§E18.26特異コホモロジーと完全列

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ホモロジーでは連続写像と同じ向きに鎖を送った。コホモロジーでは鎖上の関数を合成によって引き戻すため、写像の向きが逆になる。本記事では、この反変性を定義から確かめた後、相対余鎖の短完全列を構成する。短完全列の分裂に用いるのは、自由加群であることだけではなく、部分空間に入る特異単体が基底の部分集合をなすことである。

本記事を通じて、RRは単位元をもつ可換環とする。Cn(X;R)C_n(X;R)は、XXの特異nn単体を基底とする自由RR加群である。

1 余鎖複体と反変性

境界作用素を双対化すると、次数を一つ上げる余境界作用素が得られる。

定義 1.1.XXの nn次特異余鎖加群 (singular n-cochain module) と余境界作用素 (coboundary operator) を

Cn(X;R):=Hom⁡R(Cn(X;R),R),(δnφ)(c):=φ(∂n+1c)C^n(X;R):=\operatorname{Hom}_R(C_n(X;R),R),\qquad (\delta^n\varphi)(c):=\varphi(\partial_{n+1}c)

で定める。δn+1δn=0\delta^{n+1}\delta^n=0であるから、第nn特異コホモロジー加群 (singular n-th cohomology module) を

Hn(X;R):=ker⁡δn/im⁡δn−1H^n(X;R):=\ker\delta^n/\operatorname{im}\delta^{n-1}

と定める。

δ2=0\delta^2=0は境界作用素の関係をそのまま双対化した結果である。実際、c∈Cn+2(X;R)c\in C_{n+2}(X;R)に対して

(δn+1δnφ)(c)=φ(∂n+1∂n+2c)=0(\delta^{n+1}\delta^n\varphi)(c) =\varphi(\partial_{n+1}\partial_{n+2}c)=0

である。

定理 1.2. 連続写像f:X→Yf:X\to Yは

f∗:Hn(Y;R)⟶Hn(X;R)f^*:H^n(Y;R)\longrightarrow H^n(X;R)

を誘導する。連続写像g:Y→Zg:Y\to Zに対して

(g∘f)∗=f∗∘g∗,(id⁡X)∗=id⁡Hn(X;R)(g\circ f)^*=f^*\circ g^*,\qquad (\operatorname{id}_X)^*=\operatorname{id}_{H^n(X;R)}

が成り立つ。

証明.ffが誘導する鎖写像をf#:Cn(X;R)→Cn(Y;R)f_\#:C_n(X;R)\to C_n(Y;R)と書く。余鎖φ∈Cn(Y;R)\varphi\in C^n(Y;R)に対して

f#φ:=φ∘f#f^\#\varphi:=\varphi\circ f_\#

と定める。f#∂=∂f#f_\#\partial=\partial f_\#であるから

δ(f#φ)=φf#∂=φ∂f#=f#(δφ)\delta(f^\#\varphi)=\varphi f_\#\partial =\varphi\partial f_\#=f^\#(\delta\varphi)

であり、f#f^\#は余鎖写像である。したがってf#f^\#はコサイクルをコサイクルへ、コバウンダリをコバウンダリへ送り、商上の写像f∗f^*を誘導する。

鎖写像について(g∘f)#=g#∘f#(g\circ f)_\#=g_\#\circ f_\#であるから、余鎖上では

(g∘f)#φ=φg#f#=f#(g#φ)(g\circ f)^\#\varphi=\varphi g_\#f_\# =f^\#(g^\#\varphi)

となる。恒等写像についても同様である。これらの等式は商へ降りるので、定理の二つの関係を得る。▨

2 相対余鎖と次数ごとの分裂

部分空間A⊆XA\subseteq Xを固定する。Cn(A;R)C_n(A;R)の基底は、像がAAに含まれる特異nn単体である。この基底はCn(X;R)C_n(X;R)の基底の部分集合である。

定義 2.1. 相対鎖加群Cn(X,A;R)=Cn(X;R)/Cn(A;R)C_n(X,A;R)=C_n(X;R)/C_n(A;R)に対して

Cn(X,A;R):=Hom⁡R(Cn(X,A;R),R)C^n(X,A;R):=\operatorname{Hom}_R(C_n(X,A;R),R)

と定める。商写像との合成により、Cn(X,A;R)C^n(X,A;R)を「AAに入るすべての特異nn単体上で零になるXXの余鎖」の部分加群と同一視する。この部分加群はδ\deltaで保たれる。そのコホモロジーをHn(X,A;R)H^n(X,A;R)と書く。

