1 単連結領域の上の対数と平方根
§E5.10 命題 2.1は、開円板の上で零点をとらない正則関数が正則なm乗根をもつことを示した。本節は、定義域を開円板から単連結領域へ広げる。証明の骨格は同命題と同じであり、開円板が単連結であることだけを用いていた箇所を、単連結性そのものへ置き換える。
出発点は、fが零点をもたない正則関数であるときf′/fが正則であること、および単連結領域では正則関数がつねに原始関数をもつこと(§E5.5 系 8.2)である。f′/fの原始関数gをとると、fe−gの導関数が0になるので、この関数は定数である。定数の値を1に合わせるために、gに加える定数を一点で調整する。
定理 1.1.Ω⊆Cを単連結な領域とし、fをΩの上の正則関数で、Ωのすべての点zについてf(z)=0を満たすものとする。このとき次が成り立つ。
- Ωの上の正則関数gで、Ωのすべての点zについてeg(z)=f(z)を満たすものが存在する。
- gとg~がともに(1)の条件を満たすならば、整数kが存在して、Ωのすべての点zについてg~(z)−g(z)=2πikが成り立つ。
証明.(1)を示す。fはΩの上で正則であるから、§E5.6 定理 4.1によりfはΩの上で何回でも複素微分可能であり、とくにf′はΩの上で正則である。fはΩの上で零点をもたないから、§E5.2 命題 1.2 (3)によりf′/fはΩの上で正則である。Ωは単連結な領域であるから、§E5.5 系 8.2によりΩの上の正則関数hでh′=f′/fを満たすものが存在する。
z0∈Ωを一つ固定する。f(z0)=0であるから、§E5.3 命題 2.3によりew0=f(z0)を満たす複素数w0が存在する。
g=h−h(z0)+w0とおく。gはΩの上で正則であり、g′=h′=f′/fかつeg(z0)=ew0=f(z0)である。
ψ(z)=f(z)e−g(z)とおく。§E5.3 命題 1.8と§E5.2 命題 1.2によりψはΩの上で正則であり、
ψ′=f′e−g−fg′e−g=e−g(f′−f⋅ff′)=0がΩの各点で成り立つ。Ωは領域であるから§E5.4 命題 4.3によりψはΩの上で定数であり、その値はψ(z0)=f(z0)e−g(z0)である。§E5.3 命題 1.6の加法法則と、§E5.3 定義 1.3が与えるe0=1によりeg(z0)e−g(z0)=e0=1であるから、e−g(z0)=1/eg(z0)=1/f(z0)であり、ψ(z0)=1である。ゆえにΩのすべての点zについてf(z)e−g(z)=1であり、同じ加法法則によりeg(z)=f(z)e−g(z)eg(z)=f(z)である。
(2)を示す。gとg~がともに(1)の条件を満たすとする。eg=fの両辺を微分すると、§E5.3 命題 1.8と§E5.2 命題 1.2 (4)によりg′eg=f′であり、eg=fは零点をもたないからg′=f′/fである。g~についても同じ計算によりg~′=f′/fである。よって(g~−g)′=0がΩの各点で成り立ち、Ωは領域であるから§E5.4 命題 4.3によりg~−gはΩの上で定数である。その値をcとおく。Ωの点zを一つとるとeg~(z)=f(z)=eg(z)であるから、§E5.3 命題 1.7 (3)によりg~(z)−g(z)=2πikを満たす整数kが存在する。g~−gは定数cであるからc=2πikであり、この等式はΩのすべての点で成り立つ。▨
系 1.3.Ω⊆Cを単連結な領域とし、fをΩの上の正則関数で、Ωのすべての点zについてf(z)=0を満たすものとする。このとき次が成り立つ。
- Ωの上の正則関数hで、Ωのすべての点zについてh(z)2=f(z)を満たすものが存在する。このhはΩの上で零点をもたない。
- hとh~がともに(1)の条件を満たすならば、h~=hがΩの上で成り立つか、またはh~=−hがΩの上で成り立つ。
