1 半局所単連結性
定義 1.1. 位相空間Xが半局所単連結 (semilocally simply connected) であるとは、各点x∈Xに開近傍Wが存在して、包含写像W↪Xが誘導する準同型
π1(W,x)⟶π1(X,x)の像が自明であることをいう。
半局所単連結性は、近傍W自体が単連結であることを要求しない。Wのループが、より大きい空間Xの中でヌルホモトピックになることだけを要求する。
補題 1.2.Xを局所弧状連結かつ半局所単連結な空間とする。任意の点x∈Xと任意の開近傍Oに対し、x∈U⊆Oを満たす弧状連結な開集合Uで、U内の任意のxを基点とするループがX内でヌルホモトピックになるものが存在する。
証明. 半局所単連結性により、xの開近傍Wで、包含W↪Xが誘導する基本群準同型の像が自明であるものを取る。局所弧状連結性をO∩Wに適用し、xの弧状連結な開近傍Uで
x∈U⊆O∩Wを満たすものを取る。U内のxを基点とする任意のループはW内のループでもあるから、そのループはX内でヌルホモトピックである。▨
定義 1.3.Xを局所弧状連結かつ半局所単連結な空間とする。点x∈Xの許容近傍 (admissible neighborhood) とは、xを含む弧状連結な開集合U⊆Xで、包含写像U↪Xが誘導する準同型
π1(U,x)⟶π1(X,x)の像が自明になるものをいう。補題 1.2により、許容近傍は各点の近傍基をなす。
2 道の類から作る空間
Xを空でない連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な空間とし、基点x0∈Xを固定する。局所弧状連結空間の弧状連結成分は開である。したがって、Xの連結性からXは弧状連結である。
定義 2.1.Xを空でない連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な空間とし、基点x0∈Xを固定する。
x0から始まる道全体を、端点を固定するホモトピーによって割った集合をXとする。道αの類を[α]と書き、写像
p:X⟶X,p([α])=α(1)を定める。
x=α(1)とし、Uをxの許容近傍とする。U内のxから始まる道ηを用いて
B([α],U)={[α∗η]∣η([0,1])⊆U, η(0)=x}と定める。
許容近傍内の二点を結ぶ道の選択は、得られる道のホモトピー類を変えない。
補題 2.2.Xを空でない連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な空間とし、基点x0∈Xを固定する。X、pおよびB([α],U)を定義 2.1のように定める。このとき、集合
B=B([α],U)∣[α]∈X, U は p([α]) の許容近傍はXの位相の開基をなす。この位相について、各B([α],U)へのpの制限はUへの同相写像である。
証明. 最初に、p∣B([α],U)が全単射であることを示す。Uは弧状連結であるから、任意のy∈Uに対してx=α(1)からyへのU内の道ηが存在する。したがって[α∗η]はyの逆像であり、制限写像は全射である。
ηとζをU内のxから同じ点yへの二つの道とする。ループη∗ζˉは許容近傍U内にあるため、X内で定値ループに端点固定ホモトピックである。道の積の結合律と、ζˉ∗ζが定値道に端点固定ホモトピックであることから、ηとζは端点を固定してホモトピックである。よって
[α∗η]=[α∗ζ]であり、yの逆像は一点である。したがって制限写像は単射でもある。
次に開基の条件を確認する。各[α]∈Xに対してp([α])の許容近傍が存在し、定値道をαの後に連結すれば[α]∈B([α],U)となる。
[γ]∈B([α],U)∩B([β],V)とする。z=p([γ])とおく。補題 1.2により、zの許容近傍WでW⊆U∩Vを満たすものを取る。[γ]=[α∗η]を与えるU内の道ηと、[γ]=[β∗θ]を与えるV内の道θを取る。W内のzから始まる任意の道ρに対し、η∗ρはU内にあり、θ∗ρはV内にある。したがって
B([γ],W)⊆B([α],U)∩B([β],V)である。以上からBは開基をなす。
Bが定める位相をXに入れる。O⊆Xを開集合とし、[α]∈p−1(O)とする。補題 1.2により、p([α])の許容近傍U⊆Oが存在するから、B([α],U)⊆p−1(O)である。よってpは連続である。
