§E20.43多項式の非負性と平方和証明書

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二次式x2+23x+1x^2+\frac23x+1が負の値をとらないことは、(1+13x)2+89x2\bigl(1+\frac13x\bigr)^2+\frac89x^2と平方の和に書き直せば分かる。一般に、多項式をいくつかの多項式の平方の和として表せば、その表示は多項式がすべての実数点で非負であることの証明になる。表示の係数が有理数であれば、表示が正しいことは両辺を展開して係数を比べる有理数の有限回の計算で確かめられる。

問題は逆向きである。一変数では、非負な多項式はつねに二つの多項式の平方の和として表される。二変数ではこれが成り立たず、Motzkin 多項式x4y2+x2y4−3x2y2+1x^4y^2+x^2y^4-3x^2y^2+1は非負であるが平方の和として表すことはできない。したがって多変数では、平方の和として表せるかどうかを扱いやすい条件に言い換え、得られた表示を誤りなく確かめる手段が要る。

零でない多項式を平方の和として表したとき、零でない各被平方式の次数はもとの多項式の次数の半分を超えない。このため、多項式が平方の和であることは、その範囲の単項式を並べたベクトルの二次形式として多項式を表す実対称行列のうちに、半正定値なものがあることと同値になる。多項式の係数が有理数ならば、係数の一致は行列の成分についての一次方程式であるから、近似的に得た行列の成分を有理数へ丸めたあと方程式を満たすように補正し、半正定値性を有理数の演算だけを用いる対称な消去で判定すればよい。判定が肯定的に終われば消去から非負の有理重みと有理係数の多項式による平方和表示が得られ、否定的に終わったときに分かるのは、その行列が半正定値でないことだけである。

多項式から定数を引いたものが平方の和であれば、その定数は多項式の下界である。多項式の不等式で定まる集合の上では、不等式を定める多項式に平方の和を掛けて加えた恒等式が同じ役割を果たす。一方、Motzkin 多項式からはどの定数を引いても平方の和にならないので、全域での平方和表示だけを用いるこの方法では、Motzkin 多項式の下界は一つも得られない。

本記事は、一変数の非負多項式が二つの平方の和であることと Gram 行列による平方和の特徴づけを証明し、Motzkin 多項式によって多変数の非負性と平方和性を区別したうえで、有理対称行列の半正定値性を消去で判定して、全域と多項式の不等式で定まる集合の上の下界の証明書を構成する。

1 平方和と次数

定義 1.1 (平方和).n∈N≥1n\in\NNとし、p∈R[x1,…,xn]p\in\R[x_1,\dots,x_n]とする。

  1. 整数m≥0m\ge0とf1,…,fm∈R[x1,…,xn]f_1,\dots,f_m\in\R[x_1,\dots,x_n]が存在してp=∑i=1mfi2p=\sum_{i=1}^mf_i^2を満たすとき、ppは 平方和 (sum of squares) であるという。m=0m=0のときの和は零多項式とする。
  2. すべてのa∈Rna\in\R^nに対してp(a)≥0p(a)\ge0であるとき、ppは 非負 (nonnegative) であるという。
  3. p∈Q[x1,…,xn]p\in\Q[x_1,\dots,x_n]とする。整数m≥0m\ge0、d1,…,dm∈Q≥0d_1,\dots,d_m\in\Q_{\ge0}、g1,…,gm∈Q[x1,…,xn]g_1,\dots,g_m\in\Q[x_1,\dots,x_n]によるQ[x1,…,xn]\Q[x_1,\dots,x_n]の等式p=∑t=1mdtgt2p=\sum_{t=1}^md_tg_t^2を、ppの 有理平方和表示 (rational weighted sum-of-squares representation) という。

補題 1.2.n∈N≥1n\in\NNとする。

  1. 平方和であるp∈R[x1,…,xn]p\in\R[x_1,\dots,x_n]は非負である。
  2. 有理平方和表示をもつp∈Q[x1,…,xn]p\in\Q[x_1,\dots,x_n]は、R[x1,…,xn]\R[x_1,\dots,x_n]の元として平方和である。
  3. 可換環の任意の元f1,f2,g1,g2f_1,f_2,g_1,g_2に対して (f12+f22)(g12+g22)=(f1g1−f2g2)2+(f1g2+f2g1)2(f_1^2+f_2^2)(g_1^2+g_2^2)=(f_1g_1-f_2g_2)^2+(f_1g_2+f_2g_1)^2 が成り立つ。

証明.p=∑i=1mfi2p=\sum_{i=1}^mf_i^2ならば、すべてのa∈Rna\in\R^nに対してp(a)=∑i=1mfi(a)2≥0p(a)=\sum_{i=1}^mf_i(a)^2\ge0であるから、(1)が成り立つ。p=∑t=1mdtgt2p=\sum_{t=1}^md_tg_t^2が有理平方和表示ならば、dt≥0d_t\ge0であるからp=∑t=1m(dt gt)2p=\sum_{t=1}^m(\sqrt{d_t}\,g_t)^2であり、(2)が成り立つ。(3)の両辺はともにf12g12+f12g22+f22g12+f22g22f_1^2g_1^2+f_1^2g_2^2+f_2^2g_1^2+f_2^2g_2^2に展開される。▨

補題 1.3.n∈N≥1n\in\NN、m∈N≥0m\in\Nとし、f1,…,fm∈R[x1,…,xn]f_1,\dots,f_m\in\R[x_1,\dots,x_n]とする。

  1. ∑i=1mfi2=0\sum_{i=1}^mf_i^2=0であるための必要十分条件は、すべてのiiに対してfi=0f_i=0であることである。
  2. あるfif_iが零でないとし、零でないfif_iの次数の最大値をeeとする。このとき∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2の次数は2e2eである。さらにn=1n=1のとき、∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2の最高次係数は次数eeのfif_iの最高次係数の平方の和であり、正である。
  3. d∈N≥0d\in\Nとし、∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2は零であるか次数2d2d以下であるとする。このとき零でないすべてのfif_iの次数はdd以下である。

証明.α∈N≥0n\alpha\in\N^nに対して∣α∣=α1+⋯+αn|\alpha|=\alpha_1+\cdots+\alpha_nとおく。N≥0n\N^n上の全順序≺\precを、∣α∣<∣β∣|\alpha|<|\beta|であるか、∣α∣=∣β∣|\alpha|=|\beta|かつβ−α\beta-\alphaの零でない最初の成分が正であるときα≺β\alpha\prec\betaと定める。∣α+γ∣−∣β+γ∣=∣α∣−∣β∣|\alpha+\gamma|-|\beta+\gamma|=|\alpha|-|\beta|かつ(β+γ)−(α+γ)=β−α(\beta+\gamma)-(\alpha+\gamma)=\beta-\alphaであるから、α≺β\alpha\prec\betaならば任意のγ∈N≥0n\gamma\in\N^nに対してα+γ≺β+γ\alpha+\gamma\prec\beta+\gammaである。fi=∑αciαxαf_i=\sum_\alpha c_{i\alpha}x^\alphaと書く。

