1 原点で平坦な関数と山型関数
滑らかな山型関数を作る出発点は、原点でのすべての階数の導関数が0でありながら恒等的には0でない関数である。
補題 1.1.h:R→Rを
h(t)={e−1/t0(t>0)(t≤0)で定める。このときhはC∞級であり、すべての非負整数kに対してh(k)(0)=0である。またt>0ではh(t)>0である。
証明では、kに関する帰納法の命題として「t>0においてh(k)(t)=Pk(1/t)e−1/tを満たす多項式Pkが存在する」と「h(k)(0)が存在して0に等しい」の二つを同時に立てる。片側極限limt→0+h(k)(t)=0からはh(k)(0)=0が直ちには従わない。h(k)が0において微分可能であることを言うには、差商の極限を評価しなければならない。
証明. 最初に、任意の非負整数mに対して
u→+∞limume−u=0であることを確かめる。u>0に対して指数関数の級数展開の一項を取ればeu≥um+1/(m+1)!であるから0<ume−u≤(m+1)!/uであり、右辺はu→+∞で0に収束する。したがって、任意の多項式Pに対してlimu→+∞P(u)e−u=0である。
次に、kに関する帰納法で次の二つを同時に示す。
- (a) 多項式Pkが存在して、t>0ではh(k)(t)=Pk(1/t)e−1/t、t<0ではh(k)(t)=0が成り立つ。
- (b)h(k)(0)が存在してh(k)(0)=0である。
k=0のとき、P0=1と取れば (a) が成り立ち、h(0)=0であるから (b) が成り立つ。
kについて (a) と (b) が成り立つとする。t>0では、積と合成の微分法により
h(k+1)(t)=dtd(Pk(1/t)e−1/t)=(−t21Pk′(1/t)+t21Pk(1/t))e−1/tであるから、Pk+1(u)=u2(Pk(u)−Pk′(u))と置けばh(k+1)(t)=Pk+1(1/t)e−1/tである。t<0ではh(k)が恒等的に0であるからh(k+1)(t)=0である。これで (a) が成り立つ。
t=0における微分可能性を確かめる。(b) によりh(k)(0)=0であるから、差商は
th(k)(t)−h(k)(0)=th(k)(t)である。t<0では右辺は0であるから、左からの極限は0である。t>0ではu=1/tと置くと
th(k)(t)=uPk(u)e−uであり、t→0+はu→+∞に対応する。uPk(u)は多項式であるから、最初に示した極限により右からの極限も0である。よってh(k+1)(0)が存在して0に等しく、(b) が成り立つ。
これで、すべての非負整数kに対してh(k)がR全体で存在することが分かった。h(k)の連続性を確かめる。t=0での連続性は (a) の表示から明らかである。t=0では、左からの極限が0であり、右からの極限はlimu→+∞Pk(u)e−u=0であるから、h(k)(0)=0と一致する。よってhはC∞級である。t>0でh(t)=e−1/t>0であることは指数関数の正値性から従う。▨
補題 1.2.hを補題 1.1の関数とし、
H(t)=h(t)+h(1−t)h(t)と定める。このときHはR上のC∞級関数であり、0≤H≤1、t≤0でH(t)=0、t≥1でH(t)=1が成り立つ。
証明. 分母が正であることを示す。t≤0ならば1−t≥1>0であるからh(1−t)>0であり、t>0ならばh(t)>0である。いずれの場合もh(t)+h(1−t)>0である。hはC∞でありt↦h(1−t)もC∞であるから、商HはC∞である。h≥0であるから0≤H≤1である。t≤0ではh(t)=0であるからH(t)=0であり、t≥1ではh(1−t)=0かつh(t)>0であるからH(t)=1である。▨
補題 1.3.nを正の整数とし、0<a<bとする。
β(x)=H(b2−a2b2−∥x∥2),ρ(x)=h(1−∥x∥2)と定める。このときβとρはRn上のC∞級関数であり、次が成り立つ。
- 0≤β≤1、∥x∥≤aのときβ(x)=1、∥x∥≥bのときβ(x)=0。
- ρ≥0であり、{x∣ρ(x)>0}=B1(0)である。
証明.∥x∥2=∑i=1n(xi)2は多項式であるからC∞である。HとhはC∞であるから、合成βとρはC∞である。
(1)について、∥x∥≤aならばb2−∥x∥2≥b2−a2>0であるからHの引数は1以上でありβ(x)=1である。∥x∥≥bならば引数は0以下でありβ(x)=0である。値域はHの値域から従う。
(2)について、h(s)>0であることとs>0であることは同値であるから、ρ(x)>0であることと1−∥x∥2>0、すなわち∥x∥<1であることは同値である。▨
補題 1.4.Mをn次元C∞多様体、p∈M、Vをpを含むMの開集合とする。このときMの極大アトラスに属するチャート(U^,φ^)であって
