§E17.22閉部分群定理

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「Lie 群と古典行列群」は、ユニタリ群、特殊線形群および斜交群を、それぞれ適当な写像の正則値の逆像として構成した。この構成は、群を定める行列方程式を毎回書き下し、その微分の全射性を計算することを要する。本記事が証明する定理は、この作業を不要にする。すなわち、Lie 群の部分群が位相的に閉じているという一つの条件だけから、その部分群が埋め込み部分多様体であり、ふたたび Lie 群になることが従う。

証明の骨組みは次のとおりである。部分群HHに対して

h={X∈g ∣ exp⁡(tX)∈H がすべての t∈R で成り立つ}\mathfrak{h}=\bigl\{X\in\mathfrak{g}\ \bigm|\ \exp(tX)\in H\ \text{がすべての}\ t\in\mathbb{R}\ \text{で成り立つ}\bigr\}

と定める。第一に、h\mathfrak{h}がg\mathfrak{g}の部分 Lie 環であることを示す。和で閉じることは Lie 積公式から、括弧積で閉じることは群の交換子の極限公式から従う。この二つの公式は本記事が証明する。第二に、h\mathfrak{h}の補空間m\mathfrak{m}を取り、m\mathfrak{m}の00の近くにはexp⁡\expの像がHHに入る点が00以外に無いことを示す。ここで、単位元へ収束するHHの元の列から接ベクトルを取り出す極限の議論を用いる。第三に、指数写像が原点の近傍で局所微分同相であることから、単位元の周りのスライスチャートを構成する。

最後に、閉であるという仮定を落とすと結論が成り立たないことを、円環面の稠密な1パラメータ部分群によって確かめ、古典行列群が閉であることだけからも Lie 群になることを述べる。

以下、GGをnn次元 Lie 群(§E17.19 定義 1.1)、eeをその単位元、g=TeG\mathfrak{g}=T_eGを§E17.20 定理 2.3が与える Lie 環とし、exp⁡ ⁣:g→G\exp\colon\mathfrak{g}\to Gを§E17.21 定義 3.1の指数写像とする。

注意 1 (Lie 環に固定するノルムについて). 以下ではg\mathfrak{g}の基底v1,…,vnv_1,\dots,v_nを一つ固定し、u=∑i=1naiviu=\sum_{i=1}^{n}a^{i}v_iに対して

∥u∥=(∑i=1n(ai)2)1/2\lVert u\rVert=\Bigl(\sum_{i=1}^{n}(a^{i})^{2}\Bigr)^{1/2}

と定める。双線形写像B ⁣:g×g→gB\colon\mathfrak{g}\times\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}に対しては、有限次元であることから定数∥B∥\lVert B\rVertが存在して∥B(u,w)∥≤∥B∥ ∥u∥ ∥w∥\lVert B(u,w)\rVert\le\lVert B\rVert\,\lVert u\rVert\,\lVert w\rVertが成り立つ(基底に関する成分で書くと右辺は有限個の項の和になる)。

このノルムは、固定した有限次元実ベクトル空間g\mathfrak{g}の上に置いた代数的な補助であって、多様体GGの各点の接空間へ点について滑らかに変化する内積を与えたものではない。すなわち Riemann 計量ではない。ノルムは、以下の評価と収束を書くためだけに用いる。g\mathfrak{g}の点列がこのノルムについて収束することと、基底に関する成分が収束することは同値であり、後者は§E17.1 例 2.4がg\mathfrak{g}に与える位相についての収束である。

1 指数写像による座標での群の積

補題 1.1.μ ⁣:G×G→G\mu\colon G\times G\to Gを積の写像とする。T(e,e)(G×G)=TeG⊕TeGT_{(e,e)}(G\times G)=T_eG\oplus T_eGという§E17.1 命題 7.3の積のチャートが定める分解のもとで、

dμ(e,e)(u,w)=u+w(u,w∈TeG)d\mu_{(e,e)}(u,w)=u+w\qquad(u,w\in T_eG)

が成り立つ。

証明.dμ(e,e)d\mu_{(e,e)}は線形であり、(u,w)=(u,0)+(0,w)(u,w)=(u,0)+(0,w)であるから、dμ(e,e)(u,0)=ud\mu_{(e,e)}(u,0)=uとdμ(e,e)(0,w)=wd\mu_{(e,e)}(0,w)=wを示せば足りる。

u∈TeGu\in T_eGを取り、§E17.3 命題 4.3によりeeを通る滑らかな曲線ccでc′(0)=uc'(0)=uを満たすものを取る。t↦(c(t),e)t\mapsto(c(t),e)はG×GG\times Gの滑らかな曲線であり、そのt=0t=0における速度ベクトルは(u,0)(u,0)である。実際、積のチャートに関する座標表示はccの座標表示と定数を並べたものである。この曲線にμ\muを合成するとt↦μ(c(t),e)=c(t)e=c(t)t\mapsto\mu(c(t),e)=c(t)e=c(t)であるから、§E17.3 定理 5.3により

dμ(e,e)(u,0)=ddt∣t=0c(t)=ud\mu_{(e,e)}(u,0)=\left.\frac{d}{dt}\right|_{t=0}c(t)=u

である。同様にt↦(e,c(t))t\mapsto(e,c(t))を取るとμ(e,c(t))=c(t)\mu(e,c(t))=c(t)であるからdμ(e,e)(0,w)=wd\mu_{(e,e)}(0,w)=wを得る。▨

§E17.21 定理 3.4により、0∈g0\in\mathfrak{g}の開近傍U\mathcal{U}とe∈Ge\in Gの開近傍WWが存在してexp⁡ ⁣:U→W\exp\colon\mathcal{U}\to Wは微分同相である。逆写像をlog⁡ ⁣:W→U\log\colon W\to\mathcal{U}と書く。この逆写像を用いると、群の積をg\mathfrak{g}の中の演算として書くことができる。

補題 1.2. 上のU\mathcal{U}、WW、log⁡\logを取る。δ>0\delta>0を、∥u∥<δ\lVert u\rVert<\deltaかつ∥w∥<δ\lVert w\rVert<\deltaならばu,w∈Uu,w\in\mathcal{U}かつexp⁡(u)exp⁡(w)∈W\exp(u)\exp(w)\in Wとなるように取る。

Ψ(u,w)=log⁡(exp⁡(u)exp⁡(w))(∥u∥<δ, ∥w∥<δ)\Psi(u,w)=\log\bigl(\exp(u)\exp(w)\bigr) \qquad\bigl(\lVert u\rVert<\delta,\ \lVert w\rVert<\delta\bigr)

と定める。このとき次が成り立つ。

  1. Ψ\PsiはC∞C^\inftyであり、Ψ(u,0)=u\Psi(u,0)=u、Ψ(0,w)=w\Psi(0,w)=w、Ψ(u,−u)=0\Psi(u,-u)=0である。
  2. 双線形写像B ⁣:g×g→gB\colon\mathfrak{g}\times\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}と定数C0≥0C_0\ge0、および0<δ0≤δ0<\delta_0\le\deltaが存在して、∥u∥<δ0\lVert u\rVert<\delta_0かつ∥w∥<δ0\lVert w\rVert<\delta_0を満たすすべてのu,wu,wに対して Ψ(u,w)=u+w+B(u,w)+ρ(u,w),∥ρ(u,w)∥≤C0(∥u∥+∥w∥)3\Psi(u,w)=u+w+B(u,w)+\rho(u,w), \qquad \bigl\lVert\rho(u,w)\bigr\rVert\le C_0\bigl(\lVert u\rVert+\lVert w\rVert\bigr)^{3} が成り立つ。
  3. すべてのu∈gu\in\mathfrak{g}に対してB(u,u)=0B(u,u)=0である。とくにB(u,w)=−B(w,u)B(u,w)=-B(w,u)である。
  4. すべてのu,w∈gu,w\in\mathfrak{g}に対してB(u,w)=12[u,w]B(u,w)=\tfrac12[u,w]である。ここで[⋅,⋅][\cdot,\cdot]は§E17.20 定理 2.3がg\mathfrak{g}に与えた括弧積である。

証明の順序は次のとおりである。(1)は定義と§E17.21 命題 3.2から従う。(2)は、Ψ\Psiの(0,0)(0,0)における二次までの Taylor 展開を取り、(1)の二つの等式から二次の項が混合項だけになることを見る。(3)はΨ(u,−u)=0\Psi(u,-u)=0を用いる。(4)は、log⁡\logをチャートに取ったときの左不変ベクトル場の座標表示がΨ\Psiの第二変数についての偏微分で書き表されることを用い、§E17.7 命題 1.3を原点で評価する。

証明.(1)を示す。exp⁡\expは§E17.21 補題 3.3によりC∞C^\infty、μ\muは§E17.19 定義 1.1によりC∞C^\infty、log⁡\logは微分同相の逆写像としてC∞C^\inftyである。よってΨ\PsiはC∞C^\infty写像の合成としてC∞C^\inftyである(§E17.1 系 4.3)。exp⁡(0)=e\exp(0)=e(§E17.21 命題 3.2)であるからexp⁡(u)exp⁡(0)=exp⁡(u)\exp(u)\exp(0)=\exp(u)でありΨ(u,0)=log⁡(exp⁡(u))=u\Psi(u,0)=\log(\exp(u))=uである。同様にΨ(0,w)=w\Psi(0,w)=wである。§E17.21 命題 3.2 (2)によりexp⁡(−u)=exp⁡(u)−1\exp(-u)=\exp(u)^{-1}であるからexp⁡(u)exp⁡(−u)=e\exp(u)\exp(-u)=eでありΨ(u,−u)=log⁡(e)=0\Psi(u,-u)=\log(e)=0である。

