§E18.1ホモトピーとホモトピー同値

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二つの連続写像を連続的に変形して結ぶ関係がホモトピーである。本記事では、ホモトピーを積空間からの連続写像として定義し、レトラクト、変位レトラクトおよび可縮性を区別する。

1 写像のホモトピー

定義 1.1. 位相空間X,YX,Yと連続写像f,g:X→Yf,g:X\to Yに対し、連続写像

H:X×[0,1]⟶YH:X\times[0,1]\longrightarrow Y

がH(x,0)=f(x)H(x,0)=f(x)およびH(x,1)=g(x)H(x,1)=g(x)をすべてのx∈Xx\in Xについて満たすとき、HHをffからggへのホモトピー (homotopy) といい、f≃gf\simeq gと書く。

命題 1.2. 位相空間X,YX,Yを固定する。連続写像X→YX\to Yの間のホモトピー関係は同値関係である。

証明. 反射律はH(x,t)=f(x)H(x,t)=f(x)によって得られる。HHがffからggへのホモトピーなら、H′(x,t)=H(x,1−t)H'(x,t)=H(x,1-t)はggからffへのホモトピーであるから、対称律が成り立つ。

H0H_0がffからggへのホモトピーで、H1H_1がggからkkへのホモトピーであるとする。写像H:X×[0,1]→YH:X\times[0,1]\to Yを

H(x,t)={H0(x,2t),0≤t≤12,H1(x,2t−1),12≤t≤1H(x,t)= \begin{cases} H_0(x,2t),&0\le t\le \frac12,\\ H_1(x,2t-1),&\frac12\le t\le1 \end{cases}

と定める。二つの式はt=1/2t=1/2でともにg(x)g(x)となるため、閉集合による貼り合わせ補題からHHは連続である。したがってf≃kf\simeq kであり、推移律も成り立つ。▨

ホモトピーは写像の前後から連続写像を合成しても保たれる。この性質はホモトピー同値を合成するときに用いる。

補題 1.3.f0,f1:X→Yf_0,f_1:X\to Yがホモトピックであり、a:W→Xa:W\to Xとb:Y→Zb:Y\to Zが連続なら、

b∘f0∘a≃b∘f1∘ab\circ f_0\circ a\simeq b\circ f_1\circ a

である。

証明.H:X×[0,1]→YH:X\times[0,1]\to Yをf0f_0からf1f_1へのホモトピーとする。K(w,t)=b(H(a(w),t))K(w,t)=b(H(a(w),t))とおけば、KKは連続であり、両端でそれぞれb∘f0∘ab\circ f_0\circ aとb∘f1∘ab\circ f_1\circ aに一致する。▨

2 ホモトピー同値と可縮性

定義 2.1. 連続写像f:X→Yf:X\to Yがホモトピー同値写像 (homotopy equivalence) であるとは、連続写像g:Y→Xg:Y\to Xが存在して

g∘f≃id⁡X,f∘g≃id⁡Yg\circ f\simeq\operatorname{id}_X, \qquad f\circ g\simeq\operatorname{id}_Y

となることをいう。このときggをffのホモトピー逆写像 (homotopy inverse) といい、XXとYYはホモトピー同値 (homotopy equivalent) であるという。

空でない位相空間XXが可縮 (contractible) であるとは、ある点x0∈Xx_0\in Xについて、恒等写像id⁡X\operatorname{id}_Xが定値写像cx0:X→Xc_{x_0}:X\to Xとホモトピックであることをいう。

命題 2.2. 空でない位相空間XXが可縮であることと、XXが一点空間とホモトピー同値であることは同値である。

証明.XXがx0∈Xx_0\in Xへ可縮であるとする。一点空間を{∗}\{*\}とし、p:X→{∗}p:X\to\{*\}を唯一の写像、i:{∗}→Xi:\{*\}\to Xをi(∗)=x0i(*)=x_0とする。p∘i=id⁡{∗}p\circ i=\operatorname{id}_{\{*\}}であり、i∘p=cx0≃id⁡Xi\circ p=c_{x_0}\simeq\operatorname{id}_Xであるから、ppはホモトピー同値写像である。

逆に、f:X→{∗}f:X\to\{*\}とg:{∗}→Xg:\{*\}\to Xがホモトピー逆写像であるとする。g∘fg\circ fはg(∗)g(*)への定値写像であり、g∘f≃id⁡Xg\circ f\simeq\operatorname{id}_Xであるから、XXは可縮である。▨

