§E17.4接束・余接束とテンソル場

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「接空間と微分写像」は各点ppに線形空間TpMT_pMを対応させた。しかし、多様体の上でベクトル場を扱うには、点が動くときに接ベクトルが滑らかに変化するという条件を書く必要がある。そのためには、接空間を各点で束ねた集合そのものに多様体の構造を与え、ベクトル場をその中への滑らかな写像として定義しなければならない。

本記事は、最初に、接ベクトルを座標成分とその変換則によって記述する流儀を与える。この変換則が、そのまま接空間を束ねた集合の座標変換になる。次に、集合とその上のチャートの族から多様体を構成する補題を証明し、それを接束、余接束、テンソル束および外冪束へ個別に適用する。続いてベクトル場とテンソル場を切断として定義し、座標表示を与えて、ベクトル場とC∞(M)C^\infty(M)上の導分が一対一に対応することを示す。最後に、共変テンソル場が任意の滑らかな写像で引き戻すことができることを示し、ベクトル場については微分同相による標準的な押し出しを定義する。一般の滑らかな写像F ⁣:M→NF\colon M\to Nと始域上の場XXについて、すべてのp∈Mp\in MでYF(p)=dFp(Xp)Y_{F(p)}=dF_p(X_p)を満たす終域上の場の存在、一意性および滑らかさを、四つの例で区別する。

本記事はベクトル束の一般論を立てない。接束、余接束、テンソル束および外冪束は、多様体に付随する具体的な対象として個別に構成する。ベクトル束と主束の一般論、接続および曲率形式は「ベクトル束と接続」が扱う。

以下、MMをnn次元C∞C^\infty多様体とする。n=0n=0の場合、MMは離散空間であり各接空間は零空間であるから、本記事で構成する四つの束はいずれもMM自身と同一視される00次元多様体になり、以下の主張はすべて自明に成り立つ。そこで以後n≥1n\ge 1とする。総和規約は用いず、和は∑i=1n\sum_{i=1}^{n}の形で明示する。双対空間、多重線形写像および外冪については「線形代数 II」が定めた形で用い、Rn\mathbb{R}^nの開集合の上の微分については「実解析 II」が定めた形で用いる。

1 座標成分の変換則

定義 1.1.p∈Mp\in Mとする。ppを含むチャート(Uα,φα)(U_\alpha,\varphi_\alpha)とa∈Rna\in\mathbb{R}^nの組(α,a)(\alpha,a)の全体を考える。二つの組(α,a)(\alpha,a)、(β,b)(\beta,b)が同値 (equivalent coordinate components) であるとは

b=D(φβ∘φα−1)(φα(p)) ab=D\bigl(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr)\,a

が成り立つことをいう。ここで右辺は Jacobi 行列とベクトルの積である。

補題 1.2.定義 1.1の関係は、組(α,a)(\alpha,a)の全体の上の同値関係である。

証明.p∈Uα∩Uβ∩Uγp\in U_\alpha\cap U_\beta\cap U_\gammaとする。§E4.3 定理 1.1を合成(φγ∘φβ−1)∘(φβ∘φα−1)=φγ∘φα−1(\varphi_\gamma\circ\varphi_\beta^{-1})\circ(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1})=\varphi_\gamma\circ\varphi_\alpha^{-1}へ適用すると

D(φγ∘φβ−1)(φβ(p)) D(φβ∘φα−1)(φα(p))=D(φγ∘φα−1)(φα(p))(∗)D\bigl(\varphi_\gamma\circ\varphi_\beta^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\beta(p)\bigr)\, D\bigl(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr) =D\bigl(\varphi_\gamma\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr) \tag{$*$}

を得る。

反射律は、φα∘φα−1\varphi_\alpha\circ\varphi_\alpha^{-1}が恒等写像であり、その Jacobi 行列が単位行列であることから従う。

対称律を示す。(∗)(*)でγ=α\gamma=\alphaと取ると、右辺は単位行列であるから

D(φα∘φβ−1)(φβ(p))=D(φβ∘φα−1)(φα(p))−1D\bigl(\varphi_\alpha\circ\varphi_\beta^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\beta(p)\bigr) =D\bigl(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr)^{-1}

である。b=D(φβ∘φα−1)(φα(p)) ab=D(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1})(\varphi_\alpha(p))\,aの両辺に左からこの逆行列を掛けるとa=D(φα∘φβ−1)(φβ(p)) ba=D(\varphi_\alpha\circ\varphi_\beta^{-1})(\varphi_\beta(p))\,bを得る。

推移律は、b=D(φβ∘φα−1)(φα(p)) ab=D(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1})(\varphi_\alpha(p))\,aとc=D(φγ∘φβ−1)(φβ(p)) bc=D(\varphi_\gamma\circ\varphi_\beta^{-1})(\varphi_\beta(p))\,bを合わせ、(∗)(*)を用いることから従う。▨

命題 1.3.p∈Mp\in Mとする。定義 1.1の組(α,a)(\alpha,a)に対して

v(α,a)=∑i=1nai ∂∂xαi∣p∈TpMv_{(\alpha,a)}=\sum_{i=1}^{n}a^{i}\,\frac{\partial}{\partial x_\alpha^{i}}\Big|_p\in T_pM

と定める。ここでxα1,…,xαnx_\alpha^1,\dots,x_\alpha^nはφα\varphi_\alphaの成分である。この対応は同値類の上で定まり、同値類の全体からTpMT_pMへの全単射を与える。

証明では、二つのチャートが定める座標基底のあいだの関係式を先に求める。この関係式は本記事の以後の計算でも繰り返し用いる。

証明. 最初に、p∈Uα∩Uβp\in U_\alpha\cap U_\betaに対して

∂∂xαi∣p=∑j=1nA ij ∂∂xβj∣p,A ij=∂i(φβ∘φα−1)j(φα(p))\frac{\partial}{\partial x_\alpha^{i}}\Big|_p=\sum_{j=1}^{n}A^{j}_{\ i}\,\frac{\partial}{\partial x_\beta^{j}}\Big|_p, \qquad A^{j}_{\ i}=\partial_i\bigl(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)^{j}\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr)

が成り立つことを示す。§E17.3 定理 3.3により、TpMT_pMの元は座標関数への値で決まる。左辺をxβkx_\beta^{k}に適用すると

∂∂xαi∣p(xβk)=∂i(xβk∘φα−1)(φα(p))=∂i(φβ∘φα−1)k(φα(p))=A ik\frac{\partial}{\partial x_\alpha^{i}}\Big|_p\bigl(x_\beta^{k}\bigr) =\partial_i\bigl(x_\beta^{k}\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr) =\partial_i\bigl(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1}\bigr)^{k}\bigl(\varphi_\alpha(p)\bigr)=A^{k}_{\ i}

であり、右辺をxβkx_\beta^kに適用すると∑j=1nA ijδj k=A ik\sum_{j=1}^{n}A^j_{\ i}\delta_j^{\,k}=A^{k}_{\ i}である。よって両辺は等しい。

同値類の上で定まることを示す。(α,a)∼(β,b)(\alpha,a)\sim(\beta,b)、すなわちbj=∑i=1nA ijaib^{j}=\sum_{i=1}^{n}A^{j}_{\ i}a^{i}とする。上の関係式により

v(α,a)=∑i=1nai∑j=1nA ij∂∂xβj∣p=∑j=1n(∑i=1nA ijai)∂∂xβj∣p=∑j=1nbj∂∂xβj∣p=v(β,b)v_{(\alpha,a)}=\sum_{i=1}^{n}a^{i}\sum_{j=1}^{n}A^{j}_{\ i}\frac{\partial}{\partial x_\beta^{j}}\Big|_p =\sum_{j=1}^{n}\Bigl(\sum_{i=1}^{n}A^{j}_{\ i}a^{i}\Bigr)\frac{\partial}{\partial x_\beta^{j}}\Big|_p =\sum_{j=1}^{n}b^{j}\frac{\partial}{\partial x_\beta^{j}}\Big|_p=v_{(\beta,b)}

である。

全射性は§E17.3 定理 3.3による。任意のv∈TpMv\in T_pMは一つのチャートの座標基底で展開することができる。

単射性を示す。v(α,a)=v(α′,a′)v_{(\alpha,a)}=v_{(\alpha',a')}とする。v(α′,a′)v_{(\alpha',a')}をφα\varphi_\alphaの座標基底で展開すると、上の関係式により第ii成分は∑k=1nD(φα∘φα′−1) ki a′k\sum_{k=1}^{n}D(\varphi_\alpha\circ\varphi_{\alpha'}^{-1})^{i}_{\ k}\,a'^{k}である。§E17.3 定理 3.3の一次独立性により、この値はaia^{i}に等しい。よって(α′,a′)∼(α,a)(\alpha',a')\sim(\alpha,a)である。▨

例 1.4 (平面の極座標における変換則).U={(x,y)∈R2∣x>0}U=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x>0\}とし、R2\mathbb{R}^2の開部分多様体と見る。UUの上に二つのチャートを取る。一つは包含写像が定める直交座標のチャート(U,φc)(U,\varphi_{\mathrm{c}})、φc(x,y)=(x,y)\varphi_{\mathrm{c}}(x,y)=(x,y)である。もう一つは極座標のチャート(U,φp)(U,\varphi_{\mathrm{p}})であり、

φp(x,y)=(x2+y2, arctan⁡(y/x))∈(0,∞)×(−π/2,π/2)\varphi_{\mathrm{p}}(x,y)=\Bigl(\sqrt{x^{2}+y^{2}},\ \arctan(y/x)\Bigr)\in(0,\infty)\times(-\pi/2,\pi/2)

