§E8.25作図可能数

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複素平面を Euclid 平面と同一視し、00と11に対応する二点から作図を始める。定規は既に得た二点を通る直線を引くために用い、コンパスは既に得た二点間の距離を半径とする円を引くために用いる。

定義 1. 複素数z=x+iyz=x+iyが作図可能 (constructible) であるとは、有限回の定規とコンパスの操作によって点(x,y)(x,y)を得ることができることをいう。作図可能な複素数全体をC\mathcal Cと書く。

1 幾何操作と平方根

既知の点の座標が属する実部分体をF⊂RF\subset\mathbb Rとする。二点を通る直線の方程式と、中心および半径を既知の点から定めた円の方程式は、FFの元を係数にもつ。二直線の交点は一次方程式によって定まり、直線と円の交点は一方の座標を消去すると二次方程式によって定まる。二円の交点については、二つの円の方程式の差が一次方程式になるため、同じ結論を得る。

補題 1.1.C\mathcal CはC\mathbb Cの部分体であり、z∈Cz\in\mathcal Cとw2=zw^2=zを満たすw∈Cw\in\mathbb Cについてw∈Cw\in\mathcal Cである。さらに、C\mathcal CはQ\mathbb Qを含み、平方根について閉じるC\mathbb Cの部分体のうち最小である。

証明. 平行線と相似三角形によって、既知の有向線分を表す複素数の和、差、積および零でない数の逆数を作図することができる。実軸に垂直な直線と単位円の交点からiiも作図することができる。したがってC\mathcal CはQ(i)\mathbb Q(i)を含む部分体である。

z=a+bi∈Cz=a+bi\in\mathcal Cとする。z=0z=0なら平方根は00である。z≠0z\ne0とし、

r=a2+b2,u=r+a2,v=r−a2r=\sqrt{a^2+b^2},\qquad u=\sqrt{\frac{r+a}{2}},\qquad v=\sqrt{\frac{r-a}{2}}

とおく。非負実数ssの平方根は、直径の両端が00とs+1s+1である半円にssを通る垂線を引き、相似三角形から長さs\sqrt{s}を得る標準的な平均比例の作図によって得られる。したがってr,u,vr,u,vは作図可能である。b≥0b\ge0のときw=u+ivw=u+iv、b<0b<0のときw=u−ivw=u-ivとすれば、

u2−v2=a,2uv=∣b∣u^2-v^2=a,\qquad 2uv=|b|

であるからw2=zw^2=zとなる。ゆえにC\mathcal Cは平方根について閉じる。

逆に、定規とコンパスの一回の操作で新たに得る交点の座標は、先に述べた一次方程式または二次方程式の解である。二次方程式の解の公式により、新しい座標は既知の座標から四則演算と平方根だけで得られる。したがってQ\mathbb Qを含み平方根について閉じる任意の部分体は、すべての作図可能数を含む。▨

2 二次拡大の塔

証明の出発点は、作図の各段で新しい交点の実座標が一次方程式または二次方程式を満たすという座標計算である。中間目標として、有限回の作図から得た座標を次数11または22の体拡大の塔へ収める。逆向きの本質的な一手は、二次方程式の解を平方根で表示し、補題 1.1を各段へ適用することである。

定理 2.1.z∈Cz\in\mathbb Cについて、次の二条件は同値である。

  1. zzは作図可能である。
  2. C\mathbb Cの部分体の塔 Q=F0⊆F1⊆⋯⊆Fr\mathbb Q=F_0\subseteq F_1\subseteq\cdots\subseteq F_r が存在し、z∈Frz\in F_rかつ[Fj:Fj−1]∈{1,2}[F_j:F_{j-1}]\in\{1,2\}がすべてのjjについて成り立つ。

等しい体を塔から除けば、(2)の各段を二次拡大にすることができる。

証明.zzが作図可能であるとする。作図の各段で得た座標を順に添加する。直線同士の交点では体は変わらず、直線と円または二円の交点では、前段の体上の二次方程式の根を一つ添加すれば二つの座標を含む体が得られる。このようにしてz=x+iyz=x+iyの実座標x,yx,yを含む実部分体E⊂RE\subset\mathbb Rまで、各段の次数が11または22である塔を得る。最後にE(i)E(i)を添加する。この段の次数も11または22であり、z∈E(i)z\in E(i)である。