(2)を示す。零でないfif_iに対して、ciα≠0c_{i\alpha}\ne0を満たすα\alphaの≺\precに関する最大元をμi\mu_iとする。≺\precはまず∣⋅∣|\cdot|を比べるので∣μi∣=deg⁡fi|\mu_i|=\deg f_iである。μi\mu_iの最大元をμ\muとし、I={i∣fi≠0, μi=μ}I=\{i\mid f_i\ne0,\ \mu_i=\mu\}とおく。IIは空でなく、∣μ∣=e|\mu|=eである。fi≠0f_i\ne0とし、α+β=2μ\alpha+\beta=2\muかつciαciβ≠0c_{i\alpha}c_{i\beta}\ne0とする。α⪯μi⪯μ\alpha\preceq\mu_i\preceq\muかつβ⪯μ\beta\preceq\muである。α≺μ\alpha\prec\muならばα+β≺μ+β⪯2μ\alpha+\beta\prec\mu+\beta\preceq2\muとなり、α+β=2μ\alpha+\beta=2\muと両立しない。したがってα=μ\alpha=\muであり、同様にβ=μ\beta=\muである。よってfi2f_i^2のx2μx^{2\mu}の係数はciμ2c_{i\mu}^2であり、ciμ≠0c_{i\mu}\ne0はi∈Ii\in Iと同値である。ゆえに∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2のx2μx^{2\mu}の係数は∑i∈Iciμ2>0\sum_{i\in I}c_{i\mu}^2>0である。一方、fi2f_i^2に現れる単項式xα+βx^{\alpha+\beta}は∣α+β∣≤2deg⁡fi≤2e|\alpha+\beta|\le2\deg f_i\le2eを満たす。∣2μ∣=2e|2\mu|=2eであるから∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2の次数は2e2eである。n=1n=1のときμ=e\mu=eであり、IIは次数eeのfif_iの添字の集合であるから、最高次係数∑i∈Icie2\sum_{i\in I}c_{ie}^2は正である。

(1)を示す。すべてのfif_iが零ならば∑i=1mfi2=0\sum_{i=1}^mf_i^2=0である。あるfif_iが零でないならば、(2)の証明により∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2のx2μx^{2\mu}の係数は正であり、∑i=1mfi2≠0\sum_{i=1}^mf_i^2\ne0である。

(3)を示す。∑i=1mfi2=0\sum_{i=1}^mf_i^2=0ならば(1)によりすべてのfif_iは零である。そうでなければ、あるfif_iは零でなく、(2)により2e≤2d2e\le2dである。▨

2 一変数の多項式

補題 2.1.KKをR\RまたはC\Cとし、f∈K[x]f\in K[x]、a∈Ka\in Kとする。このときf=(x−a)h+f(a)f=(x-a)h+f(a)を満たすh∈K[x]h\in K[x]が存在する。

証明.f=∑k=0mckxkf=\sum_{k=0}^mc_kx^kと書く。k≥1k\ge1に対してxk−ak=(x−a)∑j=0k−1ajxk−1−jx^k-a^k=(x-a)\sum_{j=0}^{k-1}a^jx^{k-1-j}であるから、h=∑k=1mck∑j=0k−1ajxk−1−jh=\sum_{k=1}^mc_k\sum_{j=0}^{k-1}a^jx^{k-1-j}とおけばf−f(a)=∑k=1mck(xk−ak)=(x−a)hf-f(a)=\sum_{k=1}^mc_k(x^k-a^k)=(x-a)hである。▨

定理 2.2.p∈R[x]p\in\R[x]とする。次の三条件は同値である。

  1. ppは非負である。
  2. あるA,B∈R[x]A,B\in\R[x]が存在してp=A2+B2p=A^2+B^2である。
  3. ppは平方和である。

証明.条件 (b)⇒\Rightarrow(c)は平方和の定義から、条件 (c)⇒\Rightarrow(a)は補題 1.2 (1)から従う。

条件 (a)⇒\Rightarrow(b)を示す。p=0p=0ならばp=02+02p=0^2+0^2である。零でない非負多項式ppについて、deg⁡p\deg pに関する帰納法でppが二平方の和であることを示す。deg⁡p=0\deg p=0ならばppは定数ccであり、c=p(0)≥0c=p(0)\ge0かつc≠0c\ne0であるからp=(c)2+02p=(\sqrt c)^2+0^2である。deg⁡p≥1\deg p\ge1とし、次数がdeg⁡p\deg pより小さい零でない非負多項式は二平方の和であると仮定する。

ppが実根aaをもつ場合を考える。補題 2.1によりp=(x−a)qp=(x-a)qを満たすq∈R[x]q\in\R[x]が存在する。q(a)≠0q(a)\ne0と仮定する。qqは連続であるから、あるδ>0\delta>0が存在して、∣s∣<δ|s|<\deltaを満たすすべてのs∈Rs\in\Rに対してq(a+s)q(a)>0q(a+s)q(a)>0である。このときq(a+δ/2) q(a−δ/2)>0q(a+\delta/2)\,q(a-\delta/2)>0であり、

p(a+δ/2) p(a−δ/2)=−δ24 q(a+δ/2) q(a−δ/2)<0p(a+\delta/2)\,p(a-\delta/2)=-\frac{\delta^2}{4}\,q(a+\delta/2)\,q(a-\delta/2)<0

である。一方でppは非負であるからp(a+δ/2) p(a−δ/2)≥0p(a+\delta/2)\,p(a-\delta/2)\ge0であり、二つの不等式は両立しない。したがってq(a)=0q(a)=0であり、補題 2.1によりq=(x−a)rq=(x-a)rを満たすr∈R[x]r\in\R[x]が存在してp=(x−a)2rp=(x-a)^2rである。p≠0p\ne0であるからr≠0r\ne0であり、deg⁡r=deg⁡p−2\deg r=\deg p-2である。b≠ab\ne aを満たすb∈Rb\in\Rに対してr(b)=p(b)/(b−a)2≥0r(b)=p(b)/(b-a)^2\ge0であり、rrは連続であるからr(a)=lim⁡b→ar(b)≥0r(a)=\lim_{b\to a}r(b)\ge0である。したがってrrは零でない非負多項式であり、帰納法の仮定によりr=A12+B12r=A_1^2+B_1^2を満たすA1,B1∈R[x]A_1,B_1\in\R[x]が存在する。このときp=((x−a)A1)2+((x−a)B1)2p=\bigl((x-a)A_1\bigr)^2+\bigl((x-a)B_1\bigr)^2である。

ppが実根をもたない場合を考える。ppを複素係数多項式とみなすと、deg⁡p≥1\deg p\ge1であるから§E5.9 系 4.2によりp(w)=0p(w)=0を満たすw∈Cw\in\Cが存在する。ppは実根をもたないから、u,v∈Ru,v\in\R、v≠0v\ne0によりw=u+ivw=u+\mathrm ivと書かれる。ppの係数は実数であるからp(wˉ)=p(w)‾=0p(\bar w)=\overline{p(w)}=0である。補題 2.1によりp=(x−w)q1p=(x-w)q_1を満たすq1∈C[x]q_1\in\C[x]が存在し、0=p(wˉ)=(wˉ−w) q1(wˉ)0=p(\bar w)=(\bar w-w)\,q_1(\bar w)とwˉ−w=−2iv≠0\bar w-w=-2\mathrm iv\ne0からq1(wˉ)=0q_1(\bar w)=0である。再び補題 2.1によりq1=(x−wˉ)rq_1=(x-\bar w)rを満たすr∈C[x]r\in\C[x]が存在する。s=(x−w)(x−wˉ)=(x−u)2+v2∈R[x]s=(x-w)(x-\bar w)=(x-u)^2+v^2\in\R[x]とおくとp=srp=srである。rrの各係数を複素共役で置き換えた多項式をrˉ\bar rとすると、ppとssの係数は実数であるからp=srˉp=s\bar rであり、s(r−rˉ)=0s(r-\bar r)=0である。C[x]\C[x]の零でない二元の積は零でないから、s≠0s\ne0よりr=rˉr=\bar r、すなわちr∈R[x]r\in\R[x]である。p≠0p\ne0であるからr≠0r\ne0であり、deg⁡r=deg⁡p−2\deg r=\deg p-2である。すべてのb∈Rb\in\Rに対してs(b)≥v2>0s(b)\ge v^2>0であるからr(b)=p(b)/s(b)≥0r(b)=p(b)/s(b)\ge0である。したがってrrは零でない非負多項式であり、帰納法の仮定によりr=A12+B12r=A_1^2+B_1^2を満たすA1,B1∈R[x]A_1,B_1\in\R[x]が存在する。補題 1.2 (3)をf1=x−uf_1=x-u、f2=vf_2=v、g1=A1g_1=A_1、g2=B1g_2=B_1に適用すると

p=((x−u)A1−vB1)2+((x−u)B1+vA1)2p=\bigl((x-u)A_1-vB_1\bigr)^2+\bigl((x-u)B_1+vA_1\bigr)^2

