§E18.4基本群の関手性とホモトピー不変性

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連続写像はループをループへ送り、基本群の準同型を誘導する。基点を保たないホモトピーでは基点が道に沿って動くため、二つの誘導準同型は基点変更同型を介して比較する必要がある。

1 誘導準同型と関手性

定理 1.1. 基点付き連続写像f:(X,x0)→(Y,y0)f:(X,x_0)\to(Y,y_0)、すなわちf(x0)=y0f(x_0)=y_0を満たす連続写像に対し、

f#:π1(X,x0)⟶π1(Y,y0),f#([α])=[f∘α]f_\#:\pi_1(X,x_0)\longrightarrow\pi_1(Y,y_0), \qquad f_\#([\alpha])=[f\circ\alpha]

は well-defined な群準同型である。

証明.α≃β\alpha\simeq\betaを端点固定ホモトピーHHが与えるなら、f∘Hf\circ Hはf∘αf\circ\alphaからf∘βf\circ\betaへの端点固定ホモトピーである。したがってf#f_\#は代表元の選択に依存しない。

道の積の定義から

f∘(α∗β)=(f∘α)∗(f∘β)f\circ(\alpha*\beta)=(f\circ\alpha)*(f\circ\beta)

が写像として成り立つ。よって

f#([α][β])=f#([α])f#([β])f_\#([\alpha][\beta])=f_\#([\alpha])f_\#([\beta])

であり、f#f_\#は群準同型である。▨

定理 1.2. 基点付き連続写像f:(X,x0)→(Y,y0)f:(X,x_0)\to(Y,y_0)とg:(Y,y0)→(Z,z0)g:(Y,y_0)\to(Z,z_0)に対し、

(g∘f)#=g#∘f#,(id⁡X)#=id⁡π1(X,x0)(g\circ f)_\#=g_\#\circ f_\#, \qquad (\operatorname{id}_X)_\#=\operatorname{id}_{\pi_1(X,x_0)}

が成り立つ。したがって、基本群は基点付き位相空間と基点付き連続写像から群と群準同型への関手をなす。

証明. 任意のループα\alphaに対し、

(g∘f)#([α])=[g∘f∘α]=g#([f∘α])=(g#∘f#)([α])(g\circ f)_\#([\alpha])=[g\circ f\circ\alpha] =g_\#([f\circ\alpha]) =(g_\#\circ f_\#)([\alpha])

である。また、id⁡X∘α=α\operatorname{id}_X\circ\alpha=\alphaであるから恒等写像に関する等式も成り立つ。▨

基点変更と誘導準同型は次の意味で可換する。

補題 1.3.f:X→Yf:X\to Yを連続写像とし、γ\gammaをx0x_0からx1x_1への道とする。ffが各基点で誘導する準同型を添字で区別すると、

fx1#∘βγ=βf∘γ∘fx0#f_{x_1\#}\circ\beta_\gamma = \beta_{f\circ\gamma}\circ f_{x_0\#}

が成り立つ。

証明.x0x_0におけるループα\alphaに対し、左辺は

[f∘γˉ∗f∘α∗f∘γ][f\circ\bar\gamma*f\circ\alpha*f\circ\gamma]

を与える。これは右辺が与える値と同じである。▨

2 自由ホモトピーと基点の移動

補題 2.1.f,f′:X→Yf,f':X\to Yを連続写像とし、H:f≃f′H:f\simeq f'とする。x0∈Xx_0\in Xを固定し、

h(t)=H(x0,t)h(t)=H(x_0,t)

をf(x0)f(x_0)からf′(x0)f'(x_0)への道とする。このとき

fx0#′=βh∘fx0#:π1(X,x0)⟶π1(Y,f′(x0))f'_{x_0\#}=\beta_h\circ f_{x_0\#}: \pi_1(X,x_0)\longrightarrow\pi_1(Y,f'(x_0))

である。

証明.α\alphaをx0x_0におけるループとし、F(s,t)=H(α(s),t)F(s,t)=H(\alpha(s),t)と定める。正方形の境界を

(0,0)→(1,0)→(1,1)→(0,1)→(0,0)(0,0)\to(1,0)\to(1,1)\to(0,1)\to(0,0)

の順にたどると、そのFFによる像は

(f∘α)∗h∗f′∘α‾∗hˉ(f\circ\alpha)*h*\overline{f'\circ\alpha}*\bar h

である。正方形の境界ループは正方形内で定値ループにホモトピックであるため、この像もYY内で定値ループにホモトピックである。基本群で積を整理すると

[f′∘α]=[hˉ∗(f∘α)∗h]=βh(fx0#([α]))[f'\circ\alpha]=[\bar h*(f\circ\alpha)*h] =\beta_h(f_{x_0\#}([\alpha]))

を得る。▨

3 ホモトピー同値と基本群

定義 3.1. 連続写像f:X→Yf:X\to Yがホモトピー同値写像であるとは、連続写像g:Y→Xg:Y\to Xが存在して

g∘f≃id⁡X,f∘g≃id⁡Yg\circ f\simeq\operatorname{id}_X, \qquad f\circ g\simeq\operatorname{id}_Y

