も∣q+1q−1∣≤c0\bigl|\frac{q+1}{q-1}\bigr|\le c_{0}であるから、補題 2.1 (2)により∣C(w)∣=π∣q+1q−1∣≤πc0|C(w)|=\pi\bigl|\frac{q+1}{q-1}\bigr|\le\pi c_{0}である。▨

定理 2.3 (余接関数の部分分数展開).z∈C∖Zz\in\mathbb C\setminus\mathbb Zについて、級数∑n≥12zz2−n2\sum_{n\ge1}\dfrac{2z}{z^{2}-n^{2}}は収束し

πcot⁡(πz)=1z+∑n=1∞2zz2−n2\pi\cot(\pi z)=\frac1z+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{2z}{z^{2}-n^{2}}

が成り立つ。さらに0<ρ<10<\rho<1とすると、この級数は閉円板{∣z∣≤ρ}\{|z|\le\rho\}の上で一様収束する。

証明.z∈C∖Zz\in\mathbb C\setminus\mathbb Zを固定する。とくにz≠0z\ne0であり、z≠−zz\ne-zである。

gz(w)=C(w)w2−z2=C(w)(w−z)(w+z)g_{z}(w)=\frac{C(w)}{w^{2}-z^{2}}=\frac{C(w)}{(w-z)(w+z)}

とおく。B=Z∪{z,−z}B=\mathbb Z\cup\{z,-z\}とおくと、補題 2.1 (1)によりgzg_{z}はC∖B\mathbb C\setminus Bの上で正則であり、BBはC\mathbb Cの中に集積点をもたない。

整数nnを取る。z∉Zz\notin\mathbb Zよりn2≠z2n^{2}\ne z^{2}であるから、δ∈(0,1]\delta\in(0,1]を、D(n,δ)D(n,\delta)がzzも−z-zも含まないように取ることができる。補題 2.1 (3)のHnH_{n}を用いて

kn(w)=Hn(w)w2−z2k_{n}(w)=\frac{H_{n}(w)}{w^{2}-z^{2}}

とおくと、knk_{n}はD(n,δ)D(n,\delta)の上で正則であり、0<∣w−n∣<δ0<|w-n|<\deltaでgz(w)=kn(w)/(w−n)g_{z}(w)=k_{n}(w)/(w-n)である。kn(n)=1n2−z2≠0k_{n}(n)=\dfrac{1}{n^{2}-z^{2}}\ne0であるから、§E5.11 命題 3.4によりnnはgzg_{z}の単純極であり、§E5.12 命題 1.2によりRes⁡(gz,n)=1n2−z2\operatorname{Res}(g_{z},n)=\dfrac{1}{n^{2}-z^{2}}である。

η>0\eta>0を、D(z,η)D(z,\eta)とD(−z,η)D(-z,\eta)がたがいに交わらず、どちらも整数を含まないように取る。CCはこの二つの円板の上で正則である。

h+(w)=C(w)w+z(w∈D(z,η)),h−(w)=C(w)w−z(w∈D(−z,η))h_{+}(w)=\frac{C(w)}{w+z}\quad(w\in D(z,\eta)),\qquad h_{-}(w)=\frac{C(w)}{w-z}\quad(w\in D(-z,\eta))

とおくと、h+h_{+}とh−h_{-}はそれぞれの円板の上で正則であり、w≠zw\ne zでgz(w)=h+(w)/(w−z)g_{z}(w)=h_{+}(w)/(w-z)、w≠−zw\ne-zでgz(w)=h−(w)/(w+z)g_{z}(w)=h_{-}(w)/(w+z)である。h+(z)=C(z)2zh_{+}(z)=\dfrac{C(z)}{2z}であり、補題 2.1 (2)によりC(−z)=−C(z)C(-z)=-C(z)であるからh−(−z)=C(−z)−2z=C(z)2zh_{-}(-z)=\dfrac{C(-z)}{-2z}=\dfrac{C(z)}{2z}である。α=C(z)2z\alpha=\dfrac{C(z)}{2z}とおく。

α≠0\alpha\ne0の場合、§E5.11 命題 3.4によりzzと−z-zはともにgzg_{z}の単純極であり、§E5.12 命題 1.2により留数はどちらもα\alphaである。α=0\alpha=0の場合、h+(z)=0h_{+}(z)=0であるから§E5.8 命題 1.2によりD(z,η)D(z,\eta)の上の正則関数h~+\tilde h_{+}が存在してh+(w)=(w−z)h~+(w)h_{+}(w)=(w-z)\tilde h_{+}(w)が成り立ち、w≠zw\ne zでgz(w)=h~+(w)g_{z}(w)=\tilde h_{+}(w)である。すなわちzzはgzg_{z}の除去可能特異点である。−z-zについても同じ形の議論により除去可能特異点である。

AAをBBのうちgzg_{z}の極である点の全体とする。上で見たとおり、α≠0\alpha\ne0ならばA=BA=B、α=0\alpha=0ならばA=ZA=\mathbb Zであり、後者の場合はgzg_{z}をC∖A\mathbb C\setminus Aの上の正則関数へ延長したものを改めてgzg_{z}と書く。どちらの場合もAAはC\mathbb Cの中に集積点をもたず、AAの各点はgzg_{z}の極である。また、±z\pm zがAAに属するときの留数の和は2α2\alphaであり、属さないときはα=0\alpha=0であるから、どちらの場合も±z\pm zからの寄与は2α2\alphaと書くことができる。

NNをN+12>∣z∣N+\tfrac12>|z|を満たす正の整数とし、QNQ_{N}と∂QN\partial Q_{N}を補題 2.2のとおりに取る。同補題により∂QN\partial Q_{N}は整数を通らない。また∣±z∣=∣z∣<N+12|\pm z|=|z|<N+\tfrac12より∣Re⁡(±z)∣<N+12|\operatorname{Re}(\pm z)|<N+\tfrac12かつ∣Im⁡(±z)∣<N+12|\operatorname{Im}(\pm z)|<N+\tfrac12であるから、±z\pm zはQNQ_{N}の内部にあり、∂QN\partial Q_{N}の上には無い。ゆえに∣∂QN∣⊆C∖A|\partial Q_{N}|\subseteq\mathbb C\setminus Aである。C\mathbb Cに属さない点は存在しないから∂QN\partial Q_{N}はC\mathbb Cの内部で零ホモローグ(§E5.5 定義 1.2)である。QNQ_{N}は辺が座標軸に平行な閉長方形であるから、§E5.5 命題 5.6 (2)により、∣n∣≤N|n|\le Nを満たす整数nnと±z\pm zはQNQ_{N}の内部にあって回転数が11であり、∣n∣>N|n|>Nを満たす整数nnはQNQ_{N}に属さないので回転数が00である。ゆえに§E5.12 定理 2.2により

12πi∫∂QNgz(w) dw=∑n=−NN1n2−z2+2α=−1z2+2∑n=1N1n2−z2+C(z)z\frac{1}{2\pi i}\int_{\partial Q_{N}}g_{z}(w)\,dw =\sum_{n=-N}^{N}\frac{1}{n^{2}-z^{2}}+2\alpha =-\frac{1}{z^{2}}+2\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{n^{2}-z^{2}}+\frac{C(z)}{z}

