§E18.7van Kampen の定理

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van Kampen の定理は、二つの開集合から空間を貼り合わせたとき、基本群が二つの基本群の自由積に交わり由来の関係を課した群になることを述べる。証明では、ループだけでなくそのホモトピーも開被覆に従属する小片へ分割する。

1 自由積と被覆に従属する道

定義 1.1. 群G,HG,Hの自由積 (free product)G∗HG*Hとは、準同型iG:G→G∗Hi_G:G\to G*H、iH:H→G∗Hi_H:H\to G*Hを備え、任意の群KKと準同型u:G→Ku:G\to K、v:H→Kv:H\to Kに対して、一意な準同型w:G∗H→Kw:G*H\to Kが存在してw∘iG=uw\circ i_G=u、w∘iH=vw\circ i_H=vとなる群である。

X=U∪VX=U\cup Vとし、A=U∩VA=U\cap Vと書く。以下ではU,V,AU,V,Aが弧状連結で、基点x0∈Ax_0\in Aを固定する。

補題 1.2.X=U∪VX=U\cup Vとし、U,VU,Vを弧状連結な開集合、A=U∩VA=U\cap Vも弧状連結とする。基点x0∈Ax_0\in Aを固定する。このとき、任意の道α:[0,1]→X\alpha:[0,1]\to Xは、有限個の道

α=α1∗⋯∗αm\alpha=\alpha_1*\cdots*\alpha_m

へ再パラメータ化を除いて分解することができ、各αi\alpha_iの像はUUまたはVVの一方に含まれる。

α\alphaの両端がAAに属する場合、同じ集合に連続して含まれる小片をまとめることにより、各内部の分点をAAに属するように選ぶことができる。

証明.α−1(U)\alpha^{-1}(U)とα−1(V)\alpha^{-1}(V)は[0,1][0,1]の開被覆である。Lebesgue 数δ>0\delta>0をとり、長さがδ\deltaより小さい有限個の区間へ[0,1][0,1]を分割する。各小区間の像はUUまたはVVの一方に含まれる。線形な再パラメータ化によって、それぞれを道αi\alpha_iとみなせば最初の主張を得る。

隣り合う二つの小片が同じ集合に含まれる限り、それらを一つの小片へまとめる。残った隣接する小片は、一方がUU、他方がVVに含まれる。共有する端点は両方の集合に属するためAAに属する。両端については仮定からAAに属する。▨

この細分から、自由積の商に値をとる道の語を作る。GGを

G=(π1(U,x0)∗π1(V,x0))/NG=\bigl(\pi_1(U,x_0)*\pi_1(V,x_0)\bigr)/N

とし、NNは

iU([ω])iV([ω])−1,[ω]∈π1(A,x0)i_U([\omega])i_V([\omega])^{-1}, \qquad [\omega]\in\pi_1(A,x_0)

で生成される正規部分群とする。

両端がAAに属する道α\alphaを補題 1.2のように分解する。各分点aia_iをx0x_0と結ぶ道λi\lambda_iをAA内にとる。端点がx0x_0の場合は対応するλi\lambda_iを定値道にとる。αi\alpha_iがUUに含まれるなら

[λi−1∗αi∗λˉi]∈π1(U,x0)[\lambda_{i-1}*\alpha_i*\bar\lambda_i]\in\pi_1(U,x_0)

を、VVに含まれるなら同じ式をπ1(V,x0)\pi_1(V,x_0)の元として読み、その積をW(α)∈GW(\alpha)\in Gとする。

補題 1.3.X=U∪VX=U\cup Vとし、U,VU,Vを弧状連結な開集合、A=U∩VA=U\cap Vも弧状連結とする。基点x0∈Ax_0\in Aを固定し、