p∈U^⊆V,φ^(p)=0を満たすものが存在する。
証明.pを含むチャート(U^0,φ^0)を取り、U^=U^0∩Vと置く。U^はpを含む開集合であり、φ^0∣U^はU^からRnの開集合φ^0(U^)への同相写像であるから、(U^,φ^0∣U^)はチャートである。極大アトラスの任意のチャートとの座標変換は、もとの座標変換の開集合への制限であるからC∞である。よって§E17.1 定義 2.2の極大性により、このチャートはMの極大アトラスに属する。
平行移動τ(x)=x−φ^0(p)はRnのC∞微分同相である。φ^=τ∘φ^0∣U^と置くと、φ^はU^から開集合τ(φ^0(U^))への同相写像であり、極大アトラスの任意のチャートとの座標変換は上の座標変換にτまたはτ−1を合成したものである。§E17.1 補題 1.1により合成はC∞であるから、(U^,φ^)も極大アトラスに属する。φ^(p)=τ(φ^0(p))=0である。▨
命題 1.5.Mをn次元C∞多様体、p∈M、Vをpを含むMの開集合とする。このときC∞関数χ:M→[0,1]であって、pを含むある開集合W⊆Vの上でχ≡1であり、suppχがコンパクトかつsuppχ⊆Vを満たすものが存在する。
証明.補題 1.4により、p∈U^⊆Vかつφ^(p)=0を満たすチャート(U^,φ^)を取る。
φ^(U^)は0を含むRnの開集合であるから、Bb(0)⊆φ^(U^)を満たすb>0が存在する。a=b/2と置き、補題 1.3のβを取る。K=φ^−1(Bb(0))と置くと、Kはコンパクト集合の連続写像φ^−1による像であるからコンパクトであり、Mは Hausdorff であるからKは閉集合である。
χ:M→Rを、U^の上ではχ=β∘φ^、M∖Kの上ではχ=0と定める。この二つの定義は矛盾しない。実際、q∈U^∖Kならば∥φ^(q)∥>bであるからβ(φ^(q))=0である。K⊆U^であるからU^∪(M∖K)=Mであり、χはM全体で定まる。U^とM∖Kはともに開集合であり、χはそれぞれの上でC∞であるから、§E17.1 命題 4.2によりχはM上のC∞関数である。
W=φ^−1(Ba(0))と置くとWはpを含む開集合であり、W⊆U^⊆Vであり、Wの上でχ=1である。また{χ=0}⊆φ^−1(Bb(0))⊆KでありKは閉集合であるからsuppχ⊆Kである。コンパクト集合の閉部分集合はコンパクトであるからsuppχはコンパクトであり、K⊆U^⊆Vであるからsuppχ⊆Vである。値域が[0,1]に含まれることはβの値域から従う。▨
2 正則座標球とコンパクト集合の増大列
証明.p∈Mを取る。補題 1.4をV=Mとして適用し、φ^(p)=0を満たすチャート(U^,φ^)を取る。Br(0)⊆φ^(U^)を満たすr>0を取り、N=φ^−1(Br(0))と置く。Nはコンパクト集合の連続写像による像であるからコンパクトであり、p∈φ^−1(Br(0))⊆Nでφ^−1(Br(0))は開集合である。よってNはpのコンパクトな近傍である。▨
定義 2.2.Mをn次元C∞多様体とする。Mの開集合Bが正則座標球 (regular coordinate ball) であるとは、Mの極大アトラスに属するチャート(B^,φ^)と実数r>0が存在して
Br(0)⊆φ^(B^),B=φ^−1(Br(0))が成り立つことをいう。組(B^,φ^,r)をBの外側のチャートと呼ぶ。
補題 2.3.Bを正則座標球、(B^,φ^,r)をその外側のチャートとする。このとき次が成り立つ。
- B⊆φ^−1(Br(0))⊆B^であり、Bはコンパクトである。
- (B,φ^∣B)はMの極大アトラスに属するチャートである。
- 任意のf∈C∞(M)、任意の多重指数γに対して、∂γ(f∘(φ^∣B)−1)はBr(0)上で有界である。
- Mの正則座標球の全体はMの位相の基底をなす。とくに、Mの任意の開集合Oと任意のp∈Oに対して、p∈B⊆B⊆Oを満たす正則座標球Bが存在する。
証明.(1)について、φ^−1(Br(0))はコンパクトであり、Mは Hausdorff であるから閉集合である。これがBを含むのでBを含む。閉集合の部分集合としてコンパクト集合に含まれるのでBはコンパクトである。
(2)を示す。B⊆B^は開集合であり、φ^∣BはBから開集合Br(0)への同相写像であるからチャートである。極大アトラスの任意のチャートとの座標変換は、(B^,φ^)に関する座標変換の開集合への制限であるからC∞である。よって§E17.1 定義 2.2の極大性により(B,φ^∣B)は極大アトラスに属する。
(3)について、f∘φ^−1はφ^(B^)上のC∞関数であり、∂γ(f∘φ^−1)は連続である。Br(0)はこの開集合に含まれるコンパクト集合であるから、連続関数はその上で有界である。Br(0)⊆Br(0)であるから主張が従う。
