§E18.6円周の基本群

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指数被覆

p:R⟶S1,p(t)=e2πitp:\mathbb R\longrightarrow S^1, \qquad p(t)=e^{2\pi it}

によって円周上のループを実数直線へ持ち上げると、持ち上げの終点は整数になる。この整数が巻き数である。

1 巻き数

基点を1=p(0)1=p(0)とする。11におけるループα\alphaの、00を始点とする一意な持ち上げをα~\widetilde\alphaとする。p(α~(1))=1p(\widetilde\alpha(1))=1であり、p−1(1)=Zp^{-1}(1)=\mathbb Zであるから、α~(1)\widetilde\alpha(1)は整数である。

定義 1.1. 写像

wind⁡:π1(S1,1)⟶Z,wind⁡([α])=α~(1)\operatorname{wind}:\pi_1(S^1,1)\longrightarrow\mathbb Z, \qquad \operatorname{wind}([\alpha])=\widetilde\alpha(1)

を巻き数写像 (winding number homomorphism) という。

定理 1.2.α\alphaとβ\betaが端点を固定してホモトピックなら、

wind⁡([α])=wind⁡([β])\operatorname{wind}([\alpha])=\operatorname{wind}([\beta])

である。

証明.H:α≃βH:\alpha\simeq\betaを端点固定ホモトピーとする。下辺の持ち上げとしてα~\widetilde\alphaを指定し、§E18.5 補題 3.1によってHHをH~:[0,1]2→R\widetilde H:[0,1]^2\to\mathbb Rへ持ち上げる。端点固定性の遺伝により、t↦H~(0,t)t\mapsto\widetilde H(0,t)とt↦H~(1,t)t\mapsto\widetilde H(1,t)は定値である。左辺の値は00であるから、上辺H~(−,1)\widetilde H(-,1)は00を始点とするβ\betaの持ち上げであり、一意性からβ~\widetilde\betaに等しい。右辺が定値であることから

α~(1)=H~(1,0)=H~(1,1)=β~(1)\widetilde\alpha(1)=\widetilde H(1,0)=\widetilde H(1,1)=\widetilde\beta(1)

を得る。▨

定理 1.3. 道の積を左から先にたどる規約のもとで、

wind⁡([α][β])=wind⁡([α])+wind⁡([β])\operatorname{wind}([\alpha][\beta]) =\operatorname{wind}([\alpha])+\operatorname{wind}([\beta])

である。

証明.m=α~(1)m=\widetilde\alpha(1)とする。p(t+m)=p(t)p(t+m)=p(t)であるから、s↦m+β~(s)s\mapsto m+\widetilde\beta(s)は、mmを始点とするβ\betaの持ち上げである。したがって、

α∗β~(s)={α~(2s),0≤s≤1/2,m+β~(2s−1),1/2≤s≤1\widetilde{\alpha*\beta}(s)= \begin{cases} \widetilde\alpha(2s),&0\le s\le1/2,\\ m+\widetilde\beta(2s-1),&1/2\le s\le1 \end{cases}

は00を始点とするα∗β\alpha*\betaの持ち上げである。その終点はm+β~(1)m+\widetilde\beta(1)である。▨

定理 1.4. 巻き数写像wind⁡:π1(S1,1)→Z\operatorname{wind}:\pi_1(S^1,1)\to\mathbb Zは群の同型である。

証明. 全射性を示す。任意の整数nnに対し、αn(s)=e2πins\alpha_n(s)=e^{2\pi ins}とおく。α~n(s)=ns\widetilde\alpha_n(s)=nsは00を始点とする持ち上げであるから、wind⁡([αn])=n\operatorname{wind}([\alpha_n])=nである。

単射性を示す。wind⁡([α])=0\operatorname{wind}([\alpha])=0なら、持ち上げα~\widetilde\alphaは00を始点と終点とするR\mathbb R内のループである。実数直線は凸であるから、

K(s,t)=(1−t)α~(s)K(s,t)=(1-t)\widetilde\alpha(s)

はα~\widetilde\alphaから定値ループへの端点固定ホモトピーである。p∘Kp\circ Kはα\alphaから定値ループへの端点固定ホモトピーであるから、[α]=1[\alpha]=1である。したがって核は自明である。定理 1.3と合わせて、巻き数写像は同型である。▨

系 1.5.