G=π1(U,x0)∗π1(V,x0)⟨ ⁣⟨iU(ω)iV(ω)−1:ω∈π1(A,x0)⟩ ⁣⟩G=\frac{\pi_1(U,x_0)*\pi_1(V,x_0)} {\left\langle\!\left\langle i_U(\omega)i_V(\omega)^{-1}:\omega\in\pi_1(A,x_0)\right\rangle\!\right\rangle}

とおく。両端がAAに属する道α\alphaに対して前段の構成で得るW(α)∈GW(\alpha)\in Gは、細分、各小片をUUとVVのどちらに属するものとして読むか、および補助道λi\lambda_iの選択に依存しない。また、H(0,t)=α(0)H(0,t)=\alpha(0)、H(1,t)=α(1)H(1,t)=\alpha(1)を満たす端点固定ホモトピーHHに対して不変である。

証明. 最初に選択の独立性を示す。同じ小片がAAに含まれる場合、そのループの類をπ1(U)\pi_1(U)とπ1(V)\pi_1(V)のどちらで読んでも、NNの定義からGGでは同じ元になる。

内部の道λi\lambda_iをλi′\lambda_i'に取り替えると、ii番目とi+1i+1番目の因子の間に、AA内のループλi∗λˉi′\lambda_i*\bar\lambda_i'を一方の群で読み、その逆を他方の群で読む積が挿入される。二つの像はGGで等しいため、この積は単位元である。したがってW(α)W(\alpha)はλi\lambda_iに依存しない。細分点を追加した場合、同じ集合内の二つの因子の間にλ∗λˉ\lambda*\bar\lambdaが現れて消える。細分点を除く操作はこの逆である。異なる二つの細分には共通細分があるため、細分にも依存しない。

次にホモトピー不変性を示す。H:[0,1]2→XH:[0,1]^2\to Xを端点固定ホモトピーとする。H−1(U)H^{-1}(U)とH−1(V)H^{-1}(V)は正方形の開被覆である。Lebesgue 数を用いて正方形を有限格子へ分割し、各小長方形の像がUUまたはVVの一方に含まれるようにする。各小長方形に、その像を含む集合の記号UUまたはVVを一つ割り当てる。

格子頂点vvに対しyv=H(v)y_v=H(v)とおく。vvが記号S∈{U,V}S\in\{U,V\}の小長方形に接しているとき、x0x_0からyvy_vへのSS内の補助道μvS\mu_v^Sを選ぶ。vvが異なる記号の小長方形に接しているならyv∈Ay_v\in Aであるから、AA内の一つの道を選んでμvU=μvV\mu_v^U=\mu_v^Vとする。正方形の左右の辺ではHHが定値であるから、各辺上のすべての格子頂点に同じAA内の補助道を用いる。

記号SSの小長方形の辺を格子頂点vvからwwへ向きづけたものをeeとし、H∣eH|_eをその向きにたどる道とする。辺に対応する元を

gS(e)=[μvS∗(H∣e)∗μwS‾]∈π1(S,x0)g_S(e)=\bigl[\mu_v^S*(H|_e)*\overline{\mu_w^S}\bigr] \in\pi_1(S,x_0)

と定め、そのGGにおける像も同じ記号で表す。異なる記号の小長方形が辺eeを共有するなら、H(e)⊆AH(e)\subseteq Aであり、両端の補助道もAA内にある。したがってGGの定義関係からgU(e)=gV(e)g_U(e)=g_V(e)である。

一つの小長方形RRに記号SSが付いているとする。下辺と上辺を左から右へ向きづけてb,tb,t、左辺と右辺を下から上へ向きづけてl,rl,rと書く。H∣RH|_RはRR全体をSSへ写すため、その境界ループはSS内でヌルホモトピックである。四頂点の補助道を挿入すると、π1(S,x0)\pi_1(S,x_0)において

gS(b)gS(r)gS(t)−1gS(l)−1=1,g_S(b)g_S(r)g_S(t)^{-1}g_S(l)^{-1}=1,

したがって

gS(b)gS(r)=gS(l)gS(t)g_S(b)g_S(r)=g_S(l)g_S(t)