(4)について、Oを開集合、p∈Oとする。補題 1.4をV=Oとして適用し、φ^(p)=0、p∈B^⊆Oを満たすチャート(B^,φ^)を取る。Br(0)⊆φ^(B^)を満たすr>0を取りB=φ^−1(Br(0))と置くと、Bは正則座標球であり、(1)によりB⊆B^⊆Oである。▨
命題 2.4.Xを第二可算かつ局所コンパクトな Hausdorff 空間とする。このとき、Xのコンパクト部分集合の列K1⊆K2⊆⋯であって、すべての正の整数jに対して
Kj⊆int(Kj+1),j≥1⋃Kj=Xを満たすものが存在する。ここでintはXにおける内部を表す。この条件を満たす列をXのコンパクト枯渇列という。
C∞多様体は補題 2.1と定義により、この仮定をすべて満たす。ただし逆は成り立たないので、この命題の仮定を「多様体である」と読み替えてはならない。証明では、単調増大するコンパクト集合の列をまず取り、そこから内部への包含を満たすように取り直す。
証明.§E2.25 系 3.6によりXはσコンパクトである(この主張は可算選択公理を仮定する。本記事はこの仮定のもとで議論する)。§E2.25 命題 1.3により、コンパクト部分集合の列L1⊆L2⊆⋯で⋃jLj=Xを満たすものが存在する。この列はLj⊆int(Lj+1)を満たすとは限らないので、次のように取り直す。
K1=L1と置く。KjがコンパクトであるとしてKj+1を作る。各x∈Kjに対して§E2.24 定理 1.6をO=Xとして適用すると、開集合Vxでx∈Vx⊆VxかつVxがコンパクトであるものが存在する。{Vx}x∈KjはKjの開被覆であるから、§E2.19 定義 2.1により有限個の点x1,…,xq∈Kjが存在してKj⊆Vx1∪⋯∪Vxqとなる。そこで
Kj+1=Vx1∪⋯∪Vxq∪Lj+1と定める。§E2.19 補題 2.8によりKj+1はコンパクトである。Vx1∪⋯∪VxqはKj+1に含まれる開集合であるから
Kj⊆Vx1∪⋯∪Vxq⊆int(Kj+1)が成り立ち、とくにKj⊆Kj+1である。
最後に⋃jKj=Xを示す。K1=L1であり、j≥1に対してLj+1⊆Kj+1であるから、すべての正の整数jに対してLj⊆Kjである。よってX=⋃jLj⊆⋃jKj⊆Xである。▨
3 局所有限な族
「位相空間論 I」は局所有限性を扱わないので、本記事で定義する。
定義 3.1.Xを位相空間、{Sι}ι∈JをXの部分集合の族とする。この族が局所有限 (locally finite family) であるとは、各点x∈Xに対して、xを含む開集合Oであって
{ι∈J∣O∩Sι=∅}が有限集合であるものが存在することをいう。
補題 3.2.Xを位相空間、{Sι}ι∈Jを局所有限な部分集合の族とする。このとき
ι∈J⋃Sι=ι∈J⋃Sιが成り立つ。とくに、局所有限な閉集合の族の合併は閉集合である。
証明. 各ιについてSι⊆⋃κSκであるからSι⊆⋃κSκであり、右辺の包含が従う。
逆を示す。x∈/⋃ιSιとする。局所有限性により、xを含む開集合OであってO∩Sι=∅となるιが有限個ι1,…,ιkしかないものが存在する。
O′=O∖(Sι1∪⋯∪Sιk)と置くと、有限個の閉集合の合併は閉集合であるからO′は開集合であり、仮定によりx∈O′である。ι∈/{ι1,…,ιk}ならばO∩Sι=∅であるからO′∩Sι=∅であり、ι=ιmならばO′∩Sιm⊆O′∩Sιm=∅である。よってO′は⋃ιSιと交わらず、x∈/⋃ιSιである。▨
補題 3.3.MをC∞多様体、{fι}ι∈JをM上のC∞関数の族であって、族{suppfι}ι∈Jが局所有限であるものとする。このとき各点でfι(x)=0となるιは有限個であり、
f(x)=ι∈J∑fι(x)は有限和として定まり、fはM上のC∞関数である。
証明.x∈Mを取り、局所有限性により、xを含む開集合OでO∩suppfι=∅となるιが有限個ι1,…,ιkしかないものを取る。ι∈/{ι1,…,ιk}ならばfιはOの上で恒等的に0である。したがってOの上で
f=fι1+⋯+fιkであり、右辺は有限個のC∞関数の和であるからO上でC∞である。xは任意であるから、§E17.1 命題 4.2によりfはM上のC∞関数である。▨
4 滑らかな1の分割
定義 4.1.MをC∞多様体、{Uα}α∈AをMの開被覆とする。C∞関数の族{ψα}α∈A、ψα:M→[0,1]が{Uα}α∈Aに従属する滑らかな1の分割 (subordinate smooth partition of unity) であるとは、次の三つが成り立つことをいう。
- すべてのα∈Aに対してsuppψα⊆Uαである。
- 族{suppψα}α∈Aは局所有限である。