(2)を示す。g\mathfrak{g}の基底によってg\mathfrak{g}をRn\mathbb{R}^{n}と同一視し、Ψ\PsiをRn×Rn=R2n\mathbb{R}^{n}\times\mathbb{R}^{n}=\mathbb{R}^{2n}の開集合からRn\mathbb{R}^{n}へのC∞C^\infty写像と見る。z=(u,w)z=(u,w)と書く。Ψ(0,0)=0\Psi(0,0)=0である。

§E4.5 定理 1.1をr=2r=2としてΨ\Psiの各成分へ適用する。∥z∥≤δ1\lVert z\rVert\le\delta_1(δ1\delta_1はB‾(0,δ1)\overline{B}(0,\delta_1)が定義域に含まれるように取る)で

Ψ(z)=DΨ(0)[z]+12D2Ψ(0)[z,z]+R(z),∥R(z)∥≤C0′∥z∥3\Psi(z)=D\Psi(0)[z]+\tfrac12D^{2}\Psi(0)[z,z]+R(z), \qquad \lVert R(z)\rVert\le C_0'\lVert z\rVert^{3}

が成り立つ。ここでC0′C_0'は、閉球B‾(0,δ1)\overline{B}(0,\delta_1)の上での三階の偏導関数の上限から定まる定数である(三階の偏導関数は連続であり、閉球はコンパクトであるから上限は有限である)。

一次の項を求める。(1)のΨ(u,0)=u\Psi(u,0)=uをuuについてu=0u=0で微分するとDΨ(0)[(u,0)]=uD\Psi(0)[(u,0)]=uであり、Ψ(0,w)=w\Psi(0,w)=wからDΨ(0)[(0,w)]=wD\Psi(0)[(0,w)]=wである。線形性によりDΨ(0)[z]=u+wD\Psi(0)[z]=u+wである。

二次の項を求める。D2Ψ(0)D^{2}\Psi(0)は対称双線形である(§E4.4 定理 2.1)から、z=(u,0)+(0,w)z=(u,0)+(0,w)と分けると

12D2Ψ(0)[z,z]=12D2Ψ(0)[(u,0),(u,0)]+D2Ψ(0)[(u,0),(0,w)]+12D2Ψ(0)[(0,w),(0,w)]\tfrac12D^{2}\Psi(0)[z,z] =\tfrac12D^{2}\Psi(0)\bigl[(u,0),(u,0)\bigr] +D^{2}\Psi(0)\bigl[(u,0),(0,w)\bigr] +\tfrac12D^{2}\Psi(0)\bigl[(0,w),(0,w)\bigr]

である。w=0w=0と置くと、Ψ(u,0)=u\Psi(u,0)=uはすべてのuuについて厳密に成り立つ等式であるから、右辺の一次の項uuを引いた残りはuuについて恒等的に00である。よって12D2Ψ(0)[(u,0),(u,0)]=0\tfrac12D^{2}\Psi(0)[(u,0),(u,0)]=0がすべてのuuで成り立つ。同様に12D2Ψ(0)[(0,w),(0,w)]=0\tfrac12D^{2}\Psi(0)[(0,w),(0,w)]=0である。そこで

B(u,w)=D2Ψ(0)[(u,0),(0,w)]B(u,w)=D^{2}\Psi(0)\bigl[(u,0),(0,w)\bigr]

と定めると、BBはuuとwwのそれぞれについて線形、すなわち双線形であり、二次の項はB(u,w)B(u,w)に等しい。

∥z∥=(∥u∥2+∥w∥2)1/2≤∥u∥+∥w∥\lVert z\rVert=(\lVert u\rVert^{2}+\lVert w\rVert^{2})^{1/2}\le\lVert u\rVert+\lVert w\rVertであるから、ρ(u,w)=R(z)\rho(u,w)=R(z)と置きC0=C0′C_0=C_0'、δ0=min⁡{δ,δ1/2}\delta_0=\min\{\delta,\delta_1/2\}と取れば主張の評価を得る。

(3)を示す。u∈gu\in\mathfrak{g}を固定し、0<s0<sを∥su∥<δ0\lVert su\rVert<\delta_0となるほど小さく取る。(1)によりΨ(su,−su)=0\Psi(su,-su)=0であるから、(2)の展開に(su,−su)(su,-su)を代入して

0=su−su+B(su,−su)+ρ(su,−su)=−s2B(u,u)+ρ(su,−su)0=su-su+B(su,-su)+\rho(su,-su)=-s^{2}B(u,u)+\rho(su,-su)

である。よって

s2∥B(u,u)∥=∥ρ(su,−su)∥≤C0(2s∥u∥)3=8C0s3∥u∥3s^{2}\lVert B(u,u)\rVert=\lVert\rho(su,-su)\rVert\le C_0\bigl(2s\lVert u\rVert\bigr)^{3}=8C_0s^{3}\lVert u\rVert^{3}

であり、両辺をs2s^{2}で割ると∥B(u,u)∥≤8C0s∥u∥3\lVert B(u,u)\rVert\le 8C_0s\lVert u\rVert^{3}である。右辺はs→0+s\to0^{+}のとき00へ収束し、左辺はssに依らないのでB(u,u)=0B(u,u)=0である。双線形性により

0=B(u+w,u+w)=B(u,u)+B(u,w)+B(w,u)+B(w,w)=B(u,w)+B(w,u)0=B(u+w,u+w)=B(u,u)+B(u,w)+B(w,u)+B(w,w)=B(u,w)+B(w,u)

であるからB(u,w)=−B(w,u)B(u,w)=-B(w,u)である。

(4)を示す。log⁡ ⁣:W→U\log\colon W\to\mathcal{U}をチャートとして用いる。§E17.1 系 7.2と同じ理由で(W,λ∘log⁡)(W,\lambda\circ\log)はGGの可微分構造に属するチャートである(λ ⁣:g→Rn\lambda\colon\mathfrak{g}\to\mathbb{R}^{n}は基底が定める線形同型である)。以下、この同一視によってU⊆Rn\mathcal{U}\subseteq\mathbb{R}^{n}と見る。

v∈gv\in\mathfrak{g}に対する左不変ベクトル場XvX^{v}の、このチャートに関する座標表示をX^v\hat X^{v}と書く。g=exp⁡(u)g=\exp(u)(u∈Uu\in\mathcal{U})とする。§E17.21 命題 3.2 (3)と§E17.21 補題 1.1により、t↦gexp⁡(tv)t\mapsto g\exp(tv)はXvX^{v}の積分曲線でありt=0t=0でggを取る。したがってそのt=0t=0における速度ベクトルは(Xv)g(X^{v})_gである。座標で書くと

X^v(u)=ddt∣t=0log⁡(exp⁡(u)exp⁡(tv))=ddt∣t=0Ψ(u,tv)=D2Ψ(u,0)[v]\hat X^{v}(u)=\left.\frac{d}{dt}\right|_{t=0}\log\bigl(\exp(u)\exp(tv)\bigr) =\left.\frac{d}{dt}\right|_{t=0}\Psi(u,tv) =D_2\Psi(u,0)[v]

である。ここでD2D_2は第二変数についての偏微分を表す。

u=0u=0における値と一階の変化を求める。X^v(0)=D2Ψ(0,0)[v]=v\hat X^{v}(0)=D_2\Psi(0,0)[v]=vである((2)の一次の項による)。またh∈gh\in\mathfrak{g}に対して

DX^v(0)[h]=ddτ∣τ=0D2Ψ(τh,0)[v]=D1D2Ψ(0,0)[h][v]=D2Ψ(0)[(h,0),(0,v)]=B(h,v)D\hat X^{v}(0)[h]=\left.\frac{d}{d\tau}\right|_{\tau=0}D_2\Psi(\tau h,0)[v] =D_1D_2\Psi(0,0)[h][v] =D^{2}\Psi(0)\bigl[(h,0),(0,v)\bigr]=B(h,v)

である。第二の等号は連鎖律(§E4.3 定理 1.1)、第三の等号は混合二階偏導関数がD2Ψ(0)D^{2}\Psi(0)の対応する成分であることによる(§E4.4 定理 2.1)。

§E17.7 命題 1.3を、座標表示をRn\mathbb{R}^{n}に値を取る写像と見た形で書くと、二つのベクトル場VV、WWの括弧積の座標表示は

[V,W]^(u)=DW^(u)[V^(u)]−DV^(u)[W^(u)]\widehat{[V,W]}(u)=D\hat W(u)\bigl[\hat V(u)\bigr]-D\hat V(u)\bigl[\hat W(u)\bigr]

である。実際、右辺の第jj成分は∑i=1nV^i∂iW^j−∑i=1nW^i∂iV^j\sum_{i=1}^{n}\hat V^{i}\partial_i\hat W^{j}-\sum_{i=1}^{n}\hat W^{i}\partial_i\hat V^{j}である。V=XuV=X^{u}、W=XwW=X^{w}としてu=0u=0で評価すると

[Xu,Xw]^(0)=B(u,w)−B(w,u)=2B(u,w)\widehat{[X^{u},X^{w}]}(0)=B(u,w)-B(w,u)=2B(u,w)

である。最後の等号は(3)による。一方[Xu,Xw]^(0)\widehat{[X^{u},X^{w}]}(0)は[Xu,Xw]e=[u,w][X^{u},X^{w}]_e=[u,w]の座標表示であり、X^v(0)=v\hat X^{v}(0)=vと同じ同一視のもとで[u,w][u,w]そのものである。よって[u,w]=2B(u,w)[u,w]=2B(u,w)、すなわちB(u,w)=12[u,w]B(u,w)=\tfrac12[u,w]である。▨

2 Lie 積公式と交換子の極限公式

定理 2.1 (Lie 積公式).GGを Lie 群、g\mathfrak{g}をその Lie 環とし、X,Y∈gX,Y\in\mathfrak{g}とする。極限をGGの位相で取ると

exp⁡(X+Y)=lim⁡m→∞(exp⁡(X/m)exp⁡(Y/m))m\exp(X+Y)=\lim_{m\to\infty}\Bigl(\exp\bigl(X/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)\Bigr)^{m}

