1 特異値方向の係数
補題 1.1.A∈Rm×n、p:=min{m,n}とし、Rmの正規直交基底u1,…,um、Rnの正規直交基底v1,…,vnと実数σ1≥⋯≥σp≥0がA=∑i=1pσiuiviTを満たすとする(§D3.18 定理 1.2によりこのようなui、vi、σiが存在する)。σi>0を満たすiの個数をrとし、r≥1とする。実数g1,…,grに対してG:=∑i=1rgiviuiT∈Rn×mと置く。b∈Rmとし、x†:=A†bと置く。
- r=rankAであり、A†=∑i=1rσi−1viuiTである。1≤i≤rならばviTx†=σi−1uiTbであり、r<i≤nならばviTx†=0である。b∈imAならば、x†はAx=bを満たすx∈Rnのうちノルムが最小のただ一つのものであり、Ax=bを満たす任意のxと1≤i≤rについてviTx=viTx†である。
- δ≥0とし、∣gk∣=max1≤i≤r∣gi∣を満たすkをとる。∥e∥2≤δを満たす任意のe∈Rmについて∥Ge∥2≤δ∣gk∣であり、e=δukのとき等号が成り立つ。
- 任意のe∈Rmについて
G(b+e)−x†=i=1∑r(σigi−1)(viTx†)vi+Ge
であり、
∥G(b+e)−x†∥2≤(i=1∑r(1−σigi)2(viTx†)2)1/2+1≤i≤rmax∣gi∣∥e∥2
が成り立つ。
- b∈imAならば、Ax=bを満たす任意のx∈Rnと任意のe∈Rmについて
∥G(b+e)−x∥22=∥G(b+e)−x†∥22+∥x−x†∥22
が成り立つ。
証明.(1)を示す。1≤i≤mについてuiTA=∑j=1pσj(uiTuj)vjTは、i≤pならばσiviT、i>pならば0である。同様にAviは、i≤pならばσiui、i>pならば0である。σiは大きい順に並んでいるから、σi>0であることとi≤rであることは同値であり、A=∑i=1rσiuiviTである。したがってimA⊆span{u1,…,ur}であり、1≤i≤rについてui=A(σi−1vi)∈imAであるから、imA=span{u1,…,ur}であってrankA=rである。§D3.18 命題 2.1によりσi=σi(A)であるから、§E20.9 命題 6.1 (1)と§E20.9 定義 6.2によりA†=∑i=1rσi−1viuiTである。x†=∑i=1rσi−1(uiTb)viとv1,…,vnの正規直交性から、viTx†はi≤rならばσi−1uiTb、i>rならば0である。
b∈imAとする。∥Ax−b∥2の最小値は0であるから、Ax=bの最小二乗解の全体はAx=bを満たすxの全体であり、§E20.9 命題 6.1 (1)によりx†はそのうちノルムが最小のただ一つのものである。Ax=bならば、1≤i≤rについてσiviTx=uiTAx=uiTbであり、σi>0からviTx=σi−1uiTb=viTx†である。
(2)を示す。Ge=∑i=1rgi(uiTe)viであり、v1,…,vrとu1,…,umの正規直交性から
∥Ge∥22=i=1∑rgi2(uiTe)2≤gk2i=1∑m(uiTe)2=gk2∥e∥22≤δ2gk2である。e=δukならばGe=δgkvkであり、∥Ge∥2=δ∣gk∣である。
(3)を示す。(1)により1≤i≤rについてuiTb=σiviTx†であり、x†=∑i=1r(viTx†)viである。したがって
Gb−x†=i=1∑rgiσi(viTx†)vi−i=1∑r(viTx†)vi=i=1∑r(σigi−1)(viTx†)viであり、G(b+e)=Gb+Geから等式を得る。右辺の第1項のノルムはv1,…,vrの正規直交性により(∑i=1r(1−σigi)2(viTx†)2)1/2であり、(2)をδ=∥e∥2として用いると第2項のノルムはmaxi∣gi∣∥e∥2以下である。三角不等式により不等式を得る。