で定める。逆写像は(r,θ)↦(rcos⁡θ, rsin⁡θ)(r,\theta)\mapsto(r\cos\theta,\ r\sin\theta)である。両者はともに同相写像であり、座標変換

σ(r,θ)=φc∘φp−1(r,θ)=(rcos⁡θ, rsin⁡θ)\sigma(r,\theta)=\varphi_{\mathrm{c}}\circ\varphi_{\mathrm{p}}^{-1}(r,\theta)=(r\cos\theta,\ r\sin\theta)

とその逆写像はいずれもC∞C^\inftyであるから、二つのチャートは両立する。Jacobi 行列は

Dσ(r,θ)=(cos⁡θ−rsin⁡θsin⁡θrcos⁡θ)D\sigma(r,\theta)=\begin{pmatrix}\cos\theta&-r\sin\theta\\[2pt] \sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix}

であり、行列式はrcos⁡2θ+rsin⁡2θ=rr\cos^{2}\theta+r\sin^{2}\theta=rである。r>0r>0であるから可逆である。

定義 1.1の変換則により、極座標側の成分a=(1,0)a=(1,0)は直交座標側でb=(cos⁡θ,sin⁡θ)b=(\cos\theta,\sin\theta)へ、a=(0,1)a=(0,1)はb=(−rsin⁡θ, rcos⁡θ)b=(-r\sin\theta,\ r\cos\theta)へ移る。一方、命題 1.3の証明で示した座標基底の関係式は

∂∂r∣p=cos⁡θ ∂∂x∣p+sin⁡θ ∂∂y∣p,∂∂θ∣p=−rsin⁡θ ∂∂x∣p+rcos⁡θ ∂∂y∣p\frac{\partial}{\partial r}\Big|_p=\cos\theta\,\frac{\partial}{\partial x}\Big|_p+\sin\theta\,\frac{\partial}{\partial y}\Big|_p, \qquad \frac{\partial}{\partial\theta}\Big|_p=-r\sin\theta\,\frac{\partial}{\partial x}\Big|_p+r\cos\theta\,\frac{\partial}{\partial y}\Big|_p

を与える。これは連鎖律による直接の計算と一致する。実際、ffをUU上のC∞C^\infty関数とすると

∂∂r(f∘σ)(r,θ)=cos⁡θ (∂1f)(σ(r,θ))+sin⁡θ (∂2f)(σ(r,θ))\frac{\partial}{\partial r}\bigl(f\circ\sigma\bigr)(r,\theta) =\cos\theta\,(\partial_1f)(\sigma(r,\theta))+\sin\theta\,(\partial_2f)(\sigma(r,\theta))

であり、θ\thetaについても同様に−rsin⁡θ ∂1f+rcos⁡θ ∂2f-r\sin\theta\,\partial_1f+r\cos\theta\,\partial_2fとなる。したがって、成分の変換則と座標基底の変換は同じ内容を表している。

2 集合から多様体を構成する補題

接束を作るには、集合として∐pTpM\coprod_pT_pMを用意し、そこにチャートを与えて位相と可微分構造を定める。以後、同じ手続きを余接束、テンソル束、外冪束に対して繰り返すので、必要な条件を一度にまとめておく。

補題 2.1.XXを集合、mmを正の整数とし、高々可算な添字集合AAと、部分集合Va⊆XV_a\subseteq Xおよび単射ηa ⁣:Va→Rm\eta_a\colon V_a\to\mathbb{R}^{m}の族{(Va,ηa)}a∈A\{(V_a,\eta_a)\}_{a\in A}が次の五つを満たすとする。

  1. 各aaについてηa(Va)\eta_a(V_a)はRm\mathbb{R}^mの開集合である。
  2. 各a,ba,bについてηa(Va∩Vb)\eta_a(V_a\cap V_b)はRm\mathbb{R}^mの開集合である。
  3. Va∩Vb≠∅V_a\cap V_b\ne\varnothingを満たす各a,ba,bについて、ηb∘ηa−1 ⁣:ηa(Va∩Vb)→ηb(Va∩Vb)\eta_b\circ\eta_a^{-1}\colon\eta_a(V_a\cap V_b)\to\eta_b(V_a\cap V_b)はC∞C^\infty級である。
  4. ⋃a∈AVa=X\bigcup_{a\in A}V_a=Xである。
  5. 相異なるx,y∈Xx,y\in Xに対して、x,yx,yをともに含むVaV_aが存在するか、またはx∈Vax\in V_a、y∈Vby\in V_b、Va∩Vb=∅V_a\cap V_b=\varnothingを満たすa,ba,bが存在する。

このとき、XXに位相がただ一つ存在して、各VaV_aが開集合であり各ηa\eta_aがVaV_aからηa(Va)\eta_a(V_a)への同相写像になる。この位相のもとでXXは Hausdorff かつ第二可算であり、{(Va,ηa)}a∈A\{(V_a,\eta_a)\}_{a\in A}はmm次元C∞C^\inftyアトラスである。したがってXXはmm次元C∞C^\infty多様体になる。

証明.

B={ηa−1(W) ∣ a∈A, W⊆ηa(Va) は Rm の開集合}\mathcal{B}=\bigl\{\eta_a^{-1}(W)\ \bigm|\ a\in A,\ W\subseteq\eta_a(V_a)\text{ は }\mathbb{R}^m\text{ の開集合}\bigr\}

と置く。条件 (d)によりB\mathcal{B}はXXを覆う(W=ηa(Va)W=\eta_a(V_a)と取る)。

B\mathcal{B}が基底の条件を満たすことを示す。x∈ηa−1(W)∩ηb−1(W′)x\in\eta_a^{-1}(W)\cap\eta_b^{-1}(W')とするとx∈Va∩Vbx\in V_a\cap V_bである。ηa\eta_aはVaV_aの上で単射であるから

Z=ηa(ηa−1(W)∩ηb−1(W′))=W∩ηa(Va∩Vb)∩(ηb∘ηa−1)−1(W′)Z=\eta_a\bigl(\eta_a^{-1}(W)\cap\eta_b^{-1}(W')\bigr) =W\cap\eta_a(V_a\cap V_b)\cap\bigl(\eta_b\circ\eta_a^{-1}\bigr)^{-1}(W')

であり、ηa−1(Z)=ηa−1(W)∩ηb−1(W′)\eta_a^{-1}(Z)=\eta_a^{-1}(W)\cap\eta_b^{-1}(W')である。条件 (b)によりηa(Va∩Vb)\eta_a(V_a\cap V_b)は開集合であり、条件 (c)によりηb∘ηa−1\eta_b\circ\eta_a^{-1}はその上で連続であるから(ηb∘ηa−1)−1(W′)(\eta_b\circ\eta_a^{-1})^{-1}(W')は開集合である。よってZZは開集合であり、ηa−1(Z)∈B\eta_a^{-1}(Z)\in\mathcal{B}がxxを含んで二つの元の共通部分に含まれる。したがってB\mathcal{B}はある位相の基底である。この位相をXXに与える。

各VaV_aはB\mathcal{B}の元であるから開集合である。ηa\eta_aが同相写像であることを示す。W⊆ηa(Va)W\subseteq\eta_a(V_a)が開集合ならばηa−1(W)∈B\eta_a^{-1}(W)\in\mathcal{B}は開集合であるからηa\eta_aは連続である。逆にO⊆VaO\subseteq V_aをXXの開集合とすると、OOはB\mathcal{B}の元の合併であり、上の計算により各ηa(ηb−1(W′)∩Va)\eta_a(\eta_b^{-1}(W')\cap V_a)は開集合であるからηa(O)\eta_a(O)は開集合である。よってηa\eta_aは開写像でもあり、同相写像である。

第二可算性を示す。AAは高々可算であり、各ηa(Va)⊆Rm\eta_a(V_a)\subseteq\mathbb{R}^mは第二可算であるから高々可算な基底{Wa,k}k\{W_{a,k}\}_kを持つ。{ηa−1(Wa,k)}a,k\{\eta_a^{-1}(W_{a,k})\}_{a,k}は高々可算な族であり、XXの基底である。実際、x∈Ox\in O(OOは開集合)とすると、x∈ηa−1(W)⊆Ox\in\eta_a^{-1}(W)\subseteq Oを満たすB\mathcal{B}の元が存在し、ηa(x)∈Wa,k⊆W\eta_a(x)\in W_{a,k}\subseteq Wを満たすkkが存在するのでx∈ηa−1(Wa,k)⊆Ox\in\eta_a^{-1}(W_{a,k})\subseteq Oである。

Hausdorff 性を示す。x≠yx\ne yとする。条件 (e)の前半の場合、x,y∈Vax,y\in V_aならばηa(x)≠ηa(y)\eta_a(x)\ne\eta_a(y)であるから、Rm\mathbb{R}^mの Hausdorff 性によりηa(Va)\eta_a(V_a)の中で交わらない開集合によって分離することができ、そのηa\eta_aによる逆像はXXの交わらない開集合である。条件 (e)の後半の場合、VaV_aとVbV_bが求める開集合である。

最後に、ηa\eta_aは同相写像であり条件 (c)により座標変換はC∞C^\inftyである。aaとbbを入れ替えて条件 (c)を用いれば逆向きの座標変換もC∞C^\inftyであるから、{(Va,ηa)}\{(V_a,\eta_a)\}はC∞C^\inftyアトラスである。