が成り立つ。ここでmmは正の整数を動く。

証明.補題 1.2のδ0\delta_0、BB、ρ\rhoを取る。mmを、∥X∥/m<δ0\lVert X\rVert/m<\delta_0かつ∥Y∥/m<δ0\lVert Y\rVert/m<\delta_0を満たすほど大きく取る。このとき

exp⁡(X/m)exp⁡(Y/m)=exp⁡(Ψ(X/m, Y/m))\exp\bigl(X/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)=\exp\Bigl(\Psi\bigl(X/m,\ Y/m\bigr)\Bigr)

である。§E17.21 命題 3.2 (2)を繰り返してexp⁡(Z)m=exp⁡(mZ)\exp(Z)^{m}=\exp(mZ)を得るので

(exp⁡(X/m)exp⁡(Y/m))m=exp⁡(m Ψ(X/m, Y/m))\Bigl(\exp\bigl(X/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)\Bigr)^{m} =\exp\Bigl(m\,\Psi\bigl(X/m,\ Y/m\bigr)\Bigr)

である。

mΨ(X/m,Y/m)m\Psi(X/m,Y/m)を評価する。補題 1.2 (2)により

m Ψ(X/m, Y/m)=m(Xm+Ym+B(Xm,Ym)+ρ(Xm,Ym))=X+Y+1mB(X,Y)+m ρ(Xm,Ym)m\,\Psi\bigl(X/m,\ Y/m\bigr) =m\left(\frac{X}{m}+\frac{Y}{m}+B\Bigl(\frac{X}{m},\frac{Y}{m}\Bigr)+\rho\Bigl(\frac{X}{m},\frac{Y}{m}\Bigr)\right) =X+Y+\frac{1}{m}B(X,Y)+m\,\rho\Bigl(\frac{X}{m},\frac{Y}{m}\Bigr)

である。ここでBBの双線形性によりB(X/m,Y/m)=B(X,Y)/m2B(X/m,Y/m)=B(X,Y)/m^{2}を用いた。剰余については

∥m ρ(Xm,Ym)∥≤m C0(∥X∥+∥Y∥m)3=C0(∥X∥+∥Y∥)3m2\left\lVert m\,\rho\Bigl(\frac{X}{m},\frac{Y}{m}\Bigr)\right\rVert \le m\,C_0\left(\frac{\lVert X\rVert+\lVert Y\rVert}{m}\right)^{3} =\frac{C_0\bigl(\lVert X\rVert+\lVert Y\rVert\bigr)^{3}}{m^{2}}

である。したがって

∥m Ψ(X/m,Y/m)−(X+Y)∥≤∥B(X,Y)∥m+C0(∥X∥+∥Y∥)3m2→m→∞0\bigl\lVert m\,\Psi\bigl(X/m,Y/m\bigr)-(X+Y)\bigr\rVert \le\frac{\lVert B(X,Y)\rVert}{m}+\frac{C_0\bigl(\lVert X\rVert+\lVert Y\rVert\bigr)^{3}}{m^{2}} \xrightarrow[m\to\infty]{}0

である。すなわちmΨ(X/m,Y/m)→X+Ym\Psi(X/m,Y/m)\to X+Yがg\mathfrak{g}において成り立つ。

exp⁡\expは§E17.21 補題 3.3によりC∞C^\inftyであり、とくに連続であるから

(exp⁡(X/m)exp⁡(Y/m))m=exp⁡(mΨ(X/m,Y/m))→m→∞exp⁡(X+Y)\Bigl(\exp\bigl(X/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)\Bigr)^{m} =\exp\Bigl(m\Psi\bigl(X/m,Y/m\bigr)\Bigr) \xrightarrow[m\to\infty]{}\exp(X+Y)

である。▨

定理 2.2.GGを Lie 群、g\mathfrak{g}をその Lie 環とし、X,Y∈gX,Y\in\mathfrak{g}とする。極限をGGの位相で取ると

exp⁡([X,Y])=lim⁡m→∞(exp⁡(X/m)exp⁡(Y/m)exp⁡(−X/m)exp⁡(−Y/m))m2\exp\bigl([X,Y]\bigr) =\lim_{m\to\infty} \Bigl(\exp\bigl(X/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)\exp\bigl(-X/m\bigr)\exp\bigl(-Y/m\bigr)\Bigr)^{m^{2}}

が成り立つ。ここでmmは正の整数を動く。指数はm2m^{2}である。mm乗に取り替えると、後の計算のとおり指数関数の引数が00へ収束して右辺がexp⁡(0)=e\exp(0)=eになり、主張が内容を失う。

証明の要は、四つの因子の積をΨ\Psiの三回の適用として書き、二次までの展開を順に代入することである。Ψ\Psiの二次の項BBが交代的であること(補題 1.2 (3))によって、B(X,X)B(X,X)とB(Y,Y)B(Y,Y)の項が消え、B(X,Y)−B(Y,X)=2B(X,Y)=[X,Y]B(X,Y)-B(Y,X)=2B(X,Y)=[X,Y]だけが残る。

証明.補題 1.2のδ0\delta_0、BB、ρ\rho、C0C_0を取り、a=∥X∥+∥Y∥a=\lVert X\rVert+\lVert Y\rVertと置く。ssを0<∣s∣≤10<|s|\le1かつ後の三回の適用がすべて定義域の中で行われるほど小さい範囲に限る。この範囲は、以下で作るa1,a2a_1,a_2のノルムがssについてO(∣s∣)O(|s|)であることから、∣s∣|s|を十分小さく取れば確保される。以下、C1,C2,…C_1,C_2,\dotsはXXとYYだけに依存する定数を表す。

a1=Ψ(sX, sY),a2=Ψ(a1, −sX),a3=Ψ(a2, −sY)a_1=\Psi(sX,\ sY),\qquad a_2=\Psi(a_1,\ -sX),\qquad a_3=\Psi(a_2,\ -sY)

と定める。§E17.21 命題 3.2 (2)とΨ\Psiの定義により

exp⁡(a3)=exp⁡(sX)exp⁡(sY)exp⁡(−sX)exp⁡(−sY)\exp(a_3)=\exp(sX)\exp(sY)\exp(-sX)\exp(-sY)

である。

a1a_1を展開する。

a1=sX+sY+s2B(X,Y)+ρ(sX,sY),∥ρ(sX,sY)∥≤C0a3∣s∣3a_1=sX+sY+s^{2}B(X,Y)+\rho(sX,sY),\qquad \lVert\rho(sX,sY)\rVert\le C_0a^{3}|s|^{3}

である。したがってr1=a1−s(X+Y)r_1=a_1-s(X+Y)と置くと∥r1∥≤∥B∥ ∥X∥∥Y∥s2+C0a3∣s∣3≤C1s2\lVert r_1\rVert\le\lVert B\rVert\,\lVert X\rVert\lVert Y\rVert s^{2}+C_0a^{3}|s|^{3}\le C_1s^{2}(∣s∣≤1|s|\le1)であり、とくに∥a1∥≤a∣s∣+C1s2≤C2∣s∣\lVert a_1\rVert\le a|s|+C_1s^{2}\le C_2|s|である。

a2a_2を展開する。

a2=a1−sX+B(a1,−sX)+ρ(a1,−sX)a_2=a_1-sX+B(a_1,-sX)+\rho(a_1,-sX)

である。BBの双線形性により

B(a1,−sX)=−s B(a1,X)=−s B(s(X+Y)+r1, X)=−s2B(X,X)−s2B(Y,X)−s B(r1,X)B(a_1,-sX)=-s\,B(a_1,X)=-s\,B\bigl(s(X+Y)+r_1,\ X\bigr) =-s^{2}B(X,X)-s^{2}B(Y,X)-s\,B(r_1,X)

であり、補題 1.2 (3)によりB(X,X)=0B(X,X)=0である。剰余の評価は

∥s B(r1,X)∥≤∣s∣⋅∥B∥ C1s2∥X∥=C3∣s∣3,∥ρ(a1,−sX)∥≤C0(C2∣s∣+∥X∥∣s∣)3=C4∣s∣3\lVert s\,B(r_1,X)\rVert\le|s|\cdot\lVert B\rVert\,C_1s^{2}\lVert X\rVert=C_3|s|^{3}, \qquad \lVert\rho(a_1,-sX)\rVert\le C_0\bigl(C_2|s|+\lVert X\rVert|s|\bigr)^{3}=C_4|s|^{3}

である。よって

a2=sX+sY+s2B(X,Y)+ρ(sX,sY)−sX−s2B(Y,X)+(ノルムが C5∣s∣3 以下の項)a_2=sX+sY+s^{2}B(X,Y)+\rho(sX,sY)-sX-s^{2}B(Y,X)+\bigl(\text{ノルムが }C_5|s|^{3}\text{ 以下の項}\bigr)

であり、ρ(sX,sY)\rho(sX,sY)のノルムもC0a3∣s∣3C_0a^{3}|s|^{3}以下であるから、補題 1.2 (3)のB(Y,X)=−B(X,Y)B(Y,X)=-B(X,Y)を用いて

a2=sY+2s2B(X,Y)+η2,∥η2∥≤C6∣s∣3a_2=sY+2s^{2}B(X,Y)+\eta_2,\qquad\lVert\eta_2\rVert\le C_6|s|^{3}

と書くことができる。とくにr2=a2−sYr_2=a_2-sYと置くと∥r2∥≤2∥B∥∥X∥∥Y∥s2+C6∣s∣3≤C7s2\lVert r_2\rVert\le 2\lVert B\rVert\lVert X\rVert\lVert Y\rVert s^{2}+C_6|s|^{3}\le C_7s^{2}であり、∥a2∥≤C8∣s∣\lVert a_2\rVert\le C_8|s|である。

a3a_3を展開する。

a3=a2−sY+B(a2,−sY)+ρ(a2,−sY)a_3=a_2-sY+B(a_2,-sY)+\rho(a_2,-sY)