である。

w∈∂QNw\in\partial Q_{N}について∣w∣≥max⁡(∣Re⁡w∣,∣Im⁡w∣)=N+12|w|\ge\max\bigl(|\operatorname{Re}w|,|\operatorname{Im}w|\bigr)=N+\tfrac12であるから

∣w2−z2∣≥∣w∣2−∣z∣2≥(N+12)2−∣z∣2>0|w^{2}-z^{2}|\ge|w|^{2}-|z|^{2}\ge\Bigl(N+\tfrac12\Bigr)^{2}-|z|^{2}>0

である。補題 2.2により∣C(w)∣≤πc0|C(w)|\le\pi c_{0}であり、∂QN\partial Q_{N}の長さは8(N+12)8\bigl(N+\tfrac12\bigr)であるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣∫∂QNgz(w) dw∣≤πc0⋅8(N+12)(N+12)2−∣z∣2\left|\int_{\partial Q_{N}}g_{z}(w)\,dw\right| \le\frac{\pi c_{0}\cdot8\bigl(N+\tfrac12\bigr)}{\bigl(N+\tfrac12\bigr)^{2}-|z|^{2}}

である。右辺はN→∞N\to\inftyで00へ収束する。

ゆえに部分和∑n=1N1n2−z2\sum_{n=1}^{N}\dfrac{1}{n^{2}-z^{2}}はN→∞N\to\inftyで収束し

−1z2+2∑n≥11n2−z2+C(z)z=0-\frac{1}{z^{2}}+2\sum_{n\ge1}\frac{1}{n^{2}-z^{2}}+\frac{C(z)}{z}=0

である。両辺にzzを掛けて整理すると

C(z)=1z−2z∑n≥11n2−z2=1z+∑n≥12zz2−n2C(z)=\frac1z-2z\sum_{n\ge1}\frac{1}{n^{2}-z^{2}} =\frac1z+\sum_{n\ge1}\frac{2z}{z^{2}-n^{2}}

を得る。

0<ρ<10<\rho<1とし、∣z∣≤ρ|z|\le\rhoとする。n≥1n\ge1について∣z2−n2∣≥n2−ρ2≥n2−n2ρ2=n2(1−ρ2)>0|z^{2}-n^{2}|\ge n^{2}-\rho^{2}\ge n^{2}-n^{2}\rho^{2}=n^{2}(1-\rho^{2})>0であるから

∣2zz2−n2∣≤2ρn2(1−ρ2)\left|\frac{2z}{z^{2}-n^{2}}\right|\le\frac{2\rho}{n^{2}(1-\rho^{2})}

である。右辺はzzによらず、∑n≥1n−2\sum_{n\ge1}n^{-2}は収束するから、M′>MM'>Mについて

∣∑n=1M′2zz2−n2−∑n=1M2zz2−n2∣≤2ρ1−ρ2∑n>M1n2\left|\sum_{n=1}^{M'}\frac{2z}{z^{2}-n^{2}}-\sum_{n=1}^{M}\frac{2z}{z^{2}-n^{2}}\right| \le\frac{2\rho}{1-\rho^{2}}\sum_{n>M}\frac{1}{n^{2}}

である。M′→∞M'\to\inftyとすると、級数の和と第MM部分和の差がzzによらない量2ρ1−ρ2∑n>Mn−2\frac{2\rho}{1-\rho^{2}}\sum_{n>M}n^{-2}で抑えられる。この量はM→∞M\to\inftyで00へ収束するから、級数は{∣z∣≤ρ}\{|z|\le\rho\}の上で一様収束する。▨

3 零点を指定する具体公式:正弦関数

部分分数展開を線分に沿って項別に積分すると、正弦関数の無限積表示が得られる。項別積分を正当化する根拠は、前節で示した一様収束である。

補題 3.1.γ\gammaを区分的に一階連続微分可能な曲線、(vn)n≥1(v_{n})_{n\ge1}を∣γ∣|\gamma|の上の連続関数の列とし、部分和σM=∑n=1Mvn\sigma_{M}=\sum_{n=1}^{M}v_{n}が∣γ∣|\gamma|の上でσ\sigmaへ一様収束すると仮定する。このときσ\sigmaは∣γ∣|\gamma|の上で連続であり、∑n≥1∫γvn\sum_{n\ge1}\int_{\gamma}v_{n}は収束して

∫γσ(w) dw=∑n=1∞∫γvn(w) dw\int_{\gamma}\sigma(w)\,dw=\sum_{n=1}^{\infty}\int_{\gamma}v_{n}(w)\,dw

が成り立つ。

証明. 各σM\sigma_{M}は有限個の連続関数の和であるから連続であり、§E5.17 補題 1.7によりσ\sigmaは∣γ∣|\gamma|の上で連続である。ゆえに∫γσ\int_{\gamma}\sigmaが定まる。LLをγ\gammaの長さとすると、積分の線形性(§E5.4 命題 2.3)と ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣∫γσ−∑n=1M∫γvn∣=∣∫γ(σ−σM)∣≤L sup⁡w∈∣γ∣∣σ(w)−σM(w)∣\left|\int_{\gamma}\sigma-\sum_{n=1}^{M}\int_{\gamma}v_{n}\right| =\left|\int_{\gamma}\bigl(\sigma-\sigma_{M}\bigr)\right| \le L\,\sup_{w\in|\gamma|}\bigl|\sigma(w)-\sigma_{M}(w)\bigr|

である。右辺はM→∞M\to\inftyで00へ収束するから、主張が成り立つ。▨

定理 3.2 (正弦関数の無限積表示). すべてのz∈Cz\in\mathbb Cについて、無限積∏n≥1(1−z2n2)\prod_{n\ge1}\Bigl(1-\dfrac{z^{2}}{n^{2}}\Bigr)は収束し

sin⁡(πz)=πz∏n=1∞(1−z2n2)\sin(\pi z)=\pi z\prod_{n=1}^{\infty}\left(1-\frac{z^{2}}{n^{2}}\right)

が成り立つ。部分積はC\mathbb Cの各コンパクト集合の上で一様収束する。

証明.fn(z)=−z2/n2f_{n}(z)=-z^{2}/n^{2}とおく。z0∈Cz_{0}\in\mathbb Cとr>0r>0について、R=∣z0∣+rR=|z_{0}|+rとおくとsup⁡∣z−z0∣≤r∣fn(z)∣≤R2/n2\sup_{|z-z_{0}|\le r}|f_{n}(z)|\le R^{2}/n^{2}であり、この評価はすべてのn≥1n\ge1について成り立つから、上限はすべての番号について有限である。∑n≥1n−2\sum_{n\ge1}n^{-2}は収束するから、定理 1.7の仮定がU=CU=\mathbb C、N=0N=0について成り立つ。ゆえにΠ(z)=∏n≥1(1−z2/n2)\Pi(z)=\prod_{n\ge1}\bigl(1-z^{2}/n^{2}\bigr)は各点で収束し、Π\Piは整関数であり、部分積はC\mathbb Cの各コンパクト集合の上でΠ\Piへ一様収束する。G(z)=πz Π(z)G(z)=\pi z\,\Pi(z)とおくとGGは整関数である。