を得る。この等式は、格子道の「下辺を進んで右辺を上る」という部分を、「左辺を上って上辺を進む」という部分へ置き換えても、GGにおける積が変わらないことを示す。

最下段の右端から左端へ小長方形を順に処理し、次いで一段上へ移る操作を繰り返す。最初の格子道は正方形の下辺を左から右へ進んだ後に右辺を上り、最後の格子道は左辺を上った後に上辺を左から右へ進む。各処理は直前の群等式を一回だけ用いる。左右の辺は定値道であり、同じ補助道を両端に用いたので、それらの各辺に対応する元は単位元である。したがって下辺の積と上辺の積はGGで等しい。選択の独立性により、これらはそれぞれW(H(−,0))W(H(-,0))とW(H(−,1))W(H(-,1))に等しい。よってWWは端点固定ホモトピーに対して不変である。▨

2 van Kampen の定理

定理 2.1 (van Kampen の定理).X=U∪VX=U\cup Vとし、U,VU,Vを弧状連結な開集合、A=U∩VA=U\cap Vも弧状連結とする。基点x0∈Ax_0\in Aを固定する。包含が誘導する準同型を

iU:π1(A,x0)→π1(U,x0),iV:π1(A,x0)→π1(V,x0)i_U:\pi_1(A,x_0)\to\pi_1(U,x_0), \qquad i_V:\pi_1(A,x_0)\to\pi_1(V,x_0)

と書くと、

π1(X,x0)≅π1(U,x0)∗π1(V,x0)⟨ ⁣⟨iU(ω)iV(ω)−1:ω∈π1(A,x0)⟩ ⁣⟩\pi_1(X,x_0)\cong \frac{\pi_1(U,x_0)*\pi_1(V,x_0)} {\left\langle\!\left\langle i_U(\omega)i_V(\omega)^{-1}: \omega\in\pi_1(A,x_0) \right\rangle\!\right\rangle}

である。

証明. 分母に現れる正規部分群をNNとし、右辺の商群をGGと書く。

包含が誘導する二つの準同型から、自由積の普遍性により準同型

Φ:π1(U,x0)∗π1(V,x0)⟶π1(X,x0)\Phi:\pi_1(U,x_0)*\pi_1(V,x_0)\longrightarrow\pi_1(X,x_0)

を得る。AAのループをUUとVVのどちらからXXへ入れても同じループになるため、N⊆ker⁡ΦN\subseteq\ker\Phiである。よってΦ\Phiは準同型Φˉ:G→π1(X,x0)\bar\Phi:G\to\pi_1(X,x_0)を誘導する。

全射性を示す。XXの任意の基点付きループα\alphaを補題 1.2によって分解する。定義からW(α)W(\alpha)をXXの基本群へ送ると、内部に挿入したλˉi∗λi\bar\lambda_i*\lambda_iが相次いで消え、[α][\alpha]を得る。したがってΦˉ\bar\Phiは全射である。

単射性を示す。g∈Gg\in Gをとる。自由積の語を各因子の基点付きループで表し、それらを道の積でつなぐと、XXの基点付きループα\alphaでg=W(α)g=W(\alpha)を満たすものを得る。Φˉ(g)=1\bar\Phi(g)=1と仮定すると、α\alphaはXX内で定値ループに端点固定ホモトピックである。補題 1.3のホモトピー不変性により

g=W(α)=W(ex0)=1g=W(\alpha)=W(e_{x_0})=1

である。よってΦˉ\bar\Phiは単射であり、同型である。▨

ループの像がXX全体に一致する場合もあるため、「ループの像に含まれない一点を取り除く」という議論は一般には使うことができない。上の証明は定義域の区間とホモトピーの正方形を細分するため、ループが全射である場合にも適用することができる。