である。▨

系 2.3.p∈R[x]p\in\R[x]を零でない非負多項式とする。このときdeg⁡p\deg pは偶数であり、ppの最高次係数は正である。さらに、任意のa∈Ra\in\Rに対して、整数k≥0k\ge0とg(a)≠0g(a)\ne0を満たすg∈R[x]g\in\R[x]が存在してp=(x−a)2kgp=(x-a)^{2k}gである。

証明.定理 2.2によりp=A2+B2p=A^2+B^2を満たすA,B∈R[x]A,B\in\R[x]が存在し、補題 1.3 (2)によりdeg⁡p\deg pは偶数であり、最高次係数は正である。

a∈Ra\in\Rとし、零でない二平方の和p=A2+B2p=A^2+B^2について、deg⁡p\deg pに関する帰納法でp=(x−a)2kgp=(x-a)^{2k}g、g(a)≠0g(a)\ne0を示す。p(a)≠0p(a)\ne0ならばk=0k=0、g=pg=pとすればよい。p(a)=0p(a)=0ならばA(a)2+B(a)2=0A(a)^2+B(a)^2=0からA(a)=B(a)=0A(a)=B(a)=0であり、補題 2.1によりA=(x−a)A1A=(x-a)A_1、B=(x−a)B1B=(x-a)B_1を満たすA1,B1∈R[x]A_1,B_1\in\R[x]が存在する。p1=A12+B12p_1=A_1^2+B_1^2とおくとp=(x−a)2p1p=(x-a)^2p_1であり、p1≠0p_1\ne0、deg⁡p1=deg⁡p−2\deg p_1=\deg p-2である。帰納法の仮定によりp1=(x−a)2kgp_1=(x-a)^{2k}g、g(a)≠0g(a)\ne0を満たすkkとggが存在し、p=(x−a)2k+2gp=(x-a)^{2k+2}gである。▨

3 Gram 行列

定理 3.1.n∈N≥1n\in\NN、d∈N≥0d\in\Nとする。α∈N≥0n\alpha\in\N^nに対して∣α∣=α1+⋯+αn|\alpha|=\alpha_1+\cdots+\alpha_n、xα=x1α1⋯xnαnx^\alpha=x_1^{\alpha_1}\cdots x_n^{\alpha_n}とし、Md={α∈N≥0n∣∣α∣≤d}\mathcal M_d=\{\alpha\in\N^n\mid|\alpha|\le d\}とおく。Md\mathcal M_dで添字づけた列ベクトルz=(xα)α∈Mdz=(x^\alpha)_{\alpha\in\mathcal M_d}をとる。p=∑γpγxγ∈R[x1,…,xn]p=\sum_\gamma p_\gamma x^\gamma\in\R[x_1,\dots,x_n]は零であるか次数2d2d以下であるとする。

  1. 実対称行列Q=(Qαβ)α,β∈MdQ=(Q_{\alpha\beta})_{\alpha,\beta\in\mathcal M_d}について、zTQzz^{\mathsf T}Qzのxγx^\gammaの係数は ∑(α,β)∈Md×Mdα+β=γQαβ\sum_{\substack{(\alpha,\beta)\in\mathcal M_d\times\mathcal M_d\\\alpha+\beta=\gamma}}Q_{\alpha\beta} である。この和は順序対にわたるので、α≠β\alpha\ne\betaを満たす二つの順序対(α,β)(\alpha,\beta)、(β,α)(\beta,\alpha)はQQの対称性によりあわせて2Qαβ2Q_{\alpha\beta}を与える。p=zTQzp=z^{\mathsf T}Qzであるための必要十分条件は、∣γ∣≤2d|\gamma|\le2dを満たすすべてのγ∈N≥0n\gamma\in\N^nに対してこの和がpγp_\gammaに等しいことである。
  2. 半正定値な実対称行列Q=(Qαβ)α,β∈MdQ=(Q_{\alpha\beta})_{\alpha,\beta\in\mathcal M_d}、すなわちすべてのv∈RMdv\in\R^{\mathcal M_d}に対してvTQv≥0v^{\mathsf T}Qv\ge0を満たす実対称行列QQで、p=zTQzp=z^{\mathsf T}Qzを満たすものが存在することは、ppが平方和であるための必要十分条件である。

証明.(1)を示す。zTQz=∑α,β∈MdQαβxα+βz^{\mathsf T}Qz=\sum_{\alpha,\beta\in\mathcal M_d}Q_{\alpha\beta}x^{\alpha+\beta}であるから、xγx^\gammaの係数は与えた和であり、∣γ∣>2d|\gamma|>2dのときこの和は空である。ppは零であるか次数2d2d以下であるから、∣γ∣>2d|\gamma|>2dに対してpγ=0p_\gamma=0である。多項式の等式は全係数の一致であるから、主張が従う。

(2)を示す。

必要性を示す。p=∑i=1mfi2p=\sum_{i=1}^mf_i^2とする。補題 1.3 (3)により零でない各fif_iの次数はdd以下であるから、fi=ciTzf_i=c_i^{\mathsf T}zを満たすci∈RMdc_i\in\R^{\mathcal M_d}が存在する。Q=∑i=1mciciTQ=\sum_{i=1}^mc_ic_i^{\mathsf T}は実対称行列であり、zTQz=∑i=1m(ciTz)2=pz^{\mathsf T}Qz=\sum_{i=1}^m(c_i^{\mathsf T}z)^2=pである。すべてのv∈RMdv\in\R^{\mathcal M_d}に対してvTQv=∑i=1m(ciTv)2≥0v^{\mathsf T}Qv=\sum_{i=1}^m(c_i^{\mathsf T}v)^2\ge0であるから、QQは半正定値である。

十分性を示す。QQを半正定値な実対称行列とし、p=zTQzp=z^{\mathsf T}Qzとする。Md\mathcal M_dの元の個数をNNとし、Md\mathcal M_dに全順序を一つ固定する。RMd\R^{\mathcal M_d}上の二次形式v↦vTQvv\mapsto v^{\mathsf T}Qvに§E3.40 定理 1.1を適用すると、RMd\R^{\mathcal M_d}の基底u1,…,uNu_1,\dots,u_Nと整数s,r≥0s,r\ge0が存在して、すべてのy∈RNy\in\R^Nに対して

(∑k=1Nykuk)TQ(∑k=1Nykuk)=y12+⋯+ys2−ys+12−⋯−ys+r2\Bigl(\sum_{k=1}^Ny_ku_k\Bigr)^{\mathsf T}Q\Bigl(\sum_{k=1}^Ny_ku_k\Bigr)=y_1^2+\cdots+y_s^2-y_{s+1}^2-\cdots-y_{s+r}^2

