1 一段法と局所打切り誤差
定義 1.1.d∈N≥1とし、Rdにノルム∥⋅∥を固定する。Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを連続写像とする。
- 集合D⊆Ω×(0,∞)と写像Φ:D→Rdの組をfに対する 増分関数 (increment function) といい、(t,u,h)∈Dに対してΨh(t,u):=u+hΦ(t,u,h)と置き、Ψhを 一歩写像 (one-step map) という。N∈N≥1、格子t0<t1<⋯<tN、hn:=tn+1−tnと初期値y0∈Rdに対し、(tn,yn,hn)∈Dである限りyn+1:=Ψhn(tn,yn)と定める。各d∈N≥1、各開集合Ω⊆R×Rdと、連続写像f:Ω→Rdのうち定められたクラスに属する各fに対して増分関数を一つずつ対応させる規則を 一段法 (one-step method) という。
- t0<Tとし、J⊇[t0,T]を開区間、y:J→Rdを、任意のτ∈Jについて(τ,y(τ))∈Ωとy′(τ)=f(τ,y(τ))を満たすC1級写像とする。t∈[t0,T)と0<h≤T−tが(t,y(t),h)∈Dを満たすとき、
δy(t,h):=y(t+h)−Ψh(t,y(t))
を、解yの点t、刻みhにおける 局所打切り誤差 (local truncation error) という。[t0,T]の格子t0<⋯<tN=Tについてはdn:=δy(tn,hn)と書く。
- p∈N≥1とする。一段法が次を満たすとき、その 局所次数 (local order) はp以上であるという。任意のd∈N≥1、Rdの任意のノルム、任意の開集合Ω⊆R×Rd、一段法のクラスに属する任意のf∈Cp(Ω;Rd)、任意のt0<Tと、[t0,T]を含む開区間J上で定義され、任意のτ∈Jについて(τ,y(τ))∈Ωとy′(τ)=f(τ,y(τ))を満たす任意のC1級写像yに対して、C≥0とh0>0が存在し、t∈[t0,T)と0<h≤min{h0,T−t}を満たす任意のt,hについて(t,y(t),h)∈Dかつ∥δy(t,h)∥≤Chp+1が成り立つ。局所次数がp以上でありp+1以上でないとき、局所次数はpであるという。
定義 1.3.d∈N≥1とし、Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを連続写像とする。D:=Ω×(0,∞)上の増分関数Φ(t,u,h):=f(t,u)を対応させる一段法を 前進 Euler 法 (forward Euler method) という。格子t0<⋯<tNと初期値y0に対する近似値は、(tn,yn)∈Ωである限り
yn+1=yn+hnf(tn,yn)で定まり、一歩ごとにfを1回評価する。
補題 1.4.m∈N≥1とし、Rmにノルム∥⋅∥を固定する。K⊆Rmをコンパクト集合とし、ρ≥0に対して
Kρ:={x∈Rm∣∥x−x′∥≤ρ を満たす x′∈K が存在する}と置く。このとき、任意のρ≥0についてKρはコンパクトである。さらに、U⊆RmがK⊆Uを満たす開集合ならば、Kρ⊆Uを満たすρ>0が存在する。
補題 1.5.m,n∈N≥1とし、RmとRnにノルム∥⋅∥を固定する。r∈N≥0とする。
- J⊆Rを開区間、x∈Cr+1(J;Rn)とし、τ∈Jとh∈Rがτ+h∈Jを満たすとする。このとき
x(τ+h)−j=0∑rj!hjx(j)(τ)≤(r+1)!∣h∣r+10≤θ≤1max∥x(r+1)(τ+θh)∥
が成り立つ。
- U⊆Rmを開集合、g∈Cr+1(U;Rn)、K′⊆Uをコンパクト集合とする。このときC≥0が存在して、x+θz∈K′(0≤θ≤1)を満たす任意のx,z∈Rmについて
g(x+z)−k=0∑rk!1Dkg(x)[z,…,z]≤C∥z∥r+1
が成り立つ。k=0の項はg(x)と読む。
証明.(1)を示す。Jは区間であるからτとτ+hを結ぶ線分はJに含まれる。xの各成分に§E4.5 定理 1.1を定義域J⊆R、展開点τ、増分hとして適用し、一変数ではDjxl(τ)[h,…,h]=hjxl(j)(τ)であることを用いると、成分ごとの積分として
x(τ+h)−j=0∑rj!hjx(j)(τ)=r!hr+1∫01(1−θ)rx(r+1)(τ+θh)dθを得る。連続写像v:[0,1]→Rnについて、Riemann 和SN:=N1∑k=1Nv(k/N)は成分ごとに∫01v(θ)dθへ収束し、∥SN∥≤N1∑k=1N∥v(k/N)∥の右辺は∫01∥v(θ)∥dθへ収束する。ノルムは連続であるから∥∫01v(θ)dθ∥≤∫01∥v(θ)∥dθである。これをv(θ)=(1−θ)rx(r+1)(τ+θh)へ適用し、∫01(1−θ)rdθ=1/(r+1)を用いると主張の評価を得る。
(2)を示す。K′=∅ならば示すことはない。gの各成分glについてDr+1glは連続であり、K′はコンパクトであるから、Ml:=maxy∈K′∥Dr+1gl(y)∥opは有限である。x+θz∈K′(0≤θ≤1)とすると、§E4.5 定理 1.1と§E4.5 系 1.2をgl、展開点x、増分zに適用して
gl(x+z)−k=0∑rk!1Dkgl(x)[z,…,z]≤(r+1)!Ml∣z∣r+1を得る。ここで∣z∣は§E4.5 系 1.2の評価に現れるRmのノルムである。有限次元の実線形空間のノルムは互いに同値であるから、任意のz∈Rmとw∈Rnについて∣z∣≤β∥z∥と∥w∥≤β′maxl∣wl∣を満たすβ,β′>0が存在する。C:=β′βr+1maxlMl/(r+1)!が主張を満たす。▨
命題 1.6.d∈N≥1とし、Rdにノルム∥⋅∥を固定する。Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを連続写像、t0<T、J⊇[t0,T]を開区間とし、y∈C2(J;Rd)が任意のτ∈Jについて(τ,y(τ))∈Ωとy′(τ)=f(τ,y(τ))を満たすとする。このとき前進 Euler 法の局所打切り誤差は、t∈[t0,T)と0<h≤T−tを満たす任意のt,hについて
∥δy(t,h)∥≤2h2τ∈[t,t+h]max∥y′′(τ)∥を満たす。特にM2:=maxτ∈[t0,T]∥y′′(τ)∥と置くと、[t0,T]の任意の格子について∥dn∥≤M2hn2/2である。前進 Euler 法の局所次数は1以上である。