3 基本的な計算

命題 3.1. 正の整数mmに対し、

π1(⋁i=1mSi1)≅F(a1,…,am),\pi_1\left(\bigvee_{i=1}^m S_i^1\right) \cong F(a_1,\ldots,a_m),

ここでF(a1,…,am)F(a_1,\ldots,a_m)はmm個の生成元をもつ自由群である。特に、

π1(S1∨S1)≅F(a,b)\pi_1(S^1\vee S^1)\cong F(a,b)

である。

証明.mmに関する帰納法を用いる。m=1m=1では円周の基本群の計算から主張が成り立つ。m−1m-1個の場合を仮定し、mm個の円周の楔和を、最初のm−1m-1個の円周の楔和の小さい開近傍UUと、最後の円周の小さい開近傍VVで覆う。U,VU,Vは弧状連結な開集合であり、楔点x0x_0を含む交わりU∩VU\cap Vは弧状連結かつ可縮になるように取ることができる。また、UUは最初のm−1m-1個の円周の楔和へ、VVは最後の円周へ変位レトラクトする。したがって定理 2.1と帰納法の仮定から

π1(⋁i=1mSi1,x0)≅F(a1,…,am−1)∗Z≅F(a1,…,am)\pi_1\left(\bigvee_{i=1}^m S_i^1,x_0\right) \cong F(a_1,\ldots,a_{m-1})*\mathbb Z \cong F(a_1,\ldots,a_m)

を得る。有限回の帰納により主張が従う。▨

命題 3.2. 整数n≥2n\ge2に対し、π1(Sn)=0\pi_1(S^n)=0である。

証明. 北極と南極をそれぞれ除いた開集合をU,VU,Vとする。両者はRn\mathbb R^nと同相であるため単連結である。交わりはSn−1×(−1,1)S^{n-1}\times(-1,1)に同相であり、n≥2n\ge2なら弧状連結である。van Kampen の定理の右辺は自明群二つの自由積の商であるから自明である。▨

n=1n=1では交わりが二つの弧に分かれて弧状連結でないため、同じ適用はできない。この仮定の失敗がπ1(S1)≅Z\pi_1(S^1)\cong\mathbb Zと両立する。

4 二胞体の接着と群の表示

定理 4.1.XXを弧状連結空間、x0∈Xx_0\in Xを基点とし、有限集合JJの各jjについてφj:(S1,1)→(X,x0)\varphi_j:(S^1,1)\to(X,x_0)を基点付きループとする。これらのループに沿って二胞体Dj2D_j^2を接着して

Y=X∪{φj}∐j∈JDj2Y=X\cup_{\{\varphi_j\}}\coprod_{j\in J}D_j^2

を作る。このとき

π1(Y,x0)≅π1(X,x0)/⟨ ⁣⟨[φj]:j∈J⟩ ⁣⟩.\pi_1(Y,x_0)\cong \pi_1(X,x_0)/\left\langle\!\left\langle[\varphi_j]:j\in J\right\rangle\!\right\rangle.

証明. まずJJが一元集合である場合を考える。接着した円板の中心をccとする。U=Y∖{c}U=Y\setminus\{c\}とし、接着円板の中心を含む小さい開円板の像をVVとする。U,VU,Vは弧状連結な開集合であり、U∩VU\cap Vは開円環であるから弧状連結である。基点をU∩VU\cap Vに取り、接着円板内の道による基点変更を介してx0x_0を基点とする群と同一視する。

接着円板から中心を除いた部分を半径方向に境界へ押し出すと、UUはXXへ変位レトラクトする。VVは可縮であり、U∩VU\cap Vは円周へ変位レトラクトする。π1(U∩V)\pi_1(U\cap V)の生成元は、UUでは接着写像φ\varphiの類へ写り、VVでは自明な類へ写る。開性、弧状連結性および基点の仮定を満たした定理 2.1を適用すると