- すべてのp∈Mに対して∑α∈Aψα(p)=1である。条件 (b)により左辺は各点で有限和である。
定理 4.2.MをC∞多様体、{Uα}α∈AをMの任意の開被覆とする。このとき{Uα}α∈Aに従属する滑らかな1の分割が存在する。
証明は次の順に進む。第一に、命題 2.4のコンパクト集合の増大列から、コンパクトな殻Djと、それを含む開集合Wjであって族{Wj}が局所有限であるものを作る。第二に、各Djをコンパクト性によって有限個の山型関数で覆い、それらを全部集めて可算な族{χι}を得る。台がそれぞれ一つのWjに含まれるので、この族の台は局所有限である。第三に、和σ=∑ιχιが各点で1以上であることを確かめてχι/σを取り、最後に添字をAへ集約する。
証明.命題 2.4により、コンパクト集合の列K1⊆K2⊆⋯でKj⊆int(Kj+1)かつ⋃jKj=Mを満たすものを取る。K0=K−1=∅と約束する。正の整数jに対して
Dj=Kj∖int(Kj−1),Wj=int(Kj+1)∖Kj−2と置く。Djはコンパクト集合Kjの閉部分集合であるからコンパクトであり、Wjは開集合である。
まずDj⊆Wjを示す。x∈Djならばx∈Kj⊆int(Kj+1)であり、Kj−2⊆int(Kj−1)かつx∈/int(Kj−1)であるからx∈/Kj−2である。
次に⋃jDj=Mを示す。x∈Mに対してx∈Kjを満たす最小の正の整数jを取る。j=1ならばint(K0)=∅であるからx∈D1である。j≥2ならば最小性によりx∈/Kj−1⊇int(Kj−1)であるからx∈Djである。
さらに{Wj}j≥1が局所有限であることを示す。x∈Mに対してx∈KNを満たす正の整数Nを取ると、KN⊆int(KN+1)であるからint(KN+1)はxを含む開集合である。j≥N+3ならばKN+1⊆Kj−2でありWj∩Kj−2=∅であるからWj∩int(KN+1)=∅である。よってint(KN+1)と交わるWjはj≤N+2を満たすものに限られ、有限個である。
各jについて次の操作を行う。x∈Djを取る。{Uα}はMの被覆であるからx∈Uαを満たすα∈Aが存在する。一つ選んでα(x)と書く。Uα(x)∩Wjはxを含む開集合であるから、命題 1.5によりC∞関数χ(x):M→[0,1]で、xを含むある開集合Oxの上でχ(x)≡1であり、suppχ(x)がコンパクトかつsuppχ(x)⊆Uα(x)∩Wjを満たすものが存在する。{Ox}x∈DjはDjの開被覆であるから、§E2.19 定義 2.1により有限個の点xj,1,…,xj,mj∈Djが存在してDj⊆Oxj,1∪⋯∪Oxj,mjとなる。
添字集合をJ={(j,l)∣j≥1, 1≤l≤mj}とする。Jは可算である。ι=(j,l)∈Jに対してχι=χ(xj,l)、α(ι)=α(xj,l)、j(ι)=jと書く。構成により
suppχι⊆Uα(ι)∩Wj(ι)である。
族{suppχι}ι∈Jは局所有限である。実際、x∈Mに対して上で取った開集合int(KN+1)は有限個のWjとしか交わらず、各jに対してj(ι)=jを満たすιはmj個しかないからである。
補題 3.3によりσ=∑ι∈JχιはM上のC∞関数である。x∈Mを取ると、上で示したようにあるjでx∈Djであり、被覆の取り方によりあるlでx∈Oxj,lであるからχ(j,l)(x)=1である。他の項は非負であるからσ(x)≥1である。とくにσは零点を持たない。
ψ~ι=χι/σと置く。ψ~ιはC∞であり0≤ψ~ι≤1、suppψ~ι=suppχι、∑ι∈Jψ~ι=1である。
最後に添字を集約する。α∈Aに対してJα={ι∈J∣α(ι)=α}と置き、
ψα=ι∈Jα∑ψ~ιと定める(Jα=∅のときはψα=0と読む)。{suppψ~ι}ι∈Jαは局所有限な族の部分族であるから局所有限であり、補題 3.3によりψαはC∞である。値域は[0,1]に含まれる。
台について、{ψα=0}⊆⋃ι∈Jα{ψ~ι=0}であるから、補題 3.2により
suppψα⊆ι∈Jα⋃{ψ~ι=0}=ι∈Jα⋃suppψ~ι⊆Uαである。ここで最後の包含はsuppχι⊆Uα(ι)=Uαによる。
族{suppψα}α∈Aの局所有限性を示す。x∈Mに対して、{suppψ~ι}ι∈Jの局所有限性から得られる開集合O∋xを取る。O∩suppψα=∅ならば、上の等式によりO∩suppψ~ι=∅を満たすι∈Jαが存在する。そのようなιは有限個しかないので、対応するα=α(ι)も有限個しかない。
和について、x∈Mの近くでは有限個のψ~ιだけが0でないので、
α∈A∑ψα(x)=α∈A∑ι∈Jα∑ψ~ι(x)=ι∈J∑ψ~ι(x)=1が成り立つ。ここで二番目の等号は、Jが{Jα}α∈Aに分割されることと、xにおいて0でない項が有限個であることによる。よって{ψα}α∈Aは{Uα}α∈Aに従属する滑らかな1の分割である。▨