D=D(0,1)D=D(0,1)とおく。§E5.3 定義 1.5と§E5.3 命題 1.8によりsin⁡(πz)\sin(\pi z)は整関数であってddzsin⁡(πz)=πcos⁡(πz)\dfrac{d}{dz}\sin(\pi z)=\pi\cos(\pi z)であり、§E5.3 定義 1.5によりcos⁡0=e0+e02=1\cos0=\dfrac{e^{0}+e^{0}}{2}=1である。§E5.7 定理 2.1によりDDの上でsin⁡(πz)=∑k≥0ckzk\sin(\pi z)=\sum_{k\ge0}c_{k}z^{k}が成り立ち、c0=sin⁡0=0c_{0}=\sin0=0、c1=πcos⁡0=πc_{1}=\pi\cos0=\piである。§E5.7 定理 1.2 (1)により∣z∣<1|z|<1で∑k≥0∣ck∣∣z∣k\sum_{k\ge0}|c_{k}||z|^{k}は収束するから、べき級数∑k≥0ck+1zk\sum_{k\ge0}c_{k+1}z^{k}も∣z∣<1|z|<1で絶対収束し、その収束半径は11以上である。§E5.7 定理 1.5により

φ(z)=1π∑k≥0ck+1zk\varphi(z)=\frac1\pi\sum_{k\ge0}c_{k+1}z^{k}

はDDの上で正則であり、c0=0c_{0}=0であるからDDの上でsin⁡(πz)=πz φ(z)\sin(\pi z)=\pi z\,\varphi(z)が成り立つ。またφ(0)=c1/π=1\varphi(0)=c_{1}/\pi=1である。z∈Dz\in Dかつz≠0z\ne0ならばz∉Zz\notin\mathbb Zであるから補題 2.1 (1)によりsin⁡(πz)≠0\sin(\pi z)\ne0であり、したがってφ(z)≠0\varphi(z)\ne0である。φ(0)=1≠0\varphi(0)=1\ne0と合わせて、φ\varphiはDDの上で零点をもたない。

Θ=φ′/φ\Theta=\varphi'/\varphiとおく。φ\varphiはDDの上で零点をもたないからΘ\ThetaはDDの上で正則である。0<∣w∣<10<|w|<1について、sin⁡(πw)=πwφ(w)\sin(\pi w)=\pi w\varphi(w)の両辺を微分するとπcos⁡(πw)=πφ(w)+πwφ′(w)\pi\cos(\pi w)=\pi\varphi(w)+\pi w\varphi'(w)であり、両辺をsin⁡(πw)=πwφ(w)\sin(\pi w)=\pi w\varphi(w)で割ると

πcot⁡(πw)=1w+Θ(w)(0<∣w∣<1)(3)\pi\cot(\pi w)=\frac1w+\Theta(w)\qquad(0<|w|<1) \tag{3}

を得る。

ρ\rhoを0<ρ<10<\rho<1を満たす実数とし、Σ(w)=∑n≥12ww2−n2\Sigma(w)=\sum_{n\ge1}\dfrac{2w}{w^{2}-n^{2}}とおく。定理 2.3によりこの級数は{∣w∣≤ρ}\{|w|\le\rho\}の上で一様収束し、0<∣w∣<10<|w|<1について式 (3) と合わせてΘ(w)=Σ(w)\Theta(w)=\Sigma(w)である。各項は{∣w∣≤ρ}\{|w|\le\rho\}の上で連続であるから、§E5.17 補題 1.7によりΣ\Sigmaは{∣w∣≤ρ}\{|w|\le\rho\}の上で連続である。Θ\Thetaも連続であり、両者は0<∣w∣≤ρ0<|w|\le\rhoで一致するから、w→0w\to0の極限を取るとΘ(0)=Σ(0)=0\Theta(0)=\Sigma(0)=0である。ゆえに{∣w∣≤ρ}\{|w|\le\rho\}の全体でΘ=Σ\Theta=\Sigmaである。

z∈Dz\in Dを取り、ρ\rhoを∣z∣≤ρ<1|z|\le\rho<1を満たすように取る。DDは00に関して星形な領域であるから、§E5.5 定理 4.1により

Ψ(z)=∫[0,z]Θ(w) dw\Psi(z)=\int_{[0,z]}\Theta(w)\,dw

はDDの上で正則でΨ′=Θ\Psi'=\Thetaを満たし、Ψ(0)=0\Psi(0)=0である。線分[0,z][0,z]は{∣w∣≤ρ}\{|w|\le\rho\}に含まれるから、補題 3.1をγ=[0,z]\gamma=[0,z]、vn(w)=2ww2−n2v_{n}(w)=\dfrac{2w}{w^{2}-n^{2}}について適用することができ

Ψ(z)=∑n≥1∫[0,z]2ww2−n2 dw\Psi(z)=\sum_{n\ge1}\int_{[0,z]}\frac{2w}{w^{2}-n^{2}}\,dw

である。

各項を計算する。∣w∣<1≤n|w|<1\le nについて∣w2/n2∣<1|w^{2}/n^{2}|<1であるから補題 1.2 (1)により1−w2/n2∈D01-w^{2}/n^{2}\in D_{0}であり、

Λn(w)=Log⁡(1−w2n2)\Lambda_{n}(w)=\operatorname{Log}\left(1-\frac{w^{2}}{n^{2}}\right)

はDDの上で正則である。§E5.3 命題 2.10と連鎖律により

Λn′(w)=−2w/n21−w2/n2=2ww2−n2\Lambda_{n}'(w)=\frac{-2w/n^{2}}{1-w^{2}/n^{2}}=\frac{2w}{w^{2}-n^{2}}

であり、Λn(0)=Log⁡1=0\Lambda_{n}(0)=\operatorname{Log}1=0である。ゆえに§E5.4 定理 4.2により∫[0,z]2ww2−n2 dw=Λn(z)\int_{[0,z]}\dfrac{2w}{w^{2}-n^{2}}\,dw=\Lambda_{n}(z)である。したがって

Ψ(z)=∑n≥1Log⁡(1−z2n2)(4)\Psi(z)=\sum_{n\ge1}\operatorname{Log}\left(1-\frac{z^{2}}{n^{2}}\right) \tag{4}

であり、とくにこの級数は収束する。

DDの上で

ddz(φ(z)e−Ψ(z))=φ′(z)e−Ψ(z)−φ(z)Θ(z)e−Ψ(z)=e−Ψ(z)(φ′(z)−φ(z)⋅φ′(z)φ(z))=0\frac{d}{dz}\Bigl(\varphi(z)e^{-\Psi(z)}\Bigr) =\varphi'(z)e^{-\Psi(z)}-\varphi(z)\Theta(z)e^{-\Psi(z)} =e^{-\Psi(z)}\left(\varphi'(z)-\varphi(z)\cdot\frac{\varphi'(z)}{\varphi(z)}\right)=0

である。DDは領域であるから、§E5.4 命題 4.3によりφe−Ψ\varphi e^{-\Psi}はDDの上で定数であり、z=0z=0における値φ(0)e0=1\varphi(0)e^{0}=1に等しい。ゆえにφ=eΨ\varphi=e^{\Psi}である。

z∈Dz\in Dについて、すべてのn≥1n\ge1で1−z2/n2∈D01-z^{2}/n^{2}\in D_{0}であるから、定義 1.3をN=0N=0として用いることができ、式 (4) により