(4)を示す。(3)によりG(b+e)−x†∈span{v1,…,vr}である。(1)により1≤i≤rについてviT(x−x†)=0であるから、x−x†∈span{vr+1,…,vn}である。二つの部分空間は直交するから、G(b+e)−x=(G(b+e)−x†)−(x−x†)に Pythagoras の定理を適用して等式を得る。▨
例 1.2.0≤ε≤1、δ>0とし、Aε:=diag(1,ε)∈R2×2、x:=(1,1)、b:=Aεx=(1,ε)、e:=δe2と置く。ui=vi=ei、σ1=1、σ2=εは補題 1.1の仮定を満たす。
ε>0ならばr=2、Aε†=Aε−1、Aε†b=xであり、Aε†(b+e)−x=(0,δ/ε)である。データの摂動の相対的な大きさは∥e∥2/∥b∥2=δ/1+ε2、解の相対誤差はδ/(2ε)である。G=Aε†はg1=1、g2=ε−1の場合であり、補題 1.1 (2)によりe=δe2は∥e∥2≤δの中で∥Aε†e∥2を最大にする。
ε=0ならばr=1、A0†=e1e1Tであり、A0x′=bを満たすx′の全体は{(1,t)∣t∈R}、最小ノルム解はx†=(1,0)である。A0†(b+e)=(1,0)=x†は、imA0に直交する成分u2Te=δによらない。A0†(b+e)とx=(1,1)の差のノルムは1=∥x−x†∥2であり、補題 1.1 (4)の等式の第1項が0の場合である。
2 切断と Tikhonov 正則化
定義 2.1.A∈Rm×n、実数τ>0とし、k:=rτ(A)と置く。k≥1ならば§E20.9 命題 6.3のAτによりTτ:=Aτ†、k=0ならばTτ:=0∈Rn×mと置く。c∈Rmに対してTτcを、許容量τに関するデータcの 切断 SVD 解 (truncated SVD solution) という。A=0とし、ui、vi、σiを補題 1.1のとおりにとると、k≥1ならば§E20.9 命題 6.3 (2)によりTτ=∑i=1kσi−1viuiTであり、k=0ならば右辺の空和を0と読んで同じ等式が成り立つ。
命題 2.2.A∈Rm×n、L∈Rq×n、c∈Rmとし、実数λ>0をとる。x∈Rnに対してJ(x):=∥Ax−c∥22+λ2∥Lx∥22と置く。
- kerA∩kerL={0}ならば、ATA+λ2LTLは正則であり、Jの最小値を与えるx∈Rnはただ一つ存在して、(ATA+λ2LTL)x=ATcのただ一つの解に等しい。このxは(AλL)x=(c0)のただ一つの最小二乗解でもある。
- kerA∩kerL={0}は、Jの最小値を与えるx∈Rnがただ一つ存在するための必要十分条件である。
証明.B:=(AλL)∈R(m+q)×n、c′:=(c0)∈Rm+qと置く。任意のx∈Rnについて∥Bx−c′∥22=∥Ax−c∥22+∥λLx∥22=J(x)であるから、Jの最小値を与えるx∈Rnの全体はBx=c′の最小二乗解の全体に等しく、§E20.6 命題 1.2 (1)によりこの全体は空でない。λ>0からkerB=kerA∩kerLであり、BTB=ATA+λ2LTL、BTc′=ATcである。
(1)を示す。kerA∩kerL={0}とする。kerB={0}であるからBの列は一次独立であり、§E20.6 命題 1.2 (2)によりBTB=ATA+λ2LTLは正則であって、Bx=c′の最小二乗解はただ一つである。§E20.6 命題 1.2 条件 (c)により、x∈RnがBx=c′の最小二乗解であることはBTBx=BTc′、すなわち(ATA+λ2LTL)x=ATcと同値である。したがってJの最小値を与えるxはただ一つ存在し、この方程式のただ一つの解に等しく、Bx=c′のただ一つの最小二乗解である。
(2)を示す。Bの列が一次独立であることはkerB={0}、すなわちkerA∩kerL={0}と同値である。§E20.6 命題 1.2 (2)により、Bx=c′の最小二乗解、すなわちJの最小値を与えるxがただ一つであることは、kerA∩kerL={0}と同値である。▨