が成り立つ。r≥1r\ge1ならばus+1TQus+1=−1<0u_{s+1}^{\mathsf T}Qu_{s+1}=-1<0となり、QQが半正定値であることと両立しないから、r=0r=0である。u1,…,uNu_1,\dots,u_Nを列とする行列をUUとし、U−1U^{-1}の最初のss行からなる行列をCCとする。v∈RMdv\in\R^{\mathcal M_d}に対してy=U−1vy=U^{-1}vとおけばv=∑kykukv=\sum_ky_ku_kであるから、vTQv=∑k=1syk2=vTCTCvv^{\mathsf T}Qv=\sum_{k=1}^sy_k^2=v^{\mathsf T}C^{\mathsf T}Cvである。実対称行列Q′Q'は等式2vTQ′w=(v+w)TQ′(v+w)−vTQ′v−wTQ′w2v^{\mathsf T}Q'w=(v+w)^{\mathsf T}Q'(v+w)-v^{\mathsf T}Q'v-w^{\mathsf T}Q'wにより二次形式v↦vTQ′vv\mapsto v^{\mathsf T}Q'vから定まるので、Q=CTCQ=C^{\mathsf T}Cである。CCの第kk行をckTc_k^{\mathsf T}とするとp=zTCTCz=∑k=1s(ckTz)2p=z^{\mathsf T}C^{\mathsf T}Cz=\sum_{k=1}^s(c_k^{\mathsf T}z)^2であり、ppは平方和である。▨

例 3.2.n=1n=1、d=2d=2、p=x4+1p=x^4+1とし、z=(1,x,x2)Tz=(1,x,x^2)^{\mathsf T}の順に行と列を並べる。τ∈R\tau\in\Rに対して

Qτ=(10−τ/20τ0−τ/201)Q_\tau=\begin{pmatrix}1&0&-\tau/2\\0&\tau&0\\-\tau/2&0&1\end{pmatrix}

とおく。x0x^0、x2x^2、x4x^4の係数についての定理 3.1 (1)の等式は1=11=1、τ+2(−τ/2)=0\tau+2(-\tau/2)=0、1=11=1であり、xx、x3x^3の係数についての等式は0=00=0である。したがって、すべてのτ∈R\tau\in\Rに対してzTQτz=pz^{\mathsf T}Q_\tau z=pであり、すべてのa∈Ra\in\Rに対してz(a)TQτz(a)=a4+1≥0z(a)^{\mathsf T}Q_\tau z(a)=a^4+1\ge0である。一方、xxに対応する標準基底ベクトルexe_xについてexTQ−2ex=−2<0e_x^{\mathsf T}Q_{-2}e_x=-2<0であるから、Q−2Q_{-2}は半正定値でない。Q0=diag⁡(1,0,1)Q_0=\operatorname{diag}(1,0,1)は半正定値であり、p=12+(x2)2p=1^2+(x^2)^2を与える。

4 Motzkin 多項式

定理 4.1.M=x4y2+x2y4−3x2y2+1∈R[x,y]M=x^4y^2+x^2y^4-3x^2y^2+1\in\R[x,y]とする。

  1. MMは非負である。
  2. 任意のλ∈R\lambda\in\Rに対して、M−λM-\lambdaは平方和でない。特にMMは平方和でない。

証明.(1)を示す。(a,b)∈R2(a,b)\in\R^2とし、s,t≥0s,t\ge0をs3=a4b2s^3=a^4b^2、t3=a2b4t^3=a^2b^4を満たす実数とする。(st)3=(a2b2)3(st)^3=(a^2b^2)^3かつst≥0st\ge0、a2b2≥0a^2b^2\ge0であるからst=a2b2st=a^2b^2である。実数s,t,rs,t,rに対する恒等式

s3+t3+r3−3str=12(s+t+r)((s−t)2+(t−r)2+(r−s)2)s^3+t^3+r^3-3str=\frac12(s+t+r)\bigl((s-t)^2+(t-r)^2+(r-s)^2\bigr)

をr=1r=1に適用すると、s+t+1>0s+t+1>0であるからM(a,b)=s3+t3+1−3st≥0M(a,b)=s^3+t^3+1-3st\ge0である。

(2)を示す。λ∈R\lambda\in\Rとし、M−λ=∑i=1mfi2M-\lambda=\sum_{i=1}^mf_i^2を満たすm∈N≥0m\in\Nとf1,…,fm∈R[x,y]f_1,\dots,f_m\in\R[x,y]が存在すると仮定する。M−λM-\lambdaは次数66の多項式であるから、補題 1.3 (3)により零でない各fif_iの次数は33以下である。M3={α∈N≥02∣α1+α2≤3}\mathcal M_3=\{\alpha\in\N^2\mid\alpha_1+\alpha_2\le3\}とし、fi=∑α∈M3ciαxα1yα2f_i=\sum_{\alpha\in\mathcal M_3}c_{i\alpha}x^{\alpha_1}y^{\alpha_2}と書く。fi2=∑α,β∈M3ciαciβxα1+β1yα2+β2f_i^2=\sum_{\alpha,\beta\in\mathcal M_3}c_{i\alpha}c_{i\beta}x^{\alpha_1+\beta_1}y^{\alpha_2+\beta_2}であるから、γ∈N≥02\gamma\in\N^2に対して∑i=1mfi2\sum_{i=1}^mf_i^2のxγ1yγ2x^{\gamma_1}y^{\gamma_2}の係数は

sγ=∑i=1m∑α,β∈M3α+β=γciαciβs_\gamma=\sum_{i=1}^m\sum_{\substack{\alpha,\beta\in\mathcal M_3\\\alpha+\beta=\gamma}}c_{i\alpha}c_{i\beta}

である。M−λM-\lambdaの係数と比べると、s(6,0)=s(4,0)=s(2,0)=0s_{(6,0)}=s_{(4,0)}=s_{(2,0)}=0、s(0,6)=s(0,4)=s(0,2)=0s_{(0,6)}=s_{(0,4)}=s_{(0,2)}=0、s(2,2)=−3s_{(2,2)}=-3である。

α+β=(6,0)\alpha+\beta=(6,0)を満たすα,β∈M3\alpha,\beta\in\mathcal M_3はα=β=(3,0)\alpha=\beta=(3,0)だけであるから、0=s(6,0)=∑ici(3,0)20=s_{(6,0)}=\sum_ic_{i(3,0)}^2であり、すべてのiiに対してci(3,0)=0c_{i(3,0)}=0である。α+β=(4,0)\alpha+\beta=(4,0)を満たすα,β∈M3\alpha,\beta\in\mathcal M_3は{α,β}={(1,0),(3,0)}\{\alpha,\beta\}=\{(1,0),(3,0)\}とα=β=(2,0)\alpha=\beta=(2,0)だけであるから、ci(3,0)=0c_{i(3,0)}=0より0=s(4,0)=∑ici(2,0)20=s_{(4,0)}=\sum_ic_{i(2,0)}^2であり、すべてのiiに対してci(2,0)=0c_{i(2,0)}=0である。α+β=(2,0)\alpha+\beta=(2,0)を満たすα,β∈M3\alpha,\beta\in\mathcal M_3は{α,β}={(0,0),(2,0)}\{\alpha,\beta\}=\{(0,0),(2,0)\}とα=β=(1,0)\alpha=\beta=(1,0)だけであるから、ci(2,0)=0c_{i(2,0)}=0より0=s(2,0)=∑ici(1,0)20=s_{(2,0)}=\sum_ic_{i(1,0)}^2であり、すべてのiiに対してci(1,0)=0c_{i(1,0)}=0である。xxとyyを入れ替えた同じ議論をs(0,6)s_{(0,6)}、s(0,4)s_{(0,4)}、s(0,2)s_{(0,2)}に順に適用すると、すべてのiiに対してci(0,3)=ci(0,2)=ci(0,1)=0c_{i(0,3)}=c_{i(0,2)}=c_{i(0,1)}=0である。