である。

B(a2,−sY)=−s B(a2,Y)=−s B(sY+r2, Y)=−s2B(Y,Y)−s B(r2,Y)B(a_2,-sY)=-s\,B(a_2,Y)=-s\,B(sY+r_2,\ Y)=-s^{2}B(Y,Y)-s\,B(r_2,Y)

であり、B(Y,Y)=0B(Y,Y)=0、∥s B(r2,Y)∥≤C9∣s∣3\lVert s\,B(r_2,Y)\rVert\le C_9|s|^{3}である。また∥ρ(a2,−sY)∥≤C0(C8∣s∣+∥Y∥∣s∣)3=C10∣s∣3\lVert\rho(a_2,-sY)\rVert\le C_0(C_8|s|+\lVert Y\rVert|s|)^{3}=C_{10}|s|^{3}である。よって

a3=(sY+2s2B(X,Y)+η2)−sY+(ノルムが C11∣s∣3 以下の項)=2s2B(X,Y)+η3a_3=\bigl(sY+2s^{2}B(X,Y)+\eta_2\bigr)-sY+\bigl(\text{ノルムが }C_{11}|s|^{3}\text{ 以下の項}\bigr) =2s^{2}B(X,Y)+\eta_3

であり∥η3∥≤C12∣s∣3\lVert\eta_3\rVert\le C_{12}|s|^{3}である。補題 1.2 (4)により2B(X,Y)=[X,Y]2B(X,Y)=[X,Y]であるから

a3(s)=s2[X,Y]+η3(s),∥η3(s)∥≤C12∣s∣3(1)a_3(s)=s^{2}[X,Y]+\eta_3(s),\qquad\lVert\eta_3(s)\rVert\le C_{12}|s|^{3} \tag{1}

である。

極限を取る。s=1/ms=1/mと置く。§E17.21 命題 3.2 (2)を繰り返してexp⁡(Z)m2=exp⁡(m2Z)\exp(Z)^{m^{2}}=\exp(m^{2}Z)を得るので

(exp⁡(X/m)exp⁡(Y/m)exp⁡(−X/m)exp⁡(−Y/m))m2=exp⁡(m2a3(1/m))\Bigl(\exp\bigl(X/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)\exp\bigl(-X/m\bigr)\exp\bigl(-Y/m\bigr)\Bigr)^{m^{2}} =\exp\bigl(m^{2}a_3(1/m)\bigr)

である。(1) により

∥m2a3(1/m)−[X,Y]∥=m2∥η3(1/m)∥≤C12m→m→∞0\bigl\lVert m^{2}a_3(1/m)-[X,Y]\bigr\rVert=m^{2}\lVert\eta_3(1/m)\rVert\le\frac{C_{12}}{m} \xrightarrow[m\to\infty]{}0

である。exp⁡\expは連続であるから、右辺はexp⁡([X,Y])\exp([X,Y])へ収束する。

指数がm2m^{2}でなければならないこと。同じ (1) からm a3(1/m)=[X,Y]/m+m η3(1/m)m\,a_3(1/m)=[X,Y]/m+m\,\eta_3(1/m)であり、そのノルムは∥[X,Y]∥/m+C12/m2\lVert[X,Y]\rVert/m+C_{12}/m^{2}以下であるから00へ収束する。したがってexp⁡(m a3(1/m))→exp⁡(0)=e\exp(m\,a_3(1/m))\to\exp(0)=eであり、指数をmmに取り替えた式は、XXとYYが何であってもeeを与える。▨

3 閉部分群定理

定義 3.1.GGを Lie 群、HHをGGの部分群とする。

h={X∈g ∣ exp⁡(tX)∈H がすべての t∈R で成り立つ}\mathfrak{h}=\bigl\{X\in\mathfrak{g}\ \bigm|\ \exp(tX)\in H\ \text{がすべての}\ t\in\mathbb{R}\ \text{で成り立つ}\bigr\}

と定める。

命題 3.2.GGを Lie 群、HHをGGの閉じた部分群とする。このときh\mathfrak{h}はg\mathfrak{g}の線形部分空間であり、括弧積で閉じている。すなわちh\mathfrak{h}はg\mathfrak{g}の部分 Lie 環である。

証明. 定数倍で閉じること。X∈hX\in\mathfrak{h}、c∈Rc\in\mathbb{R}とすると、すべてのttに対してexp⁡(t(cX))=exp⁡((tc)X)∈H\exp(t(cX))=\exp((tc)X)\in Hである。よってcX∈hcX\in\mathfrak{h}である。とくに0∈h0\in\mathfrak{h}である(exp⁡(0)=e∈H\exp(0)=e\in H)。

和で閉じること。X,Y∈hX,Y\in\mathfrak{h}、t∈Rt\in\mathbb{R}とする。定理 2.1をtXtXとtYtYに適用すると

exp⁡(t(X+Y))=exp⁡(tX+tY)=lim⁡m→∞(exp⁡(tX/m)exp⁡(tY/m))m\exp\bigl(t(X+Y)\bigr)=\exp(tX+tY) =\lim_{m\to\infty}\Bigl(\exp\bigl(tX/m\bigr)\exp\bigl(tY/m\bigr)\Bigr)^{m}

である。X,Y∈hX,Y\in\mathfrak{h}であるからexp⁡(tX/m)∈H\exp(tX/m)\in H、exp⁡(tY/m)∈H\exp(tY/m)\in Hであり、HHは部分群であるから積とそのmm乗もHHに属する。すなわち右辺の各項はHHの元である。HHはGGの閉集合であるから、HHの元からなる列のGGにおける極限はHHに属する。よってexp⁡(t(X+Y))∈H\exp(t(X+Y))\in Hであり、ttは任意であったからX+Y∈hX+Y\in\mathfrak{h}である。

括弧積で閉じること。X,Y∈hX,Y\in\mathfrak{h}、t∈Rt\in\mathbb{R}とする。上で示したとおりtX∈htX\in\mathfrak{h}である。定理 2.2をtXtXとYYに適用すると、括弧積の双線形性(§E17.20 定義 2.2)により[tX,Y]=t[X,Y][tX,Y]=t[X,Y]であるから

exp⁡(t[X,Y])=exp⁡([tX,Y])=lim⁡m→∞(exp⁡(tX/m)exp⁡(Y/m)exp⁡(−tX/m)exp⁡(−Y/m))m2\exp\bigl(t[X,Y]\bigr)=\exp\bigl([tX,Y]\bigr) =\lim_{m\to\infty}\Bigl(\exp\bigl(tX/m\bigr)\exp\bigl(Y/m\bigr)\exp\bigl(-tX/m\bigr)\exp\bigl(-Y/m\bigr)\Bigr)^{m^{2}}

である。右辺の各項はHHの元の積のm2m^{2}乗であるからHHに属する。HHは閉集合であるから極限もHHに属する。ttは任意であったから[X,Y]∈h[X,Y]\in\mathfrak{h}である。▨

次の補題が、閉じているという仮定を本質的に用いる箇所である。HHの元の列が単位元へ収束するとき、対応するg\mathfrak{g}の元を正規化して部分列を取ると、その極限がふたたびh\mathfrak{h}に属する。

補題 3.3.GGを Lie 群、HHをGGの閉じた部分群とする。g\mathfrak{g}の点列(uk)k≥1(u_k)_{k\ge1}が次の三つを満たすとする。

  1. すべてのkkについてuk≠0u_k\ne0であり、exp⁡(uk)∈H\exp(u_k)\in Hである。
  2. k→∞k\to\inftyのとき∥uk∥→0\lVert u_k\rVert\to0である。
  3. k→∞k\to\inftyのときuk/∥uk∥→Zu_k/\lVert u_k\rVert\to Zがg\mathfrak{g}において成り立つ。

このときZ∈hZ\in\mathfrak{h}である。

証明.t∈Rt\in\mathbb{R}を固定する。ck=∥uk∥>0c_k=\lVert u_k\rVert>0と置くと、条件 (b)によりck→0c_k\to0である。

各kkに対して整数mkm_kを、t/ckt/c_kを越えない最大の整数として取る。すなわちmk≤t/ck<mk+1m_k\le t/c_k<m_k+1である。両辺にck>0c_k>0を掛けると

mkck≤t<mkck+ckm_kc_k\le t<m_kc_k+c_k

であり、0≤t−mkck<ck0\le t-m_kc_k<c_kを得る。ck→0c_k\to0であるからmkck→tm_kc_k\to tである。

mkuk=(mkck)⋅ukckm_ku_k=(m_kc_k)\cdot\frac{u_k}{c_k}

である。右辺の第一因子は実数の列であってttへ収束し、第二因子は条件 (c)によりZZへ収束する。実数とg\mathfrak{g}の元の積は双線形であるから、収束する二つの列の積は極限の積へ収束する。よってmkuk→tZm_ku_k\to tZである。

exp⁡\expは連続であるからexp⁡(mkuk)→exp⁡(tZ)\exp(m_ku_k)\to\exp(tZ)である。一方、§E17.21 命題 3.2 (2)によりexp⁡(mkuk)=exp⁡(uk)mk\exp(m_ku_k)=\exp(u_k)^{m_k}であり、mkm_kは整数、exp⁡(uk)∈H\exp(u_k)\in H、HHは部分群であるからexp⁡(uk)mk∈H\exp(u_k)^{m_k}\in Hである(mkm_kが負のときは逆元の冪であり、これもHHに属する)。

HHはGGの閉集合であるから、HHの元からなる列の極限はHHに属する。よってexp⁡(tZ)∈H\exp(tZ)\in Hである。ttは任意であったからZ∈hZ\in\mathfrak{h}である。▨