証明.(1)を示す。定理 1.1 (1)により、Ωの上の正則関数gでeg=fを満たすものが存在する。h(z)=eg(z)/2とおく。§E5.3 命題 1.8と§E5.2 命題 1.2によりhはΩの上で正則である。§E5.3 命題 1.6の加法法則により
h(z)2=eg(z)/2eg(z)/2=eg(z)=f(z)である。§E5.3 命題 1.7 (1)によりhはΩの上で零点をもたない。
(2)を示す。hとh~がともに(1)の条件を満たすとする。(1)によりhは零点をもたないから、§E5.2 命題 1.2 (3)によりq=h~/hはΩの上で正則であり、q2=h~2/h2=f/f=1がΩの上で成り立つ。両辺を微分すると§E5.2 命題 1.2 (2)により2qq′=0である。q2=1よりqはΩの上で零点をもたないから、Ωの各点でq′=0である。Ωは領域であるから§E5.4 命題 4.3によりqは定数であり、その定数をcとおくとc2=1、すなわちc=1またはc=−1である。c=1ならばh~=hであり、c=−1ならばh~=−hである。▨
2 等角同値と単射な正則写像
主定理が主張する「対応する」の意味を、ここで定める。
単射な正則写像については、逆写像が自動的に正則になる。次の命題がこれを述べる。主定理の結論を定義 2.1の形で述べるために、この命題を用いる。
命題 2.3.Ω⊆Cを領域、fをΩの上の単射な正則関数とする。このとき次が成り立つ。
- Ωのすべての点zについてf′(z)=0である。
- Ωに含まれるすべての開集合Vについてf(V)は開集合である。とくにf(Ω)は開集合である。
- 逆写像f−1:f(Ω)→Ωはf(Ω)の上で正則であり、z∈Ωとw=f(z)について(f−1)′(w)=1/f′(z)が成り立つ。
証明. まずfがΩの上で定数でないことを示す。Ωは空でない開集合であるから、a∈Ωとr>0でD(a,r)⊆Ωを満たすものが存在する。aとa+r/2はΩの相異なる二点であり、fは単射であるからf(a)=f(a+r/2)である。ゆえにfは定数でない。
(1)を示す。z∈Ωをとる。Ωは開集合であるからD(z,δ)⊆Ωを満たすδ>0が存在する。fはΩの全体で単射であるから、その部分集合D(z,δ)の上でも単射である。すなわち§E5.10 定理 3.1 (2)が成り立つので、同定理によりf′(z)=0である。
(2)は、§E5.10 定理 1.1を領域Ωと定数でない正則関数fへ適用して得られる。
(3)を示す。z0∈Ωをとり、w0=f(z0)とおく。
第一に、f−1がw0で連続であることを示す。ε>0をとる。Ωは開集合であるから、0<ε′≤εをD(z0,ε′)⊆Ωを満たすようにとることができる。(2)によりf(D(z0,ε′))は開集合であり、w0を含むから、D(w0,η)⊆f(D(z0,ε′))を満たすη>0が存在する。w∈f(Ω)が∣w−w0∣<ηを満たすとすると、w∈f(D(z0,ε′))であるから、f−1(w)はD(z0,ε′)の点である。実際、w=f(z1)を満たすz1∈D(z0,ε′)が存在し、fは単射であるからf−1(w)=z1である。ゆえに∣f−1(w)−z0∣<ε′≤εである。
第二に、差商の極限を計算する。Ω∖{z0}の上の関数
q(z)=z−z0f(z)−f(z0)は、§E5.2 定義 1.1によりz→z0のときf′(z0)へ収束する。(1)によりf′(z0)=0であるから、δ1>0を、z∈Ωかつ0<∣z−z0∣<δ1を満たすすべてのzについて
q(z)−f′(z0)<2∣f′(z0)∣が成り立つようにとることができる。このとき同じ範囲のzについて∣q(z)∣≥∣f′(z0)∣−∣q(z)−f′(z0)∣>∣f′(z0)∣/2>0である。ε>0をとり、0<δ2≤δ1を、z∈Ωかつ0<∣z−z0∣<δ2を満たすすべてのzについて∣q(z)−f′(z0)∣<ε∣f′(z0)∣2/2が成り立つようにとる。この範囲のzについて
q(z)1−f′(z0)1=∣q(z)∣∣f′(z0)∣∣q(z)−f′(z0)∣<∣f′(z0)∣22∣q(z)−f′(z0)∣<εである。
