1 Simpson 則の差による推定
定義 1.1.fを実数値関数とし、α<βを満たす実数について閉区間J=[α,β]がfの定義域に含まれるとする。∣J∣:=β−α、xJ,i:=α+i∣J∣/4(0≤i≤4)、c:=xJ,2と置き、
SJ(1)(f):=S[α,β](f),SJ(2)(f):=S[α,c](f)+S[c,β](f)=12∣J∣(f(xJ,0)+4f(xJ,1)+2f(xJ,2)+4f(xJ,3)+f(xJ,4))と定める。SJ(2)(f)はJ上の複合 Simpson 則のN=4、h=∣J∣/4の場合である。
EJ(f):=15SJ(2)(f)−SJ(1)(f)を、J上のfの Simpson 則の差による誤差推定値 (Simpson difference error estimate) という。JをJ−:=[α,c]とJ+:=[c,β]に分けることをJの 二等分 (bisection) という。
命題 1.2.α<βを実数、J:=[α,β]、H:=β−αとし、f:J→RをC4級の関数とする。m:=minJf(4)、M:=maxJf(4)と置く。
- ξ1,ξ2∈(α,β)が存在して
∫αβf(x)dx−SJ(1)(f)=−2880H5f(4)(ξ1),∫αβf(x)dx−SJ(2)(f)=−46080H5f(4)(ξ2),EJ(f)=−691200H5(16f(4)(ξ1)−f(4)(ξ2))
が成り立つ。
- 実数M4がJ上で∣f(4)∣≤M4を満たすならば、∫αβf(x)dx−SJ(2)(f)≤M4H5/46080である。
- (∫αβf(x)dx−SJ(2)(f))−EJ(f)≤43200H5(M−m)である。
- m>0またはM<0であるとし、μ:=min{∣m∣,∣M∣}と置く。このとき∫αβf(x)dx−SJ(2)(f)=0であり、
∫αβf(x)dx−SJ(2)(f)EJ(f)−1≤15μ16(M−m)
が成り立つ。
証明.mとMは§D1.13 定理 2.1により存在する。§E20.20 定理 2.4 (1)をh=H/2として適用すると、(H/2)5/90=H5/2880から第一の等式を満たすξ1∈(α,β)を得る。SJ(2)(f)は§E20.20 定義 1.1の複合 Simpson 則のN=4、h=H/4の場合であり、§E20.20 定理 2.4 (2)を適用すると、H(H/4)4/180=H5/46080から第二の等式を満たすξ2∈(α,β)を得る。15EJ(f)=(∫αβf−SJ(1)(f))−(∫αβf−SJ(2)(f))に二つの等式を代入し、2880⋅16=46080、46080⋅15=691200を用いると第三の等式を得る。
(2)は、(1)の第二の等式と∣f(4)(ξ2)∣≤M4から従う。
(1)により
(∫αβf(x)dx−SJ(2)(f))−EJ(f)=691200H5(−15f(4)(ξ2)+16f(4)(ξ1)−f(4)(ξ2))=43200H5(f(4)(ξ1)−f(4)(ξ2))であり、∣f(4)(ξ1)−f(4)(ξ2)∣≤M−mから(3)を得る。
(4)を示す。f(4)はJ上で符号が一定であり、∣f(4)(ξ2)∣≥μ>0であるから、(1)の第二の等式により∫αβf−SJ(2)(f)=0である。第二と第三の等式により
∫αβf(x)dx−SJ(2)(f)EJ(f)−1=15f(4)(ξ2)16f(4)(ξ1)−f(4)(ξ2)−1=15f(4)(ξ2)16(f(4)(ξ1)−f(4)(ξ2))であり、分子の絶対値は16(M−m)以下、分母の絶対値は15μ以上である。▨
系 1.3.a<bを実数、f:[a,b]→RをC4級の関数とし、x∈[a,b]がf(4)(x)=0を満たすとする。任意のε>0に対してδ>0が存在し、x∈Jかつ∣J∣<δを満たす任意の閉区間J⊆[a,b]について、∫Jf(y)dy−SJ(2)(f)=0かつ
∫Jf(y)dy−SJ(2)(f)EJ(f)−1≤εが成り立つ。