定義 2.3.A∈Rm×n、c∈Rmとし、実数λ>0をとる。kerIn={0}であるから、命題 2.2 (1)により∥Ax−c∥22+λ2∥x∥22の最小値を与えるx∈Rnはただ一つ存在し、ATA+λ2Inは正則であって、このxはRλc、Rλ:=(ATA+λ2In)−1ATに等しい。Rλcをデータcの Tikhonov 正則化解 (Tikhonov regularized solution) といい、λを 正則化係数 (regularization parameter) という。罰則を∥Lx∥22とする命題 2.2の最小化と区別するときは、零次の Tikhonov 正則化解という。
命題 2.4.A∈Rm×nはA=0を満たすとし、ui、vi、σi、rを補題 1.1のとおりにとる。実数λ>0とc∈Rmをとり、βi:=uiTc(1≤i≤m)と置く。
- Rλ=∑i=1rσi2+λ2σiviuiTである。
- 任意の実数σ≥0についてσ/(σ2+λ2)≤1/(2λ)であり、等号はσ=λのときに限って成り立つ。σ>0ならばσ/(σ2+λ2)<1/σである。
- ∥Rλc∥2≤∥A†c∥2であり、
∥Rλc−A†c∥2≤σr2+λ2λ2∥A†c∥2
である。特にλ→0のときRλc→A†cである。
-
∥ARλc−c∥22=i=1∑r(σi2+λ2λ2)2βi2+i=r+1∑mβi2
であり、∥ARλc−c∥2はλについて単調非減少である。
証明.(1)を示す。AT=∑j=1rσjvjujTであるから、1≤i≤rについてATAvi=σiATui=σi2viであり、ATc=∑i=1rσiβiviである。y:=∑i=1rσi(σi2+λ2)−1βiviと置くと
(ATA+λ2In)y=i=1∑r(σi2+λ2)σi2+λ2σiβivi=ATcであり、定義 2.3によりRλc=yである。c∈Rmは任意であるから行列の等式を得る。
(2)を示す。σ2+λ2−2λσ=(σ−λ)2≥0であり、等号はσ=λのときに限る。両辺を2λ(σ2+λ2)>0で割って第一の主張を得る。σ>0ならばσ2<σ2+λ2であるからσ/(σ2+λ2)<σ/σ2=1/σである。
(3)を示す。(1)によりRλは補題 1.1のGでgi=σi/(σi2+λ2)としたものであり、σigi−1=−λ2/(σi2+λ2)である。補題 1.1 (3)をb=c、e=0に適用し、補題 1.1 (1)のA†c=∑i=1r(viTA†c)viを用いると
Rλc=i=1∑rσi2+λ2σi2(viTA†c)vi,Rλc−A†c=−i=1∑rσi2+λ2λ2(viTA†c)viである。1≤i≤rについて0<σi2/(σi2+λ2)<1であり、σi≥σrからλ2/(σi2+λ2)≤λ2/(σr2+λ2)であるので、v1,…,vrの正規直交性により二つの不等式を得る。λ→0のとき右辺は0に収束する。
(4)を示す。(1)とAvi=σiuiによりARλc=∑i=1rσi2(σi2+λ2)−1βiuiであり、c=∑i=1mβiuiであるから
ARλc−c=−i=1∑rσi2+λ2λ2βiui−i=r+1∑mβiuiである。u1,…,umの正規直交性により等式を得る。λ2/(σi2+λ2)=1−σi2/(σi2+λ2)はλ>0について非負で単調非減少であるから、右辺はλについて単調非減少である。▨
定理 2.5.A∈Rm×nはA=0を満たすとし、ui、vi、σi、rを補題 1.1のとおりにとる。b∈imAとし、x†:=A†bと置く。実数δ≥0と、∥e∥2≤δを満たすe∈Rmをとる。
- 実数τ>0についてk:=rτ(A)と置くと、k≤rであり、
Tτ(b+e)−x†=−i=k+1∑r(viTx†)vi+Tτe