第三に、二つを合わせる。第一の段により、η>0が存在して、w∈f(Ω)かつ∣w−w0∣<ηならば∣f−1(w)−z0∣<δ2である。さらにw=w0としz=f−1(w)とおくと、fは単射であるからz=z0であり、0<∣z−z0∣<δ2である。w=f(z)、w0=f(z0)であるから
w−w0f−1(w)−f−1(w0)=f(z)−f(z0)z−z0=q(z)1であり、第二の段の評価により
w−w0f−1(w)−f−1(w0)−f′(z0)1<εである。ε>0は任意であったから、f−1はw0で複素微分可能であり、その微分係数は1/f′(z0)である。f(Ω)は(2)により開集合であり、w0∈f(Ω)は任意であったから、f−1はf(Ω)の上で正則である。▨
3 非空な写像族
以下、証明の主役になる族を定める。指定する一点z0は領域Ωの任意の点でよく、Ωが原点を含むことは仮定しない。
定義 3.1.Ω⊆Cを領域、z0∈Ωとする。Ωの上の関数fからなる集合F(Ω,z0)を、次の四つをすべて満たすfの全体として定める。
- fはΩの上で正則である。
- fはΩの上で単射である。
- Ωのすべての点zについて∣f(z)∣<1である。
- f(z0)=0である。
この集合を単位円板への単射正則写像の族 (family of injective holomorphic maps into the unit disk) という。
Ωが複素平面自身でないという仮定は、次の命題でΩの外の点を取るために用いる。
命題 3.2.Ω⊆Cを単連結な領域とし、Ω=Cとする。z0∈Ωとすると、定義 3.1の族F(Ω,z0)は空でない。
証明.Ω=Cであるからa∈C∖Ωをとることができる。u(z)=z−aとおくと、uはΩの上で正則であり、Ωのすべての点zについてz=aであるからu(z)=0である。Ωは単連結な領域であるから、系 1.3 (1)により、Ωの上の正則関数hでh(z)2=z−aを満たすものが存在し、hはΩの上で零点をもたない。
h(z1)=h(z2)とするとz1−a=h(z1)2=h(z2)2=z2−aであるからz1=z2である。
h(z1)=−h(z2)を満たすz1,z2∈Ωが存在したとする。両辺を二乗するとz1−a=z2−aであるからz1=z2であり、したがってh(z1)=−h(z1)、すなわちh(z1)=0である。これはhが零点をもたないことに反する。ゆえに、Ωのすべての点z1,z2についてh(z1)=−h(z2)である。
hは単射であるから、命題 2.3 (2)によりh(Ω)は開集合である。w0=h(z0)とおくとw0∈h(Ω)であるから、D(w0,r)⊆h(Ω)を満たすr>0が存在する。
Ωのすべての点zについて∣h(z)+w0∣≥rであることを示す。∣h(z)+w0∣<rを満たすz∈Ωが存在したとする。ζ=h(z)とおくと∣−ζ−w0∣=∣ζ+w0∣<rであるから−ζ∈D(w0,r)⊆h(Ω)であり、−ζ=h(z′)を満たすz′∈Ωが存在する。すなわちh(z)=−h(z′)となり、上で示したh(Ω)∩(−h(Ω))=∅に反する。
そこで
F(z)=2(h(z)+w0)r(z∈Ω)とおく。∣h(z)+w0∣≥rであるから分母はΩの上で零点をもたず、§E5.2 命題 1.2 (3)によりFはΩの上で正則である。Ωのすべての点zについて
∣F(z)∣=2∣h(z)+w0∣r≤2rr=21<1である。またFは単射である。実際、F(z1)=F(z2)とするとh(z1)+w0=h(z2)+w0であるからh(z1)=h(z2)であり、hの単射性によりz1=z2である。
b=F(z0)とおくと∣b∣<1、すなわちb∈Dである。§E5.16 補題 3.2によりφbはDの正則自己同型でありφb(b)=0である。f=φb∘Fとおく。FはΩからDへの写像でありφbはDの上で正則であるから、§E5.2 命題 1.2 (4)によりfはΩの上で正則である。φbはDの単射でありFも単射であるから、fは単射である。φbはDをDへ写すから、Ωのすべての点zについて∣f(z)∣<1である。最後にf(z0)=φb(b)=0である。ゆえにfは定義 3.1の四条件を満たし、F(Ω,z0)=∅である。▨