証明. 前進 Euler 法の増分関数の定義域はΩ×(0,∞)であるから(t,y(t),h)はその元であり、y′(t)=f(t,y(t))により
δy(t,h)=y(t+h)−y(t)−hy′(t)である。補題 1.5 (1)をr=1として適用すると第一の評価を得る。格子についての評価はt=tn、h=hnの場合である。局所次数1以上の条件ではf∈C1(Ω;Rd)であり、y′(τ)=f(τ,y(τ))はC1級写像の合成であるからy∈C2(J;Rd)であり、C:=M2/2と任意のh0>0が局所次数1以上の条件を満たす。▨
例 1.7.d=1、Ω=R2、f(t,u)=uとし、解y(τ)=eτ(τ∈R)とt=0を取る。前進 Euler 法の一歩はΨh(0,1)=1+hであるからδy(0,h)=eh−1−hである。§E4.5 定理 1.1をexp、展開点0、増分h、r=1に適用すると
eh−1−h=h2∫01(1−θ)eθhdθであり、h>0では1≤eθh≤ehであるから2h2≤eh−1−h≤2h2ehが成り立つ。eh−1=h∫01eθhdθ≤hehと合わせると
0≤eh−1−h−2h2≤2h2(eh−1)≤2h3ehを得る。h=0.05とh=0.025での値を小数第12位に丸めると次のとおりである。
| h |
eh−1−h |
h2/2 |
eh−1−h−h2/2 |
h3eh/2 |
| 0.05 |
0.001271096376 |
0.00125 |
0.000021096376 |
0.000065704444 |
| 0.025 |
0.000315120524 |
0.0003125 |
0.000002620524 |
0.000008010274 |
任意のC≥0について、Ch<21を満たすh>0ではCh3<2h2≤δy(0,h)である。したがって前進 Euler 法の局所次数は2以上でない。
2 Runge–Kutta 法
補題 2.1.d,s∈N≥1とし、Rdにノルム∥⋅∥を固定し、R×Rdにはノルム∥(t,u)∥:=max{∣t∣,∥u∥}を入れる。A=(aij)∈Rs×s、c:=A1(1は全成分が1のベクトル)、α:=maxi∑j∣aij∣、γ:=maxi∣ci∣と置く。Ω⊆R×Rdを開集合、f∈C1(Ω;Rd)、K⊆Ωを空でないコンパクト集合、ρ>0をKρ⊆Ωを満たす数とし(Kρは補題 1.4の閉近傍)、M:=maxKρ∥f∥と置く。
- あるL≥0が存在して、(t,u)∈K、∣σ−t∣≤ρ、∥v−u∥≤ρ、∥v′−u∥≤ρを満たす任意のt,u,σ,v,v′について∥f(σ,v)−f(σ,v′)∥≤L∥v−v′∥が成り立つ。
- Lを(1)を満たす数とし、h>0がhγ≤ρ、hαM≤ρ、hαL<1を満たすとする。このとき任意の(t,u)∈Kについて、方程式
ki=f(t+cih, u+hj=1∑saijkj)(1≤i≤s)
はmaxi∥ki∥≤Mを満たす解(k1,…,ks)∈(Rd)sをただ一つもつ。
- (K,ρ,L,h)と(K1,ρ1,L1,h)がともに(2)の条件を満たし、(t,u)∈K∩K1ならば、(2)が二つの組から与える解は一致する。
証明.(1)を示す。(t,u)∈Kに対してBt,u:={(σ,v)∣∣σ−t∣≤ρ, ∥v−u∥≤ρ}は(t,u)を中心とする半径ρの閉球であり、凸であってKρに含まれる。(σ,v),(σ,v′)∈Bt,uを結ぶ線分はBt,u⊆Kρに含まれるから、補題 1.5 (2)をr=0、K′=Kρ、x=(σ,v)、z=(0,v′−v)として適用すると、Kρだけで定まるCについて∥f(σ,v′)−f(σ,v)∥≤C∥(0,v′−v)∥=C∥v′−v∥を得る。L:=Cが主張を満たす。
(2)を示す。X:={k∈(Rd)s∣maxi∥ki∥≤M}に距離maxi∥ki−ki′∥を入れると、Xは空でない完備距離空間である。k∈Xに対して、点Pi(k):=(t+cih, u+h∑jaijkj)は∣cih∣≤hγ≤ρと∥h∑jaijkj∥≤hαM≤ρによりBt,uに属する。したがってT(k)i:=f(Pi(k))が定まり、∥T(k)i∥≤MであるからT:X→Xである。k,k′∈XについてPi(k)とPi(k′)は時刻が等しくBt,uに属するから、(1)により
∥T(k)i−T(k′)i∥≤Lhj∑aij(kj−kj′)≤hαLjmax∥kj−kj′∥であり、hαL<1によりTは縮小写像である。§E2.7 定理 2.2によりTはXにただ一つの不動点をもつ。Xの元が方程式の解であることとTの不動点であることは同値である。
(3)を示す。M1:=maxK1ρ1∥f∥と置き、M≤M1とする(M1≤Mの場合は二つの組の役割を入れ替える)。(K,ρ,L,h)から得た解kはmaxi∥ki∥≤M≤M1を満たす方程式の解であるから、(K1,ρ1,L1,h)に対する(2)の一意性により、(K1,ρ1,L1,h)から得た解に一致する。▨
定義 2.2.s∈N≥1、A=(aij)∈Rs×s、b∈Rsとし、c:=A1と置く。d∈N≥1とし、Rdにノルムを固定し、R×Rdにはノルムmax{∣t∣,∥u∥}を入れる。
- 配列
cAbT
を(A,b)の Butcher 配列 (Butcher tableau) という。
- Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを連続写像、(t,u)∈Ω、h>0とする。(k1,…,ks)∈(Rd)sが、各iについて(t+cih, u+h∑jaijkj)∈Ωと
ki=f(t+cih, u+hj=1∑saijkj)(1≤i≤s)
を満たすとき、(k1,…,ks)を(t,u,h)における 段の方程式 (stage equations) の解という。
- Aが狭義下三角行列であるとき、(A,b)を陽的という。このとき段の方程式はk1=f(t,u)、ki=f(t+cih, u+h∑j<iaijkj)(i=2,…,s)によってk1,…,ksを順に一つずつ定め、解はこれらの点がすべてΩに属するときに限りただ一つ存在する。解が存在する(t,u,h)の全体をDとし、Φ(t,u,h):=∑ibikiと置く。一歩ごとにfをs回評価する。