3 レトラクトと変位レトラクト

定義 3.1. 部分空間A⊆XA\subseteq Xに対し、連続写像r:X→Ar:X\to Aがr∣A=id⁡Ar|_A=\operatorname{id}_Aを満たすとき、rrをレトラクション (retraction) といい、AAをXXのレトラクト (retract) という。

定義 3.2. 部分空間A⊆XA\subseteq XがXXの変位レトラクト (deformation retract) であるとは、レトラクションr:X→Ar:X\to AとホモトピーH:X×[0,1]→XH:X\times[0,1]\to Xが存在し、

H(x,0)=x,H(x,1)=r(x),H(a,t)=aH(x,0)=x, \qquad H(x,1)=r(x), \qquad H(a,t)=a

をすべてのx∈Xx\in X、a∈Aa\in A、t∈[0,1]t\in[0,1]について満たすことをいう。

定理 3.3.A⊆XA\subseteq Xが変位レトラクトであるなら、包含写像i:A↪Xi:A\hookrightarrow Xはホモトピー同値写像である。

証明. 変位レトラクションをr:X→Ar:X\to Aとする。レトラクションの定義からr∘i=id⁡Ar\circ i=\operatorname{id}_Aである。また、変位を与えるホモトピーはid⁡X≃i∘r\operatorname{id}_X\simeq i\circ rを示す。したがってrrはiiのホモトピー逆写像である。▨

例 3.4 (円環から円周への変位レトラクション).A={x∈R2:∥x∥=1}A=\{x\in\mathbb R^2:\lVert x\rVert=1\}とX={x∈R2:1≤∥x∥≤2}X=\{x\in\mathbb R^2:1\le\lVert x\rVert\le2\}を考える。

r(x)=x∥x∥,H(x,t)=((1−t)+t∥x∥)xr(x)=\frac{x}{\lVert x\rVert}, \qquad H(x,t)=\left((1-t)+\frac{t}{\lVert x\rVert}\right)x

と定めると、H(x,t)H(x,t)は常にXXに属し、H(−,0)=id⁡XH(-,0)=\operatorname{id}_X、H(−,1)=i∘rH(-,1)=i\circ r、H(a,t)=aH(a,t)=aを満たす。したがってAAはXXの変位レトラクトである。

レトラクトであることだけからホモトピー同値性は従わない。実際、X={0}∪[1,2]⊂RX=\{0\}\cup[1,2]\subset\mathbb RとA={0}A=\{0\}に対する定値写像r:X→Ar:X\to Aはレトラクションである。しかし、[1,2][1,2]の点から00へ至る道はXXに存在しないため、AAはXXの変位レトラクトではない。この例は、変位レトラクトがレトラクトより強い条件であることを示す。

同相で保たれる性質を位相不変量といい、ホモトピー同値で保たれる性質をホモトピー不変量という。ホモトピー不変量は位相不変量でもあるが、逆は成り立たない。たとえば一点空間とR\mathbb Rはともに可縮であるためホモトピー同値であるが、両者は同相ではない。また、コンパクト性は同相で保たれる一方、一点空間はコンパクトでR\mathbb Rはコンパクトでないため、コンパクト性はホモトピー不変量ではない。

4 演習

問題 4.1.

  1. XXが可縮であることを、XXから一点空間への写像と一点空間からXXへの写像を用いて言い換えよ。
  2. A⊆XA\subseteq Xがレトラクトであるという条件だけでは、包含A↪XA\hookrightarrow Xがホモトピー同値になると結論することができない理由を述べよ。
  3. R\mathbb Rと一点空間を用いて、位相不変量とホモトピー不変量の違いを説明せよ。
解答.
  1. XXが一点空間とホモトピー同値であることと同値である。ホモトピー逆写像の合成の一方は一点空間の恒等写像であり、他方はXXの恒等写像とホモトピックな定値写像になる。
  2. レトラクションはr∘i=id⁡Ar\circ i=\operatorname{id}_Aだけを与え、i∘r≃id⁡Xi\circ r\simeq\operatorname{id}_Xを与えない。後者を与える追加条件が変位レトラクションである。
  3. コンパクト性は同相で保たれる。しかし一点空間はコンパクトでR\mathbb Rはコンパクトでないにもかかわらず、両者は可縮であるためホモトピー同値である。したがってコンパクト性は位相不変量であるが、ホモトピー不変量ではない。

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参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.ホモトピー、レトラクトおよびホモトピー同値の標準的な定義を参考にした。

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