4 極値元の存在
命題 4.1.Ω⊆Cを領域、z0∈Ωとし、定義 3.1の族F=F(Ω,z0)が空でないとする。このとき
M=sup{∣f′(z0)∣ f∈F}は実数であって0<M<∞を満たし、しかも∣g′(z0)∣=Mを満たすg∈Fが存在する。
証明.Ωは開集合であるから、D(z0,r)⊆Ωを満たすr>0が存在する。f∈Fとすると、円周∣ζ−z0∣=rの上で∣f(ζ)∣<1、とくに∣f(ζ)∣≤1であるから、§E5.6 系 4.2を関数f、中心z0、半径r、同系の上界を1、同系の階数mを1として適用して∣f′(z0)∣≤1/rを得る。Fは空でないから、集合{∣f′(z0)∣:f∈F}は空でない実数の集合であり、1/rを上界にもつ。ゆえに上限Mが実数として存在し、M≤1/r<∞である。
次にM>0を示す。f∈Fを一つとる。fはΩの上で単射な正則関数であるから、命題 2.3 (1)によりf′(z0)=0である。ゆえにM≥∣f′(z0)∣>0である。
Mは上限であるから、Fの元の列(fn)n≥1を、各正の整数nについて
M−n1<∣fn′(z0)∣≤Mを満たすように取ることができる。右の不等号はMが上限であることによる。
Fが§E5.17 定義 4.3の意味で局所一様有界であることを示す。Ωの点aをとると、Ωは開集合であるからD(a,ρ)⊆Ωを満たすρ>0が存在する。定義 3.1 条件 (c)により、Fのすべての元fとD(a,ρ)のすべての点zについて∣f(z)∣≤1である。よってFは局所一様有界である。ゆえに§E5.17 定理 5.1によりFは§E5.17 定義 4.1の意味で正規族である。列(fn)n≥1へ正規性の定義を適用すると、狭義単調増加な写像κ:Z≥1→Z≥1と関数g:Ω→Cが存在して、(fκ(k))k≥1はΩの上でgへ§E5.17 定義 1.1の意味で収束する。
以下で各点における収束を繰り返し用いる。z∈Ωをとると、Ωは開集合であるからD(z,s)⊆Ωを満たすs>0が存在し、§E5.17 補題 1.3によりD(z,s)はΩに含まれるコンパクト集合である。この集合へ§E5.17 定義 1.1の条件を適用すると、複素数の列(fκ(k)(z))k≥1はg(z)へ収束する。
§E5.17 定理 2.1を開集合Ω、正則関数の列(fκ(k))、極限gへ適用すると、gはΩの上で正則であり、導関数の列(fκ(k)′)はΩの上でg′へ§E5.17 定義 1.1の意味で収束する。点z0における収束を導関数の列へ適用すると、fκ(k)′(z0)→g′(z0)であり、したがって∣fκ(k)′(z0)∣→∣g′(z0)∣である。
κは正の整数に値をとる狭義単調増加な写像であるから、kについての帰納法によりκ(k)≥kである。ゆえに上の不等式により、すべてのkについて
M−k1≤M−κ(k)1<∣fκ(k)′(z0)∣≤Mである。左辺と右辺はともにk→∞でMへ収束するから、∣g′(z0)∣=Mである。M>0でM>0であるから、g′(z0)=0であり、とくにgはΩの上で定数でない。
gがΩの上で正則であることは§E5.17 定理 2.1から従う。
gが単射であることを示す。Ωは領域であり、各fκ(k)はΩの上の単射な正則関数であり、(fκ(k))はΩの上でgへ§E5.17 定義 1.1の意味で収束する。ゆえに§E5.17 系 3.4により、gはΩの上で単射であるか、またはΩの上で定数である。g′(z0)=0であるからgは定数でなく、したがって単射である。ここでΩが連結であることを用いた。
