§E18.27胞体コホモロジーと計算

最終更新

胞体鎖複体は各胞体を一つの基底元として記録する。胞体余鎖複体では、この境界行列を係数環上で転置する。本記事では、転置して得た余鎖複体が特異コホモロジーを計算する理由を骨格対の長完全列から示した後、具体的な CW 複体の余境界を計算する。

本記事を通じて、RRは単位元をもつ可換環とし、XnX^nは CW 複体XXのnn骨格とする。

1 胞体余鎖複体

定義 1.1. 整数係数の胞体鎖複体をC∗cell(X;Z)C_*^{\mathrm{cell}}(X;\mathbb Z)とする。係数をRRへ拡張した胞体鎖加群 (cellular chain module) と胞体余鎖加群 (cellular cochain module) を

Cncell(X;R):=Cncell(X;Z)⊗ZR,Ccelln(X;R):=Hom⁡R(Cncell(X;R),R)C_n^{\mathrm{cell}}(X;R) :=C_n^{\mathrm{cell}}(X;\mathbb Z)\otimes_{\mathbb Z}R, \qquad C^n_{\mathrm{cell}}(X;R) :=\operatorname{Hom}_R(C_n^{\mathrm{cell}}(X;R),R)

で定める。胞体境界をdn+1:Cn+1cell(X;R)→Cncell(X;R)d_{n+1}:C_{n+1}^{\mathrm{cell}}(X;R)\to C_n^{\mathrm{cell}}(X;R)とすると、胞体余境界 (cellular coboundary) は

δn:Ccelln(X;R)⟶Ccelln+1(X;R),(δnφ)(c)=φ(dn+1c)\delta^n:C^n_{\mathrm{cell}}(X;R)\longrightarrow C^{n+1}_{\mathrm{cell}}(X;R), \qquad (\delta^n\varphi)(c)=\varphi(d_{n+1}c)

である。胞体コホモロジー (cellular cohomology) をHcelln(X;R):=Hn(Ccell∗(X;R))H^n_{\mathrm{cell}}(X;R):=H^n(C^*_{\mathrm{cell}}(X;R))と定める。

dndn+1=0d_nd_{n+1}=0であるからδn+1δn=0\delta^{n+1}\delta^n=0である。各胞体の向きを固定して胞体鎖の基底とすると、δn\delta^nの行列はdn+1d_{n+1}の行列の転置になる。特に、nn次余境界を求めるときに転置するのはdnd_nではなくdn+1d_{n+1}である。

2 特異コホモロジーとの比較

骨格対の相対コホモロジーを用いる前に、球面が任意個ある場合の計算を鎖複体から確かめる。

補題 2.1.n>0n>0、W=⋁α∈ISαnW=\bigvee_{\alpha\in I}S^n_\alphaとし、∗*を楔点とする。このとき

Hk(W,∗;R)≅{∏α∈IR,k=n,0,k≠n.H^k(W,*;R)\cong \begin{cases} \displaystyle\prod_{\alpha\in I}R,&k=n,\\ 0,&k\ne n. \end{cases}

nn次の同型は、各球面の相対基本類への評価で与えられる。

証明. 相対特異鎖複体をQ∗:=C∗(W,∗;R)Q_*:=C_*(W,*;R)とする。C∗(∗)C_*(*)はC∗(W)C_*(W)の特異単体基底の部分集合で生成されるので、各QkQ_kは自由RR加群である。各特異鎖の像はコンパクトであり、§E18.19 定理 2.2によって有限個の球面の一点和に含まれる。従って、有限個の球面に対する切除と相対球面の直接計算を各鎖へ適用すると

Hk(Q∗)≅{⨁α∈IR[eαn],k=n,0,k≠nH_k(Q_*)\cong \begin{cases} \displaystyle\bigoplus_{\alpha\in I}R[e^n_\alpha],&k=n,\\ 0,&k\ne n \end{cases}

となる。ここでは輪体と、それを境界にする有限鎖の双方が有限部分楔和に入るので、無限和に関する極限操作を用いていない。

各[eαn][e^n_\alpha]を表す相対特異輪体zα∈Qnz_\alpha\in Q_nを選び、次数nnだけに自由加群

En:=⨁α∈IR[eαn]E_n:=\bigoplus_{\alpha\in I}R[e^n_\alpha]