命題 2.2. 各次数nnについて

0⟶Cn(X,A;R)→j#Cn(X;R)→i#Cn(A;R)⟶00\longrightarrow C^n(X,A;R) \xrightarrow{j^\#}C^n(X;R) \xrightarrow{i^\#}C^n(A;R) \longrightarrow0

は分裂短完全列である。ここでj#j^\#は相対余鎖を絶対余鎖とみなす包含、i#i^\#はAAへの制限である。分裂は次数ごとに存在するが、一般には余境界作用素と可換しない。

証明.XXの特異nn単体のうち、像がAAに含まれないものが張る自由部分加群をFn(X,A;R)F_n(X,A;R)と書く。基底が互いに素な二つの部分へ分かれるので

Cn(X;R)=Cn(A;R)⊕Fn(X,A;R)C_n(X;R)=C_n(A;R)\oplus F_n(X,A;R)

である。したがって、AAの余鎖α\alphaに対し、Cn(A;R)C_n(A;R)上ではα\alpha、Fn(X,A;R)F_n(X,A;R)上では零と定める延長sn(α)s_n(\alpha)が存在する。i#sn=id⁡i^\#s_n=\operatorname{id}であるからi#i^\#は全射である。

i#φ=0i^\#\varphi=0であることは、φ\varphiがCn(A;R)C_n(A;R)上で零になることと同値であり、これはφ\varphiが商Cn(X,A;R)C_n(X,A;R)を通じて一意に分解することと同値である。したがってker⁡i#=im⁡j#\ker i^\#=\operatorname{im}j^\#である。j#j^\#の単射性は商写像の全射性から従う。

この証明で用いたのは、Cn(X;R)C_n(X;R)が自由であることだけではなく、Cn(A;R)C_n(A;R)が指定された基底の部分集合で生成されることである。例えば0→2Z→Z→Z/2Z→00\to2\mathbb Z\to\mathbb Z\to\mathbb Z/2\mathbb Z\to0は中項が自由であっても分裂しない。なお、補集合に属する単体の境界がAAに入ることがあるため、sns_nは一般に余鎖写像ではない。▨

後で小さい鎖複体を双対化するために、自由複体について必要となる代数的事実をここで証明する。

補題 2.3.RR上の鎖複体P∗P_*が負次数で零であり、各PnP_nが自由RR加群であるとする。

  1. P∗P_*が非輪状なら、RR線形写像hn:Pn→Pn+1h_n:P_n\to P_{n+1}で ∂h+h∂=1P∗\partial h+h\partial=1_{P_*} を満たすものが存在する。すなわちP∗P_*は可縮である。
  2. 負次数で零の自由複体の間の準同型f:C∗→D∗f:C_*\to D_*が quasi-isomorphism なら、ffは鎖ホモトピー同値である。したがって双対写像 f∗:Hom⁡R(D∗,R)⟶Hom⁡R(C∗,R)f^*:\operatorname{Hom}_R(D_*,R)\longrightarrow \operatorname{Hom}_R(C_*,R) は余鎖ホモトピー同値である。

証明.(1)を示す。Zn:=ker⁡(∂:Pn→Pn−1)Z_n:=\ker(\partial:P_n\to P_{n-1})、Z−1:=0Z_{-1}:=0と置く。非輪状性から各n≥0n\geq0について

0⟶Zn⟶Pn→∂Zn−1⟶00\longrightarrow Z_n\longrightarrow P_n \xrightarrow{\partial}Z_{n-1}\longrightarrow0

が完全である。Z−1Z_{-1}は射影加群である。Zn−1Z_{n-1}が射影的なら上の列は分裂し、ZnZ_nは自由加群PnP_nの直和因子になるので射影的である。帰納法により、すべての列に切断

sn−1:Zn−1⟶Pn,∂sn−1=1Zn−1s_{n-1}:Z_{n-1}\longrightarrow P_n, \qquad \partial s_{n-1}=1_{Z_{n-1}}

を選ぶことができる。分解Pn=Zn⊕sn−1(Zn−1)P_n=Z_n\oplus s_{n-1}(Z_{n-1})に沿う射影をπn:Pn→Zn\pi_n:P_n\to Z_nとし、hn:=snπnh_n:=s_n\pi_nと置く。x=z+sn−1(w)x=z+s_{n-1}(w)に対して