証明.η:=min{1/2, 15ε/64}と置く。f(4)はxで連続であるから、δ>0が存在して、∣y−x∣<δを満たす任意のy∈[a,b]で∣f(4)(y)−f(4)(x)∣≤η∣f(4)(x)∣が成り立つ。x∈J、∣J∣<δならばJの各点yは∣y−x∣<δを満たすから、J上のf(4)の最小値mと最大値Mはf(4)(x)±η∣f(4)(x)∣の間にある。η≤1/2であるから、mとMはf(4)(x)と同じ符号をもち、min{∣m∣,∣M∣}≥∣f(4)(x)∣/2、M−m≤2η∣f(4)(x)∣である。命題 1.2 (4)により、比と1の差の絶対値は
15∣f(4)(x)∣/216⋅2η∣f(4)(x)∣=1564η≤ε以下である。▨
例 1.4.f(t):=t6、[a,b]=[−1,1]、0<h≤1、J:=[−h,h]とする。f(4)(t)=360t2であり、0∈Jでf(4)(0)=0である。f(±h)=h6、f(±h/2)=h6/64、f(0)=0から
SJ(1)(f)=62h⋅2h6=32h7,SJ(2)(f)=122h(2h6+648h6)=4817h7,EJ(f)=151(4817−32)h7=−48h7であり、∫Jf(t)dt=2h7/7から∫Jf(t)dt−SJ(2)(f)=−23h7/336である。したがってEJ(f)/(∫Jf−SJ(2)(f))=7/23はhによらず、h→+0としても1に近づかない。
例 1.6.f(x):=4x6−5x4、J:=[−1,1]とする。f(4)(x)=1440x2−120はx=±1/12で符号を変える。f(±1)=−1、f(±1/2)=−1/4、f(0)=0から
SJ(1)(f)=62(−1+0−1)=−32,SJ(2)(f)=122(f(−1)+4f(−21)+2f(0)+4f(21)+f(1))=122(−4)=−32であり、EJ(f)=0である。一方∫−11f(x)dx=8/7−2=−6/7であり、∫−11f(x)dx−SJ(2)(f)=−4/21であって、推定値0は誤差の絶対値4/21の上界でない。
2 許容誤差の配分と保証
補題 2.1.a<bを実数、f:[a,b]→Rを Riemann 可積分な関数、a=t0<t1<⋯<tK=bを[a,b]の分割とする。実数Q1,…,QK、τ1,…,τK、τが、各kについて∫tk−1tkf(x)dx−Qk≤τkを満たし、∑k=1Kτk≤τを満たすならば、∫abf(x)dx−∑k=1KQk≤τである。
証明.§D1.17 定理 3.6をK−1回適用して∫abf=∑k=1K∫tk−1tkfを得る。したがって∫abf−∑kQk=∑k(∫tk−1tkf−Qk)であり、三角不等式により左辺の絶対値は∑kτk≤τ以下である。▨
3 適応 Simpson 法
定義 3.1.a<bを実数、f:[a,b]→Rを関数、τ>0、ρ≥0とする。[a,b]に含まれる正の長さの閉区間Jに対する次の条件を、それぞれJの 判定規則 (acceptance test) という。
- 推定による判定 (estimate-based test):∣EJ(f)∣≤τ∣J∣/(b−a)。
- [a,b]に含まれる閉区間の全体の上で定義された非負実数値の関数Bを与える。上界による判定 (bound-based test):B(J)∣J∣5/46080≤τ∣J∣/(b−a)。
- 相対判定 (relative test):∣EJ(f)∣≤ρ∣SJ(2)(f)∣。
- 併用判定 (mixed absolute-relative test):∣EJ(f)∣≤max{τ∣J∣/(b−a), ρ∣SJ(2)(f)∣}。
推定による判定、相対判定、併用判定の真偽は、f(xJ,0),…,f(xJ,4)とJによって定まる。上界による判定の真偽はJとBによって定まる。
定義 3.2.a<bを実数、f:[a,b]→Rを関数とする。入力として、定義 3.1の判定規則の一つ、[a,b]に含まれる閉区間からなる集合D、整数nmax≥5を与える。Dに属する区間を 分割を許す区間 (divisible interval) といい、nmaxを 評価回数の上限 (evaluation cap) という。