- Aが狭義下三角行列でないとき、(A,b)を陰的という。このときf∈C1(Ω;Rd)とし、(t,u)を含むコンパクト集合Kとρ、Lが存在して(K,ρ,L,h)が補題 2.1 (2)の条件を満たす(t,u,h)の全体をDとし、Φ(t,u,h):=∑ibikiと置く。ここで(ki)は補題 2.1 (2)が与える解であり、補題 2.1 (3)によりK,ρ,Lの取り方によらない。
- (3)または(4)の増分関数を対応させる一段法を、Butcher 配列(A,b)の s段 Runge–Kutta 法 (s-stage Runge–Kutta method) という。(A,b)が陽的であるものを 陽的 Runge–Kutta 法 (explicit Runge–Kutta method)、陰的であるものを 陰的 Runge–Kutta 法 (implicit Runge–Kutta method) という。
定義 2.3. Butcher 配列
02102100010101210021の陽的 2 段 Runge–Kutta 法を、それぞれ 中点法 (explicit midpoint method)、Heun 法 (Heun's method) という。一歩はそれぞれ
k1=f(t,u),k2=f(t+2h, u+2hk1),Ψh(t,u)=u+hk2,k1=f(t,u),k2=f(t+h, u+hk1),Ψh(t,u)=u+2h(k1+k2)であり、いずれも一歩ごとにfを2回評価する。
定義 2.4.a21=a32=21、a43=1、他のaij=0のA∈R4×4とb=61(1,2,2,1)Tを Butcher 配列とする陽的 4 段 Runge–Kutta 法を 古典的 Runge–Kutta 法 (classical Runge–Kutta method) という。c=A1=(0,21,21,1)Tであり、一歩は
k1=f(t,u),k2=f(t+2h, u+2hk1),k3=f(t+2h, u+2hk2),k4=f(t+h, u+hk3),Ψh(t,u)=u+6h(k1+2k2+2k3+k4)である。一歩ごとにfを4回評価する。
3 後退 Euler 法
定義 3.1.d∈N≥1とし、Rdにノルムを固定する。Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを連続写像、(t,u)∈Ω、h>0とし、v∈Rdについての方程式
v=u+hf(t+h,v),(t+h,v)∈Ωを考える。Ψh(t,u)を次で定める。
- 方程式の解がただ一つ存在するとき、その解をΨh(t,u)とする。
- f∈C1(Ω;Rd)であり、(t,u,h)が Butcher 配列111の陰的 1 段 Runge–Kutta 法の増分関数の定義域に属するとき、その一歩写像の値u+hkをΨh(t,u)とする。
kが段の方程式k=f(t+h,u+hk)の解であることとv=u+hkが上の方程式の解であることは同値であるから、(1)と(2)がともに当てはまるとき両者の値は一致する。Ψh(t,u)が定まる(t,u,h)の全体をDとし、増分関数Φ(t,u,h):=(Ψh(t,u)−u)/hを対応させる一段法を 後退 Euler 法 (backward Euler method) という。格子上の近似値yn+1=Ψhn(tn,yn)はyn+1=yn+hnf(tn+1,yn+1)を満たす。
例 3.2.d=1、Ω=R2、f(t,v)=v2、t=0、u=1とする。後退 Euler 法の方程式はv=1+hv2である。0<h<41ならば、この方程式は二つの実数解
v±:=2h1±1−4hをもつ。v−=1+1−4h2であり、0<1−4h<1から1<v−<2である。二つの解の積はv+v−=h1であり、v−<2であるからv+>2h1>2である。h→0のときv−→1、v+→+∞である。解が二つあるから定義 3.1 (1)は当てはまらない。
0<h<41とし、K:={(0,1)}、ρ:=1と置く。Kρ=[−1,1]×[0,2]であるからM=maxKρ∣f∣=4である。v,v′∈[0,2]について∣v2−v′2∣=∣v+v′∣∣v−v′∣≤4∣v−v′∣であるから、L:=4は補題 2.1 (1)を満たす。Butcher 配列111ではα=γ=1であり、hγ<ρ、hαM=4h<ρ、hαL=4h<1が成り立つ。したがって(0,1,h)はこの配列の陰的 1 段 Runge–Kutta 法の増分関数の定義域に属し、定義 3.1 (2)によりΨh(0,1)=1+hkである。ここでkは段の方程式k=(1+hk)2の解で∣k∣≤4を満たすものである。段の方程式の解kと後退 Euler 法の方程式の解v=1+hkはk=(v−1)/h=v2で対応するから、段の方程式の解はv−2とv+2である。1<v−2<4<v+2であるからk=v−2であり、Ψh(0,1)=1+hv−2=v−である。
証明.(1)を示す。T(v):=u+hf(t+h,v)はRdからそれ自身への写像であり、∥T(v)−T(v′)∥≤hL∥v−v′∥を満たす。Rdは空でない完備距離空間でありhL<1であるから、§E2.7 定理 2.2によりTはただ一つの不動点をもち、任意のv(0)から始まる反復列はその不動点に収束する。解がただ一つであるから、定義 3.1 (1)によりその解はΨh(t,u)である。v:=Ψh(t,u)と置くと、v=T(v)とv(m+1)=T(v(m))により
∥v−v(m)∥≤∥T(v)−T(v(m))∥+∥v(m+1)−v(m)∥≤hL∥v−v(m)∥+∥v(m+1)−v(m)∥であり、移項すると評価を得る。
(2)を示す。v:=Ψh(t,y(t))と置くとv=y(t)+hf(t+h,v)であるから
y(t+h)−v=η+h(f(t+h,y(t+h))−f(t+h,v))であり、∥y(t+h)−v∥≤∥η∥+hL∥y(t+h)−v∥を移項すると第一の評価を得る。yがC2級ならば、y′(t+h)=f(t+h,y(t+h))により−η=y(t)−y(t+h)−(−h)y′(t+h)である。補題 1.5 (1)をJ=I、展開点t+h、増分−h、r=1として適用すると第二の評価を得る。▨