一意性を示す。O′\mathcal{O}'を、各VaV_aが開集合であり各ηa\eta_aが同相写像になるような位相とする。W⊆ηa(Va)W\subseteq\eta_a(V_a)が開集合ならばηa−1(W)\eta_a^{-1}(W)はVaV_aの開集合であり、VaV_aがO′\mathcal{O}'の開集合であるからηa−1(W)∈O′\eta_a^{-1}(W)\in\mathcal{O}'である。よってB⊆O′\mathcal{B}\subseteq\mathcal{O}'である。逆にO∈O′O\in\mathcal{O}'とすると、各aaについてO∩VaO\cap V_aはVaV_aの開集合であるからηa(O∩Va)\eta_a(O\cap V_a)は開集合でありO∩Va∈BO\cap V_a\in\mathcal{B}である。条件 (d)によりO=⋃a(O∩Va)O=\bigcup_a(O\cap V_a)であるから、OOはB\mathcal{B}の元の合併である。よってO′\mathcal{O}'はB\mathcal{B}が生成する位相に等しい。▨

補題 2.2.MMをnn次元C∞C^\infty多様体とする。MMの可微分構造に属するチャートの高々可算な族{(Ok,φk)}k∈K\{(O_k,\varphi_k)\}_{k\in K}であって、{Ok}k∈K\{O_k\}_{k\in K}がMMの位相の基底をなすものが存在する。

証明.MMは第二可算であるから高々可算な基底{Pl}l∈L\{P_l\}_{l\in L}を持つ。K={l∈L∣PlK=\{l\in L\mid P_lがあるチャートの定義域に含まれる}\}と置き、各l∈Kl\in Kに対してPl⊆UP_l\subseteq Uとなるチャート(U,φ)(U,\varphi)を一つ選び、Ol=PlO_l=P_l、φl=φ∣Pl\varphi_l=\varphi|_{P_l}と定める。チャートの開集合への制限は極大アトラスに属するので、(Ol,φl)(O_l,\varphi_l)はチャートである。

{Ol}l∈K\{O_l\}_{l\in K}が基底であることを示す。x∈Ox\in O(OOはMMの開集合)とする。xxを含むチャート(U,φ)(U,\varphi)を取るとU∩OU\cap Oはxxを含む開集合であるから、x∈Pl⊆U∩Ox\in P_l\subseteq U\cap Oを満たすl∈Ll\in Lが存在する。Pl⊆UP_l\subseteq Uであるからl∈Kl\in Kであり、x∈Ol⊆Ox\in O_l\subseteq Oである。▨

3 接束

定理 3.1.MMをnn次元C∞C^\infty多様体とし、集合として

TM={(p,v) ∣ p∈M, v∈TpM}TM=\bigl\{(p,v)\ \bigm|\ p\in M,\ v\in T_pM\bigr\}

と定め、π ⁣:TM→M\pi\colon TM\to Mをπ(p,v)=p\pi(p,v)=pで定める。MMの可微分構造に属するチャート(U,φ)(U,\varphi)に対して、φ\varphiの成分をx1,…,xnx^1,\dots,x^nと書き

φ~ ⁣:π−1(U)⟶φ(U)×Rn⊆R2n,φ~(p,v)=(φ(p), (v(x1),…,v(xn)))\tilde\varphi\colon\pi^{-1}(U)\longrightarrow\varphi(U)\times\mathbb{R}^n\subseteq\mathbb{R}^{2n}, \qquad \tilde\varphi(p,v)=\bigl(\varphi(p),\ (v(x^1),\dots,v(x^n))\bigr)

と定める。このときTMTMに位相と可微分構造がただ一つ存在して、各(π−1(U),φ~)(\pi^{-1}(U),\tilde\varphi)がチャートになる。この構造のもとでTMTMは2n2n次元C∞C^\infty多様体であり、Hausdorff かつ第二可算である。二つのチャート(U,φ)(U,\varphi)、(V,ψ)(V,\psi)に対する座標変換は

φ~∘ψ~−1(x,ξ)=(φ∘ψ−1(x), D(φ∘ψ−1)(x) ξ)\tilde\varphi\circ\tilde\psi^{-1}(x,\xi)=\Bigl(\varphi\circ\psi^{-1}(x),\ D\bigl(\varphi\circ\psi^{-1}\bigr)(x)\,\xi\Bigr)

でありC∞C^\infty級である。さらにπ\piは滑らかである。

証明.補題 2.2により、定義域がMMの位相の基底をなす高々可算なアトラス{(Ok,φk)}k∈K\{(O_k,\varphi_k)\}_{k\in K}を取る。Vk=π−1(Ok)V_k=\pi^{-1}(O_k)、ηk=φ~k\eta_k=\tilde\varphi_kと置き、補題 2.1の五つの条件を確かめる。

ηk\eta_kが単射であることを示す。ηk(p,v)=ηk(q,w)\eta_k(p,v)=\eta_k(q,w)とすると、最初のnn成分からφk(p)=φk(q)\varphi_k(p)=\varphi_k(q)でありφk\varphi_kは単射であるからp=qp=qである。残りのnn成分からv(xi)=w(xi)v(x^i)=w(x^i)がすべてのiiで成り立ち、§E17.3 定理 3.3によりv=wv=wである。

補題 2.1 条件 (a)を示す。ηk(Vk)=φk(Ok)×Rn\eta_k(V_k)=\varphi_k(O_k)\times\mathbb{R}^nである。実際、§E17.3 定理 3.3により、任意のx∈φk(Ok)x\in\varphi_k(O_k)とξ∈Rn\xi\in\mathbb{R}^nに対してv=∑i=1nξi∂/∂xi∣φk−1(x)v=\sum_{i=1}^{n}\xi^{i}\partial/\partial x^{i}|_{\varphi_k^{-1}(x)}と置けばηk(φk−1(x),v)=(x,ξ)\eta_k(\varphi_k^{-1}(x),v)=(x,\xi)である。これはR2n\mathbb{R}^{2n}の開集合である。

補題 2.1 条件 (b)を示す。Vk∩Vl=π−1(Ok∩Ol)V_k\cap V_l=\pi^{-1}(O_k\cap O_l)であるから、同じ計算によりηk(Vk∩Vl)=φk(Ok∩Ol)×Rn\eta_k(V_k\cap V_l)=\varphi_k(O_k\cap O_l)\times\mathbb{R}^nであり、これは開集合である。

補題 2.1 条件 (c)を示す。(x,ξ)∈φl(Ok∩Ol)×Rn(x,\xi)\in\varphi_l(O_k\cap O_l)\times\mathbb{R}^nを取り、p=φl−1(x)p=\varphi_l^{-1}(x)、v=∑j=1nξj∂/∂yj∣pv=\sum_{j=1}^{n}\xi^{j}\partial/\partial y^{j}|_pと置く。ここでy1,…,yny^1,\dots,y^nはφl\varphi_lの成分である。命題 1.3の証明で示した座標基底の関係式により

v(xi)=∑j=1nξj ∂j(φk∘φl−1)i(x)v(x^{i})=\sum_{j=1}^{n}\xi^{j}\,\partial_j\bigl(\varphi_k\circ\varphi_l^{-1}\bigr)^{i}(x)

である。したがって

ηk∘ηl−1(x,ξ)=(φk∘φl−1(x), D(φk∘φl−1)(x) ξ)\eta_k\circ\eta_l^{-1}(x,\xi)=\Bigl(\varphi_k\circ\varphi_l^{-1}(x),\ D\bigl(\varphi_k\circ\varphi_l^{-1}\bigr)(x)\,\xi\Bigr)

である。第一成分はC∞C^\infty写像であり、第二成分はC∞C^\infty関数を成分とする行列とξ\xiの積であるから、各成分はxxとξ\xiのC∞C^\infty関数である。よって座標変換はC∞C^\inftyである。

補題 2.1 条件 (d)は{Ok}\{O_k\}がMMを覆うことから従う。

補題 2.1 条件 (e)を示す。(p,v)≠(q,w)(p,v)\ne(q,w)とする。p=qp=qならば、ppを含むOkO_kを取れば両者はVkV_kに属する。p≠qp\ne qならば、MMは Hausdorff であるから交わらない開集合A∋pA\ni p、B∋qB\ni qが存在し、{Ok}\{O_k\}が基底であるからp∈Ok⊆Ap\in O_k\subseteq A、q∈Ol⊆Bq\in O_l\subseteq Bを満たすk,lk,lが存在する。Ok∩Ol=∅O_k\cap O_l=\varnothingであるからVk∩Vl=∅V_k\cap V_l=\varnothingである。

補題 2.1により、TMTMに位相と可微分構造がただ一つ定まり、TMTMは2n2n次元C∞C^\infty多様体であって Hausdorff かつ第二可算である。

一般のチャート(U,φ)(U,\varphi)について(π−1(U),φ~)(\pi^{-1}(U),\tilde\varphi)がこの可微分構造のチャートであることを示す。上と同じ計算により、φ~\tilde\varphiはπ−1(U)\pi^{-1}(U)からφ(U)×Rn\varphi(U)\times\mathbb{R}^nへの単射であり、各ηk\eta_kとの座標変換は上と同じ形をしていてC∞C^\inftyである。π−1(U)=⋃kπ−1(U∩Ok)\pi^{-1}(U)=\bigcup_{k}\pi^{-1}(U\cap O_k)は開集合であり、φ~\tilde\varphiは各π−1(U∩Ok)\pi^{-1}(U\cap O_k)の上で同相写像であるから全体でも同相写像である。よって(π−1(U),φ~)(\pi^{-1}(U),\tilde\varphi)は極大アトラスに属する。座標変換の式は上で計算したとおりである。