をもつ鎖複体E∗E_*からQ∗Q_*への鎖写像eαn↦zαe^n_\alpha\mapsto z_\alphaを定める。この写像は上の計算により quasi-isomorphism である。E∗E_*とQ∗Q_*は負次数で零の自由複体なので、§E18.26 補題 2.3によって鎖ホモトピー同値である。双対化して

Hk ⁣(Hom⁡R(Q∗,R))≅Hk ⁣(Hom⁡R(E∗,R))≅{Hom⁡R ⁣(⨁α∈IR,R),k=n,0,k≠nH^k\!\left(\operatorname{Hom}_R(Q_*,R)\right) \cong H^k\!\left(\operatorname{Hom}_R(E_*,R)\right) \cong \begin{cases} \operatorname{Hom}_R\!\left(\displaystyle\bigoplus_{\alpha\in I}R,R\right),&k=n,\\ 0,&k\ne n \end{cases}

を得る。最後の Hom は∏α∈IR\prod_{\alpha\in I}Rである。これが相対コホモロジーの定義そのものであるから、主張が従う。▨

骨格対(Xn,Xn−1)(X^n,X^{n-1})は良い対であり、n>0n>0では商写像

q:Xn⟶Xn/Xn−1=⋁enSnq:X^n\longrightarrow X^n/X^{n-1} =\bigvee_{e^n}S^n

が定まる。ここで、ホモロジーについての良い対の商空間定理§E18.15 定理 2.2を無条件に双対してはならない。相対鎖から商空間の楔点に関する相対鎖への、商写像が誘導する鎖写像

q#:C∗(Xn,Xn−1;R)⟶C∗ ⁣(Xn/Xn−1,∗;R)q_\#:C_*(X^n,X^{n-1};R) \longrightarrow C_*\!\left(X^n/X^{n-1},*;R\right)

を考える。同定C∗(Y,Z;R)=C∗(Y;R)/C∗(Z;R)C_*(Y,Z;R)=C_*(Y;R)/C_*(Z;R)のもとで、両辺は特異単体基底の部分集合による商であるから、負次数で零の自由RR複体である。良い対の商空間定理の小鎖複体による証明は係数環RRに対してそのまま成り立ち、q#q_\#がホモロジー同型を誘導する。従って§E18.26 補題 2.3によりq#q_\#は鎖ホモトピー同値である。

鎖ホモトピー逆と二つの鎖ホモトピーをHom⁡R(−,R)\operatorname{Hom}_R(-,R)で前合成すると、双対写像

q#:C∗ ⁣(Xn/Xn−1,∗;R)⟶C∗(Xn,Xn−1;R)q^\#:C^*\!\left(X^n/X^{n-1},*;R\right) \longrightarrow C^*(X^n,X^{n-1};R)

は余鎖ホモトピー同値になる。従って直前の補題を適用して

Hk(Xn,Xn−1;R)=0(k≠n),Hn(Xn,Xn−1;R)≅∏enRH^k(X^n,X^{n-1};R)=0\quad(k\ne n), \qquad H^n(X^n,X^{n-1};R)\cong \prod_{e^n}R

を得る。n=0n=0ではX0X^0が零胞体からなる離散空間であり、各点の特異鎖を§E18.26 例 5.1の縮約で次数零へ縮約すると、同じ公式を直接得る。右辺の各成分は、対応するnn胞体の相対基本類への評価である。nn胞体が無限個ある場合に直積となることは、余鎖が各胞体へ独立に値を指定することができることに対応する。

無限 CW 複体を扱うために、固定次数で骨格のコホモロジーが安定した場合の比較を余鎖上で直接証明する。

補題 2.2. CW 複体YYと整数q≥0q\geq0を固定する。あるMM以後、制限写像

Hr(Ym+1;R)⟶Hr(Ym;R)H^r(Y^{m+1};R)\longrightarrow H^r(Y^m;R)

がr=q−1,qr=q-1,qで同型であるとする。ただしq=0q=0では次数−1-1の条件を空条件とする。このとき制限写像

Hq(Y;R)⟶Hq(YM;R)H^q(Y;R)\longrightarrow H^q(Y^M;R)

は同型である。

証明. 各特異単体の像はコンパクトなので有限部分複体、従ってある骨格に入る。このため余鎖複体には

C∗(Y;R)=lim←⁡mC∗(Ym;R)C^*(Y;R)=\varprojlim_m C^*(Y^m;R)