Π(z)=∏n≥1(1−z2n2)=exp⁡(∑n≥1Log⁡(1−z2n2))=eΨ(z)=φ(z)\Pi(z)=\prod_{n\ge1}\left(1-\frac{z^{2}}{n^{2}}\right) =\exp\left(\sum_{n\ge1}\operatorname{Log}\left(1-\frac{z^{2}}{n^{2}}\right)\right) =e^{\Psi(z)}=\varphi(z)

である。したがってz∈Dz\in Dについてsin⁡(πz)=πzφ(z)=πz Π(z)=G(z)\sin(\pi z)=\pi z\varphi(z)=\pi z\,\Pi(z)=G(z)である。

sin⁡(πz)\sin(\pi z)とGGはともに整関数であり、領域C\mathbb Cの部分集合DDの上で一致する。DDはC\mathbb Cに属する集積点をもつから、§E5.8 定理 3.1によりC\mathbb Cの全体でsin⁡(πz)=G(z)\sin(\pi z)=G(z)である。▨

4 極を指定する一般構成:Mittag-Leffler の定理

極の位置と、その各点における主要部を先に与え、それらをもつ有理型関数を構成する。極が無限個ある場合には、主要部をそのまま加えた級数が収束するとは限らない。各主要部から適当な多項式を引いて収束させる操作が、この定理の中心である。

補題 4.1.A⊆CA\subseteq\mathbb CがC\mathbb Cの中に集積点をもたないとする。次が成り立つ。

  1. 各R>0R>0についてA∩{z:∣z∣≤R}A\cap\{z:|z|\le R\}は有限集合である。
  2. AAが無限集合ならば、AAの各元がちょうど一度ずつ現れる列(an)n≥1(a_{n})_{n\ge1}で、∣an∣|a_{n}|が非減少であり∣an∣→∞|a_{n}|\to\inftyを満たすものが存在する。

証明.(1)を示す。A∩{∣z∣≤R}A\cap\{|z|\le R\}が無限集合であると仮定し、B=A∩{∣z∣≤R}B=A\cap\{|z|\le R\}とおく。BBから相異なる点からなる列(wk)(w_{k})を取る。∣wk∣≤R|w_{k}|\le Rであるから実部と虚部はともに有界な実数列であり、§D1.8 定理 2.2を実部へ適用し、続いて得られた部分列の虚部へ適用すると、収束する部分列wkj→pw_{k_{j}}\to pが得られる。項は相異なるから、ppの任意の近傍はppと異なるAAの点を含む。すなわちp∈Cp\in\mathbb CはAAの集積点であり、仮定に反する。

(2)を示す。正の整数kkについてAk=A∩{∣z∣≤k}A_{k}=A\cap\{|z|\le k\}とおき、A0=∅A_{0}=\varnothingとする。(1)により各AkA_{k}は有限であり、A0⊆A1⊆A2⊆⋯A_{0}\subseteq A_{1}\subseteq A_{2}\subseteq\cdotsかつ⋃kAk=A\bigcup_{k}A_{k}=Aである。各k≥1k\ge1について、有限集合Ak∖Ak−1A_{k}\setminus A_{k-1}の元を次の規則で並べる。00がこの有限集合に属する場合は00を先頭に置き、残りの元をそのあとに並べる。00でない元どうしは、絶対値の小さい順に、絶対値が等しい元については偏角の主値(§E5.3 定義 2.7)の小さい順に並べる。00でない複素数については偏角の主値が定まり、00でない相異なる二つの複素数は絶対値と偏角の主値の組が相異なる。また絶対値が00である複素数は00だけである。ゆえにこの規則は各有限集合を一列に並べ、しかも絶対値の非減少順に並べる。k=1,2,…k=1,2,\ldotsの順にこれらの列を連結して(an)n≥1(a_{n})_{n\ge1}を定めると、AAの各元はちょうど一度ずつ現れる。

k≥2k\ge2のとき、Ak∖Ak−1A_{k}\setminus A_{k-1}の元の絶対値はk−1k-1より大きくkk以下であり、Ak−1A_{k-1}の元の絶対値はk−1k-1以下である。k=1k=1のときはA0=∅A_{0}=\varnothingであるから先行する元が無い。ゆえにこの連結によって∣an∣|a_{n}|は非減少になる。また、∣an∣≤k|a_{n}|\le kを満たすana_{n}はAkA_{k}の元であり、AkA_{k}の元は列の先頭から#Ak\#A_{k}個の位置を占めるから、n>#Akn>\#A_{k}ならば∣an∣>k|a_{n}|>kである。kkは任意であるから∣an∣→∞|a_{n}|\to\inftyである。▨

補題 4.2.a∈Ca\in\mathbb C、ε>0\varepsilon>0、mmを正の整数とし、b1,…,bmb_{1},\ldots,b_{m}を複素数でbm≠0b_{m}\ne0を満たすものとする。uuをD(a,ε)D(a,\varepsilon)の上の正則関数とし、0<∣z−a∣<ε0<|z-a|<\varepsilonで

f(z)=∑k=1mbk(z−a)k+u(z)f(z)=\sum_{k=1}^{m}\frac{b_{k}}{(z-a)^{k}}+u(z)

が成り立つと仮定する。このときaaはffの位数mmの極であり、aaにおけるffの主要部(§E5.11 定義 3.1)は∑k=1mbk(z−a)−k\sum_{k=1}^{m}b_{k}(z-a)^{-k}に等しい。

証明.

h(z)=∑k=1mbk(z−a)m−k+u(z)(z−a)mh(z)=\sum_{k=1}^{m}b_{k}(z-a)^{m-k}+u(z)(z-a)^{m}

とおく。hhはD(a,ε)D(a,\varepsilon)の上で正則であり、0<∣z−a∣<ε0<|z-a|<\varepsilonでf(z)=h(z)/(z−a)mf(z)=h(z)/(z-a)^{m}である。h(a)=bm≠0h(a)=b_{m}\ne0であるから、§E5.11 命題 3.4によりaaはffの位数mmの極であり、ffの Laurent 係数はcn=0c_{n}=0(n<−mn<-m)およびck−m=h(k)(a)/k!c_{k-m}=h^{(k)}(a)/k!(k≥0k\ge0)で与えられる。

hhのaaにおける Taylor 係数を求める。uuのaaにおける Taylor 展開をu(z)=∑j≥0ej(z−a)ju(z)=\sum_{j\ge0}e_{j}(z-a)^{j}(§E5.7 定理 2.1)とすると、D(a,ε)D(a,\varepsilon)の上で

h(z)=∑k=1mbk(z−a)m−k+∑j≥0ej(z−a)j+mh(z)=\sum_{k=1}^{m}b_{k}(z-a)^{m-k}+\sum_{j\ge0}e_{j}(z-a)^{j+m}