π1(S1,1)≅Z.\pi_1(S^1,1)\cong\mathbb Z.

正の向きに一周するループα1\alpha_1の類が生成元に対応する。

たとえばαn(s)=e2πins\alpha_n(s)=e^{2\pi ins}の巻き数はnnである。積αm∗αn\alpha_m*\alpha_nの巻き数はm+nm+nであり、逆道αˉn\bar\alpha_nの巻き数は−n-nである。この計算は道の積と整数の加法が対応することを具体的に示す。

2 円板から円周へのレトラクション

定理 2.1. 包含写像i:S1↪D2i:S^1\hookrightarrow D^2に対してr∘i=id⁡S1r\circ i=\operatorname{id}_{S^1}を満たす連続写像r:D2→S1r:D^2\to S^1は存在しない。

証明. そのようなrrが存在すると仮定する。関手性から

r#∘i#=(r∘i)#=(id⁡S1)#=id⁡π1(S1,1)r_{\#}\circ i_{\#}=(r\circ i)_{\#} =(\operatorname{id}_{S^1})_{\#} =\operatorname{id}_{\pi_1(S^1,1)}

となる。一方、D2D^2は可縮であるからπ1(D2,1)=0\pi_1(D^2,1)=0であり、i#:Z→0i_{\#}:\mathbb Z\to0は零準同型である。したがってr#∘i#r_{\#}\circ i_{\#}も零準同型であり、Z\mathbb Zの恒等準同型にはなりえない。矛盾である。▨

必要なのはレトラクションの非存在である。変位レトラクトが存在しないという事実だけでは、任意のレトラクションまで排除したことにならないため、次の不動点定理の証明には不足する。

系 2.2.S1S^1はD2D^2とホモトピー同値でない。

証明. ホモトピー同値なら基本群は同型になるが、系 1.5によりπ1(S1)≅Z\pi_1(S^1)\cong\mathbb Zであり、D2D^2の基本群は自明である。▨

3 二次元 Brouwer 不動点定理

定理 3.1 (二次元 Brouwer 不動点定理). 任意の連続写像f:D2→D2f:D^2\to D^2は不動点をもつ。

証明.ffが不動点をもたないと仮定する。v(x)=x−f(x)v(x)=x-f(x)とおくと、すべてのx∈D2x\in D^2でv(x)≠0v(x)\ne0である。xxからv(x)v(x)の向きへ進んで初めて円周に達する点を

r(x)=x+λ(x)v(x)r(x)=x+\lambda(x)v(x)

と定める。条件∥r(x)∥=1\lVert r(x)\rVert=1は

∥v(x)∥2λ2+2⟨x,v(x)⟩λ+∥x∥2−1=0\lVert v(x)\rVert^2\lambda^2 +2\langle x,v(x)\rangle\lambda +\lVert x\rVert^2-1=0

である。この方程式の一意な非負根は

λ(x)=−⟨x,v(x)⟩+⟨x,v(x)⟩2+∥v(x)∥2(1−∥x∥2)∥v(x)∥2\lambda(x)= \frac{-\langle x,v(x)\rangle+ \sqrt{\langle x,v(x)\rangle^2+ \lVert v(x)\rVert^2(1-\lVert x\rVert^2)}} {\lVert v(x)\rVert^2}

である。v(x)≠0v(x)\ne0であるから分母は正であり、右辺はxxの連続関数である。したがってr:D2→S1r:D^2\to S^1は連続である。

x∈S1x\in S^1ならλ=0\lambda=0が上の方程式の非負根である。また、⟨x,x−f(x)⟩=1−⟨x,f(x)⟩>0\langle x,x-f(x)\rangle=1-\langle x,f(x)\rangle>0であるから、もう一つの根は負である。よってλ(x)=0\lambda(x)=0、すなわちr(x)=xr(x)=xである。したがってrrはD2D^2からS1S^1へのレトラクションになるが、これは定理 2.1に反する。ゆえffは不動点をもつ。▨

