1 交代形式の空間と外冪の同一視
以下、この節ではVをR上のn次元線形空間とし、V∨をその双対空間(§E3.5 定義 1.1)とする。kは非負整数とする。
係数体がRであるから、交代性は引数の置換に対する符号の規則と同値である。実際、§E3.10 命題 2.3により交代形式は隣接する引数の交換で−1倍になり、任意の置換σについてB(vσ(1),…,vσ(k))=sgn(σ)B(v1,…,vk)が成り立つ。逆に、この符号の規則を満たすk重線形形式は、二つの引数が等しいとき、その二つを入れ替える互換を取るとB=−Bとなるので2B=0となり、Rの上ではB=0である。以下ではこの両方の形を用いる。
補題 1.2.k≥1とする。写像
Λ:Altk(V)⟶(⋀kV)∨,Λ(B)(v1∧⋯∧vk)=B(v1,…,vk)は well-defined な線形同型である。
証明.B∈Altk(V)を取る。Bは交代k重線形写像であるから、§E3.14 定理 1.3により、⋀kV上の線形形式BであってB(v1∧⋯∧vk)=B(v1,…,vk)を満たすものがただ一つ存在する。Λ(B):=Bと定めると、Λは well-defined である。
Λの線形性を見る。B,B′∈Altk(V)、c∈Rに対し、Λ(B)+cΛ(B′)は線形形式であり、純外積v1∧⋯∧vkの上でB(v1,…,vk)+cB′(v1,…,vk)、すなわち(B+cB′)(v1,…,vk)の値を取る。純外積は⋀kVを生成するので、普遍性における一意性からΛ(B+cB′)=Λ(B)+cΛ(B′)である。
逆写像を作る。φ∈(⋀kV)∨に対しΞ(φ)(v1,…,vk):=φ(v1∧⋯∧vk)と定める。対応(v1,…,vk)↦v1∧⋯∧vkは各変数について線形であり、二つの引数が等しいとき値が0になる(§E3.14 定義 1.1)ので、Ξ(φ)は交代k重線形形式である。定義からΞ(Λ(B))=Bである。またΛ(Ξ(φ))とφは純外積の上で一致し、純外積が⋀kVを生成するのでΛ(Ξ(φ))=φである。したがってΛは全単射であり、線形同型である。▨
補題 1.3.k≥1とし、Vをn次元とする。線形写像
Φ:⋀k(V∨)⟶(⋀kV)∨であって、すべてのα1,…,αk∈V∨とv1,…,vk∈Vに対して
Φ(α1∧⋯∧αk)(v1∧⋯∧vk)=det(αi(vj))i,j=1kを満たすものがただ一つ存在し、それは線形同型である。ここでdetはk次正方行列の行列式、すなわちdet(aij)=∑σ∈Sksgn(σ)a1σ(1)⋯akσ(k)である。
証明. はじめに、行列式について次を確かめる。置換にわたる展開の各項sgn(σ)a1σ(1)⋯akσ(k)は、各行からちょうど一つ、各列からちょうど一つの成分を含む。したがって行列式は行についても列についても多重線形である。また二つの行が等しいとき、σとその二つの添字の互換との合成σ′を対応させると、σの項とσ′の項は同じ積を持ち符号が反対であるから相殺する。よって行列式は行について交代的であり、列についても同様である。
まずα1,…,αk∈V∨を固定し、
Dα(v1,…,vk)=det(αi(vj))i,j=1kと定める。vjは第j列だけに現れるので、上で確かめたことからDαは交代k重線形形式である。よって補題 1.2により、線形形式Λ(Dα)∈(⋀kV)∨が定まる。
次に、対応(α1,…,αk)↦Λ(Dα)を見る。行列式は行についても多重線形かつ交代的であり、αiは第i行だけに現れるので、この対応は(V∨)k上の交代k重線形写像である。よって§E3.14 定理 1.3をV∨に対して適用すると、線形写像ΦであってΦ(α1∧⋯∧αk)=Λ(Dα)を満たすものがただ一つ存在する。これが表示した等式である。