状態は、区間の有限集合A、U、区間の有限列P、整数nの組(A,U,P,n)である。fをx[a,b],0,…,x[a,b],4で評価し、初期状態を(∅,∅,([a,b]),5)とする。Pが空でない間、Pの先頭の区間JをPから除き、次の規則で状態を更新する。
- Jが判定規則を満たすならば、JをAに加える。
- Jが判定規則を満たさず、J∈/Dならば、JをUに加える。
- Jが判定規則を満たさず、J∈Dであり、n+4>nmaxならば、終了理由「評価回数の上限」、区間族K:=A∪U∪{J}∪P(Pはその項の集合とみなす)を定めて停止する。
- J=[α,β]が判定規則を満たさず、J∈Dであり、n+4≤nmaxならば、fを四点α+(2i+1)∣J∣/8(0≤i≤3)で評価し、nをn+4に替え、Pの先頭にJ−、J+をこの順に置く。
Pが空になったとき、K:=A∪Uと置き、U=∅ならば終了理由「受理」、U=∅ならば終了理由「分割不能」を定めて停止する。停止したとき、近似値Q:=∑K∈KSK(2)(f)、終了理由、区間族Kを出力する。この手続きを 適応 Simpson 法 (adaptive Simpson method) という。
命題 3.3.a<bを実数、f:[a,b]→Rを関数とし、定義 3.2の適応 Simpson 法を考える。各段階で、A、U、Pの項と、処理中の区間Jを合わせた区間の全体を現在の区間族という。
- 各段階で、現在の区間族は内部が互いに交わらず、和集合が[a,b]である有限個の閉区間からなる。その各区間は[a,b]から有限回の二等分で得られる。その区間の個数をkとすると、fを評価した点の集合は、現在の区間族の各区間Kの点xK,0,…,xK,4の和集合であり、4k+1個の点からなり、その個数はnに等しい。
- 規則定義 3.2 (4)の実行回数Dは⌊(nmax−5)/4⌋以下であり、手続きは高々2D+2回の更新で停止する。
- 停止したとき、出力の区間族Kは[a,b]の分割をなし、fの評価回数は4∣K∣+1である。
証明.(1)を更新の回数に関する帰納法で示す。初期状態では現在の区間族は{[a,b]}、評価点はx[a,b],0,…,x[a,b],4の5点であり、n=5である。規則定義 3.2 (1)、定義 3.2 (2)、定義 3.2 (3)は区間をPからAまたはUへ移すか停止するだけであり、現在の区間族、評価点、nを変えない。規則定義 3.2 (4)は現在の区間族のJ=[α,β]をJ−、J+に替える。J−とJ+の内部は交わらず、和集合はJであり、J±は[a,b]からJより一回多い二等分で得られる。H:=∣J∣と置くと、xJ−,i=α+iH/8、xJ+,i=α+(4+i)H/8(0≤i≤4)であるから、
{xJ−,i}i∪{xJ+,i}i={xJ,i}i∪{α+(2i+1)H/8}0≤i≤3である。新しい四点はJの内部にあり、xJ,0,…,xJ,4のいずれとも異なる。現在の区間族のJ以外の区間はJと端点でしか交わらないから、それらの区間の点は新しい四点のいずれとも異なる。帰納法の仮定により、更新後の評価点の集合は更新後の区間族の各区間の五点の和集合であり、その個数は4k+1+4=4(k+1)+1であって、nも4増える。
(2)を示す。規則定義 3.2 (4)はn+4≤nmaxのときだけ実行され、nを4増やすから、各段階でn=5+4D′≤nmaxである。ここでD′はそれまでの実行回数である。したがってD≤⌊(nmax−5)/4⌋である。規則定義 3.2 (4)はPの長さを1増やし、規則定義 3.2 (1)と定義 3.2 (2)は1減らす。Pの長さは初めに1であり、負にならないから、後者の二規則の実行回数はD+1以下である。規則定義 3.2 (3)の実行は停止を伴い、高々一回である。したがって更新の回数は2D+2以下である。
(3)を示す。Pが空になって停止したとき、現在の区間族はA∪U=Kである。規則定義 3.2 (3)で停止したとき、現在の区間族はA∪U∪{J}∪P=Kである。いずれの場合も(1)によりKは[a,b]の分割をなし、評価回数はn=4∣K∣+1である。▨