(∂hn+hn−1∂)x=z+sn−1(w)=x(\partial h_n+h_{n-1}\partial)x =z+s_{n-1}(w)=x

であるから、hhは縮約である。

(2)を示す。写像錐

Cone⁡(f)n=Dn⊕Cn−1,d(d,c)=(∂Dd+f(c),−∂Cc)\operatorname{Cone}(f)_n=D_n\oplus C_{n-1}, \qquad d(d,c)=(\partial_Dd+f(c),-\partial_Cc)

を取る。ffが quasi-isomorphism であることと写像錐の長完全列から、Cone⁡(f)\operatorname{Cone}(f)は非輪状である。各項は自由であり、負次数で零なので、(1)によって写像錐は可縮である。縮約を直和分解に関する行列で

Hn=(AnBnGnEn)H_n= \begin{pmatrix} A_n&B_n\\ G_n&E_n \end{pmatrix}

と書く。等式dH+Hd=1dH+Hd=1の左下成分は

∂CGn=Gn−1∂D\partial_CG_n=G_{n-1}\partial_D

を与えるので、G:D∗→C∗G:D_*\to C_*は鎖写像である。左上成分と右下成分は、それぞれ

1D−fG=∂DA+A∂D,Gf−1C=∂CK+K∂C1_D-fG=\partial_DA+A\partial_D, \qquad Gf-1_C=\partial_CK+K\partial_C

を与える。ここでKm:=Em+1:Cm→Cm+1K_m:=E_{m+1}:C_m\to C_{m+1}と置いた。したがってGGはffの鎖ホモトピー逆である。二つの鎖ホモトピーをHom⁡R(−,R)\operatorname{Hom}_R(-,R)で前合成すると余鎖ホモトピーが得られるため、双対写像も余鎖ホモトピー同値である。▨

3 対の長完全列

次数ごとの短完全性は余境界作用素と両立するので、三つの余鎖複体の短完全列になる。連結準同型を代表元から構成する。

定理 3.1 (対のコホモロジー長完全列). 包含i:A↪Xi:A\hookrightarrow Xに対して

⋯⟶Hn(X,A;R)→j∗Hn(X;R)→i∗Hn(A;R)→βHn+1(X,A;R)⟶⋯\cdots\longrightarrow H^n(X,A;R) \xrightarrow{j^*}H^n(X;R) \xrightarrow{i^*}H^n(A;R) \xrightarrow{\beta}H^{n+1}(X,A;R) \longrightarrow\cdots

は完全である。連結準同型β\betaは、AAのコサイクルα\alphaをXXの余鎖α~\widetilde\alphaへ延長して

β[α]=[δα~]\beta[\alpha]=[\delta\widetilde\alpha]

と定める。

証明.α∈Cn(A;R)\alpha\in C^n(A;R)がコサイクルなら、i#(δα~)=δα=0i^\#(\delta\widetilde\alpha)=\delta\alpha=0である。したがってδα~\delta\widetilde\alphaは相対余鎖であり、しかもコサイクルである。二つの延長の差は相対余鎖λ\lambdaなので、対応する二つの像の差は相対コバウンダリδλ\delta\lambdaである。α\alphaを同じコホモロジー類の代表へ取り替えた場合も、取り替えの差をXXへ延長すると像は相対コバウンダリだけ変わる。よってβ\betaは well-defined である。

完全性を三箇所で確かめる。絶対コサイクルの制限が零なら、そのコサイクルは相対余鎖なのでker⁡i∗=im⁡j∗\ker i^*=\operatorname{im}j^*である。より一般に制限がδγ\delta\gammaである場合は、γ\gammaをXXへ延長して絶対コサイクルからその余境界を引けば、同じ絶対コホモロジー類を表す相対コサイクルを得る。

AAのコサイクルα\alphaが絶対コサイクルの制限なら、δα~=0\delta\widetilde\alpha=0となる延長α~\widetilde\alphaを選ぶことができるのでβ[α]=0\beta[\alpha]=0である。逆にβ[α]=0\beta[\alpha]=0なら、ある相対余鎖λ\lambdaに対してδα~=δλ\delta\widetilde\alpha=\delta\lambdaと書くことができる。α~−λ\widetilde\alpha-\lambdaは絶対コサイクルであり、そのAAへの制限はα\alphaである。したがってker⁡β=im⁡i∗\ker\beta=\operatorname{im}i^*である。