したがって、ciα≠0c_{i\alpha}\ne0を満たすα\alphaはE={(0,0),(1,1),(2,1),(1,2)}E=\{(0,0),(1,1),(2,1),(1,2)\}に属し、各fif_iは

fi=ci(1,2)xy2+ci(2,1)x2y+ci(1,1)xy+ci(0,0)f_i=c_{i(1,2)}xy^2+c_{i(2,1)}x^2y+c_{i(1,1)}xy+c_{i(0,0)}

の形である。s(2,2)s_{(2,2)}の和のうちα∉E\alpha\notin Eまたはβ∉E\beta\notin Eの項は零であり、α+β=(2,2)\alpha+\beta=(2,2)を満たすα,β∈E\alpha,\beta\in Eはα=β=(1,1)\alpha=\beta=(1,1)だけであるから、s(2,2)=∑ici(1,1)2≥0s_{(2,2)}=\sum_ic_{i(1,1)}^2\ge0である。これはs(2,2)=−3s_{(2,2)}=-3と両立しない。したがってM−λM-\lambdaは平方和でなく、λ=0\lambda=0とすればMMは平方和でない。▨

5 半正定値性の有理検算

補題 5.1.JJを空でない有限集合、R=(Rik)i,k∈JR=(R_{ik})_{i,k\in J}を実対称行列とし、j∈Jj\in J、J′=J∖{j}J'=J\setminus\{j\}とする。i∈Ji\in Jに対してeie_iでRJ\R^Jの標準基底ベクトルを表し、v∈RJv\in\R^JのJ′J'への制限をvJ′v_{J'}と書く。

  1. Rjj<0R_{jj}<0ならばejTRej<0e_j^{\mathsf T}Re_j<0であり、RRは半正定値でない。
  2. Rjj=0R_{jj}=0であり、あるl∈J′l\in J'に対してRlj≠0R_{lj}\ne0であるとする。このときτ=−(Rll+1)/(2Rlj)\tau=-(R_{ll}+1)/(2R_{lj})とv=τej+elv=\tau e_j+e_lについてvTRv=−1v^{\mathsf T}Rv=-1であり、RRは半正定値でない。
  3. Rjj>0R_{jj}>0であるか、Rjj=0R_{jj}=0かつすべてのi∈J′i\in J'に対してRij=0R_{ij}=0であるとする。d=Rjjd=R_{jj}とおく。ℓ∈RJ\ell\in\R^Jを、ℓj=1\ell_j=1とし、i∈J′i\in J'に対してRjj>0R_{jj}>0ならばℓi=Rij/Rjj\ell_i=R_{ij}/R_{jj}、Rjj=0R_{jj}=0ならばℓi=0\ell_i=0と定める。S=(Rik−dℓiℓk)i,k∈J′S=(R_{ik}-d\ell_i\ell_k)_{i,k\in J'}とし、SSをJ′J'の外で零と延長したJ×JJ\times J行列をS~\tilde Sとする。このときR=dℓℓT+S~R=d\ell\ell^{\mathsf T}+\tilde Sである。さらに、RRが半正定値であるための必要十分条件はSSが半正定値であることであり、任意のw∈RJ′w\in\R^{J'}に対して、vJ′=wv_{J'}=w、vj=−∑i∈J′ℓiwiv_j=-\sum_{i\in J'}\ell_iw_iで定まるv∈RJv\in\R^JはvTRv=wTSwv^{\mathsf T}Rv=w^{\mathsf T}Swを満たす。

証明.(1)はejTRej=Rjje_j^{\mathsf T}Re_j=R_{jj}から従う。(2)はvTRv=τ2Rjj+2τRlj+Rll=−(Rll+1)+Rll=−1v^{\mathsf T}Rv=\tau^2R_{jj}+2\tau R_{lj}+R_{ll}=-(R_{ll}+1)+R_{ll}=-1から従う。

(3)を示す。dℓℓT+S~d\ell\ell^{\mathsf T}+\tilde Sの(j,j)(j,j)成分はd=Rjjd=R_{jj}である。i∈J′i\in J'に対して、(i,j)(i,j)成分はdℓid\ell_iであり、Rjj>0R_{jj}>0ならばdℓi=Rijd\ell_i=R_{ij}、Rjj=0R_{jj}=0ならばdℓi=0=Rijd\ell_i=0=R_{ij}である。i,k∈J′i,k\in J'に対して、(i,k)(i,k)成分はdℓiℓk+Sik=Rikd\ell_i\ell_k+S_{ik}=R_{ik}である。したがってR=dℓℓT+S~R=d\ell\ell^{\mathsf T}+\tilde Sであり、すべてのv∈RJv\in\R^Jに対して

vTRv=d(ℓTv)2+vJ′TSvJ′v^{\mathsf T}Rv=d(\ell^{\mathsf T}v)^2+v_{J'}^{\mathsf T}Sv_{J'}

である。SSが半正定値ならば、d≥0d\ge0であるからRRは半正定値である。w∈RJ′w\in\R^{J'}とし、vvを主張のとおりに定めるとℓTv=vj+∑i∈J′ℓiwi=0\ell^{\mathsf T}v=v_j+\sum_{i\in J'}\ell_iw_i=0であるから、vTRv=wTSwv^{\mathsf T}Rv=w^{\mathsf T}Swである。したがってRRが半正定値ならばSSは半正定値である。▨

定理 5.2.N∈N≥0N\in\Nとし、Q∈MN(Q)Q\in M_N(\Q)を対称行列とする。J1={1,…,N}J_1=\{1,\dots,N\}、R(1)=QR^{(1)}=Qとおき、t=1,2,…t=1,2,\dotsの順に次を行う。Jt=∅J_t=\emptysetならば停止し、このとき手続きは完了したという。Jt≠∅J_t\ne\emptysetならばjt∈Jtj_t\in J_tを一つ選び、R=R(t)R=R^{(t)}、j=jtj=j_t、J′=Jt∖{j}J'=J_t\setminus\{j\}とする。

  1. Rjj>0R_{jj}>0であるか、Rjj=0R_{jj}=0かつすべてのi∈J′i\in J'に対してRij=0R_{ij}=0であるとき、RRとjjに補題 5.1 (3)を適用して得るdd、ℓ\ell、SSについて、dt=dd_t=dとし、ℓ\ellをJtJ_tの外で零と延長したQN\Q^Nの元をℓt\ell_tとし、R(t+1)=SR^{(t+1)}=S、Jt+1=J′J_{t+1}=J'とする。
  2. Rjj<0R_{jj}<0であるか、Rjj=0R_{jj}=0かつあるi∈J′i\in J'に対してRij≠0R_{ij}\ne0であるとき、停止する。

このとき次が成り立つ。

  1. jtj_tの選び方によらず、手続きは高々N+1N+1回の段で停止し、有理数の四則演算と零との大小比較だけを用いる。すべてのR(t)R^{(t)}、dtd_t、ℓt\ell_tの成分は有理数である。
  2. 手続きが完了したとき、d1,…,dN∈Q≥0d_1,\dots,d_N\in\Q_{\ge0}であり、Q=∑t=1NdtℓtℓtTQ=\sum_{t=1}^Nd_t\ell_t\ell_t^{\mathsf T}である。さらに、Pet=ejtPe_t=e_{j_t}で定まる置換行列PP、L=PT(ℓ1 ⋯ ℓN)L=P^{\mathsf T}(\ell_1\ \cdots\ \ell_N)、D=diag⁡(d1,…,dN)D=\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_N)について、LLは対角成分がすべて11の有理下三角行列であり、PTQP=LDLTP^{\mathsf T}QP=LDL^{\mathsf T}である。
  3. 手続きが段ttで(2)によって停止したとき、R(t)R^{(t)}に補題 5.1 (1)または補題 5.1 (2)を適用して得るw(t)∈QJtw^{(t)}\in\Q^{J_t}から、s=t−1,…,1s=t-1,\dots,1の順に、w(s)∈QJsw^{(s)}\in\Q^{J_s}をJs+1J_{s+1}への制限がw(s+1)w^{(s+1)}でありwjs(s)=−∑i∈Js+1(ℓs)iwi(s+1)w^{(s)}_{j_s}=-\sum_{i\in J_{s+1}}(\ell_s)_iw^{(s+1)}_iであるものと定める。このときv=w(1)∈QNv=w^{(1)}\in\Q^NはvTQv<0v^{\mathsf T}Qv<0を満たす。
  4. QQが半正定値であるための必要十分条件は、手続きが完了することである。