命題 3.4.GGを Lie 群、HHをGGの閉じた部分群とし、m\mathfrak{m}をg\mathfrak{g}におけるh\mathfrak{h}の線形補空間とする。すなわちg=h⊕m\mathfrak{g}=\mathfrak{h}\oplus\mathfrak{m}(直和)とする。このときε>0\varepsilon>0が存在して、w∈mw\in\mathfrak{m}、0<∥w∥<ε0<\lVert w\rVert<\varepsilonを満たすすべてのwwに対してexp⁡(w)∉H\exp(w)\notin Hである。

証明. 結論を否定する。すなわち、すべての正の整数kkに対してwk∈mw_k\in\mathfrak{m}で0<∥wk∥<1/k0<\lVert w_k\rVert<1/kかつexp⁡(wk)∈H\exp(w_k)\in Hを満たすものが存在するとする。

Zk=wk/∥wk∥Z_k=w_k/\lVert w_k\rVertと置く。m\mathfrak{m}はg\mathfrak{g}の線形部分空間であるからZk∈mZ_k\in\mathfrak{m}であり、∥Zk∥=1\lVert Z_k\rVert=1である。

S={Z∈m∣∥Z∥=1}S=\{Z\in\mathfrak{m}\mid\lVert Z\rVert=1\}

と置く。m\mathfrak{m}の基底を取ってm\mathfrak{m}をRd\mathbb{R}^{d}(d=dim⁡md=\dim\mathfrak{m})と同一視すると、SSは連続関数∥⋅∥\lVert\cdot\rVertの値11における逆像であるから閉集合であり、明らかに有界である。§E2.9 定理 4.3によりSSはコンパクトであり、§E2.9 定理 3.1により点列コンパクトである。したがって部分列(Zkj)j≥1(Z_{k_j})_{j\ge1}とZ∈SZ\in Sが存在してZkj→ZZ_{k_j}\to Zが成り立つ。とくに∥Z∥=1\lVert Z\rVert=1である。

部分列(wkj)(w_{k_j})について、∥wkj∥<1/kj→0\lVert w_{k_j}\rVert<1/k_j\to0、wkj≠0w_{k_j}\ne0、exp⁡(wkj)∈H\exp(w_{k_j})\in H、wkj/∥wkj∥=Zkj→Zw_{k_j}/\lVert w_{k_j}\rVert=Z_{k_j}\to Zが成り立つ。補題 3.3によりZ∈hZ\in\mathfrak{h}である。

一方Z∈S⊆mZ\in S\subseteq\mathfrak{m}である。g=h⊕m\mathfrak{g}=\mathfrak{h}\oplus\mathfrak{m}が直和であることからh∩m={0}\mathfrak{h}\cap\mathfrak{m}=\{0\}であり、Z=0Z=0となる。これは∥Z∥=1\lVert Z\rVert=1に反する。▨

定理 3.5 (閉部分群定理).GGを Lie 群、HHをGGの部分群であってGGの位相で閉じているものとする。このときHHはGGの埋め込み部分多様体であり、§E17.5 命題 4.2が与える可微分構造のもとでふたたび Lie 群である。その次元はdim⁡h\dim\mathfrak{h}であり、単位元における接空間はh\mathfrak{h}である。

証明の中心は、単位元の周りのスライスチャートを一つ構成することである。写像Φ(x,y)=exp⁡(x)exp⁡(y)\Phi(x,y)=\exp(x)\exp(y)(x∈hx\in\mathfrak{h}、y∈my\in\mathfrak{m})の(0,0)(0,0)における微分がh⊕m=g\mathfrak{h}\oplus\mathfrak{m}=\mathfrak{g}への同型であることを補題 1.1と§E17.21 定理 3.4から示し、逆関数定理を適用してΦ\Phiが原点の近傍で微分同相であることを得る。近傍を命題 3.4のε\varepsilonに合わせて縮めると、その中でHHに属する点はy=0y=0を満たすものに限られる。最後に、§E17.19 命題 3.3 (3)によって、単位元でのスライスチャートから他のすべての点でのスライスチャートを得る。

証明.k=dim⁡hk=\dim\mathfrak{h}と置き、m\mathfrak{m}をh\mathfrak{h}の線形補空間とする(命題 3.2によりh\mathfrak{h}は線形部分空間であるから、補空間が存在する)。dim⁡m=n−k\dim\mathfrak{m}=n-kである。

写像Φ\Phiを定める。h×m\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}は§E17.1 命題 7.3によりnn次元C∞C^\infty多様体であり、線形同型h⊕m→g\mathfrak{h}\oplus\mathfrak{m}\to\mathfrak{g}を通じてg\mathfrak{g}と同一視することができる。

Φ ⁣:h×m⟶G,Φ(x,y)=exp⁡(x)exp⁡(y)\Phi\colon\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}\longrightarrow G,\qquad \Phi(x,y)=\exp(x)\exp(y)

と定める。Φ=μ∘(exp⁡∣h×exp⁡∣m)\Phi=\mu\circ(\exp|_{\mathfrak{h}}\times\exp|_{\mathfrak{m}})であり、exp⁡\expは§E17.21 補題 3.3によりC∞C^\infty、μ\muはC∞C^\inftyであるから、Φ\PhiはC∞C^\inftyである(§E17.1 系 4.3)。Φ(0,0)=e\Phi(0,0)=eである。

dΦ(0,0)d\Phi_{(0,0)}を計算する。(x,y)∈h×m=T(0,0)(h×m)(x,y)\in\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}=T_{(0,0)}(\mathfrak{h}\times\mathfrak{m})とする。exp⁡∣h×exp⁡∣m\exp|_{\mathfrak{h}}\times\exp|_{\mathfrak{m}}の(0,0)(0,0)における微分は、§E17.21 定理 3.4のd(exp⁡)0=id⁡d(\exp)_0=\operatorname{id}を二つの因子へ適用したものであり、(x,y)↦(x,y)∈TeG⊕TeG(x,y)\mapsto(x,y)\in T_eG\oplus T_eGである。§E17.3 定理 5.3と補題 1.1により

dΦ(0,0)(x,y)=dμ(e,e)(x,y)=x+yd\Phi_{(0,0)}(x,y)=d\mu_{(e,e)}(x,y)=x+y

である。g=h⊕m\mathfrak{g}=\mathfrak{h}\oplus\mathfrak{m}が直和であるから、(x,y)↦x+y(x,y)\mapsto x+yはh×m\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}からg\mathfrak{g}への線形同型である。よってdΦ(0,0)d\Phi_{(0,0)}は同型である。

逆関数定理を適用する。eeを含むGGのチャート(U0,ψ)(U_0,\psi)を取り、h×m\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}の線形座標を与えるチャートをλ\lambdaとする。Φ\Phiは連続であるから、(0,0)(0,0)の開近傍O\mathcal{O}でΦ(O)⊆U0\Phi(\mathcal{O})\subseteq U_0となるものを取ることができる。f=ψ∘Φ∘λ−1f=\psi\circ\Phi\circ\lambda^{-1}はλ(O)\lambda(\mathcal{O})の上でC∞C^\inftyであり、§E17.3 命題 5.5によりDf(λ(0,0))Df(\lambda(0,0))はdΦ(0,0)d\Phi_{(0,0)}の行列表示であるから可逆である。§E4.7 定理 2.1と§E17.5 補題 1.1により、(0,0)(0,0)の開近傍O0⊆O\mathcal{O}_0\subseteq\mathcal{O}が存在して、Φ∣O0\Phi|_{\mathcal{O}_0}は開集合Φ(O0)⊆G\Phi(\mathcal{O}_0)\subseteq GへのC∞C^\infty微分同相である。

近傍を縮める。命題 3.4のε>0\varepsilon>0を取る。積位相の基底により、0∈h0\in\mathfrak{h}の開近傍O1\mathcal{O}_1と0∈m0\in\mathfrak{m}の開近傍O2\mathcal{O}_2を、O1×O2⊆O0\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2\subseteq\mathcal{O}_0かつO2⊆{y∈m∣∥y∥<ε}\mathcal{O}_2\subseteq\{y\in\mathfrak{m}\mid\lVert y\rVert<\varepsilon\}となるように取ることができる。W0=Φ(O1×O2)W_0=\Phi(\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2)と置く。O1×O2\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2はO0\mathcal{O}_0の開集合でありΦ∣O0\Phi|_{\mathcal{O}_0}は微分同相であるから、W0W_0はGGの開集合でありΦ ⁣:O1×O2→W0\Phi\colon\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2\to W_0は微分同相である。e=Φ(0,0)∈W0e=\Phi(0,0)\in W_0である。

W0∩HW_0\cap Hを決定する。

W0∩H=Φ(O1×{0})=exp⁡(O1)W_0\cap H=\Phi\bigl(\mathcal{O}_1\times\{0\}\bigr)=\exp(\mathcal{O}_1)

を示す。x∈O1⊆hx\in\mathcal{O}_1\subseteq\mathfrak{h}とすると、定義 3.1によりexp⁡(x)=exp⁡(1⋅x)∈H\exp(x)=\exp(1\cdot x)\in Hであり、Φ(x,0)=exp⁡(x)exp⁡(0)=exp⁡(x)\Phi(x,0)=\exp(x)\exp(0)=\exp(x)であるから右辺は左辺に含まれる。逆にΦ(x,y)∈H\Phi(x,y)\in H(x∈O1x\in\mathcal{O}_1、y∈O2y\in\mathcal{O}_2)とする。exp⁡(x)∈H\exp(x)\in HでありHHは部分群であるから

exp⁡(y)=exp⁡(x)−1(exp⁡(x)exp⁡(y))=exp⁡(x)−1Φ(x,y)∈H\exp(y)=\exp(x)^{-1}\bigl(\exp(x)\exp(y)\bigr)=\exp(x)^{-1}\Phi(x,y)\in H