であり、右辺はaaを中心とする収束するべき級数である。§E5.7 系 2.2により、これがhhの Taylor 展開である。第一の和に現れる次数m−km-kは00以上m−1m-1以下であり、第二の和は次数mm以上の項しかもたないから、0≤ℓ≤m−10\le\ell\le m-1について次数ℓ\ellの係数はbm−ℓb_{m-\ell}である。ゆえに1≤j≤m1\le j\le mについて

c−j=c(m−j)−m=h(m−j)(a)(m−j)!=bjc_{-j}=c_{(m-j)-m}=\frac{h^{(m-j)}(a)}{(m-j)!}=b_{j}

である。n<−mn<-mについてcn=0c_{n}=0であるから、主要部は∑j=1mbj(z−a)−j\sum_{j=1}^{m}b_{j}(z-a)^{-j}に等しい。▨

定理 4.3 (Mittag-Leffler の定理).A⊆CA\subseteq\mathbb CをC\mathbb Cの中に集積点をもたない集合とし、各a∈Aa\in Aについて正の整数mam_{a}と複素数ca,1,…,ca,mac_{a,1},\ldots,c_{a,m_{a}}(ca,ma≠0c_{a,m_{a}}\ne0)が与えられているとする。

Pa(z)=∑k=1maca,k(z−a)kP_{a}(z)=\sum_{k=1}^{m_{a}}\frac{c_{a,k}}{(z-a)^{k}}

とおく。このときC∖A\mathbb C\setminus Aの上の正則関数ffが存在して、各a∈Aa\in Aはffの位数mam_{a}の極であり、aaにおけるffの主要部はPaP_{a}に等しい。とくにffはC\mathbb Cの上の有理型関数(§E5.14 定義 1.1)であり、その極の全体はAAである。

証明.A=∅A=\varnothingのときはf=0f=0と取ればよい。AAが有限集合のときはf=∑a∈APaf=\sum_{a\in A}P_{a}と取る。a∈Aa\in Aについてf−Pa=∑a′∈A, a′≠aPa′f-P_{a}=\sum_{a'\in A,\ a'\ne a}P_{a'}はaaのある近傍の上で正則であるから、補題 4.2によりaaはffの位数mam_{a}の極であり、主要部はPaP_{a}である。

以下、AAを無限集合とする。補題 4.1 (2)により、AAの元をちょうど一度ずつ並べた列(an)n≥1(a_{n})_{n\ge1}で∣an∣|a_{n}|が非減少かつ∣an∣→∞|a_{n}|\to\inftyを満たすものを取る。0∈A0\in Aのときは∣a1∣|a_{1}|が最小であるからa1=0a_{1}=0である。0∈A0\in Aのときn0=1n_{0}=1、0∉A0\notin Aのときn0=0n_{0}=0とおくと、n>n0n>n_{0}についてan≠0a_{n}\ne0である。

n>n0n>n_{0}を固定する。PanP_{a_{n}}の唯一の特異点はana_{n}であるから、PanP_{a_{n}}は開円板D(0,∣an∣)D(0,|a_{n}|)の上で正則である。§E5.7 定理 2.1により、この円板の上でPan(z)=∑k≥0dk(n)zkP_{a_{n}}(z)=\sum_{k\ge0}d^{(n)}_{k}z^{k}が成り立つ。∣an∣/2<∣an∣|a_{n}|/2<|a_{n}|であるから、§E5.7 定理 1.2 (1)により∑k≥0∣dk(n)∣(∣an∣/2)k\sum_{k\ge0}\bigl|d^{(n)}_{k}\bigr|\bigl(|a_{n}|/2\bigr)^{k}は収束する。ゆえに

∑k>M∣dk(n)∣(∣an∣2)k≤2−n\sum_{k>M}\bigl|d^{(n)}_{k}\bigr|\Bigl(\frac{|a_{n}|}{2}\Bigr)^{k}\le2^{-n}

を満たす非負整数MMが存在する。そのようなMMの全体は空でない非負整数の集合であるから最小の元をもつ。MnM_{n}をその最小の元とする。Qn(z)=∑k=0Mndk(n)zkQ_{n}(z)=\sum_{k=0}^{M_{n}}d^{(n)}_{k}z^{k}とおくとQnQ_{n}は多項式であり、∣z∣≤∣an∣/2|z|\le|a_{n}|/2について

∣Pan(z)−Qn(z)∣≤∑k>Mn∣dk(n)∣(∣an∣2)k≤2−n(5)\bigl|P_{a_{n}}(z)-Q_{n}(z)\bigr| \le\sum_{k>M_{n}}\bigl|d^{(n)}_{k}\bigr|\Bigl(\frac{|a_{n}|}{2}\Bigr)^{k}\le2^{-n} \tag{5}

である。

z∈C∖Az\in\mathbb C\setminus Aについて

f(z)=∑n≤n0Pan(z)+∑n>n0(Pan(z)−Qn(z))f(z)=\sum_{n\le n_{0}}P_{a_{n}}(z)+\sum_{n>n_{0}}\bigl(P_{a_{n}}(z)-Q_{n}(z)\bigr)

と定める。この定義が意味をもつことと、ffが求める性質をもつことを示す。

R>0R>0を取る。∣an∣→∞|a_{n}|\to\inftyであるから、n≥n1n\ge n_{1}ならば∣an∣>2R|a_{n}|>2Rとなる整数n1>n0n_{1}>n_{0}が存在する。n≥n1n\ge n_{1}と∣z∣≤R|z|\le Rについて∣z∣≤∣an∣/2|z|\le|a_{n}|/2であるから、式 (5) により∣Pan(z)−Qn(z)∣≤2−n\bigl|P_{a_{n}}(z)-Q_{n}(z)\bigr|\le2^{-n}である。したがって級数∑n≥n1(Pan−Qn)(z)\sum_{n\ge n_{1}}\bigl(P_{a_{n}}-Q_{n}\bigr)(z)は絶対収束し、§E5.3 補題 1.1によりその和hR(z)h_{R}(z)が定まる。さらにM≥n1M\ge n_{1}について

∣hR(z)−∑n=n1M(Pan−Qn)(z)∣≤∑n>M2−n=2−M\left|h_{R}(z)-\sum_{n=n_{1}}^{M}\bigl(P_{a_{n}}-Q_{n}\bigr)(z)\right|\le\sum_{n>M}2^{-n}=2^{-M}

であり、右辺はzzによらないから、部分和はD‾(0,R)\overline D(0,R)の上でhRh_{R}へ一様収束する。n≥n1n\ge n_{1}について∣an∣>2R|a_{n}|>2RであるからPanP_{a_{n}}とQnQ_{n}はD(0,R)D(0,R)の上で正則であり、D(0,R)D(0,R)に含まれるコンパクト集合はD‾(0,R)\overline D(0,R)に含まれるから、部分和の列は(番号をM−n1+1M-n_{1}+1で付け替えて)§E5.17 定義 1.1の意味でD(0,R)D(0,R)の上でhRh_{R}へ収束する。§E5.17 定理 2.1 (1)をΩ=D(0,R)\Omega=D(0,R)について適用すると、hRh_{R}はD(0,R)D(0,R)の上で正則である。

n<n1n<n_{1}に対応する項は有限個であり、PanP_{a_{n}}はC∖{an}\mathbb C\setminus\{a_{n}\}の上で正則、QnQ_{n}は整関数である。ゆえにffはD(0,R)∖AD(0,R)\setminus Aの各点で定義され、D(0,R)∖AD(0,R)\setminus Aの上で正則である。RRは任意であるから、ffはC∖A\mathbb C\setminus Aの上の正則関数である。

a∈Aa\in Aを取り、a=aja=a_{j}とする。R>∣a∣R>|a|を取り、上のとおりn1n_{1}を取ると、∣aj∣<R<2R<∣an∣|a_{j}|<R<2R<|a_{n}|(n≥n1n\ge n_{1})であるからj<n1j<n_{1}である。D(0,R)∖AD(0,R)\setminus Aの上でffを

f=Pa+ua,ua=∑n≤n0, n≠jPan+∑n0<n<n1, n≠j(Pan−Qn)−[j>n0] Qj+hRf=P_{a}+u_{a},\qquad u_{a}=\sum_{n\le n_{0},\ n\ne j}P_{a_{n}} +\sum_{n_{0}<n<n_{1},\ n\ne j}\bigl(P_{a_{n}}-Q_{n}\bigr)-\bigl[j>n_{0}\bigr]\,Q_{j}+h_{R}