が成り立つ。k≥1ならば∥Tτe∥2≤δ/σk≤δ/τであり、e=δukのとき∥Tτe∥2=δ/σkである。k=0ならばTτe=0である。τ<σrならばk=rであり、右辺の第1項は0である。
- 実数λ>0について
∥Rλb−x†∥2≤σr2+λ2λ2∥x†∥2,∥Rλe∥2≤δmin{2λ1,σr1}
であり、∥Rλ(b+e)−x†∥2はこの二つの上界の和以下である。λ=σjを満たす1≤j≤rが存在するならば、e=δujのとき∥Rλe∥2=δ/(2λ)である。
- ℓ∈N≥1について、正の実数λℓ、τℓ、非負の実数δℓと、∥eℓ∥2≤δℓを満たすeℓ∈Rmをとる。λℓ→0、τℓ→0、δℓ→0ならば、Rλℓ(b+eℓ)→x†、Tτℓ(b+eℓ)→x†である。Ax=bを満たすx=x†について、すべてのℓで∥Rλℓ(b+eℓ)−x∥2≥∥x−x†∥2、∥Tτℓ(b+eℓ)−x∥2≥∥x−x†∥2である。
証明.(1)を示す。σiは大きい順に並んでいるから、σi>τであることとi≤kであることは同値であり、τ>0からk≤rである。定義 2.1によりTτは補題 1.1のGでgi=σi−1(i≤k)、gi=0(k<i≤r)としたものであり、σigi−1はi≤kならば0、k<i≤rならば−1である。補題 1.1 (3)により等式を得る。k≥1ならばmaxi∣gi∣=σk−1であり、σk>τであるから、補題 1.1 (2)によりTτeについての主張を得る。k=0ならばTτ=0である。τ<σrならばσr>τからk≥rであり、k=rであるので第1項の和は空である。
(2)を示す。b∈Rmに命題 2.4 (3)を適用して第一の不等式を得る。命題 2.4 (1)によりRλは補題 1.1のGでgi=σi/(σi2+λ2)としたものである。命題 2.4 (2)により各i≤rについてgi≤1/(2λ)、gi<1/σi≤1/σrであるから、補題 1.1 (2)により第二の不等式を得る。Rλ(b+e)−x†=(Rλb−x†)+Rλeと三角不等式により和の評価を得る。λ=σjならば、命題 2.4 (2)によりgj=1/(2λ)はg1,…,grの最大値であり、補題 1.1 (2)によりe=δujで等号が成り立つ。
(3)を示す。(2)により
∥Rλℓ(b+eℓ)−x†∥2≤σr2+λℓ2λℓ2∥x†∥2+σrδℓであり、右辺は0に収束する。τℓ→0であるから、あるℓ0が存在してℓ≥ℓ0ならばτℓ<σrであり、(1)によりℓ≥ℓ0について∥Tτℓ(b+eℓ)−x†∥2=∥Tτℓeℓ∥2≤δℓ/σrである。したがってTτℓ(b+eℓ)→x†である。RλℓとTτℓはいずれも補題 1.1のGの形であるから、補題 1.1 (4)により最後の二つの不等式を得る。▨
3 循環畳み込みによるぼけの復元
命題 3.1.N∈N≥1、h,g∈RNとし、行列C,L∈RN×NをCx:=h⊛x、Lx:=g⊛x(x∈RN)で定める。RN⊆CNとみなし、離散 Fourier 変換を ^で表す。
- h~∈RNをh~j:=h(−j)modNで定めると、任意のy∈RNについてCTy=h~⊛yであり、0≤k<Nについてh~^k=h^kである。
- すべての0≤k<Nについて(h^k,g^k)=(0,0)であるとし、実数λ>0とc∈RNをとる。このときkerC∩kerL={0}であり、∥Cx−c∥22+λ2∥Lx∥22の最小値を与えるただ一つのx∗∈RNは
(x^∗)k=∣h^k∣2+λ2∣g^k∣2h^kc^k(0≤k<N)
を満たす。
- (2)の仮定の下でc=Cx+e(x,e∈RN)ならば、
∥x∗−x∥22=N1k=0∑N−1(∣h^k∣2+λ2∣g^k∣2)2λ2∣g^k∣2x^k−h^ke^k2
が成り立つ。
- すべての0≤k<Nについてh^k=0ならば、Cは正則であり、任意のy∈RNについて∥C−1y∥22=N−1∑k=0N−1∣y^k∣2/∣h^k∣2である。