π1(X∪φD2,x0)≅π1(X,x0)/⟨ ⁣⟨[φ]⟩ ⁣⟩\pi_1(X\cup_\varphi D^2,x_0) \cong\pi_1(X,x_0)/\langle\!\langle[\varphi]\rangle\!\rangle

を得る。

JJが有限なら二胞体を一つずつ接着する。各段階の空間は弧状連結であり、各段階で新しい接着語の正規閉包による商を取る。有限回の帰納により、全関係語で生成される正規閉包による表示を得る。▨

命題 4.2. 円環面T2T^2について

π1(T2)≅⟨a,b∣aba−1b−1⟩≅Z2\pi_1(T^2)\cong \langle a,b\mid aba^{-1}b^{-1}\rangle \cong\mathbb Z^2

である。

証明. 正方形の対辺を同一視する胞体分解では、一骨格はS1∨S1S^1\vee S^1であり、二胞体の接着語はaba−1b−1aba^{-1}b^{-1}である。定理 4.1から最初の表示を得る。関係式はab=baab=baと同値であるため、この群は二つの生成元をもつ自由アーベル群Z2\mathbb Z^2である。▨

命題 4.3. Klein の壺KKについて

π1(K)≅⟨a,b∣abab−1⟩\pi_1(K)\cong\langle a,b\mid abab^{-1}\rangle

である。

証明. Klein の壺の正方形表示の一骨格はS1∨S1S^1\vee S^1であり、境界を一周して得る接着語はabab−1abab^{-1}である。定理 4.1を適用すれば結論を得る。▨

命題 4.4. 正の整数ggに対し、種数ggの向きづけ可能閉曲面Σg\Sigma_gは

π1(Σg)≅⟨a1,b1,…,ag,bg∣∏i=1gaibiai−1bi−1⟩\pi_1(\Sigma_g)\cong \left\langle a_1,b_1,\ldots,a_g,b_g \mathrel{\Big|} \prod_{i=1}^g a_ib_ia_i^{-1}b_i^{-1} \right\rangle

を満たす。

証明. 標準的な4g4g角形表示では、すべての頂点が一つの点へ同一視され、一骨格は2g2g個の円周の楔和になる。境界を一周した接着語は表示された交換子の積である。定理 4.1を適用する。▨

命題 4.5. 正の整数kkに対し、kk個の実射影平面の連結和NkN_kは

π1(Nk)≅⟨c1,…,ck∣c12⋯ck2⟩\pi_1(N_k)\cong \langle c_1,\ldots,c_k\mid c_1^2\cdots c_k^2\rangle

を満たす。

証明. 標準的な2k2k角形表示の一骨格はkk個の円周の楔和であり、二胞体の接着語はc1c1⋯ckckc_1c_1\cdots c_kc_kである。定理 4.1を適用する。▨

任意個の生成元と関係を扱うときは、コンパクトなループとホモトピーが有限部分だけを通ることを、表示空間の位相から直接証明する。

定義 4.6. 集合SSの各元ssに対して基点付き円周Ss1S_s^1を一つ取り、位相的直和∐s∈SSs1\coprod_{s\in S}S_s^1の全基点を一つの点∗*へ同一視した商空間を

WS=⋁s∈SSs1W_S=\bigvee_{s\in S}S_s^1

とする。F(S)F(S)の語からなる集合RRに対し、各r∈Rr\in Rを有限個の円周を順にたどる基点付きループφr:S1→WS\varphi_r:S^1\to W_Sで表す。位相的直和