π\piの滑らかさを示す。チャート(π−1(U),φ~)(\pi^{-1}(U),\tilde\varphi)と(U,φ)(U,\varphi)に関するπ\piの座標表示はφ∘π∘φ~−1(x,ξ)=x\varphi\circ\pi\circ\tilde\varphi^{-1}(x,\xi)=xであり、これはC∞C^\inftyである。§E17.1 命題 4.2によりπ\piは滑らかである。▨

4 余接束・テンソル束・外冪束

定義 4.1.p∈Mp\in Mとする。TpMT_pMの双対空間(§E3.5 定義 1.1)

Tp∗M=(TpM)∨T_p^{*}M=(T_pM)^{\vee}

をppにおける余接空間 (cotangent space) という。チャート(U,φ)(U,\varphi)の座標基底{∂/∂xi∣p}\{\partial/\partial x^{i}|_p\}の双対基底(§E3.5 定理 1.2)を{dx1∣p,…,dxn∣p}\{dx^{1}|_p,\dots,dx^{n}|_p\}と書く。すなわちdxi∣p(∂/∂xj∣p)=δ jidx^{i}|_p\bigl(\partial/\partial x^{j}|_p\bigr)=\delta^{i}_{\ j}である。

非負整数r,sr,sに対して、(r,s)(r,s)型のテンソルの空間を

Tsr∣pM={ T ⁣:Tp∗M×⋯×Tp∗M⏟r×TpM×⋯×TpM⏟s→R ∣ T は多重線形写像 }T^{r}_{s}\big|_pM=\Bigl\{\,T\colon\underbrace{T_p^{*}M\times\cdots\times T_p^{*}M}_{r}\times\underbrace{T_pM\times\cdots\times T_pM}_{s}\to\mathbb{R}\ \Bigm|\ T\text{ は多重線形写像}\,\Bigr\}

と定める(§E3.10 定義 1.1)。rr個の引数が余接ベクトル、ss個の引数が接ベクトルであり、この順に書く。(r,s)=(0,0)(r,s)=(0,0)のときはR\mathbb{R}とし、(0,1)(0,1)型はTp∗MT_p^{*}Mに一致する。

正の整数kkに対して、Tp∗MT_p^{*}Mのkk次外冪(§E3.14 定義 1.1)

ΛkTp∗M=⋀k(Tp∗M)\Lambda^{k}T_p^{*}M=\bigwedge\nolimits^{k}\bigl(T_p^{*}M\bigr)

を考える。Λ0Tp∗M=R\Lambda^{0}T_p^{*}M=\mathbb{R}とする。

注意 4.2 (反変テンソルと二重双対).(1,0)(1,0)型のテンソルの空間は(Tp∗M)∨(T_p^{*}M)^{\vee}である。写像TpM→(Tp∗M)∨T_pM\to(T_p^{*}M)^{\vee}、v↦(ω↦ω(v))v\mapsto(\omega\mapsto\omega(v))は線形であり、v≠0v\ne 0ならばω(v)≠0\omega(v)\ne 0となるω\omegaが存在するので単射である(座標基底で展開して双対基底の一つを取ればよい)。§E3.5 定理 1.2によりdim⁡(Tp∗M)∨=dim⁡Tp∗M=dim⁡TpM=n\dim(T_p^{*}M)^{\vee}=\dim T_p^{*}M=\dim T_pM=nであるから、この写像は同型である。以後この同型によってTpMT_pMと(1,0)(1,0)型のテンソルの空間を同一視する。

補題 4.3.(U,φ)(U,\varphi)をチャート、p∈Up\in Uとする。添字j1,…,jr,i1,…,is∈{1,…,n}j_1,\dots,j_r,i_1,\dots,i_s\in\{1,\dots,n\}に対して

Ei1…isj1…jr(ω1,…,ωr,v1,…,vs)=∏k=1rωk(∂∂xjk∣p)⋅∏l=1sdxil∣p(vl)E^{j_1\dots j_r}_{i_1\dots i_s}(\omega_1,\dots,\omega_r,v_1,\dots,v_s) =\prod_{k=1}^{r}\omega_k\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{j_k}}\Big|_p\Bigr)\cdot\prod_{l=1}^{s}dx^{i_l}\big|_p(v_l)

と定めると、これらはTsr∣pMT^{r}_{s}|_pMの基底であり、dim⁡Tsr∣pM=nr+s\dim T^{r}_{s}|_pM=n^{r+s}である。T∈Tsr∣pMT\in T^{r}_{s}|_pMの成分を

Ti1…isj1…jr=T(dxj1∣p,…,dxjr∣p, ∂∂xi1∣p,…,∂∂xis∣p)T^{j_1\dots j_r}_{i_1\dots i_s}=T\Bigl(dx^{j_1}\big|_p,\dots,dx^{j_r}\big|_p,\ \frac{\partial}{\partial x^{i_1}}\Big|_p,\dots,\frac{\partial}{\partial x^{i_s}}\Big|_p\Bigr)

と定めると、TTはこの成分を係数とするEEの一次結合に等しい。

証明. 多重線形写像は、各引数を基底で展開することにより、基底の組における値で完全に決まる。Ei1…isj1…jrE^{j_1\dots j_r}_{i_1\dots i_s}を基底の組(dxa1∣p,…,dxar∣p,∂/∂xb1∣p,…,∂/∂xbs∣p)\bigl(dx^{a_1}|_p,\dots,dx^{a_r}|_p,\partial/\partial x^{b_1}|_p,\dots,\partial/\partial x^{b_s}|_p\bigr)で評価すると

∏k=1rδ jkak⋅∏l=1sδ blil\prod_{k=1}^{r}\delta^{a_k}_{\ j_k}\cdot\prod_{l=1}^{s}\delta^{i_l}_{\ b_l}

となる。これはak=jka_k=j_kかつbl=ilb_l=i_lのとき11、それ以外のとき00である。したがって、TTと∑Ti1…isj1…jrEi1…isj1…jr\sum T^{j_1\dots j_r}_{i_1\dots i_s}E^{j_1\dots j_r}_{i_1\dots i_s}は基底の組すべてで同じ値を取り、等しい。生成性が示された。一次結合が00ならば、基底の組で評価することによりすべての係数が00になるので一次独立である。基底の個数はnr+sn^{r+s}である。▨

定理 4.4.MMをnn次元C∞C^\infty多様体とする。集合として

T∗M={(p,ω)∣p∈M, ω∈Tp∗M},TsrM={(p,T)∣p∈M, T∈Tsr∣pM},ΛkT∗M={(p,ζ)∣p∈M, ζ∈ΛkTp∗M}T^{*}M=\bigl\{(p,\omega)\mid p\in M,\ \omega\in T_p^{*}M\bigr\}, \quad T^{r}_{s}M=\bigl\{(p,T)\mid p\in M,\ T\in T^{r}_{s}\big|_pM\bigr\}, \quad \Lambda^{k}T^{*}M=\bigl\{(p,\zeta)\mid p\in M,\ \zeta\in\Lambda^{k}T_p^{*}M\bigr\}

と定め、いずれにも第一成分への射影π\piを与える。チャート(U,φ)(U,\varphi)に対して、それぞれの元をその点の座標と、定義 4.1が定める基底に関する成分の組へ写す写像を取ると、補題 2.1の五条件が満たされる。したがって三つの集合はそれぞれ位相と可微分構造をただ一つ持ち、次元はそれぞれ2n2n、n+nr+sn+n^{r+s}、n+(nk)n+\binom{n}{k}のC∞C^\infty多様体になる。いずれも Hausdorff かつ第二可算であり、射影π\piは滑らかである。

証明の骨格は定理 3.1と同じである。異なるのは座標変換の第二成分の形だけであり、いずれの場合も、それがC∞C^\infty関数を係数とするξ\xiの一次式または多項式であることを確かめればよい。ここで用いるのは、座標変換の Jacobi 行列BBの成分がC∞C^\inftyであることと、その逆行列B−1B^{-1}の成分が Cramer の公式によりC∞C^\inftyであることである。

証明.(U,φ)(U,\varphi)、(V,ψ)(V,\psi)を二つのチャートとし、φ\varphiの成分をxix^i、ψ\psiの成分をyjy^jと書く。p∈U∩Vp\in U\cap Vに対して

A=D(ψ∘φ−1)(φ(p)),B=D(φ∘ψ−1)(ψ(p))A=D\bigl(\psi\circ\varphi^{-1}\bigr)\bigl(\varphi(p)\bigr), \qquad B=D\bigl(\varphi\circ\psi^{-1}\bigr)\bigl(\psi(p)\bigr)

と置く。§E4.3 定理 1.1によりAB=BA=IAB=BA=Iである。命題 1.3の証明の関係式は

∂∂xi∣p=∑j=1nA ij ∂∂yj∣p\frac{\partial}{\partial x^{i}}\Big|_p=\sum_{j=1}^{n}A^{j}_{\ i}\,\frac{\partial}{\partial y^{j}}\Big|_p

である。双対基底については、両辺をdyj∣pdy^{j}|_pで評価することにより

dyj∣p=∑i=1nA ij dxi∣pdy^{j}\big|_p=\sum_{i=1}^{n}A^{j}_{\ i}\,dx^{i}\big|_p

を得る。実際、右辺を∂/∂xk∣p\partial/\partial x^{k}|_pに適用するとA kjA^{j}_{\ k}であり、左辺を適用すると上の関係式から同じ値になる。BBを用いれば逆向きの関係