5 応用1: 閉集合の近傍からの拡張
定理 5.1.MをC∞多様体、A⊆Mを閉集合、OをAを含む開集合、f∈C∞(O)とする。このときf~∈C∞(M)であって、Aを含むある開集合の上でf~=fとなるものが存在する。さらにsuppf~⊆Oと取ることができる。
証明.{O, M∖A}はMの開被覆である。定理 4.2により、この被覆に従属する滑らかな1の分割{ψ1,ψ2}を取る。ここでsuppψ1⊆O、suppψ2⊆M∖A、ψ1+ψ2=1である。
f~を、Oの上ではf~=ψ1f、M∖suppψ1の上ではf~=0と定める。suppψ1⊆Oであるから二つの開集合の合併はMであり、重なりO∖suppψ1の上ではψ1=0であるから二つの定義は一致する。それぞれの開集合の上でf~はC∞であるから、f~∈C∞(M)である。{f~=0}⊆suppψ1でありsuppψ1は閉集合であるからsuppf~⊆suppψ1⊆Oである。
W=M∖suppψ2と置く。suppψ2は閉集合であるからWは開集合であり、suppψ2⊆M∖AであるからA⊆Wである。Wの上ではψ2=0したがってψ1=1であり、W⊆M∖suppψ2かつA⊆Oであることから、W∩Oの上でf~=fである。さらにW⊆Oである。実際、q∈Wならばψ1(q)=1=0であるからq∈suppψ1⊆Oである。よってWはAを含む開集合であり、その上でf~=fが成り立つ。▨
6 応用2: 閉集合の零点集合表示
この応用は、可算無限個の関数の和としてfを作る。和が局所有限にならないので、級数の各階の微分が一様収束することを確かめる必要がある。そのための道具を二つ先に置く。
補題 6.1.Ω⊆Rnを開集合、u:Ω→Rとする。すべての多重指数γに対して反復偏導関数∂γuがΩ上で存在して連続であるならば、uはC∞級である。
証明. 正の整数kに関する帰納法で、uがCk級であることを示す。
k=1の場合。仮定により一階偏導関数∂1u,…,∂nuはΩ上で存在して連続である。§E4.2 定理 2.1によりuはΩの各点で全微分可能であり、Duは偏導関数を成分に持つ Jacobi 行列である。成分が連続であるからDuは作用素ノルムに関して連続であり(有限次元では作用素ノルムは成分の連続関数で上から抑えられる)、§E4.2 定義 1.7によりuはC1級である。
uがCk級であることが、仮定を満たす任意の関数について示されたとする。uを仮定を満たす関数とすると、各∂iuもまた仮定を満たすので、帰納法の仮定により∂iuはCk級である。Duは成分が∂1u,…,∂nuである写像Ω→L(Rn;R)であるからCk級である。§E4.4 定義 1.4の定義により、Dj+1uはDj(Du)を標準的な同一視で読み替えたものであるから、j≤kの範囲でDj(Du)が存在して連続であることはDj+1uが存在して連続であることと同値である。よってuはCk+1級である。
すべての正の整数kについてuがCk級であるから、uはC∞級である。▨
証明. 多重指数γに対してwγ=∑j≥1∂γujと置く。各項は連続であり級数は一様収束するのでwγは連続である。w0=uである。
∂iwγ=wγ+eiを示す。ここでeiは第i成分だけが1の多重指数である。x∈Ωを取り、Br(x)⊆Ωを満たすr>0を取る。∣s∣<rに対して、線分{x+τei∣τ は 0 と s の間}はΩに含まれる。一変数の微積分学の基本定理により、各jについて
∂γuj(x+sei)−∂γuj(x)=∫0s∂γ+eiuj(x+τei)dτが成り立つ。右辺の級数∑j≥1∂γ+eiujは一様収束するので、部分和と極限の差の絶対値の上限をεNと書くと、N項までの部分和に対する積分とwγ+eiの積分の差は∣s∣εN以下である。εN→0であるから、jについて和を取ると
wγ(x+sei)−wγ(x)=∫0swγ+ei(x+τei)dτを得る。wγ+eiは連続であるから、微積分学の基本定理により右辺はsについて微分可能で、s=0における微分係数はwγ+ei(x)である。よって∂iwγ(x)=wγ+ei(x)である。
この等式を繰り返し用いると、u=w0のすべての反復偏導関数が存在して∂γu=wγとなり、いずれも連続である。補題 6.1によりuはC∞級である。▨
定理 6.3.MをC∞多様体、A⊆Mを閉集合とする。このときC∞関数f:M→[0,∞)であってf−1(0)=Aとなるものが存在する。
証明では、M∖Aを可算個の正則座標球で覆い、各球の上でだけ正になる滑らかな関数を作って、係数を十分小さく取って足し合わせる。係数は、あらかじめ固定した可算個の正則座標球の上での有限個の偏導関数の上限に対して決める。台がAの境界に集積するので、和は局所有限にならず、級数としての収束を確かめる必要がある。