証明.(1)を示す。(1)が実行された段ttではJt+1J_{t+1}の元の個数はJtJ_tの元の個数より11だけ少ないから、(1)は高々NN回実行され、手続きは高々N+1N+1回の段で停止する。補題 5.1 (3)のℓ\ellとSSはRRの成分から、零でないRjjR_{jj}による除算と積と差で得られるから、すべてのR(t)R^{(t)}、dtd_t、ℓt\ell_tの成分は有理数である。

(1)が段1,…,t−11,\dots,t-1で実行されたとし、1≤s≤t1\le s\le tに対してR(s)R^{(s)}をJs×JsJ_s\times J_sの外で零と延長したN×NN\times N行列をR~(s)\tilde R^{(s)}とする。1≤s<t1\le s<tに対して、補題 5.1 (3)の等式はJs×JsJ_s\times J_s成分についてR~(s)=dsℓsℓsT+R~(s+1)\tilde R^{(s)}=d_s\ell_s\ell_s^{\mathsf T}+\tilde R^{(s+1)}を与え、ℓs\ell_sはJsJ_sの外で零であるから、この等式はN×NN\times N行列の等式として成り立つ。ssについて足し合わせると

Q=∑s=1t−1dsℓsℓsT+R~(t)Q=\sum_{s=1}^{t-1}d_s\ell_s\ell_s^{\mathsf T}+\tilde R^{(t)}

である。

(2)を示す。手続きが完了したときJN+1=∅J_{N+1}=\emptysetであるから、R~(N+1)=0\tilde R^{(N+1)}=0でありQ=∑t=1NdtℓtℓtTQ=\sum_{t=1}^Nd_t\ell_t\ell_t^{\mathsf T}である。dt=Rjtjt(t)≥0d_t=R^{(t)}_{j_tj_t}\ge0である。LLの(s,t)(s,t)成分は(ℓt)js(\ell_t)_{j_s}である。s<ts<tならばjs∉Jtj_s\notin J_tであるから(ℓt)js=0(\ell_t)_{j_s}=0であり、(ℓt)jt=1(\ell_t)_{j_t}=1である。したがってLLは対角成分がすべて11の下三角行列であり、PTQP=∑t=1Ndt(PTℓt)(PTℓt)T=LDLTP^{\mathsf T}QP=\sum_{t=1}^Nd_t(P^{\mathsf T}\ell_t)(P^{\mathsf T}\ell_t)^{\mathsf T}=LDL^{\mathsf T}である。

(3)を示す。(2)の条件は補題 5.1 (1)または補題 5.1 (2)の仮定であるから、w(t)w^{(t)}はejte_{j_t}またはτejt+el\tau e_{j_t}+e_lであり、τ\tauは有理数であって、w(t)TR(t)w(t)<0w^{(t)\mathsf T}R^{(t)}w^{(t)}<0である。1≤s<t1\le s<tに対して、w(s)w^{(s)}はR(s)R^{(s)}とjsj_sについて補題 5.1 (3)がw=w(s+1)w=w^{(s+1)}から定めるベクトルであるから、w(s)TR(s)w(s)=w(s+1)TR(s+1)w(s+1)w^{(s)\mathsf T}R^{(s)}w^{(s)}=w^{(s+1)\mathsf T}R^{(s+1)}w^{(s+1)}である。したがってvTQv=w(t)TR(t)w(t)<0v^{\mathsf T}Qv=w^{(t)\mathsf T}R^{(t)}w^{(t)}<0であり、vvの成分は有理数である。

(4)を示す。手続きが完了したならば、(2)によりすべてのv∈RNv\in\R^Nに対してvTQv=∑t=1Ndt(ℓtTv)2≥0v^{\mathsf T}Qv=\sum_{t=1}^Nd_t(\ell_t^{\mathsf T}v)^2\ge0であり、QQは半正定値である。手続きが完了しないならば、(1)により(2)によって停止し、(3)によりQQは半正定値でない。▨

注意 5.3. 各段でjt=min⁡Jtj_t=\min J_tを選ぶと、Jt={t,…,N}J_t=\{t,\dots,N\}、jt=tj_t=tであり、PPは単位行列である。したがって、有理成分の半正定値対称行列QQは、対角成分がすべて11の有理下三角行列LLと非負有理対角行列DDによる分解Q=LDLTQ=LDL^{\mathsf T}をもつ。

Q=(000−1)Q=\begin{pmatrix}0&0\\0&-1\end{pmatrix}の首座小行列式はともに00であるが、e2TQe2=−1e_2^{\mathsf T}Qe_2=-1であるからQQは半正定値でない。したがって、§E3.40 定理 3.1の不等式Δk>0\Delta_k>0をΔk≥0\Delta_k\ge0に替えた条件は半正定値性を特徴づけない。このQQにjt=min⁡Jtj_t=\min J_tで手続きを適用すると、段11で定理 5.2 (1)によりd1=0d_1=0、ℓ1=e1\ell_1=e_1、R(2)=(−1)R^{(2)}=(-1)となり、段22で定理 5.2 (2)により停止する。w(2)=e2w^{(2)}=e_2からw1(1)=−(ℓ1)2w2(2)=0w^{(1)}_1=-(\ell_1)_2w^{(2)}_2=0であり、v=e2v=e_2を得る。

系 5.4.n∈N≥1n\in\NN、d∈N≥0d\in\Nとし、Md\mathcal M_d、zzを定理 3.1のとおりとする。p∈Q[x1,…,xn]p\in\Q[x_1,\dots,x_n]は零であるか次数2d2d以下であるとし、有理対称行列Q=(Qαβ)α,β∈MdQ=(Q_{\alpha\beta})_{\alpha,\beta\in\mathcal M_d}は∣γ∣≤2d|\gamma|\le2dを満たすすべてのγ\gammaについて定理 3.1 (1)の等式を満たすとする。Md\mathcal M_dに全順序を一つ固定してQQに定理 5.2の手続きを適用する。手続きが完了したならば、gt=ℓtTz∈Q[x1,…,xn]g_t=\ell_t^{\mathsf T}z\in\Q[x_1,\dots,x_n]についてp=∑tdtgt2p=\sum_td_tg_t^2はppの有理平方和表示であり、ppは平方和であって非負である。手続きが完了しないならば、QQは半正定値でない。

証明.定理 3.1 (1)によりp=zTQzp=z^{\mathsf T}Qzである。手続きが完了したならば、定理 5.2 (2)によりp=∑tdt(ℓtTz)2p=\sum_td_t(\ell_t^{\mathsf T}z)^2であり、dt∈Q≥0d_t\in\Q_{\ge0}、ℓt∈QMd\ell_t\in\Q^{\mathcal M_d}である。補題 1.2 (2)と補題 1.2 (1)によりppは平方和であって非負である。最後の主張は定理 5.2 (4)から従う。▨