∂∂yj∣p=∑i=1nB ji ∂∂xi∣p,dxi∣p=∑j=1nB ji dyj∣p\frac{\partial}{\partial y^{j}}\Big|_p=\sum_{i=1}^{n}B^{i}_{\ j}\,\frac{\partial}{\partial x^{i}}\Big|_p, \qquad dx^{i}\big|_p=\sum_{j=1}^{n}B^{i}_{\ j}\,dy^{j}\big|_p

が成り立つ。

余接束。φ~∗(p,ω)=(φ(p),(ω(∂/∂x1∣p),…,ω(∂/∂xn∣p)))\tilde\varphi^{*}(p,\omega)=\bigl(\varphi(p),(\omega(\partial/\partial x^{1}|_p),\dots,\omega(\partial/\partial x^{n}|_p))\bigr)と定める。ω\omegaのψ\psi側の成分をζj=ω(∂/∂yj∣p)\zeta_j=\omega(\partial/\partial y^{j}|_p)とすると、上の関係式により

ω(∂∂xi∣p)=∑j=1nA ij ζj\omega\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{i}}\Big|_p\Bigr)=\sum_{j=1}^{n}A^{j}_{\ i}\,\zeta_j

である。したがって座標変換は

φ~∗∘(ψ~∗)−1(x,ζ)=(φ∘ψ−1(x), (B(x)−1)Tζ),B(x)=D(φ∘ψ−1)(x)\tilde\varphi^{*}\circ(\tilde\psi^{*})^{-1}(x,\zeta) =\Bigl(\varphi\circ\psi^{-1}(x),\ \bigl(B(x)^{-1}\bigr)^{\mathsf T}\zeta\Bigr), \qquad B(x)=D\bigl(\varphi\circ\psi^{-1}\bigr)(x)

である。BBの成分はxxのC∞C^\infty関数であり、det⁡B\det Bは消えないので、Cramer の公式によりB−1B^{-1}の成分もxxのC∞C^\infty関数である。よって座標変換はC∞C^\inftyである。

テンソル束。補題 4.3の成分を並べる写像を取る。TTのψ\psi側の成分をSa1…asb1…brS^{b_1\dots b_r}_{a_1\dots a_s}と書く。TTの定義に現れる引数へ、反変の側にはdxj∣p=∑b=1nB bj dyb∣pdx^{j}|_p=\sum_{b=1}^{n}B^{j}_{\ b}\,dy^{b}|_p、共変の側には∂/∂xi∣p=∑a=1nA ia ∂/∂ya∣p\partial/\partial x^{i}|_p=\sum_{a=1}^{n}A^{a}_{\ i}\,\partial/\partial y^{a}|_pを代入し、多重線形性で展開すると

Ti1…isj1…jr=∑b1,…,br=1n ∑a1,…,as=1n(∏k=1rB bkjk)(∏l=1sA ilal) Sa1…asb1…brT^{j_1\dots j_r}_{i_1\dots i_s} =\sum_{b_1,\dots,b_r=1}^{n}\ \sum_{a_1,\dots,a_s=1}^{n} \Bigl(\prod_{k=1}^{r}B^{j_k}_{\ b_k}\Bigr)\Bigl(\prod_{l=1}^{s}A^{a_l}_{\ i_l}\Bigr)\,S^{b_1\dots b_r}_{a_1\dots a_s}

を得る。ここでA=B−1A=B^{-1}である。反変の添字にはBBが、共変の添字にはAAが付く。(r,s)=(0,1)(r,s)=(0,1)の場合は上の余接束の式に、(r,s)=(1,0)(r,s)=(1,0)の場合は接束の式に一致する。右辺はAAとBBの成分の積を係数とするSSの一次式であり、係数はxxのC∞C^\infty関数である。よって座標変換はC∞C^\inftyである。

外冪束。§E3.14 定理 2.1により、{dxi1∣p∧⋯∧dxik∣p}i1<⋯<ik\{dx^{i_1}|_p\wedge\cdots\wedge dx^{i_k}|_p\}_{i_1<\cdots<i_k}はΛkTp∗M\Lambda^{k}T_p^{*}Mの基底であり、次元は(nk)\binom{n}{k}である。dyj∣p=∑i=1nA ijdxi∣pdy^{j}|_p=\sum_{i=1}^{n}A^{j}_{\ i}dx^{i}|_pを代入し、外積の多重線形性で展開すると

dyj1∣p∧⋯∧dyjk∣p=∑i1,…,ik=1nA i1j1⋯A ikjk dxi1∣p∧⋯∧dxik∣pdy^{j_1}\big|_p\wedge\cdots\wedge dy^{j_k}\big|_p =\sum_{i_1,\dots,i_k=1}^{n}A^{j_1}_{\ i_1}\cdots A^{j_k}_{\ i_k}\ dx^{i_1}\big|_p\wedge\cdots\wedge dx^{i_k}\big|_p

となる。添字に重複がある項は§E3.14 定義 1.1により00であり、残る項を添字の増加列ごとにまとめる。§E3.14 命題 3.2により1次の元の入れ替えは符号を変えるので、置換τ\tauによる並べ替えはsgn⁡(τ)\operatorname{sgn}(\tau)を生じ、結果として

dyj1∣p∧⋯∧dyjk∣p=∑1≤i1<⋯<ik≤ndet⁡(A ibja)1≤a,b≤k dxi1∣p∧⋯∧dxik∣pdy^{j_1}\big|_p\wedge\cdots\wedge dy^{j_k}\big|_p =\sum_{1\le i_1<\cdots<i_k\le n}\det\Bigl(A^{j_a}_{\ i_b}\Bigr)_{1\le a,b\le k}\ dx^{i_1}\big|_p\wedge\cdots\wedge dx^{i_k}\big|_p

を得る。増加列I=(i1<⋯<ik)I=(i_1<\cdots<i_k)とJ=(j1<⋯<jk)J=(j_1<\cdots<j_k)に対してdet⁡(A ibja)\det(A^{j_a}_{\ i_b})をdet⁡A IJ\det A^{J}_{\ I}と書くと、ζ=∑JSJ dyJ∣p\zeta=\sum_{J}S_J\,dy^{J}|_pのφ\varphi側の成分はTI=∑Jdet⁡A IJ SJT_I=\sum_{J}\det A^{J}_{\ I}\,S_Jである。AAをx=ψ(p)x=\psi(p)の関数と見るとA(x)=B(x)−1A(x)=B(x)^{-1}であり、Cramer の公式によりその成分はxxのC∞C^\infty関数である。係数はA(x)A(x)のkk次小行列式であり成分の多項式であるから、xxのC∞C^\infty関数である。したがって、成分を並べる写像に関する座標変換はC∞C^\inftyである。

以上により、いずれの場合も補題 2.1 条件 (c)が成り立つ。補題 2.1 条件 (a)、補題 2.1 条件 (b)、補題 2.1 条件 (d)、補題 2.1 条件 (e)は定理 3.1の証明とまったく同じ議論で確かめられる。とくに補題 2.1 条件 (e)では補題 2.2の可算アトラスを用い、補題 2.1 条件 (a)では補題 4.3または§E3.14 定理 2.1により成分の組を任意に取ることができることを用いる。射影π\piの滑らかさも同様である。▨

5 切断としてのベクトル場とテンソル場

定義 5.1.EEをTMTM、T∗MT^{*}M、TsrMT^{r}_{s}M、ΛkT∗M\Lambda^{k}T^{*}Mのいずれかとし、π ⁣:E→M\pi\colon E\to Mをその射影とする。滑らかな写像X ⁣:M→EX\colon M\to Eであってπ∘X=id⁡M\pi\circ X=\operatorname{id}_Mを満たすものをEEの滑らかな切断 (smooth section) という。X(p)X(p)の第二成分をXpX_pと書く。

TMTMの滑らかな切断を C∞C^\inftyベクトル場 (C∞C^\inftyvector field) といい、MM上のC∞C^\inftyベクトル場の全体をX(M)\mathfrak{X}(M)と書く。TsrMT^{r}_{s}Mの滑らかな切断を (r,s)(r,s)型のC∞C^\inftyテンソル場 (C∞C^\inftytensor field of type(r,s)(r,s)) という。T∗MT^{*}Mの滑らかな切断を C∞C^\infty1形式 (C∞C^\inftyone-form) という。

MMの開集合UUに対しても、UUを開部分多様体と見て同じ定義を用いる。

命題 5.2.XXをMMの各点ppにXp∈TpMX_p\in T_pMを対応させる(滑らかさを仮定しない)対応とする。チャート(U,φ)(U,\varphi)に対して、Xp=∑i=1nXi(p) ∂/∂xi∣pX_p=\sum_{i=1}^{n}X^{i}(p)\,\partial/\partial x^{i}|_pによって関数X1,…,Xn ⁣:U→RX^{1},\dots,X^{n}\colon U\to\mathbb{R}を定める。このとき、XXがC∞C^\inftyベクトル場であることと、MMの可微分構造に属するすべてのチャートについて成分X1,…,XnX^{1},\dots,X^{n}がC∞C^\inftyであることは同値である。さらに、一つのアトラスに属するチャートすべてについて成分がC∞C^\inftyであれば十分である。

同じ判定がT∗MT^{*}M、TsrMT^{r}_{s}M、ΛkT∗M\Lambda^{k}T^{*}Mの切断についても、定義 4.1が定める基底に関する成分に対して成り立つ。