証明.A=Mのときはf=0と取ればよいので、以下A=Mとする。
第一段。補題 2.3 (4)により、Mの正則座標球の全体は基底をなす。Mは第二可算であるから§E2.21 命題 1.6により Lindelöf であり、正則座標球によるMの被覆から可算な部分被覆を取ることができる。それを{Ok}k≥1とし、Okの外側のチャートを(O^k,ϕ^k,rk)、ϕk=ϕ^k∣Okと書く。
第二段。U=M∖Aは空でない開集合であるから、§E17.1 命題 7.1によりC∞多様体であり、とくに第二可算である。補題 2.3 (4)をMの開集合Uに対して用いると、B⊆Uを満たす正則座標球Bの全体はUを覆う。ふたたび Lindelöf 性により可算な部分被覆{Bj}j≥1を取る。Bjの外側のチャートを(B^j,ψ^j,sj)と書く。
各jについて、補題 1.3のρを用いて
gj(q)={ρ(ψ^j(q)/sj)0(q∈B^j)(q∈M∖ψ^j−1(Bsj(0)))と定める。ψ^j−1(Bsj(0))はコンパクトでありMは Hausdorff であるから閉集合であり、二つの開集合の合併はMである。重なりの上では∥ψ^j(q)∥>sjであるからρ(ψ^j(q)/sj)=0であり、二つの定義は一致する。よってgj∈C∞(M)である。補題 1.3 (2)により
{q∈M∣gj(q)>0}=ψ^j−1(Bsj(0))=Bjであり、gj≥0である。
第三段。各jに対して
mj=max{ ϕk(Ok)sup∂γ(gj∘ϕk−1) 1≤k≤j, ∣γ∣≤j }と置く。これは有限個の値の最大値であり、補題 2.3 (3)により各値は有限である。cj>0をcj(mj+1)≤2−jとなるように取る。
第四段。f=∑j≥1cjgjがM上のC∞関数であることを示す。kを固定する。ϕk(Ok)の上でuj=cj(gj∘ϕk−1)と置く。多重指数γを固定し、N=max(k,∣γ∣)と置く。j≥Nならばk≤jかつ∣γ∣≤jであるから、mjの定義とcjの取り方により
ϕk(Ok)sup∂γuj≤cjmj≤2−jである。したがって級数∑j≥1∂γujは、j≥Nの部分が等比級数で一様に抑えられ、残りは有限個であるから、ϕk(Ok)上で一様収束する。γは任意であるから補題 6.2により∑j≥1ujはϕk(Ok)上でC∞である。(Ok,ϕk)はMのチャートであるから、fはOkの上でC∞である。{Ok}はMを覆うので、§E17.1 命題 4.2によりf∈C∞(M)である。
第五段。cj>0かつgj≥0であるからf≥0である。q∈Aならば、すべてのjについてq∈/Bj⊆Uであるからgj(q)=0でありf(q)=0である。q∈Uならば、{Bj}がUを覆うのであるjでq∈Bjとなりgj(q)>0であるからf(q)≥cjgj(q)>0である。よってf−1(0)=Aである。▨
7 応用3: コンパクトな多様体をユークリッド空間へ写す
コンパクトな多様体は有限個のチャートで覆うことができる。その有限開被覆に従属する1の分割を取り、各チャートの座標に分割の関数を掛けて並べると、多様体全体で定義されたRN値の写像が得られる。次の主張は、その写像が単射であり、各チャート表示の Jacobi 行列の階数が至るところ最大であり、像への同相写像になることを述べる。
ここで「階数」を各チャート表示の Jacobi 行列の階数として述べるのは、接空間のあいだの線形写像dFpをまだ持っていないためである。この条件が座標のとり方に依らないことと、その条件を持つ写像を「はめ込み」、さらに像への同相を与えるものを「埋め込み」と呼ぶことは、「部分多様体・はめ込み・埋め込み」が扱う。本記事はそれらの語を用いない。
定理 7.1.Mをコンパクトなn次元C∞多様体とする。このとき正の整数NとC∞写像F:M→RNであって、次をすべて満たすものが存在する。
- Fは単射である。
- Mの極大アトラスに属する任意のチャート(U,φ)に対して、F∘φ−1:φ(U)→RNの Jacobi 行列の階数はφ(U)の各点でnに等しい。
- FはMから像F(M)(RNからの部分空間位相を与える)への同相写像である。
証明. 各p∈Mに対してpを含むチャート(Up,φp)を取る。{Up}p∈MはMの開被覆であるから、コンパクト性により有限個の点p1,…,pmでM=Up1∪⋯∪Upmとなる。Ui=Upi、φi=φpiと書く。定理 4.2をこの有限開被覆へ適用し、従属する滑らかな1の分割{ψ1,…,ψm}を取る。すなわちψi:M→[0,1]はC∞であり、suppψi⊆Uiかつ∑i=1mψi=1である。