WS⊔∐r∈RDr2W_S\sqcup\coprod_{r\in R}D_r^2

において、各z∈∂Dr2z\in\partial D_r^2をφr(z)\varphi_r(z)と同一視した商空間をYS,RY_{S,R}とする。

補題 4.7.SSを集合、R⊆F(S)R\subseteq F(S)を語の集合とし、YS,RY_{S,R}を定義 4.6の空間とする。任意のコンパクト部分集合K⊆YS,RK\subseteq Y_{S,R}に対し、有限部分集合S0⊆SS_0\subseteq SとR0⊆RR_0\subseteq Rで、R0R_0の各語に現れる文字がS0S_0に属し、KKが有限表示空間YS0,R0Y_{S_0,R_0}に含まれるものが存在する。また、YS0,R0Y_{S_0,R_0}の通常の有限貼り合わせ位相は、YS,RY_{S,R}から入る部分空間位相と一致する。

証明.KKが無限個の開二胞体の内部と交わると仮定し、相異なる二胞体の内部から一点ずつ選んで集合AAを作る。AAの任意の部分集合BBについて、商写像による逆像は各円板で一元集合または空集合であり、WSW_Sでは空集合である。したがって逆像は位相的直和で閉であり、BBはYS,RY_{S,R}で閉である。特にAAは閉な離散部分空間である。A⊆KA\subseteq KであるからAAはコンパクトでなければならないが、無限離散空間を一元集合で覆う開被覆には有限部分被覆がない。これは矛盾である。よってKKが交わる開二胞体は有限個である。

次に、KKが無限個の円周の開一胞体と交わると仮定し、相異なる円周の基点以外の部分から一点ずつ選んでAAを作る。AAの任意の部分集合BBのWSW_Sにおける逆像は、各円周で一元集合または空集合であり、全基点を含まないため閉である。したがってBBはWSW_Sで閉である。各接着写像φr\varphi_rは連続であるから、φr−1(B)\varphi_r^{-1}(B)は∂Dr2\partial D_r^2で閉であり、円板でも閉である。よってBBのYS,RY_{S,R}への商写像による逆像は閉であり、BBはYS,RY_{S,R}で閉である。先ほどと同じ無限離散部分空間の議論により矛盾を得る。したがってKKが交わる開一胞体も有限個である。

KKが交わる開二胞体の添字全体をR0R_0とし、KKが交わる開一胞体の添字と、R0R_0の語に現れる文字を合わせた有限集合をS0S_0とする。零胞体∗*は常にYS0,R0Y_{S_0,R_0}に属するため、K⊆YS0,R0K\subseteq Y_{S_0,R_0}である。

最後に位相の一致を確認する。有限貼り合わせ空間YS0,R0Y_{S_0,R_0}の開集合OOを取る。O∩WS0O\cap W_{S_0}をWSW_Sへ延長するとき、∗∈O*\in Oなら省略した各円周を全体として加え、∗∉O*\notin Oなら省略した各円周からは何も加えない。このように得るWSW_Sの開集合をO^\widehat Oと書く。

各r∈R0r\in R_0については、OOの商写像による逆像のDr2D_r^2内の部分を用いる。各r∈R∖R0r\in R\setminus R_0については、境界上の開集合

φr−1(O^)⊆∂Dr2\varphi_r^{-1}(\widehat O)\subseteq\partial D_r^2

と共通部分が一致する開集合Or⊆Dr2O_r\subseteq D_r^2を選ぶことができる。実際、∂Dr2\partial D_r^2はDr2D_r^2の部分空間であるから、境界上の任意の開集合はDr2D_r^2の開集合との共通部分として表される。WSW_S上ではO^\widehat Oを取り、各円板上では以上の開集合を取って位相的直和内の開集合Ω\Omegaを作る。各境界点がΩ\Omegaに属することと、その接着先がO^\widehat Oに属することは同値であるから、Ω\Omegaは商写像のファイバーの和、すなわち飽和集合である。したがって商写像の像はYS,RY_{S,R}の開集合であり、YS0,R0Y_{S_0,R_0}との共通部分はOOである。逆向きは部分空間位相の定義から従う。よって二つの位相は一致する。▨