Φが同型であることを示す。(e1,…,en)をVの基底、(e1,…,en)をその双対基底とする(§E3.5 定理 1.2)。とくにdimV∨=nである。§E3.14 定理 2.1により、増加添字I=(i1<⋯<ik)に対するeI=ei1∧⋯∧eikの全体が⋀kVの基底であり、同じ定理をV∨に適用するとeI=ei1∧⋯∧eikの全体が⋀k(V∨)の基底である。どちらの次元も(kn)であり、§E3.5 定理 1.2により(⋀kV)∨の次元も(kn)である。
増加添字I=(i1<⋯<ik)とJ=(j1<⋯<jk)に対し
Φ(eI)(eJ)=det(eia(ejb))a,b=1k=det(δiajb)a,b=1kである。I=Jならばこの行列は単位行列であり、値は1である。I=Jならば、Iに属してJに属さない添字iaが存在するので第a行が零ベクトルであり、値は0である。したがってΦは基底{eI}を、基底{eJ}の双対基底へ写す。基底を基底へ写す線形写像は同型であるから、Φは同型である。▨
定理 1.4.k≥1とし、Vをn次元とする。線形同型
ΨV:⋀k(V∨)⟶Altk(V)であって、すべてのα1,…,αk∈V∨とv1,…,vk∈Vに対して
ΨV(α1∧⋯∧αk)(v1,…,vk)=det(αi(vj))i,j=1kを満たすものがただ一つ存在する。k=1のときΨVはV∨=Alt1(V)の恒等写像である。
証明.ΨV=Λ−1∘Φと定める。補題 1.2と補題 1.3により、これは線形同型である。表示した等式はΛとΦの定義から従う。一意性は、純外積α1∧⋯∧αkが⋀k(V∨)を生成することによる。k=1のときはdetが1次行列の唯一の成分であるから、ΨV(α)(v)=α(v)である。▨
2 微分形式
以下、Mを境界を持たないn次元C∞多様体とする(§E17.1 定義 2.2)。p∈Mに対しTpMを接空間、Tp∗M=(TpM)∨を余接空間とし、ΛkT∗Mを外冪束とする(§E17.4 定理 4.4)。ΛkT∗Mの点pの上のファイバーは⋀k(Tp∗M)であり、その次元は(kn)である。
チャート(U,φ=(x1,…,xn))を取る。§E17.3 定理 3.3により{∂/∂xi∣p}i=1nはTpMの基底である。その双対基底(§E3.5 定理 1.2)を{dxi∣p}i=1nと書く。すなわちdxi∣pは
dxi∣p(∂xj∂p)=δji
で定まるTp∗Mの元であり、接ベクトルを導分として見るとdxi∣p(v)=v(xi)である。増加添字I=(i1<⋯<ik)に対し、外積代数⋀(Tp∗M)(§E3.14 定義 3.1)の積によってdxI∣p=dxi1∣p∧⋯∧dxik∣pと定める。この積の値が⋀k(Tp∗M)に属することは、外積代数の次数rの部分が⋀r(Tp∗M)に一致すること(§E3.14 命題 3.2)による。以後、外冪⋀rを外積代数の次数rの部分と、この一致によって同一視する。§E3.14 定理 2.1により、{dxI∣p}Iは⋀k(Tp∗M)の基底である。
証明.§E17.4 定理 4.4は、Mのチャート(U,φ)と各ファイバーの基底{dxI∣p}から、ΛkT∗Mのチャート
η⟼(φ(π(η)), (ηI)I)∈φ(U)×R(kn)を作ってC∞構造を与える。ここでπ:ΛkT∗M→Mは射影であり、(ηI)はηの基底{dxI}に関する成分である。
このチャートで切断ωを表示すると、φ(U)からφ(U)×R(kn)への写像x↦(x, ((ωI∘φ−1)(x))I)になる。この写像がC∞であることと、各ωI∘φ−1がC∞であることは同値である。よって条件 (a)⇔(b)が成り立つ。滑らかさが局所的な性質であり、極大アトラスの任意の二つのチャートの座標変換がC∞であること(§E17.1 定義 2.2)から、条件 (c)⇒(b)が従う。条件 (b)⇒(c)は自明である。▨