証明.(U,φ)(U,\varphi)をチャートとし、(π−1(U),φ~)(\pi^{-1}(U),\tilde\varphi)を対応するTMTMのチャートとする。π∘X=id⁡\pi\circ X=\operatorname{id}であるからX(U)⊆π−1(U)X(U)\subseteq\pi^{-1}(U)であり、

φ~∘X∘φ−1(x)=(x, (X1(φ−1(x)),…,Xn(φ−1(x))))\tilde\varphi\circ X\circ\varphi^{-1}(x)=\Bigl(x,\ \bigl(X^{1}(\varphi^{-1}(x)),\dots,X^{n}(\varphi^{-1}(x))\bigr)\Bigr)

である。右辺がC∞C^\inftyであることと、各Xi∘φ−1X^{i}\circ\varphi^{-1}がC∞C^\inftyであること、すなわち各XiX^{i}がUU上でC∞C^\inftyであることは同値である。

成分が連続であれば、上の等式の右辺は連続でありφ~\tilde\varphiは同相写像であるからXXはUUの上で連続である。したがって、一つのアトラスのすべてのチャートで成分がC∞C^\inftyであればXXは連続であり、§E17.1 命題 4.2により滑らかである。逆にXXが滑らかであれば、任意のチャートについて上の座標表示がC∞C^\inftyであるから成分はC∞C^\inftyである。

他の束についても、チャートの第二成分が該当する基底に関する成分の組であることから、同じ計算がそのまま成り立つ。▨

定理 5.3.MMをC∞C^\infty多様体とする。X∈X(M)X\in\mathfrak{X}(M)とf∈C∞(M)f\in C^\infty(M)に対して

(Xf)(p)=Xp(f)(p∈M)(Xf)(p)=X_p(f)\qquad(p\in M)

と定める。このとき次が成り立つ。

  1. Xf∈C∞(M)Xf\in C^\infty(M)であり、写像f↦Xff\mapsto XfはC∞(M)C^\infty(M)上の導分である。すなわちR\mathbb{R}線形であり、すべてのf,g∈C∞(M)f,g\in C^\infty(M)に対してX(fg)=(Xf)g+f(Xg)X(fg)=(Xf)g+f(Xg)を満たす。
  2. 対応X↦(f↦Xf)X\mapsto(f\mapsto Xf)は、X(M)\mathfrak{X}(M)からC∞(M)C^\infty(M)上の導分の全体Der⁡(C∞(M))\operatorname{Der}\bigl(C^\infty(M)\bigr)への全単射であり、線形同型である。

証明.(1)を示す。(U,φ)(U,\varphi)をチャートとすると、p∈Up\in Uに対して

(Xf)(p)=∑i=1nXi(p) ∂i(f∘φ−1)(φ(p))(Xf)(p)=\sum_{i=1}^{n}X^{i}(p)\,\partial_i\bigl(f\circ\varphi^{-1}\bigr)\bigl(\varphi(p)\bigr)

である。命題 5.2によりXiX^{i}はC∞C^\inftyであり、∂i(f∘φ−1)∘φ\partial_i(f\circ\varphi^{-1})\circ\varphiもC∞C^\inftyであるから、XfXfはUUの上でC∞C^\inftyである。チャートはMMを覆うのでXf∈C∞(M)Xf\in C^\infty(M)である。R\mathbb{R}線形性は各点でXpX_pが線形であることから従い、積の規則は各点での Leibniz 則

Xp(fg)=Xp(f)g(p)+f(p)Xp(g)X_p(fg)=X_p(f)g(p)+f(p)X_p(g)

をppについて並べたものである。

(2)の単射性を示す。X,Y∈X(M)X,Y\in\mathfrak{X}(M)がすべてのf∈C∞(M)f\in C^\infty(M)に対してXf=YfXf=Yfを満たすとする。各ppでXp(f)=Yp(f)X_p(f)=Y_p(f)がすべてのf∈C∞(M)f\in C^\infty(M)について成り立つ。§E17.3 定義 1.1によりTpMT_pMの元はC∞(M)C^\infty(M)上の写像であるからXp=YpX_p=Y_pである。

全射性を示す。D∈Der⁡(C∞(M))D\in\operatorname{Der}(C^\infty(M))とする。最初にDDが局所的であることを示す。f∈C∞(M)f\in C^\infty(M)がppを含む開集合W0W_0の上で恒等的に00であるとする。§E17.2 命題 1.5により、ppの近傍で11に等しくsupp⁡χ⊆W0\operatorname{supp}\chi\subseteq W_0を満たすχ∈C∞(M)\chi\in C^\infty(M)を取る。§E17.3 補題 1.3の証明と同じ理由でχf\chi fは恒等的に00である。D(0)=0D(\mathbf{0})=0であり(DDは線形である)、積の規則により

0=D(χf)(p)=(Dχ)(p)f(p)+χ(p)(Df)(p)=(Df)(p)0=D(\chi f)(p)=(D\chi)(p)f(p)+\chi(p)(Df)(p)=(Df)(p)

である。ここでf(p)=0f(p)=0とχ(p)=1\chi(p)=1を用いた。

各ppに対してXp(f)=(Df)(p)X_p(f)=(Df)(p)と定めると、XpX_pはR\mathbb{R}線形であり、積の規則をppで評価すると Leibniz 則を満たすのでXp∈TpMX_p\in T_pMである。XXはTMTMの切断を与える。

XXの滑らかさを示す。(U,φ)(U,\varphi)をチャート、p∈Up\in Uとする。§E17.2 命題 1.5により、ppを含む開集合WWの上で11に等しくsupp⁡χ⊆U\operatorname{supp}\chi\subseteq Uがコンパクトであるχ∈C∞(M)\chi\in C^\infty(M)を取る。x~i∈C∞(M)\tilde x^{i}\in C^\infty(M)を、UUの上でχxi\chi x^{i}、M∖supp⁡χM\setminus\operatorname{supp}\chiの上で00として定める(§E17.3 命題 1.4のEχE_\chiである)。q∈Wq\in Wに対して、x~i\tilde x^{i}はWWの上でxix^{i}と一致するから、§E17.3 注意 1.5の同一視のもとで

Xi(q)=Xq(xi)=Xq(x~i)=(Dx~i)(q)X^{i}(q)=X_q(x^{i})=X_q(\tilde x^{i})=\bigl(D\tilde x^{i}\bigr)(q)

である。右辺はC∞C^\infty関数であるから、XiX^{i}はWWの上でC∞C^\inftyである。p∈Up\in Uは任意であるからXi∈C∞(U)X^{i}\in C^\infty(U)であり、命題 5.2によりX∈X(M)X\in\mathfrak{X}(M)である。最後に(Xf)(p)=Xp(f)=(Df)(p)(Xf)(p)=X_p(f)=(Df)(p)であるから、XXはDDへ写る。

線形性は定義から明らかである。▨

注意 5.4 (記法の約束).定理 5.3により、以後はC∞C^\inftyベクトル場XXと、それが定めるC∞(M)C^\infty(M)上の導分を同じ記号で書き、XfXfまたはX(f)X(f)と表す。ベクトル場を切断として定義し、関数への作用として用いるという二つの見方は、この定理によって結ばれている。

6 型による引き戻しと押し出しの違い

定理 6.1.MM、NNをC∞C^\infty多様体、F ⁣:M→NF\colon M\to Nを滑らかな写像とする。

  1. ssを正の整数、TTをNN上の(0,s)(0,s)型C∞C^\inftyテンソル場とする。 (F∗T)p(v1,…,vs)=TF(p)(dFp(v1),…,dFp(vs))(p∈M, v1,…,vs∈TpM)\bigl(F^{*}T\bigr)_p(v_1,\dots,v_s)=T_{F(p)}\bigl(dF_p(v_1),\dots,dF_p(v_s)\bigr) \qquad\bigl(p\in M,\ v_1,\dots,v_s\in T_pM\bigr) と定めると、F∗TF^{*}TはMM上の(0,s)(0,s)型C∞C^\inftyテンソル場である。FFに対する仮定は滑らかであることだけである。
  2. FFが微分同相であるとする。X∈X(M)X\in\mathfrak{X}(M)に対して (F∗X)q=dFF−1(q)(XF−1(q))(q∈N)\bigl(F_{*}X\bigr)_q=dF_{F^{-1}(q)}\bigl(X_{F^{-1}(q)}\bigr)\qquad(q\in N) と定めると、F∗X∈X(N)F_{*}X\in\mathfrak{X}(N)である。

証明.(1)を示す。各点でdFpdF_pが線形であるから(F∗T)p(F^{*}T)_pは多重線形であり、(0,s)(0,s)型テンソルである。滑らかさを確かめる。p∈Mp\in Mを取り、ppを含むチャート(U,φ)(U,\varphi)とF(p)F(p)を含むチャート(V,ψ)(V,\psi)をF(U)⊆VF(U)\subseteq Vとなるように取る。F^=ψ∘F∘φ−1\hat F=\psi\circ F\circ\varphi^{-1}と書く。§E17.3 命題 5.5により

dFp(∂∂xi∣p)=∑j=1n∂F^ j∂ui(φ(p))∂∂yj∣F(p)dF_p\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{i}}\Big|_p\Bigr)=\sum_{j=1}^{n}\frac{\partial\hat F^{\,j}}{\partial u^{i}}\bigl(\varphi(p)\bigr)\frac{\partial}{\partial y^{j}}\Big|_{F(p)}