例 3.5.d=1、I=R、f(t,u)=−u(L=1)、解y(τ)=e−τ、t=0、h=0.1とする。後退 Euler 法の一歩は方程式v=1−0.1vの解v=Ψ0.1(0,1)=1/1.1である。残差はη=e−0.1−1+0.1e−0.1=1.1e−0.1−1であり、y(0.1)−v=η−0.1(y(0.1)−v)から局所打切り誤差はη/1.1に等しい。v(0)=1から始まる不動点反復はv(m+1)=1−0.1v(m)であり、v−v(m)=(−0.1)m(v−1)を満たし、v(1)=0.9、v(2)=0.91、v(3)=0.909である。小数第12位に丸めた値は次のとおりである。
| 量 |
値 |
| 残差η |
−0.004678840160 |
| 局所打切り誤差y(0.1)−v |
−0.004253491055 |
| 命題 3.4 (2)の上界∣η∣/0.9 |
0.005198711289 |
| 反復の誤差v−v(2) |
−0.000909090909 |
| 命題 3.4 (1)の上界∣v(3)−v(2)∣/0.9 |
0.001111111111 |
| 打ち切った値の誤差y(0.1)−v(2) |
−0.005162581964 |
打ち切った値v(2)の誤差はy(0.1)−v(2)=(y(0.1)−v)+(v−v(2))であり、局所打切り誤差と反復の誤差の和である。
4 位数条件
補題 4.1.s,d∈N≥1、A=(aij)∈Rs×s、c:=A1、b∈Rsとする。Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを連続写像とし、g:Ω→R×Rdをg(t,u):=(1,f(t,u))で定める。(t,u)∈Ω、h>0とする。このとき(ki)i↦((1,ki))iは、(t,u,h)におけるfの段の方程式の解の全体から、(t,u)+h∑jaijξj∈Ωと
ξi=g((t,u)+hj=1∑saijξj)(1≤i≤s)を満たす(ξi)i∈(R×Rd)sの全体への全単射であり、(t,u)+h∑ibi(1,ki)=(t+hbT1, u+h∑ibiki)が成り立つ。また、開区間J上のC1級写像yで任意のτ∈Jについて(τ,y(τ))∈Ωを満たすものについて、y′(τ)=f(τ,y(τ))と、x(τ):=(τ,y(τ))がx′=g(x)を満たすことは同値である。
証明.ξi=(θi,ki)と書く。gの第1成分は定数1であるから、方程式の第1成分はθi=1である。すべてのjについてθj=1のとき、点(t,u)+h∑jaijξjの第1成分はt+h∑jaij=t+cihであり、方程式の第2成分はfの段の方程式ki=f(t+cih, u+h∑jaijkj)に一致する。(t,u)+h∑ibi(1,ki)の第1成分はt+h∑ibi=t+hbT1である。最後の主張はx′(τ)=(1,y′(τ))による。▨
補題 4.2.m,s,p∈N≥1とし、Rmにノルム∥⋅∥を固定する。U⊆Rmを開集合、g∈Cp(U;Rm)、A=(aij)∈Rs×s、b∈Rs、α:=maxi∑j∣aij∣とする。x∈Uに対して、κi,q(x),ζi,q(x)∈Rm(1≤i≤s、0≤q≤p−1)を、κi,0(x):=g(x)、ζi,q(x):=∑jaijκj,q(x)と
κi,q(x):=k=1∑qk!1q1,…,qk∈N≥0q1+⋯+qk=q−k∑Dkg(x)[ζi,q1(x),…,ζi,qk(x)](1≤q≤p−1)によってqの小さい順に定める。またG1:=g、Gq+1(x):=DGq(x)[g(x)](1≤q≤p)と置く。Gq∈Cp+1−q(U;Rm)である。
- Jを開区間、x:J→Uをx′=g(x)を満たすC1級写像とする。このときx∈Cp+1(J;Rm)であり、1≤q≤p+1についてx(q)=Gq∘xである。さらにh>0とτ,τ+h∈Jについて
x(τ+h)−x(τ)−q=1∑pq!hqGq(x(τ))≤(p+1)!hp+1σ∈[τ,τ+h]max∥Gp+1(x(σ))∥
が成り立つ。
- K⊆Uをコンパクト集合、ρ>0をKρ⊆Uを満たす数(Kρは補題 1.4の閉近傍)、M≥0とh1>0をh1αM≤ρを満たす数とする。各x∈Kとh∈(0,h1]に対し、ξi(x,h)=g(x+h∑jaijξj(x,h))(1≤i≤s)とmaxi∥ξi(x,h)∥≤Mを満たすξ1(x,h),…,ξs(x,h)∈Rmが与えられているとする。このときC≥0が存在して、任意のx∈Kとh∈(0,h1]について
hi∑biξi(x,h)−q=1∑phqi∑biκi,q−1(x)≤Chp+1
が成り立つ。
- x∈Uと1≤q≤pを固定し、Aとbのs2+s個の成分を変数とみなすと、∑ibiκi,q−1(x)の各成分は次数q以下の実係数多項式である。
証明.(1)を示す。x′=G1∘xである。1≤q≤pについてx∈Cq(J;Rm)かつx(q)=Gq∘xであるとすると、GqはC1級であるから、連鎖律によりx(q)は微分可能であり、x(q+1)=DGq(x)[x′]=DGq(x)[g(x)]=Gq+1∘xは連続である。したがってx∈Cp+1(J;Rm)であり、補題 1.5 (1)をr=pとして適用すると評価を得る。
(2)を示す。1≤k≤p−1についてDkgは連続であり、κi,qとζi,qは連続写像であり、Kはコンパクトであるから、B≥1が存在して、任意のx∈K、1≤k≤p−1、w1,…,wk∈Rm、i、0≤q≤p−1について∥Dkg(x)[w1,…,wk]∥≤B∥w1∥⋯∥wk∥と∥ζi,q(x)∥≤Bが成り立つ。E:=max{αM, B∑q=0p−1h1q}と置く。x∈Kとh∈(0,h1]に対しzi:=h∑jaijξj(x,h)と置くと、ξi(x,h)=g(x+zi)であり、∥zi∥≤hαM≤ρであるからx+θzi∈Kρ(0≤θ≤1)である。
主張 4.2.1. 各r∈{0,1,…,p}についてCr≥0が存在して、任意のx∈K、h∈(0,h1]、iについて
ξi(x,h)−q=0∑r−1hqκi,q(x)≤Crhrが成り立つ。
証明.r=0ではC0:=Mが条件を満たす。r<pについてCrが存在するとする。z^i:=∑q=0r−1hq+1ζi,q(x)と置くと、zi−z^i=h∑jaij(ξj(x,h)−∑q=0r−1hqκj,q(x))であるから∥zi−z^i∥≤αCrhr+1であり、また∥zi∥≤Eh、∥z^i∥≤Ehである。g∈Cr+1(U;Rm)であるから、補題 1.5 (2)をK′=Kρとrに適用すると、Kρとrだけで定まるC′について