証明.(1)を示す。各ファイバー⋀k(Tp∗M)はR上の線形空間であるから、三つの演算は各点で定まる。k≥1のとき、結果がふたたびC∞切断であることは命題 2.2の成分による判定から従う。実際、チャートを取るとω+η、cω、fωの成分はそれぞれωI+ηI、cωI、fωIであり、C∞関数の和・実数倍・積としてC∞である。k=0のときは、(2)によりΩ0(M)=C∞(M)であり、三つの演算は関数の和・実数倍・積であるから結果はふたたびC∞関数である。加群の公理は各点で確かめることができる。
(2)を示す。§E3.14 定義 1.1により⋀0(Tp∗M)=Rであるから、Λ0T∗Mの切断はM上の実数値関数と同一視され、C∞切断はC∞関数に対応する。
(3)を示す。dimTp∗M=nであるから、k>nのとき§E3.14 定理 2.1により⋀k(Tp∗M)={0}である。よって切断は零切断だけである。▨
証明. 各点でΨTpMが線形同型であることから、対応ω(p)↦ωpは各ファイバーで全単射である。切断の水準では、これは各点ごとに全単射を適用することであるから、ふたたび全単射である。▨
この読み替えを座標で書き下すと、ωpの座標基底における値が命題 2.2の成分ωIに一致する。その確認には外積の行列式表示を要するので、外積を定義したあとの命題 4.1で行う。
3 外積
外積の定義には二つの規約が流布している。一方は本記事が採る行列式の規約であり、他方はk!l!(k+l)!を交代化作用素に掛ける規約である。両者は1形式どうしの外積でα∧βと21(α∧β)の差を生み、外微分の不変表示に付く因子を変える。本単元は次の規約に固定する。
定義 3.1.k,lを非負整数とする。α∈Altk(V)、β∈Altl(V)に対し、(k+l)重線形形式α∧βを
(α∧β)(v1,…,vk+l)=k!l!1σ∈Sk+l∑sgn(σ)α(vσ(1),…,vσ(k))β(vσ(k+1),…,vσ(k+l))で定める。k=0のときα∈Rであり、この式はα∧β=αβ(スカラー倍)を与える。l=0のときも同様である。とくにk=l=1では
(α∧β)(v1,v2)=α(v1)β(v2)−α(v2)β(v1)である。この規約を行列式の規約という。
M上の微分形式に対しては、この式を各点で適用して外積を定める。すなわちα∈Ωk(M)、β∈Ωl(M)に対し、命題 2.4の読み替えのもとで
(α∧β)p=αp∧βp(p∈M)と定める。α∧βがふたたびΩk+l(M)に属することは命題 3.7の直後で確かめる。
k=0の場合を確かめる。α∈Alt0(V)=Rを定数と読むと、Slにわたる和の各項はsgn(σ)αβ(vσ(1),…,vσ(l))であり、βの交代性からこれはαβ(v1,…,vl)に等しい。項数はl!であり、1/(0!l!)を掛けるとαβ(v1,…,vl)を得る。
命題 3.2.α∈Altk(V)、β∈Altl(V)とする。α∧βは(k+l)重線形形式であり、任意のπ∈Sk+lに対して
(α∧β)(vπ(1),…,vπ(k+l))=sgn(π)(α∧β)(v1,…,vk+l)を満たす。とくにα∧β∈Altk+l(V)である。また対応(α,β)↦α∧βは双線形である。
証明. 多重線形性は、定義式の各項が各vmについて線形であることから従う。双線形性も、定義式がαとβのそれぞれについて線形であることから従う。
置換に対する符号を見る。π∈Sk+lを固定し、wm=vπ(m)と置く。定義式でαの引数はwσ(1),…,wσ(k)、すなわちvπσ(1),…,vπσ(k)である。βについても同様である。そこでσ′=πσと置くと、σがSk+lを一巡するときσ′もSk+lを一巡し、sgn(σ)=sgn(π−1σ′)=sgn(π)sgn(σ′)である。よって
(α∧β)(w1,…,wk+l)=sgn(π)⋅k!l!1σ′∈Sk+l∑sgn(σ′)α(vσ′(1),…)β(vσ′(k+1),…)となり、表示した等式を得る。二つの引数va,vb(a=b)が等しいときは、πとして互換(a b)を取ると左辺が元の値に等しく右辺が−1倍であるから、値は0である。よってα∧βは交代的である。▨
