§E18.13相対ホモロジーと長完全列

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部分空間A⊂XA\subset Xの内部にある鎖を零とみなすと、XXのうちAAの外側に残るホモロジーを測る鎖複体が得られる。その代償として生じる境界のずれを、連結準同型が記録する。

1 相対鎖複体

定義 1.1.A⊂XA\subset Xに対して

Cn(X,A):=Cn(X)/Cn(A)C_n(X,A):=C_n(X)/C_n(A)

と定める。∂Cn(A)⊂Cn−1(A)\partial C_n(A)\subset C_{n-1}(A)なので、境界作用素は商へ降りる。相対鎖複体のホモロジー

Hn(X,A):=Hn(C∗(X,A))H_n(X,A):=H_n(C_*(X,A))

を対(X,A)(X,A)の第nn相対ホモロジー群 (relative homology group) という。

相対輪体は、c∈Cn(X)c\in C_n(X)で∂c∈Cn−1(A)\partial c\in C_{n-1}(A)となるものの剰余類である。相対境界を加える操作は、ccをc+∂b+ac+\partial b+a(b∈Cn+1(X)b\in C_{n+1}(X)、a∈Cn(A)a\in C_n(A))へ変える操作に一致する。

2 対の長完全列

鎖複体の短完全列

0⟶C∗(A)→i#C∗(X)→q#C∗(X,A)⟶00\longrightarrow C_*(A)\xrightarrow{i_\#}C_*(X) \xrightarrow{q_\#}C_*(X,A)\longrightarrow0

を用いる。

定理 2.1 (対の長完全列). 任意の対(X,A)(X,A)について自然な長完全列

⋯⟶Hn(A)→i∗Hn(X)→q∗Hn(X,A)→δHn−1(A)→i∗Hn−1(X)⟶⋯\cdots\longrightarrow H_n(A)\xrightarrow{i_*}H_n(X) \xrightarrow{q_*}H_n(X,A)\xrightarrow{\delta}H_{n-1}(A) \xrightarrow{i_*}H_{n-1}(X)\longrightarrow\cdots

がある。相対輪体c+Cn(A)c+C_n(A)に対して連結準同型は

δ[c+Cn(A)]=[∂c]\delta[c+C_n(A)]=[\partial c]

で与えられる。

証明. 相対輪体という条件から∂c∈Cn−1(A)\partial c\in C_{n-1}(A)であり、∂2c=0\partial^2c=0なので∂c\partial cはAAの輪体である。代表をc+ac+a(a∈Cn(A)a\in C_n(A))へ変えると境界は∂c+∂a\partial c+\partial aとなり、Hn−1(A)H_{n-1}(A)で同じ類を与える。さらに相対境界∂b+Cn(A)\partial b+C_n(A)を加えても、∂(c+∂b)=∂c\partial(c+\partial b)=\partial cである。したがってδ\deltaは代表元によらない。

完全性を順に確かめる。i∗[a]i_*[a]は相対群で零になるのでim⁡i∗⊂ker⁡q∗\operatorname{im}i_*\subset\ker q_*である。逆に、q∗[x]=0q_*[x]=0ならx=∂b+ax=\partial b+aと書くことができるため、[x]=i∗[a][x]=i_*[a]である。次に、絶対輪体xxは∂x=0\partial x=0なのでδq∗[x]=0\delta q_*[x]=0である。逆に、相対輪体ccについてδ[c]=0\delta[c]=0なら∂c=∂a\partial c=\partial aとなるa∈Cn(A)a\in C_n(A)がある。c−ac-aはXXの輪体であり、q∗[c−a]=[c]q_*[c-a]=[c]である。最後にi∗δ[c]=[∂c]=0i_*\delta[c]=[\partial c]=0である。逆に、AAの輪体aaがXXで境界、すなわちa=∂ca=\partial cなら、ccは相対輪体でδ[c]=[a]\delta[c]=[a]となる。各次数で同じ議論を繰り返せば列全体が完全である。▨

対の写像f:(X,A)→(Y,B)f:(X,A)\to(Y,B)、すなわちf(A)⊂Bf(A)\subset Bを満たす連続写像は、短完全列の間の可換図式を与える。連結準同型の式から

f∗δ[c]=[f#∂c]=[∂f#c]=δf∗[c]f_*\delta[c]=[f_\#\partial c]=[\partial f_\#c]=\delta f_*[c]