定理 3.4.a<bを実数、f:[a,b]→RをC4級の関数、τ>0とし、Bを[a,b]に含まれる閉区間の全体の上で定義された関数であって、任意の閉区間K⊆[a,b]についてB(K)≥maxK∣f(4)∣を満たすものとする。上界による判定を用いる適応 Simpson 法の出力Q、Kについて、次が成り立つ。
- 終了理由によらず、∫abf(x)dx−Q≤∑K∈K46080B(K)∣K∣5である。
- 終了理由が「受理」ならば、∫abf(x)dx−Q≤τである。
証明.命題 3.3 (3)によりKは[a,b]の分割をなし、Q=∑K∈KSK(2)(f)である。各K∈Kについて、命題 1.2 (2)をM4=B(K)として適用すると∫Kf−SK(2)(f)≤B(K)∣K∣5/46080である。補題 2.1を、各KのτK:=B(K)∣K∣5/46080と、全体の許容誤差∑K∈KτKに適用して(1)を得る。終了理由が「受理」ならばU=∅であり、K=Aの各区間Kは上界による判定を満たすから、τK≤τ∣K∣/(b−a)である。Kは[a,b]の分割であるから∑KτK≤τであり、(1)から(2)が従う。▨
4 評価回数と終了理由
命題 4.1.a<bを実数、f:[a,b]→Rを関数、τ>0、M4>0とし、Bを[a,b]に含まれる閉区間の全体の上で定義された非負実数値の関数であって、任意のKについてB(K)≤M4を満たすものとする。
λ:=(M4(b−a)46080τ)1/4と置き、Dが長さλより大きい[a,b]の閉部分区間をすべて含み、nmax≥8(b−a)/λ+1であるとする。上界による判定を用いる適応 Simpson 法は終了理由「受理」で停止し、Kの区間は[a,b]に等しいか長さがλ/2より大きい。fの評価回数は
max{5, 8(46080τM4(b−a)5)1/4+1}以下である。
証明. 上界による判定を満たさない区間JはB(J)∣J∣4>46080τ/(b−a)を満たし、B(J)≤M4から∣J∣4>λ4、すなわち∣J∣>λである。したがって判定を満たさない区間はDに属し、規則定義 3.2 (2)は実行されない。[a,b]以外の区間は判定を満たさない区間の二等分で現れるから、その長さはλ/2より大きい。規則定義 3.2 (4)または定義 3.2 (3)の条件が調べられる区間Jは判定を満たさず、∣J∣>λであるからJ±の長さはλ/2より大きい。現在の区間族をk個の区間とすると、JをJ−、J+に替えたk+1個の区間は[a,b]の分割をなし(命題 3.3 (1))、いずれも長さがλ/2より大きいから、(k+1)λ/2<b−aである。n=4k+1であるからn+4=4(k+1)+1<8(b−a)/λ+1≤nmaxであり、規則定義 3.2 (3)は実行されない。したがって終了理由は「受理」である。規則定義 3.2 (4)が一度も実行されなければ評価回数は5である。一度以上実行されればKの各区間の長さはλ/2より大きく、∣K∣<2(b−a)/λであるから、命題 3.3 (3)により評価回数4∣K∣+1は8(b−a)/λ+1より小さい。8(b−a)/λ=8(M4(b−a)5/(46080τ))1/4である。▨
例 4.2.f(x):=1/((x−1/3)2+10−6)、[a,b]=[0,1]とする。f(1/3)=106であり、∣x−1/3∣≥1/10ではf(x)<100である。∫01f(x)dx=1000(arctan(2000/3)+arctan(1000/3))=3137.0926637147…である。推定による判定をτ=10−3で用い、Dを[0,1]のすべての閉部分区間、nmaxを十分大きくとった適応 Simpson 法を40桁の十進演算で実行すると、終了理由は「受理」、∣K∣=231、評価回数は925であり、Kの区間の長さは2−15から2−2までにわたる。誤差は∫01f−Q=−3.9127…×10−4である。一様な分割による複合 Simpson 則Sh(f)(h=1/N)では、N=4096(評価回数4097)で∫01f−Sh(f)=−2.7010…×10−3、N=8192(評価回数8193)で−6.967…×10−9である。倍精度演算で偶数Nごとに計算すると、誤差の絶対値が10−3以下となる最小のNは4414である。推定による判定には定理 3.4に当たる保証が無く、適応 Simpson 法の誤差の絶対値がτ以下であることは、この実行の計算値から分かる事実である。