定義式の和は(k+l)!項からなるが、αとβが交代的であることから、実際に異なる値を与える項は(kk+l)通りしかない。次の形は以後の計算で繰り返し用いる。
証明.τ∈Skとρ∈Slに対し、τ⊕ρ∈Sk+lを、{1,…,k}の上でτ、{k+1,…,k+l}の上でm↦k+ρ(m−k)として定める。H={τ⊕ρ:τ∈Sk, ρ∈Sl}はSk+lの部分群であり、位数はk!l!である。
定義式の被加数をF(σ)と書く。σをσ∘(τ⊕ρ)へ取り替えると、αの引数はτによって、βの引数はρによって置換される。αとβが交代的であるから、その効果はsgn(τ)sgn(ρ)倍である。一方sgn(σ∘(τ⊕ρ))=sgn(σ)sgn(τ)sgn(ρ)であるから、F(σ∘(τ⊕ρ))=F(σ)である。すなわちFは右剰余類σHの上で定数である。
各右剰余類σHは、集合{σ(1),…,σ(k)}を定める。逆に{1,…,k+l}のk元部分集合Sを与えると、σ(1)<⋯<σ(k)がSの元を昇順に並べ、σ(k+1)<⋯<σ(k+l)が補集合の元を昇順に並べるようなσがただ一つ定まる。これがSh(k,l)の元であり、対応する剰余類にちょうど一つ属する。剰余類の元の個数は∣H∣=k!l!であるから、定義式の和は
k!l!1σ∈Sh(k,l)∑k!l!F(σ)=σ∈Sh(k,l)∑F(σ)に等しい。▨
命題 3.4.r≥1、k1,…,krを正の整数、N=k1+⋯+krとする。αs∈Altks(V)(s=1,…,r)に対し、N重線形形式Pr(α1,…,αr)を
Pr(α1,…,αr)(v1,…,vN)=k1!⋯kr!1σ∈SN∑sgn(σ)s=1∏rαs(vσ(Ks))で定める。ここでKs={k1+⋯+ks−1+1,…,k1+⋯+ks}は{1,…,N}を順に区切った第s区画であり、αs(vσ(Ks))はKsの元を昇順に並べたm1<⋯<mksに対するαs(vσ(m1),…,vσ(mks))を表す。このときPr(α1,…,αr)∈AltN(V)であり、P1(α1)=α1である。さらにr≥2に対して
Pr(α1,…,αr)=Pr−1(α1,…,αr−1)∧αr,Pr(α1,…,αr)=α1∧Pr−1(α2,…,αr)が成り立つ。
証明.P1(α1)=α1は定義から直ちに従う。Prが引数の置換に対して符号だけ変わることは、命題 3.2の証明と同じ置き換えσ′=πσによって従い、そこから交代性が従う。
第一の等式を示す。p=k1+⋯+kr−1、m=kr、N=p+mと置く。γ=Pr−1(α1,…,αr−1)はAltp(V)の元であるから、定義 3.1により
(γ∧αr)(v1,…,vN)=p!m!1σ∈SN∑sgn(σ)γ(vσ(1),…,vσ(p))αr(vσ(p+1),…,vσ(N))である。ここへγの定義を代入する。wj=vσ(j)(j=1,…,p)と置くと
γ(w1,…,wp)=k1!⋯kr−1!1τ∈Sp∑sgn(τ)s=1∏r−1αs(wτ(Ks))であり、wτ(j)=vσ(τ(j))である。τ∈Spを、{p+1,…,N}の上で恒等写像としてSNの元τへ延長し、μ=σ∘τと置く。τは{p+1,…,N}を動かさないのでμ(p+j)=σ(p+j)であり、sgn(μ)=sgn(σ)sgn(τ)である。τを固定するごとにσ↦μはSNの全単射であるから、二重和は
p!m!k1!⋯kr−1!1τ∈Sp∑ μ∈SN∑sgn(μ)s=1∏rαs(vμ(Ks))になる。内側の和はτに依らないので、τにわたる和はp!倍を与える。よって値は
k1!⋯kr−1!kr!1μ∈SN∑sgn(μ)s=1∏rαs(vμ(Ks))=Pr(α1,…,αr)(v1,…,vN)である。