B([α],U)の開部分集合Aと[γ]∈Aを取る。開基の定義により、ある開基の元B([γ],W)が存在して
[γ]∈B([γ],W)⊆Aとなる。p(B([γ],W))=WはXの開集合であるから、p(A)は開である。したがってp∣B([α],U)は開な連続全単射であり、同相写像である。▨
3 被覆写像であること
命題 3.1.定義 2.1の写像p:X→Xは被覆写像である。
証明.x∈Xとし、xの許容近傍Uを取る。Xは弧状連結であるから、x0からxへの道が存在し、p−1(x)は空でない。各[α]∈p−1(x)に対してB([α],U)を考える。
最初に、これらの集合がp−1(U)を覆うことを示す。[γ]∈p−1(U)とし、y=p([γ])とおく。U内のxからyへの道ηを取る。道γ∗ηˉはx0からxへ進むから、[γ∗ηˉ]∈p−1(x)である。また、道の往復は端点固定ホモトピーによって消えるため、
[γ]=[(γ∗ηˉ)∗η]∈B([γ∗ηˉ],U)である。
次に、二つの集合が交われば一致する添字をもつことを示す。[α],[β]∈p−1(x)とし、
[α∗η]=[β∗ζ]が共通部分の一点を表すとする。ここでηとζはU内のxから同じ点への道である。両辺の後にηˉを連結すると
[α]=[β∗ζ∗ηˉ]を得る。ζ∗ηˉはU内のxを基点とするループであり、X内でヌルホモトピックである。したがって[α]=[β]である。
以上により
p−1(U)=[α]∈p−1(x)∐B([α],U)である。補題 2.2により、各制限p∣B([α],U)はUへの同相写像である。よってUは均等被覆近傍であり、pは被覆写像である。▨
4 全空間の弧状連結性と単連結性
道α:[0,1]→Xと0≤t≤1に対し、αt(s)=α(ts)と定める。αtはx0からα(t)までの初期部分を再パラメータ化した道である。
補題 4.1.Xを空でない連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な空間とし、基点x0∈Xを固定する。Xとp:X→Xを定義 2.1のように定める。α(0)=x0を満たす道αに対し、
α:[0,1]⟶X,α(t)=[αt]は連続であり、p∘α=αを満たす。また、α(0)は定値道の類x0であり、α(1)=[α]である。
証明.t0∈[0,1]とし、[αt0]の任意の開基に属する近傍を取る。補題 2.2によって、その開基に属する近傍の中にB([αt0],U)の形の開基に属する近傍を取ることができる。α(t0)∈UでありUは開であるから、t0の相対開近傍J⊆[0,1]でα(J)⊆Uを満たすものが存在する。
t∈Jに対し、αtとαt0の相違はα∣Jの一部分を順向きまたは逆向きに連結することだけである。再パラメータ化と道の往復を消す端点固定ホモトピーにより、[αt]はB([αt0],U)に属する。したがってα(J)⊆B([αt0],U)であり、αはt0で連続である。t0は任意であるからαは連続である。
残りの等式は定義から従う。▨
定理 4.2.Xが空でない連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な空間なら、定義 2.1の空間Xは弧状連結かつ単連結であり、
p:X⟶Xは普遍被覆である。
証明.命題 3.1によりpは被覆写像である。任意の点[α]∈Xは、補題 4.1の道αによってx0と結ばれる。したがってXは弧状連結である。
λをx0を基点とするX内のループとし、ω=p∘λとおく。λとωは、同じ始点x0をもつωの持ち上げである。道の持ち上げの一意性(§E18.5 補題 2.1)により
λ=ωである。λ(1)=x0である一方、補題 4.1によりω(1)=[ω]である。よって[ω]=[ex0]であり、ωはX内でヌルホモトピックである。
被覆写像が誘導する基本群準同型は単射である(§E18.5 定理 3.3)。したがって
p∗([λ])=[ω]=1から[λ]=1が従う。任意の基点付きループλがヌルホモトピックであるため、Xは単連結である。よってpは普遍被覆である。▨
例 4.4 (円周の普遍被覆). 指数写像
q:R⟶S1,q(t)=e2πitは被覆写像であり、Rは凸であるから単連結である。したがってqは普遍被覆である。
道の類による構成との対応は、S1の1から始まる道αの、0から始まる持ち上げαを用いて