g(x+zi)−k=0∑rk!1Dkg(x)[zi,…,zi]≤C′∥zi∥r+1≤C′Er+1hr+1である。1≤k≤rについて、多重線形性により
Dkg(x)[zi,…,zi]−Dkg(x)[z^i,…,z^i]=l=1∑kDkg(x)[l−1z^i,…,z^i,zi−z^i,k−lzi,…,zi]であり、そのノルムはkBαCrEk−1h1k−1hr+1以下である。さらに
Dkg(x)[z^i,…,z^i]=q1,…,qk=0∑r−1hk+q1+⋯+qkDkg(x)[ζi,q1(x),…,ζi,qk(x)]であり、k+q1+⋯+qk≥r+1を満たす項のノルムはBk+1h1k+q1+⋯+qk−r−1hr+1以下である。k+q1+⋯+qk=q≤rを満たす項ではql≤q−k≤r−1であるから、κi,qの定義により、これらの項に1/k!を掛けて1≤k≤rにわたって加えたものは∑q=1rhqκi,q(x)に等しい。k=0の項はg(x)=κi,0(x)である。以上の評価をξi(x,h)=g(x+zi)に加えると、x、h、iによらないCr+1について∥ξi(x,h)−∑q=0rhqκi,q(x)∥≤Cr+1hr+1を得る。▨
主張 4.2.1をr=pで用いると
hi∑biξi(x,h)−q=0∑p−1hq+1i∑biκi,q(x)≤(i∑∣bi∣)Cphp+1であり、添字をq+1からqへ付け替えると主張を得る。
(3)を示す。κi,0(x)=g(x)はAによらない。1≤q≤p−1とし、q′<qについてκi,q′(x)の各成分がAの成分の次数q′以下の多項式であるとすると、ζi,q′(x)の各成分は次数q′+1以下の多項式である。Dkg(x)はAによらない多重線形写像であるから、Dkg(x)[ζi,q1(x),…,ζi,qk(x)]の各成分はζi,q1(x),…,ζi,qk(x)の成分の積の一次結合であり、次数は∑l(ql+1)=q以下である。帰納法により、0≤q≤p−1についてκi,q(x)の各成分は次数q以下の多項式であり、biκi,q−1(x)の各成分は(A,b)の次数q以下の多項式である。▨
命題 4.3.s,p∈N≥1、A∈Rs×s、b∈Rsとする。d∈N≥1、開集合Ω⊆R×Rd、f∈Cp(Ω;Rd)に対してg:=(1,f):Ω→R×Rdと置き、補題 4.2のκi,qとGqをU=Ωとgについて取り、pr2:R×Rd→Rdを第2成分への射影として
Δqf(x):=pr2(i=1∑sbiκi,q−1(x)−q!1Gq(x))(x∈Ω, 1≤q≤p)と置く。任意のd∈N≥1、開集合Ω⊆R×Rd、f∈Cp(Ω;Rd)、x∈Ωと1≤q≤pについてΔqf(x)=0が成り立つことは、Butcher 配列(A,b)の Runge–Kutta 法の局所次数がp以上であるための必要十分条件である。
証明.d∈N≥1、Rdのノルム、開集合Ω、f∈Cp(Ω;Rd)、t0<T、開区間J⊇[t0,T]上の解yを取り、R×Rdにノルムmax{∣t∣,∥u∥}を入れる。Γ:={(τ,y(τ))∣τ∈[t0,T]}はコンパクトであり、補題 1.4によりΓρ⊆Ωを満たすρ>0が存在する。c:=A1、M:=maxΓρ∥f∥、α:=maxi∑j∣aij∣、γ:=maxi∣ci∣と置き、Lを補題 2.1 (1)をK=Γについて満たす数とし、h1>0をh1γ≤ρ、h1αmax{1,M}≤ρ、h1αL<1を満たすように取る。
t∈[t0,T)と0<h≤h1について、補題 2.1 (2)は(t,y(t),h)における段の方程式の解(ki)でmaxi∥ki∥≤Mを満たすものをただ一つ与える。Aが陽的であれば段の方程式の解は一つしかないから、いずれの場合もこの解が Runge–Kutta 法の増分関数を与え、(t,y(t),h)∈Dである。
x:=(t,y(t))と置くと、補題 4.1によりξi:=(1,ki)はξi=g(x+h∑jaijξj)と∥ξi∥≤max{1,M}を満たし、pr2(x+h∑ibiξi)=Ψh(t,y(t))である。補題 4.1によりτ↦(τ,y(τ))はx′=g(x)を満たす。
補題 4.2 (2)をK=Γとmax{1,M}について、補題 4.2 (1)をτ↦(τ,y(τ))について適用し、∥pr2w∥≤∥w∥を用いると、CΓ≥0が存在して、t∈[t0,T)と0<h≤min{h1,T−t}を満たす任意のt,hについて
δy(t,h)+q=1∑phqΔqf(t,y(t))≤CΓhp+1(4.3.1) が成り立つ。
十分性を示す。すべてのΔqfが恒等的に0ならば、式 (4.3.1)により∥δy(t,h)∥≤CΓhp+1であり、h0:=h1とC:=CΓが局所次数p以上の条件を満たす。
必要性を示す。局所次数がp以上であるとし、d、Ω、f∈Cp(Ω;Rd)、x∗=(t∗,u∗)∈Ωを取る。R:=[t∗−a,t∗+a]×{u∣∥u−u∗∥≤a}⊆Ωを満たすa>0を取る。Rは凸なコンパクト集合であるから、補題 1.5 (2)をr=0、K′=R、z=(0,v−u)として適用すると、(σ,u),(σ,v)∈Rについて∥f(σ,v)−f(σ,u)∥≤CR∥v−u∥を満たすCRが存在する。§E10.4 系 4.1により、t∗を含む開区間J上のC1級の解yでy(t∗)=u∗を満たすものが存在する。[t∗,T]⊆Jを満たすT>t∗を取り、t0:=t∗として局所次数の定義と式 (4.3.1)をt=t∗で用いると、C≥0とh2>0が存在して、0<h≤h2について∥∑q=1phqΔqf(x∗)∥≤Chp+1が成り立つ。Δqf(x∗)=0を満たすq≤pが存在すると仮定し、その最小のものをq0とすると、∥Δq0f(x∗)+∑q>q0hq−q0Δqf(x∗)∥≤Chp+1−q0においてh→0とすることによりΔq0f(x∗)=0を得て、q0の取り方と両立しない。したがって1≤q≤pについてΔqf(x∗)=0である。▨
補題 4.4.s∈N≥1、A=(aij)∈Rs×s、b∈Rs、c:=A1、C:=diag(c)とし、cqは成分ごとの冪(c0:=1)とする。三つ組(cq,1,q+1)(q∈N≥0)から写像(ϕ,K,n)↦(CqAϕ, K/n, n+q+1)(q∈N≥0)を0回以上の有限回適用して得るRs×R×N≥1の元の全体をTとする。p∈N≥1とする。Butcher 配列(A,b)の Runge–Kutta 法の局所次数がp以上ならば、(ϕ,K,n)∈Tとn≤pについてbTϕ=K/nが成り立つ。
証明.