となることをいう。

定理 3.2.f:X→Yf:X\to Yがホモトピー同値写像なら、任意のx0∈Xx_0\in Xに対して

fx0#:π1(X,x0)⟶π1(Y,f(x0))f_{x_0\#}:\pi_1(X,x_0)\longrightarrow\pi_1(Y,f(x_0))

は群の同型である。

証明.g:Y→Xg:Y\to Xをホモトピー逆写像とする。H:g∘f≃id⁡XH:g\circ f\simeq\operatorname{id}_Xとし、h(t)=H(x0,t)h(t)=H(x_0,t)とおく。補題 2.1により

id⁡π1(X,x0)=βh∘(g∘f)x0#=βh∘gf(x0)#∘fx0#.\operatorname{id}_{\pi_1(X,x_0)} =\beta_h\circ(g\circ f)_{x_0\#} =\beta_h\circ g_{f(x_0)\#}\circ f_{x_0\#}.

右辺でfx0#f_{x_0\#}より後の写像を合成すると左逆写像になるため、fx0#f_{x_0\#}は単射である。

次にK:f∘g≃id⁡YK:f\circ g\simeq\operatorname{id}_Yをy0=f(x0)y_0=f(x_0)で考える。同じ議論から(f∘g)y0#(f\circ g)_{y_0\#}は同型である。関手性により

(f∘g)y0#=fg(y0)#∘gy0#(f\circ g)_{y_0\#}=f_{g(y_0)\#}\circ g_{y_0\#}

であるから、fg(y0)#f_{g(y_0)\#}は全射である。

hhはg(f(x0))=g(y0)g(f(x_0))=g(y_0)からx0x_0への道である。補題 1.3により

fx0#∘βh=βf∘h∘fg(y0)#.f_{x_0\#}\circ\beta_h =\beta_{f\circ h}\circ f_{g(y_0)\#}.

二つの基点変更写像は同型であり、右辺の最後の写像は全射である。したがってfx0#f_{x_0\#}は全射である。以上からfx0#f_{x_0\#}は同型である。▨

系 3.3. ホモトピー同値な二つの空間は、対応する基点において同型な基本群をもつ。

定義 3.4. 空でない位相空間XXが単連結 (simply connected) であるとは、XXが弧状連結であり、ある基点x0∈Xx_0\in Xに対してπ1(X,x0)\pi_1(X,x_0)が自明群であることをいう。弧状連結性と基点変更同型により、この条件は基点の選択に依存しない。

系 3.5. 可縮空間は単連結であり、その基本群は自明群である。

証明. 可縮空間は一点空間とホモトピー同値である。一点空間は弧状連結で、その基本群は自明群である。定理 3.2により、可縮空間の基本群も自明である。また、可縮ホモトピーは任意の点を縮約点へ結ぶ道を与えるため、可縮空間は弧状連結である。▨

定理 3.6. 空でない凸集合C⊆RnC\subseteq\mathbb R^nは単連結である。

証明.x0∈Cx_0\in Cを固定する。H(x,t)=(1−t)x+tx0H(x,t)=(1-t)x+tx_0と定めると、凸性からH(x,t)∈CH(x,t)\in Cであり、HHは恒等写像からx0x_0への定値写像へのホモトピーである。したがってCCは可縮であり、系 3.5から単連結である。▨

例 3.7 (円板の可縮性). 閉円板D2D^2ではH(x,t)=(1−t)xH(x,t)=(1-t)xが恒等写像から原点への定値写像へのホモトピーを与える。したがってD2D^2は可縮であり、π1(D2)=0\pi_1(D^2)=0である。

4 演習

問題 4.1.

  1. f#f_\#がホモトピー類の代表元に依存しないことを証明するとき、端点固定条件をどこで用いるかを述べよ。
  2. H:f≃f′H:f\simeq f'が基点を固定しない場合にf#=f#′f_\#=f'_\#と書くことができない理由を、定義域と終域から説明せよ。
  3. ホモトピー不変性の証明で、fg(f(x0))#f_{g(f(x_0))\#}の全射性からfx0#f_{x_0\#}の全射性へ移るために必要な写像を述べよ。
解答.
  1. f∘Hf\circ Hの両端が常にf(x0)=y0f(x_0)=y_0に固定されることを確認する箇所で用いる。この条件がなければ、f∘αf\circ\alphaとf∘βf\circ\betaは同じ基点のループの端点固定ホモトピー類にならない。
  2. f#f_\#の終域はπ1(Y,f(x0))\pi_1(Y,f(x_0))であり、f#′f'_\#の終域はπ1(Y,f′(x0))\pi_1(Y,f'(x_0))である。二つの基点が異なる場合、道h(t)=H(x0,t)h(t)=H(x_0,t)による基点変更同型を挟む必要がある。
  3. g(f(x0))g(f(x_0))からx0x_0への道hhによるXX側の基点変更同型と、その像f∘hf\circ hによるYY側の基点変更同型を用いる。基点変更の自然性が二つのf#f_\#を結ぶ。

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参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.基本群の関手性とホモトピー不変性の標準的な証明を参考にした。

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