と分ける。ここで[j>n0]\bigl[j>n_{0}\bigr]は、j>n0j>n_{0}のとき11、j≤n0j\le n_{0}のとき00を表す。右辺の各項の特異点を見ると、PanP_{a_{n}}(n≠jn\ne j)の特異点ana_{n}はaaと異なり、QnQ_{n}は整関数、hRh_{R}はD(0,R)D(0,R)の上で正則である。ゆえにε>0\varepsilon>0を小さく取ると、uau_{a}はD(a,ε)D(a,\varepsilon)の上で正則であり、0<∣z−a∣<ε0<|z-a|<\varepsilonでf=Pa+uaf=P_{a}+u_{a}が成り立つ。補題 4.2によりaaはffの位数mam_{a}の極であり、主要部はPaP_{a}である。

ffはC∖A\mathbb C\setminus Aの上で正則であり、AAはC\mathbb Cの中に集積点をもたず、AAの各点はffの極であるから、ffは§E5.14 定義 1.1の意味でC\mathbb Cの上の有理型関数であり、その極の全体はAAである。▨

例 4.4 (余接関数は整数を極とする場合の帰結である).定理 4.3をA=ZA=\mathbb Z、ma=1m_{a}=1、ca,1=1c_{a,1}=1、すなわちPa(z)=1z−aP_{a}(z)=\dfrac{1}{z-a}について適用する。Z\mathbb ZはC\mathbb Cの中に集積点をもたないから仮定を満たし、定理は各整数を単純極とし、整数aaにおける主要部が1/(z−a)1/(z-a)である有理型関数の存在を与える。定理 2.3は、この条件を満たす関数の一つを具体的に与えている。実際2zz2−n2=1z−n+1z+n\dfrac{2z}{z^{2}-n^{2}}=\dfrac{1}{z-n}+\dfrac{1}{z+n}であるから、同定理の右辺は

πcot⁡(πz)=1z+∑n=1∞(1z−n+1z+n)\pi\cot(\pi z)=\frac1z+\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{z-n}+\frac{1}{z+n}\right)

と書き直すことができ、主要部1/(z−a)1/(z-a)(a∈Za\in\mathbb Z)を、nn番目と−n-n番目を組にして加えた形になっている。定理 4.3の証明が各主要部から多項式QnQ_{n}を引いて収束させるのに対して、ここでは正負の主要部を組にすることが同じ役割を果たす。

5 零点を指定する一般構成:Weierstrass の因数分解定理

零点の位置を先に与えて整関数を作る。無限個の一次因子1−z/a1-z/aの積は一般には収束しないので、各因子に指数関数を掛けて11への近づき方を速める。この修正した因子を初等因子という。

定義 5.1. 非負整数ppに対して

E0(w)=1−w,Ep(w)=(1−w)exp⁡(∑k=1pwkk)(p≥1)E_{0}(w)=1-w,\qquad E_{p}(w)=(1-w)\exp\left(\sum_{k=1}^{p}\frac{w^{k}}{k}\right)\quad(p\ge1)

と定める。EpE_{p}を初等因子 (Weierstrass elementary factor) という。

補題 5.2.ppを非負整数とする。次が成り立つ。

  1. EpE_{p}は整関数であり、その零点はw=1w=1だけである。w=1w=1における零点の位数は11である。
  2. ∣w∣<1|w|<1について、補題 1.2のLpL_{p}を用いてEp(w)=eLp(w)E_{p}(w)=e^{L_{p}(w)}が成り立つ。
  3. ∣w∣≤12|w|\le\tfrac12について∣Ep(w)−1∣≤2e ∣w∣p+1\bigl|E_{p}(w)-1\bigr|\le2e\,|w|^{p+1}が成り立つ。

証明.(1)を示す。多項式と指数関数の合成は整関数であるからEpE_{p}は整関数である。§E5.3 命題 1.7 (1)により指数関数は零点をもたないから、Ep(w)=0E_{p}(w)=0であることと1−w=01-w=0であることは同値である。Q(w)=∑k=1pwk/kQ(w)=\sum_{k=1}^{p}w^{k}/k(p=0p=0のときはQ=0Q=0)とおくとEp(w)=(w−1)ψ(w)E_{p}(w)=(w-1)\psi(w)、ψ(w)=−eQ(w)\psi(w)=-e^{Q(w)}であり、ψ(1)≠0\psi(1)\ne0であるから、補題 1.6によりw=1w=1における位数は11である。

(2)を示す。∣w∣<1|w|<1ならば補題 1.2 (1)により1−w∈D01-w\in D_{0}であり、対数の枝の定義(§E5.3 定義 2.4)によりeLog⁡(1−w)=1−we^{\operatorname{Log}(1-w)}=1-wである。§E5.3 命題 1.6により

eLp(w)=eLog⁡(1−w)exp⁡(∑k=1pwkk)=(1−w)exp⁡(∑k=1pwkk)=Ep(w)e^{L_{p}(w)}=e^{\operatorname{Log}(1-w)}\exp\left(\sum_{k=1}^{p}\frac{w^{k}}{k}\right) =(1-w)\exp\left(\sum_{k=1}^{p}\frac{w^{k}}{k}\right)=E_{p}(w)

である。

(3)を示す。∣w∣≤12|w|\le\tfrac12とする。補題 1.2 (3)により∣Lp(w)∣≤2∣w∣p+1≤2(12)p+1≤1|L_{p}(w)|\le2|w|^{p+1}\le2\bigl(\tfrac12\bigr)^{p+1}\le1である。(2)と補題 1.1により

∣Ep(w)−1∣=∣eLp(w)−1∣≤∣Lp(w)∣ e∣Lp(w)∣≤2∣w∣p+1e\bigl|E_{p}(w)-1\bigr|=\bigl|e^{L_{p}(w)}-1\bigr| \le|L_{p}(w)|\,e^{|L_{p}(w)|}\le2|w|^{p+1}e

である。▨

定理 5.3 (Weierstrass の因数分解定理).A⊆CA\subseteq\mathbb CをC\mathbb Cの中に集積点をもたない集合とし、各a∈Aa\in Aについて正の整数mam_{a}が与えられているとする。このとき整関数FFが存在して、FFは恒等的に00ではなく、FFの零点の全体はAAに一致し、各a∈Aa\in AにおけるFFの零点の位数はmam_{a}である。