Ωのすべての点zについて∣g(z)∣<1であることを示す。局所一様収束からfκ(k)(z)→g(z)である。三角不等式により∣fκ(k)(z)∣−∣g(z)∣≤∣fκ(k)(z)−g(z)∣であるから∣fκ(k)(z)∣→∣g(z)∣であり、すべてのkについて∣fκ(k)(z)∣<1であることと極限が広義の不等式を保つことから∣g(z)∣≤1である。ここで∣g(z1)∣=1を満たすz1∈Ωが存在したとする。Ωは開集合であるからD(z1,ρ)⊆Ωを満たすρ>0が存在し、D(z1,ρ)の全体で∣g(z)∣≤1=∣g(z1)∣である。Ωは領域でgはΩの上で正則であるから、§E5.9 定理 3.1によりgはΩの上で定数である。これはg′(z0)=0に反する。ゆえにΩのすべての点zについて∣g(z)∣<1である。
最後に、すべてのkについてfκ(k)(z0)=0であるから、点z0における収束によりg(z0)=0である。
以上によりgは定義 3.1の四条件を満たし、g∈Fかつ∣g′(z0)∣=Mである。▨
5 欠値変形と Riemann の写像定理
定理 5.1 (Riemann の写像定理).Ω⊆Cを単連結な領域とし、Ω=Cとする。z0∈Ωとすると、ΩからD={z∈C:∣z∣<1}への全単射fであって、fがΩの上で正則であり、逆写像f−1がDの上で正則であり、かつf(z0)=0を満たすものが存在する。とくにΩとDは定義 2.1の意味で等角同値である。
証明.命題 3.2によりF=F(Ω,z0)は空でない。ゆえに命題 4.1を適用することができ、M=sup{∣f~′(z0)∣:f~∈F}は0<M<∞を満たし、∣f′(z0)∣=Mを満たすf∈Fが存在する。このfを固定する。fはΩの上で正則かつ単射であり、f(Ω)⊆Dかつf(z0)=0である。
f(Ω)=Dであることを、背理法で示す。f(Ω)=Dと仮定し、α∈D∖f(Ω)をとる。
u=φα∘fとおく。§E5.16 補題 3.2によりφαはDの正則自己同型であるから、uはΩの上で正則であり(§E5.2 命題 1.2 (4))、Ωのすべての点zについて∣u(z)∣<1である。uは単射である。実際、u(z1)=u(z2)とすると、φαが単射であるからf(z1)=f(z2)であり、fが単射であるからz1=z2である。さらにuはΩの上で零点をもたない。実際、u(z)=0とするとφα(f(z))=0であり、φα(w)=0となるのはw=αのときだけであるからf(z)=αとなって、α∈/f(Ω)に反する。
Ωは単連結な領域でありuはΩの上で零点をもたない正則関数であるから、系 1.3 (1)により、Ωの上の正則関数FでF(z)2=u(z)を満たすものが存在する。Ωのすべての点zについて∣F(z)∣2=∣u(z)∣<1であるから∣F(z)∣<1であり、FはΩからDへの写像である。Fは単射である。実際、F(z1)=F(z2)とするとu(z1)=F(z1)2=F(z2)2=u(z2)であり、uの単射性によりz1=z2である。
β=F(z0)とおくとβ∈Dである。G=φβ∘Fとおく。Fの性質および§E5.16 補題 3.2により、GはΩの上で正則であり、単射であり、Ωのすべての点zについて∣G(z)∣<1であり、G(z0)=φβ(β)=0である。ゆえにG∈Fである。
Dの上の写像Ψを
Ψ(w)=φ−α((φ−β(w))2)(w∈D)で定める。−β∈Dかつ−α∈Dであるから、§E5.16 補題 3.2によりφ−βとφ−αはどちらもDの正則自己同型である。w∈Dについてφ−β(w)∈Dであり、∣φ−β(w)2∣=∣φ−β(w)∣2<1であるからφ−β(w)2∈Dであり、Ψ(w)∈Dである。よってΨはDからDへの写像であり、§E5.2 命題 1.2 (2)と§E5.2 命題 1.2 (4)によりDの上で正則である。
Ψ(0)=0を示す。§E5.16 補題 3.2によりφ−β(0)=(0+β)/(1+β⋅0)=βである。また
β2=F(z0)2=u(z0)=φα(f(z0))=φα(0)=1−α⋅00−α=−αである。ゆえに
Ψ(0)=φ−α(β2)=φ−α(−α)=1+α(−α)−α+α=1−∣α∣20=0である。ここで∣α∣<1より1−∣α∣2=0であることを用いた。