第二の等式も同じ手順で従う。q=k2+⋯+krと置き、δ=Pr−1(α2,…,αr)∈Altq(V)とする。α1∧δの定義式へδの展開を代入し、{k1+1,…,N}の上の置換τを{1,…,k1}の上で恒等写像としてSNへ延長してμ=σ∘τと置くと、同じ計算によってPr(α1,…,αr)を得る。▨
定理 3.5.α∈Altk(V)、β∈Altl(V)、γ∈Altm(V)とする。このとき
(α∧β)∧γ=α∧(β∧γ),α∧β=(−1)klβ∧αが成り立つ。
同じ二つの等式は、M上の微分形式α∈Ωk(M)、β∈Ωl(M)、γ∈Ωm(M)に対しても、定義 3.1の各点ごとの外積について成り立つ。さらにこの外積はC∞(M)双線形である。すなわちf,g∈C∞(M)に対して(fα+gα′)∧β=f(α∧β)+g(α′∧β)であり、第二変数についても同様である。
証明.k,l,mのいずれかが0の場合は、外積がスカラー倍になるので両方の等式は直ちに従う。以下、k,l,m≥1とする。
結合性は命題 3.4をr=3に適用すると得られる。実際、同命題の第一の等式はP3(α,β,γ)=P2(α,β)∧γ=(α∧β)∧γを、第二の等式はP3(α,β,γ)=α∧P2(β,γ)=α∧(β∧γ)を与える。
次数付き交換性を示す。N=k+lとし、θ∈SNを
θ(i)=k+i(1≤i≤l),θ(l+j)=j(1≤j≤k)で定める。列θ(1),…,θ(N)はk+1,k+2,…,k+l,1,2,…,kであり、前半どうし、後半どうしはいずれも増加している。前半の元はすべてkより大きく、後半の元はすべてk以下であるから、転倒(i<jかつθ(i)>θ(j)となる対)の個数はちょうどklである。したがってsgn(θ)=(−1)klである。
定義から
(β∧α)(v1,…,vN)=l!k!1σ∈SN∑sgn(σ)β(vσ(1),…,vσ(l))α(vσ(l+1),…,vσ(N))である。σ=μ∘θと置くと、σがSNを一巡するときμも一巡する。1≤i≤lに対しσ(i)=μ(θ(i))=μ(k+i)、1≤j≤kに対しσ(l+j)=μ(j)であるから、被加数は
sgn(μ)sgn(θ)β(vμ(k+1),…,vμ(N))α(vμ(1),…,vμ(k))になる。αとβの値は実数であるから積の順序を入れ替えることができ、μにわたる和と係数1/(k!l!)を合わせるとsgn(θ)(α∧β)(v1,…,vN)を得る。したがってβ∧α=(−1)klα∧βであり、両辺に(−1)klを掛けると表示した等式になる。
微分形式についての主張は、外積が各点ごとに定まっていることから従う。p∈Mごとにαp∈Altk(TpM)、βp∈Altl(TpM)、γp∈Altm(TpM)へ上の二つの等式を適用すればよい。C∞(M)双線形性についても、(fα)p=f(p)αpであることと命題 3.2の双線形性を各点で用いればよい。▨
証明.定理 3.5の結合性により、k個の因子の外積は括弧の付け方に依らない。命題 3.4をr=k、k1=⋯=kk=1に適用すると、Pk(α1,…,αk)は左から順に括弧を付けた外積に等しく、その表示式の係数は1/(1!⋯1!)=1である。区画Ksは一点集合{s}であるから、被加数はsgn(σ)∏iαi(vσ(i))である。これは行列(αi(vj))の行列式の、置換にわたる展開そのものである。
順序の入れ替えについては、行列の行を入れ替えると行列式の符号が変わることから従う。二つの因子が等しければ二つの行が等しく、行列式は0である。▨
命題 3.7.k,l≥1とし、Vをn次元とする。ξ∈⋀k(V∨)、η∈⋀l(V∨)に対し
ΨV(ξ∧η)=ΨV(ξ)∧ΨV(η)が成り立つ。左辺の∧は外積代数⋀(V∨)の積(§E3.14 定義 3.1)であり、右辺の∧は定義 3.1の外積である。ここで⋀k(V∨)を外積代数⋀(V∨)の次数kの部分と同一視している。この同一視は§E3.14 命題 3.2による。