である。y∈O2⊆my\in\mathcal{O}_2\subseteq\mathfrak{m}かつ∥y∥<ε\lVert y\rVert<\varepsilonであるから、命題 3.4によりy=0y=0でなければならない。よって左辺は右辺に含まれる。

スライスチャートを作る。h\mathfrak{h}の基底とm\mathfrak{m}の基底を合わせてh×m\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}の線形座標λ ⁣:h×m→Rk×Rn−k=Rn\lambda\colon\mathfrak{h}\times\mathfrak{m}\to\mathbb{R}^{k}\times\mathbb{R}^{n-k}=\mathbb{R}^{n}を取り、λ(h×{0})=Rk×{0}\lambda(\mathfrak{h}\times\{0\})=\mathbb{R}^{k}\times\{0\}となるようにする。

φ0=λ∘(Φ∣O1×O2)−1 ⁣:W0⟶λ(O1×O2)\varphi_0=\lambda\circ\bigl(\Phi|_{\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2}\bigr)^{-1}\colon W_0\longrightarrow\lambda(\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2)

と定める。φ0\varphi_0は微分同相の合成として微分同相であり、とくに同相写像であって像はRn\mathbb{R}^{n}の開集合であるから、(W0,φ0)(W_0,\varphi_0)はGGのチャートである。GGの可微分構造に属することは、GGの任意のチャート(U,ψ)(U,\psi)に対して座標変換ψ∘φ0−1\psi\circ\varphi_0^{-1}とその逆がC∞C^\infty写像の合成であることによる(§E17.1 系 7.2と§E17.1 系 4.3)。

上で決定したW0∩H=Φ(O1×{0})W_0\cap H=\Phi(\mathcal{O}_1\times\{0\})により

φ0(W0∩H)=λ(O1×{0})=λ(O1×O2)∩(Rk×{0})=φ0(W0)∩(Rk×{0})\varphi_0(W_0\cap H)=\lambda\bigl(\mathcal{O}_1\times\{0\}\bigr) =\lambda(\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2)\cap\bigl(\mathbb{R}^{k}\times\{0\}\bigr) =\varphi_0(W_0)\cap\bigl(\mathbb{R}^{k}\times\{0\}\bigr)

である。ここで第二の等号は、λ(O1×O2)=λ1(O1)×λ2(O2)\lambda(\mathcal{O}_1\times\mathcal{O}_2)=\lambda_1(\mathcal{O}_1)\times\lambda_2(\mathcal{O}_2)であり0∈λ2(O2)0\in\lambda_2(\mathcal{O}_2)であることによる(λ1\lambda_1、λ2\lambda_2はそれぞれの因子の線形座標である)。

全体へ広げる。(W0,φ0)(W_0,\varphi_0)は§E17.19 命題 3.3 (3)の仮定を満たす。よってHHはGGのkk次元埋め込み部分多様体である。§E17.19 命題 4.2により、HHは§E17.5 命題 4.2が与える可微分構造のもとで Lie 群である。

接空間を求める。HHの単位元における接空間は、スライスチャートの構成によりdΦ(0,0)(h×{0})=hd\Phi_{(0,0)}(\mathfrak{h}\times\{0\})=\mathfrak{h}である。次元はk=dim⁡hk=\dim\mathfrak{h}である。▨

系 3.6.定理 3.5のHHについて、HHの Lie 環はh\mathfrak{h}であり、その括弧積はg\mathfrak{g}の括弧積の制限である。

証明.定理 3.5によりTeH=hT_eH=\mathfrak{h}である。包含写像ι ⁣:H→G\iota\colon H\to Gは埋め込みであるから、§E17.20 定理 3.3 (2)の証明と同じ議論、すなわちHHの左不変ベクトル場とGGの左不変ベクトル場がι\iotaに関して関連することと§E17.7 定理 2.6により、HHの Lie 環の括弧積はg\mathfrak{g}の括弧積のh\mathfrak{h}への制限である。命題 3.2によりh\mathfrak{h}はこの括弧積で閉じている。▨

4 閉であるという仮定を外すことができないこと

補題 4.1.S1={z∈C∣∣z∣=1}S^{1}=\{z\in\mathbb{C}\mid\lvert z\rvert=1\}に§E17.1 命題 5.1のn=1n=1の場合の可微分構造を与え、複素数の積を演算とする。このときS1S^{1}は 1 次元 Lie 群である。したがってT2=S1×S1T^{2}=S^{1}\times S^{1}(§E17.1 例 7.4)は 2 次元 Lie 群である。

証明.S1S^{1}が複素数の積について群であることは、∣zw∣=∣z∣∣w∣\lvert zw\rvert=\lvert z\rvert\lvert w\rvertと∣z−1∣=∣z∣−1\lvert z^{-1}\rvert=\lvert z\rvert^{-1}による。単位元は11である。

E ⁣:R→S1E\colon\mathbb{R}\to S^{1}、E(u)=(cos⁡2πu,sin⁡2πu)E(u)=(\cos2\pi u,\sin2\pi u)とする。複素数として書くとE(u)=cos⁡2πu+isin⁡2πuE(u)=\cos2\pi u+i\sin2\pi uであり、加法定理によりE(u)E(v)=E(u+v)E(u)E(v)=E(u+v)が成り立つ。§E17.5 補題 2.3により、EEはC∞C^\inftyであり、至るところ局所微分同相である。全射性と、E(u)=E(v)E(u)=E(v)であることとu−v∈Zu-v\in\mathbb{Z}であることの同値性は§E17.9 補題 4.1による。

積の写像m ⁣:S1×S1→S1m\colon S^{1}\times S^{1}\to S^{1}のC∞C^\infty性を示す。(z0,w0)∈S1×S1(z_0,w_0)\in S^{1}\times S^{1}を取り、E(u0)=z0E(u_0)=z_0、E(v0)=w0E(v_0)=w_0を満たすu0,v0u_0,v_0を取る。EEは局所微分同相であるから、u0u_0の開近傍IIとv0v_0の開近傍JJ、およびu0+v0u_0+v_0の開近傍KKを、E∣IE|_I、E∣JE|_J、E∣KE|_Kがそれぞれ像への微分同相でありI+J⊆KI+J\subseteq Kとなるように取ることができる(II、JJを十分小さい開区間に取ればよい)。σI=(E∣I)−1\sigma_I=(E|_I)^{-1}などと書くと、E(I)×E(J)E(I)\times E(J)の上で

m(z,w)=E(σI(z)+σJ(w))m(z,w)=E\bigl(\sigma_I(z)+\sigma_J(w)\bigr)

である。実際、z=E(u)z=E(u)、w=E(v)w=E(v)(u∈Iu\in I、v∈Jv\in J)に対して右辺はE(u+v)=E(u)E(v)=zwE(u+v)=E(u)E(v)=zwである。右辺はC∞C^\infty写像の合成であるからC∞C^\inftyである。E(I)×E(J)E(I)\times E(J)は(z0,w0)(z_0,w_0)の開近傍であるから、§E17.1 命題 4.2によりmmはC∞C^\inftyである。

逆元の写像ν(z)=z−1\nu(z)=z^{-1}についても、E(I)E(I)の上でν(z)=E(−σI(z))\nu(z)=E\bigl(-\sigma_I(z)\bigr)であり、同じ理由でC∞C^\inftyである。よってS1S^{1}は Lie 群である。

T2=S1×S1T^{2}=S^{1}\times S^{1}については、積を成分ごとに取ると群になる。積の写像は

T2×T2→T2,((z1,z2),(w1,w2))⟼(z1w1, z2w2)T^{2}\times T^{2}\to T^{2},\qquad \bigl((z_1,z_2),(w_1,w_2)\bigr)\longmapsto(z_1w_1,\ z_2w_2)

である。§E17.1 命題 7.3の積のチャートに関する座標表示は、S1S^{1}の積の座標表示を二つ並べたものに、座標の順序を入れ替える線形同相を合成したものであるからC∞C^\inftyである。逆元の写像も同様である。よってT2T^{2}は 2 次元 Lie 群である。▨

定理 4.2.α\alphaを無理数とし、e(s)=(cos⁡2πs,sin⁡2πs)∈S1e(s)=(\cos2\pi s,\sin2\pi s)\in S^{1}と書く。

F ⁣:R→T2,F(t)=(e(t), e(αt))F\colon\mathbb{R}\to T^{2},\qquad F(t)=\bigl(e(t),\ e(\alpha t)\bigr)

とし、H=F(R)H=F(\mathbb{R})と置く。このとき次が成り立つ。

  1. FFはT2T^{2}の1パラメータ部分群(§E17.21 定義 2.1)であり、HHはT2T^{2}の部分群である。
  2. HHはT2T^{2}で稠密であり、H≠T2H\ne T^{2}である。とくにHHはT2T^{2}の閉集合ではない。
  3. HHはT2T^{2}の埋め込み部分多様体ではない。

したがって、定理 3.5から「閉じている」という仮定を落とすことはできない。

証明.(1)を示す。§E17.5 例 2.4によりFFはC∞C^\infty写像である。e(s)e(t)=e(s+t)e(s)e(t)=e(s+t)(補題 4.1の証明の加法定理による)であるから

F(s)F(t)=(e(s)e(t), e(αs)e(αt))=(e(s+t), e(α(s+t)))=F(s+t)F(s)F(t)=\bigl(e(s)e(t),\ e(\alpha s)e(\alpha t)\bigr)=\bigl(e(s+t),\ e(\alpha(s+t))\bigr)=F(s+t)