命題 4.3.Fを浮動小数点数系、flをFの最近接丸めとし、α<βをFの元であって、開区間(α,β)にFの元が無いものとする。任意の実数z∈[α,β]についてfl(z)∈{α,β}である。特に、端点をFの元とする区間[α,β]の二等分点として、α<c<βを満たすc∈Fをとることはできない。
例 4.4. binary64 の有限数の全体F=F(2,53,−1022,1023)と最近接偶数丸めflを考える。§E20.1 補題 1.2 (4)により、α:=1より大きい最小のFの元はβ:=1+2−52である。厳密な中点1+2−53の最近接点はαとβの二つであり、§E20.1 定義 2.4の整数はm(α)=252、m(β)=252+1であるから、fl(1+2−53)=αである。浮動小数点演算で中点をfl(fl(α+β)/2)と計算すると、α+β=2+2−52は隣り合うFの元2と2+2−51の中点であってfl(2+2−52)=2であり、計算値はαである。[1,2]からd回の二等分で得られる区間J=[α′,β′]について、α′は2−dの整数倍であり、定義 3.2 (4)の四点はα′+(2i+1)2−d−3である。F∩[1,2)は2−52の整数倍の全体であるから、d≤49ならばこの四点はFに属し、d≥50ならばこの四点はいずれもFに属さない。Fの元だけを点として用いる実装では、d≥50の区間をDから除く必要がある。
例 4.5.f(x):=x4−1/5、[a,b]=[−1,1]とする。f(4)=24は定数であるから、命題 1.2 (1)と命題 1.2 (3)により、任意の閉区間J⊆[−1,1]でEJ(f)=∫Jf−SJ(2)(f)=−∣J∣5/1920である。有理数の演算により次の値を得る。
| J |
∫Jf |
SJ(2)(f) |
EJ(f) |
| [−1,1] |
0 |
1/60 |
−1/60 |
| [0,1] |
0 |
1/1920 |
−1/1920 |
| [0,1/2] |
−3/32 |
−5759/61440 |
−1/61440 |
| [1/2,1] |
3/32 |
5761/61440 |
−1/61440 |
fは偶関数であるから、[−1,0]、[−1,−1/2]、[−1/2,0]の値はそれぞれ[0,1]、[1/2,1]、[0,1/2]の値に等しい。以下の 2 と 3 では、Dを[−1,1]のすべての閉部分区間とし、nmax≥17とする。3 の実行はnmax≥9であれば同じである。
- ∫Jf=0を満たす区間JではSJ(2)(f)=−EJ(f)であるから、ρ<1の相対判定は∣EJ(f)∣の大きさによらず満たされない。[0,1]はこの場合に当たる。
- ρ=1/10の相対判定を用いると、[−1,1]、[−1,0]、[0,1]は判定を満たさず、長さ1/2の四区間は判定を満たす。評価回数は17、Q=2(−5759/61440+5761/61440)=1/15360であり、∫−11f−Q=−1/15360である。受理した各区間Kは∫Kf−SK(2)(f)=∣∫Kf∣/5760を満たすが、∫−11f=0であるから、どのρ′≥0についても∫−11f−Q≤ρ′∫−11fは成り立たない。
- τ=2⋅10−3、ρ=1/10の併用判定を用いると、[−1,1]は1/60>max{2⋅10−3, 1/600}から判定を満たさず、[−1,0]と[0,1]は1/1920≤10−3=τ⋅21から判定を満たす。評価回数は9、Q=2/1920=1/960であり、∫−11f−Q=1/960≤τである。このfではEJ(f)が真の誤差に等しいので、この不等式は受理の条件から従う。
5 標本値の限界