証明.§E3.14 命題 3.2により、外積代数⋀(V∨)の次数kの部分は§E3.14 定義 1.1の⋀k(V∨)に一致し、外積代数の積は純外積を純外積へ写す。以下ではこの一致のもとで両者を同じ記号で書く。
両辺はξとηのそれぞれについて線形であり、§E3.14 定理 2.1により⋀k(V∨)は純外積α1∧⋯∧αk(αi∈V∨)が生成するから、ξ=α1∧⋯∧αk、η=αk+1∧⋯∧αk+lの場合を確かめれば足りる。
外積代数の積ではξ∧η=α1∧⋯∧αk+lである。定理 1.4により
ΨV(ξ∧η)(v1,…,vk+l)=det(αi(vj))i,j=1k+lである。一方、k=1の場合のΨVは恒等写像であるからΨV(αi)=αiであり、定理 1.4と系 3.6を比べると
ΨV(ξ)=α1∧⋯∧αk,ΨV(η)=αk+1∧⋯∧αk+lである(右辺は定義 3.1の外積)。結合性からこの二つの外積はα1∧⋯∧αk+lに等しく、ふたたび系 3.6により、その値はdet(αi(vj))i,j=1k+lである。両辺が一致する。▨
命題 3.7によって、ΛkT∗Mの切断としての読み方と交代テンソル場としての読み方とで、外積が同じ対象を与える。したがって定義 3.1が微分形式に対して定めた各点ごとの外積は、外冪束のファイバーの外積代数の積と一致し、
(α∧β)(p)=α(p)∧β(p)∈⋀k+l(Tp∗M)
と書くことができる。α∧βがC∞切断であることを確かめる。チャート上でα=∑IαIdxI、β=∑JβJdxJと表すと、α∧β=∑I,JαIβJdxI∧dxJであり、系 3.6によりdxI∧dxJはIとJが共通の添字を持てば0、持たなければ符号を付けた基底元である。したがってα∧βの成分はαIとβJの有限個の積の和であり、命題 2.2によりα∧β∈Ωk+l(M)である。結合性、次数付き交換性、およびC∞(M)双線形性は定理 3.5が述べている。
例 3.8 (偶数次の形式は自分自身との外積が消えるとは限らない).V=R4の標準基底の双対基底をe1,e2,e3,e4とし、α=e1∧e2+e3∧e4∈Alt2(V)と置く。双線形性から
α∧α=e1∧e2∧e1∧e2+e1∧e2∧e3∧e4+e3∧e4∧e1∧e2+e3∧e4∧e3∧e4である。第一項と第四項は同じ因子を二つ含むので系 3.6により0である。第三項は次数付き交換性から(−1)2⋅2e1∧e2∧e3∧e4=e1∧e2∧e3∧e4に等しい。したがって
α∧α=2e1∧e2∧e3∧e4=0である。次数付き交換性はα∧α=(−1)2⋅2α∧αを与えるだけであり、次数が偶数のときは何も帰結しない。次数kが奇数の場合にはα∧α=−α∧αとなるのでα∧α=0である。
4 座標表示と成分の変換則
命題 4.1.k≥1とし、(U,φ=(x1,…,xn))をMのチャートとする。増加添字I=(i1<⋯<ik)とJ=(j1<⋯<jk)に対して
dxI(∂xj1∂,…,∂xjk∂)={10(I=J),(I=J)が成り立つ。したがってω∈Ωk(M)のUへの制限は
ω∣U=1≤i1<⋯<ik≤n∑ωi1⋯ikdxi1∧⋯∧dxik,ωi1⋯ik=ω(∂xi1∂,…,∂xik∂)と一意に表される。ここで左辺の係数は命題 2.2の成分であり、右辺の等式はその成分が座標基底におけるωpの値に一致することを述べている。各ωi1⋯ikはU上のC∞関数である。
証明.命題 3.7により、交代形式として読んだdxIは1形式dxi1,…,dxikの定義 3.1の意味の外積に等しい。よって系 3.6により
dxI(∂xj1∂,…,∂xjk∂)=det(δjbia)a,b=1kである。I=Jならばこの行列は単位行列であり値は1である。I=JならばIに属してJに属さない添字iaがあり、第a行が零ベクトルなので値は0である。
{dxI∣p}は⋀k(Tp∗M)の基底であるから、ω(p)はその一次結合として一意に表される。その係数をωI(p)と書くと、上の直交性から