である。よってFFは§E17.21 定義 2.1の意味で1パラメータ部分群であり、群準同型の像であるHHはT2T^{2}の部分群である。

(2)を示す。稠密性は§E17.5 例 2.4による。H≠T2H\ne T^{2}を示す。A={αm+l∣m,l∈Z}A=\{\alpha m+l\mid m,l\in\mathbb{Z}\}と置くとAAは可算集合である。β∈R∖A\beta\in\mathbb{R}\setminus Aを取る(R\mathbb{R}は可算でないので、そのようなβ\betaが存在する)。q=(e(0),e(β))∈T2q=(e(0),e(\beta))\in T^{2}とする。F(t)=qF(t)=qとなるttが存在するとすると、e(t)=e(0)e(t)=e(0)からt∈Zt\in\mathbb{Z}であり、e(αt)=e(β)e(\alpha t)=e(\beta)からαt−β∈Z\alpha t-\beta\in\mathbb{Z}である。t=m∈Zt=m\in\mathbb{Z}、αm−β=−l∈Z\alpha m-\beta=-l\in\mathbb{Z}と書くとβ=αm+l∈A\beta=\alpha m+l\in Aとなり、β\betaのとり方に反する。よってq∉Hq\notin HでありH≠T2H\ne T^{2}である。

HHが閉集合であるとすると、HHの閉包はHH自身であり、稠密性からH=T2H=T^{2}となって矛盾する。よってHHは閉集合でない。

(3)を示す。HHがT2T^{2}のkk次元埋め込み部分多様体であると仮定する。0≤k≤20\le k\le2である。単位元(e(0),e(0))(e(0),e(0))におけるスライスチャート(U,φ)(U,\varphi)、すなわち

φ(U∩H)=φ(U)∩(Rk×{0})\varphi(U\cap H)=\varphi(U)\cap\bigl(\mathbb{R}^{k}\times\{0\}\bigr)

を満たすものを取る(§E17.5 定義 4.1)。

Rk×{0}\mathbb{R}^{k}\times\{0\}はR2\mathbb{R}^{2}の閉集合であるから、φ(U)∩(Rk×{0})\varphi(U)\cap(\mathbb{R}^{k}\times\{0\})はφ(U)\varphi(U)の閉集合である。φ\varphiは同相写像であるからU∩HU\cap HはUUの閉集合である。

HHはT2T^{2}で稠密であるから、UUの空でない任意の開集合はHHと交わる。すなわちU∩HU\cap HはUUで稠密である。UUの閉集合であってUUで稠密であるものはUUに等しい。よってU⊆HU\subseteq Hである。

UUは単位元を含むT2T^{2}の開集合であるから、HHは単位元の開近傍を含む。HHは部分群であるから、h∈Hh\in Hに対してhU⊆HhU\subseteq Hであり、hUhUは開集合である(§E17.19 命題 3.3 (1))。したがってH=⋃h∈HhUH=\bigcup_{h\in H}hUは開集合である。

開部分群は閉集合である。実際、T2∖H=⋃g∉HgHT^{2}\setminus H=\bigcup_{g\notin H}gHであり、各gH=Lg(H)gH=L_g(H)は開集合の微分同相による像であるから開集合である。よってHHは閉集合であり、(2)に反する。

したがってHHは埋め込み部分多様体ではない。▨

注意 4.3 (はめ込み部分多様体にはなる).§E17.5 例 2.4によりFFは単射なはめ込みであるから、H=F(R)H=F(\mathbb{R})には§E17.5 定義 4.4の意味ではめ込み部分多様体の構造が入る。その位相はT2T^{2}からの部分空間位相と一致しない。すなわち、閉であるという仮定を外すと、部分群は埋め込み部分多様体ではなくなるが、はめ込み部分多様体としては残る。閉部分群定理が主張するのは、閉であるという仮定のもとでは部分空間位相のままで多様体になるという点である。

5 古典行列群への適用

定理 5.1.nnを正の整数とする。次の各集合はGLn(R)GL_n(\mathbb{R})またはGLn(C)GL_n(\mathbb{C})の閉じた部分群であり、したがって定理 3.5により埋め込み部分多様体であって Lie 群である。

O(n),SLn(R),U(n),Sp(2n,R).O(n),\qquad SL_n(\mathbb{R}),\qquad U(n),\qquad Sp(2n,\mathbb{R}).

証明. いずれについても、群であることは「Lie 群と古典行列群」で確かめた(§E7.1 命題 3.2、§E7.2 命題 2.2、§E17.19 定理 4.3、§E17.19 定理 4.9)。閉じていることを示す。

O(n)O(n)について。写像A↦ATAA\mapsto A^{\mathsf T}Aは成分の多項式であるからMn(R)M_n(\mathbb{R})からMn(R)M_n(\mathbb{R})への連続写像である。{I}\{I\}はMn(R)M_n(\mathbb{R})の閉集合であるから、その逆像{A∈Mn(R)∣ATA=I}\{A\in M_n(\mathbb{R})\mid A^{\mathsf T}A=I\}はMn(R)M_n(\mathbb{R})の閉集合である。O(n)⊆GLn(R)O(n)\subseteq GL_n(\mathbb{R})であるから、O(n)O(n)はGLn(R)GL_n(\mathbb{R})の相対位相についても閉集合である。

SLn(R)SL_n(\mathbb{R})について。det⁡\detは連続でありSLn(R)=det⁡−1({1})SL_n(\mathbb{R})=\det^{-1}(\{1\})であるから、SLn(R)SL_n(\mathbb{R})はMn(R)M_n(\mathbb{R})の閉集合であり、したがってGLn(R)GL_n(\mathbb{R})の閉集合である。

U(n)U(n)について。A↦A∗AA\mapsto A^{*}Aは、実部と虚部を成分と見ると多項式写像であるから連続であり、U(n)U(n)は{I}\{I\}の逆像としてMn(C)M_n(\mathbb{C})の閉集合、したがってGLn(C)GL_n(\mathbb{C})の閉集合である。

Sp(2n,R)Sp(2n,\mathbb{R})について。A↦ATJAA\mapsto A^{\mathsf T}JAは多項式写像であるから連続であり、Sp(2n,R)Sp(2n,\mathbb{R})は{J}\{J\}の逆像としてM2n(R)M_{2n}(\mathbb{R})の閉集合、したがってGL2n(R)GL_{2n}(\mathbb{R})の閉集合である。

GLn(R)GL_n(\mathbb{R})とGLn(C)GL_n(\mathbb{C})は§E17.19 命題 2.1により Lie 群であるから、定理 3.5を適用することができる。▨

注意 5.2 (二つの構成の対比). 「Lie 群と古典行列群」は、U(n)U(n)、SLn(R)SL_n(\mathbb{R})、Sp(2n,R)Sp(2n,\mathbb{R})を正則値の逆像として構成した。その構成は、群を定める写像FFを書き下し、微分dFAdF_Aの全射性を各群について個別に計算することを要した。一方定理 5.1は、連続写像による閉集合の逆像であることだけを確かめている。

二つの構成は与える情報が異なる。正則値による構成は、次元n2−dim⁡(値域)n^{2}-\dim(\text{値域})と、単位元における接空間がker⁡dFI\ker dF_Iであることを同時に与える(§E17.19 注意 4.11)。閉部分群定理による構成は、次元がdim⁡h\dim\mathfrak{h}であることを与えるが、h\mathfrak{h}を具体的に決定するにはさらに計算が要る。閉部分群定理の利点は、群を定める方程式を持たない部分群にも適用することができる点である。たとえば、Lie 群の準同型の核、および可換な部分集合の中心化群は、いずれも閉じた部分群であるから Lie 群である。

§E17.21 例 4.2で確かめたとおり、exp⁡\expの像は各古典行列群に含まれる。したがって、たとえばO(n)O(n)については{H∣HT+H=0}⊆h\{H\mid H^{\mathsf T}+H=0\}\subseteq\mathfrak{h}である。逆の包含は、ϱ(t)=etH\varrho(t)=e^{tH}がO(n)O(n)に留まるという条件をt=0t=0で微分することによって得られる。この照合を行うと、閉部分群定理が与えるh\mathfrak{h}が§E17.19 注意 4.11の接空間に一致することが分かる。