[α]⟼α(1)と与えられる。端点固定ホモトピーの持ち上げは終点を保つため、この写像は well-defined である。道s↦e2πistによって任意のt∈Rが得られる。二つの持ち上げの終点が一致すれば、持ち上げを連結して得るR内のループはヌルホモトピックであるため、元の二つの道は端点を固定してホモトピックである。したがって対応は全単射であり、両側の被覆座標と可換することから同相写像である。
5 ハワイアンイヤリング
普遍被覆が存在するなら、半局所単連結性は自動的に従う。
命題 5.1. 位相空間Xが普遍被覆をもつなら、Xは半局所単連結である。
証明.p:X→Xを普遍被覆とし、x∈Xを取る。xの均等被覆近傍Uと、U上の一つのシートVを取る。xの持ち上げx∈Vを固定する。
U内のxを基点とする任意のループαは、同相写像(p∣V)−1:U→Vによってxを基点とするループへ持ち上がる。Xは単連結であるから、持ち上げたループはX内でヌルホモトピックである。ヌルホモトピーにpを合成すると、αはX内でヌルホモトピックである。したがって、包含U↪Xが誘導する基本群準同型の像は自明である。xは任意であるからXは半局所単連結である。▨
命題 5.2. 原点をo=(0,0)とし、
Cn={(x,y)∈R2∣(x−1/n)2+y2=1/n2},H=n=1⋃∞Cnとおく。部分空間位相を入れたHをハワイアンイヤリングという。Hは弧状連結かつ局所弧状連結であるが、半局所単連結でなく、普遍被覆をもたない。
証明. 各円周Cnはoを通り、すべての円周はoだけで交わる。各点をoへ円周に沿って結ぶことができるため、Hは弧状連結である。o以外の点には一つの円周内の弧からなる近傍基がある。oでは、十分小さい開円板との共通部分の各点をoへ円周に沿って結ぶことができるため、弧状連結な開近傍を選ぶことができる。よってHは局所弧状連結である。
UをHにおけるoの任意の開近傍とする。Cnの各点とoとの距離は2/n以下であるから、十分大きいnについてCn⊆Uとなる。
固定したnに対し、rn:H→CnをCn上では恒等写像とし、他の円周をoへ写す写像とする。Cnと⋃m=nCmはHの閉部分集合であり、交わり{o}上で二つの定義は一致する。閉集合による貼り合わせ補題からrnは連続であり、Cnへのレトラクションである。
Cnを一周するoを基点とするループをℓnとする。ℓnがH内でヌルホモトピックなら、そのヌルホモトピーにrnを合成することにより、ℓnはCn内でもヌルホモトピックになる。しかしCnは円周であり、π1(Cn,o)≅Zであるから、一周するループは非自明である。したがってU内のループℓnはH内で消えない。
任意のoの開近傍について同じ結論が成り立つため、Hはoで半局所単連結でない。命題 5.1により、Hは普遍被覆をもたない。▨
6 演習
問題 6.1.
- 許容近傍U内のxからyへの道を二通りに選んでも、B([α],U)におけるyの逆像が変わらないことを証明せよ。
- X内の基点付きループλに対し、p∘λがヌルホモトピックであることからλがヌルホモトピックであることを導く論証を再構成せよ。
- 連結性、局所弧状連結性および半局所単連結性を、普遍被覆の構成で用いる箇所へそれぞれ対応させよ。また、ハワイアンイヤリングでは三条件のうちどの条件が失敗するかを述べよ。
解答.
- 二つの道をη,ζとすると、η∗ζˉはU内のループである。許容近傍の定義から、このループはX内でヌルホモトピックである。道の積の結合律と往復する道の縮約を用いるとηとζは端点を固定してホモトピックであり、[α∗η]=[α∗ζ]を得る。
- ω=p∘λとおく。λと標準持ち上げωは同じ始点をもつため、持ち上げの一意性から一致する。λが閉じることから[ω]=ω(1)=x0となり、ωはヌルホモトピックである。被覆が誘導するp∗は単射であるため、p∗([λ])=1から[λ]=1が従う。
- 連結性と局所弧状連結性をXの弧状連結性に用い、局所弧状連結性を許容近傍の選択にも用いる。半局所単連結性を、許容近傍内の道の選択独立性とシートの非交和性に用いる。ハワイアンイヤリングは弧状連結かつ局所弧状連結であるが、原点で半局所単連結でない。
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