証明.(1)の証明は演習とする(問題 5.1)。
(2)を示す。x∈RNがCx=0、Lx=0を満たすならば、§E20.16 定理 2.3により0≤k<Nについてh^kx^k=0、g^kx^k=0であり、(h^k,g^k)=(0,0)からx^k=0である。§E20.16 定理 1.3 (2)によりx=0であるから、kerC∩kerL={0}である。命題 2.2 (1)によりx∗は(CTC+λ2LTL)x∗=CTcを満たす。(1)をhとgに適用し、§E20.16 定理 2.3を用いると、この等式の両辺の離散 Fourier 変換の第k成分は
(h^kh^k+λ2g^kg^k)(x^∗)k=h^kc^kを与える。(h^k,g^k)=(0,0)から左辺の係数∣h^k∣2+λ2∣g^k∣2は正であり、主張の式を得る。
(3)を示す。§E20.16 定理 2.3と離散 Fourier 変換の線形性によりc^k=h^kx^k+e^kである。Dk:=∣h^k∣2+λ2∣g^k∣2と置くと、(2)により
(x^∗)k−x^k=Dkh^k(h^kx^k+e^k)−Dkx^k=Dkh^ke^k−λ2∣g^k∣2x^kである。§E20.16 定理 1.3 (3)により∥x∗−x∥22=N−1∥x^∗−x^∥22であり、主張の等式を得る。
(4)を示す。Cy=0ならば、§E20.16 定理 2.3によりh^ky^k=0であり、h^k=0からy^=0、§E20.16 定理 1.3 (2)によりy=0である。正方行列Cの核は{0}であるからCは正則である。z:=C−1yと置くとh^kz^k=y^kであり、§E20.16 定理 1.3 (3)により∥z∥22=N−1∑k∣y^k∣2/∣h^k∣2である。▨
例 3.2.N=8、ω:=ω8=e−πi/4とし、h:=(1/2,1/5,0,0,0,0,0,1/5)∈R8、Cx:=h⊛xと置く。(Cx)j=xj/2+(x(j−1)mod8+x(j+1)mod8)/5である。ω7k=ω−kであるから
h^k=21+51(ωk+ω−k)=21+52cos4πkであり、h^0=9/10、h^1=h^7=1/2+2/5、h^2=h^6=1/2、h^3=h^5=1/2−2/5、h^4=1/10である。すべて正であるから、命題 3.1 (4)によりCは正則であり、最小値はh^4=1/10である。
真の信号をx:=(1,2,1,0,1,2,1,0)とする。xj+4=xjとx3=0からx^k=(1+2ωk+ω2k)(1+ω4k)であり、x^=(8,0,−4i,0,0,0,4i,0)である。データはb:=Cx=(9/10,7/5,9/10,2/5,9/10,7/5,9/10,2/5)である。摂動の方向をd:=8−1/2(1,−1,1,−1,1,−1,1,−1)とすると∥d∥2=1であり、(−1)j=ω4jと§E20.16 補題 1.1によりd^kはk=4で22、その他のkで0である。η>0に対してe:=ηdと置くと∥e∥2=ηである。
C−1(b+e)−x=C−1eであり、命題 3.1 (4)により∥C−1e∥22=8−1(22η)2/h^42=100η2である。§E20.16 定理 2.3によりCd=h^⊙d^=d^/10であるから、Cd=d/10、C−1e=10eである。
g:=(1,0,…,0)とするとL=I8、g^k=1であり、命題 3.1 (2)のx∗はRλ(b+e)である。x^はk=4で0、e^はk=4で0であるから、命題 3.1 (3)により
∥Rλ(b+e)−x∥22=β(λ)2+ν(λ)2,β(λ)2:=8(81/100+λ2λ2)2+4(1/4+λ2λ2)2,ν(λ):=10(1/100+λ2)ηである。h^kは実数であるから、§E20.16 定理 2.3と命題 3.1 (2)によりCRλ(b+e)−(b+e)の離散 Fourier 変換の第k成分は−λ2c^k/(h^k2+λ2)、c^:=b+e=(36/5,0,−2i,0,22η,0,2i,0)であり、§E20.16 定理 1.3 (3)により残差ρ(λ):=∥CRλ(b+e)−(b+e)∥2は