であり、長完全列のすべての正方形が可換になる。

補題 2.2 (五項補題). アーベル群の可換図式

A1→A2→A3→A4→A5↓f1↓f2↓f3↓f4↓f5B1→B2→B3→B4→B5\begin{array}{ccccc} A_1&\to&A_2&\to&A_3\to A_4\to A_5\\ \downarrow f_1&&\downarrow f_2&&\downarrow f_3\quad\downarrow f_4\quad\downarrow f_5\\ B_1&\to&B_2&\to&B_3\to B_4\to B_5 \end{array}

で両行が完全であるとする。f1f_1が全射、f2,f4f_2,f_4が同型、f5f_5が単射なら、f3f_3は同型である。

証明.f3(a3)=0f_3(a_3)=0とする。a3a_3のA4A_4での像はf4f_4の単射性により零なので、完全性からa3a_3はあるa2a_2の像である。f2(a2)f_2(a_2)のB3B_3での像は零であるため、f2(a2)f_2(a_2)はB1B_1から来る元をB2B_2へ送ったものになる。f1f_1の全射性と可換性を用いてa2a_2からA1A_1由来の元を引けば、f2f_2で零へ移る。f2f_2は単射なので、修正後のa2a_2は零であり、a3=0a_3=0となる。

b3∈B3b_3\in B_3を取る。そのB4B_4での像をf4−1f_4^{-1}でa4a_4へ戻す。a4a_4のA5A_5での像はf5f_5の単射性と可換性により零なので、a4a_4はあるa3a_3の像である。b3−f3(a3)b_3-f_3(a_3)はB4B_4で零へ移るためB2B_2から来る。f2f_2の全射性でその元を持ち上げ、対応するA2A_2の像をa3a_3に加えればb3b_3の原像を得る。▨

3 三つ組と被約ホモロジー

A⊂B⊂XA\subset B\subset Xに対して

0⟶C∗(B,A)⟶C∗(X,A)⟶C∗(X,B)⟶00\longrightarrow C_*(B,A)\longrightarrow C_*(X,A) \longrightarrow C_*(X,B)\longrightarrow0

が短完全列になる。同じ構成から三つ組の長完全列

⋯→Hn(B,A)→Hn(X,A)→Hn(X,B)→δHn−1(B,A)→⋯\cdots\to H_n(B,A)\to H_n(X,A)\to H_n(X,B) \xrightarrow{\delta}H_{n-1}(B,A)\to\cdots

を得る。

定義 3.1. 増大写像ε:C0(X)→Z\varepsilon:C_0(X)\to\mathbb Zを、各特異零単体を11へ送る準同型とする。鎖複体を次数−1-1まで

⋯→C1(X)→∂C0(X)→εZ→0\cdots\to C_1(X)\xrightarrow{\partial}C_0(X) \xrightarrow{\varepsilon}\mathbb Z\to0

と延長した増大鎖複体のホモロジーをH~n(X)\widetilde H_n(X)と書く。

XXが空でないとき、n>0n>0ではH~n(X)=Hn(X)\widetilde H_n(X)=H_n(X)であり、基点を一つ選べば

H0(X)≅H~0(X)⊕ZH_0(X)\cong\widetilde H_0(X)\oplus\mathbb Z

となる。弧状連結な空間ではH~0(X)=0\widetilde H_0(X)=0である。被約群を用いると、点が寄与する一個のZ\mathbb Zを除いて完全列を書くことができる。

4 演習

問題 4.1.

  1. A=XA=XのときHn(X,A)=0H_n(X,A)=0であることを定義から示せ。
  2. A={x0}A=\{x_0\}でXXが弧状連結なら、n>0n>0についてHn(X,{x0})≅Hn(X)H_n(X,\{x_0\})\cong H_n(X)を長完全列から示せ。

解答。 第一問では商鎖群Cn(X)/Cn(X)C_n(X)/C_n(X)が零なので、すべての相対ホモロジー群が零である。第二問ではHn({x0})=0H_n(\{x_0\})=0(n>0n>0)であり、H0({x0})→H0(X)H_0(\{x_0\})\to H_0(X)は同型である。対の長完全列の該当部分へこれらを代入すると、n>0n>0でHn(X)→Hn(X,{x0})H_n(X)\to H_n(X,\{x_0\})が同型になる。

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.相対鎖複体、長完全列および被約ホモロジーの標準的な構成を参考にした。

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