命題 5.5.n∈N≥1n\in\NN、d∈N≥0d\in\Nとし、Md\mathcal M_d、zzを定理 3.1のとおりとする。p=∑γpγxγ∈Q[x1,…,xn]p=\sum_\gamma p_\gamma x^\gamma\in\Q[x_1,\dots,x_n]は零であるか次数2d2d以下であるとする。∣γ∣≤2d|\gamma|\le2dを満たすγ\gammaに対してPγ={(α,β)∈Md×Md∣α+β=γ}\mathcal P_\gamma=\{(\alpha,\beta)\in\mathcal M_d\times\mathcal M_d\mid\alpha+\beta=\gamma\}とし、その元の個数をNγN_\gammaとする。p=zTQzp=z^{\mathsf T}Qzを満たす実対称行列Q=(Qαβ)α,β∈MdQ=(Q_{\alpha\beta})_{\alpha,\beta\in\mathcal M_d}全体の集合をAp\mathcal A_pとする。

  1. ∣γ∣≤2d|\gamma|\le2dを満たすすべてのγ\gammaに対してNγ≥1N_\gamma\ge1である。有理対称行列Q^\hat Qに対して Qαβ∗=Q^αβ+1Nα+β(pα+β−∑(α′,β′)∈Pα+βQ^α′β′)(α,β∈Md)Q^\ast_{\alpha\beta}=\hat Q_{\alpha\beta}+\frac{1}{N_{\alpha+\beta}}\Bigl(p_{\alpha+\beta}-\sum_{(\alpha',\beta')\in\mathcal P_{\alpha+\beta}}\hat Q_{\alpha'\beta'}\Bigr)\qquad(\alpha,\beta\in\mathcal M_d) と定めると、Q∗Q^\astはAp\mathcal A_pに属する有理対称行列である。
  2. 整数K≥0K\ge0と有理対称行列Q0,B1,…,BKQ_0,B_1,\dots,B_Kが存在して、Ap={Q0+∑k=1KτkBk∣τ∈RK}\mathcal A_p=\{Q_0+\sum_{k=1}^K\tau_kB_k\mid\tau\in\R^K\}である。

証明.(1)を示す。∣γ∣≤2d|\gamma|\le2dとする。0≤⌈∣γ∣/2⌉≤∣γ∣0\le\lceil|\gamma|/2\rceil\le|\gamma|であるから、成分ごとに0≤α≤γ0\le\alpha\le\gammaかつ∣α∣=⌈∣γ∣/2⌉|\alpha|=\lceil|\gamma|/2\rceilを満たすα\alphaが存在し、β=γ−α\beta=\gamma-\alphaは∣β∣=⌊∣γ∣/2⌋|\beta|=\lfloor|\gamma|/2\rfloorを満たす。∣α∣,∣β∣≤d|\alpha|,|\beta|\le dであるから(α,β)∈Pγ(\alpha,\beta)\in\mathcal P_\gammaであり、Nγ≥1N_\gamma\ge1である。(α,β)∈Pγ(\alpha,\beta)\in\mathcal P_\gammaと(β,α)∈Pγ(\beta,\alpha)\in\mathcal P_\gammaは同値であるからQ∗Q^\astは対称であり、成分は有理数である。(α,β)∈Pγ(\alpha,\beta)\in\mathcal P_\gammaならばα+β=γ\alpha+\beta=\gammaであるから、

∑(α,β)∈PγQαβ∗=∑(α,β)∈PγQ^αβ+Nγ⋅1Nγ(pγ−∑(α′,β′)∈PγQ^α′β′)=pγ\sum_{(\alpha,\beta)\in\mathcal P_\gamma}Q^\ast_{\alpha\beta}=\sum_{(\alpha,\beta)\in\mathcal P_\gamma}\hat Q_{\alpha\beta}+N_\gamma\cdot\frac{1}{N_\gamma}\Bigl(p_\gamma-\sum_{(\alpha',\beta')\in\mathcal P_\gamma}\hat Q_{\alpha'\beta'}\Bigr)=p_\gamma

である。定理 3.1 (1)によりQ∗∈ApQ^\ast\in\mathcal A_pである。

(2)を示す。定理 3.1 (1)により、Ap\mathcal A_pは未知数(Qαβ)(Q_{\alpha\beta})({α,β}\{\alpha,\beta\}ごとに一つ)についての、係数が11または22で右辺がpγ∈Qp_\gamma\in\Qの連立一次方程式の実数解の集合である。Q\Q上の行基本変形で被約階段形へ変形しても実数解の集合は変わらない。(1)をQ^=0\hat Q=0に適用すればAp≠∅\mathcal A_p\ne\emptysetであるから、被約階段形の方程式は、ピボットでない未知数τ1,…,τK\tau_1,\dots,\tau_Kを任意の実数とし、ピボットの未知数をτ\tauの有理係数一次式に有理定数を加えたものとする解の表示を与える。τ=0\tau=0に対応する解をQ0Q_0、τ\tauの第kk成分だけが11で他が00のときの解からQ0Q_0を引いたものをBkB_kとすればよい。▨

例 5.6.

  1. n=1n=1、d=1d=1、p=x2+23x+1p=x^2+\frac23x+1とし、z=(1,x)Tz=(1,x)^{\mathsf T}の順に行と列を並べる。定理 3.1 (1)の等式はQ1,1=1Q_{1,1}=1、2Q1,x=232Q_{1,x}=\frac23、Qx,x=1Q_{x,x}=1であるから、Ap\mathcal A_pはただ一つの行列Q=(11/31/31)Q=\begin{pmatrix}1&1/3\\1/3&1\end{pmatrix}からなる。各成分を小数第33位へ丸めたQ^=(1333/1000333/10001)\hat Q=\begin{pmatrix}1&333/1000\\333/1000&1\end{pmatrix}はzTQ^z=x2+333500x+1≠pz^{\mathsf T}\hat Qz=x^2+\frac{333}{500}x+1\ne pを満たし、Ap\mathcal A_pに属さない。命題 5.5 (1)ではN(1)=2N_{(1)}=2であり、Q^1,x\hat Q_{1,x}とQ^x,1\hat Q_{x,1}に12(23−333500)=13000\frac12\bigl(\frac23-\frac{333}{500}\bigr)=\frac1{3000}を加えてQ∗=QQ^\ast=Qを得る。Q∗Q^\astにjt=min⁡Jtj_t=\min J_tで手続きを適用すると、d1=1d_1=1、ℓ1=(1,13)T\ell_1=(1,\frac13)^{\mathsf T}、R(2)=(1−19)=(89)R^{(2)}=(1-\frac19)=(\frac89)、d2=89d_2=\frac89、ℓ2=e2\ell_2=e_2であり、有理平方和表示p=(1+13x)2+89x2p=\bigl(1+\frac13x\bigr)^2+\frac89x^2を得る。
  2. n=1n=1、d=2d=2、p=x4p=x^4とし、z=(1,x,x2)Tz=(1,x,x^2)^{\mathsf T}の順に行と列を並べる。ε∈Q>0\ep\in\Q_{>0}とし、 Q^=(00−ε03ε0−ε01)\hat Q=\begin{pmatrix}0&0&-\ep\\0&3\ep&0\\-\ep&0&1\end{pmatrix} とする。x2x^2の係数についての等式だけが成り立たず、N(2)=3N_{(2)}=3であるから、命題 5.5 (1)はQx,x∗=83εQ^\ast_{x,x}=\frac83\ep、Q1,x2∗=Qx2,1∗=−43εQ^\ast_{1,x^2}=Q^\ast_{x^2,1}=-\frac43\epとし、他の成分を変えない。Q∗Q^\astにj1=1j_1=1で手続きを適用すると、Q1,1∗=0Q^\ast_{1,1}=0かつQx2,1∗≠0Q^\ast_{x^2,1}\ne0であるから段11で定理 5.2 (2)により停止し、補題 5.1 (2)はv=(34ε,0,1)Tv=\bigl(\frac{3}{4\ep},0,1\bigr)^{\mathsf T}、vTQ∗v=−1v^{\mathsf T}Q^\ast v=-1を与える。一方、Ap\mathcal A_pに属するex2ex2Te_{x^2}e_{x^2}^{\mathsf T}は半正定値であり、p=(x2)2p=(x^2)^2を与える。