という成分ごとの同一視がある。各制限Ck(Ym+1;R)→Ck(Ym;R)C^k(Y^{m+1};R)\to C^k(Y^m;R)は、特異単体基底上で余鎖を零延長することができるため全射である。

zM∈Cq(YM;R)z_M\in C^q(Y^M;R)をコサイクルとする。HqH^qの制限が全射なので、[zM][z_M]を持ち上げるコサイクルzM+1z_{M+1}を選ぶことができる。制限したzM+1z_{M+1}とzMz_Mの差はコバウンダリであり、その原始を余鎖の全射性によってYM+1Y^{M+1}へ持ち上げてzM+1z_{M+1}を修正すると、制限がzMz_Mに厳密に等しくなる。同じ操作を帰納的に繰り返すと、互いに両立するコサイクル(zm)m≥M(z_m)_{m\geq M}を得る。この族はYY上のコサイクルを定めるので、表示した写像は全射である。

次に、両立するコサイクル族(zm)(z_m)がYMY^M上でコバウンダリであるとする。zM=δbMz_M=\delta b_Mと書く。bmb_mを構成したとし、HqH^qの制限が単射であることからzm+1=δcm+1z_{m+1}=\delta c_{m+1}となる原始を選ぶことができる。差

cm+1∣Ym−bmc_{m+1}|_{Y^m}-b_m

は(q−1)(q-1)次コサイクルである。Hq−1H^{q-1}の制限の全射性により、この差と同じ類をもつYm+1Y^{m+1}上のコサイクルを選び、さらに残ったコバウンダリの原始を余鎖の全射性で持ち上げる。これらをcm+1c_{m+1}から引けば、δbm+1=zm+1\delta b_{m+1}=z_{m+1}かつbm+1∣Ym=bmb_{m+1}|_{Y^m}=b_mを満たす原始bm+1b_{m+1}を得る。q=0q=0では、零次にコバウンダリがないため同じ結論は直ちに従う。従って(bm)(b_m)はYY上の原始を定め、写像は単射でもある。▨

補題 2.3. 評価同型

Θn:Hn(Xn,Xn−1;R)→≅Ccelln(X;R)\Theta_n:H^n(X^n,X^{n-1};R) \xrightarrow{\cong}C^n_{\mathrm{cell}}(X;R)

のもとで、胞体余境界は合成

Hn(Xn,Xn−1;R)⟶Hn(Xn;R)→∂Hn+1(Xn+1,Xn;R)H^n(X^n,X^{n-1};R) \longrightarrow H^n(X^n;R) \xrightarrow{\partial} H^{n+1}(X^{n+1},X^n;R)

に一致する。ここで第一の写像は対の長完全列の写像、第二の写像は対(Xn+1,Xn)(X^{n+1},X^n)の連結準同型である。

証明.(n+1)(n+1)胞体eλn+1e^{n+1}_\lambdaの相対基本類を[eλn+1][e^{n+1}_\lambda]とする。合成をnn次相対類φ\varphiに施して[eλn+1][e^{n+1}_\lambda]に評価すると、連結準同型の定義により

φ(dn+1[eλn+1])\varphi\bigl(d_{n+1}[e^{n+1}_\lambda]\bigr)

を得る。これは定義 1.1の(δnφ)([eλn+1])(\delta^n\varphi)([e^{n+1}_\lambda])に等しい。すべての胞体基底上で値が一致するので、二つの余境界は一致する。▨

定理 2.4. CW 複体XXと単位元をもつ可換環RRに対して、標準的な同型

Hcelln(X;R)≅Hn(X;R)H^n_{\mathrm{cell}}(X;R)\cong H^n(X;R)

が存在する。この同型は胞体写像について自然であり、右辺は特異コホモロジーである。

証明.Dn:=Hn(Xn,Xn−1;R)D^n:=H^n(X^n,X^{n-1};R)と置き、補題 2.3の合成をdn:Dn→Dn+1d^n:D^n\to D^{n+1}とする。評価同型Θ∗\Theta_*は(D∗,d∗)(D^*,d^*)を胞体余鎖複体と同一視する。

骨格対の相対コホモロジーが骨格の次数にだけ集中することから、骨格について帰納的に

Hk(Xm;R)=0(k>m)H^k(X^m;R)=0\qquad(k>m)

を得る。対(Xn,Xn−1)(X^n,X^{n-1})の長完全列ではHn(Xn−1;R)=0H^n(X^{n-1};R)=0なので、写像

jn:Dn⟶Hn(Xn;R)j_n:D^n\longrightarrow H^n(X^n;R)