6 演習

問題 6.1 (閉部分群定理の確認). 次の各問に答えよ。

  1. 補題 1.2 (3)の証明を再現せよ。Ψ(u,−u)=0\Psi(u,-u)=0にuuの代わりにsusuを代入し、s→0+s\to0^{+}の極限を取る手順を書き、この操作を経ずにB(u,u)=0B(u,u)=0を主張することができない理由を述べよ。
  2. 補題 1.2 (4)の証明では、左不変ベクトル場の座標表示がX^v(u)=D2Ψ(u,0)[v]\hat X^{v}(u)=D_2\Psi(u,0)[v]であることを用いた。この等式を、t↦exp⁡(u)exp⁡(tv)t\mapsto\exp(u)\exp(tv)がXvX^{v}の積分曲線であることから導け。
  3. 定理 2.2において指数をm2m^{2}からmmに取り替えると、極限がeeになることを証明の最後の段に従って示せ。さらに、m3m^{3}に取り替えるとどうなるかを、剰余の評価∥η3(s)∥≤C12∣s∣3\lVert\eta_3(s)\rVert\le C_{12}\lvert s\rvert^{3}から論ぜよ。
  4. 補題 3.3の証明で、mkm_kをt/ckt/c_kを越えない最大の整数として取った。mkck→tm_kc_k\to tを導く不等式を書き下し、t<0t<0の場合にもこの議論が成り立つことを確かめよ。
  5. 命題 3.4の証明で、正規化Zk=wk/∥wk∥Z_k=w_k/\lVert w_k\rVertと部分列の抽出を行った。正規化を行わずにwkw_kそのものの部分列を取ると、何が得られないかを述べよ。
  6. 定理 3.5の証明で、W0∩H=exp⁡(O1)W_0\cap H=\exp(\mathcal{O}_1)を示す段の「⊆\subseteq」の向きを再現せよ。HHが部分群であることをどこで用いたかを明示せよ。
  7. 定理 4.2 (3)の証明では、U∩HU\cap HがUUの閉集合であることと、UUで稠密であることを組み合わせた。k=2k=2の場合にもこの議論がそのまま成り立つことを確かめよ。
  8. 定理 5.1の証明をSO(n)=O(n)∩SLn(R)SO(n)=O(n)\cap SL_n(\mathbb{R})について書き下し、SO(n)SO(n)がGLn(R)GL_n(\mathbb{R})の閉じた部分群であることを示せ。
解答 (演習の解答).
  1. Ψ(su,−su)=0\Psi(su,-su)=0に補題 1.2 (2)の展開を代入すると0=−s2B(u,u)+ρ(su,−su)0=-s^{2}B(u,u)+\rho(su,-su)である。∥ρ(su,−su)∥≤C0(2s∥u∥)3\lVert\rho(su,-su)\rVert\le C_0(2s\lVert u\rVert)^{3}であるからs2∥B(u,u)∥≤8C0s3∥u∥3s^{2}\lVert B(u,u)\rVert\le 8C_0s^{3}\lVert u\rVert^{3}であり、s2s^{2}で割ると∥B(u,u)∥≤8C0s∥u∥3\lVert B(u,u)\rVert\le 8C_0s\lVert u\rVert^{3}となる。左辺はssに依らず、右辺はs→0+s\to0^{+}で00へ収束するのでB(u,u)=0B(u,u)=0である。ssを導入せずにuuをそのまま用いると∥B(u,u)∥≤8C0∥u∥3\lVert B(u,u)\rVert\le 8C_0\lVert u\rVert^{3}が得られるだけであり、これは∥u∥\lVert u\rVertが小さいときの評価にすぎず、B(u,u)=0B(u,u)=0を与えない。BBがuuについて二次、剰余が三次であるという次数の差を、ssの冪を比較することによって取り出している。
  2. §E17.21 命題 3.2 (3)によりt↦exp⁡(tv)t\mapsto\exp(tv)はXvX^{v}の積分曲線でありt=0t=0でeeを取る。§E17.21 補題 1.1により、これを左移動Lexp⁡(u)L_{\exp(u)}で移したt↦exp⁡(u)exp⁡(tv)t\mapsto\exp(u)\exp(tv)もふたたびXvX^{v}の積分曲線であり、t=0t=0でexp⁡(u)\exp(u)を取る。したがってそのt=0t=0における速度ベクトルは(Xv)exp⁡(u)(X^{v})_{\exp(u)}である。チャートlog⁡\logで座標表示を取ると、速度ベクトルの座標成分はddt∣t=0log⁡(exp⁡(u)exp⁡(tv))=ddt∣t=0Ψ(u,tv)=D2Ψ(u,0)[v]\frac{d}{dt}\big|_{t=0}\log(\exp(u)\exp(tv))=\frac{d}{dt}\big|_{t=0}\Psi(u,tv)=D_2\Psi(u,0)[v]である。
  3. a3(1/m)=m−2[X,Y]+η3(1/m)a_3(1/m)=m^{-2}[X,Y]+\eta_3(1/m)であり∥η3(1/m)∥≤C12m−3\lVert\eta_3(1/m)\rVert\le C_{12}m^{-3}である。したがって∥m a3(1/m)∥≤m−1∥[X,Y]∥+C12m−2→0\lVert m\,a_3(1/m)\rVert\le m^{-1}\lVert[X,Y]\rVert+C_{12}m^{-2}\to0であり、exp⁡\expの連続性によりexp⁡(m a3(1/m))→exp⁡(0)=e\exp(m\,a_3(1/m))\to\exp(0)=eである。m3m^{3}に取り替えるとm3a3(1/m)=m[X,Y]+m3η3(1/m)m^{3}a_3(1/m)=m[X,Y]+m^{3}\eta_3(1/m)であり、第一項は∥[X,Y]∥≠0\lVert[X,Y]\rVert\ne0ならば発散し、第二項はC12C_{12}以下に留まるだけである。したがって収束は保証されず、極限が存在するとしてもexp⁡([X,Y])\exp([X,Y])にはならない。剰余の評価は三次までしか与えられていないので、m3m^{3}倍した剰余を制御することができない。
  4. mk≤t/ck<mk+1m_k\le t/c_k<m_k+1の各辺にck>0c_k>0を掛けるとmkck≤t<mkck+ckm_kc_k\le t<m_kc_k+c_kである。したがって0≤t−mkck<ck0\le t-m_kc_k<c_kであり、ck→0c_k\to0からmkck→tm_kc_k\to tである。t<0t<0のときも、t/ckt/c_kを越えない最大の整数は負の整数になるだけで、上の不等式はそのまま成り立つ。exp⁡(uk)mk\exp(u_k)^{m_k}はmk<0m_k<0のとき(exp⁡(uk)−1)−mk(\exp(u_k)^{-1})^{-m_k}を意味し、HHが部分群であることからこれもHHに属する。
  5. 正規化を行わない場合、wk→0w_k\to0であるから、部分列を取っても極限は00である。補題 3.3 条件 (c)は「uk/∥uk∥u_k/\lVert u_k\rVertが収束すること」であり、これはwkw_kの方向が定まることを要求している。正規化しなければ方向の情報が失われ、h\mathfrak{h}に属する00でない元を取り出すことができない。正規化した列は単位球面というコンパクト集合に値を取るので、部分列を取ることによって00でない極限の存在が保証される。
  6. Φ(x,y)=exp⁡(x)exp⁡(y)∈H\Phi(x,y)=\exp(x)\exp(y)\in H(x∈O1x\in\mathcal{O}_1、y∈O2y\in\mathcal{O}_2)とする。x∈hx\in\mathfrak{h}であるからexp⁡(x)∈H\exp(x)\in Hである。HHが部分群であることからexp⁡(x)−1∈H\exp(x)^{-1}\in Hであり、積について閉じているのでexp⁡(x)−1Φ(x,y)=exp⁡(y)∈H\exp(x)^{-1}\Phi(x,y)=\exp(y)\in Hである。ここでHHが部分群であることを、逆元の存在と積の閉性の二箇所で用いた。y∈my\in\mathfrak{m}かつ∥y∥<ε\lVert y\rVert<\varepsilonであるから命題 3.4によりy=0y=0であり、Φ(x,y)=exp⁡(x)∈exp⁡(O1)\Phi(x,y)=\exp(x)\in\exp(\mathcal{O}_1)である。
  7. k=2k=2のときR2×{0}=R2\mathbb{R}^{2}\times\{0\}=\mathbb{R}^{2}であるから、条件はφ(U∩H)=φ(U)\varphi(U\cap H)=\varphi(U)となりU∩H=UU\cap H=U、すなわちU⊆HU\subseteq Hである。これは証明の中間の結論そのものである。したがって、k=2k=2の場合は最初の二段を飛ばして直ちにU⊆HU\subseteq Hを得る。以後の段(HHが開集合であること、開部分群が閉集合であること、稠密性との矛盾)はkkに依らない。
  8. SO(n)=O(n)∩det⁡−1({1})SO(n)=O(n)\cap\det^{-1}(\{1\})である。O(n)O(n)は上で示したとおりGLn(R)GL_n(\mathbb{R})の閉集合であり、det⁡−1({1})\det^{-1}(\{1\})もdet⁡\detの連続性から閉集合である。二つの閉集合の交わりは閉集合であるからSO(n)SO(n)はGLn(R)GL_n(\mathbb{R})の閉集合である。部分群であることは§E7.2 命題 2.2による。よって定理 3.5によりSO(n)SO(n)は Lie 群である。

▨

7 境界と次

閉であるという条件の位置。定理 3.5の仮定は、HHがGGの位相で閉じていることである。これは代数的な条件ではなく位相的な条件であり、定理 4.2のとおり外すことができない。一方、HHが閉じているという条件だけで、HHの可微分構造も Lie 群としての構造も一意に定まる。

極限の意味。定理 2.1と定理 2.2の極限はGGの位相で取る。g\mathfrak{g}の側の収束は注意 1のノルムについて述べたが、g\mathfrak{g}が有限次元であるため、この収束は基底のとり方に依らない。二つの公式の証明は補題 1.2の二次までの展開だけを用いており、三次以上の項の形(Baker–Campbell–Hausdorff の公式)へは進まない。同公式は本単元の範囲外である。

得られる Lie 群の性質。本記事はHHが埋め込み部分多様体であり Lie 群であることを示した。HHの連結性、連結成分の個数、および単連結被覆については何も主張しない。閉部分群による等質空間G/HG/Hの構成、Lie 対応、随伴表現および単連結被覆群は「Lie 群論」が扱う。

次の記事。「離散群の固有不連続な作用と商多様体」は、群の作用によって多様体から新しい多様体を作る操作を扱う。本記事が扱ったのは Lie 群の内部の部分群であり、次の記事が扱うのは離散群が多様体へ作用する場合である。両者はいずれも群の構造から多様体の構造を得る手続きであるが、道具は異なる。次の記事が用いるのは商位相と、作用が微分同相によるものであるという仮定である。

参考文献

  1. John M. Lee, Introduction to Smooth Manifolds, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 218, Springer, New York, 2013.閉部分群定理の証明の組み立て、とくに補空間の側で単位元へ収束する列を取り扱う段を参考にした。
  2. J. J. Duistermaat and J. A. C. Kolk, Lie Groups, Universitext, Springer, Berlin, 2000.指数写像による座標での群の積の二次までの展開と、Lie 積公式および交換子の極限公式の導出を参考にした。
  3. Anthony W. Knapp, Lie Groups Beyond an Introduction, 2nd ed., Progress in Mathematics 140, Birkhäuser, 2002.閉部分群から定まる部分 Lie 環の記述と、古典行列群への適用を参考にした。

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