ρ(λ)2=25162(81/100+λ2λ2)2+(1/4+λ2λ2)2+η2(1/100+λ2λ2)2である。λ∈{1/100,3/100,1/10,3/10}、η∈{10−3,10−2,10−1}についての値は次のとおりである。
| λ |
β(λ) |
誤差η=10−3 |
誤差η=10−2 |
誤差η=10−1 |
ρη=10−3 |
ρη=10−2 |
ρη=10−1 |
| 1/100 |
8.73×10−4 |
9.94×10−3 |
9.90×10−2 |
0.990 |
5.09×10−4 |
5.18×10−4 |
1.11×10−3 |
| 3/100 |
7.83×10−3 |
1.21×10−2 |
9.21×10−2 |
0.917 |
4.57×10−3 |
4.64×10−3 |
9.44×10−3 |
| 1/10 |
8.43×10−2 |
8.45×10−2 |
9.80×10−2 |
0.507 |
4.94×10−2 |
4.97×10−2 |
7.03×10−2 |
| 3/10 |
0.600 |
0.600 |
0.600 |
0.609 |
0.367 |
0.367 |
0.378 |
表の4個のλのうち誤差を最小にするものは、η=10−3,10−2,10−1についてそれぞれ1/100、3/100、1/10である。残差ρを最小にするものは、どのηについても1/100であり、η=10−1ではその誤差0.990は最小値0.507の約2倍である。不一致原理をθ=1で用いると、ρ(λ)≤ηを満たす最大のλはη=10−3,10−2,10−1についてそれぞれ1/100、3/100、1/10であり、この表では誤差を最小にするλと一致する。ν(λ)=ηh^4/(h^42+λ2)であり、λ=h^4=1/10では命題 2.4 (2)の等号によりν(1/10)=η/(2λ)=5ηである。
例 3.3.n≥2とし、D∈R(n−1)×nを(Dx)j:=xj+1−xj(1≤j≤n−1)で定め、1:=(1,…,1)∈Rnと置く。Dx=0であることとx1=⋯=xnであることは同値であるから、kerD=span{1}である。A∈Rm×nについてkerA∩kerD={0}であることはA1=0と同値であり、命題 2.2 (2)により、∥Ax−c∥22+λ2∥Dx∥22の最小値を与えるxがただ一つ存在するための必要十分条件はA1=0である。A=DのときはD1=0であり、任意のxとt∈Rについてxとx+t1における目的関数の値は等しい。
例 3.2のN、h、C、x、eをとり、g:=(1,−1,0,…,0)∈R8とすると(Lx)j=xj−x(j−1)mod8であり、kerLも定数列の全体である。g^k=1−ωk、∣g^k∣2=2−2cos(πk/4)であり、∣g^0∣2=0、∣g^2∣2=∣g^6∣2=2、∣g^4∣2=4である。h^k=0であるから命題 3.1 (2)の仮定が成り立ち、命題 3.1 (3)により最小化解x∗は
∥x∗−x∥22=16(1/4+2λ2λ2)2+(10(1/100+4λ2)η)2を満たす。∣g^0∣=0とe^0=0から、命題 3.1 (2)により(x^∗)0=c^0/h^0=x^0=8である。λ=1/20とすると第2項の平方根は5ηであり、例 3.2のR1/10のν(1/10)に等しい。第1項の平方根は2/51≈3.92×10−2であり、β(1/10)≈8.43×10−2より小さい。η=10−1では∥x∗−x∥2≈0.502であり、R1/10(b+e)の誤差0.507より小さい。
4 無限次元の対角作用素