は全射である。対(Xn+1,Xn)(X^{n+1},X^n)の長完全列の完全性により、jnj_nはker⁡dn\ker d^nを

im⁡(Hn(Xn+1;R)→Hn(Xn;R))\operatorname{im}\bigl(H^n(X^{n+1};R)\to H^n(X^n;R)\bigr)

へ全射に送る。一方、

ker⁡jn=im⁡dn−1\ker j_n=\operatorname{im}d^{n-1}

である。実際、ker⁡jn\ker j_nはHn−1(Xn−1;R)→DnH^{n-1}(X^{n-1};R)\to D^nの像であり、写像Dn−1→Hn−1(Xn−1;R)D^{n-1}\to H^{n-1}(X^{n-1};R)はHn−1(Xn−2;R)=0H^{n-1}(X^{n-2};R)=0によって全射である。さらにHn(Xn+1,Xn;R)=0H^n(X^{n+1},X^n;R)=0なので、Hn(Xn+1;R)→Hn(Xn;R)H^n(X^{n+1};R)\to H^n(X^n;R)は単射である。従って

Hn(D∗,d∗)≅Hn(Xn+1;R).H^n(D^*,d^*) \cong H^n(X^{n+1};R).

m≥n+2m\ge n+2では、対(Xm,Xm−1)(X^m,X^{m-1})の相対コホモロジーが次数mm以外で零である。その長完全列から、骨格制限は次数n−1n-1とnnの双方で同型になる。補題 2.2をM=n+1M=n+1として適用すると

Hn(X;R)→≅Hn(Xn+1;R)H^n(X;R)\xrightarrow{\cong}H^n(X^{n+1};R)

を得る。従ってHcelln(X;R)≅Hn(X;R)H^n_{\mathrm{cell}}(X;R)\cong H^n(X;R)である。この議論は各固定次数の骨格長完全列と余鎖の持ち上げだけを用いており、骨格数や各次元の胞体数に有限性を仮定しない。

胞体写像は骨格、骨格対の長完全列、相対基本類への評価および安定比較のすべてを可換にするので、構成した同型は胞体写像について自然である。▨

3 実射影空間

RPm\mathbb RP^mは各次数0≤n≤m0\le n\le mに一つの胞体をもつ。標準的な向きのもとで、整数係数胞体境界は

dn={2,n が正の偶数,0,n が奇数d_n= \begin{cases} 2,&n\text{ が正の偶数},\\ 0,&n\text{ が奇数} \end{cases}

である。したがって余境界δn=dn+1∗\delta^n=d_{n+1}^*は、nnが奇数なら22倍写像、nnが偶数なら零写像である。

例 3.1 (実射影平面の余境界).RP2\mathbb RP^2の整数係数胞体鎖複体と胞体余鎖複体は、それぞれ

0⟶Z→ 2 Z→ 0 Z⟶0,0\longrightarrow\mathbb Z\xrightarrow{\,2\,}\mathbb Z \xrightarrow{\,0\,}\mathbb Z\longrightarrow0,0⟶Z→ 0 Z→ 2 Z⟶00\longrightarrow\mathbb Z\xrightarrow{\,0\,}\mathbb Z \xrightarrow{\,2\,}\mathbb Z\longrightarrow0

である。したがって

H0(RP2;Z)≅Z,H1(RP2;Z)=0,H2(RP2;Z)≅Z/2ZH^0(\mathbb RP^2;\mathbb Z)\cong\mathbb Z,\qquad H^1(\mathbb RP^2;\mathbb Z)=0,\qquad H^2(\mathbb RP^2;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z

となる。特にδ0=0\delta^0=0、δ1=2\delta^1=2である。

同じ胞体鎖複体から

H1(RP2;Z)=ker⁡(d1)/im⁡(d2)=Z/2ZH_1(\mathbb RP^2;\mathbb Z) =\ker(d_1)/\operatorname{im}(d_2) =\mathbb Z/2\mathbb Z

と直接読み取ることができる。一方、転置した余鎖複体では

H2(RP2;Z)=coker⁡(δ1)=Z/2ZH^2(\mathbb RP^2;\mathbb Z) =\operatorname{coker}(\delta^1) =\mathbb Z/2\mathbb Z

である。従って、H1H_1にある22捩れがH2H^2へ一次数上がって現れることは、普遍係数定理を用いず、同じ22倍写像を鎖複体と余鎖複体で直接読むだけで確認することができる。