ωp(∂xi1∂p,…,∂xik∂p)=J∑ωJ(p)dxJ∣p(∂xi1∂p,…)=ωI(p)である。係数がC∞であることは命題 2.2による。▨
証明.1形式については、dyaを座標基底へ適用すると
dya(∂xi∂)=∂xi∂(ya)=∂xi∂yaである。第一の等号はdya(v)=v(ya)という表示、第二の等号は座標基底の定義(§E17.3 定理 3.3)による。
第二の表示を(∂/∂xi1,…,∂/∂xik)へ適用する。系 3.6により
(dya1∧⋯∧dyak)(∂xi1∂,…,∂xik∂)=det(∂xis∂yar)r,s=1kであるから、値は表示した和になる。一方、第一の表示を同じ引数へ適用すると命題 4.1によりωi1⋯ikを得る。両者は同じ形式の同じ点における同じ引数での値であるから一致する。▨
証明.命題 4.2でk=nと置くと和が一項になる。▨
例 4.4 (平面の極座標型の座標変換における成分).W={(u,v)∈R2:u>0, 0<v<2π}の上でx=ucosv、y=usinvと置くと、(u,v)↦(x,y)はWからR2∖{(s,0):s≥0}へのC∞微分同相であり、(u,v)と(x,y)はこの開集合上の二つの座標である。Jacobi 行列は
∂u∂x∂u∂y∂v∂x∂v∂y=(cosvsinv−usinvucosv)である。ω=dx∧dyを(u,v)座標で表すと、系 4.3により成分は
det(cosvsinv−usinvucosv)=ucos2v+usin2v=uであり、dx∧dy=udu∧dvを得る。同じ結果はdx=cosvdu−usinvdv、dy=sinvdu+ucosvdvを代入して外積を展開しても得られる。実際、du∧du=dv∧dv=0とdv∧du=−du∧dvから
dx∧dy=(cosv)(ucosv)du∧dv+(−usinv)(sinv)dv∧du=udu∧dvである。
5 引き戻し
命題 5.2. 上のF∗ωはM上のk次微分形式である。またF∗:Ωk(N)→Ωk(M)はR線形であり、g∈C∞(N)に対してF∗(gω)=(g∘F)F∗ωを満たす。さらにC∞写像F:M→N、G:N→Pに対して
(G∘F)∗=F∗∘G∗,(idM)∗=idΩk(M)が成り立つ。
証明. 各点で(F∗ω)pがk重線形であることはdFpの線形性から、交代的であることはωF(p)の交代性から従う。滑らかさは、共変テンソル場の引き戻しに関する§E17.4 定理 6.1の (i) による。R線形性と関数倍に関する等式は、定義式がωについて線形であり、ωF(p)の係数g(F(p))が定義式の外へ出ることから従う。
合成については、§E17.3 定理 5.3によりd(G∘F)p=dGF(p)∘dFpであるから
((G∘F)∗ω)p(v1,…,vk)=ωG(F(p))(dGF(p)dFp(v1),…)=(G∗ω)F(p)(dFp(v1),…)であり、最後の式は(F∗(G∗ω))p(v1,…,vk)である。d(idM)p=idTpM(§E17.3 定理 5.3)から恒等写像の場合が従う。k=0の場合はいずれも関数の合成の結合性である。▨
定理 5.3.F:M→NをC∞写像、α∈Ωk(N)、β∈Ωl(N)とする。このとき
F∗(α∧β)=F∗α∧F∗βが成り立つ。
証明.k=0またはl=0のときは外積が関数倍であり、主張は命題 5.2のF∗(gω)=(g∘F)F∗ωである。以下k,l≥1とする。
p∈Mとv1,…,vk+l∈TpMを取る。定義 5.1と定義 3.1から
(F∗(α∧β))p(v1,…,vk+l)=(α∧β)F(p)(dFpv1,…,dFpvk+l)であり、右辺は
k!l!1σ∈Sk+l∑sgn(σ)αF(p)(dFpvσ(1),…,dFpvσ(k))βF(p)(dFpvσ(k+1),…,dFpvσ(k+l))に等しい。各因子はふたたび定義 5.1により