最後に、相対コサイクルω\omegaの絶対コホモロジー類が零ならω=δη\omega=\delta\etaとなる絶対余鎖η\etaが存在する。i#ηi^\#\etaはAAのコサイクルであり、その任意の延長としてη\etaを選べばβ[i#η]=[ω]\beta[i^\#\eta]=[\omega]となる。したがってker⁡j∗=im⁡β\ker j^*=\operatorname{im}\betaである。次数をずらして同じ議論を繰り返すと、列全体の完全性を得る。▨

4 Mayer–Vietoris 完全列

X=U∪VX=U\cup Vを二つの開集合による被覆とする。C∗U,V(X;R)C_*^{U,V}(X;R)を、像がUUまたはVVのいずれか一方に含まれる特異単体が生成する部分複体とする。

定理 4.1 (コホモロジーの Mayer–Vietoris 完全列).X=U∪VX=U\cup Vが二つの開集合による被覆なら

⋯⟶Hn(X;R)→(rU,rV)Hn(U;R)⊕Hn(V;R)→dHn(U∩V;R)→∂MVHn+1(X;R)⟶⋯\cdots\longrightarrow H^n(X;R) \xrightarrow{(r_U,r_V)}H^n(U;R)\oplus H^n(V;R) \xrightarrow{d}H^n(U\cap V;R) \xrightarrow{\partial_{MV}}H^{n+1}(X;R) \longrightarrow\cdots

は完全である。ここでd(α,β)=α∣U∩V−β∣U∩Vd(\alpha,\beta)=\alpha|_{U\cap V}-\beta|_{U\cap V}である。

証明. 鎖複体には次数ごとの分裂短完全列

0⟶C∗(U∩V;R)→c↦(c,−c)C∗(U;R)⊕C∗(V;R)→(a,b)↦a+bC∗U,V(X;R)⟶00\longrightarrow C_*(U\cap V;R) \xrightarrow{c\mapsto(c,-c)}C_*(U;R)\oplus C_*(V;R) \xrightarrow{(a,b)\mapsto a+b}C_*^{U,V}(X;R) \longrightarrow0

がある。実際、各特異単体がUUとVVのどちらに入るかを基底ごとに調べれば、核と像の一致および次数ごとの分裂を得る。Hom⁡R(−,R)\operatorname{Hom}_R(-,R)を施すと、分裂性によって

0⟶CU,V∗(X;R)⟶C∗(U;R)⊕C∗(V;R)→α−βC∗(U∩V;R)⟶00\longrightarrow C^*_{U,V}(X;R) \longrightarrow C^*(U;R)\oplus C^*(V;R) \xrightarrow{\alpha-\beta}C^*(U\cap V;R) \longrightarrow0

が短完全列になる。ここでCU,V∗(X;R)=Hom⁡R(C∗U,V(X;R),R)C^*_{U,V}(X;R)=\operatorname{Hom}_R(C_*^{U,V}(X;R),R)である。

小さい単体の定理§E18.14 定理 3.1は、包含

ι:C∗U,V(X;R)↪C∗(X;R)\iota:C_*^{U,V}(X;R)\hookrightarrow C_*(X;R)

がホモロジー同型を誘導することを証明している。ここでは、この事実から双対余鎖の同型が従う代数的な部分を補う。C∗U,V(X;R)C_*^{U,V}(X;R)は、像がUUまたはVVに含まれる特異単体というC∗(X;R)C_*(X;R)の基底の部分集合で生成される。したがって商複体

Q∗:=C∗(X;R)/C∗U,V(X;R)Q_*:=C_*(X;R)/C_*^{U,V}(X;R)

は各次数で自由であり、負次数で零である。ι\iotaが quasi-isomorphism であることと短完全列

0⟶C∗U,V(X;R)⟶C∗(X;R)⟶Q∗⟶00\longrightarrow C_*^{U,V}(X;R) \longrightarrow C_*(X;R)\longrightarrow Q_*\longrightarrow0

のホモロジー長完全列から、Q∗Q_*は非輪状である。従って補題 2.3によりQ∗Q_*は可縮である。

この鎖複体の短完全列は基底によって次数ごとに分裂するので、Hom⁡R(−,R)\operatorname{Hom}_R(-,R)を施すと短完全列

0⟶Hom⁡R(Q∗,R)⟶C∗(X;R)→ι∗CU,V∗(X;R)⟶00\longrightarrow\operatorname{Hom}_R(Q_*,R) \longrightarrow C^*(X;R) \xrightarrow{\iota^*}C^*_{U,V}(X;R) \longrightarrow0