Ψ∘G=fを示す。§E5.16 補題 3.2はφβ−1=φ−βとφα−1=φ−αを述べているから、Ωのすべての点zについて
Ψ(G(z))=φ−α((φ−β(φβ(F(z))))2)=φ−α(F(z)2)=φ−α(u(z))=φ−α(φα(f(z)))=f(z)である。
u0=1/2とおくとu0∈Dかつu0=0である。w1=φβ(u0)、w2=φβ(−u0)とおく。§E5.16 補題 3.2によりφβはDの単射であり、u0=−u0であるからw1=w2である。またw1,w2∈Dである。φ−β(w1)=u0かつφ−β(w2)=−u0であり、u02=(−u0)2であるから
Ψ(w1)=φ−α(u02)=φ−α((−u0)2)=Ψ(w2)である。ゆえにΨはDの上で単射でない。
ΨはDからDへの正則関数でありΨ(0)=0であるから、§E5.16 定理 2.1を適用することができ、§E5.16 定理 2.1 (2)により∣Ψ′(0)∣≤1である。ここで∣Ψ′(0)∣=1と仮定すると、§E5.16 定理 2.1 (3)により∣λ∣=1を満たすλが存在してΨ(w)=λwがすべてのw∈Dで成り立つ。この写像はλ=0であるから単射であり、上で示したΨの非単射性に反する。ゆえに∣Ψ′(0)∣<1である。
Ψ∘G=fとG(z0)=0に§E5.2 命題 1.2 (4)を適用すると
f′(z0)=Ψ′(G(z0))G′(z0)=Ψ′(0)G′(z0)である。絶対値をとるとM=∣f′(z0)∣=∣Ψ′(0)∣∣G′(z0)∣である。G∈Fであるから∣G′(z0)∣≤Mであり、∣Ψ′(0)∣<1と命題 4.1が与えるM>0により
M=∣Ψ′(0)∣∣G′(z0)∣≤∣Ψ′(0)∣M<Mとなる。これは矛盾である。ゆえにf(Ω)=Dである。
fはΩからDへの全単射であり、Ωの上で正則であり、f(z0)=0を満たす。Ωは領域でありfは単射であるから、命題 2.3 (3)によりf−1はf(Ω)=Dの上で正則である。ゆえにΩとDは定義 2.1の意味で等角同値である。▨
6 演習
問題 6.1.
- 定理 1.1の証明で、hに定数−h(z0)+w0を加えた。この調整を行わずにψ=fe−hとおいた場合、ψについて何が言えて、何が言えないかを述べる。
- 系 1.3 (2)の証明で、q=h~/hが定数であることを導く前に、hが零点をもたないことを用いた。この段を飛ばすと、どの主張を適用することができなくなるかを述べる。
- 命題 2.3 (3)の証明は、f−1の連続性を先に示してから差商の極限を計算した。連続性を示さずに差商の極限を計算しようとすると、どの段で議論が止まるかを特定する。
- 命題 3.2で、∣h(z)+w0∣≥rを示した。この不等式がh(Ω)∩(−h(Ω))=∅から従う筋道を、−ζがD(w0,r)に属するという条件に即して述べる。
- 命題 3.2の証明で、Ω=Cという仮定を用いた箇所を特定する。この仮定がない場合に、証明のどの段が成り立たなくなるかを述べる。
- 命題 4.1で、gが定数でないことをM>0と∣g′(z0)∣=Mから導いた。§E5.17 系 3.4の結論から「定数である」という場合を落とすために、この段が必要である理由を述べる。
- 命題 4.1で、∣g∣≤1から∣g∣<1を導くために§E5.9 定理 3.1を用いた。∣g∣≤1だけでは定義 3.1 条件 (c)を満たさない理由を述べる。
- 定理 5.1の証明で、Ψが単射でないことを示すためにu0=0を要求した。u0=0ととった場合に、この段の議論が成り立たない理由を述べる。
- 定理 5.1の証明で、系 1.3を直接適用した箇所を特定する。同定理の証明がΩの単連結性に依存しているのは、この箇所と命題 3.2を引用する箇所の二つであることを、各段の仮定に照らして確かめる。
- 定理 5.1の証明の最後で、M>0を用いて矛盾を導いた。M=0であった場合に、M≤∣Ψ′(0)∣Mから矛盾を導くことができない理由を述べる。