例 4.1.ℓ2上の作用素Kを(Kx)j:=j−1xj(j∈N≥1)で定める。j−1→0であるから、§E12.11 例 5.1によりKはコンパクトである。Kx=0ならばすべてのjでxj=0であるからKは単射であり、逆写像K−1:imK→ℓ2は線形である。第j単位ベクトルejについて∥Kej∥=j−1、∥K−1(Kej)∥=∥ej∥=1である。あるM≥0がすべてのy∈imKについて∥K−1y∥≤M∥y∥を満たすとすると、j>Mを満たすjについて1≤M/j<1となり、両立しない。したがってK−1はimK上で有界でない。
n∈N≥1についてAn:=diag(1,1/2,…,1/n)∈Rn×nと置くと、AnはKをe1,…,enの張る部分空間に制限したものの行列である。ui=vi=ei、σi=1/iは補題 1.1の仮定を満たし、r=n、σn=1/nである。An−1=diag(1,2,…,n)であり、y∈Rnについて∥An−1y∥22=∑i=1ni2yi2≤n2∥y∥22、y=enで等号が成り立つから、∥An−1∥2=nである。Anから作るRλについて、定理 2.5 (2)により∥e∥2≤δを満たす任意のe∈Rnで∥Rλe∥2≤δmin{1/(2λ),n}である。上界δ/(2λ)はnによらない。上界δ/σn=nδは、固定したδ>0についてn→∞のとき発散する。
5 演習
解答.
x∈RN、0≤j<Nをとる。写像l↦(j−l)modNは{0,…,N−1}からそれ自身への全単射であり、逆写像はq↦(j−q)modNである。この全単射で添字を付け替えると
(Cx)j=l=0∑N−1hlx(j−l)modN=q=0∑N−1h(j−q)modNxqであるから、Cの(j,q)成分はh(j−q)modNである。したがってCTの(j,q)成分はh(q−j)modNである。s:=(j−q)modNについて(−s)modN=(q−j)modNであるから、h(q−j)modN=h~(j−q)modNである。hをh~に替えて同じ付け替えを行うと、(h~⊛y)j=∑q=0N−1h~(j−q)modNyq=(CTy)jである。
写像s↦t:=(−s)modNは{0,…,N−1}からそれ自身への全単射であり、s≡−t(modN)とωNN=1からωNsk=ωN−tkである。htは実数であり、∣ωN∣=1からωNtk=ωN−tkであるので
h~^k=s=0∑N−1h(−s)modNωNsk=t=0∑N−1htωN−tk=t=0∑N−1htωNtk=h^kである。▨
問題 5.2.定理 2.5の仮定の下で、あるw∈Rmについてx†=ATwが成り立つとする。実数λ>0について
∥Rλ(b+e)−x†∥2≤2λ∥w∥2+2λδを示せ。さらにw=0、δ>0のとき、λ:=(δ/∥w∥2)1/2に対して右辺が(δ∥w∥2)1/2に等しいことを示せ。
解答.
AT=∑i=1rσiviuiTであるから、1≤i≤rについてviTx†=viTATw=σiuiTwである。命題 2.4 (1)によりRλは補題 1.1のGでgi=σi/(σi2+λ2)としたものであり、補題 1.1 (3)をe=0に適用すると
Rλb−x†=−i=1∑rσi2+λ2λ2(viTx†)vi=−i=1∑rλ2σi2+λ2σi(uiTw)viである。命題 2.4 (2)により0≤λ2σi/(σi2+λ2)≤λ/2であるから、v1,…,vrとu1,…,umの正規直交性により
∥Rλb−x†∥22≤4λ2i=1∑r(uiTw)2≤4λ2∥w∥22である。定理 2.5 (2)により∥Rλe∥2≤δ/(2λ)であり、Rλ(b+e)−x†=(Rλb−x†)+Rλeと三角不等式により主張の不等式を得る。λ=(δ/∥w∥2)1/2ならばλ∥w∥2/2=(δ∥w∥2)1/2/2、δ/(2λ)=(δ∥w∥2)1/2/2であり、右辺は(δ∥w∥2)1/2である。▨