を得る。Q∗Q_*の縮約を双対化するとHom⁡R(Q∗,R)\operatorname{Hom}_R(Q_*,R)も可縮であるから、この短完全列のコホモロジー長完全列によりι∗\iota^*は quasi-isomorphism である。したがって前の短完全列に付随する長完全列のHn(CU,V∗)H^n(C^*_{U,V})をHn(X;R)H^n(X;R)で標準的に置き換えることができる。写像の符号は鎖側のc↦(c,−c)c\mapsto(c,-c)を双対化したものなので、中央の写像は二つの制限の差になる。▨

5 例

例 5.1 (一点のコホモロジー). 一点∗*の唯一の特異nn単体をσn\sigma_nと書くと、Cn(∗;R)=RσnC_n(*;R)=R\sigma_nである。n>0n>0では

∂σn=(∑i=0n(−1)i)σn−1={σn−1,n が偶数,0,n が奇数\partial\sigma_n= \left(\sum_{i=0}^n(-1)^i\right)\sigma_{n-1} = \begin{cases} \sigma_{n-1},&n\text{ が偶数},\\ 0,&n\text{ が奇数} \end{cases}

である。次数零だけにRRをもつ鎖複体をR[0]R[0]とし、i:R[0]→C∗(∗;R)i:R[0]\to C_*(*;R)を1↦σ01\mapsto\sigma_0、p:C∗(∗;R)→R[0]p:C_*(*;R)\to R[0]をp(σ0)=1p(\sigma_0)=1、p(σn)=0p(\sigma_n)=0(n>0)(n>0)で定める。さらに

hn:Cn(∗;R)⟶Cn+1(∗;R),hn(σn)={σn+1,n が奇数,0,n が偶数h_n:C_n(*;R)\longrightarrow C_{n+1}(*;R), \qquad h_n(\sigma_n)= \begin{cases} \sigma_{n+1},&n\text{ が奇数},\\ 0,&n\text{ が偶数} \end{cases}

と置く。上の境界公式を偶奇に分けて代入すると

∂h+h∂=1−ip\partial h+h\partial=1-ip

となる。従ってC∗(∗;R)C_*(*;R)は、その正規化であるR[0]R[0]へ鎖変形収縮する。この鎖ホモトピーをHom⁡R(−,R)\operatorname{Hom}_R(-,R)で前合成すると、C∗(∗;R)C^*(*;R)はHom⁡R(R[0],R)\operatorname{Hom}_R(R[0],R)へ余鎖変形収縮する。後者は次数零だけにRRをもつので

H0(∗;R)≅R,Hn(∗;R)=0(n>0)H^0(*;R)\cong R,\qquad H^n(*;R)=0\quad(n>0)

である。一般の空間XXについて、零次コサイクルは各道成分上で一定なので、XXが弧状連結ならH0(X;R)≅RH^0(X;R)\cong Rとなる。

6 演習

問題 6.1.

  1. 命題 2.2の分裂が、余鎖複体の分裂であるとは限らない理由を説明せよ。
  2. [α]∈Hn(A;R)[\alpha]\in H^n(A;R)の延長を二通り選んでも、定理 3.1のβ[α]\beta[\alpha]が変わらないことを示せ。
  3. Mayer–Vietoris 列の写像Hn(U)⊕Hn(V)→Hn(U∩V)H^n(U)\oplus H^n(V)\to H^n(U\cap V)に差が現れる理由を、鎖側の単射から説明せよ。
解答.
  1. 補集合に属する特異単体の境界がAAに入ることがあるため、基底上で零延長する写像は一般にδ\deltaと可換しない。分裂は各次数のRR加群についてだけ成立する。
  2. 二つの延長をα~1,α~2\widetilde\alpha_1,\widetilde\alpha_2とすると、その差λ\lambdaはAA上で零になる相対余鎖である。したがってδα~1−δα~2=δλ\delta\widetilde\alpha_1-\delta\widetilde\alpha_2=\delta\lambdaは相対コバウンダリであり、二つは同じ相対コホモロジー類を表す。
  3. 鎖側の単射はc↦(c,−c)c\mapsto(c,-c)である。余鎖(α,β)(\alpha,\beta)を合成するとc↦α(c)−β(c)c\mapsto\alpha(c)-\beta(c)になるため、双対写像は二つの制限の差である。

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参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.特異コホモロジー、対の長完全列、および Mayer–Vietoris 完全列の構成を参考にした。

前提記事