注意 5.7.Ap\mathcal A_pの一つの有理点Q∗Q^\astについて定理 5.2の手続きが完了しないとき、示されるのはQ∗Q^\astが半正定値でないことだけであり、Ap\mathcal A_pが半正定値な点を含まないことは従わない。例 5.6 (2)では、Ap\mathcal A_pは半正定値な点を含むがQ∗Q^\astは半正定値でない。また、定理 4.1 (2)と定理 3.1 (2)により、d=3d=3に対するAM\mathcal A_Mは半正定値な点を含まないが、定理 4.1 (1)によりMMは非負である。したがって、Ap\mathcal A_pが半正定値な点を含まないことから、ppが非負でないことは従わない。ppが平方和である場合にAp\mathcal A_pが半正定値な有理点を含むかどうかは、本記事の主張の範囲に含まれない。

6 下界の証明書

命題 6.1.n∈N≥1n\in\NN、k∈N≥0k\in\Nとし、p,g1,…,gk∈R[x1,…,xn]p,g_1,\dots,g_k\in\R[x_1,\dots,x_n]、λ∈R\lambda\in\Rとする。S={a∈Rn∣g1(a)≥0,…,gk(a)≥0}S=\{a\in\R^n\mid g_1(a)\ge0,\dots,g_k(a)\ge0\}とおく。k=0k=0のときS=RnS=\R^nである。平方和σ0,σ1,…,σk∈R[x1,…,xn]\sigma_0,\sigma_1,\dots,\sigma_k\in\R[x_1,\dots,x_n]が存在して

p−λ=σ0+∑j=1kσjgjp-\lambda=\sigma_0+\sum_{j=1}^k\sigma_jg_j

が成り立つとする。

  1. すべてのa∈Sa\in Sに対してp(a)≥λp(a)\ge\lambdaである。
  2. さらにp(a0)=λp(a_0)=\lambdaを満たすa0∈Sa_0\in Sが存在するならば、ppのSS上の最小値は存在してλ\lambdaに等しい。

証明.(1)を示す。a∈Sa\in Sとする。補題 1.2 (1)によりσj(a)≥0\sigma_j(a)\ge0(0≤j≤k0\le j\le k)であり、gj(a)≥0g_j(a)\ge0(1≤j≤k1\le j\le k)であるから、p(a)−λ=σ0(a)+∑j=1kσj(a)gj(a)≥0p(a)-\lambda=\sigma_0(a)+\sum_{j=1}^k\sigma_j(a)g_j(a)\ge0である。

(2)は(1)とa0∈Sa_0\in S、p(a0)=λp(a_0)=\lambdaから従う。▨

例 6.2.p=(x2+y2−1)2+x2=x4+2x2y2+y4−x2−2y2+1∈Q[x,y]p=(x^2+y^2-1)^2+x^2=x^4+2x^2y^2+y^4-x^2-2y^2+1\in\Q[x,y]とし、d=2d=2、z=(1,x,y,x2,xy,y2)Tz=(1,x,y,x^2,xy,y^2)^{\mathsf T}の順に行と列を並べる。v=(−1,0,0,1,0,1)Tv=(-1,0,0,1,0,1)^{\mathsf T}、exe_xをxxに対応する標準基底ベクトルとし、

Q=vvT+exexT=(100−10−1010000000000−100101000000−100101)Q=vv^{\mathsf T}+e_xe_x^{\mathsf T}=\begin{pmatrix}1&0&0&-1&0&-1\\0&1&0&0&0&0\\0&0&0&0&0&0\\-1&0&0&1&0&1\\0&0&0&0&0&0\\-1&0&0&1&0&1\end{pmatrix}

とおく。定理 3.1 (1)の等式のうちQQの零でない成分が現れるものは

x0: Q1,1=1,x2: Qx,x+2Q1,x2=1−2=−1,y2: Qy,y+2Q1,y2=0−2=−2,x4: Qx2,x2=1,x2y2: Qxy,xy+2Qx2,y2=0+2=2,y4: Qy2,y2=1\begin{aligned} &x^0:\ Q_{1,1}=1,&&x^2:\ Q_{x,x}+2Q_{1,x^2}=1-2=-1,&&y^2:\ Q_{y,y}+2Q_{1,y^2}=0-2=-2,\\ &x^4:\ Q_{x^2,x^2}=1,&&x^2y^2:\ Q_{xy,xy}+2Q_{x^2,y^2}=0+2=2,&&y^4:\ Q_{y^2,y^2}=1 \end{aligned}

であり、右辺はppの係数に等しい。∣γ∣≤4|\gamma|\le4を満たす他のγ\gammaに対する和はQQの零の成分だけからなり、pγ=0p_\gamma=0に等しい。QQにjt=min⁡Jtj_t=\min J_tで定理 5.2の手続きを適用すると、段11でd1=1d_1=1、ℓ1=(1,0,0,−1,0,−1)T\ell_1=(1,0,0,-1,0,-1)^{\mathsf T}であり、R(2)R^{(2)}は(x,x)(x,x)成分だけが11で他の成分が00の行列である。段22でd2=1d_2=1、ℓ2=ex\ell_2=e_xであり、段33から段66では零の行と列が除かれてd3=⋯=d6=0d_3=\cdots=d_6=0である。系 5.4により、有理平方和表示

p=1⋅(1−x2−y2)2+1⋅x2p=1\cdot(1-x^2-y^2)^2+1\cdot x^2

を得る。命題 6.1をk=0k=0、λ=0\lambda=0に適用するとp≥0p\ge0であり、p(0,±1)=0p(0,\pm1)=0であるからppの最小値は00である。p+1=(1−x2−y2)2+x2+12p+1=(1-x^2-y^2)^2+x^2+1^2も平方和であり、λ=−1\lambda=-1の下界を与えるが、p≥0>−1p\ge0>-1であるからp(a0)=−1p(a_0)=-1を満たすa0a_0は存在せず、−1-1は最小値でない。

例 6.3.p=−x4∈Q[x]p=-x^4\in\Q[x]、g1=1−x2g_1=1-x^2とすると、S={a∈R∣1−a2≥0}=[−1,1]S=\{a\in\R\mid1-a^2\ge0\}=[-1,1]である。σ0=0\sigma_0=0、σ1=1+x2=12+x2\sigma_1=1+x^2=1^2+x^2とおくと

p−(−1)=1−x4=(1+x2)(1−x2)=σ0+σ1g1p-(-1)=1-x^4=(1+x^2)(1-x^2)=\sigma_0+\sigma_1g_1

であるから、命題 6.1により[−1,1][-1,1]上でp≥−1p\ge-1であり、p(±1)=−1p(\pm1)=-1であるからppの[−1,1][-1,1]上の最小値は−1-1である。p(2)=−16<−1p(2)=-16<-1であるから、p+1p+1はR\R上で非負でなく、補題 1.2 (1)により平方和でない。

注意 6.4.定理 4.1 (1)により Motzkin 多項式MMは非負であり、M(1,1)=0M(1,1)=0であるからMMの最小値は00である。一方、定理 4.1 (2)により、どのλ∈R\lambda\in\Rに対してもM−λM-\lambdaは平方和でないから、命題 6.1をk=0k=0で適用してMMの下界を得ることはできない。

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