系 4.8. 任意の群GGに対し、π1(X)≅G\pi_1(X)\cong Gを満たす弧状連結空間XXが存在する。

証明.SSとしてGGの元全体を取り、各文字s∈Ss\in Sを同じ元s∈Gs\in Gへ送る全射F(S)→GF(S)\to Gを考える。その核に属する語全体をRRとすれば

G≅F(S)/⟨ ⁣⟨R⟩ ⁣⟩G\cong F(S)/\langle\!\langle R\rangle\!\rangle

である。定義 4.6の空間X=YS,RX=Y_{S,R}を作る。

各生成円周を一周するループから準同型

Ψ:F(S)⟶π1(X,∗)\Psi:F(S)\longrightarrow\pi_1(X,*)

を得る。各r∈Rr\in Rは接着した円板の境界であるからΨ(r)=1\Psi(r)=1であり、Ψ\Psiは準同型

Ψ‾:F(S)/⟨ ⁣⟨R⟩ ⁣⟩⟶π1(X,∗)\overline\Psi:F(S)/\langle\!\langle R\rangle\!\rangle \longrightarrow\pi_1(X,*)

を誘導する。

全射性を示す。XXの基点付きループの像はコンパクトであるから、補題 4.7により有限表示空間YS0,R0Y_{S_0,R_0}に含まれる。有限個の円周の楔和の基本群はF(S0)F(S_0)である。実際、円周を一つずつ加え、各段階で二つの弧状連結な開集合を、交わりが可縮になるように取って定理 2.1を適用すれば、基本群に自由因子Z\mathbb Zが一つずつ加わる。さらに定理 4.1により、YS0,R0Y_{S_0,R_0}の任意のループはS0S_0の有限語で表される。よってΨ‾\overline\Psiは全射である。

単射性を示す。有限語w∈F(S)w\in F(S)の像がXXで自明であるとする。wwを表すループのヌルホモトピーの像はコンパクトである。再び補題 4.7を適用すると、このヌルホモトピーは、wwに現れる文字を含む有限集合S0S_0と有限集合R0⊆RR_0\subseteq Rから作るYS0,R0Y_{S_0,R_0}内に入る。有限の場合の定理 4.1により、wwはF(S0)F(S_0)においてR0R_0の正規閉包に属する。したがってw∈⟨ ⁣⟨R⟩ ⁣⟩w\in\langle\!\langle R\rangle\!\rangleである。よってΨ‾\overline\Psiは単射でもあり、π1(X,∗)≅G\pi_1(X,*)\cong Gを得る。XXは円周の楔点を基点とし、接着した各円板も境界と道で結ばれるため弧状連結である。▨

5 演習

問題 5.1.

  1. ループの像が空間全体を覆う場合にも、Lebesgue 数による細分が機能する理由を述べよ。
  2. 補題 1.3の格子掃引で、隣接する小長方形がUUとVVに別々に割り当てられた場合に必要な関係を述べよ。
  3. 円環面の基本群の表示で、二胞体の接着が追加する関係を述べ、その関係から群がZ2\mathbb Z^2になる理由を説明せよ。
解答 (解答).
  1. 細分する対象はループの像から一点を除いた空間ではなく、コンパクトな定義域[0,1][0,1]である。開被覆の逆像に Lebesgue 数を適用するため、像が全射であっても各小区間の像を一方の開集合へ収めることができる。
  2. 共通辺の像はU∩VU\cap Vに含まれる。同じループをπ1(U)\pi_1(U)とπ1(V)\pi_1(V)のどちらで読んでも等しいとする関係iU(ω)=iV(ω)i_U(\omega)=i_V(\omega)を用いる。
  3. 接着語aba−1b−1aba^{-1}b^{-1}を単位元とする関係が加わる。この関係はab=baab=baと同値であるため、二つの生成元が自由に可換する群、すなわちZ2\mathbb Z^2を得る。

▨

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.van Kampen の定理と胞体接着への応用を参考にした。

前提記事