証明.0∈A0\in Aのときm=m0m=m_{0}、0∉A0\notin Aのときm=0m=0とおき、A′=A∖{0}A'=A\setminus\{0\}とおく。

A′A'が無限集合のときは補題 4.1 (2)により、有限集合のときは元を絶対値の非減少順に並べることにより、A′A'の各元がちょうど一度ずつ現れ、絶対値が非減少である列が得られる。この列の各元aaを続けてmam_{a}回ずつ書き並べたものを(bj)(b_{j})とすると、∣bj∣|b_{j}|は非減少であり、bj≠0b_{j}\ne0である。R>0R>0について、∣bj∣≤R|b_{j}|\le Rを満たすjjの個数は∑a∈A′, ∣a∣≤Rma\sum_{a\in A',\,|a|\le R}m_{a}であり、補題 4.1 (1)によりこの和は有限個の項の和であるから有限である。ゆえに(bj)(b_{j})が無限列であるときは∣bj∣→∞|b_{j}|\to\inftyである。

列(bj)(b_{j})が長さJJの有限列である場合(A′=∅A'=\varnothingのときはJ=0J=0と読む)も無限列の場合と一緒に扱うために、j≥1j\ge1について

fj(z)={Ej−1(z/bj)−1,(bj) が無限列であるか、または j≤J,0,それ以外f_{j}(z)=\begin{cases} E_{j-1}\bigl(z/b_{j}\bigr)-1,&\text{$(b_{j})$ が無限列であるか、または }j\le J,\\ 0,&\text{それ以外} \end{cases}

とおく。bj≠0b_{j}\ne0であるから各fjf_{j}は整関数であり、fj=0f_{j}=0である番号では1+fj=11+f_{j}=1である。

z0∈Cz_{0}\in\mathbb Cとr>0r>0を取り、R=∣z0∣+rR=|z_{0}|+rとおく。(bj)(b_{j})が有限列であるときは、j0=J+1j_{0}=J+1とおけばj≥j0j\ge j_{0}についてfj=0f_{j}=0である。(bj)(b_{j})が無限列であるときは∣bj∣→∞|b_{j}|\to\inftyであるから、j≥j0j\ge j_{0}ならば∣bj∣>2R|b_{j}|>2Rとなる正の整数j0j_{0}が存在する。この場合、j≥j0j\ge j_{0}と∣z−z0∣≤r|z-z_{0}|\le rについて∣z∣≤R|z|\le Rであり∣z/bj∣≤R/∣bj∣<12|z/b_{j}|\le R/|b_{j}|<\tfrac12であるから、補題 5.2 (3)をp=j−1p=j-1について適用して

∣fj(z)∣≤2e∣zbj∣j≤2e⋅2−j|f_{j}(z)|\le2e\left|\frac{z}{b_{j}}\right|^{j}\le2e\cdot2^{-j}

を得る。どちらの場合も∑j≥j0sup⁡∣z−z0∣≤r∣fj(z)∣≤2e∑j≥j02−j<∞\sum_{j\ge j_{0}}\sup_{|z-z_{0}|\le r}|f_{j}(z)|\le2e\sum_{j\ge j_{0}}2^{-j}<\inftyである。

上限がすべての番号について有限であることを確かめる。fj=0f_{j}=0である番号では上限は00である。fj(z)=Ej−1(z/bj)−1f_{j}(z)=E_{j-1}(z/b_{j})-1である番号では、∣z−z0∣≤r|z-z_{0}|\le rのとき∣z/bj∣≤R/∣bj∣|z/b_{j}|\le R/|b_{j}|であるから、ρj=R/∣bj∣\rho_{j}=R/|b_{j}|とおくと定義 5.1によりEj−1(w)=(1−w)exp⁡(∑k=1j−1wk/k)E_{j-1}(w)=(1-w)\exp\bigl(\sum_{k=1}^{j-1}w^{k}/k\bigr)であり、指数因子には§E5.3 命題 1.7 (1)による∣eu∣=eRe⁡u≤e∣u∣|e^{u}|=e^{\operatorname{Re}u}\le e^{|u|}と三角不等式を用いて

∣fj(z)∣≤1+∣Ej−1(z/bj)∣≤1+(1+ρj)exp⁡(∑k=1j−1ρjkk)|f_{j}(z)|\le1+\bigl|E_{j-1}(z/b_{j})\bigr| \le1+(1+\rho_{j})\exp\left(\sum_{k=1}^{j-1}\frac{\rho_{j}^{k}}{k}\right)

である。右辺はzzによらない実数であるから、上限は有限である。ゆえに定理 1.7の仮定がU=CU=\mathbb C、N=j0−1N=j_{0}-1について成り立つ。したがって

Π(z)=∏j≥1(1+fj(z))\Pi(z)=\prod_{j\ge1}\bigl(1+f_{j}(z)\bigr)

は各点で収束し、Π\Piは整関数である。

定理 1.7 (4)の前半により、Π(z)=0\Pi(z)=0であることと、1+fj(z)=01+f_{j}(z)=0を満たすjjが存在することは同値である。fj=0f_{j}=0である番号では1+fj=11+f_{j}=1であり、そうでない番号では1+fj(z)=Ej−1(z/bj)1+f_{j}(z)=E_{j-1}(z/b_{j})であるから、補題 5.2 (1)により、これはz=bjz=b_{j}を満たす番号jjが存在することと同値である。bj≠0b_{j}\ne0であるからΠ(0)≠0\Pi(0)\ne0であり、とくにΠ\Piは恒等的に00ではない。C\mathbb Cは連結であるから、定理 1.7 (4)の後半を適用することができる。

a∈A′a\in A'を取る。fj=0f_{j}=0である番号では1+fj1+f_{j}はaaで00にならない。bj≠ab_{j}\ne aであるときもz↦Ej−1(z/bj)z\mapsto E_{j-1}(z/b_{j})はaaで00にならない。bj=ab_{j}=aならば

Ej−1(zbj)=(1−za)exp⁡(∑k=1j−11k(za)k)=(z−a)(−1a)exp⁡(∑k=1j−11k(za)k)E_{j-1}\left(\frac{z}{b_{j}}\right) =\left(1-\frac{z}{a}\right)\exp\left(\sum_{k=1}^{j-1}\frac{1}{k}\left(\frac{z}{a}\right)^{k}\right) =(z-a)\left(-\frac{1}{a}\right)\exp\left(\sum_{k=1}^{j-1}\frac{1}{k}\left(\frac{z}{a}\right)^{k}\right)

である。(z−a)(z-a)以外の二つの因子の積ψ(z)=−1aexp⁡(∑k=1j−11k(z/a)k)\psi(z)=-\frac1a\exp\bigl(\sum_{k=1}^{j-1}\frac1k(z/a)^{k}\bigr)はaaで00にならないから、補題 1.6によりaaにおける位数は11である。bj=ab_{j}=aを満たすjjの個数はmam_{a}であるから、定理 1.7 (4)によりΠ\Piのaaにおける零点の位数はmam_{a}である。