であるから、多重線形性により

(F∗T)i1…is(p)=∑j1,…,js=1nTj1…js(F(p))∏l=1s∂F^ jl∂uil(φ(p))\bigl(F^{*}T\bigr)_{i_1\dots i_s}(p) =\sum_{j_1,\dots,j_s=1}^{n}T_{j_1\dots j_s}\bigl(F(p)\bigr)\prod_{l=1}^{s}\frac{\partial\hat F^{\,j_l}}{\partial u^{i_l}}\bigl(\varphi(p)\bigr)

である。TTは滑らかであるからTj1…js∘FT_{j_1\dots j_s}\circ FはC∞C^\inftyであり、F^\hat Fの偏導関数をφ\varphiで引き戻したものもC∞C^\inftyである。よって成分はC∞C^\inftyであり、命題 5.2によりF∗TF^{*}TはC∞C^\inftyテンソル場である。

(2)を示す。FFは全単射であるからF−1(q)F^{-1}(q)は一点であり、(F∗X)q(F_{*}X)_qは定まる。(F∗X)q∈TqN(F_{*}X)_q\in T_qNである。滑らかさを確かめる。q∈Nq\in Nを取り、p=F−1(q)p=F^{-1}(q)とし、上と同じチャートを取る。FFは微分同相であるからF^\hat FはC∞C^\infty微分同相であり、その逆写像F^−1\hat F^{-1}もC∞C^\inftyである。§E17.3 命題 5.5により、F∗XF_{*}Xのψ\psi側の成分は

(F∗X)j(ψ−1(y))=∑i=1n∂F^ j∂ui(F^−1(y)) Xi(φ−1(F^−1(y)))\bigl(F_{*}X\bigr)^{j}\bigl(\psi^{-1}(y)\bigr) =\sum_{i=1}^{n}\frac{\partial\hat F^{\,j}}{\partial u^{i}}\bigl(\hat F^{-1}(y)\bigr)\,X^{i}\Bigl(\varphi^{-1}\bigl(\hat F^{-1}(y)\bigr)\Bigr)

である。右辺はC∞C^\infty関数の合成と積であるからC∞C^\inftyである。命題 5.2によりF∗X∈X(N)F_{*}X\in\mathfrak{X}(N)である。▨

本単元では、F∗F_*を微分同相に対する標準的な移送として定義する。一般の滑らかな写像F ⁣:M→NF\colon M\to Nでは、与えたX∈X(M)X\in\mathfrak{X}(M)に対して、すべてのp∈Mp\in MでYF(p)=dFp(Xp)Y_{F(p)}=dF_p(X_p)を満たすY∈X(N)Y\in\mathfrak{X}(N)の存在と一意性は保証されない。一方、微分同相でない写像でも、この等式を満たす終域上の滑らかな場が存在する個別例はある。次の四つの例は、存在、一意性および滑らかさが別々の条件であることを示す。

例 6.3 (埋め込みでは終域上の値が一意に定まらない).F ⁣:R→R2F\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^2をF(t)=(t,0)F(t)=(t,0)とする。FFは滑らかであり、単射であり、各dFtdF_tは単射である。さらに像F(R)={(x,0)∣x∈R}F(\mathbb{R})=\{(x,0)\mid x\in\mathbb{R}\}にR2\mathbb{R}^2からの部分空間位相を与えると、FFはR\mathbb{R}から像への同相写像である。実際、逆写像は第一成分への射影の制限であり連続である。

R\mathbb{R}上のベクトル場X=∂/∂tX=\partial/\partial tを取る。規則YF(t)=dFt(Xt)Y_{F(t)}=dF_t(X_t)は、像の上ではY(x,0)=∂/∂x∣(x,0)Y_{(x,0)}=\partial/\partial x|_{(x,0)}を与える。任意のa∈C∞(R2)a\in C^\infty(\mathbb{R}^2)に対して

Ya=∂∂x+y a(x,y)∂∂yY_a=\frac{\partial}{\partial x}+y\,a(x,y)\frac{\partial}{\partial y}

と定めると、YaY_aはR2\mathbb{R}^2上の滑らかなベクトル場であり、Ya∣F(R)=∂/∂xY_a|_{F(\mathbb{R})}=\partial/\partial xである。したがって各YaY_aは、すべてのt∈Rt\in\mathbb{R}で(Ya)F(t)=dFt(Xt)(Y_a)_{F(t)}=dF_t(X_t)を満たす。点ごとの規則は像の外の値を制約しないので、この等式を満たす終域上の滑らかなベクトル場は複数存在し、一意に定まらない。

例 6.4 (射影では点ごとの等式を満たす場が存在しない).F ⁣:R2→RF\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}をF(x,y)=xF(x,y)=xとする。FFは滑らかで全射である。座標を、始域で(x,y)(x,y)、終域でttと書く。§E17.3 命題 5.5により

dF(x,y)(∂∂x∣(x,y))=∂∂t∣x,dF(x,y)(∂∂y∣(x,y))=0dF_{(x,y)}\Bigl(\frac{\partial}{\partial x}\Big|_{(x,y)}\Bigr)=\frac{\partial}{\partial t}\Big|_{x}, \qquad dF_{(x,y)}\Bigl(\frac{\partial}{\partial y}\Big|_{(x,y)}\Bigr)=0

である。R2\mathbb{R}^2上のベクトル場X=y ∂/∂xX=y\,\partial/\partial xを取る。F(x,0)=F(x,1)=xF(x,0)=F(x,1)=xであるが

dF(x,0)(X(x,0))=0,dF(x,1)(X(x,1))=∂∂t∣xdF_{(x,0)}\bigl(X_{(x,0)}\bigr)=0, \qquad dF_{(x,1)}\bigl(X_{(x,1)}\bigr)=\frac{\partial}{\partial t}\Big|_{x}

である。同じ点xxに対して二つの異なる値が与えられるので、すべての(x,y)∈R2(x,y)\in\mathbb{R}^2でYF(x,y)=dF(x,y)(X(x,y))Y_{F(x,y)}=dF_{(x,y)}(X_{(x,y)})を満たすR\mathbb{R}上のベクトル場YYは存在しない。

例 6.5 (三乗写像では点ごとの値が滑らかにならない).F ⁣:R→RF\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}をF(t)=t3F(t)=t^{3}とする。FFは滑らかな全単射であるが、dF0=0dF_0=0であるからdF0dF_0は同型でない。X=∂/∂tX=\partial/\partial tとし、終域の座標をssと書くと

dFt(Xt)=3t2 ∂∂s∣t3dF_t\bigl(X_t\bigr)=3t^{2}\,\frac{\partial}{\partial s}\Big|_{t^{3}}

である。s=t3s=t^{3}すなわちt=s1/3t=s^{1/3}を代入すると、点ごとの規則が定める成分はY1(s)=3s2/3Y^{1}(s)=3s^{2/3}である。FFが全単射であるから値はR\mathbb{R}全体で一意に定まるが、s=0s=0における差商は3s−1/33s^{-1/3}でありs→0s\to 0で発散するので、Y1Y^{1}はs=0s=0で微分可能でない。命題 5.2により、すべてのt∈Rt\in\mathbb{R}でYF(t)=dFt(Xt)Y_{F(t)}=dF_t(X_t)を満たすC∞C^\inftyベクトル場YYは存在しない。

注意 6.6 (型による違いのまとめ).定理 6.1 (1)は、(0,s)(0,s)型テンソル場、すなわち共変成分だけを持つテンソル場が、任意の滑らかな写像FFによってMM上へ引き戻されることを述べている。引き戻しの定義では、MMの点ppにおける値を、NNの点F(p)F(p)における値とdFpdF_pだけから作るので、FFの全射性も可逆性も用いない。

一方、本単元では反変成分を含むテンソル場の標準的な移送を微分同相に対してだけ定義し、ベクトル場ではF∗XF_*Xと書く。一般の滑らかな写像について、点ごとの規則を満たす終域上の滑らかな場の存在と一意性は個別に判定しなければならない。例 6.2では一意に存在し、例 6.3では複数存在し、例 6.4と例 6.5ではそれぞれ値の不整合と滑らかさの欠如によって存在しない。微分同相に対するF∗F_*は、すべての始域上の場に対して標準的かつ一意に定まる移送である。

7 演習

問題 7.1 (接束とテンソル場の確認). 次の各問に答えよ。

  1. 命題 1.3の証明で示した座標基底の関係式を、TpMT_pMの元が座標関数への値で決まるという事実から導け。どの主張がその事実を与えるかを明示せよ。
  2. 例 1.4のφp\varphi_{\mathrm{p}}がUUから(0,∞)×(−π/2,π/2)(0,\infty)\times(-\pi/2,\pi/2)への同相写像であることを確かめよ。また、det⁡Dσ=r\det D\sigma=rがUUの上で消えないことが、二つのチャートの両立にどう用いられるかを述べよ。
  3. 補題 2.1 条件 (e)を落とすと、どの結論が成り立たなくなるかを述べよ。「可微分多様体の定義」で扱った原点を二つ持つ直線が、補題 2.1 条件 (e)だけを満たさない例になっていることを確かめよ。
  4. M=RM=\mathbb{R}、φ=id⁡\varphi=\operatorname{id}、ψ(t)=2t+1\psi(t)=2t+1とする。この二つはともにR\mathbb{R}の極大アトラスに属するチャートである。定理 3.1の座標変換の式を書き下し、第二成分がξ\xiについて線形であることを確かめよ。
  5. 定理 4.4の外冪束の座標変換に現れるkk次小行列式が、k=nk=nのときdet⁡A\det Aに等しいことを確かめよ。この事実が最高次の微分形式の変換則に対応することを述べよ。
  6. 定理 5.3の全射性の証明で、x~i\tilde x^{i}を導入する理由を述べよ。xix^{i}をそのままDDに適用することができない理由を、DDの定義域に立ち返って説明せよ。
  7. 定理 6.1 (1)の成分表示を、s=1s=1、M=N=RM=N=\mathbb{R}、F(t)=t2F(t)=t^{2}、T=dyT=dyの場合に計算せよ。F∗(dy)=2t dtF^{*}(dy)=2t\,dtとなることを確かめよ。
  8. 例 6.5のY1(s)=3s2/3Y^{1}(s)=3s^{2/3}がs=0s=0で微分可能でないことを、差商の極限を計算して示せ。さらに、F(t)=t3F(t)=t^{3}が微分同相でないことを§E17.3 系 5.4を用いて説明せよ。
  9. 例 6.2の一点写像について、終域上のベクトル場がY=0Y=0だけであることを示し、任意のX∈X(R)X\in\mathfrak{X}(\mathbb{R})に対して、すべてのp∈Rp\in\mathbb{R}でYF(p)=dFp(Xp)Y_{F(p)}=dF_p(X_p)を満たす終域上の滑らかな場YYが一意に存在することを確かめよ。
解答 (演習の解答).