4 代数学の基本定理

定理 4.1 (代数学の基本定理). 正の次数をもつ複素係数多項式は、複素数の範囲に少なくとも一つの根をもつ。

証明. 最高次係数で割ることにより、多項式を

P(z)=zn+an−1zn−1+⋯+a0,n≥1P(z)=z^n+a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_0, \qquad n\ge1

としてよい。根をもたないと仮定する。

R>0R>0を十分大きくとれば、∣z∣=R|z|=R上で

∣an−1zn−1+⋯+a0∣<∣z∣n=Rn|a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_0|<|z|^n=R^n

となる。0≤u≤10\le u\le1に対し

Qu(z)=zn+u(an−1zn−1+⋯+a0)Q_u(z)=z^n+u(a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_0)

とおく。三角不等式から∣z∣=R|z|=R上でQu(z)≠0Q_u(z)\ne0である。したがって、各uuについて基点を11にそろえたループ

F(u,t)=Qu(Re2πit)∣Qu(Re2πit)∣∣Qu(R)∣Qu(R)F(u,t)= \frac{Q_u(Re^{2\pi it})}{|Q_u(Re^{2\pi it})|} \frac{|Q_u(R)|}{Q_u(R)}

が定義される。これはt↦e2πintt\mapsto e^{2\pi int}と、ループ

γR(t)=P(Re2πit)∣P(Re2πit)∣∣P(R)∣P(R)\gamma_R(t)= \frac{P(Re^{2\pi it})}{|P(Re^{2\pi it})|} \frac{|P(R)|}{P(R)}

を結ぶ基点固定ホモトピーである。よってγR\gamma_Rの巻き数はnnである。

一方、PPは根をもたないという仮定から、

G(r,t)=P(rRe2πit)∣P(rRe2πit)∣∣P(rR)∣P(rR)(0≤r≤1)G(r,t)= \frac{P(rRe^{2\pi it})}{|P(rRe^{2\pi it})|} \frac{|P(rR)|}{P(rR)} \qquad(0\le r\le1)

が定義される。これはγR\gamma_Rと基点11の定値ループを結ぶ基点固定ホモトピーである。定値ループの巻き数は00であるから、巻き数のホモトピー不変性によりn=0n=0となる。これはn≥1n\ge1に反する。したがってPPは根をもつ。▨

5 演習

問題 5.1.

  1. 巻き数の well-definedness の証明で、ホモトピーの右辺の持ち上げが定値になる理由を述べよ。
  2. Brouwer 不動点定理の証明で、変位レトラクトの非存在ではなくレトラクションの非存在が必要な理由を述べよ。
  3. 代数学の基本定理の証明では、同じループγR\gamma_Rの巻き数を二通りに計算した。それぞれの値と、それを与えるホモトピーを述べよ。
解答.
  1. 元のホモトピーが端点を固定するため、右辺は底空間の定値道の持ち上げになる。始点を固定した定値道の持ち上げは一意であり、定値である。
  2. 不動点がない写像から構成されるのは、境界上で恒等写像になる任意のレトラクションである。そのレトラクションが恒等写像とホモトピックになることまでは導かれないため、変位レトラクトだけを否定しても矛盾しない。
  3. 最高次項が残りの項を支配する円周上のホモトピーにより巻き数はnnになる。根がないという仮定のもとで円周の半径をRRから00へ縮めるホモトピーにより、同じ巻き数は定値ループの巻き数00になる。

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参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.指数被覆による円周の基本群の計算を参考にした。
  2. John B. Conway, Functions of One Complex Variable I, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1978.巻き数を用いる代数学の基本定理の標準的な位相的証明を参考にした。

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