αF(p)(dFpvσ(1),…,dFpvσ(k))=(F∗α)p(vσ(1),…,vσ(k))と書き直され、βについても同様である。したがって上の和は
k!l!1σ∈Sk+l∑sgn(σ)(F∗α)p(vσ(1),…,vσ(k))(F∗β)p(vσ(k+1),…,vσ(k+l))に等しく、これは(F∗α∧F∗β)p(v1,…,vk+l)の定義式である。pとv1,…,vk+lは任意であったから、二つの形式は一致する。▨
この証明が用いたのは、外積の定義式の各引数へ同じ線形写像dFpを代入したことだけである。したがって外積の規約を取り替えても同じ証明が通る。
証明.p∈Uとv∈TpMに対して
F∗(dya)p(v)=dya∣F(p)(dFp(v))=dFp(v)(ya)=v(ya∘F)=v(Fa)である。第二の等号はdya(w)=w(ya)という表示、第三の等号は微分の定義による。v=∂/∂xi∣pと置くと右辺は(∂Fa/∂xi)(p)であり、{dxi∣p}が双対基底であることから第一の等式を得る。
第二の等式は、F∗がR線形であり関数倍と可換であること(命題 5.2)と、定理 5.3をk個の因子へ繰り返し適用することから従う。▨
例 5.5 (引き戻しが外積と可換であることの検算).M={(u,v)∈R2:u>0}、N=R2、F(u,v)=(ucosv, usinv)とする。Nの座標を(x,y)とする。命題 5.4により
F∗(dx)=cosvdu−usinvdv,F∗(dy)=sinvdu+ucosvdvである。この二つの外積を定義 3.1のk=l=1の場合として計算すると
F∗(dx)∧F∗(dy)=((cosv)(ucosv)−(−usinv)(sinv))du∧dv=udu∧dvである。一方F∗(dx∧dy)を定義から計算する。dF(u,v)は座標基底を
dF(∂u∂)=cosv∂x∂+sinv∂y∂,dF(∂v∂)=−usinv∂x∂+ucosv∂y∂へ写すので
F∗(dx∧dy)(∂u∂,∂v∂)=(cosv)(ucosv)−(sinv)(−usinv)=uである。したがってF∗(dx∧dy)=udu∧dvであり、両者は一致する。
例 5.6 (階数が下がる写像による引き戻し).F:R2→R2、F(u,v)=(u,u)とする。F∗(dx)=du、F∗(dy)=duであるから
F∗(dx∧dy)=F∗(dx)∧F∗(dy)=du∧du=0である。引き戻しは単射とは限らず、この例では2次形式の全体が0へ写る。引き戻しの定義はFが微分同相であることを要求しないので、このような退化が起こる。反変の成分を含むテンソル場については、そもそも微分同相でなければ移すことができない(§E17.4 定理 6.1)。
6 演習
7 境界と次
外積の規約は、以後のすべての記事で本記事のものに固定する。別の規約を採ると、1形式どうしの外積が21倍になり、外微分の不変表示に1/(k+1)の因子が現れる。規約を混ぜて用いてはならない。
定理 1.4はVが有限次元であることを本質的に用いている。無限次元の線形空間に対してはΦの全射性が保証されず、交代形式の空間が双対空間の外冪より真に大きくなることがある。本単元は有限次元の多様体だけを扱う。
本記事は微分形式の代数だけを扱い、微分を扱っていない。k次形式から(k+1)次形式を作る外微分は、次数付き Leibniz 則と二回合成すると消えることによって特徴づけられる。その存在と一意性、引き戻しとの可換性、および括弧積による不変表示は「外微分と不変表示」が扱う。
微分形式の積分は最高次形式に対して定義され、そのためには向きが必要である。系 4.3が示す Jacobi 行列式の倍という変換則は、重積分が Jacobi 行列式の絶対値の倍になることと比べたとき、向きを保つ座標変換に限って両者が一致することを意味する。この比較は「向きと多様体上の積分」が扱う。