同じ計算により、0<n<m0<n<mでは

Hn(RPm;Z)≅{Z/2Z,n が正の偶数,0,n が奇数,H^n(\mathbb RP^m;\mathbb Z)\cong \begin{cases} \mathbb Z/2\mathbb Z,&n\text{ が正の偶数},\\ 0,&n\text{ が奇数}, \end{cases}

である。最上次では、mmが奇数ならHm≅ZH^m\cong\mathbb Z、mmが偶数ならHm≅Z/2ZH^m\cong\mathbb Z/2\mathbb Zとなる。

4 複素射影空間と閉曲面

例 4.1 (複素射影空間の加法群).CPm\mathbb CP^mは各偶数次0,2,…,2m0,2,\ldots,2mに一つの胞体をもち、奇数次の胞体をもたない。したがってすべての胞体境界と余境界が零であり、

Hn(CPm;Z)≅{Z,n=0,2,…,2m,0,その他H^n(\mathbb CP^m;\mathbb Z)\cong \begin{cases} \mathbb Z,&n=0,2,\ldots,2m,\\ 0,&\text{その他} \end{cases}

である。この計算だけでは、正の偶数次の生成元どうしの積は決まらない。

例 4.2 (閉曲面の胞体コホモロジー). 向きづけられた種数ggの閉曲面Σg\Sigma_gの標準胞体分解では、一つの零胞体、2g2g個の一胞体、一つの二胞体を取り、d1=d2=0d_1=d_2=0となる。したがって

H0(Σg;Z)≅Z,H1(Σg;Z)≅Z2g,H2(Σg;Z)≅ZH^0(\Sigma_g;\mathbb Z)\cong\mathbb Z,\qquad H^1(\Sigma_g;\mathbb Z)\cong\mathbb Z^{2g},\qquad H^2(\Sigma_g;\mathbb Z)\cong\mathbb Z

である。

hh個の射影平面の連結和である非向きづけ可能閉曲面NhN_hでは、一つの零胞体、hh個の一胞体、一つの二胞体を取り、

d2(1)=2(e1+⋯+eh),d1=0d_2(1)=2(e_1+\cdots+e_h),\qquad d_1=0

と定めることができる。したがってδ0=0\delta^0=0であり、δ1:Zh→Z\delta^1:\mathbb Z^h\to\mathbb Zは

(x1,…,xh)⟼2(x1+⋯+xh)(x_1,\ldots,x_h)\longmapsto2(x_1+\cdots+x_h)

である。ゆえに

H0(Nh;Z)≅Z,H1(Nh;Z)≅Zh−1,H2(Nh;Z)≅Z/2ZH^0(N_h;\mathbb Z)\cong\mathbb Z,\qquad H^1(N_h;\mathbb Z)\cong\mathbb Z^{h-1},\qquad H^2(N_h;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z

となる。Klein の壺はh=2h=2の場合なので、H1≅ZH^1\cong\mathbb Z、H2≅Z/2ZH^2\cong\mathbb Z/2\mathbb Zである。

5 演習

問題 5.1.

  1. 胞体余境界δn\delta^nの行列がdn+1d_{n+1}の転置であり、dnd_nの転置ではない理由を述べよ。
  2. RP2\mathbb RP^2でδ0=0\delta^0=0、δ1=2\delta^1=2となることを、胞体鎖複体から説明せよ。
  3. 非向きづけ可能閉曲面NhN_hのH1(Nh;Z)H^1(N_h;\mathbb Z)の基底を、ker⁡δ1⊆Zh\ker\delta^1\subseteq\mathbb Z^hの元として一組挙げよ。
解答.
  1. nn次余鎖へ余境界を施すと(n+1)(n+1)次余鎖になる。その値は(δnφ)(c)=φ(dn+1c)(\delta^n\varphi)(c)=\varphi(d_{n+1}c)で決まるため、転置する行列はCn+1→CnC_{n+1}\to C_nを表すdn+1d_{n+1}の行列である。
  2. 胞体鎖複体ではd1=0d_1=0、d2=2d_2=2である。したがってδ0=d1∗=0\delta^0=d_1^*=0、δ1=d2∗=2\delta^1=d_2^*=2となる。
  3. 例えばe1∗−eh∗,…,eh−1∗−eh∗e_1^*-e_h^*,\ldots,e_{h-1}^*-e_h^*は座標の和が零なのでker⁡δ1\ker\delta^1に属し、階数h−1h-1の自由基底をなす。

▨

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.胞体コホモロジーの構成、骨格による比較、および射影空間の計算を参考にした。

前提記事