各iに対してRnに値を持つ写像Gi:M→Rnを、Uiの上ではGi=ψiφi、M∖suppψiの上ではGi=0と定める。suppψiは閉集合でありUiに含まれるから二つの開集合の合併はMであり、重なりの上ではψi=0であるから定義は一致する。よってGiはC∞である。
N=mn+mと置き、
F=(G1,…,Gm,ψ1,…,ψm):M⟶RNと定める。成分がすべてC∞であるからFはC∞である。
(1)を示す。F(q)=F(q′)とする。∑i=1mψi(q)=1であるからψi(q)>0を満たすiが存在する。Fの最後のm成分の一致からψi(q′)=ψi(q)>0であり、とくにq,q′∈suppψi⊆Uiである。Giに対応する成分の一致からψi(q)φi(q)=ψi(q′)φi(q′)であり、ψi(q)=ψi(q′)=0で割るとφi(q)=φi(q′)を得る。φiは単射であるからq=q′である。
(2)を示す。まず一つのチャートについて示す。q∈Mを取り、ψi(q)>0を満たすiを選び、V=Ui∩{ψi>0}と置く。Vはqを含む開集合であり、(V,φi∣V)はチャートである。x∈φi(V)に対してc(x)=ψi(φi−1(x))>0と書くと、Fの第i組の成分と最後の第i成分をまとめた写像の座標表示は
x⟼(c(x)x, c(x))∈Rn×Rである。その Jacobi 行列をv∈Rnに施すと、上のn行からはc(x)v+(Dc(x)v)x、最後の1行からはDc(x)vが得られる。両方が0であるとすると、後者からDc(x)v=0であり、これを前者へ代入してc(x)v=0を得る。c(x)>0であるからv=0である。よってこれらのn+1行だけで階数はnであり、F∘(φi∣V)−1の Jacobi 行列の階数はnである(N×n行列の階数はnを超えない)。
次に、任意のチャート(U,φ)とx∈φ(U)を取る。q=φ−1(x)とし、上で取ったVとiを用いる。U∩Vの上で
F∘φ−1=(F∘(φi∣V)−1)∘(φi∘φ−1)が成り立つ。§E4.3 定理 1.1により、xにおける Jacobi 行列は右辺の二つの Jacobi 行列の積である。φi∘φ−1はC∞微分同相であり、その逆写像との合成に連鎖律を適用すると Jacobi 行列は可逆である。可逆行列を掛けても階数は変わらないので、F∘φ−1のxにおける Jacobi 行列の階数はnである。
(3)を示す。Fは連続かつ単射であるから、MからF(M)への連続な全単射である。C⊆Mを閉集合とすると、MはコンパクトであるからCはコンパクトであり、F(C)はコンパクトである。RNは Hausdorff であるからコンパクト集合は閉集合であり、F(C)はRNの閉集合、したがってF(M)の閉集合である。よってF:M→F(M)は閉写像であり、連続な全単射かつ閉写像であるから逆写像も連続である。すなわちFは同相写像である。▨
8 演習
問題 8.1 (1の分割の構成の確認). 次の各問に答えよ。
- 補題 1.1の帰納法の段で、命題 (a) と (b) を同時に立てる必要がある理由を述べよ。limt→0+h(k)(t)=0だけからはh(k)(0)=0が従わないことを、h(k)の定義に立ち返って説明せよ。さらにP1、P2、P3を具体的に求めよ。
- 補題 1.2のHについて、分母が正であることの証明を再現せよ。またHが広義単調増加であることは本文では用いていないが、H′≥0が成り立つかどうかを、hの符号と商の微分法から判定せよ。
- 命題 2.4の証明で、§E2.25 命題 1.3が与える列Ljをそのまま結論の列として用いることができない理由を述べよ。X=Rにおいて、Lj⊆Lj+1と⋃jLj=Rを満たすがLj⊆int(Lj+1)を満たさないコンパクト集合の列を一つ挙げよ。
- 定理 4.2の証明で定めたWj=int(Kj+1)∖Kj−2について、添字の差を2ではなく1としたWj′=int(Kj+1)∖Kj−1を用いると証明のどこが成り立たなくなるかを述べよ。
- 補題 3.2の証明を再現せよ。さらに、局所有限でない族に対してこの等式が成り立たない例を、X=RとSj={1/j}(jは正の整数)によって示せ。
- 定理 5.1の証明で、W=M∖suppψ2がOに含まれることを示した議論を再現せよ。ψ1+ψ2=1をどこで用いたかを明示せよ。
- 定理 6.3の証明の第三段で、係数cjを定めるためにk≤jかつ∣γ∣≤jという制限を置いた理由を述べよ。制限を外して「すべてのkとすべてのγ」とすると何が成り立たなくなるかを説明せよ。
- 定理 7.1の写像Fから最後のm個の成分ψ1,…,ψmを取り除くと、単射性の証明のどこが成り立たなくなるかを述べよ。とくに、φi(q)=0を満たす点qについてGi(q)の値が何になるかを求め、その値だけからはqをsuppψiの外の点と区別することができないことを確かめよ。
解答 (演習の解答).