逆に(2)を仮定する。Fj=Fj−1F_j=F_{j-1}の段は何も添加しない。[Fj:Fj−1]=2[F_j:F_{j-1}]=2の段を取り、α∈Fj∖Fj−1\alpha\in F_j\setminus F_{j-1}とする。α\alphaの最小多項式をx2+bx+cx^2+bx+cと書けば、標数は00なので

α=−b+b2−4c2\alpha=\frac{-b+\sqrt{b^2-4c}}{2}

の一方の符号を選んだ元であり、Fj=Fj−1(α)F_j=F_{j-1}(\alpha)である。補題 1.1により、Fj−1F_{j-1}の全元が作図可能ならFjF_jの全元も作図可能である。F0=Q⊂CF_0=\mathbb Q\subset\mathcal Cから帰納するとz∈Cz\in\mathcal Cを得る。▨

系 2.2.zzがQ\mathbb Q上代数的な作図可能数なら、

[Q(z):Q][\mathbb Q(z):\mathbb Q]

は22の冪である。

証明.定理 2.1の塔を取る。塔の公式§E8.1 定理 2.1により[Fr:Q][F_r:\mathbb Q]は22の冪である。またQ⊆Q(z)⊆Fr\mathbb Q\subseteq\mathbb Q(z)\subseteq F_rへ塔の公式を適用すると、[Q(z):Q][\mathbb Q(z):\mathbb Q]は[Fr:Q][F_r:\mathbb Q]を割る。したがって前者も22の冪である。▨

次数が22の冪であることだけから作図可能性は従わない。十分性を得るためには、元を含む具体的な二次拡大の塔を構成する必要がある。次の記事では、円分体の Galois 群からその塔を構成する。

3 二つの古典的作図不能問題

系 3.1. 次の二つの作図は定規とコンパスでは実行することができない。

  1. 与えられた立方体の体積を二倍にする立方体の辺を作図すること。
  2. 任意に与えられた角を三等分する一つの一般作図法を与えること。

証明. 単位立方体を二倍にする立方体の辺の長さをccとするとc3=2c^3=2である。多項式x3−2x^3-2は素数22に関する Eisenstein の判定法§E6.28 命題 8.1によりQ\mathbb Q上既約である。したがって[Q(c):Q]=3[\mathbb Q(c):\mathbb Q]=3であり、系 2.2に反する。

一般の角を三等分する作図法が存在すると仮定する。その作図法を6060度の角へ適用すれば、2020度の角とu=2cos⁡20∘u=2\cos20^\circを作図することができる。三倍角の公式から

u3−3u−1=0u^3-3u-1=0

である。多項式x3−3x−1x^3-3x-1の有理根の候補は±1\pm1だけであり、いずれも根ではない。三次多項式が可約なら一次因子をもつため、この多項式はQ\mathbb Q上既約である。したがって[Q(u):Q]=3[\mathbb Q(u):\mathbb Q]=3となり、再び系 2.2に反する。6060度という一つの入力に対して失敗するため、任意の角に適用する一般作図法は存在しない。▨

角によっては三等分することができる。例えば9090度の三等分は正三角形の作図から得られる。上の結論は、すべての角に適用する同一の有限作図手順が存在しないという主張である。

4 演習

問題 4.1 (作図可能性の確認).

  1. 二円の方程式の差を取り、交点の一方の座標が高々二次方程式を満たすことを証明せよ。
  2. z=a+biz=a+biに対する平方根の表示で2uv=∣b∣2uv=|b|が成り立つことを証明せよ。
  3. 二次拡大の塔に属する元の最小多項式の次数が22の冪を割ることを、塔の公式から説明せよ。
  4. 任意の角を三等分する一般作図が不可能であるという主張が、個々のすべての角の三等分不可能性を意味しない理由を説明せよ。

5 扱った範囲と次の記事

本記事では、作図可能な複素数を二次拡大の塔の元として特徴づけ、立方体倍積と一般角三等分の不可能性を証明した。次の記事では、この特徴づけを円分体へ適用し、作図可能な正多角形を完全に分類する。

参考文献

  1. Emil Artin, Galois Theory, 2nd ed., Notre Dame Mathematical Lectures 2, Dover Publications, 1997, originally published 1944.
  2. Ian Stewart, Galois Theory, 5th ed., CRC Press, 2022.

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