(1)§E17.3 定理 3.3が、TpMT_pMの元vvがv=∑i=1nv(xi) ∂/∂xi∣pv=\sum_{i=1}^{n}v(x^{i})\,\partial/\partial x^{i}|_pと一意に表すことができることを与える。したがって二つの接ベクトルは、すべての座標関数への値が一致すれば等しい。両辺をxβkx_\beta^{k}に適用し、左辺が∂i(φβ∘φα−1)k(φα(p))\partial_i(\varphi_\beta\circ\varphi_\alpha^{-1})^{k}(\varphi_\alpha(p))、右辺がA ikA^{k}_{\ i}になることを確かめればよい。(2)φp\varphi_{\mathrm{p}}は連続であり、(r,θ)↦(rcos⁡θ,rsin⁡θ)(r,\theta)\mapsto(r\cos\theta,r\sin\theta)が連続な逆写像を与える。x>0x>0の範囲ではθ=arctan⁡(y/x)∈(−π/2,π/2)\theta=\arctan(y/x)\in(-\pi/2,\pi/2)とr=x2+y2>0r=\sqrt{x^{2}+y^{2}}>0が一意に定まり、逆に(r,θ)(r,\theta)からx=rcos⁡θ>0x=r\cos\theta>0が定まる。両立については、座標変換σ\sigmaがC∞C^\inftyであることに加えて、その逆写像がC∞C^\inftyであることが必要である。det⁡Dσ=r>0\det D\sigma=r>0であることから逆写像の Jacobi 行列が存在し、実際にφp∘φc−1\varphi_{\mathrm{p}}\circ\varphi_{\mathrm{c}}^{-1}の式がC∞C^\inftyであることを確かめることができる。(3)補題 2.1 条件 (e)を落とすと Hausdorff 性の結論が成り立たなくなる。他の結論(位相の存在と一意性、第二可算性、アトラスであること)は補題 2.1 条件 (a)、補題 2.1 条件 (b)、補題 2.1 条件 (c)、補題 2.1 条件 (d)だけで従う。原点を二つ持つ直線LLは、§E17.1 命題 3.2のU0U_0、U1U_1とφ0\varphi_0、φ1\varphi_1を取ると補題 2.1 条件 (a)、補題 2.1 条件 (b)、補題 2.1 条件 (c)、補題 2.1 条件 (d)を満たす。しかし二つの原点p0p_0、p1p_1はU0∩U1U_0\cap U_1に属さず、U0U_0とU1U_1は交わるので、補題 2.1 条件 (e)のどちらの場合にも当てはまらない。(4)φ=id⁡\varphi=\operatorname{id}、ψ(t)=2t+1\psi(t)=2t+1とするとφ∘ψ−1(x)=(x−1)/2\varphi\circ\psi^{-1}(x)=(x-1)/2でありD(φ∘ψ−1)(x)=1/2D(\varphi\circ\psi^{-1})(x)=1/2である。よってφ~∘ψ~−1(x,ξ)=((x−1)/2, ξ/2)\tilde\varphi\circ\tilde\psi^{-1}(x,\xi)=\bigl((x-1)/2,\ \xi/2\bigr)である。第二成分はξ\xiについて線形であり、係数はxxに依らない定数である。(5)k=nk=nのとき増加列は1<2<⋯<n1<2<\cdots<nの一つだけであり、係数は行列(A ibja)1≤a,b≤n=A(A^{j_a}_{\ i_b})_{1\le a,b\le n}=Aの行列式である。したがってdy1∣p∧⋯∧dyn∣p=(det⁡A) dx1∣p∧⋯∧dxn∣pdy^{1}|_p\wedge\cdots\wedge dy^{n}|_p=(\det A)\,dx^{1}|_p\wedge\cdots\wedge dx^{n}|_pである。最高次の微分形式の成分は座標変換の Jacobi 行列式の倍になる。(6)DDはC∞(M)C^\infty(M)の上の作用素であり、MM全体で定義された関数にしか適用することができない。座標関数xix^{i}はチャートの定義域UUの上でしか定義されていないので、D(xi)D(x^{i})という式には意味が無い。山型関数χ\chiを掛けてMM全体へ00で延長したx~i\tilde x^{i}はC∞(M)C^\infty(M)の元であり、ppの近傍ではxix^{i}と一致するので、§E17.3 注意 1.5の同一視のもとでXq(xi)=Xq(x~i)X_q(x^{i})=X_q(\tilde x^{i})が成り立つ。(7)F^(t)=t2\hat F(t)=t^{2}であり∂F^/∂t=2t\partial\hat F/\partial t=2tである。T=dyT=dyの成分はT1=1T_1=1であるから、(F∗T)1(t)=T1(F(t))⋅2t=2t(F^{*}T)_1(t)=T_1(F(t))\cdot 2t=2tである。すなわちF∗(dy)=2t dtF^{*}(dy)=2t\,dtである。(8)Y1(s)=3s2/3Y^{1}(s)=3s^{2/3}、Y1(0)=0Y^{1}(0)=0であるから差商は3s2/3/s=3s−1/33s^{2/3}/s=3s^{-1/3}である。s→0+s\to 0^{+}で+∞+\inftyへ発散し、s→0−s\to 0^{-}で−∞-\inftyへ発散するので極限は存在しない。したがってY1Y^{1}はs=0s=0で微分可能でない。F(t)=t3F(t)=t^{3}についてはdF0=0dF_0=0であり同型でないから、§E17.3 系 5.4の対偶によりFFは微分同相でない。(9)一点多様体{∗}\{*\}の滑らかな関数は定数関数だけであり、その関数環上の導分は零写像だけである。したがってT∗{∗}={0}T_*\{*\}=\{0\}であり、終域上のベクトル場はY=0Y=0だけである。一点写像FFの微分は零写像なので、任意のp∈Rp\in\mathbb{R}に対してYF(p)=0=dFp(Xp)Y_{F(p)}=0=dF_p(X_p)が成り立つ。この等式を満たす終域上の場が一つしかないことから、YYは一意である。▨

8 仮定と後続記事の境界

補題 2.1 条件 (e)は Hausdorff 性のためだけに用いる。この条件を確かめるには、MMの Hausdorff 性と、定義域が基底をなす可算なアトラスの存在(補題 2.2)の両方が要る。第二可算性は、アトラスを可算に取ることができるという形で用いる。

本記事はベクトル束の概念を定義していない。四つの束はいずれも、同じ形の貼り合わせを個別に行って構成した。局所自明化、遷移関数の族、および一般のベクトル束の切断の理論は「ベクトル束と接続」が扱う。

定理 5.3は、以後の記事でベクトル場をX(f)X(f)の形で関数へ作用させるための根拠である。二つのベクトル場の括弧積[X,Y]f=X(Yf)−Y(Xf)[X,Y]f=X(Yf)-Y(Xf)を定義し、それがふたたびベクトル場を定めることを示すのは「Lie 微分と括弧積の自然性」である。

定理 6.1 (1)は、外冪束の切断すなわち微分形式に対して用いる形が「微分形式と外積・引き戻し」で必要になる。同記事は引き戻しが外積と可換であることを示す。定理 6.1 (2)の押し出しは、微分同相に関するベクトル場の変換として「Lie 微分と括弧積の自然性」で用いる。

本記事はΛkT∗M\Lambda^{k}T^{*}Mを構成したが、その切断である微分形式の外積、引き戻し、および交代テンソル場としての位置づけは「微分形式と外積・引き戻し」が扱う。

参考文献

  1. John M. Lee, Introduction to Smooth Manifolds, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 218, Springer, New York, 2013.集合から多様体を構成する補題、接束の座標変換の形、切断としてのベクトル場の定義、および共変テンソル場の引き戻しの定式化を参考にした。
  2. Frank W. Warner, Foundations of Differentiable Manifolds and Lie Groups, Graduate Texts in Mathematics 94, Springer, 1983, originally published 1971.ベクトル場と関数環上の導分の同一視の述べ方を参考にした。
  3. Loring W. Tu, An Introduction to Manifolds, 2nd ed., Universitext, Springer, New York, 2011.座標成分の変換則によるテンソルの記述と、共変テンソルの引き戻しの成分表示を参考にした。

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