(1)h(k+1)(0)は差商(h(k)(t)−h(k)(0))/tのt→0における極限として定義される。この差商を書くにはh(k)(0)の値が必要であり、それを与えるのが命題 (b) である。また、h(k)が0で連続であること(すなわちlimt→0+h(k)(t)=h(k)(0))は、h(k)が0で微分可能であることを含意しない。差商の極限を別に評価する必要がある。漸化式Pk+1(u)=u2(Pk(u)−Pk′(u))とP0=1からP1(u)=u2、P2(u)=u2(u2−2u)=u4−2u3、P3(u)=u2((u4−2u3)−(4u3−6u2))=u6−6u5+6u4を得る。(2)t≤0のときは1−t≥1であるからh(1−t)=e−1/(1−t)>0であり、t>0のときはh(t)=e−1/t>0である。いずれの場合も和は正である。商の微分法により
H′=(h(t)+h(1−t))2h′(t)(h(t)+h(1−t))−h(t)(h′(t)−h′(1−t))=(h(t)+h(1−t))2h′(t)h(1−t)+h(t)h′(1−t)である。h≥0であり、h′(t)=t−2e−1/t≥0(t>0)かつh′(t)=0(t≤0)であるから分子は非負である。よってH′≥0でありHは広義単調増加である。(3)§E2.25 命題 1.3が与えるのはLj⊆Lj+1と⋃jLj=Xだけであり、内部への包含Lj⊆int(Lj+1)は含まれない。1の分割の構成では、殻Djを含む開集合Wjを作るために内部への包含を用いる。例としてX=R、Lj=[−j,j]∪{j+1}と取る。各Ljは有界閉集合であるからコンパクトであり、j+1∈[−(j+1),j+1]⊆Lj+1であるからLj⊆Lj+1であり、⋃j[−j,j]=Rであるから⋃jLj=Rである。一方int(Lj+1)=(−(j+1),j+1)であり(孤立点j+2は内点を持たない)、j+1∈Ljはこの開区間に属さない。よってLj⊆int(Lj+1)は成り立たない。(4)Wj′を用いるとDj⊆Wj′が成り立たない。実際、x∈Djはx∈/int(Kj−1)を満たすがx∈Kj−1である可能性があり、そのときx∈/Wj′となる。Wj=int(Kj+1)∖Kj−2では、Kj−2⊆int(Kj−1)であることからx∈/int(Kj−1)がx∈/Kj−2を導く。(5)証明は本文のとおりである。X=R、Sj={1/j}とすると、各Sjは閉集合であるから⋃jSj={1/j∣j≥1}である。一方⋃jSj={0}∪{1/j∣j≥1}であり、両者は一致しない。この族は0の任意の近傍が無限個のSjと交わるので局所有限でない。(6)q∈Wとするとψ2(q)=0であり、ψ1+ψ2=1からψ1(q)=1である。したがってq∈{ψ1=0}⊆suppψ1⊆Oである。ψ1+ψ2=1は、ψ2が消える点でψ1が1になることを言うために用いた。(7)mjの定義に現れる上限は、kとγが無限に動くと無限個の値の最大値になり、有限とは限らない。k≤jかつ∣γ∣≤jに制限すると有限個の値の最大値になり、各値は補題 2.3 (3)により有限である。それでも、任意に固定したkとγに対しては、j≥max(k,∣γ∣)を満たすすべてのjでsupϕk(Ok)∣∂γ(cjgj∘ϕk−1)∣≤2−jが成り立つので、有限個の項を除いて等比級数で抑えることができ、一様収束を示すには十分である。(8)単射性の証明では、最後のm成分の一致によってψi(q′)=ψi(q)>0を導き、そこからq′∈suppψi⊆Uiを得たうえで、ψi(q)=ψi(q′)=0で割った。この段が失われると、φi(q′)が定義されているかどうかも、共通の正の因子で割ってよいかも分からない。実際、φi(q)=0を満たす点qではGi(q)=ψi(q)φi(q)=0であり、これはsuppψiの外にあるすべての点におけるGiの値と同じである。したがって第i組の成分だけでは、qをそれらの点と区別することができない。最後のm成分は、どのチャートの上で座標の比較を行ってよいかを指定し、比較に用いる正の因子を与える役割を持つ。▨
9 仮定と後続記事の境界
定理 4.2の証明は、Hausdorff 性、第二可算性および局所コンパクト性のすべてを用いる。第二可算性はコンパクト集合の増大列と可算な細分に、局所コンパクト性は増大列の各段で内部を確保することに、Hausdorff 性はコンパクト集合が閉集合であることに用いる。§E17.1 命題 3.2と§E17.1 命題 3.3は、これらの仮定が局所的な条件から従わないことを示している。
本記事はパラコンパクト性を用いない。局所有限な細分の存在を一般の位相空間の性質として述べる枠組みは「一般位相空間論」が扱うが、本単元より後にある。したがって局所有限性の定義を本記事で置き、必要な細分をコンパクト集合の増大列から直接構成した。
命題 1.5は、次の記事「接空間と微分写像」で導分の局所性を証明するために用いる。導分はC∞(M)の上の作用素として定義されるので、チャートの定義域の上でしか定義されていない座標関数へ直接適用することができない。山型関数を掛けてM全体の関数へ延長する操作が、その橋渡しを行う。
定理 7.1 (2)は、チャート表示の Jacobi 行列の階数として述べてある。この条件を接空間のあいだの線形写像dFpの単射性として述べ直すこと、およびそれを「はめ込み」と呼ぶことは「部分多様体・はめ込み・埋め込み」が扱う。本記事の結果を、その記事が前提として引用することはない。