定義 5.1.a<bを実数、Yを集合とし、∗を[a,b]に属さない記号とする。点x1∈[a,b]と、各j∈N≥1に対する写像φj:Rj→[a,b]∪{∗}、ψj:Rj→Yの組を、[a,b]上の 決定的な標本算法 (deterministic sampling algorithm) という。関数f:[a,b]→Rに対して、x1f:=x1とし、j≥1についてx1f,…,xjfが定まったときyif:=f(xif)(1≤i≤j)と置き、φj(y1f,…,yjf)∈[a,b]ならばxj+1f:=φj(y1f,…,yjf)と定める。φj(y1f,…,yjf)=∗を満たすjが存在するとき、その最小のjをnとして、算法はfに対してn回の評価で停止するといい、x1f,…,xnfをその評価点、ψn(y1f,…,ynf)をその出力という。
定理 5.2.a<bを実数とし、[a,b]上の決定的な標本算法が恒等的に0の関数に対してn回の評価で停止し、その評価点がx1,…,xnであるとする。関数g:[a,b]→Rがg(x1)=⋯=g(xn)=0を満たすならば、算法はgに対してn回の評価で停止し、その評価点はx1,…,xn、その出力は恒等的に0の関数に対する出力に等しい。
証明. 恒等的に0の関数を0と書く。1≤j≤nについて、xjgが定まりxjg=xjであることをjに関する帰納法で示す。j=1ではx1g=x1である。1≤j<nとし、1≤i≤jでxig=xiであるとすると、yig=g(xi)=0=yi0である。nはφj(y10,…,yj0)=∗を満たす最小のjであるからφj(0,…,0)=xj+1∈[a,b]であり、xj+1g=φj(y1g,…,yjg)=xj+1である。したがって1≤j≤nでyjg=0であり、j<nでφj(y1g,…,yjg)=xj+1=∗、φn(y1g,…,yng)=φn(0,…,0)=∗である。よって算法はgに対してn回の評価で停止し、出力はψn(0,…,0)である。▨
系 5.3.a<bを実数とし、[a,b]上の決定的な標本算法でY=Rであるものが、恒等的に0の関数に対して停止するとする。任意のτ>0に対して、多項式関数g:[a,b]→Rが存在して、算法はgに対して停止し、その出力vは∫abg(x)dx−v>τを満たす。
証明. 恒等的に0の関数に対する評価点をx1,…,xn、出力をvとし、p(x):=∏i=1n(x−xi)2と置く。pは[a,b]上で連続かつ非負であり、有限個の点x1,…,xn以外で正であるから、§E20.20 補題 1.2によりIp:=∫abp(x)dx>0である。λ:=(∣v∣+τ+1)/Ip、g:=λpと置く。g(xi)=0であるから、定理 5.2により算法はgに対して停止し、出力はvである。∫abg−v≥λIp−∣v∣=τ+1>τである。▨
例 5.4.[a,b]=[0,1]、g(x):=sin2(4πx)とする。gはC∞級であり、g=(1−cos8πx)/2から∫01g(x)dx=1/2である。x[0,1],i=i/4でg(i/4)=sin2(iπ)=0であるから、S[0,1](1)(g)=S[0,1](2)(g)=0、E[0,1](g)=0である。推定による判定、相対判定、併用判定のいずれを用いても、適応 Simpson 法は[0,1]を直ちに受理し、恒等的に0の関数に対するのと同じ5点で評価してQ=0を出力する。誤差は1/2である。上界による判定は関数値g(xJ,0),…,g(xJ,4)以外の情報Bを用いる。g(4)=−(8π)4cos(8πx)/2であり、B([0,1])≥(8π)4/2ならば、τ<(8π)4/(2⋅46080)=4.329…のとき[0,1]は判定を満たさない。
6 端点特異性
例 6.1.f(x):=x、[a,b]=[0,1]とする。β>0に対してfは[0,β]上でC4級でなく、(0,β]上でf(4)(x)=−1615x−7/2は有界でない。したがって、左端が0の区間には命題 1.2を適用することができず、[0,1]上のfは定理 3.4の仮定を満たさない。