主張 4.4.1. 各(ϕ,K,n)∈Tについて、d∈N≥1と多項式写像F:R×Rd→Rd、y:R→Rdが存在して、次が成り立つ。y(0)=0、y′(τ)=F(τ,y(τ))(τ∈R)であり、yの第d成分はKτn/nに等しい。任意のh>0について(0,0,h)におけるFの段の方程式の解はただ一つであり、その解(ki)の第d成分を並べたベクトル(ki,d)iはhn−1ϕに等しい。
証明. 三つ組(cq,1,q+1)についてはd=1、F(τ,v):=τq、y(τ):=τq+1/(q+1)が条件を満たす。段の方程式はki=(cih)q(q=0では1)であり、解はただ一つである。
(ϕ,K,n)についてd、F、yが条件を満たすとし、q∈N≥0を取る。v∈Rd、w∈RについてF~(τ,(v,w)):=(F(τ,v), τqvd)と置き、y~(τ):=(y(τ), nKn+q+1τn+q+1)と置く。y~の最後の成分の導関数はnKτn+q=τqyd(τ)であるからy~′=F~(τ,y~)であり、最後の成分はnKτn+q+1/(n+q+1)に等しい。(0,0,h)におけるF~の段の方程式は、最初のd成分についてはFの段の方程式であり、最後の成分については
k~i,d+1=(cih)qhj∑aijkj,d=hn+q(CqAϕ)iである。右辺はFの段の方程式の解だけで定まるから、F~の段の方程式の解はただ一つであり、その最後の成分を並べたベクトルはhn+qCqAϕである。したがって三つ組(CqAϕ,K/n,n+q+1)について条件が成り立つ。Tの各元は出発点に写像を有限回適用したものであるから、適用の回数に関する帰納法により、すべての元について条件が成り立つ。▨
(ϕ,K,n)∈Tとn≤pを取り、主張 4.4.1のd、F、yを取る。t0:=0、T:=1、J:=Rとする。局所次数の定義により十分小さいh>0について(0,0,h)∈Dであり、段の方程式の解はただ一つであるから、Φ(0,0,h)はその解から定まる。このとき局所打切り誤差δy(0,h)の第d成分は
yd(h)−hi∑biki,d=hn(nK−bTϕ)である。局所次数がp以上であり、Rdのノルムは互いに同値であるから、C′≥0とh0>0が存在して、0<h≤h0についてhn∣K/n−bTϕ∣≤C′hp+1が成り立つ。n≤pであるから、hnで割ってh→0とするとbTϕ=K/nを得る。▨
定理 4.5.s∈N≥1、A∈Rs×s、b∈Rs、c:=A1、C:=diag(c)とし、cqは成分ごとの冪とする。(A,b)についての次の条件を考える。
- bT1=1。
- bTc=21。
- bTc2=31かつbTAc=61。
- bTc3=41、bTCAc=81、bTAc2=121かつbTA2c=241。
- 各p∈N≥1に対して、s2+s変数の実係数多項式P1,…,PNが存在し、任意のA∈Rs×sとb∈Rsについて、Butcher 配列(A,b)の Runge–Kutta 法の局所次数がp以上であることとP1(A,b)=⋯=PN(A,b)=0は同値である。
- p∈{1,2,3,4}とする。Butcher 配列(A,b)の Runge–Kutta 法の局所次数がp以上であることと、上の条件の最初のp項がすべて成り立つことは同値である。
証明.(1)を示す。d∈N≥1、開集合Ω、f∈Cp(Ω;Rd)、x∈Ω、1≤q≤p、1≤l≤dの各組について、(A,b)に命題 4.3のΔqf(x)の第l成分を対応させる関数を考える。Gqは(A,b)によらないから、補題 4.2 (3)によりこの関数は次数p以下の実係数多項式である。これらの多項式全体の集合をSとする。次数p以下のs2+s変数実係数多項式のなす実線形空間は有限次元であるから、Sが張る部分空間も有限次元であり、Sの元P1,…,PNでその基底をなすものが存在する。Sの各元はP1,…,PNの一次結合であり、各PlはSの元であるから、Sのすべての元が(A,b)で0になることとP1(A,b)=⋯=PN(A,b)=0は同値である。命題 4.3により、前者は局所次数がp以上であることと同値である。
(2)を示す。d、Ω、f∈Cp(Ω;Rd)、x∈Ωを取り、g:=(1,f)とし、xで評価した値をg:=g(x)、g′[w]:=Dg(x)[w]、g′′[w,w′]:=D2g(x)[w,w′]、g′′′[w,w′,w′′]:=D3g(x)[w,w′,w′′]と略記する。p≥2ではD2g(x)は対称である。c=A1によりζi,0=cigであり、補題 4.2の定義から、q≤p−1の範囲で
κi,1=cig′[g],κi,2=(Ac)ig′[g′[g]]+2ci2g′′[g,g],κi,3=(A2c)ig′[g′[g′[g]]]+2(Ac2)ig′[g′′[g,g]]+ci(Ac)ig′′[g,g′[g]]+6ci3g′′′[g,g,g]を得る。κi,3の第3項はk=2の二つの項21g′′[ζi,0,ζi,1]+21g′′[ζi,1,ζi,0]をD2g(x)の対称性でまとめたものである。Gq+1=DGq[g]に連鎖律とD2gの対称性を用いると
G2=g′[g],G3=g′′[g,g]+g′[g′[g]],G4=g′′′[g,g,g]+3g′′[g,g′[g]]+g′[g′′[g,g]]+g′[g′[g′[g]]]である。∑ibiκi,q−1の係数を∑ibici(Ac)i=bTCAc、∑ibi(Ac2)i=bTAc2などの内積で書き、Gq/q!を引くと
Δ1f=(bT1−1)pr2g,Δ2f=(bTc−21)pr2g′[g],Δ3f=(bTAc−61)pr2g′[g′[g]]+21(bTc2−31)pr2g′′[g,g],Δ4f=(bTA2c−241)pr2g′[g′[g′[g]]]+21(bTAc2−121)pr2g′[g′′[g,g]]+(bTCAc−81)pr2g′′[g,g′[g]]+61(bTc3−41)pr2g′′′[g,g,g]を得る(q≤pの範囲)。条件の最初のp項が成り立てば、任意のd、Ω、f、xとq≤pについてΔqf(x)=0であり、命題 4.3により局所次数はp以上である。
逆に局所次数がp以上であるとする。q=0,1,2,3の三つ組(1,1,1)、(c,1,2)、(c2,1,3)、(c3,1,4)は補題 4.4のTに属する。(c,1,2)にq=0とq=1の写像を適用して(Ac,21,3)と(CAc,21,4)を得る。(c2,1,3)にq=0の写像を適用して(Ac2,31,4)を得る。(Ac,21,3)にq=0の写像を適用して(A2c,61,4)を得る。第3成分がp以下のものに補題 4.4を適用すると、bT1=1、bTc=21、bTc2=31、bTAc=61、bTc3=41、bTCAc=81、bTAc2=121、bTA2c=241のうち次数p以下のものが成り立ち、これは条件の最初のp項である。▨
5 陽的法の段数と局所次数
補題 5.1.s,p∈N≥1とし、A∈Rs×sを狭義下三角行列、b∈Rsとする。Butcher 配列(A,b)の陽的 Runge–Kutta 法の局所次数がp以上ならばp≤sである。
証明.d=1、Ω=R2、f(t,u)=u、解y(τ)=eτ(J=R)、t0=0、T=1とする。Aは狭義下三角であるからAs=0であり、I−hAは正則で(I−hA)−1=∑j=0s−1hjAjである。(0,1,h)における段の方程式は(I−hA)k=1であるからk=∑j=0s−1hjAj1であり、
Ψh(0,1)=R(h),R(h):=1+j=1∑shjbTAj−11を得る。よってδy(0,h)=eh−R(h)である。補題 1.5 (1)をexpとr=s+1に適用すると
eh−R(h)=j=1∑shj(j!1−bTAj−11)+(s+1)!hs+1+ϵ(h),∣ϵ(h)∣≤(s+2)!hs+2ehである。局所次数がp以上であるとすると、C1≥0とh0>0が存在して0<h≤h0で∣eh−R(h)∣≤C1hp+1が成り立つ。j≤min{p,s}でhjの係数が0でないものがあるとし、その最小のjで両辺をhjで割ってh→0とすると、その係数が0になり、係数が0でないことと両立しない。よってj≤min{p,s}についてbTAj−11=1/j!である。p≥s+1と仮定すると、すべてのj≤sの係数が0であるから∣hs+1/(s+1)!+ϵ(h)∣≤C1hs+2となり、hs+1で割ってh→0とすると1/(s+1)!=0を得て両立しない。したがってp≤sである。▨
系 5.2.