F(z)=zmΠ(z)F(z)=z^{m}\Pi(z)とおく。FFは整関数であり、Π(0)≠0\Pi(0)\ne0であるから恒等的に00ではない。

z=0z=0を調べる。m≥1m\ge1であることと0∈A0\in Aであることは同値であり、F(0)=0F(0)=0であることとm≥1m\ge1であることは同値であるから、00がFFの零点であることと0∈A0\in Aであることは同値である。0∈A0\in Aとすると、Π\Piの00における Taylor 展開(§E5.7 定理 2.1)をΠ(z)=∑k≥0dkzk\Pi(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}z^{k}とすればd0=Π(0)≠0d_{0}=\Pi(0)\ne0であり、F(z)=∑k≥0dkzk+mF(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}z^{k+m}がC\mathbb Cの上で成り立つ。§E5.7 系 2.2によりこれがFFの Taylor 展開であるから、FFの00における位数はm=m0m=m_{0}である。

z≠0z\ne0を調べる。zm≠0z^{m}\ne0であるから、F(z)=0F(z)=0であることとΠ(z)=0\Pi(z)=0であることは同値である。a∈A′a\in A'について、§E5.8 命題 1.2によりaaを中心とする円板の上の正則関数hhでΠ(z)=(z−a)mah(z)\Pi(z)=(z-a)^{m_{a}}h(z)かつh(a)≠0h(a)\ne0を満たすものが存在する。この円板を00を含まないように取り、H(z)=zmh(z)H(z)=z^{m}h(z)とおくと、HHは同じ円板の上で正則であってH(a)=amh(a)≠0H(a)=a^{m}h(a)\ne0であり、F(z)=(z−a)maH(z)F(z)=(z-a)^{m_{a}}H(z)である。HHのaaにおける Taylor 展開(§E5.7 定理 2.1)をH(z)=∑k≥0dk(z−a)kH(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}(z-a)^{k}とするとd0=H(a)≠0d_{0}=H(a)\ne0であり、この円板の上でF(z)=∑k≥0dk(z−a)k+maF(z)=\sum_{k\ge0}d_{k}(z-a)^{k+m_{a}}が成り立つ。右辺はaaを中心とする収束するべき級数であるから、§E5.7 系 2.2によりこれがFFの Taylor 展開であり、mam_{a}次より低い次数の係数は00、mam_{a}次の係数はd0≠0d_{0}\ne0である。ゆえにFFのaaにおける位数もmam_{a}である。

ゆえにFFの零点の全体はAAであり、各a∈Aa\in Aにおける位数はmam_{a}である。▨

注意 5.4 (一意性は主張していない).定理 5.3は、指定した零点と位数をもつ整関数の存在を主張するものであり、そのような整関数がただ一つであることは主張していない。実際、ggを任意の整関数とするとege^{g}は零点をもたない(§E5.3 命題 1.7 (1))から、FFが定理の結論を満たすならばFegFe^{g}も同じ零点と同じ位数をもつ。同じことは定理 4.3についても成り立つ。実際、ffが指定した極と主要部をもつならば、任意の整関数ggについてf+gf+gも同じ極と同じ主要部をもつ。

例 5.5 (正弦関数は整数を単純零点とする場合の帰結である).定理 5.3をA=ZA=\mathbb Z、ma=1m_{a}=1について適用する。Z\mathbb ZはC\mathbb Cの中に集積点をもたないから仮定を満たし、定理は、零点の全体がZ\mathbb Zであって各零点の位数が11である整関数の存在を与える。定理 3.2は、この条件を満たす整関数の一つとしてsin⁡(πz)\sin(\pi z)を具体的に与えている。実際1−z2n2=(1−zn)(1+zn)1-\dfrac{z^{2}}{n^{2}}=\Bigl(1-\dfrac zn\Bigr)\Bigl(1+\dfrac zn\Bigr)であるから、同定理の右辺は先頭の因子πz\pi zが零点00を、nn番目の因子が零点nnと−n-nを与える形になっている。同定理の主張は積表示であって零点の位数を述べていないが、各因子については補題 1.6により±n\pm nにおける位数が11であり、先頭の因子πz\pi zについても00における位数が11である。零点の全体と各零点の位数をこれらの因子から読み取ることができることは定理 1.7 (4)による。定理 5.3の証明がjj番目の因子に初等因子Ej−1E_{j-1}を用いて収束させるのに対して、ここではE0E_{0}どうしを正負の組にすることが同じ役割を果たす。この二つの構成は異なる整関数を与えてよく、注意 5.4のとおり、条件を満たす整関数はただ一つではない。

以上の二つの例は、本記事の前半で個別に証明した二つの公式が、後半の二つの構成定理のA=ZA=\mathbb Z、ma=1m_{a}=1の場合にあたることを述べている。構成定理は存在だけを主張するので、条件を満たす関数を名指しで与えるのは公式の側である。

6 演習

問題 6.1.

  • 定義 1.3は、有限個の因子が00であることを許す一方で、それ以外の因子には対数の主値が定まることを要求している。この二つの要求がそれぞれ何のために置かれているかを、命題 1.4 (3)と注意 1.5に照らして述べる。
  • 定理 1.7の仮定は、∑n>Nsup⁡∣fn∣<∞\sum_{n>N}\sup|f_{n}|<\inftyという形で有限個の番号を除いている。この除外を落としてN=0N=0に固定すると、定理 5.3の証明のどこが通らなくなるかを述べる。
  • 補題 2.2の証明では、正方形の横の辺と縦の辺で評価の根拠が異なる。それぞれの根拠を述べ、一方の評価だけでは境界全体を覆うことができない理由を説明する。
  • 定理 2.3の証明では、被積分関数をC(w)/(w−z)C(w)/(w-z)ではなくC(w)/(w2−z2)C(w)/(w^{2}-z^{2})に取った。前者に取ったときに§E5.4 命題 3.2による評価がどうなるかを計算し、N→∞N\to\inftyの極限を取ることができない理由を述べる。
  • 定理 3.2の証明では、項別積分の根拠として定理 2.3の一様収束を用いた。一様性を確かめずに項別積分を行った場合に、補題 3.1の証明のどの評価を用いることができなくなるかを述べる。
  • 定理 4.3の証明では、各主要部から多項式QnQ_{n}を引いた。QnQ_{n}を引かずに∑nPan\sum_{n}P_{a_{n}}を考えたとき、収束について何が保証されないかを、式 (5) の役割に照らして述べる。
  • 定理 5.3では、jj番目の因子に初等因子Ej−1E_{j-1}を用いた。すべてのjjについてE0E_{0}を用いると、補題 5.2 (3)による評価がどう変わり、収束の議論のどこが破れるかを述べる。

参考文献

  1. Lars V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., AMS Chelsea Publishing 385, American Mathematical Society, Providence, R.I., 2021, originally published 1979.無限積、余接関数の部分分数展開、正弦関数の積表示、Mittag-Leffler の定理、および Weierstrass の因数分解定理を参考にした。
  2. Reinhold Remmert, Classical Topics in Complex Function Theory, Springer, New York, 1998.正則関数の無限積による構成、与えた零点をもつ整関数の構成、および与えた主要部をもつ有理型関数の構成を参考にした。
  3. Walter Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw Hill, 1987.初等因子と Weierstrass の因数分解定理を参考にした。

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