- f(βx)=βf(x)であるから、S[0,β](1)(f)=β3/2S[0,1](1)(f)、S[0,β](2)(f)=β3/2S[0,1](2)(f)、∫0βf=β3/2∫01fである。[0,1]では
S[0,1](1)(f)=61+22,S[0,1](2)(f)=123+2+23,e1:=32−S[0,1](2)(f)=125−2−23,E1:=E[0,1](f)=1801−32+23
であり、e1=1.01404…×10−2、E1=1.23033…×10−3である。任意のβ∈(0,1]についてE[0,β](f)/(∫0βf−S[0,β](2)(f))=E1/e1=0.12133…であり、区間を0へ縮めてもこの比は1に近づかない。
- 0<τ<E1とし、推定による判定を用い、Dを[0,1]のすべての閉部分区間、nmaxを十分大きくとる。[0,1]からd回の二等分で得られる区間[0,2−d]は2−3d/2E1≤τ2−d、すなわち2−d/2E1≤τのとき判定を満たす。区間[0,2−d]が判定を満たさなければ、次に[0,2−d−1]が処理される。τ<E1から[0,1]は判定を満たさないので、判定を満たす最初の区間[0,β]はβ<1であり、β1/2E1≤τ<(2β)1/2E1を満たす。その真の誤差は
β3/2e1=E1e1β1/2E1⋅β>2E1e1τβ=5.827…⋅τβ
であり、この区間に長さに比例して割り当てた許容誤差τβを超える。τ=10−6ではβ=2−21であり、真の誤差はτβの7.002…倍である。この実行は50桁の十進演算で評価回数105、∣K∣=26で受理により停止し、全体の誤差は∫01f−Q=2.748…×10−7である。
- 置換x=t2により∫01xdx=∫012t2dtである。被積分関数2t2はP2に属するから、§E20.20 命題 1.3 (4)によりS[0,1](1)=S[0,1](2)=2/3、E[0,1]=0であり、適応 Simpson 法は5回の評価で[0,1]を受理してQ=2/3を出力する。同じ置換は、[0,1]上でC4級のuに対して∫01xu(x)dx=∫012t2u(t2)dtを与え、右辺の被積分関数は[0,1]上でC4級である。
7 演習
解答.
α,β∈Fであるから∣z∣≤max{∣α∣,∣β∣}≤Nmaxであり、§E20.1 定義 2.1によりfl(z)はzの最近接点として定まる。y∈Fがy<αを満たすならば∣y−z∣=z−y>z−α=∣α−z∣であり、yはzの最近接点でない。y>βを満たすy∈Fも同様に∣y−z∣>∣β−z∣を満たし、最近接点でない。(α,β)にFの元は無いから、fl(z)∈{α,β}である。後半の主張は、(α,β)にFの元が無いという仮定そのものである。▨
解答.
命題 4.1により終了理由は「受理」であり、K=Aである。[a,b]からj回の二等分で得られる区間Jは∣J∣=(b−a)2−jを満たし、判定の不等式M4∣J∣4≤46080τ/(b−a)の左辺はjについて狭義単調減少であるから、Jが判定を満たすこととj≥dは同値である。j<dの区間は判定を満たさず、命題 4.1の証明によりそれらは二等分される。j=dの区間は判定を満たしてAに入り、二等分されない。したがって手続きに現れる区間はj≤dのものであり、命題 3.3 (3)によりKは[a,b]の分割をなすから、Kはj=dの2d個の区間の全体である。これらは[a,b]を長さ(b−a)2−dに等分した区間である。h:=(b−a)2−d−2、xl:=a+lhと置くと、K=[x4r,x4r+4]についてSK(2)(f)=S[x4r,x4r+2](f)+S[x4r+2,x4r+4](f)であり、rについて和をとると§E20.20 定義 1.1のN=2d+2の複合 Simpson 則Sh(f)になる。これで(1)は示された。
命題 3.3 (3)により評価回数は4⋅2d+1=2d+2+1である。d≥1ならばdの最小性からd−1回の二等分で得られる区間は判定を満たさず、(b−a)2−d+1>λである。したがって2d<2(b−a)/λであり、2d+2+1<8(b−a)/λ+1である。これで(2)は示された。▨