- 前進 Euler 法の局所次数は1である。
- 中点法と Heun 法の局所次数は2である。
- 古典的 Runge–Kutta 法の局所次数は4である。
- 後退 Euler 法の局所次数は1である。
証明.(1)を示す。命題 1.6により前進 Euler 法の局所次数は1以上であり、例 1.7により2以上でない。
(2)を示す。中点法ではbT1=0+1=1、bTc=1⋅21=21であり、Heun 法ではbT1=21+21=1、bTc=21⋅0+21⋅1=21である。定理 4.5 (2)により局所次数は2以上であり、補題 5.1により2以下である。
(3)を示す。c=(0,21,21,1)T、Ac=(0,0,41,21)T、Ac2=(0,0,81,41)T、A2c=(0,0,0,41)T、CAc=(0,0,81,21)Tであり、b=61(1,2,2,1)Tとの内積は
bT1=61(1+2+2+1)=1,bTAc=61(21+21)=61,bTAc2=61(41+41)=121,bTc=61(1+1+1)=21,bTc3=61(41+41+1)=41,bTA2c=61⋅41=241bTc2=61(21+21+1)=31,bTCAc=61(41+21)=81,である。定理 4.5 (2)により局所次数は4以上であり、補題 5.1により4以下である。
(4)を示す。十分小さい刻みでは、後退 Euler 法の一歩写像は Butcher 配列111の陰的 1 段 Runge–Kutta 法の一歩写像と同じ値をとる。この配列ではbT1=1、bTc=1=21であるから、定理 4.5 (2)により局所次数は1以上であり2以上でない。▨
例 5.3.d=1、Ω=R2、f(t,u)=3t2、解y(τ)=τ3、t=0とする。任意の Butcher 配列(A,b)について、段の方程式はki=3(cih)2であり解はただ一つであるから、Ψh(0,0)=3h3bTc2であり
δy(0,h)=h3−3h3bTc2=3h3(31−bTc2)である。前進 Euler 法は Butcher 配列001の陽的 1 段 Runge–Kutta 法である。Butcher 配列
032032410043の陽的 2 段法を含め、各方法のbTc2とδy(0,h)は次のとおりである。
| 方法 |
bTc2 |
δy(0,h) |
| 前進 Euler 法 |
0 |
h3 |
| 中点法 |
1/4 |
h3/4 |
| Heun 法 |
1/2 |
−h3/2 |
| 上の陽的 2 段法 |
1/3 |
0 |
| 古典的 Runge–Kutta 法 |
1/3 |
0 |
| 後退 Euler 法 |
1 |
−2h3 |
上の陽的 2 段法ではbT1=1、bTc=43⋅32=21であるから、定理 4.5 (2)と補題 5.1により局所次数は2である。この方法の局所打切り誤差はこの解ではすべてのh>0で0であるが、局所次数は3以上でない。
定理 5.4.s∈N≥1とし、A∈Rs×sを狭義下三角行列、b∈Rsとする。
- Butcher 配列(A,b)の陽的 Runge–Kutta 法の局所次数がp以上ならばp≤sである。
- s≥5ならば、Butcher 配列(A,b)の陽的 Runge–Kutta 法の局所次数はs以上でない。特に、局所次数が5の陽的 5 段 Runge–Kutta 法は存在しない。
証明.(1)を示す。補題 5.1により、局所次数がp以上ならばp≤sである。
(2)を示す。s≥5とし、局所次数がs以上であると仮定する。c:=A1、C:=diag(c)と置き、cqは成分ごとの冪とする。Aは狭義下三角であるからc1=0、c2=a21である。補題 4.4の三つ組(1,1,1)にq=0の写像(ϕ,K,n)↦(Aϕ,K/n,n+1)をj回適用すると(Aj1,1/j!,j+1)∈Tを得る。j=s−1とすると第3成分はsであるから、補題 4.4をp=sで用いてbTAs−11=(s−1)!1⋅s1=s!1を得る。(As−1)ijはi=j0>j1>⋯>js−1=jを満たす添字の列にわたる積aj0j1⋯ajs−2js−1の和であり、そのような列はjl=s−lに限るから、bTAs−11=bsas,s−1⋯a21=1/s!である。特にc2=a21=0である。
r:=s−5、wT:=bTArと置く。(Ar)ij=0にはi≥j+rが必要であるから、j>5についてwj=0である。補題 4.4の写像をq=0でr回適用すると、(ϕ,K,n)∈Tから(Arϕ, K(n−1)!/(n+r−1)!, n+r)∈Tを得る。βq:=(cq,1,q+1)とし、ιqを写像(ϕ,K,n)↦(CqAϕ,K/n,n+q+1)とすると、次の表の各行の(ϕ,K,n)はTに属し、n+r≤sである。補題 4.4によりwTϕ=bTArϕ=K(n−1)!/(n+r)!であり、n+r=s−(5−n)を代入すると表の最後の列を得る。
| ϕ |
生成 |
K |
n |
wTϕ |
| A3c |
ι0ι0ι0β1 |
1/24 |
5 |
1/s! |
| A2c2 |
ι0ι0β2 |
1/12 |
5 |
2/s! |
| A2c |
ι0ι0β1 |
1/6 |
4 |
1/(s−1)! |
| CA2c |
ι1ι0β1 |
1/6 |
5 |
4/s! |
| CAc2 |
ι1β2 |
1/3 |
5 |
8/s! |
| Ac2 |
ι0β2 |
1/3 |
4 |
2/(s−1)! |
| CAc |
ι1β1 |
1/2 |
4 |
3/(s−1)! |
| Ac |
ι0β1 |
1/2 |
3 |
1/(s−2)! |
| C2Ac |
ι2β1 |
1/2 |
5 |
12/s! |
| c4 |
β4 |
1 |
5 |
24/s! |
| c3 |
β3 |
1 |
4 |
6/(s−1)! |
| c2 |
β2 |
1 |
3 |
2/(s−2)! |
| c |
β1 |
1 |
2 |
1/(s−3)! |
c~:=c2−c2cと置く。c1=0と三角性から、j≤5の成分は
(Ac)1=(Ac)2=0, (Ac)3=a32c2;(A2c)j=0 (j≤3), (A2c)4=a43a32c2;(A3c)j=0 (j≤4), (A3c)5=a54a43a32c2,c~1=c~2=0, c~3=c3(c3−c2);(Ac~)j=0 (j≤3), (Ac~)4=a43c~3;(A2c~)j=0 (j≤4), (A2c~)5=a54a43c~3である。
u:=w5a54a43w4(c4−c5)a43w3(c3−c5)(c3−c4),v:=(a32c2c3(c3−c2))と置く。wj=0(j>5)と上の成分により、cj−c5がj=5で、(cj−c5)(cj−c4)がj=4,5で0になることを用いると
uv=wTA3cwT(C−c5I)A2cwT(C−c5I)(C−c4I)AcwTA2c~wT(C−c5I)Ac~wT(C−c5I)(C−c4I)c~を得る。実際、第1行の和はj=5の項だけ、第2行の和はj=4の項だけ、第3行の和はj=3の項だけが残り、それぞれu1v、u2v、u3vに等しい。
M:=s!uvと置く。Ccq=cq+1を用いて
A2c~(C−c5I)Ac~(C−c5I)(C−c4I)Ac(C−c5I)(C−c4I)c~=A2c2−c2A2c,(C−c5I)A2c=CA2c−c5A2c,=CAc2−c2CAc−c5Ac2+c2c5Ac,=C2Ac−(c4+c5)CAc+c4c5Ac,=c4−(c4+c5)c3+c4c5c2−c2{c3−(c4+c5)c2+c4c5c}と展開し、表の値とs!/(s−1)!=s、s!/(s−2)!=s(s−1)、s!/(s−3)!=s(s−1)(s−2)を代入すると
M=14−sc512−3s(c4+c5)+s(s−1)c4c52−sc28−2sc5−c2{3s−s(s−1)c5}24−6s(c4+c5)+2s(s−1)c4c5−c2{6s−2s(s−1)(c4+c5)+s(s−1)(s−2)c4c5}である。M=s!uvの階数は1以下であるから、Mの2×2小行列式はすべて0である。第1・2行の小行列式は
M11M22−M12M21=sc2(1−c5)であり、c2=0からc5=1を得る。c5=1を代入するとM31=12−3s+s(s−4)c4、M32=24−6s+2s(s−4)c4+2s(s−4)c2−s(s−1)(s−4)c2c4であり、第1・3行の小行列式は
M11M32−M12M31=s(s−4)c2(c4−1)である。s≥5とc2=0からc4=1を得る。
(A2c)j=0(j≤3)、wj=0(j>5)、c4=c5=1により、wT(I−C)A2c=∑j=45wj(1−cj)(A2c)j=0である。一方、表のA2cとCA2cの行から
wT(I−C)A2c=(s−1)!1−s!4=s!s−4=0である。二つの値は両立しないから、局所次数がs以上であるという仮定は成り立たない。▨
6 演習
解答.
K=∅ならば任意のρについてKρ=∅であり、主張は成り立つ。K=∅とする。Kは有界であるから∥x′∥≤R0(x′∈K)を満たすR0が存在し、Kρの元xは∥x∥≤R0+ρを満たす。Kρの点列(xn)がx∈Rmに収束するとし、∥xn−xn′∥≤ρを満たすxn′∈Kを取る。Kはコンパクトであるから、部分列(xnk′)がx′∈Kに収束し、∥x−x′∥=limk∥xnk−xnk′∥≤ρである。したがってx∈Kρであり、KρはRmの有界閉集合であるからコンパクトである。
U=Rmならば任意のρ>0が条件を満たす。U=Rmとし、φ(x):=inf{∥x−z∥∣z∈Rm∖U}と置く。任意のx,x′についてφ(x)≤∥x−x′∥+φ(x′)であるから∣φ(x)−φ(x′)∣≤∥x−x′∥であり、φは連続である。x∈Uならば、Uは開集合であるから{x′′∣∥x′′−x∥<ϵ}⊆Uを満たすϵ>0が存在し、φ(x)≥ϵ>0である。Kはコンパクトであるからδ:=minx∈Kφ(x)が存在し、δ>0である。ρ:=δ/2と置き、x∈Kρと∥x−x′∥≤ρを満たすx′∈Kを取る。任意のz∈Rm∖Uについて∥x−z∥≥∥x′−z∥−∥x−x′∥≥δ−ρ>0であるからx=zであり、x∈Uである。▨
問題 6.2. 陽的 2 段 Runge–Kutta 法
0a210a21b100b2について、次を示せ。局所次数が2以上であることとb1+b2=1かつb2a21=21が成り立つことは同値であり、このとき局所次数は2である。さらにこのとき、d=1、Ω=R2、f(t,u)=φ(t)の形の右辺を考えると、次数2以下の任意の実係数多項式φ:R→Rについて局所打切り誤差がすべて0になることとa21=32は同値である。
解答.
c=(0,a21)TであるからbT1=b1+b2、bTc=b2a21である。定理 4.5 (2)をp=2で用いると、局所次数が2以上であることはb1+b2=1かつb2a21=21と同値である。このとき補題 5.1により局所次数は2以下であり、したがって2である。
f(t,u)=φ(t)とすると、段の方程式の解はki=φ(t+cih)ただ一つであり、解yについて
δy(t,h)=∫tt+hφ(σ)dσ−h(b1φ(t)+b2φ(t+a21h))である。φ(σ)=∑j=02λj(σ−t)jと書くと
δy(t,h)=λ0h(1−b1−b2)+λ1h2(21−b2a21)+λ2h3(31−b2a212)である。b1+b2=1とb2a21=21のもとで最初の二項は0であり、b2a212=21a21であるから、任意のλ0,λ1,λ2、t、h>0についてδy(t,h)=0であることは31−21a21=0、すなわちa21=32と同値である。このときb2=43、b1=41であり、例 5.3の陽的 2 段法に一致する。▨